JP2005170923A - リポソーム含有x線造影剤およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
リポソームの安定化とヨウド系化合物の保持安定性を図るとともに造影化合物の血中滞留性を高め、造影剤の効率的送達および良好なターゲティングを達成する、安全性の高いX線造影剤を提供すること。
【解決手段】
本発明のX線造影剤は、脂質膜中にリン脂質とともに、ポリアルキレンオキシド基を有する化合物、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物を含有し、該膜内の水相中には水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物を内包させているリポソームを含む。本発明の造影剤は、好ましくはリポソームの膜内部の水相とそのリポソームが分散されている水性媒体との両方に、ヨウド系化合物および製剤助剤を含有し、該リポソーム膜内外でそれぞれの濃度が実質的に同一である。本発明の造影剤は、超臨界二酸化炭素法により作製されるためクロル系溶剤などの有毒な溶剤を実質的に含まない。
【選択図】なし

Description

本発明は、X線造影剤およびその製造方法に関し、詳しくは内部に造影物質を内包したリポソームを含有するX線造影剤およびその製造方法に関する。
X線単純撮影やCT撮影法(コンピュータ断層撮影法)は、今日の画像診断の中核を占めている。骨、歯などのいわゆる硬組織はX線を良好に吸収するために容易に高コントラスト像を得ることができる。これに対し、軟組織間ではX線吸収の差が小さいため高いコントラスト像を得ることは困難である。このような場合、コントラストの高い像を得るために造影剤を使用することが一般に行なわれている。
現在実用化されているX線造影剤の大部分は、トリヨードフェニル基を含有し水溶性化した化合物を造影物質とするものである。これらの造影剤は、血管、尿管、輸卵管などの管腔部位に投与され、管腔の形状、狭窄などの診断に使用されている。しかしながら、これらの化合物は組織や疾患部位とは相互作用をすることなく管腔部位から速やかに排出されてしまうために、組織や疾患部位、特に癌組織をより詳細に診断する目的には役立たない。このため目標とする組織もしくは疾患部位に選択的に集積し、その周囲またはその他の部位と明瞭なコントラストで区別できる画像を提供するX線造影剤が望まれている。そのようなX線検査用造影剤であれば、微細な癌組織であっても精度良く検出することが可能となる。腫瘍発見のために開発された検査方法としては、X線撮影法だけでなく測定原理を異にする他の方法もある。そのうちMRI(磁気共鳴造影法)では、癌組織、特に微小な癌組織を精度よく撮像するには感度の面から限界があり、PET(陽電子放射断層撮影法)では、被爆と稼動コストの点で一般的でなく、いずれも大規模な設備と高額な装置を必要としており、今のところ一般的に広く利用される検査法ではない。
国際公開WO98/46275、同WO95/31181、同WO94/19025、同WO96/28414、同WO96/00089、米国特許4873075号、同4567034号などには、疎水性ヨウド化合物を界面活性剤や油脂の存在下で水中に分散させ、腫瘍、肝臓、脾像、副腎皮質、動脈硬化巣、血管プール、リンパ系などを造影する方法が開示されている。これらの方法では、造影剤を微粒子化することにより体内での滞留時間を長くして疾患部位を選択的に造影しようとするものである。しかしながら、その目的のために提案された製剤方法は、造影の効率および選択性とも充分でない。さらに使用するヨウド化合物が疎水性であるために、造影後に体外へ排出する速度が遅く、患者への負担が大きいという問題点もある。
一方、造影剤を微粒子状にする方法として、生体膜類似の脂質から構成され、低い抗原性ゆえに安全性が高いとされているリポソームに造影性化合物を内包させる手法も検討されている。たとえば国際公開WO88/09165、同WO89/00988、同WO90/07491、特開平07-316079、特開2003-5596では、イオン性または非イオン性の造影剤を含有するリポソームが提案されている。特許第2619037号(特許文献1)では、水溶性のヨウド化合物をリポ
ソーム内に封入し、リポソーム内のヨウド化合物量が脂質の量に対し、1.5〜6g/gと高
くすることによって臓器選択性を持たせようとしている。しかしながら、腫瘍に対する選択性は低かった。これは、リポソームの粒径が実質0.5〜1.0μmと大きめの粒子であったためと推定される。腫瘍組織への蓄積には0.1μm前後の大きさの粒子が好ましいとされるが、上記特許内容の製造方法では小粒径化が難しく、また小粒径にするとヨウド化合物の脂質量に対する比率が小さくなる。これらの方法では、素材としての安全性が高く、生体内で適度な分解性を有するリポソームを用いるにもかかわらず、製造過程においてリポソーム膜を構成するリン脂質の溶剤として、有機溶媒、特にクロロホルム、ジクロロメタン
といったクロル系溶剤を使用する。したがって、どうしても残存する溶剤の毒性があるという理由で実用化に至っていない(たとえば、特許文献2参照)。
他方、脂質可溶性の薬剤は容易にリポソーム中に封入されるが、その封入量は他の要因にも左右されることから必ずしもそれほど多くはない。また水溶性電解質である薬剤は、その薬剤の電荷と荷電した脂質の電荷との相互作用を通じてリポソーム内部の水相に封入できるが、薬剤が水溶性の非電解質である場合には、そうした手段を採ることはできない。X線造影剤についても、一般にイオン性造影化合物よりも、実質的に毒性の低い非イオン性ヨウド化合物をリポソーム内に封入することが望まれるが、上記の理由から容易ではない。さらに形成されるリポソームは多重層になりやすく、ヨウド化合物の内包率も低いために効率が悪くなる。このような水溶性の非電解質を効率的にリポソーム中に封入する手段として、逆相蒸発法、エーテル注入法が挙げられるが、有機溶剤を使用するためにやはり安全性の問題が残る。
特開2003-119120(特許文献3)では、リポソームを含有する化粧料、皮膚外用剤を、
超臨界二酸化炭素を用いて製造する方法が開示されており、親水性薬効成分や親油性薬効成分をリポソームに内包する皮膚外用剤の製造例が示されている。しかし、親水性薬効成分として、水溶性電解質の例は示されているが、同法により水溶性非電解質をリポソームに効率よく内包できるか不明であった。
首尾良く造影物質をリポソーム内部に内包させても、時間経過とともに外部へ漏出する問題、あるいはリポソームそのものが不安定となる事態も考慮されねばならない。さらにリポソームを生体内へ投与しても、その多くが肝臓、脾臓などの網内系組織で捕捉されるため、所期の効果が得られないことも指摘されている(Cancer Res., 43, 5328(1983))

特許第2619037号公報 特開平7-316079号公報 特開2003-119120号公報
本発明は、造影物質をリポソームに封入することによりその送達効率および選択性が高いX線造影剤を提供することを目的とする。より具体的には毒性のある有機溶媒を使用することなくリポソーム内に水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物を封入し、微小な癌組織の検出も可能な腫瘍描出性に優れるX線造影剤ならびにその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、以下の構成を有する。
本発明のX線造影剤は、水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物を含有するリポソームを含み、しかも実質的にクロル系溶剤を含まないことを特徴としている。
前記リポソームは、リン脂質を超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素に混合させ、水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物を該リン脂質に接触させることにより形成されたリポソームであることを特徴としている。
前記リポソームは、実質的に一枚膜リポソームであることが好ましい。
前記ヨウド系化合物は、2,4,6−トリヨードフェニル基を少なくとも1個有することを
特徴としている。
前記リポソームの平均粒径は、0.05〜0.5μmであることを特徴としている。
前記リポソームの平均粒径が、0.05〜0.2μmであることが好ましい。
前記リポソームの平均粒径が、0.11〜0.13μm であることがより好ましい。
前記リポソームは、オキシエチレン単位が10〜3500のPEGを、該リポソームを構成する
脂質に対して0.1〜30質量%含んでなるPEG化リポソームであってもよい。
前記リポソームは、望ましくは0.1〜0.4μmの孔径を有する濾過膜を通されている。
前記リポソームは、前記ヨウド系化合物をリポソーム膜脂質に対して、1〜10の重量比で含有していることを特徴としている。
前記リポソームが、前記ヨウド系化合物をリポソーム膜脂質に対して、3〜8の重量比で含有していることが好ましい。
前記リポソームが、前記ヨウド系化合物をリポソーム膜脂質に対して、5〜8の重量比で含有していることがより好ましい。
前記リポソーム内に封入された前記ヨウド系化合物は、X線造影剤における全ヨウド系化合物の5〜30質量%であることを特徴としている。
前記リポソームは、その脂質膜にポリアルキレンオキシド基を有する化合物、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物を含有し、かつその脂質膜内の水相に前記ヨウド系化合物を含有することを特徴としている。
前記リポソームが、好ましくはその脂質膜にポリアルキレンオキシド修飾リン脂質を含有し、かつその脂質膜内の水相に前記ヨウド系化合物を含有している。
前記リポソームが、その脂質膜にポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合物を含有し、かつその脂質膜内の水相に前記ヨウド系化合物を含有してもよい。
前記リポソームは、その脂質膜内の水相と該リポソームが分散されている水性媒体との両方に前記ヨウド系化合物および製剤助剤を含有し、該リポソーム膜内外でそれぞれの濃度が実質的に同一であることを特徴としている。
前記製剤助剤が、水溶性アミン系緩衝剤、キレート化剤から少なくとも1種選ばれる化合物であることが好ましい。
より好ましくは前記水溶性アミン系緩衝剤が、トロメタモールである。
さらに前記キレート化剤が、好ましくはEDTANa2−Caである。
本発明の製造方法は、リポソームを形成するリン脂質を超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素に混合させ、水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物をリン脂質に接触させることにより形成されたリポソームを含有するX線造影剤の製造方法である。
上記の製造方法は、リポソームを形成するリン脂質を超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素に混合させ、水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物の水溶液を導入し、次いで二酸化炭素を排出してリポソームを形成することを特徴としている製造方法である。
前記二酸化炭素の圧力が、50〜500 kg/cm2であることが望ましい。
また、前記二酸化炭素の温度が好ましくは、25〜200℃である。
上記製造方法は、リポソーム膜成分として、リン脂質とともにポリアルキレンオキシド修飾リン脂質、ポリアルキレンオキシド基を有する化合物、ポリエチレングリコール基を有する化合物、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物を超臨界二酸化炭素もし
くは亜臨界二酸化炭素に混合させた後、ヨウド系化合物の水溶液を導入し、二酸化炭素を排出して、ヨウド系化合物を内部に含有するリポソームを形成し、さらに該リポソームを0.1〜0.4μmの孔径を有する濾過膜を通すことを特徴としている。
さらに、好ましくは上記製造方法は、リポソーム膜成分として、リン脂質とともにポリアルキレンオキシド修飾リン脂質、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物を超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素に混合させた後、ヨウド系化合物および製剤助剤を含む水溶液を導入し、二酸化炭素を排出して、さらに形成されたリポソームを0.1〜0.4μmの孔径を有する濾過膜を通し、最終的にヨウド系化合物および製剤助剤が該膜内外でそれぞれ実質的に同一濃度で含有されるリポソームを形成することを特徴としている。〔発明の具体的説明〕
以下、本発明を造影化合物、リポソーム、X線造影剤の順に詳細に説明する。
造影化合物
本発明における水溶性ヨウド系化合物は、造影性があればイオン性、非イオン性を問わず特に規定されない。一般的に非イオン性ヨウド系化合物の方が、イオン性ヨウド系化合物よりも浸透圧が低くより望ましい。水溶性の非イオン性ヨウド系化合物として、特にヨウ化フェニルを含み、たとえば2,4,6−トリヨードフェニル基を少なくとも1個有する非イオン性ヨウド系化合物が好適である。
そのような非イオン性ヨウド系化合物として、具体的にはイオヘキソール、イオペントール、イオジキサノール、イオプロミド、イオトロラン、イオメプロール、N,N′−ビス
〔2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−エチル〕−5−〔〔(2−ヒドロキシ−1−オキソプピル)−アミノ〕−2,4,6−トリヨード−1,3−ベンゼン−ジカルボキシアミド(イオパミドール);メトリザミドなどが挙げられる。
その他のヨウド系化合物として、ジアトリゾイン酸;ジアトリゾエートナトリウム;メグルミンジアトリゾエート;アセトリゾイン酸およびその可溶性塩;ジプロトリゾ酸;ヨーダミド、ヨージパミドナトリウム、メグルミンヨージパミド、ヨード馬尿酸およびその可溶性塩;ヨードメタム酸;ヨードピラセットヨード−2−ピリドン−N−酢酸、3,5−
ジヨード−4−ピリドン−N−酢酸(ヨードピラセット);前記酸のジエチルアンモニウム塩;イオタラム酸;メトリゾイン酸およびその塩;イオパノ酸、イオセファム酸、イオフェノ酸およびそれらの可溶性塩;チロパノエートナトリウム、イオポダートナトリウムおよび他の同様なヨウ素化された化合物などを挙げることができる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。またその例示に限定されるものではない。なお本明細書において、化合物は遊離形態の他に、その塩、水和物なども含めて言及することがある。
本発明のX線造影剤に好適なヨウド系化合物として、高度に親水性であり、かつ高濃度でも浸透圧が高くならないイオメプロール、イオパミドール、イオトロラン、イオジキサノールなどが挙げられる。特にイオトラン、イオジキサノールといった二量体非イオン性ヨウド系化合物では、同一ヨウド濃度の造影剤を調製しても全体のモル数が低いために浸透圧をさらに低下させる利点がある。
本発明の造影剤における水溶性ヨウド系化合物の濃度は、該造影化合物の性質、意図する製剤の投与経路および臨床上の指標といった諸要因に基づき任意に設定することができる。リポソーム内に封入されたヨウド系化合物の量は、典型的にはX線造影剤における全ヨウド系化合物の5〜95質量%、好ましくは5〜90質量%、より好ましくは5〜70質量%で
ある。特にヨウド系化合物をカプセル化したリポソームの経時的な不安定化を充分に防止するには、リポソーム内に封入されたヨウド系化合物の量は、X線造影剤における全ヨウ
ド系化合物の5〜30質量%、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%である
ことが望ましい。X線造影剤において、リポソーム内に封入されたヨウド系化合物の割合が全体の5〜30質量%(好ましくは5〜25質量%)であれば、残り70〜95質量%(好ましくは75〜95質量%)が存在するリポソーム外の水性分散液へ流出する量については実質的に無視できる。したがって、ヨウド系化合物をカプセル化したリポソームの浸透圧効果による不安定化を十分に防止でき、リポソームにおける造影物質の保持安定性は向上する。
リポソーム
本発明のX線造影剤は、上記造影化合物を目標とする臓器、組織などの標的部位へ選択的に効率よく送達するためにマイクロキャリヤーとしてのリポソーム内に封入した形態で使用される。本発明の造影剤は、血中安定性が改善されたリポソームを用いることにより血中滞留性を向上させて、効率的な薬物送達ならびにターゲティングの実現を図っている。特に優れた腫瘍描出性を獲得するために有効とされるEPR(Enhanced permeability and retention、透過性の亢進および滞留)効果を生じさせるためには、リポソーム構造
の安定化および封入物質の保持安定性という、キャリヤーとしての担持の効率を改善させた上で、血中安定性、血中滞留性といった特性を有することが求められる。
本発明のX線造影剤は、造影化合物を内包するリポソームの粒径(粒子径)およびその二分子膜を適切に設計することによりターゲティング機能を実現することができる。受動的ターゲティングおよび能動的ターゲティングいずれも考慮される。前者は、リポソームの粒径、脂質組成、荷電などの調整を通じてその生体内挙動を制御することができる。リポソーム粒径を狭い範囲に揃える調整は、後述する方法に基づき容易に行われる。リポソーム膜表面の設計は、リン脂質の種類と組成、共存物質を変えることにより所望の特性を付与することができる。
造影剤のより高度な集積性と選択性を可能とする能動的ターゲティングの採用もまた検討されるべきである。一例として、リポソーム表面にポリアルキレンオキシド高分子鎖またはポリエチレングリコール(PEG)を導入することは、標的部位までの誘導過程を制御し得るため、極めて有益である。本発明のX線造影剤に好適なリポソームとは、その表面にポリアルキレンオキシドまたはPEGを付加する修飾を施す結果、その血中滞留性が一層高められ、肝臓などの細網内皮系細胞に貪食されにくいリポソームである。癌組織、疾患部位などに到達しなかったX線造影剤は、正常部位に集積することなく、副作用が発現する前にリポソームが分解されて体外に排泄される。このことはリポソームを設計する際にその安定性を体外排出時間との関係で適切にコントロールすることにより可能である。造影物質は、水溶性ヨウド系化合物を使用するため、腎臓を経由して速やかに尿中に排泄される。したがって徒に体内に留まることによる弊害、遅発性の副作用などを防止できる。
本発明における造影化合物のキャリヤーとして使用されるリポソームの設計、製造方法について、以下に詳述する。
リポソームは、通常、脂質二重膜から形成されている。したがって本明細書では、リポソーム膜を脂質膜と称することもある。その脂質膜の成分として、一般にリン脂質および/または糖脂質が好ましく使用される。
本発明のリポソームにおける好ましい中性リン脂質として、大豆、卵黄などから得られるレシチン、リゾレシチンおよび/またはこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体を挙げることができる。
その他のリン脂質として、卵黄、大豆またはその他の動植物に由来するか、または半合成のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、合成
により得られるホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、
ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などを挙げることができる。
これらのリン脂質は通常、単独で使用されるが、2種以上併用してもよい。ただし2種以上の荷電リン脂質を使用する場合には、負電荷のリン脂質同士または正電荷のリン脂質同士で使用することが、リポソームの凝集防止の観点から望ましい。中性リン脂質と荷電リン脂質を併用する場合、重量比として通常、200:1〜3:1、好ましくは100:1〜4:1、より好ましくは40:1〜5:1である。
糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステルなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4などのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができる。
リポソームの膜構成成分として、上記脂質の他に必要に応じ他の物質を加えることもできる。たとえば、膜安定化剤として作用するステロール類、たとえばコレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、ラノステロールまたは2,4−ジヒドロラノステロールなどが挙げられる。また1−O−ステロールグルコシド,1−O−ステロールマルトシドまたは1−O−ステロールガラクトシドといったステロール誘導体もリポソームの安定化に効果があることが示されている(特開平5-245357号公報)これらのうち、コレステロールが特に好ましい。
ステロール類の使用量として、リン脂質1重量部に対して0.05〜1.5重量部、好ましく
は0.2〜1重量部、より好ましくは0.3〜0.8重量部の割合が望ましい。0.05重量部より少ないと混合脂質の分散性を向上させるステロール類による安定化が発揮されず、2重量部よ
り多すぎるとリポソームの形成が阻害されるか、形成されても不安定となる。
リポソーム膜中のコレステロールは、ポリアルキレンオキシド導入用のアンカーにもなり得る。具体的にはリポソーム膜構成成分として膜中に含めるコレステロールには、必要に応じリンカーを介してその先にポリアルキレンオキシド基を結合させてもよい。リンカーには、短鎖のアルキレン基、オキシアルキレン基などを用いる。特開平09−3093号公報には、ポリオキシアルキレン鎖の先端に、効率よく種々の機能性物質を共有結合により固定化することができ、リポソームの形成成分として利用することができる新規なコレステロール誘導体が開示されている。
他に添加できる化合物として、負荷電物質であるジセチルホスフェートといったリン酸ジアルキルエステルなど、正電荷を与える化合物としてステアリルアミンなどの脂肪族アミンが例示される。
本発明では、ポリアルキレンオキシド(PAO)基または類似の基を有するリン脂質または化合物をX線造影剤の意図する目的に応じてリポソーム膜の一成分として使用してもよい。これまでも細網内皮系細胞で捕捉されてしまう問題ならびに崩壊、凝集などといったリポソーム自体の不安定性に関する問題を解決する方法として、リポソームの表面に高分子鎖であるポリエチレングリコール(PEG)鎖、すなわち−(CH2CH2O)n−Hを
導入することが試みられている(たとえば、特開平1−249717号公報、FEBS letters, 26
8, 235(1990))。
ポリアルキレンオキシド鎖(ポリオキシアルキレン鎖)またはPEG鎖をリポソーム表面に付けることにより、新たな機能をリポソームに付与することができる。たとえば、PEG化リポソームには免疫系から認識されにくくなる(いわゆる「ステルス化」された状態である)効果が期待できる。あるいはリポソームが親水的傾向を有することにより血中安定性を増して、長時間にわたり血液中の濃度を維持できることが明らかになっている(Biochim. Biophys. Acta., 1066, 29-36(1991))。また、リポソームの血中滞留性を向上させるために、ポリアルキレンオキシド修飾リン脂質をリポソーム脂質膜に含有させる手法が開示された(特開2002-37833号公報)。そのようなリポソームでは経時安定性も改善されていることが示されている。
これらの性質を利用してX線造影剤に臓器特異性を与えることもできる。具体的には脂質成分は肝臓に貯まりやすいことから肝臓の選択的な造影を目的とする場合には、PEGを使用しないか、あるいはPEG含有量の少ないリポソームを用いるのが望ましい。また粒径を0.2μm以上に大きくすると、肝臓Kupffer細胞の食作用により速やかに取り込まれ
る可能性が高くなり、肝臓の該部位に集積する。肝臓癌の撮像においては、その癌組織には正常組織に比べてKupffer細胞が少ないために、造影剤リポソームの取込み量は、相対
的に少なくなりコントラストが鮮明となる。脾臓においても同様である。
反対に他臓器の造影の場合、PEGを導入すればリポソームをステルス化して肝臓などに集まりにくくすることができるため、PEG化リポソームの使用が推奨される。PEGの導入により水和層が形成されるため、リポソームは安定化し、血中滞留性も向上する。PEGのオキシエチレン単位の長さと導入する割合を適宜変えることにより、その機能を調節することができる。PEGとして、オキシエチレン単位が10〜3500のポリエチレングリコールが好適である。またPEGを使用する場合の使用量は、該リポソームを構成する脂質に対して0.1〜30質量%、好ましくは1〜15質量%程度含むのがよい。
リポソームのPEG化は、公知の技術を利用することができる。PEGが結合するアンカー(たとえばコレステロールなど)を膜構成成分であるリン脂質と混ぜてリポソームを作製し、そのアンカーに活性化PEGを結合させてもよい。なお、リポソーム表面に導入されたポリエチレングリコール基は、後記「機能性物質」と反応しないため、そうしたリポソーム表面上に「機能性物質」を固定化することは困難である。代わりに、PEG先端に何らかの修飾をさらに施したPEGをリン脂質に結合させ、これをリポソーム構成成分として含めてリポソームを作製することもできる。
上記PEGに代わり、公知の各種ポリアルキレンオキシド基、−(AO)n−Yをリポ
ソーム表面に導入してもよい。ここでAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数である。また、Yは、水素原子、アルキル基または機能性官能基を表す。
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(AOで表される)として、たとえばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシ−1−エチルエチレン基、オキシ−1,2−ジメチルエチレン基などが挙げられる。これらのオキシアルキレン基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキシドを付加重合させた基である。
nは1〜2000、好ましくは10〜500、さらに好ましくは20〜200の正数である。
nが2以上の場合、オキシアルキレン基の種類は、同一のものでも異なるものでもよい
。後者の場合、ランダム状に付加していても、ブロック状に付加していてもよい。ポリアルキレンオキシド鎖に親水性を付与する場合、AOとしてはエチレンオキシドが単独で付加したものが好ましく、この場合、nが10以上のものが好ましい。また種類の異なるアルキレンオキシドを付加する場合、エチレンオキシドが20モル%以上、好ましくは50モル%以上付加しているのが望ましい。ポリアルキレンオキシド鎖に親油性を付与する場合はエチレンオキシド以外の付加モル数を多くする。たとえばポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合物を含有するリポソームは、本発明の好ましい態様である。
Yは、水素原子、アルキル基または機能性官能基である。アルキル基として、炭素数1〜5の、分岐していてもよい脂肪族炭化水素基が挙げられる。機能性官能基は、ポリアルキレンオキシド鎖の先端に糖、糖タンパク質、抗体、レクチン、細胞接着因子といった「機能性物質」を付するためのもので、たとえばアミノ基、オキシカルボニルイミダゾール基、N-ヒドロキシコハク酸イミド基といった反応性に富む官能基が挙げられる。
先端に「機能性物質」を結合しているポリアルキレンオキシド鎖が固定化されたリポソームは、ポリアルキレンオキシド鎖導入の効果に加えて、ポリアルキレンオキシド鎖に邪魔されることなく「機能性物質」の機能、たとえば「認識素子」として特定臓器指向性、癌組織指向性などの作用が充分に発揮される。
ポリアルキレンオキシド基を有するリン脂質または化合物は、一種類を単独で使用することができ、あるいは二種以上のものを組み合わせて使用することもできる。その含有量は、リポソーム膜形成成分の合計量に対し、0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜25モル
%、より好ましくは0.1〜10モル%である。0.001モル%未満では期待される効果が小さくなる。
リポソーム膜へのポリアルキレンオキシド鎖の導入は、公知の技術を利用することができる。たとえばポリアルキレンオキシドが結合するアンカー(コレステロールなど)を膜構成成分であるリン脂質と混ぜてリポソームを作製し、そのアンカーに活性化ポリアルキレンオキシドを結合させてもよい。なお、このような方法では、リポソーム調製後にリポソーム膜表面上で多段階の化学反応を行う必要があり、このため目的とする前記「機能性物質」の導入量が低く制限され、また反応による副生成物や不純物が混入し、リポソーム膜へのダメージが大きいなどの問題点もある。別の製造方法として、原料のリン脂質類の中に、予めリン脂質ポリアルキレンオキシド(PEO)誘導体などを含めてリポソームを作成してもよい。その方法に好適な、下式で示される修飾リン脂質が提案された(特開平7-165770号公報)。
Figure 2005170923
(式中、R1、R2は炭素数2〜29のアルキル基、Mは水素原子またはナトリウムもしくは
カリウムなどのアルカリ金属であり、AO、nおよびYは上記のとおり。)
具体例として、ホスファチジルエタノールアミンなどのポリエチレンオキシド(PEO)誘導体、たとえばジステアロイルホスファチルジルエタノールアミンポリエチレンオキシド(DSPE−PEO)などが挙げられる。さらに特開2002−37883号公報には、血中
滞留性を高めた水溶性高分子修飾リポソームを作製するための高純度ポリアルキレンオキシド修飾リン脂質が開示されている。そうしたリポソームを作製する際にモノアシル体含量が低いポリアルキレンオキシド修飾リン脂質を使用すると、リポソーム分散液の経時安定性が良好であったことが記載されている。
リポソームを作製する方法として、これまで種々の方法が提案されている。作製方法が異なると、最終的に出来上がったリポソームの形態および特性もまた著しく異なることが多い(特開平6-80560号公報)。そのため所望するリポソームの形態、特性に応じて製造
方法を適宜選択することが行なわれている。一般にリポソームは、リン脂質、ステロール、レシチンといった脂質成分を、ほとんど例外なくまず有機溶媒、たとえばクロロホルム、ジクロロメタン、エチルエーテル、四塩化炭素、酢酸エチル、ジオキサン、THFなどと
ともに容器中で溶解、混合することにより調製されている。特にクロル系溶媒が良く用いられている。このようなリポソームの調製品は、必ず有機溶媒を含んでいる。残存するこれらの有機溶媒を除去するために、多段階の工程および長時間の処理を要しているのが現状である。そうした残留する有機溶媒、特にクロル系有機溶媒については、生体に及ぼす悪影響、たとえば副作用が懸念される。
本発明に使用するリポソームを調製するには、有機溶媒、特にクロル系有機溶媒を使用しないため上記の問題点を回避できる超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用するリポソーム調製法を利用する。二酸化炭素の臨界温度が31.1℃、臨界圧力が75.3 kg/cm2と比較的扱いやすく、不活性なガスゆえ残存しても人体に無害であり、高純度流体が
安価で容易に入手できるなどといった理由により好適である。さらにこの方法により作製されたリポソームは、後記するようにX線造影剤のヨウド系化合物を内包するのに種々の好ましい特性および利点を有している。
超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用してリポソームを作製する場合、上記脂質膜成分を、超臨界状態(亜臨界状態を含む)にある二酸化炭素に溶解、分散または混合することが必要となる。その際、低級アルコール、グリコール、グリコールエーテルなどのアルコールを溶解助剤として1種または2種以上併用することは、上記脂質膜成分の溶解性が一層向上するために望ましい。たとえばアルコール類を超臨界二酸化炭素の0.1
〜10質量%、好ましくは、1〜8質量%の割合で助溶媒として使用するのがよい。このうち、より好ましい溶解助剤は、安全性の観点からエタノールである。
本発明の製造方法で使用する超臨界状態(亜臨界状態を含む)の二酸化炭素の温度は、通常25〜200℃、好ましくは31〜100℃、さらに好ましくは35〜80℃である。好適な圧力は、通常50〜500 kg/cm2、好ましくは100〜400 kg/cm2、特に好ましくは90〜150 kg/cm2
範囲である。
本発明のX線造影剤に使用するリポソームの好適な調製方法は、具体的には以下のように行なわれる。圧力容器に液体二酸化炭素を加え、上記の好適な圧力および温度のもとにある超臨界状態もしくは亜臨界状態にする。超臨界(もしくは亜臨界)状態の二酸化炭素にリポソーム膜成分としてリン脂質および脂質膜安定化物質を溶解または分散する。膜脂質成分として上記リン脂質を、好ましくはカチオン性リン脂質、ポリアルキレンオキシド修飾リン脂質、ポリアルキレンオキシド基を有する化合物、ポリエチレングリコール基を
有する化合物、ステロール類、グリコール類から少なくとも1種選ばれた化合物とともに
混合して溶解する。あるいは予めこれらの化合物を加えた圧力容器に液体二酸化炭素を加え、次いで温度、圧力を調整して超臨界状態にして混合する。引き続き生成したリン脂質および脂質膜安定化物質を含有する超臨界二酸化炭素中に、非イオン系ヨウド系化合物、必要に応じて後述の製剤助剤を含む水溶液を添加する。なお、添加する側と加えられる側を逆にしてもよい。系内を減圧して二酸化炭素を排出すると、ヨウド系化合物を内包するリポソームが分散している水性分散液が生成する。この場合、該リポソームの内部以外の水相にヨウド系化合物が含まれていてもよい。リポソーム内部にも上記水溶液が封入されているため、ヨウド系化合物はリポソームの外部水相のほか、主としてリポソーム内部の水相に存在し、いわゆる「内包」の状態にある。さらに該リポソームを0.1〜0.4μmの孔
径を有する濾過膜を通す。次いで、滅菌処理、パッケージングなどの製剤過程を経て、本発明のX線造影剤が調製される。
超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用するリポソーム調製法は、従来法に比べてリポソームの生成率、封入する物質の内包率、封入物質のリポソーム内の保持率が高いことが示されている(上記特許文献3参照)。さらに工業的スケールでの応用も可能であり、実質的に有機溶剤を使用せずに非イオン性かつ水溶性の物質を効率よくリポソームに封入することができる本法は、本発明のX線造影剤の製造には有用な方法である。なお、実質的にとは、造影剤中の濃度の上限値が10μg/Lであることを意味する。
本発明のX線造影剤に含有されるリポソームは、好ましくは実質的に1枚膜リポソーム
、すなわちリン脂質二重層が1つの層としてなる膜(unilamellar vesicle)で構成されるリポソームである。ここで「実質的に」とは、以下の凍結かつ断(Freeze fracture )レプリカ法による透過型電子顕微鏡(TEM)観察において、レプリカが概ね1つの層とし
て認められるリン脂質二重層によりリポソームが構成されていることをいう。すなわち、観察したカーボン膜に残された粒子の跡について段差がないものを一枚膜と判定し、2つ以上の段差が認められるものを「多層膜」と判定される。本発明のX線造影剤において、このような1枚膜リポソームを、造影剤中に含まれる全リポソーム量のうち、少なくとも
80%、好ましくは90%以上含むものである。
このような一枚膜リポソームは、脂質類の溶媒として上記の超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用し、水による相分離方法により効率よく作製できる。これに対し、従来のリポソーム作製方法では、様々なサイズ、形態の多重層膜(multilamellar vesicles; MLV)からなるリポソームがかなりの割合で存在することが多い。そのため、一枚膜リポソームの比率を高めるためには、超音波を照射するか、一定孔サイズのフィルターに何度も通すなどの操作をさらに必要としていた。1枚膜リポソームは、MLVと比較
して、リポソームの投与量、換言すると投与脂質量が大きくならないという利点もある。
一枚膜リポソーム、特に大きい一枚膜リポソームであるLUV(Large unilamellar veislcles)は、多重層リポソームに比べて、大きい封入容量を提供するという利点がある
。本発明の造影剤に使用するリポソームは、粒径が0.2〜1μm のLUVと、粒径が0.05μm 未満の小さい一枚膜リポソームであるSUV(Small unilamellar vesicles)との中間に位置する。このため、保持容積もSUVより大きくなり、水溶性ヨウド系化合物のトラップ効率、換言すると内包効率も、後述するように格段に優れたものとなる。また、MLV、LUVと違い、細網内皮系細胞に取り込まれて急速に血流から消失することもない。
しかしながらヨウド系化合物の内包効率が良好な1枚膜リポソームでも、内包するヨウ
ド系化合物の重量が相対的に多過ぎるとリポソームの安定性は低下する。特にイオン強度の急激な変化には弱い傾向が観察されていた。本発明の造影剤のリポソームは、比較的小さい粒径に調整し、リポソーム膜にポリアルキレンオキシド基を有する化合物(たとえば
リン脂質)および/またはステロール類を含有させて、脂質膜の安定化を図っている。その結果、そうしたリポソームは、塩ショックに対しても安定的であることが判明した。
リポソーム粒子のサイズとその分布は、本発明のX線造影剤が目指す、高い血中滞留性、ターゲティング性、送達効率と密接に関わっている。粒径(粒子径)はヨウド系化合物を内包するリポソームを含む分散液を凍結し、その後破砕した界面をカーボン蒸着し、このカーボンを電子顕微鏡で観察すること(凍結破砕TEM法)により測定することができる。ここで「平均粒径」とは、観察された一定数の造影剤粒子、具体的には20個の径の単純平均を指しているが、粒径分布で最も出現頻度の高い粒径を言う「中心粒径」と通常、一致するか、または近似している。粒径の調整は、処方またはプロセス条件で行なうことができる。たとえば、上記の超臨界の圧力を大きくすると形成されるリポソーム粒径は小さくなる。作製するリポソームの粒径分布をより狭い範囲に揃えるには、ポリカーボネート膜、セルロース系の膜などで濾過してもよい。この場合、濾過膜として0.1〜0.4μmの
孔径のフィルターを装着したエクストルーダーに通すことにより、1枚膜の平均粒径とし
て0.5μm 以下である最適寸法のリポソームを効率よく調製することができる。押出しろ
過法については、たとえばBiochim. Biophys.Acta 557巻,9ページ(1979)に記載されてい
る。このような「押出し」操作を取り入れることにより、上記サイジングに加えて、リポソーム外に存在するヨウド系化合物の濃度の調整、リポソーム分散液の交換、望ましくない物質の除去も併せて可能になるという利点もある。
上記のように受動的ターゲティング能力をリポソームに持たせるには、その粒径のサイジングが重要である。特許2619037号公報には、粒径3μm以上のリポソームを排除するこ
とにより、肺の毛細血管における不都合な保持が回避されると記載されている。しかし、0.15〜3μmの粒径範囲のリポソームは、必ずしも向腫瘍性とはならない。
本発明の造影剤におけるリポソームの平均粒径は、通常0.05〜0.5 μm、好ましくは0.05〜0.3μm 、より好ましくは0.05〜0.2μm 、特に好ましくは0.05〜0.13μm である。X
線撮像の目的に応じて、平均粒径を適切に設定してもよい。たとえば腫瘍部分の選択的撮像目的の場合には、特に0.11〜0.13μm が好ましい。リポソームの平均粒径を0.1〜0.2μm 、より好ましくは0.11〜0.13μm の範囲に揃えることにより癌組織へ選択的にX線造影剤を集中させることが可能となる。これは「EPR効果」として知られている。固形癌組織にある新生血管壁の孔は、正常組織の毛細血管壁窓(fenestra)の孔サイズ、0.03〜0.08μm 未満に比べて異常に大きく、約0.1μm 〜約0.2μm の大きさの分子でも血管壁から漏れ出る。すなわちEPR効果は、癌組織にある新生血管壁では、正常組織の微小血管壁より透過性が高いことによるものである。
血管壁の孔から漏れ出た造影剤は、癌細胞の周辺にはリンパ管が充分に発達していないため、血管に再び戻らずその場に長く留まる。EPR効果は、血流を利用する受動的な輸送であることから、それが有効に発現するための要件として、血中滞留性の向上が図られねばならない。つまり造影剤粒子(ヨウド系化合物を内包するリポソーム粒子)が、血中に長くとどまって、癌細胞近くの血管を何度も通過することが求められる。本発明のX線造影剤は、特に大きい粒子でもないため、細網系内皮細胞による捕獲の対象になりにくい。またリポソームがいわば赤血球類似の姿と挙動をしていて腎臓を経由して速やかに排出されることはなく、さらにステルス(隠蔽)化されている場合には細網系内皮細胞に貪食されることもなく、血流中に比較的長くとどまる。EPR効果により、必然的に標的の臓器、組織への造影化合物の移行性が高まり、造影剤の癌組織への選択的集中と蓄積が達成される。造影化合物の腫瘍細胞/正常細胞集積比の上昇は、X線造影剤のコントラスト性能を高める。このような腫瘍描出性の改善は、これまで検出困難であった微小転移性癌の発見すらも可能とする。
X線造影剤
本発明のX線造影剤において、リポソームによる造影物質の保持の効率は、リポソーム構造の安定化ならびに造影物質の内包安定化を通じて改善されている。
本発明の造影剤は、好ましくは上記リポソームの膜内部の水相とそのリポソームが分散されている水性媒体との両方に、少なくともヨウド系化合物および製剤助剤を含有し、該膜内外でそれぞれの濃度が実質的に同一である。ここで「実質的に」とは、通常の場合、ほとんど濃度が同一であることをいう。
「製剤助剤」とは、製剤化に際し、造影物質とともに添加されるものであり、これまでの造影剤製造技術に基づいて各種の物質が使用される。具体的には生理学的に許容される各種の緩衝剤、EDTANa2−Ca、EDTANa2などのキレート化剤、さらに必要に応じて、浸透圧調節剤、安定化剤、抗酸化剤としてα‐トコフェロール、アスコルビン酸、粘度調節剤などが挙げられる。好ましくは、水溶性アミン系緩衝剤およびキレート化剤をともに含める。pH緩衝剤としては、アミン系緩衝剤および炭酸塩系緩衝剤が好ましく用いられるが、さらに好ましくはアミン系緩衝剤であり、中でもトロメタモールが望ましい。キレート化剤は好ましくは、EDTANa2−Ca(エデト酸カルシウム2ナトリウム)である
また、水性媒体とは、ヨウド系化合物、製剤助剤などを溶解する水をベースとする溶媒である。
リポソームの膜内部の水相(封入された水溶液)以外の水溶液(すなわち該リポソームが分散されている水性媒体)にも少なくともヨウド系化合物の他に、製剤助剤(たとえば水溶性アミン系緩衝剤、キレート化剤など)が含まれている。したがって、該膜内外で著しい浸透圧差が生じることはなく、これによりリポソームの構造安定性が維持される。
X線造影の良好なコントラスト性能を可能とする標的臓器へのヨウ素の必要な送達量は、明らかにされている(たとえば特許2619037号公報)。本発明のようにヨウド系化合物
をリポソームというマイクロキャリヤーに封入する場合には、造影物質の送達効率および保持安定性に加えてリポソームの膜脂質の重量も考慮されねばならない。リポソームの膜脂質の重量が多くなると造影剤の粘度が大きくなる。リポソーム内へのヨウド系化合物の封入量として、リポソーム内に封入された水溶液中に、ヨウド系化合物がリポソーム膜脂質に対して、1〜10、好ましくは3〜8、より好ましくは5〜8の重量比で含有されているこ
とが望ましい。
リポソーム水相にカプセル化されたヨウド系化合物の重量比が1未満であると、比較的多量の脂質を注入することが必要となり、結果的に造影物質の送達効率が悪くなる。特許2619037号公報の記載によると、当該比が1でも当時の技術水準からは高い値とされてい
た。X線造影剤の粘度は、リポソームの脂質量にも左右されるため、保持容積および内包効率に優れる一枚膜リポソームの優位性は明らかである。反対に、リポソーム膜脂質に対するヨウド系化合物の封入重量比が10を超えると、リポソームが構造的にも不安定となり、リポソーム膜外へのヨウド系化合物の拡散、漏出は貯蔵中または生体内に注入された後でも避けられない。またリポソーム懸濁薬剤が製造され、分離した直後は100%の封入が
達成されても、浸透圧効果による不安定化に基づき、早くも短時間に封入成分が減少していくことが記載されている(特表平9−505821号公報)。
本発明の方法により製造されるX線造影剤は、ヨウド含有量として、通常、想定される10〜300mlの製剤溶液の投与量では、30〜500mgI/mlであり、好ましくは100〜500mgI/ml、より好ましくは、150〜300mgI/mlの範囲である。また本発明の製剤溶液の粘度(オスワ
ルド法で測定した場合)は、37℃で、20 mPa・s以下、好ましくは18 mPa・s以下、より好ましくは15 mPa・s以下である。
以上より、特に腫瘍描出性およびリポソームの造影物質保持性が改善されたより望ましい実施態様の一例は、
脂質膜を有するリポソームを含み、該リポソームはその脂質膜にポリアルキレンオキシド基を有する化合物(たとえばポリアルキレンオキシド修飾リン脂質)、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物を含有し、かつその脂質膜内の水相にヨウド系化合物を含有している。さらに該リポソームは平均粒径が0.05〜0.2μmである1枚膜リポソームで
あり、該ヨウド系化合物をリポソーム膜脂質に対して3〜8の重量比で含有し、かつ、リポソーム内に封入された該ヨウド系化合物がX線造影剤における全ヨウド系化合物の5〜25
質量%であることを特徴としているX線造影剤である。
本発明のX線造影剤は、投与後も含有していたリポソームが体内で必要な時間、安定的に維持されるように、体内の浸透圧に対し、等張の溶液または懸濁液の形で調製することが望ましい。そうした溶液もしくは懸濁液の媒質として、水、緩衝液、たとえばトリス−塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液などを使用することができる。
上記溶液もしくは懸濁液の好ましいpH範囲は、室温で6.5〜8.5、さらに好ましくは6.8〜7.8である。X線造影物質が多ヒドロキシル基を有する水溶性ヨウド系化合物である場合、好ましい緩衝液は、米国特許第4278654号に記載されているような負の温度係数を有
する緩衝液である。アミン系緩衝液はこのような要求を満たす性質を有しており、特に好ましくはトリス(TRIS)である。このタイプの緩衝液は、オートクレーブ温度で低いpHを有し、このことがオートクレーブ中のX線造影剤の安定性を増し、他方、室温では生理的に許容されるpHに戻る。したがって、注射用無菌造影剤を製造するために、リポソーム調製物をオートクレーブ滅菌できることは極めて便利であり、貯蔵安定性なども確保できる。しかしオートクレーブ滅菌を適用できないリポソームには、ろ過滅菌を行なうのがよい。
等張の溶液または懸濁液を得るには、等張液を提供する濃度で、造影剤を媒質中に溶解もしくは懸濁させる。たとえば造影化合物の溶解性が低いために造影化合物だけでは等張液を提供できない場合、等張の溶液もしくは懸濁液が形成されるように他の非毒性の水溶性物質、たとえば塩化ナトリウムのごとき塩類、マンニトール、グルコース、ショ糖、ソルビトールなどの糖類を媒質中に添加してもよい。
本発明のX線造影剤は、注射剤または点滴注入剤として、非経口的に、具体的には血管内投与、好ましくは静脈内投与により被験者に投与されX線照射により撮像される。その用量は、従来のヨウド系造影剤に準じる。リポソーム内のヨウド総量、またはそれとリポソーム外のヨウド総量の和が、従来の投与量と同程度になるようにしてもよい。
本発明のX線造影剤は、リポソームの膜内部の水相とそのリポソームが分散されている水性媒体との両方に、少なくともヨウド系化合物および製剤助剤を含有しており、該膜内外ではそれぞれの濃度が実質的に同一である。このことは、同一ヨウド系化合物が、同一X線造影剤中で、異なる存在形態で共存していることを意味する。このような造影物質の態様は、診断的検査において次のような有利な場合があることを指摘できる。すなわち、本発明のX線造影剤を用いることにより、カプセル化されていない造影物質とリポソーム内にカプセル化された造影物質との体内拡散時間の違いが、経時的に分布挙動の異なった画像を与えて診断上の有益な情報を提供することがある。
実際の診断的検査においては、本発明のX線造影剤を、コンピュータ断層撮影装置(CT)と組み合わせたX線撮影装置に使用することにより、その造影剤性能をさらに有効に発揮することも期待される。たとえば肝臓腫瘍をコンピュータ断層撮影(CT)診断する場合、投与直後にリポソーム内にカプセル化されていない造影物質は、肝臓類洞の間隙を自
由に通過して肝臓実質細胞に到達し、まず健康な肝臓組織の画像濃度が上昇するが、これは急速に低下する。この濃度低下は引き続いて同時に起こるリポソーム造影剤からの補強により補償されて長時間にわたり造影物質の高濃度が維持される。この遊離した非カプセル化造影物質が分布挙動に差異を示すことから、組織状態についての詳細な分析が可能となる。
本発明に係るX線造影剤は、粒径を揃えた1枚膜リポソームを含み、好ましくはその脂
質膜中にリン脂質とともに、ポリアルキレンオキシド基を有する化合物、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物を含んでいる。さらにリポソームの膜内部の水相とそのリポソームが分散されている水性媒体との両方に、ヨウド系化合物および製剤助剤を含有し、好ましくは該リポソーム膜内外でそれぞれの濃度が実質的に同一である。これらに基づいてリポソーム構造の安定性および封入物質の保持安定性が改善されている。
本発明造影剤の造影物質は血中滞留性が良好であり、EPR効果が発揮され、その結果、目的とする疾患部位または組織、とりわけ癌組織に選択的に集中し蓄積する。造影後は、該ヨウド系化合物が水溶性であるため、いずれ体外へ排泄される。さらにカプセル化されていない造影物質とリポソーム内にカプセル化された造影物質との体内拡散時間の違いが、経時的に分布挙動の異なった画像を与えて診断上の有益な情報を提供する。
上記リポソームの製造は、リン脂質などを超臨界二酸化炭素に溶解して作製する方法を採用するため、有毒な溶媒、特に毒性の高いクロル系溶媒を使用する必要がない。
本発明に係るX線造影剤は、従来のX線造影剤に比べて使用量が少量で済み、毒性、副作用がはるかに軽減されている。したがって、その投与を受ける患者の負担は少ない。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。本発明は、かかる実施例によりなんら限定されるものではない。
〔試験〕
リポソームの形態および粒径
調製した造影剤中のリポソームの粒径および構造を凍結破砕法により透過型電子顕微鏡(TEM)で調べた。すなわち、リポソーム分散液を液体窒素にて急速に凍結し、凍結状態で破砕してリポソームの内部構造を露出させる。破砕面をカーボン蒸着し、形成されたカーボン膜を透過型電子顕微鏡で観察した。
平均粒径は、観察された造影剤粒子20個の径の単純平均とした。リポソーム粒子の構造は、観察したカーボン膜に残された粒子の跡について段差がないものを「一枚膜」と判定し、2つ以上の段差が認められるものを「多層膜」と判定した。20個の粒子を観察し、一枚膜構造のものが8割以上であるものを実質的に一枚膜リポソームと判定した。
ヨウド系化合物のヨウドの定量
リポソーム分散液を等張の食塩水で透析し、透析終了後にエタノールを添加してリポソームを破壊して、吸光度の測定によりリポソーム内のヨウド系化合物量を求めた。
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)と二酸化炭素とをステンレス製オートクレーブにエタノールとともに仕込み、オートクレーブ内を60℃、300kg/cm2にして撹拌し
て、超臨界二酸化炭素中にDPPCを溶解させた。この超臨界二酸化炭素溶液を撹拌しながら、イオメプロール溶液(イオメプロール816.5mgを注射用水にて加温溶解し、これに20mM
となるようにアスコルビン酸を加えて溶解し、さらにトロメタモールを1mg加えて溶解し
た。希塩酸にてpHを生理的pHに調整した。最後に注射用水を加えて1.0mlに仕上げた
溶液)を定量ポンプで連続的に注入した。その後系内を減圧して二酸化炭素を排出し、イオメプロールを含有するリポソームの分散液を得た。
さらに得られた分散液をガラスバイアル中に入れ、121 ℃、20分間オートクレーブ滅菌し造影剤とした。
得られた造影剤中のリポソームの粒径を凍結破砕TEM法により測定した。造影剤中のリポソームの平均粒径は0.13μmであった。また同法による形態観察によると、出来上が
ったリポソームは、一枚膜のリポソームであった。
実施例1で得られた造影剤を等張グルコース液で希釈して、50mgヨウ素/mlの濃度とした。この液をラットに静脈内注射したところ、特に肝臓に集中して分布することがX線画像で観察された。また時間経過とともに肝臓中の造影レベルは、その他すべての器官造影レベルと並行して減少し、イオメプロールの大部分は尿中に排泄されたことが認められた。
実施例1で得られた造影剤を等張グルコース液で希釈して、50mgヨウ素/mlの濃度とした。この液を多数の肝癌転移を有するラットに静脈注射した。腫瘍転移部分は造影レベルが高く、直径約5mmの腫瘍が観察された。さらに腫瘍部分造影レベルの低下は、時間経過
とともにその他の器官の造影レベルより遅かった。
圧力および温度をコントロールして、平均粒径が0.07μm、0.18μm、0.22μmのリポソ
ームを作製した以外は実施例1と同様にして造影剤を作製した。
オキシエチレン単位が2000のPEGを40g添加した以外は実施例1と同様にして造影剤を作
製した。その平均粒径は0.12μmであった。
実施例4および実施例5で作製した造影剤を実施例2と同様にして評価した。実施例4で作製した造影剤は、粒子径にかかわらず注射後、特に肝臓に集中して分布することがX線画像で観察された。実施例5で作製した造影剤は、実施例4で作製した造影剤と比べて肝臓への集中が少なかった。
実施例4および5で作製した造影剤を実施例3と同様にして評価した。
平均粒径0.07μmのリポソームを含む造影剤は、腫瘍部分造影レベルが実施例3の造影
剤と比較して造影レベルの低下速度が速かった。
平均粒径0.18μmのリポソームを含む造影剤は、腫瘍部分造影レベルが実施例3の造影
剤と比較して低下したものの、造影レベルの低下速度が遅くなった。
平均粒径0.22μmのリポソームを含む造影剤は、腫瘍部分造影レベルが実施例3の造影
剤と比較して造影レベルが著しく低下した。
実施例5で作製した造影剤は、腫瘍部分造影レベルが実施例3の造影剤と比較して高く、造影レベルの低下速度が遅かった。
[比較例1]
従来のリポソーム作製方法において、リン脂質などを超臨界(もしくは亜臨界)二酸化炭素の代わりに有機溶媒に溶解して、リポソームを含む分散液を作製し、X線造影剤を調製した。出来上がったリポソームは一枚膜のリポソームではなかった。実施例3と同様にして評価した結果、腫瘍部分造影レベルが実施例3の造影剤と比較して著しく低下していた。
この結果から明らかなように、リン脂質などを超臨界二酸化炭素に溶解して作製したX線造影剤は、従来の、有機溶媒に溶解して作製したX線造影剤と比較して、癌造影性が良い。
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.04gと、アデカ社製「プルロニックF-88」(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック共重合体)1.2mg、エタノール0.9gの混合物をステンレス製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。オートクレーブ内の圧力を50kg/cm2から200kg/cm2にまで加圧し、オートクレーブ内を撹拌して、超臨界二酸化炭素中にDPPCを溶解させた。この超臨界二酸化炭素溶液を撹拌しながら、イオヘキソール溶液647mg/mL(ヨウド含有率300mg/mL)、トロメタモールを1.21mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有し、適量の塩酸および水酸化ナトリウムでpHを7前後に調整した溶液5gを定量ポンプで連続的に注入した。その後系内を減圧して二酸化炭素を排出し、イオヘキソールを含有するリポソームの分散液を得た。同じ作業を数回繰り返して得られた分散液を60℃まで加熱し、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、0.1μmで加圧濾過した。0.1μmのフィルターで加圧濾過して得られるリポソームの粒径は0.15μm以下であった。得られた造影剤を試料1とした。
上記造影剤中のリポソームの平均粒径は0.12μmであり、実質的に一枚膜のリポソーム
であった。上記試料の脂質重量に対するリポソーム内に内包されているヨウド系化合物のヨウド量の比は、5.6であった。
圧力を高圧側に調整すること、減圧速度を調整すること、使用リン脂質量を変更した以外は、実施例8と同様にして、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、0.1μmで
加圧濾過して、リポソームの分散液を得て、これを試料2とした。試料2中のリポソームは、凍結破砕法によるTEM観察で、実質的に一枚膜リポソームであった。平均粒径などの結果を表1に示す。
圧力を高圧側に調整すること、減圧速度を調整すること、使用リン脂質量を変更した以外は、実施例8と同様にして、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、0.1μmで
加圧濾過して、リポソームの分散液を得て、これを試料3とした。試料3中のリポソームは、凍結破砕法によるTEM観察で、実質的に一枚膜リポソームであった。平均粒径などの結果を表1に示す。
圧力を高圧側に調整すること、減圧速度を調整すること、使用リン脂質量を変更した以外は、実施例8と同様にして、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、0.1μmで
加圧濾過して、リポソームの分散液を得て、これを試料4とした。試料4中のリポソームは、凍結破砕法によるTEM観察で、実質的に一枚膜リポソームであった。平均粒径などの結果を表1に示す。
圧力を高圧側に調整すること、減圧速度を調整すること、使用リン脂質量を変更した以外は、実施例8と同様にして、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、0.2μmで
加圧濾過して、リポソームの分散液を得て、これを試料5とした。試料5中のリポソームは、凍結破砕法によるTEM観察で、実質的に一枚膜リポソームであった。平均粒径などの結果を表1に示す。
〔比較例2〕
超臨界(もしくは亜臨界)二酸化炭素を使用しない従来のリポソーム作製方法を用いて、リン脂質などを有機溶媒に溶解し、使用リン脂質量を変更することによりリポソームを含む分散液を作製した。これにより2種のX線造影剤(試料6および7)を調製した。出来上がったリポソームは一枚膜のリポソームではなかった。平均粒径などの結果を表1に示す。
家兎の皮下にVX2カルシノーマの細胞浮遊液を移植した。移植2週間後に、実施例8
で得た造影剤を静脈注射し、注射後にX線画像で観察した。時間経過とともに造影レベルは減少するが、移植部分については造影レベルの減少は遅かった。
同様に実施例9〜12で作製した造影剤試料2〜5および比較例2で作製した造影剤試料6、7ならびに、特許第2619037号明細書の実施例2の試料2Bを再現して作製した試料
(試料8、比較例3)についても同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
癌造影性に関する評価として、表1では次のように表示する。
◎ 移植部分の造影レベルの減少は、他の部分と比べ、明らかに遅い。
○ 移植部分の造影レベルの減少は、他の部分と比べ、多少遅い。
△ 移植部分の造影レベルの減少は、他の部分と比べ、変化が無い。
× 移植部分の造影レベルの上昇が、小さい。
Figure 2005170923
表1から明らかなように、リポソームの平均粒径が0.5μmより大きい試料8の癌造影性
は、他の試料と比較して著しく低下した。また、リン脂質などを超臨界二酸化炭素に溶解して作製した試料1〜5は、従来の、有機溶媒に溶解して作製した試料6〜8と比較して、癌造影性が良い。
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.04gと、アデカ社製プルロニックF-88
(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合体)1.2mg、エタ
ノール0.9gの混合物をステンレス製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。オートクレーブ内の圧力を50kg/cm2から200kg/cm2にまで加圧し、オートクレーブ内を撹拌して、超臨界二酸化炭素中にDPPCを溶解させた。この超臨界二酸化炭素溶液を撹拌しながら、イオヘキソール溶液647mg/mL(ヨウド含有率300mg/mL)、トロメタモールを1.21mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム(E
DTANa2−Ca)0.1mg/mLを含有し、適量の塩酸および水酸化ナトリウムでpHを7前後
に調整した溶液5gを定量ポンプで連続的に注入した。その後系内を減圧して二酸化炭素
を排出し、イオヘキソールを含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を60℃まで加熱し、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、0.1μmで加圧濾過した。得られた造影剤を試料9とした。
試料9中のリポソームについて上記試験を行った結果、その平均粒径は0.12μmであり
、実質的に一枚膜のリポソームであった。上記試料9の脂質重量に対するリポソーム内に内包されているヨウド系化合物のヨウド量の比は、5.6であった。
圧力を高圧側に調整すること、減圧速度を調整すること、セルロース系フィルター、0.1μm、0.2μmおよび0.4μmを使用したこと、使用リン脂質量を変更した以外は、上記と同様にすることによりリポソームの分散液を得て、これらを試料10〜15とした。
さらにオートクレーブにジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.04gと、コレ
ステロール0.01gおよびアデカ社製プルロニックF-88(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック共重合体)1.2mg、エタノール0.9gの混合物をステンレス製オ
ートクレーブに仕込んだ以外は、上記の試料9の場合と同様にすることにより、試料16を作製した。また、プルロニックF-88を用いない他は、試料16の場合と同様にして試料17を得た。
さらに、プルロニックF-88を用いない以外は、試料9の場合と同様にして、試料18を作製した。試料9〜18のすべてが、一枚膜のリポソームであった。
各試料中のリポソームについて、平均粒径などの測定結果を表2に示す。
Figure 2005170923
実施例14で得られた試料9〜18を生理食塩水中に添加し、密閉後に42℃に加温して3日間放置した。得られたサンプルおよび加熱前の試料を光学顕微鏡で観察した。
加熱前の試料はすべて光学顕微鏡で微粒子が観察されなかったが、加熱後は、試料18については、リポソーム粒子の合一と見られる数μmの微粒子が観察された。また試料17は
リポソーム粒子の合一と思われる微粒子がわずかに観察された。さらに4日間加温を行うと、試料9〜15もリポソーム粒子の合一と見られる微粒子がわずかに観察された。しかし、試料16については変化が認められなかった。
この結果から明らかなように、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック共重合体またはコレステロールを使用するリポソームを含有する造影剤を用いることにより、安定性の向上を可能とする。
実施例14で得られた試料9〜18を等張グルコース液で希釈して、50mgヨウ素/mlの濃度
とした。この液をラットに静脈内注射したところ、試料17および18は、特に肝臓に集中して分布することがX線画像で観察された。
この結果から明らかなように、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック共重合体を使用しないリポソームを含有する造影剤を用いることにより、肝臓の選択的な造影を可能とする。
家兎の皮下にVX2カルシノーマの細胞浮遊液を移植した。移植2週間後に、実施例14で得た試料9〜18を家兎に静脈注射し、注射後にX線画像で観察した。試料9、10、11、12、14、16を用いた場合には、試料13、15、17、18と比較して、家兎の移植部分の造影レ
ベルの減少は遅かった。
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.032g、コレステロール0.008gおよびアデカ社製プルロニックF-88(ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合体)1.2mg、エタノール0.9gの混合物をステンレス製オートクレーブに仕込み、
オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。オートクレーブ
内の圧力を50kg/cm2から200kg/cm2にまで加圧し、オートクレーブ内を撹拌して、超臨界
二酸化炭素中にDPPCを溶解させた。この超臨界二酸化炭素溶液を撹拌しながら、イオヘキソール溶液647mg/mL(ヨウド含有率300mg/mL)、トロメタモールを1.21mg/mL、エデト酸
カルシウム2ナトリウム(EDTANa2−Ca)0.1mg/mLを含有し、適量の塩酸および水酸
化ナトリウムでpHを7前後に調整した溶液5gを定量ポンプで連続的に注入した。その
後系内を減圧して二酸化炭素を排出し、イオヘキソールを含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を60℃まで加熱し、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、0.1μmで加圧濾過した。得られた造影剤を試料19とした。
上記方法により求めた試料19中のリポソームの平均粒径は0.12μmであり、実質的に一
枚膜のリポソームであった。上記試料の脂質重量に対するリポソーム内に内包されているヨウド系化合物のヨウド量の比は、3.7であり、全ヨウド系化合物のうち、リポソーム内
のヨウド系化合物の比率は、23質量%であった。
圧力を高圧側に調整すること、減圧速度を調整すること、セルロース系フィルター、0.1μm、0.2μmおよび0.4μmを使用し、使用リン脂質量を変更した以外は、試料19の場合と同様にすることによりリポソームの分散液を得て、これらを試料20〜25とした。試料20〜
25中のリポソームは、実質的に一枚膜のリポソームであった。これらの試料のリポソーム平均粒径、脂質重量に対するリポソーム内に内包されているヨウド系化合物のヨウド量の比、全ヨウド系化合物に対するリポソーム内のヨウド系化合物の比率を表3に示す。
さらにジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.024gおよびコレステロール0.006gを用いて、圧力および減圧速度を調整した以外は、試料19の場合と同様にすることにより、試料26を作製した。
また、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.048gおよびコレステロール0.012gを用いて、圧力および減圧速度を調整した以外は、試料19の場合と同様にすることに
より、試料27を作製した。
試料26および27中のリポソームは実質的に一枚膜のリポソームであった。これらの試料のリポソーム平均粒径、脂質重量に対するリポソーム内に内包されているヨウド系化合物のヨウド量の比、全ヨウド系化合物に対するリポソーム内のヨウド系化合物の比率を表3に示す。
エデト酸カルシウム2ナトリウム(EDTANa2−Ca)を使用しないこと以外は、試料19〜27の場合と同様にして試料29〜37を作製した。試料29〜37中のリポソームは実質的に一枚膜のリポソームであった。これらの試料のリポソーム平均粒径、脂質重量に対するリポソーム内に内包されているヨウド系化合物のヨウド量の比、全ヨウド系化合物に対するリポソーム内のヨウド系化合物の比率を表3に示す。これによると、エデト酸カルシウム2
ナトリウムを使用した場合とほぼ同一であった。
トロメタモールを使用しない以外は、試料19〜27の場合と同様にして試料39〜47を作製した。試料39〜47中のリポソームは実質的に一枚膜のリポソームであった。これらの試料のリポソーム平均粒径、脂質重量に対するリポソーム内に内包されているヨウド系化合物のヨウド量の比、全ヨウド系化合物に対するリポソーム内のヨウド系化合物の比率を表3に示す。これによると、トロメタモールを使用した場合とほぼ同一であった。
試料19〜27、29〜37、39〜47について、得られたリポソーム分散液を等張の食塩水で透析し、リポソームが分散されている水性媒体のヨウド系化合物と製剤助剤の濃度を、リポソーム膜内の水相の濃度より下げた試料119〜127、129〜137、139〜147を作製した。これらの試料のリポソーム平均粒径、脂質重量に対するリポソーム内に内包されているヨウド系化合物のヨウド量の比、全ヨウド系化合物に対するリポソーム内のヨウド系化合物の比率を表3に示す。
安定性評価
実施例18で得た試料を生理食塩水中に添加し、密閉後、42℃に加温して14日間放置した。得られたサンプルおよび加熱前の試料を光学顕微鏡で観察した。
加熱前の試料はすべて光学顕微鏡で微粒子が観察されなかったが、加熱後は、一部の試料については、リポソーム粒子の合一と見られる数μmの微粒子が観察された。安定性を次の基準で評価した。すなわち、
5:合一粒子なし
4:合一粒子がごく僅かにある。
3:合一粒子が明らかに観察される。
2:合一粒子が多い。
1:合一粒子が極めて多い。
結果を表3に示す。
表3から明らかなように、リポソーム内外の水溶性成分に差があるとリポソームの安定性は低下する。また0.1〜0.4μmの孔径を有する濾過膜を通した試料は、同じ粒径でも安定性が向上する。
反対に、リポソーム内外の水溶性成分に差がない場合、水溶性アミン系緩衝剤やキレート化剤が存在するとさらに安定性が向上する。
Figure 2005170923

Claims (26)

  1. 水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物を含有するリポソームを含み、しかも実質的にクロル系溶剤を含まないことを特徴とするX線造影剤。
  2. 前記リポソームが、リン脂質を超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素に混合させ、水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物を該リン脂質に接触させることにより形成されたリポソームであることを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  3. 前記リポソームが、実質的に一枚膜リポソームであることを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  4. 前記ヨウド系化合物が、2,4,6−トリヨードフェニル基を少なくとも1個有することを
    特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  5. 前記リポソームの平均粒径が、0.05〜0.5μmであることを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  6. 前記リポソームの平均粒径が、0.05〜0.2μmであることを特徴とする請求項5に記載のX線造影剤。
  7. 前記リポソームの平均粒径が、0.11〜0.13μmであることを特徴とする請求項6に記載
    のX線造影剤。
  8. 前記リポソームは、オキシエチレン単位が10〜3500のPEGを、該リポソームを構成する
    脂質に対して0.1〜30質量%含んでなるPEG化リポソームであることを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  9. 前記リポソームが、0.1〜0.4μmの孔径を有する濾過膜を通されていることを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  10. 前記リポソームが、前記ヨウド系化合物をリポソーム膜脂質に対して、1〜10の重量比で含有していることを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  11. 前記リポソームが、前記ヨウド系化合物をリポソーム膜脂質に対して、3〜8の重量比で含有していることを特徴とする請求項10に記載のX線造影剤。
  12. 前記リポソームが、前記ヨウド系化合物をリポソーム膜脂質に対して、5〜8の重量比で含有していることを特徴とする請求項11に記載のX線造影剤。
  13. 前記リポソーム内に封入された前記ヨウド系化合物が、X線造影剤における全ヨウド系化合物の5〜30質量%であることを特徴とする請求項10に記載のX線造影剤。
  14. 前記リポソームが、その脂質膜にポリアルキレンオキシド基を有する化合物、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物を含有し、かつその脂質膜内の水相に前記ヨウド系化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  15. 前記リポソームが、その脂質膜にポリアルキレンオキシド修飾リン脂質を含有し、かつその脂質膜内の水相に前記ヨウド系化合物を含有していることを特徴とする請求項1に記
    載のX線造影剤。
  16. 前記リポソームが、その脂質膜にポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合物を含有し、かつその脂質膜内の水相に前記ヨウド系化合物を含有していることを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  17. 前記リポソームが、その脂質膜内の水相と前記リポソームが分散されている水性媒体との両方に前記ヨウド系化合物および製剤助剤を含有し、該リポソーム膜内外でそれぞれの濃度が実質的に同一であることを特徴とする請求項1に記載のX線造影剤。
  18. 前記製剤助剤が、水溶性アミン系緩衝剤、キレート化剤から少なくとも1種選ばれる化合物であることを特徴とする請求項17に記載のX線造影剤。
  19. 前記水溶性アミン系緩衝剤が、トロメタモールであることを特徴とする請求項18に記載のX線造影剤。
  20. 前記キレート化剤が、EDTANa2−Caであることを特徴とする請求項18に記載のX線
    造影剤。
  21. リポソームを形成するリン脂質を超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素に混合させ、水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物をリン脂質に接触させることにより形成されたリポソームを含有するX線造影剤の製造方法。
  22. リポソームを形成するリン脂質を超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素に混合させ、水溶性かつ非イオン性のヨウド系化合物の水溶液を導入し、次いで二酸化炭素を排出してリポソームを形成することを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
  23. 前記二酸化炭素の圧力が、50〜500 kg/cm2であることを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
  24. 前記二酸化炭素の温度が、25〜200℃であることを特徴とする請求項21に記載の製造方
    法。
  25. リポソーム膜成分として、リン脂質とともにポリアルキレンオキシド修飾リン脂質、ポリアルキレンオキシド基を有する化合物、ポリエチレングリコール基を有する化合物、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物を超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化
    炭素に混合させた後、ヨウド系化合物の水溶液を導入し、二酸化炭素を排出して、ヨウド系化合物を内部に含有するリポソームを形成し、さらに該リポソームを0.1〜0.4μmの孔径を有する濾過膜を通すことを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
  26. リポソーム膜成分として、リン脂質とともにポリアルキレンオキシド修飾リン脂質、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物を超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素に混合させた後、ヨウド系化合物および製剤助剤を含む水溶液を導入し、二酸化炭素を排出して、さらに形成されたリポソームを0.1〜0.4μmの孔径を有する濾過膜を通し、最終的にヨウド系化合物および製剤助剤が該膜内外でそれぞれ実質的に同一濃度で含有されるリポソームを形成することを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
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