JP2006063008A - がん治療用リポソーム製剤およびその製造方法 - Google Patents

がん治療用リポソーム製剤およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
リポソームの構造および抗がん性化合物の保持の安定化を図り、抗がん性化合物の効率的送達を可能とする、安全性の高いがん治療用リポソーム製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
平均粒径が0.75〜0.85μmであり、脂質膜内またはその内部水相に少なくとも1種以上
の薬物を含有し、実質的に一枚膜または数枚膜からなるリポソームを含有することを特徴とするリポソーム製剤であり、特に動注化学療法などのがん局所療法に好ましく用いられる。リポソームは、超臨界二酸化炭素法により作製され、有機溶剤などの有毒な溶剤を含有しないため安全性が高い。リポソームに内包させる薬物には、抗がん性化合物、造影剤、製剤助剤、中性子捕捉療法用物質、光線力学療法用物質などが含まれる。
【選択図】なし

Description

本発明は、がん治療用リポソーム製剤およびその製造方法に関し、詳しくは超臨界二酸化炭素法を使用して脂質膜内部に抗がん性化合物などを内包させたリポソームを含むがん治療用リポソーム製剤ならびにその製造方法に関する。
がんの化学療法は、他の治療法と併用される場合であっても、有効な治療方法として期待され、抗がん剤の投与を基本とする。抗がん剤の投与は、投与形態から全身化学療法と局所注入療法とに大別される。全身化学療法は、血液のがん、あるいは血液、リンパを介して全身に転移しやすいがん、がん病巣が全身各所にある場合には好適に適用される。抗がん剤が投与されると循環血流に乗って全身に分布するが、その一部しか腫瘍に到達しない。このため、正常組織への障害といった副作用と無駄な投与が問題になることが多い。
全身化学療法に対する局所投与方法として、各種の投与方式が提案されており、いずれも抗がん剤の直接な投与効果を高め、副作用をできるだけ回避するという狙いが根底にある。このうち「動注化学療法」および「動脈塞栓療法」が特定のがんに対して施行され、治療方法の有効性を示す成果が得られている。
動脈塞栓療法は、血管造影の下にがん組織に通じる栄養血管中にカテーテルを挿入し、そのカテーテルを通して抗がん剤を先に注入することもあるが、最後は血管塞栓物質を投入して血管を塞ぐ手技である。このような血管の選択的塞栓を実施することによりがん病巣に栄養や酸素が到達しなくなり、がん細胞の壊死をもたらす。動脈は末梢血管に至るまでに枝分かれしているために、正常組織に至る血管の血行もまた途絶えて正常細胞が虚血的影響を受けたり、血管新生が活発ながん組織では「バイパス」を形成してしまうという塞栓方法の限界もある。
動注化学療法もまた、血管造影の下、栄養血管中に留置したカテーテルを通して特定のがん病巣に直接的に大量の抗がん剤を送達させる治療方法である。限局した病巣を標的とし、周囲組織への薬剤分布を最小限に抑えるという意味で局所投与法の典型である。
他方、がん組織に選択的に集積し、その周囲またはその他の部位と明瞭なコントラストで区別できる画像を提供するがん描出性に優れるX線造影剤が望まれている。上記の局所投与方法のいずれにおいても、血管造影にてがん病巣への栄養血管を同定し、カテーテルを誘導することが共通手技として含まれる。この点に着目してがん診断に特化したX線造影剤と抗がん剤とを組み合わせることにより、DDS(薬物送達系)概念を具現する選択的局所投与に好適な製剤も考えられる。最近、肝動注化学塞栓療法に対応した抗腫瘍薬含有エマルジョン型製剤が提案された(特許文献1)。粒径0.64〜0.68μmのそのエマルジョンは、腫瘍組織内に均等に分散していき、長時間滞留するとともに、造影剤も含有するために、造影により腫瘍の診断も可能であった。
抗がん剤のDDS的改良として、リポソームを利用する製剤の開発もまた進められている。すなわち生体膜類似の脂質から構成され、低い抗原性ゆえに安全性が高いとされているリポソームに抗がん剤または造影物質を内包させる手法が検討されている。例えば、水溶性のアントラサイクリン系抗腫瘍剤を内包させたリポソーム(特開平5-194191号公報)、ポルフィリンおよびその誘導体を内包させ、光と組み合わせて腫瘍の治療に用いるリポソーム(特3020372号公報)などが提案されている。これらの方法では、素材としての安
全性が高く、生体内で適度な分解性を有するリポソームを用いるにもかかわらず、製造過
程においてリポソーム膜を構成するリン脂質の溶剤として、有機溶媒、特にクロロホルム、ジクロロメタンといったクロル系溶剤を使用する。したがって、どうしても残存する溶剤の毒性があるという理由で実用化に至っていない(例えば、特許文献2参照)。
他方、脂溶性の薬剤は容易にリポソーム中に封入されるが、その封入量は他の要因にも左右されるために必ずしも多くはない。また水溶性電解質である薬剤は、その薬剤の電荷と荷電した脂質の電荷との相互作用を通じてリポソーム内部の水相に封入できるが、薬剤が水溶性の非電解質である場合には、そうした手段を採ることはできない。
特開2003-119120(特許文献3)では、リポソームを含有する化粧料、皮膚外用剤を、
超臨界二酸化炭素を用いて製造する方法が開示されており、親水性薬効成分や親油性薬効成分をリポソームに内包する皮膚外用剤の製造例が示されている。しかし、親水性薬効成分として、水溶性電解質の例は示されているが、同法により水溶性非電解質をリポソームに効率よく内包できるか不明であった。
首尾良く抗がん剤または造影物質をリポソーム内部に内包させても、時間経過とともに外部へ漏出する問題、あるいはリポソームそのものが不安定となる事態も考慮されねばならない。さらにリポソームを生体内へ投与しても、その多くが肝臓、脾臓などの網内系組織で捕捉されるため、所期の効果が得られないことも指摘されている(Cancer Res., 43,
5328(1983))。したがってリポソーム製剤または造影物質を効率よく封入して安定的に
保持でき、かつ安全性に問題のないリポソームの作製方法が望まれている。
特開平11-12160号公報 特許第2882607号公報 特開2003-119120号公報
上述の問題点を解決すべく本発明者らは鋭意研究を進めた。その結果、従来のリポソーム製剤の実用化を阻む有機溶媒の使用に対して、有機溶媒を使用せずにリポソームを作製する方法ならびにリポソーム構造の安定化および薬物の内包安定化に関する本発明を完成した。
本発明は、抗がん性化合物などをリポソーム内に封入することによりその送達効率が高いリポソーム製剤ならびにその製造方法を提供することを目的とする。本リポソーム製剤は、がんの局所化学療法に好適であり、特に動注療法に好ましく使用できる。
本発明は、平均粒径が0.75〜0.85μmであり、脂質膜内またはその内部水相に少なくとも1種以上の薬物を含有し、かつ実質的に有機溶剤を含まないリポソームを含有すること
を特徴とするリポソーム製剤である。
前記リポソームは、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する少なくとも1種の化
合物が存在する条件下で、脂質膜を構成する脂質膜成分と超臨界もしくは亜臨界状態の二酸化炭素とを混合することにより作製されることを特徴としている。
前記のポリエチレングリコール基を有する化合物は、好ましくはPEG-リン脂質であ
る。
前記脂質膜は実質的に一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームであることが望ましい。
前記薬物が抗がん性化合物であり、アドリアマイシン、ビラルビシン、ビンクリスチン、タキソール(R)、シスプラチン、マイトマイシン、5−フルオロウラシルから少なくとも1種選ばれることを特徴としている。
また前記薬物は造影物質であってもよい。
本リポソーム製剤は、がんの動注化学療法に好ましく用いられる。
前記薬物がガドリニウム化合物またはでホウ素化合物あり、中性子捕捉療法に用いられる。
また前記薬物はポルフィリンまたはその誘導体であり、がんの光線力学療法にも用いられる。
本発明の前記リポソーム製剤の製造方法は、ポリエチレングリコール基を有する少なくとも1種の化合物が存在する条件下で、脂質膜成分としてリン脂質とともに、カチオン性
脂質およびステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物、さらには必要に応じて親油
性の薬物を超臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散させた後、少なくとも1種以上の薬物を含む溶液もしくは懸濁液を導入することによりミセルを形成さ
せ、次いで水を加えて二酸化炭素を排出し、それらの薬物を内部に含有するリポソームを作製することを含む製造方法である。
前記のポリエチレングリコール基を有する化合物は、超臨界状態もしくは亜臨界状態にする二酸化炭素に対して0.01〜1質量%の割合で溶解助剤として用いられる。
[発明の具体的説明]
本発明のリポソーム製剤は、平均粒径が0.75〜0.85μmであり、脂質膜内またはその内
部水相に少なくとも1種以上の薬物を含有し、実質的に有機溶剤を含まないリポソームを
含有することを特徴としている。
「リポソーム」は、通常、脂質二重膜からなるリポソーム膜により形成される構造物である。本明細書では、リポソーム膜を「脂質膜」と言及することもある。リポソーム内に「内包」されるとは、リポソームの脂質膜と会合しているか、または脂質膜内部に閉じ込められている水相(内部水相)中に存在している状態の両方を含むものとする。
また、「薬物」とは、リポソームに内包させる薬剤物質である。脂質膜内またはその内部水相に含有される「薬物」には、抗がん性化合物、造影剤、中性子捕捉療法用物質、光線力学療法用物質、製剤助剤などが含まれる。本明細書では「抗がん性化合物」を単一物質の抗がん剤の意味で使用している。「がん」は、悪性腫瘍を指し、単に「腫瘍」ということもある。「実質的に」とは、製剤における残存有機溶媒の濃度の上限値が10μg/Lであることを意味する。
抗がん性化合物
本発明において、リポソームに内包される抗がん性化合物は、がんの化学療法に用いられている化学物質であればよく、特に限定されるものではない。そうした抗がん性化合物として、具体的には以下の化学物質が例示される:
シクロホスファミド、メルファラン、クロラムブチル、メクロレタミン、カルバジルキノン、チオテパ、ブスルファン、ニムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、ダカルバジンなどのアルキル化剤;メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、5−フルオロウラシル、フトラフール、フロクスウリジン、シタラビン、アンシタビン、ゲムシタビン、テガフール、カルモフール、UFT、ドキシフルリジンなどの代謝拮抗物質;アクチノマイシンD、ブレオマイシン、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、シネルビンA、アクラシノマイシンA、アドリアマイシン、ペプロマイ
シン、ミトキサントロン、エピルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ピラルビシンなどの抗生物質;ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセルなどの微小管作用薬;ビ
ンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、エトポシド、タキソールなどの植物成分;イリノテカン、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、ネダプラチン、メピチオスタン、タモキシフェン、ホスフェストロール、メドロキシプロゲステロンアセテート、リン酸エストラムスチン、ミトタン、ポルフィリンなど。
これらの化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また上記の例示のみに限定されるものではない。なお本明細書において、化合物は遊離形態の他に、その塩、水和物なども含めた形で言及することがある。上記抗がん性化合物のうち、好ましくはアドリアマイシン、ビラルビシン、ビンクリスチン、タキソール(R)、シスプラチン、マイトマイシン、5−フルオロウラシルから少なくとも1種選ばれる化合物が用いられる。通常、水溶性の抗がん性化合物は、脂質膜内の水相に内包され、親油性の抗がん性化合物は、脂質膜二重層中に内包されて存在すると考えられる。
本発明のリポソーム製剤では、リポソーム内における抗がん性化合物の内包総量は、そのリポソーム製剤の性質、意図する製剤の投与経路および臨床上の指標といった諸要因に基づき任意に設定することができる。リポソーム内に封入される抗がん性化合物の量は、典型的にはリポソーム製剤における全抗がん性化合物の65〜98質量%、好ましくは75〜95質量%、より好ましくは85〜90質量%である。
リポソーム
本発明のリポソーム製剤では、抗がん性化合物などをマイクロキャリヤーのリポソーム内に封入した形態で使用し、抗がん性化合物を標的として特定された臓器、組織の病巣へ直接に送達させることを狙っている。本発明のリポソームは、平均粒径が0.75〜0.85μm
であって、好ましくはその脂質膜が実質的に一枚膜もしくは数枚膜であり、保存中の経時安定性が改善されている。
本発明のリポソーム製剤は、抗がん性化合物などを内包するリポソームの粒径およびその二分子膜を適切に設計することによりターゲティング機能を実現することができる。受動的ターゲティングおよび能動的ターゲティングいずれも考慮される。前者は、リポソームの粒径、脂質組成、荷電などの調整を通じてその生体内挙動を制御することができる。リポソーム粒径を狭い範囲に揃える調整は、後述する方法に基づき容易に行なうことができる。リポソーム膜表面の設計では、リン脂質の種類と組成、共存物質を変えることにより所望の特性を付与することができる。さらに投与されたリポソームの体内移動に関して、より高度な送達選択性と集積性を可能とする能動的ターゲティングの採用もまた検討されるべきである。一例として、リポソーム膜表面にポリアルキレンオキシド高分子鎖またはポリエチレングリコール(PEG)を導入することは、標的部位までの誘導過程を制御し得るため、極めて有益である。
がん組織などに到達しなかったリポソームは、通常は正常部位には集積することなく、速やかにリポソームが分解されて体外に排泄される。このことはリポソームを設計する際にその安定性を体外排出時間との関係で適切にコントロールすることにより可能である。特に水溶性の抗がん性化合物であれば、腎臓を経由して速やかに尿中に排泄される。したがって徒に体内に留まることによる弊害、遅発性の副作用などを防止できる。
本発明のリポソーム製剤に含まれるリポソームの脂質膜成分として、一般にリン脂質および/または糖脂質が好ましく使用される。好ましい中性リン脂質として、大豆、卵黄などから得られるレシチン、リゾレシチンおよび/またはこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体を挙げることができる。
その他のリン脂質として、卵黄、大豆またはその他の動植物に由来するか、または半合成のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホス
ファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、合成により得られるホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、
ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などを挙げることができる。
本発明において使用するカチオン性脂質は、1、2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、N、N−ジオクタデシルアミドグリシルスペ
ルミン(DOGS)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−[1−(2、3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、2、3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミン−カルボキサミド)エチ
ル]−N、N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)お
よびN−[1−(2、3−ジミリスチルオキシ)プロピル]−N、N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムブロミド(DMRIE)などが挙げられる。
カチオン性リン脂質として、ホスファチジン酸とアミノアルコールとのエステル、例えばジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)もしくはジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)とヒドロキシエチレンジアミンとのエステルなどが挙げられる。これらのカチオン性脂質は全脂質量に対し0.1〜5質量%、好ましくは全脂質量に対し0.3〜3質量%、より好ましくは全脂質量に対し0.5〜2質量%の割合で含有するように添加すればよい。
これらのリン脂質は通常、単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。ただし2種以上の荷電リン脂質を使用する場合には、負電荷のリン脂質同士または正電荷のリン脂質同士で使用することが、リポソームどうしの凝集防止の観点から望ましい。中性リン脂質と荷電リン脂質を併用する場合、重量比として通常、200:1〜3:1、好ましくは100:1〜4:1、より好ましくは40:1〜5:1である。
これらのリン脂質は通常、単独で使用されるが、2種以上併用してもよい。ただし2種以上の荷電リン脂質を使用する場合には、負電荷のリン脂質同士または正電荷のリン脂質同士で使用することが、リポソームの凝集防止の観点から望ましい。中性リン脂質と荷電リン脂質を併用する場合、重量比として通常、200:1〜3:1、好ましくは100:1〜4:1、より好ましくは40:1〜5:1である。
糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステルなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4などのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができる。
リポソーム膜の構成成分として、上記脂質の他に必要に応じて他の物質を加えることもできる。例えば、膜安定化剤として作用するステロール類、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、またはラノステロールなどが挙げられる。また1−O−ステロールグルコシド,1−O−ステロールマルトシドまたは1−O−ステロールガラクトシドといったステロール誘導体もリポソームの安定化に効果があることが示されている(特開平5-245357号公報)。特にコレステロールが好ましい。
ステロール類の使用量として、リン脂質1重量部に対して0.05〜1.5重量部、好ましく
は0.2〜1重量部、より好ましくは0.3〜0.8重量部の割合が望ましい。0.05重量部より少ないと混合脂質の分散性を向上させるステロール類による安定化が発揮されず、2重量部よ
り多すぎるとリポソームの形成が阻害されるか、形成されても不安定となる。
リポソーム膜中のコレステロールは、ポリアルキレンオキシド導入用のアンカーにもなり得る。特開平09−3093号公報には、ポリオキシアルキレン鎖の先端に、種々の機能性物質を共有結合により固定化することができ、リポソーム形成用の成分として利用することができる新規なコレステロール誘導体が開示されている。
上記ステロール類の他にリポソーム膜の構成成分として、グリコール類を加えてもよい。リポソームを作製する際に、リン脂質などともにグリコール類を添加すると、リポソーム内での水溶性抗がん性化合物の保持効率が上昇する。グリコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオールなどが挙げられる。グリコール類の使用量として、脂質全質量に対して0.01〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%の割合が望ましい。
本発明では、リポソーム膜の一成分として、高分子鎖であるポリアルキレンオキシド(ポリオキシアルキレン鎖)(PAO)基または類似の基を有するリン脂質または化合物をリポソーム製剤などの意図する目的に応じて使用してもよい。ポリアルキレンオキシド基またはポリエチレングリコール(PEG)鎖をリポソーム膜表面に付けることにより、崩壊、凝集といったリポソーム自体の不安定性が解決され、保存中の経時安定性も改善される。−(CH2CH2O)n−HであらわされるPEG基のオキシエチレン単位の長さと導
入する割合を適宜変えることにより、その機能を調節することができる。PEG基として、オキシエチレン単位が10〜3500、好ましくは100〜2000のポリエチレングリコールが好
適である。ポリエチレングリコールを使用する場合の使用量は、該リポソームを構成する脂質に対して0.1〜30質量%、好ましくは1〜15質量%程度含むのがよい。リポソームのPEG化には、公知の技術を利用することができる。
公知の各種ポリアルキレンオキシド基、−(AO)n−Yをリポソーム膜表面に導入し
てもよい。ここでAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜2000、好ましくは10〜500、さらに好ましくは20〜200
の正の整数である。また、Yは、水素原子、アルキル基または機能性官能基を表す。
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(AOで表される)として、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシ−1−エチルエチレン基、オキシ−1,2−ジメチルエチレン基などが挙げられる。
nが2以上の場合、オキシアルキレン基の種類は、同一のものでも異なるものでもよい。後者の場合、ランダム状に付加していても、ブロック状に付加していてもよい。ポリアルキレンオキシド鎖に親水性を付与する場合、オキシアルキレン基としてはエチレンオキシドが単独で付加したものが好ましく、この場合、nが10以上のものが好ましい。また種類の異なるアルキレンオキシドを付加する場合、エチレンオキシドが20モル%以上、好ましくは50モル%以上付加しているのが望ましい。ポリアルキレンオキシド鎖に親油性を付与する場合には、エチレンオキシド以外のオキシアルキレン基の付加モル数を多くする。例えばポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合物を含有するリポソームは、本発明の好ましい態様である。
Yのアルキル基として、炭素数1〜5の、分岐していてもよい脂肪族炭化水素基が挙げられる。上記の機能性官能基は、ポリアルキレンオキシド鎖の先端に糖、糖タンパク質、
抗体、レクチン、細胞接着因子といった「機能性物質」を付するためのもので、例えばアミノ基、オキシカルボニルイミダゾール基、N-ヒドロキシコハク酸イミド基といった反
応性に富む官能基が挙げられる。
先端に機能性物質を結合しているポリアルキレンオキシド鎖が固定化されたリポソームは、ポリアルキレンオキシド鎖導入の効果に加えて、機能性物質の機能、例えばがん組織指向性またはがん細胞認識性といった「認識素子」としての作用が充分に発揮される。
リポソーム膜へのポリアルキレンオキシド鎖の導入は、公知の技術を利用することができる。ポリアルキレンオキシド基を有するリン脂質または化合物は、一種類を単独で使用することができ、あるいは二種以上のものを組み合わせて使用することもできる。その含有量は、リポソーム膜構成成分の合計量に対し、0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜25
モル%、より好ましくは0.1〜10モル%である。
他に添加できる化合物として、負荷電物質であるジセチルホスフェートといったリン酸ジアルキルエステルなど、正電荷を与える化合物としてステアリルアミンなどの脂肪族アミンが例示される。
本発明に用いられるリポソームは、その作製の際に粒径のサイズを適切に揃えて調整することが重要である。特許2619037号公報には、粒径3μm以上のリポソームを排除するこ
とにより、肺毛細血管におけるリポソームの不都合な滞留が回避されると記載されている。しかし、0.5〜3μmの粒径範囲のリポソームは、必ずしも自然に向腫瘍性とはならない
。抗がん性化合物を内包するリポソームを向腫瘍性とするためには、「EPR効果(Enhanced permeability and retention、透過性の亢進および滞留)」が利用されることがあ
る。固形がん組織にある新生血管壁の孔は、正常組織の毛細血管壁窓(fenestra)の孔サイズ、0.03〜0.08μm に比べて異常に大きく、概ね0.1μm 〜0.2μm の大きさの分子でも血管壁から漏れ出る。すなわちリポソームの平均粒径を0.1〜0.2μm 、特に0.11〜0.13μm の範囲に揃えることによりがん組織へ選択的にリポソーム製剤を集中させることが可能となる。このようなEPR効果を得るには、抗がん性化合物を内包するリポソーム粒子が、血中に長くとどまって、がん細胞近くの血管を何度も通過することが必要である。したがってEPR効果は、むしろ抗がん性化合物の全身化学療法またはそれに近い投与方法の場合に考慮すべき効果であろう。
これとは対照的に代表的な局所化学療法である動注化学療法にリポソーム製剤を使用する場合、リポソームの好ましい平均粒径については、上記EPR効果を期待する全身化学療法とは事情が異なってくる。抗がん性化合物を局所投与する場合、所在位置が確定された標的の病巣(ほとんどが固形がんである)に集中するように投与される。がん組織にある新生血管壁では、正常組織の微小血管壁より透過性が高い。例えば後述する動注化学療法に基づき、抗がん性化合物を内包したリポソームを、がん病巣近傍の血管までカテーテルを通して直接適用する場合、リポソームの平均粒径を通常0.5〜1.0μm、好ましくは0.7〜0.9μm、より好ましくは0.75〜0.85μm、特に好ましくは0.8μm前後に揃えることが望ましい。このような平均粒径にあるリポソームは、カテーテルから透過性が増した栄養動脈中に放出されても、がん組織に通じるその血管の壁孔から漏れずに、直接、標的のがん組織へ到達する。したがって上記EPR効果の場合のように体内の血液循環に乗せる必要はなく、導入用カテーテルをがん病巣に最接近させて動脈血管に集中的に投入させればよく、これにより高濃度の腫瘍内蓄積が達成される。
リポソームの製造方法
リポソームを作製する方法として、これまで種々の方法が提案されている。作製方法が異なると、最終的に出来上がったリポソームの形態および特性もまた著しく異なることが多い(特開平6-80560号公報)。そのため所望するリポソームの形態、特性に応じて製造
方法を適宜選択することが行なわれている。一般にリポソームは、リン脂質、ステロールといった脂質膜成分を、ほとんど例外なくまず有機溶媒、例えばクロロホルム、ジクロロメタン、エチルエーテル、四塩化炭素、酢酸エチル、ジオキサン、THFなどとともに容器
中で混合、溶解することから始めて調製される。特にクロル系溶媒がよく用いられている。このようなリポソームの調製品は、必ず有機溶媒を含んでいる。残存するこれらの有機溶媒を除去するために、多段階の工程および長時間の処理を要しているのが現状である。そうした残留する有機溶媒、特にクロル系有機溶媒については、生体に及ぼす悪影響、例えば副作用が懸念される。
本発明のリポソームの製造方法は、ポリエチレングリコール基を有する少なくとも1種
の化合物が存在する条件下で、脂質膜成分としてリン脂質とともに、カチオン性脂質およびステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物、ならびに必要に応じて親油性の薬物
を超臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散させた後、少なくとも1種以上の薬物の溶液または懸濁液を導入することによりミセルを形成させ、次いで水を
加えて二酸化炭素を排出して、抗がん性化合物を内部に含有するリポソームを作製することを含むことを特徴としている。前記の薬物の溶液または懸濁液には、好ましくは製剤助剤が含まれている。
本発明による製造方法では、有機溶媒、特にクロル系有機溶媒を使用せずに上記リポソームを作製するため、超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用するリポソーム調製法を用いる。二酸化炭素の臨界温度が31.1℃、臨界圧力が75.3 kg/cm2と比較的扱い
やすく、不活性なガスゆえ残存しても人体に無害であり、高純度流体が安価で容易に入手できるなどの理由により好適である。この方法により作製されたリポソームは、後記するように抗がん性化合物を内包するのに種々の好ましい特性および利点を有している。
超臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素を使用してリポソームを作製する場合、上記脂質膜成分を、超臨界状態(亜臨界状態を含む)にある二酸化炭素に溶解、分散または混合することが必要となる。その際、内包させる薬物のうち、水難溶性の抗がん性化合物、光線力学療法用薬物、親油性造影剤などは脂質膜成分とともに超臨界二酸化炭素に混合させるのがよい。
さらに溶解助剤(または助溶媒)としてヒドロキシル基を有する少なくとも1種の化合
物の存在下で溶解、分散または混合をすることが好ましい。実際に溶解助剤として使用できるヒドロキシル基含有化合物として、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール基を有する化合物、グリコール、グリコールエーテル(ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル類も含む)、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合物、グリコール以外の多価アルコールまたは低級アルコールから少なくとも1
つ選ばれる化合物である。リン脂質、コレステロールなどといった脂質膜成分と親和性を示し、これらと容易に混合するものが望ましい。さらに、脂質膜成分を極性の液体二酸化炭素中に良好に分散させ、溶解させるためには、適度の親水性と疎水性を兼ね備えた両親媒性のものが好適である。
上記のヒドロキシル基を有する化合物にあって、さらに残存する溶解助剤の毒性をも懸念する場合には、安全性の観点から、低級アルコールなどを用いないことが望ましい。したがって効力および安全性を考慮してより好ましい溶解助剤は、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール基を有する化合物である。特にポリエチレングリコール基を有する脂質、例えばポリエチレングリコール基を有するリン脂質(PEG-リン脂質)
が好適である。そのオキシエチレン単位が10〜3500、好ましくは100〜2000のポリエチレ
ングリコールが適する。
このような溶解助剤を1種または2種以上併用することは、超臨界二酸化炭素中への上記脂質膜成分の溶解性が一層向上し、溶解もしくは分散が加速するために望ましい。ヒドロキシル基を有する化合物を、超臨界状態もしくは亜臨界状態にする二酸化炭素の0.01〜1
質量%、好ましくは、0.1〜0.8質量%の割合で溶解助剤として使用するのがよい。
本発明の製造方法で使用する超臨界状態(亜臨界状態を含む)の二酸化炭素の温度は、通常25〜200℃、好ましくは31〜100℃、さらに好ましくは35〜80℃である。好適な圧力は、通常50〜500 kg/cm2、好ましくは100〜400 kg/cm2、特に好ましくは90〜150 kg/cm2
範囲である。
本発明のリポソーム製剤などに使用するリポソームの作製方法は、具体的には以下のようにして行なわれる。圧力容器に液体二酸化炭素を加え、上記の好適な圧力および温度のもとにある超臨界状態もしくは亜臨界状態にする。超臨界(もしくは亜臨界)状態の二酸化炭素にリポソームの膜脂質成分としてリン脂質および脂質膜安定化物質、さらには水難溶性の薬物を溶解または分散させる。膜脂質成分としてカチオン性リン脂質、ポリアルキレンオキシド基を有する化合物(例えばポリアルキレンオキシド修飾リン脂質)、ポリエチレングリコール基を有する化合物、ステロール類、グリコール類から少なくとも1種選
ばれた化合物を上記リン脂質とともに混合して溶解、分散させる。あるいは予めこれらの化合物を加えた圧力容器に液体二酸化炭素を加え、次いで温度、圧力を調整して超臨界状態にして混合してもよい。引き続き生成したリン脂質および脂質膜安定化物質などを含有する超臨界二酸化炭素中に、内包させる薬物の中で水溶性の抗がん性化合物、水溶性ヨウド系造影剤、中性子捕捉療法用薬物、必要に応じて前記製剤助剤を含む水溶液を導入することによりミセルを形成させる。なお、添加する側と加えられる側を逆にしてもよい。充分に混合した後に、系内に水を加えて減圧し二酸化炭素を排出すると、抗がん性化合物などを内包するリポソームが分散している水性分散液が生成する。この場合、該リポソーム膜内外の水相に抗がん性化合物が含まれていてもよい。リポソーム内部にも上記水溶液が封入されているため、抗がん性化合物はリポソームの外部水相(水性媒体)のほか、主としてリポソーム内部の水相に存在し、いわゆる「内包」の状態にある。さらに該リポソームを0.1〜1.0μm、好ましくは0.5〜1.0μmの孔径を有する濾過膜を通す。リポソームは、限外ろ過、遠心分離、ゲルクロマトグラフィー、透析などの常套技術により分離することができる。その後、調製物は保存のため凍結乾燥に付してもよい。このような乾燥製剤は使用直前に水性媒体中に再懸濁して分散液とする。再構成後のリポソームの浸透圧モル濃度は、典型的には250〜500 mosmol/L、好ましくは290〜350 mosmol/Lである。
超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用するリポソーム調製法は、従来法に比べてリポソームの生成率、封入する薬物の内包率、内包薬物のリポソーム内の保持率が高いことが示されている(上記特許文献3参照)。さらに工業的スケールでの応用も可能である。実質的に有機溶媒を使用せずに薬物を効率よくリポソームに封入することができる本法は、本発明のリポソーム製剤などの製造には有用な方法である。
リポソーム製剤
本発明のリポソーム製剤の好ましい態様は、リポソームの脂質膜内部の水相およびリポソームを懸濁する水性媒体中に製剤助剤を含有している。この「製剤助剤」とは、リポソームの製剤化に際し、抗がん性化合物などとともに添加される物質であり、これまでの抗がん剤およびリポソーム製剤の製造技術に基づいて各種の物質が必要に応じて使用される。具体的には生理学的に許容される各種の緩衝剤、EDTANa2−Ca、EDTANa2などといったエデト酸系のキレート化剤、薬理的活性物質(例えば血管拡張剤、凝固抑制剤など)、さらには浸透圧調節剤、安定化剤、抗酸化剤(例えばα‐トコフェロール、アスコルビン酸)、粘度調節剤、保存剤なども挙げられる。好ましくは、水溶性アミン系緩衝剤およびキレート化剤をともに含めるのがよい。pH緩衝剤としては、アミン系緩衝剤および炭酸塩系緩衝剤が好ましく用いられるが、特に好ましくはアミン系緩衝剤であり、中でも
トロメタモールが望ましい。キレート化剤は好ましくは、EDTANa2−Ca(エデト酸カ
ルシウム2ナトリウム)である。
また、「水性媒体」とは、抗がん性化合物、製剤助剤などを溶解もしくは懸濁する水をベースとする溶媒である。その水は、滅菌した発熱物質を含まない水を使用する。リポソームの脂質膜内部の水相(脂質膜により封入された水溶液)以外の水溶液(すなわち該リポソームを懸濁する水性媒体)にも製剤助剤(例えば水溶性アミン系緩衝剤、キレート化剤など)が含まれている場合には、該膜内外で著しい浸透圧差が生じることはなく、これによりリポソームの構造安定性が保たれる。貯蔵中にあっても抗がん性化合物などを内包したリポソームの浸透圧効果による不安定化を防止でき、リポソーム内における薬物の保持安定性は向上する。
本発明のリポソーム製剤に含有されるリポソームは、実質的に一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームであることが望ましい。一枚膜のリポソームとは、リン脂質二重層が一層としてなる膜(unilamellar vesicle)で構成されるリポソームである。凍結かつ断(Freeze fracture )レプリカ法による透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において、
レプリカが概ね1つの層として認められるリン脂質二重層によりリポソームが構成されて
いるものを一枚膜リポソームという。すなわち、観察したカーボン膜に残された粒子の跡について段差がないものが一枚膜と判定され、2つ以上の段差が認められるものは「多重層膜」と判定される。2枚もしくは3枚の膜で構成されるリポソームは、一枚膜リポソームより強度が増している。「実質的に」とは、本発明のリポソーム製剤などにおいて、このような一枚膜のリポソームまたは数枚膜で構成されるリポソームを、リポソーム製剤中に含まれる全リポソームのうち、少なくとも80%、好ましくは90%以上含むことを意味する。
上記の一枚膜リポソームまたは数枚膜からなるリポソームは、脂質類の溶媒として前記超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用し、水による相分離方法により効率よく作製できる。これに対して従来のリポソーム作製方法によると、様々なサイズ、形態の多重層膜(multilamellar vesicles; MLV)からなるリポソームがかなりの割合で存在することが多い。一枚膜または数枚膜のリポソームの比率を高めるためには、さらに超音波を照射するか、一定孔サイズのフィルターに何度も通すなどの操作を必要としていた。一枚膜または数枚膜のリポソームは、MLVと比較して、リポソームの投与量、換言すると投与脂質量が大きくならないという利点もある。
リポソーム膜の脂質膜枚数が少ないリポソーム、特に粒径の大きい一枚膜リポソームであるLUV(Large unilamellar veislcles)は、多重層膜リポソームに比べて、大きい
封入容量を提供するという利点がある。本発明のリポソーム製剤に好ましく使用されるリポソームは、保持容積がSUVより大きくなり、水溶性抗がん性化合物のトラップ効率、換言すると内包効率も優れている。反面、抗がん性化合物の内包効率が良好な一枚膜または数枚膜のリポソームでも、内包する抗がん性化合物の重量が相対的に多過ぎるとリポソームの安定性は低下する。特にイオン強度の急激な変化には脆弱である傾向が観察されていた。本発明のリポソーム製剤のリポソームは、比較的狭い粒径分布で平均粒径が0.75〜0.85μmとなるように調整されている。さらにリポソーム膜にポリアルキレンオキシド基
を有する化合物(例えばリン脂質)、ステロール類、グリコールから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有させて、脂質膜の安定化を図っている。その結果、そうしたリポソームは、塩ショックに対しても安定的であることが判明した。
本発明のリポソーム製剤において、微細粒子としてのリポソームのサイズとその分布の調整は、高いターゲティング性、送達効率と密接に関わっている。粒径(粒子径)は抗がん性化合物を内包するリポソームを含む分散液を凍結し、その後破砕した界面をカーボン
蒸着し、このカーボンを電子顕微鏡で観察すること(凍結破砕TEM法)により測定することができる。ここで「平均粒径」とは、観察されたリポソーム粒子の一定の個数、例えば20個の径の単純平均を指している。これは粒径分布で最も出現頻度の高い粒径を言う「中心粒径」と、通常一致するか、または概ね近似している。粒径の調整は、処方またはプロセス条件を変更することにより行なうことができる。例えば、上記の超臨界状態の圧力を大きくすると形成されるリポソーム粒径は小さくなる。作製するリポソームの粒径分布をより狭い範囲に揃えるには、ポリカーボネート膜、セルロース系の膜などで濾過してもよい。例えば濾過膜として0.1〜1μm範囲の孔径を有する各種のフィルターを使用してエ
クストルーダーに通すことにより、平均粒径として0.75〜0.85μmのリポソームを効率よ
く調製することができる。押出しろ過法については、例えばBiochim. Biophys.Acta 557
巻,9ページ(1979)に記載されている。このような「押出し」操作を取り入れることにより、上記サイジングに加えて、リポソーム外に存在する抗がん性化合物の濃度の調整、リポソーム分散液の交換、望ましくない物質の除去も併せて可能になるという利点もある。
本発明のリポソーム製剤のように抗がん性化合物などの薬物をリポソームというマイクロキャリヤーに封入する場合には、抗がん性化合物などの送達効率および保持安定性に加えてリポソームの膜脂質の重量も考慮されねばならない。リポソームの膜脂質の重量が多くなると製剤の粘度が大きくなる。リポソーム内への薬物の封入量として、リポソーム内に封入された水溶液中に、全薬物がリポソーム膜脂質に対して、1〜8、好ましくは3〜8、より好ましくは5〜8の重量比で含有されていることが望ましい。
リポソーム内に内包された全薬物の重量比が1未満であると、比較的多量の脂質を注入することが必要となり、製剤の粘度は増大し、結果的に薬物の送達効率が悪くなる。一枚膜もしくは数枚膜のリポソームは、保持容積および内包効率に優れるため有利である。反対に、リポソーム膜脂質に対する全薬物の封入重量比が8を超えると、リポソームは構造的にも不安定となり、リポソーム膜外への薬物の拡散、漏出は、貯蔵中または生体内に注入された後でも避けられない。またリポソーム懸濁薬剤が製造され、分離した直後は100
%の封入が達成されても、浸透圧効果による不安定化に基づき、早くも短時間に封入成分が減少していくことが記載されている(特表平9−505821号公報)。
がん治療へのリポソーム製剤の利用
本発明のリポソーム製剤は、注射剤または点滴注入剤として、非経口的に、具体的には患者の血管内に投与される。比較的高濃度の抗がん性化合物を大量に短時間で投与する必要がある場合、このようなボーラス注入を可能とする要件は、製剤の流動性と低い粘度である。注入抵抗を少なくして患者の苦痛を軽減し、血管外漏出の危険を回避するため、本発明のリポソーム分散液の粘度(オストワルド法で測定した場合)は、37℃で、20 mPa・s以下、好ましくは18 mPa・s以下、より好ましくは15 mPa・s以下である。
投与するリポソーム製剤のオスモル濃度が高いと、心臓・循環系の負担が大きい。血液と等張の分散液を得るには、等張液を提供する濃度で、抗がん性化合物を媒質中に溶解もしくは懸濁させる。例えば抗がん性化合物などの溶解性が低いために抗がん性化合物などだけでは等張液を提供できない場合、等張の溶液もしくは懸濁液が形成されるように他の非毒性の水溶性物質、例えば塩化ナトリウムのごとき塩類、マンニトール、グルコース、ショ糖、ソルビトールなどの糖類を媒質中に添加してもよい。
抗がん剤の至適投与量は、がんの種類、部位、症状、患者側の条件などを勘案して個々に設定するのが通例である。リポソーム内の抗がん性化合物量が、従来の投与量と同程度になるようにしてもよい。余りに高濃度の溶液とすると、リポソーム同士の凝集、粘度の増大という不都合な事態を考慮されねばならない。
本発明のリポソーム製剤は、がんの局所化学療法、特に動注化学療法において、あるい
は光線力学療法、中性子捕捉療法において好ましく使用される。以下、本発明を実施するための最良の態様を説明する。
動注化学療法を実施するにあたり、血管造影によりがん病巣へ通じる動脈を同定する。動脈が途中で分枝していることも多いため、血管造影の下になるべくがん病巣に近傍までカテーテルを到達させる。複数の栄養血管がある場合には、可能な限り好適な血管を選択する(選択的動注化学療法)。がんの栄養血管内にマイクロカテーテルを挿入し、このカテーテルを通して直接高濃度のリポソーム製剤を短時間で投入する。手術、放射線治療との併用の場合には、ワンショット動注療法が採られる。これに対して、リザーバー、動注ポンプなどの動注用器具を使用して、リポソーム製剤を少量ずつ間欠的に計画的に投与する「経皮的カテーテル留置動注療法」も施行されている。
このような動注化学療法は、転移が少ない限局性のがん組織に対して好適であり、例えば脳腫瘍、頭頸部がん、肺がん、乳がん、肝がん、子宮頸がん、膀胱がんなどの固形がんに好ましく施行されている。
特に肝臓がんなどの場合、もう一つの血管内治療法である動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization)を併用することによりその治療法の有効性を高めることもある
。カテーテルを通してリポソーム、例えば抗がん剤含有リポソーム製剤と腫瘍親和性のよい油性造影剤のリピオドールとを混ぜた薬剤を注入した後、血管塞栓物質の「スポンゼル」(2週間ほど経過すると溶解するゼラチンスポンジ)を投与して、その栄養血管を塞いで、がん組織を阻血、壊死させる。
このような動注化学療法によれば、本発明のリポソーム製剤は、がん病巣の近くでカテーテルを通じてがん組織を栄養する血管中に放出されるため、そのがん病巣に到達するまでの途中で、血管壁からの漏出、希釈の影響、細網系内皮細胞による捕獲などを受けることなく、がん病巣に直接到達する。好ましい態様として、リポソームの脂質膜は上記の通りPEG化されていてもよいが、平均粒径が0.75〜0.85μm前後であることが望ましい。
さらに実質的に一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームであれば、その封入容量が大きく水溶性抗がん性化合物を大量に内包できるため、少ないリポソーム数の投与ですむ。
上記局所投与方法のいずれも、血管造影にてがん病巣への栄養血管を同定し、カテーテルを誘導することが共通手技として含まれる。したがって、本発明のリポソーム製剤として、血管造影およびがん組織の造影に使用する造影剤をリポソームに内包させることは、上記動注化学療法の施行には好都合である。DDS概念を具現する剤形として、具体的にはがん診断に特化したX線造影剤と抗がん性化合物とを組み合わせた製剤が考えられる。最近、肝動注化学塞栓療法に好適な抗腫瘍薬含有エマルジョン型製剤が提案された(特許文献1)。このエマルジョン製剤は造影剤も含有するために、造影により腫瘍の診断も可能であった。粒径0.64〜0.68μmのエマルジョンは、腫瘍組織内に均等に分散していき、長時間滞留すると記載されているが、透過性が高まった腫瘍栄養血管壁からのエマルジョン漏失については不明である。
本発明のリポソーム製剤に好適な造影剤として、水溶性の非イオン性ヨウド系化合物、油性造影剤といったX線検査用造影剤が挙げられる。これらの造影剤はリポソームに別個にまたは一緒に、上記抗がん性化合物とともにリポソームに内包させてもよい。水溶性ヨウド系化合物はもちろん、腫瘍親和性があるリピオドールでも、平均粒径0.8μmのリポ
ソームに内包させることによりがん病巣への送達がさらに向上する。好ましいヨウド系化合物として、イオメプロール、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオキシラン、イオタスル、イオトロランまたはイオジキサノールが例示される。また油性造影剤として、ヨウド化ケシ油脂肪酸エチルエステルが挙げられる。
抗がん性化合物と造影剤とを内包させたリポソーム製剤を、がん病巣の栄養血管内に留置したカテーテルを通じて注入することにより、目標とするがん病巣の造影およびがん治療が可能となる。本発明のリポソーム製剤を患者に投与した後、リポソーム内に内包させた造影剤によりがん病巣の描出がなされれば、同じくリポソームに内包されていた抗がん性化合物もまたそのがん病巣に到達して存在することが考えられ、それによる治療効果が期待される。
リポソームに内包させた薬物が光増感性物質である場合には、光線力学療法(Photodynamic therapy;PDT)が好ましく用いられる。その場合、リポソームを含有する製剤を患
者に静注投与した後、そのリポソームが集積した患部に、レーザー光線を照射することにより励起した光増感性物質が発生するフリーラジカル、活性酸素が、がん細胞を殺傷する作用を利用するものである。ポルフィリン系のPDT用光増感物質として、ポルフィリン、ヘマトポルフィリンIX、フォトフリンII、verteporfin、purlytin、lutetium texaphyrinなどが挙げられる(特許3020372号)。これらをリポソームに内包させて、患者に
投与して使用する。あらかじめ患者に光増感剤を含むリポソーム製剤を静注し、がん組織と正常組織における薬物濃度差が最大となる48〜72時間後に、光増感剤の励起波長と一致する波長のレーザー光を照射する。PDTで使用するレーザーは、レーザーメスのほぼ1
/100と低出力なうえ、光増感物質は、がん組織に多く集積するため正常組織への障害を
最小限に抑え、がん病巣のみを選択的に壊死させることができる。
抗がん性化合物などの薬物をリポソームに内包する技術は、患部へ薬物を適切に送達することにより無駄な投与を減らすことの他に、遊離状態で存在する薬物と比較してその副作用を大きく低減させるという利点も大きい。しかしながら、今のところ薬物をリポソームに内包させた結果、その薬効が向上したという例はむしろ稀である。これはEPR効果に基づきリポソームががん細胞近傍に蓄積したとしても、そのリポソームから直ちに抗がん性化合物などが外部に放出されないことが多いためである。この点、本発明のリポソームは、その脂質膜が、実質的に一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームであるため、多層膜リポソームと比べて内包された抗がん性化合物が放出されやすい。薬剤のリポソームからの放出をコントロールする技術として、pH、温度変化などに反応してリポソームの構造に変化を起こさせる技術が研究されている。いくつかの成果は公表されており、これを利用することもできる。
また転移温度を有するリン脂質を含むリポソームとがん温熱療法との組み合わせも可能である。身体の外から加温する場合、マイクロ波や電磁波を用いる局所温熱療法が主に行われる。あるいは食道、直腸、子宮、胆管といった管腔内に器具を入れて加温する方法や、がん組織の中に数本の電極針を刺し入れて加温する方法もまた施行される。いずれの場合にも、転移温度を有するリン脂質を含み、一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームでは、リポソーム膜の構造が変化して、内包された薬物がリポソーム外に放出されやすくなる。
がん細胞近傍に到達したリポソームが内包している薬物をリポソーム外に放出しなくとも、別の機構によりがん細胞殺傷作用を発揮させることができたら、その目的は達成される。このことを可能とする技術の一つが、「中性子捕捉療法(Neutron capture therapy
)」である。リポソームに内包させる化合物は、ホウ素化合物またはガドリニウム化合物が好ましい。正常組織よりもがん組織に集合しやすいホウ素化合物は、熱中性子を照射されると核反応10B(n,α)7Liを起こす。その結果、α粒子を放出し、そのα粒子が近
傍のがん細胞を殺傷する。周知のようにα線は極短飛程であっても、著しいがん細胞殺傷作用を発揮し、従来より放射線治療法に利用されている。向腫瘍性のホウ素化合物として、ボロカプテイト(BSH)、パラボロノフェニルアラニン(BPA)が例示される。
ガドリニウム化合物の場合には、長飛程のγ線を放出し、この放射線ががん細胞殺傷作用を発揮する。向腫瘍性がホウ素化合物より劣るガドリニウム化合物でも、上記動注化学療法のように患部近傍まで近づけたカテーテルを通して栄養血管内に放出されれば、同様にその効果が期待できるであろう。がん細胞の殺傷に必要な腫瘍内ガドリニウム濃度は、150μgGd/g湿組織と推定されている。本発明のリポソーム製剤と動注投与法とを組み
合わせることにより必要濃度に到達可能と考えられる。ガドリニウム化合物のうち、ガドリペテト酸は、MRI(Magnetic resonance imaging)造影剤として唯一実用化されている水溶性キレート物質である。このようなガドリニウム化合物を内包させたリポソームの製剤を中性子捕捉療法に利用する場合、MRI造影との併用も想定される。目下、有効ながんの種類、必要な投与量、照射方法などの基礎的データが集積されている。
[発明の効果]
本発明のがん治療用リポソーム製剤は、抗がん性化合物などをリポソームに担持させ、リポソームの平均粒径を0.75〜0.85μmに揃えることにより、がん病巣への直接的な送達
を増強している。したがって局所投与化学療法、特に動注化学療法に好適である。
本発明のがん治療用リポソーム製剤などは、抗がん性化合物などの一層の低用量化を可能とし、従来のリポソーム製剤のように、実質的に有機溶剤、特にクロル系有機溶媒を含まない。これにより被検者の負担が一層軽減される。
[実施例]
以下、本発明を具体な例を示してさらに詳細に説明する。以下の実施例中で用いる装置名、示された使用材料、その濃度、使用量、処理時間、処理温度等の数値的条件、処理方法などはこの発明の範囲内の好適例にすぎない。
リポソームの粒径
粒径(粒子径)は、抗がん性化合物などを内包するリポソームを含む分散液を液体窒素にて急速に凍結し、その後破砕した界面をカーボン蒸着し、形成されたこのカーボンを透過型電子顕微鏡で観察すること(凍結破砕TEM法)により測定した。
粒径は、観察されたリポソーム粒子、20個の径の単純平均とした。
リポソーム製剤の作成
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)86mgと、コレステロール38.4mg、PEG−リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE-020CN)19.2mgの混合物をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。撹拌を行いながら、50kg/cm2であったオートクレーブ内の圧力を、オ
ートクレーブ内の体積を減ずることにより、120kg/cm2にまで上げて、二酸化炭素を超臨
界状態にし、撹拌しながら脂質類を分散・溶解させた。さらに撹拌しながら、アドリアマイシン45mg、造影剤溶液(日局イオパミドール溶液306.2mg/mL(ヨウド含有量150mg/mL)、トロメタモールを1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム(EDTANa2−Ca)0.1mg/mLを含有し、適量の塩酸および水酸化ナトリウムでpHを7前後に調整)5mLを定量ポ
ンプで連続的に50分間かけて注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、抗がん性化合物および造影物質を含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を60℃まで加熱し、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、1.0μmで加圧濾過した。得られた試料をスペクトラプロ社製、バイオテックRC透析チューブに封入し、多量の生理食塩水(9.0×10-1wt%、1000g)中に浸して透析を行い、リポソーム内に取り込めなかった造影剤などを除去した。得られたリポソーム含有造影剤を試料1とした。
生理食塩水中の造影剤の濃度は、1.0×10-4 mg/mL以下であった。透過型電子顕微鏡(
TEM)により、観察したところリポソーム周辺に結晶などは見られなかった。また観察されたリポソーム粒子の粒径は、0.75〜0.85μmであった。
DPPC、コレステロールのほかに、さらに表1に示す量のエタノールまたはPEG−リン
脂質を添加して試料1と同様にして作製したリポソームの試料をそれぞれ、試料2〜7と
した。
これらの試料1〜7の内包率(リポソーム内に内包されているイオパミドールの全ヨウド化合物量に対する割合)を測定した(表1)。
Figure 2006063008

Claims (11)

  1. 平均粒径が0.75〜0.85μmであり、脂質膜内またはその内部水相に少なくとも1種以上
    の薬物を含有し、かつ実質的に有機溶剤を含まないリポソームを含有することを特徴とするリポソーム製剤。
  2. 前記リポソームは、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する少なくとも1種の化
    合物が存在する条件下で、脂質膜を構成する脂質膜成分と超臨界もしくは亜臨界状態の二酸化炭素とを混合することにより作製されることを特徴とする請求項1に記載のリポソーム製剤。
  3. 前記のポリエチレングリコール基を有する化合物が、PEG-リン脂質であることを特
    徴とする請求項2に記載のリポソーム製剤。
  4. 前記脂質膜が、実質的に一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリポソーム製剤。
  5. 前記薬物が抗がん性化合物であり、アドリアマイシン、ビラルビシン、ビンクリスチン、タキソール(R)、シスプラチン、マイトマイシン、5−フルオロウラシルから少なくとも1種選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリポソーム製剤。
  6. 前記薬物が造影物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリポソーム製剤。
  7. がんの動注化学療法に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のリポソーム製剤。
  8. 前記薬物がガドリニウム化合物またはホウ素化合物であり、中性子捕捉療法に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリポソーム製剤。
  9. 前記薬物がポルフィリンまたはその誘導体であり、がんの光線力学療法に用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のリポソーム製剤。
  10. ポリエチレングリコール基を有する少なくとも1種の化合物が存在する条件下で、脂質
    膜成分としてリン脂質とともに、カチオン性脂質およびステロール類から少なくとも1種
    選ばれる化合物、さらには必要に応じて親油性の薬物を超臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散させた後、少なくとも1種以上の薬物を含む溶液もしくは
    懸濁液を導入することによりミセルを形成させ、次いで水を加えて二酸化炭素を排出し、それらの薬物を内部に含有するリポソームを作製することを含む請求項1〜9のいずれかに記載のリポソーム製剤の製造方法。
  11. 前記のポリエチレングリコール基を有する化合物を、超臨界状態もしくは亜臨界状態にする二酸化炭素に対して0.01〜1質量%の割合で溶解助剤として用いることを特徴とする
    請求項10に記載のリポソーム製剤の製造方法。
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