JP2007262026A - リポソームの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便な方法によって水溶性薬剤を効率よく内包したリポソームを作製する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、以下の工程を含むリポソームの製造方法である:(i)リポソー
ム膜成分物質と水性溶液とを、リポソーム膜成分物質の相転移温度以上で混合する工程、(ii)得られた混合物を、その相転移温度以上の温度のもとで、CO2ガスによる加圧ろ過
を行なう工程、によって作製される。その後、さらに平均粒径が0.05〜0.8μmのリポソ
ームに整粒する工程を含めてもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、リポソームの製造方法に関する。詳しくは空気または窒素ガスの代わりにCO2ガスを使用した押し出し法による製造方法である。
リポソームは、主にリン脂質によって形成される二分子膜(リポソーム膜)の閉鎖小胞体であり、生体膜と類似の構造や機能を有するために従来から注目されてきた材料である。リポソームは、内部に有する水相に水溶性の封入物質を、あるいは脂質二分子膜内部には油溶性の封入物質を保持するというカプセル構造を構築できることから、薬物送達システム(DDS)への応用が盛んに研究されている。
封入物質が内包されたリポソームを調製するには、従来からBangham法や逆相蒸発法(REV法)などが用いられてきた。これらの方法では、素材としての安全性が高く、生体内で適度な分解性を有するリポソームの中に封入物質を内包させるにもかかわらず、その調製過程において、リン脂質、カチオン性脂質、ステロールといった脂質膜成分を有機溶媒(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、エチルエーテル、四塩化炭素、酢酸エチル、ジオキサン、THFなど)とともに混合、溶解している。特にクロル系溶媒がよく用いられてい
る。そうした工程で得られるリポソームでは、リン脂質の溶剤として使用された有機溶媒の残留が避けられず、リポソームの特性、安定性に問題が残る(例えば、特許文献1参照)。またどうしても残存する溶剤の毒性があるという理由でほとんどが実用化に至っていないのが現状である(特許文献2)。
一方、非特許文献1には、有機溶媒の代わりに超臨界二酸化炭素を用いて、リポソームを製造する方法が開示されている。超臨界二酸化炭素による調製方法は、二酸化炭素の臨界温度が31.1℃、臨界圧力が7.38 MPa と比較的扱いやすく、不活性なガスゆえ残存し
ても人体に無害であり、高純度流体が安価で容易に入手できるなどの理由により魅力ある製造方法であると言える。しかしながら有機溶媒を使用しないとする超臨界二酸化炭素法でも、脂質類を超臨界二酸化炭素に効率よく分散させるためにエタノールなどの使用が推奨されている(非特許文献1参照)。溶解助剤を使用しないと内包率を高めることができず、またリポソームの整粒工程も煩雑となる。また、超臨界二酸化炭素法は、超高圧装置、液体化二酸化炭素を使用する点からは、必ずしも簡便な方法ではない。
有機溶媒を使用せずにリポソームを簡便に作製でき、効率よく薬物をリポソームに内包させ得る方法の開発が引き続き要請されている。封入物質の内包率が高いと、体内の目標部位に取り込まれたリポソームが少量であったとしても所望の効果を得ることができる。従来の方法では、リポソーム内に薬物を充分に内包させることができず、リポソームを大量に投与する必要があるため患者に過度の負担となる問題があった。とりわけ治療用薬剤に比べて投与量が多くなる診断用造影剤への応用を考えた場合、造影物質の内包率が高いリポソームが求められている。加えて診断または治療用のリポソーム製剤では、リポソーム粒子が限定された平均粒径およびその分布を有することも重要視される。リポソームの所望する粒径を効率よく揃える加圧型整粒器および方法が提案された(特許文献3および4)。
特許2619037号公報 特開平7-316079号公報 特開平6-238142号公報 特開平7-100347号公報 Pharm Tech Japan 19巻、5号、91〜100(2003)
本発明は上記の要請に取り組むものであり、脂質膜内に水溶性薬剤を効率よく内包したリポソーム、ならびに有機溶媒を全く使用しないその簡便な製造方法を提案する。
本発明によるリポソームの製造方法は、
リポソーム膜成分物質と水性溶液とを、リポソーム膜成分物質の相転移温度以上で混合し、得られた混合物をその相転移温度以上の温度のもとで、CO2ガスによる加圧ろ過を行
ってリポソーム粒子を作製する方法である。
前記ろ過は、孔径0.05〜1μmのろ過膜を用いて加圧ろ過をすることが望ましい。
前記のリポソーム膜成分物質には、少なくとも相転移温度を有するリン脂質が含まれていることを特徴としている。
前記相転移温度が、好ましくは22〜60℃の範囲にある。
前記水性溶液が水溶性薬剤を含有することを特徴としている。
前記水溶性薬剤が造影物質であってもよい。
また上記製造方法で得られるリポソームは本発明に含まれる。
上記リポソームを含有するリポソーム含有製剤もまた本発明に含まれる。
本発明の製造方法は、極めて簡便であるために工業的スケールでの応用も可能である。本発明の製造方法により作製されたリポソームは、毒性の高いクロル系溶剤、エタノールおよびその他の有機溶媒を全く使用せずに製造されるため、有機溶媒を実質的に含有しない(「実質的に」とは、リポソームにおける残存有機溶媒の濃度の上限値が10μg/Lであることを意味する。)。
本製造方法により作製されたリポソームは、水溶性薬剤を内包するのに好ましい特性、すなわち、リポソームの生成率および封入する薬物の内包率が高いことが示されている。したがって本発明のリポソームは、従来のリポソームに比べて毒性、副作用がはるかに軽減され、その投与を受ける患者の負担は少ない。
本発明のリポソームは、水溶性薬剤、好ましくは非イオン型ヨウド系化合物をマイクロキャリヤーであるリポソーム内に高い内包率で内包させ、しかも効率よく担持させることによってターゲティング性を付与し低用量化を可能とする。
[発明の詳細な説明]
本明細書において、リポソーム膜を「脂質膜」ということもある。リポソーム内に「内包」されるとは、リポソーム内に封入されてそのリン脂質膜と会合しているか、またはリン脂質膜内部に閉じ込められている水相(内部水相)中に存在している状態の両方を含むものとする。また「加圧ろ過」と「押し出しろ過」とはほぼ同じ意味で用いている。
リポソームの製造方法
本発明によるリポソームの製造方法において、リポソームは、
(i)リポソーム膜成分物質と水性溶液とを、リポソーム膜成分物質の相転移温度以上で
混合する工程、
(ii)得られた混合物を、その相転移温度以上の温度のもとで、CO2ガスによる加圧ろ過
を行なう工程、
によって作製される。
本製造方法においては、温度制御が可能であり、かつ耐圧製のろ過器を使用することが好ましい。さらに比較的低コストのメンブレンフィルターおよび補強的なフィルター支持体の適正な組み合わせ、ならびに強制通過させる効果的な加圧の選択・設定が望まれる。例えば本来、粗リポソームの整粒化のために開発された加圧型整粒器(特許文献3および4)を用いてもよい。
工程(i)の混合において混合乳化を促進するために、充分な時間、混合することにより
リポソームの生成効率がよくなり、水溶性薬剤の内包率がより高いリポソームを含有する水性分散液を得ることができる。撹拌手段として、特に限定されないが、マグネチックスターラー、ホモジナイザー、ホモミキサー、ウルトラミキサーなど、通常の撹拌機を使用してもよい。特に強撹拌の操作を行なう場合には、局所的過熱を軽減する意味からも下記の温度範囲を採用することが望ましい。
前記のリポソーム膜成分物質には、少なくとも相転移温度を有するリン脂質が含まれている。工程(i)の混合において「リポソーム膜成分物質の相転移温度以上」とは、そうし
たリン脂質の相転移温度であるが、22〜60℃の範囲にある。使用するリン脂質の相転移温度以上の温度であればよいが、脂質膜内に内包させる薬剤の熱安定性も考慮する必要もある。例えばリポソーム膜構成成分に相転移温度を有するリン脂質が含まれる場合、相転移温度以上であって好ましくは「相転移温度+20℃」以下、より好ましくは「相転移温度+5℃」以上であって「相転移温度+15℃」以下となるように設定してもよい。本発明の製
造方法における温度は、一般には32〜85℃に設定されるが、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜75℃である。
リン脂質の転移温度よりも高い温度に加温すると、転移温度を有するリン脂質は液晶状態となって流動性が高まり、リン脂質が水性溶液と効率良く混合分散されるとして、リポソームの調製が50〜90℃で行われていた。本発明者は、押し出しろ過時の温度を上記のようにリン脂質の転移温度付近であっても、リン脂質に過度の熱がかからないため変性することがなく、さらにCO2ガスを使う加圧ろ過の際には、リン脂質が自己組織化の態様で規
則的に配列し、リポソーム膜が生成されることを見出した。
加圧ろ過に使用するCO2は水に溶解するとカルボニルイオンを発生することが知られて
いる。そのカルボニルイオンが存在することにより、凝集する傾向にある脂質分子同士の相互作用が緩くなり、脂質分子がいったんはフリーな状態になる。そうした脂質分子は自己組織化に向い、集合構造体であるリポソームを形成すると考えられる。
したがって上記の加圧ろ過は、上記相転移温度以上の温度のもとで、CO2ガスによる加
圧ろ過による。従来は、窒素ガス、空気などが使用されているが、本発明では、CO2ガス
を使用することを特徴としている。加圧ろ過は、具体的にはCO2ガスによる加圧下で、孔
径0.05〜1μm、好ましくは、0.1〜0.5μmのろ過膜を用いてろ過をする。CO2ガスの圧力は、0.2〜4 MPa、好ましくは0.4〜2 MPaの範囲にある。ろ過膜としては、ポリカーボ
ネート系、セルロース系、ポリエステル系などのタイプを適宜使用する。加圧押し出しろ過の操作をリン脂質の転移温度以上のもとで行うと、転移温度を有するリン脂質は液晶状態となり、流動性が高まる。本発明の製造方法において、リポソームを構成する脂質膜のリン脂質類には、転移温度を有するリン脂質が少なくとも含まれているため、水溶性薬剤を封入した比較的粘度の高いリポソーム分散液であっても、フィルターの目詰まりを起こすことなく比較的粒径の揃ったリポソームを容易に作製することができる。加圧ろ過に好適な加圧整粒器(特許文献3および4)を使用すれば、歩留まりよくリポソームを形成させることができる。
従来のリポソームの作製方法では、粗リポソーム懸濁液を、加圧ろ過を含む押し出し法
によりリポソーム粒子の整粒、すなわち粒子の平均粒径を揃えて、粒径分布を調整することが行われていた(特許文献3および4)。本発明では、そうした押し出し操作においてリポソームの粒子構造を形成させる方法である。従来の整粒化を目的とする押し出し操作では、リポソーム膜の再構成が起きても内包の増加は、期待するほどでもなかった。これに対して本発明ではCO2ガスによる加圧ろ過による押し出しにより、リポソームの形成お
よび内包率を向上させている。所定の孔径を有するろ過膜を使用するために、形成されるリポソームの粒径分布の調整も併せて行われることになる。このようにしてリポソームは実質的に溶解助剤を用いない、簡易な方法により調製され、前記水性溶液が水溶性薬剤を含有し、リポソーム粒子の形成の際に水溶性薬剤などをリポソーム膜内に内包させる。
・リポソームの整粒
上記の押し出し法により生成した粗リポソーム分散液は、リポソームの水性分散液を、0.1〜1.0μmの孔径を有する複数のろ過膜を通すことにより所望の粒径の範囲に揃えるこ
とができる。このろ過膜としては、ポリカーボネート系、セルロース系などのタイプを適宜使用することができ、孔径は大きいものから小さいものへと順次小さくしていくことが好ましく、最終的には0.05〜0.4μm、好ましくは0.1〜0.4μm、さらに好ましくは0.15
〜0.2μmの範囲まで孔径を小さくしていくことが望ましい。静圧式押し出し装置に通す
ことにより、粒径分布が狭い範囲に揃ったリポソームを効率よく調製することができる。
さらに小さい平均粒径に揃えるには、0.45μmなどのフィルターでろ過する。加圧ろ過
操作は、必要であれば繰り返し実施される。この押し出しろ過法については、例えばBiochim. Biophys.Acta 557巻,9ページ(1979)に記載されている。
リポソームの粒径の調整は、処方またはプロセス条件を変更することにより行なうことができる。例えば、上記の加圧に使用される炭酸ガスの圧力を大きくすると形成されるリポソームの粒径は小さくなる。作製するリポソームの粒径分布をより狭い範囲に揃えるには、さらにポリカーボネート膜、セルロース系の膜などで加圧ろ過する。整粒のための操作は、例えばろ過膜として0.1〜1μmの孔径のフィルターを装着した静圧式押し出し装置
に通すことにより行われる。特許文献3および4には、整粒化の方法が開示されている。
各種の静圧式押し出し装置、例えば「エクストルーダ」(商品名、日油リポソーム製)、「リポナイザー」(商品名、野村マイクロサイエンス製)などを使用して、フィルターを強制的に通過させる。
次に、リポソームの作製において用いられる材料、薬剤などについて説明する。
リポソーム膜成分物質
リポソーム膜成分物質として含まれ、リポソームの脂質膜を構成する脂質膜成分には、少なくともリン脂質、糖脂質、ステロール類、グリコール類、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール基を有する脂質(例えばPEG-リン脂質)などが含まれる。本発明のリ
ポソームに含まれるリポソームの脂質膜成分として、一般にリン脂質および/または糖脂質が好ましく使用される。好ましい中性リン脂質として、大豆、卵黄などから得られるレシチン、リゾレシチンおよび/またはこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体を挙げることができる。
その他のリン脂質として、卵黄、大豆またはその他の動植物に由来するか、または半合成のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイ
ルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)などが挙げられる。
本発明のリポソームを構成する脂質膜のリン脂質類には、転移温度を有するリン脂質が少なくとも含まれていることが望ましい。リン脂質の「(相)転移温度」とは、リン脂質がとり得るゲルと液晶との両状態間の相転移を生じる温度である。その測定は、示差走査熱量計(DSC)を使用する示差熱分析による。22〜60℃の範囲にある相転移点を有するリン脂質として、ジミリストイルホスファチジルコリン(転移温度、以下同じ、23〜24℃)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(41.0〜41.5℃)、水素添加大豆レシチン(53℃)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(54℃)、ジステアロイルホスファチジルコリン(54.1〜58.0℃)などが例示される。
本発明のリポソームを構成する脂質膜の構成成分として、電荷を有する脂質を含めてもよく、アニオン性脂質として、ホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、さらにジステアロイルホスファチジン
酸(DSPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジミリストイルホスファチジン酸などといった負に荷電したリン脂質のほかに、ホスファチジン酸、ジセチルリン酸(DCP)、ジラウリルリン酸、ジミリスチルリン酸、ホスファチジルグリセロールリン酸などを
挙げることができる。
カチオン性脂質としては、例えば1、2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、N、N−ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−[1−(2、3−ジ
オレイルオキシ)プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)
、2、3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミン−カルボキサミド)エチル]−N、N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)およびN−[
1−(2、3−ジミリスチルオキシ)プロピル]−N、N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムブロミド(DMRIE)、さらにジパルミトイルホスファチジン酸
(DPPA)とヒドロキシエチレンジアミンとのエステル、またはジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)とヒドロキシエチレンジアミンとのエステルなども挙げられる。
これらのアニオン性脂質またはカチオン性脂質は、全脂質量に対し0.1〜15質量%、好
ましくは全脂質量に対し1〜10質量%、より好ましくは全脂質量に対し5〜10質量%の割合で含有するように添加すればよい。
これらのリン脂質は通常、単独で使用されるが、2種以上併用してもよい。ただし2種以上の荷電リン脂質を使用する場合には、負電荷のリン脂質同士または正電荷のリン脂質同士で使用することが、リポソームの凝集防止の観点から望ましい。
糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステルなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4などのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができる。
リポソーム膜の構成成分として、上記脂質の他に必要に応じて他の物質を加えることもできる。例えば、脂質膜安定化剤として作用するステロール類、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、またはラノステロールなど
が挙げられる。また1−O−ステロールグルコシド,1−O−ステロールマルトシドまたは1−O−ステロールガラクトシドといったステロール誘導体もリポソームの安定化に効果があることが示されている(特開平5-245357号公報)。これらの中で、特にコレステロールが好ましい。
リポソーム膜中のコレステロールは、ポリアルキレンオキシド導入用のアンカーにもなり得る。特開平09−3093号公報には、ポリオキシアルキレン鎖の先端に、種々の機能性物質を共有結合により固定化することができ、リポソーム形成用の成分として利用することができる新規なコレステロール誘導体が開示されている。
ステロール類の使用量として、リン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ステロール類のモル比が100/60〜100/90、好ましくは100/70〜100/85である。このモル比は、PEG-リ
ン脂質を除くリン脂質量を基準としている。モル比が100/60未満であると混合脂質の分散性を向上させるステロール類による安定化が充分に発揮されない。
上記ステロール類の他にリポソーム膜の構成成分として、グリコール類を加えてもよい。リポソームを作製する際に、リン脂質などともにグリコール類を添加すると、リポソーム内での水溶性ヨウド系化合物の保持効率が上昇する。グリコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオールなどが挙げられる。グリコール類の使用量として、脂質全質量に対して0.01〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%の割合が望ましい。
本発明のリポソームにおいて、水溶性薬剤を内包するリポソームの粒径およびその脂質膜を適切に設計することによりターゲティング機能を付与することができる。特に全身投与の場合には、受動的ターゲティングおよび能動的ターゲティングいずれも考慮することが望ましい。前者は、リポソームの粒径、脂質組成、荷電などの調整を通じてその生体内挙動を制御することができる。リポソーム粒径を狭い範囲に揃える調整もまた容易に行うことができる。リポソーム膜表面の設計では、リン脂質の種類と組成、共存物質を変えることにより所望の特性を付与することができる。さらに投与されたリポソームの体内移動と分布に関して、より高度な送達選択性と集積性を可能とする能動的ターゲティングの採用もまた検討されるべきである。一例として、リポソーム膜表面にポリアルキレンオキシド高分子鎖またはポリエチレングリコール基を導入することは、標的部位への誘導を制御し得るために有益である。
水性溶液
本発明によるリポソームの製造方法の工程(i)において、上記リポソーム膜成分物質
とともに混合される水性溶液は、水溶性薬剤(非イオン型ヨウド系化合物も含む)、1種類以上の生理的に許容され得る製剤助剤などを溶解(場合によっては懸濁の態様でもよい)水をベースとする溶媒である。その水は、滅菌した発熱物質を含まない水を使用することが望ましい。
生理的に許容され得る製剤助剤は、リポソーム製剤化のために水溶性薬剤とともに添加される物質であり、これまでの製剤製造技術に基づいて各種の物質が必要に応じて使用される。具体的には生理学的に許容される各種のpH緩衝剤(水溶性アミン系緩衝剤または炭酸塩系緩衝剤が好ましい)、EDTANa2−Ca、EDTANa2などといったエデト酸系のキレート化剤、無機塩類、薬理的活性物質(例えば血管拡張剤、凝固抑制剤など)、さらには浸透圧調節剤、安定化剤、抗酸化剤(例えばα‐トコフェロール、アスコルビン酸)、粘度調節剤、保存剤なども挙げられる。好ましくは、アミン系緩衝剤およびキレート化剤をともに含めるのがよい。キレート化剤はEDTANa2−Ca(エデト酸カルシウム2ナ
トリウム)が好ましい。
上記水性溶液の好ましいpH範囲は、室温で6.5〜8.5、さらに好ましくは6.8〜7.8である。好ましいpH緩衝液は、米国特許第4278654号に記載されているような負の温度係数
を有する緩衝液である。アミン系緩衝液はこのような要求を満たす性質を有しており、好ましくはトロメタモールである。このタイプの緩衝液は、オートクレーブ温度で低いpHを有し、このことがオートクレーブ中のリポソームの安定性を増し、他方、室温では生理的に許容されるpHに戻る。したがって、注射用無菌製剤を製造するために、リポソーム調製物をオートクレーブ滅菌できることは極めて便利であり、貯蔵安定性なども確保できる。本発明のリポソームおよびその製剤は、好ましくは滅菌した形態として上市される。その場合、滅菌ろ過、オートクレーブ滅菌、または加熱滅菌により無菌製剤を得る。
水溶性薬剤
本発明によるリポソームの製造方法において、脂質膜が形成する閉鎖空間内に上記水性溶液中の水溶性薬剤が内包されたリポソームができる。水性溶液に含有される水溶性薬剤としては特に限定されず、広く医薬品に使用される物質が挙げられる。例えば、本発明で用いられる水溶性薬剤としては、造影化合物、抗がん化合物、抗酸化化合物、抗菌化合物、抗炎症化合物、血行促進化合物、美白化合物、肌荒れ防止化合物、老化防止化合物、発毛促進化合物、保湿化合物、ホルモン剤、ビタミン類、色素、およびタンパク質類などが挙げられる。
本発明のリポソームは、特に造影剤、または抗がん剤として用いることが望ましい。中でも造影物質が好適である。造影物質として、X線造影剤(例えばヨウド系化合物など)、超音波造影剤(例えばLevovist(R))、RI画像診断用造影剤(例えばガドリニウム−ジエチレントリアミン五酢酸など)、近赤外蛍光造影物質(例えばインドシアニングリーンなど)などが挙げられる。
特に好ましい造影物質は、X線造影剤である水溶性の非イオン型ヨウド系化合物である。好ましいヨウド系化合物として、イオメプロール、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオキシラン、イオタスル、イオトロランまたはイオジキサノールなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。またその例示に限定されるものではない。
リポソームの形態
本発明による上記製造方法で得られるリポソームは、本発明の範囲内にある。
・粒径
本発明のリポソームにおいて、微細粒子としてのリポソームのサイズとその分布の調整は、高い薬剤の内包率、ターゲティング性、送達効率と密接に関わっている。粒径(粒子径)は水溶性薬剤を内包するリポソームを含む分散液を凍結し、その後破砕した界面をカーボン蒸着し、このカーボンを電子顕微鏡で観察すること(凍結破砕TEM法)により測定することができる。ここで「平均粒径」とは、観察されたリポソーム粒子の一定の個数、例えば20個の径の単純平均を指している。これは粒径分布で最も出現頻度の高い粒径を言う「中心粒径」と、通常一致するか、または概ね近似している。
受動的ターゲティング能力をリポソームに持たせるには、リポソームを作製する際に、その粒径のサイズを適切に揃えて調製することが必要になる。特許文献1には、粒径3μm以上のリポソームを排除することにより、肺の毛細血管におけるリポソームの不都合な滞留が回避されると記載されている。しかし、0.5〜3μmの粒径範囲のリポソームは、必ず
しも自然に向腫瘍性とはならない。本発明のリポソームにおいては、その用途に応じて平均粒径を、好ましくは0.05〜0.8μmの範囲内で調整してリポソームを作製する。
血流を利用する「EPR効果(Enhanced permeability and retention)」に基づいて
リポソームを向腫瘍性とするためには、その平均粒径を0.1〜0.2μm 、より好ましくは0.11〜0.13μmとすることが望ましい。例えばリポソームの平均粒径を0.11〜0.13μm の範
囲に揃えることにより、リポソームをがん組織へ選択的に集中させることが可能となる。
患部に到達しなかったリポソームは、正常な組織には集積することなく、比較的速やかに分解されて体外に排泄される。これはリポソームを設計する際にその安定性を体外排出時間との関係で適切にコントロールすることにより可能である。そうしたクリアランスの制御により、遊離形態では副作用が皆無ではない水溶性薬剤をリポソームに内包させるDDS剤形のもう一つの効果が期待できる。例えば水溶性の非イオン型ヨウド系化合物をリポソームに内包させると、ヨウド系化合物が肝臓、脾臓、腎臓などに非特異的に沈着して、分解・排泄に時間がかかる事態に陥りにくくなる。このため徒に体内に留まることによる弊害、遅発性の副作用などを防止できる。
・リポソームの構造
封入物質のリポソーム内への内包化の効率は、リポソーム膜用脂質の全脂質量と、封入物質などを含む水溶液との比率によっても左右される。ここでいう全脂質量とは、リポソーム膜を構成するリン脂質類、ステロール類、その他の添加した脂質類すべてを対象とした総和の質量である。封入物質の内包率を上げるためには、添加する全脂質量は、混合する水性溶液1重量部に対して、0.004〜0.08重量部、好ましくは0.008〜0.08重量部である。
本発明において、水溶性薬剤の内包効率および内包の安定性に加えてリポソームの膜脂質の重量も考慮されねばならない。リポソームの膜脂質の重量が多くなると製剤の粘度が大きくなる。リポソーム内への薬剤の封入量として、リポソーム内に封入された水溶液中に、全薬剤(非イオン型ヨウド系化合物などの水溶性薬剤および製剤助剤を含む)がリポソーム膜脂質に対して、1〜50、好ましくは3.5〜50の重量比(g/g)で含有されているこ
とが望ましい。リポソーム内に内包された全薬剤の重量比が1未満であると、比較的多量の脂質を含有することとなり、製剤の粘度は増大し、結果的に薬剤の送達効率が悪くなる。
リポソーム含有製剤
本発明の方法により製造されるリポソームは、脂質膜内外の水相に水溶性薬剤などを内包し、実質的に有機溶媒を含まないリポソームを含有することを特徴としている。すなわち水溶性薬剤をマイクロキャリヤーとしてのリポソーム内に封入した形態で使用することにより、標的の臓器、組織の病巣へ効率よく送達させることを図っている。本発明のリポソーム含有製剤は、リポソームの脂質膜内部の水相およびリポソームを懸濁する水性媒体中に製剤助剤を含有している。リポソーム脂質膜内部の水相以外の水溶液(すなわち該リポソームを懸濁する水性媒体)にも上記の水溶性薬剤および製剤助剤が含まれている場合、より好ましくは、脂質膜内外の水相に水溶性薬剤が実質的に同一の濃度で含有されている態様であり、そうした場合には該膜内外で著しい浸透圧差が生じることはなく、リポソームの構造安定性が保たれる。貯蔵期間中でもリポソームの浸透圧効果による不安定化を防止でき、リポソーム内における水溶性薬剤の保持安定性は向上する。
医薬物質のDDSにおいては、リポソーム内に封入することにより副作用が軽減され、内包化により得る利益を一層増すために、内包されていない医薬物質を分離除去して製剤を調製することが多い。実際には、ほぼ100%の封入が達成されたリポソームが分離され
ても、その後、リポソーム懸濁製剤の封入成分が時間とともに漏失する例が報告されている(Betageri, G. V. Drug Devel. Ind. Pharm. 19, 531-539(1993))。この現象は、
浸透圧効果によるリポソーム構造の不安定化に基づく。またWO88/09165のリポソーム調製物のように、リポソーム内部のみにX線造影物質を有する造影剤をオートクレーブ滅菌すると、造影物質がリポソーム外に漏れ出てしまうことが報告されている(特許文献2)。逆に内包化されていない遊離の造影物質を含む製剤の診断的意義が論じられた(特表平9-505821号公報)。これは造影剤固有の使用態様に根ざすものである。
・X線造影剤
本発明のリポソーム製剤の一態様であるX線造影剤は、通常、リポソームに内包されていないヨウド系化合物もまた含む。このような造影剤にあっては、リポソーム内に内包されている造影物質の割合(内包率)も考慮されねばならない。本発明のX線造影剤では、前記水溶性ヨウド系化合物の70〜92質量%が、リポソームに内包されていない形態にあり、リポソームを懸濁する水性媒体中に存在することを特徴としている。実質的にほとんど、または大半のヨウド系化合物がリポソーム内に内包されている製剤も可能であるが、そうした製剤は、浸透圧差、リポソームの形態と安定性、内包化させる効率、製剤の造影能なども考えると現実の製剤として実用上、特に優れるわけではない。
本発明のリポソーム含有X線造影剤において、ヨウド系化合物を効率的に内包化し、これを担持するリポソームの経時的不安定化を防止するために、リポソーム内に封入されるヨウド系化合物の量は、むしろ限定的である。すなわちX線造影剤における全ヨウド系化合物の8〜30質量%、好ましくは10〜25質量%、より好ましくは15〜20質量%であること
が望ましい。造影剤において、リポソーム内に封入されたヨウド系化合物の割合が、全体の8〜30質量%であれば、残り70〜92質量%が存在するリポソーム外の水性分散液へ流出
する量については実質的に無視できる。したがって、ヨウド系化合物をカプセル化したリポソームの浸透圧効果による不安定化を防止でき、リポソームにおける造影物質の経時的な保持安定性は向上する。このことは、リポソーム含有X線造影剤でも、製剤調製時におけるヨウド系化合物の内包率と使用時における内包率が実質的に同一に保たれることを意味し、品質管理の観点からも好ましい。リポソームへの内包率が貯蔵・保管の間に低下する結果、製剤ごとにまたは保管期間ごとに異なっては、その造影性能も影響を受ける。
本発明のリポソームの好ましい態様は、水溶性薬剤が非イオン型ヨウド系化合物であり、かつ、1種類以上の生理的に許容される製剤助剤を含有し、X線造影剤として用いられるリポソームである。その濃度は、撮像の目的、部位、造影剤中の化合物の性質、および患者の状態に依存し、必要に応じて調節することができる。前記脂質膜内外の水相に、ヨウド系化合物および製剤助剤がそれぞれ実質的に同一の濃度で含有されることが好ましい。
本発明のX線造影剤における全脂質濃度は、20〜100 mg/mL造影剤、好ましくは20〜80
mg/mL造影剤である。この場合の「全脂質」とは、リポソームを構成するリン脂質、ス
テロール、グリコールといったすべての種類の脂質類を含める意味である。そうした全脂質は、造影剤に含まれるリポソームの量と概ね見なしてもよい。リポソームの形態には種々あるために、全脂質量は単純にリポソームの数には対応しない。本発明による製造方法によれば、リポソームの形成が効率的に行われ、ある量までは脂質量を多くするほど内包率も増加する傾向にあった。
注入抵抗を少なくして患者の苦痛を軽減し、血管外漏出の危険を回避するため、本発明のリポソーム分散液の粘度(オストワルド法で測定した場合)は、37℃で、30 mPa・
s以下、好ましくは25 mPa・s以下、である。このような範囲内では実用上問題ないとされる(特許文献1)。またX線造影剤の浸透圧モル濃度は、典型的には250〜500 mosmol/L、好ましくは290〜350 mosmol/Lである。
[実施例]
本発明を以下の実施例によって、具体的に説明する。実施例は実例を挙げて説明しようとするものであり、本発明の範囲を何ら限定しようとする意図のものではない。
ステンレス製の30ml容器に、造影剤溶液(日局イオヘキソール溶液(ヨウド濃度240mgI/ml)、トロメタモール1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)を含
む水性溶液を10mL仕込み(60℃に保温)、その中にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)116mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液をアドバンテック社製のポリカ
ーボネート・フィルター0.40μmを用いて60℃にて、加圧濾過し(0.4MPa、エクストルー
ダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスはCO2を使
用した。
ステンレス製の30ml容器に、造影剤溶液(日局イオヘキソール溶液(ヨウド濃度240mgI/ml)、トロメタモール1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)を含
む水性溶液を10mL仕込み(80℃に保温)、その中にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)116mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液をアドバンテック社製のポリカ
ーボネート・フィルター0.40μmを用いて80℃にて、加圧濾過し(0.4MPa、エクストルー
ダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスはCO2を使
用した。
ステンレス製の30ml容器に、造影剤溶液(日局イオヘキソール溶液(ヨウド濃度240mgI/ml)、トロメタモール1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)を含
む水性溶液を10mL仕込み(80℃に保温)、その中にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)116mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液をアドバンテック社製のポリカ
ーボネート・フィルター0.40μmを用いて80℃にて、加圧濾過し(1.0MPa、エクストルー
ダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスはCO2を使
用した。
ステンレス製の30ml容器に、造影剤溶液(日局イオヘキソール溶液(ヨウド濃度240mgI/ml)、トロメタモール1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)を含
む水性溶液を10mL仕込み(80℃に保温)、その中にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)340mg、コレステロール147mg、PEG-リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT
DSPE-020CN)111.5mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液をアドバンテック社製のポリカーボネート・フィルター0.40μmを用いて80℃にて、加圧濾過し(0.4MPa、エクス
トルーダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスはCO2を使用した。
ステンレス製の30ml容器に、造影剤溶液(日局イオヘキソール溶液(ヨウド濃度240mgI/ml)、トロメタモール1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)を含
む水性溶液を10mL仕込み(50℃に保温)、その中にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)116mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液をアドバンテック社製のポリカ
ーボネート・フィルター0.40μmを用いて50℃にて、加圧濾過し(0.4MPa、エクストルー
ダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスはCO2を使
用した。
ステンレス製の30ml容器に、0.1%ローダミンB水溶液を10mL仕込み、その中にジパル
ミトイルホスファチジルコリン(DPPC)116mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液
をアドバンテック社製のポリカーボネート・フィルター0.40μmを用いて80℃にて、加圧
濾過し(0.4MPa、エクストルーダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスはCO2を使用した。
[比較例1]
ステンレス製の30ml容器に、造影剤溶液(日局イオヘキソール溶液(ヨウド濃度240mgI/ml)、トロメタモール1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)を含
む水性溶液を10mL仕込み(80℃に保温)、その中にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)116mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液をアドバンテック社製のポリカ
ーボネート・フィルター0.40μmを用いて80℃にて、加圧濾過し(0.4MPa、エクストルー
ダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスはN2を使用した。
[比較例2]
ステンレス製の30ml容器に、造影剤溶液(日局イオヘキソール溶液(ヨウド濃度240mgI/ml)、トロメタモール1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)を含
む水性溶液を10mL仕込み(80℃に保温)、その中にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)116mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液をアドバンテック社製のポリカ
ーボネート・フィルター0.40μmを用いて80℃にて、加圧濾過し(0.4MPa、エクストルー
ダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスは空気を使用した。
[比較例3]
ステンレス製の30ml容器に、造影剤溶液(日局イオヘキソール溶液(ヨウド濃度240mgI/ml)、トロメタモール1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)を含
む水性溶液を10mL仕込み(35℃に保温)、その中にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)116mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液をアドバンテック社製のポリカ
ーボネート・フィルター0.40μmを用いて35℃にて、加圧濾過し(0.4MPa、エクストルー
ダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスはCO2を使
用した。
[比較例4]
ステンレス製の30ml容器に、0.1%ローダミンB水溶液を10mL仕込み、その中にジパル
ミトイルホスファチジルコリン(DPPC)116mgを撹拌しながら添加した。この脂質混合液
をアドバンテック社製のポリカーボネート・フィルター0.40μmを用いて80℃にて、加圧
濾過し(0.4MPa、エクストルーダ使用)、造影剤を含有するリポソーム分散液を得た。この時、加圧用のガスはN2を使用した。
得られたリポソーム分散液について、内包率および粒径(粒子径)を表1に示す。
Figure 2007262026
[評価]
<内包率の求め方>
得られた試料を等張の食塩水で透析した。透析終了後にエタノールを添加してリポソームを破壊し、吸光度の測定によりリポソーム内のヨウド化合物量(またはローダミンB量)を求めた。試料中の全ヨウド化合物(またはローダミンB)量に対する比率を内包率(質量%)として表した。
<粒径の求め方>
粒径(粒子径)は、水溶性薬剤を内包するリポソームを含む分散液を、動的光散乱粒径測定器(シスメックス社、Malvern HPPS)を用いて、25℃の条件下で測定した。

Claims (8)

  1. リポソーム膜成分物質と水性溶液とを、リポソーム膜成分物質の相転移温度以上で混合し、得られた混合物をその相転移温度以上の温度のもとで、CO2ガスによる加圧ろ過を行
    ってリポソーム粒子を作製するリポソームの製造方法。
  2. 前記ろ過が孔径0.05〜1μmのろ過膜を用いて加圧ろ過をすることを特徴とする、請求項1に記載のリポソームの製造方法。
  3. 前記のリポソーム膜成分物質には、少なくとも相転移温度を有するリン脂質が含まれていることを特徴とする、請求項1または2に記載のリポソームの製造方法。
  4. 前記相転移温度が22〜60℃の範囲にあることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のリポソームの製造方法。
  5. 前記水性溶液が水溶性薬剤を含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のリポソームの製造方法。
  6. 前記水溶性薬剤が造影物質である、請求項5に記載記載のリポソームの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載された製造方法で得られるリポソーム。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載された製造方法で得られるリポソームを含有するリポソーム含有製剤。
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