JPWO2006115155A1 - リポソーム含有製剤およびその製造方法 - Google Patents

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武志 和田
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Abstract

本発明は、以下の工程を含むリポソーム含有製剤の製造方法により、水溶性薬剤を効率よく内包したリポソーム含有製剤を提供するものである。(i)圧力容器内で32〜65℃の下、リポソーム膜構成成分と超臨界二酸化炭素とを混合して懸濁液を得る第1工程、(ii)次いで、該懸濁液に薬剤水溶液を添加して混合する第2工程、(iii)その後、該圧力容器内を減圧して二酸化炭素を排出することにより、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液を調製する第3工程、(iv)前記の第3工程の後で、0.1〜1μmの孔径を有するろ過膜を装着した静圧式押出装置で、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液をろ過して、平均粒径が0.05〜0.8μmのリポソームに整粒する第4工程、第3工程または第4工程の後、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液を限外ろ過を行なうことにより濃縮する。

Description

本発明は、薬物の内包率が高いリポソームを含むリポソーム含有製剤の製造方法および該方法により得られたリポソーム含有製剤に関する。
リポソームは、主にリン脂質によって形成される二分子膜(リポソーム膜)の閉鎖小胞体であり、生体膜と類似の構造や機能を有するために従来から注目されてきた材料である。リポソームは、内部に有する水相に水溶性の封入物質を、あるいは脂質二分子膜内部には油溶性の封入物質を保持するというカプセル構造を構築できることから、薬物送達システム(DDS)への応用が盛んに研究されている。
封入物質が内包されたリポソームを調製するには、従来からBangham法や逆相蒸発法(REV法)などが用いられている。これらの方法では、素材としての安全性が高く、生体内で適度な分解性を有するリポソームの中に封入物質を内包させるにもかかわらず、その調製過程において、リン脂質の溶剤として有機溶媒を使用する。そのため、上記方法で得られるリポソーム含有製剤においては有機溶媒の残留が避けられず、リポソームの特性、安定性に問題が残る(例えば、特許文献1参照)。さらにどうしても残存する溶剤の毒性があるという理由で実用化に至っていないのが現状である(例えば、特許文献2参照)。
従来の方法では、リポソーム内に薬物を充分に内包させることができず、リポソーム含有製剤を大量に投与する必要があるため患者に過度の負担となる問題があった。とりわけ治療用薬剤に比べて投与量が多くなる診断用造影剤への応用を考えた場合、造影物質の内包率が高いリポソーム含有製剤が求められていた。
一方、特許文献3には、有機溶媒の代わりに超臨界二酸化炭素を用いて、リポソームを製造する方法が開示されている。この方法では製造条件を種々設定することが可能であり、従来のリポソームの製造方法に比べて比較的容易に封入物質の保持効率(内包率)を向上させることができる。封入物質の内包率が高いと、体内の目標部位に取り込まれたリポソームが少量であったとしても所望の効果を得ることができる。このためDDS(Drag Delivery System、以下同じ)製剤の調製方法として期待されている。しかし、超臨界二酸化炭素と脂質、封入物質の混和に際してエタノールなどの溶解助剤の使用が望まれており、有機溶媒を全く使用せずに内包率の高いリポソームは作製できない(非特許文献1参照)。薬物などをリポソーム内に内包させても、溶解助剤の残留のためにリポソーム膜の強度が低下し、時間経過とともに外部へ漏出する可能性も考慮されねばならない。したがって、薬剤を効率よくリポソームに内包させる方法とともに、経時安定的にそれを保持し、血中滞留性を改善することができる剤形、製剤組成の改良、および製剤の安全性の向上について、引き続き特別の要求が存在する。
特許2619037号公報 特開平7-316079号公報 特開2003-119120号公報 Pharm Tech Japan 19巻、5号、91〜100(2003)
本発明は上記の要請に取り組むものであり、有機溶媒を全く使用しないでリポソーム内に水溶性薬剤を効率よく内包したリポソーム、ならびにこれを含有する製剤の製造方法を提案する。特にその水溶性薬剤が非イオン型ヨウド系化合物である製剤は、がん組織の良好な描出性、容易な排泄性を有する安全性の高いX線造影剤である。
本発明によるリポソーム含有製剤の製造方法は、
(i)圧力容器内で32〜65℃の下、リポソーム膜構成成分と超臨界二酸化炭素とを混合して懸濁液を得る第1工程と、
(ii)次いで、該懸濁液に薬剤水溶液を添加して混合する第2工程と、ならびに
(iii)その後、該圧力容器内を減圧して二酸化炭素を排出することにより、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液を調製する第3工程と、を有し、該リポソーム膜構成成分には、少なくとも転移温度を有するリン脂質が含まれることを特徴としている。
あるいは、
(i)リポソーム膜構成成分と薬剤水溶液とを混合することにより得られた懸濁液を収容している圧力容器内に、液化二酸化炭素を供給する第1工程と、
(ii)次いで、前記の懸濁液と液化二酸化炭素とを混合しながら、該圧力容器内を32〜65℃の下、加圧して液化二酸化炭素を超臨界二酸化炭素とする第2工程と、ならびに
(iii)その後、該圧力容器内を減圧して二酸化炭素を排出することにより、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液を調製する第3工程と、を有し、該リポソーム膜構成成分には、少なくとも転移温度を有するリン脂質が含まれることを特徴とする製造方法であってもよい。この懸濁液は、リポソーム膜構成成分と薬剤水溶液とを混合して調製され、次いで圧力容器内に供給された懸濁液であってもよい。
また、前記転移温度は、22〜60℃の範囲にあることが望ましい。
前記第3工程の後、該リポソーム膜構成成分のリン脂質の転移温度〜該転移温度+10℃で、0.1〜3時間インキュベートしてもよい。
前記第3工程の後で、0.1〜1μmの孔径を有するろ過膜を装着した静圧式押出装置を用いて、50〜90℃、0.01〜0.8MPaの圧力下で、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液をろ過して、平均粒径が0.05〜0.8μmのリポソームに整粒する第4工程をさらに有することが好ましい。
前記の第3工程または第4工程の後、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液を、限外ろ過を行なうことにより濃縮する工程を有することが望ましい。限外ろ過の後に、115〜140℃で蒸気滅菌してもよい。
前記のろ過により、水溶性薬剤のリポソームへの内包率(すなわち、水溶性薬剤全量に対するリポソームに内包される水溶性薬剤の比率)を25〜35%まで上昇させることができる。
前記リポソーム膜内外の水相における水溶性薬剤の濃度(モル/L)が実質的に同じであることが望ましい。すなわち、リポソーム膜外の水相にける水溶性薬剤(1)の濃度と、リポソーム膜内の水相にける水溶性薬剤(2)の濃度が実質的に同じであることが好ましいということである。より好ましくは、(2)の濃度に対する(1)の濃度の比率が0.95〜1.05の範囲内にある場合である。
前記の工程により作製されたリポソームのうち、その脂質膜が2〜10枚膜で構成されるリポソームが少なくとも70%を占めていることを特徴としている。
また、前記リポソーム膜構成成分として、少なくともリン脂質、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質およびステロール類を含む脂質を含み、リン脂質(PEG-リン脂質(PEG(ポリエチレングリコール)を有するリン資質を意味する、以下同じ)を含まず)/ステロール類のモル比が100/60〜100/90、リン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ポリエチレングリコール基を有する脂質のモル比が100/5〜100/25である。
本発明には、上記の製造方法で得られるリポソーム含有製剤、ならびにその好ましい態様として、水溶性薬剤が非イオン型ヨウド系化合物および1種類以上の生理的に許容される製剤助剤であり、X線造影剤として用いられるリポソーム含有製剤も含まれる。
本発明のリポソーム含有製剤は、水溶性薬剤、好ましくは非イオン型ヨウド系化合物をマイクロキャリヤーであるリポソーム内に25〜35%の高い内包率で内包させ、しかも効率よく担持させることによってターゲティング性を付与している。
特に上記リポソームは、X線造影剤への使用に対しても有益な特性を備えている。リポソーム含有造影剤は従来の造影剤に比べて造影性能に優れており、低用量化を可能とする。
本発明の製剤は、毒性の高いクロル系溶剤およびその他の有機溶剤を全く使用せずに製造されるため、従来のリポソーム含有製剤に比べて毒性、副作用がはるかに軽減されている。したがって、その投与を受ける患者の負担は少ない。
本明細書において、亜臨界状態を含めて超臨界状態とする。リポソーム膜を「脂質膜」ということもある。リポソーム内に「内包」されるとは、リポソーム内に封入されてそのリン脂質膜と会合しているか、またはリン脂質膜内部に閉じ込められている水相(内部水相)中に存在している状態の両方を含むものとする。また、「がん」は、悪性腫瘍を指し、単に「腫瘍」ということもある。
リポソーム製剤の製造方法
本発明によるリポソーム含有製剤の製造方法において、リポソームは超臨界二酸化炭素を混和媒体としたリポソームの調製方法(以下、超臨界二酸化炭素法)に基づき、実質的に溶解助剤を用いない方法により調製される。その際に水溶性薬剤および製剤助剤をリポソーム膜内に内包させる。そのリポソーム膜の構成成分には、少なくとも転移温度を有するリン脂質を含むことを特徴としている。以下、内包される水溶性薬剤、リポソーム膜構成成分、リポソームの製造方法、リポソーム含有製剤の製造、リポソームを含有するX線造影剤の順に説明する。
水溶性薬剤
本発明のリポソーム製造方法により、水溶性薬剤が脂質膜内に内包されたリポソーム含有製剤ができる。水溶性薬剤としては特に限定されず、広く医薬品に使用される物質が挙げられる。例えば、本発明で用いられる水溶性薬剤としては、造影化合物、抗がん化合物、抗酸化化合物、抗菌化合物、抗炎症化合物、血行促進化合物、美白化合物、肌荒れ防止化合物、老化防止化合物、発毛促進化合物、保湿化合物、ホルモン剤、ビタミン類、色素、およびタンパク質類などが挙げられる。
本発明のリポソーム含有製剤は、特に造影剤、または抗がん剤として用いることが望ましい。中でも造影物質が好適であり、特に好ましい造影物質は、水溶性の非イオン型ヨウド系化合物である。好ましいヨウド系化合物として、イオメプロール、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオキシラン、イオタスル、イオトロランまたはイオジキサノールなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。またその例示に限定されるものではない。
医薬物質のDDSにおいては、リポソーム内に封入することにより副作用が軽減され、内包化により得る利益を一層増すために、内包されていない医薬物質を分離除去して製剤を調製することが多い。実際には、ほぼ100%の封入が達成されたリポソームが分離されても、その後、リポソーム懸濁製剤の封入成分が時間とともに漏失する例が報告されている(Betageri, G. V. Drug Devel. Ind. Pharm. 19, 531-539(1993))。この現象は、浸透圧効果によるリポソーム構造の不安定化に基づく。またWO88/09165のリポソーム調製物のように、リポソーム内部のみにX線造影物質を有する造影剤をオートクレーブ滅菌すると、造影物質がリポソーム外に漏れ出てしまうことが報告されている(特許文献2)。逆に内包化されていない遊離の造影物質を含む製剤の診断的意義が論じられた(特表平9-505821号公報)。これは造影剤固有の使用態様に根ざすものであり、リポソームに内包されなかった医薬化合物を所期の目的からは無用のものとする立場とは区別される。
本発明のリポソーム含有製剤の一態様であるX線造影剤は、通常、リポソームに内包されていないヨウド系化合物もまた含む。このような造影剤にあっては、リポソーム内に内包されている造影物質の割合(内包率)も考慮されねばならない。本発明のX線造影剤では、前記水溶性ヨウド系化合物の65〜80質量%が、リポソームに内包されていない形態にあり、リポソームを懸濁する水性媒体中に存在することを特徴としている。実質的にほとんど、または大半のヨウド系化合物がリポソーム内に内包されている製剤も可能であるが、そうした製剤は、浸透圧差、リポソームの形態と安定性、内包化させる効率、製剤の造影能なども考えると現実の製剤として実用上、特に優れるわけではない。
本発明のリポソーム含有X線造影剤において、ヨウド系化合物を効率的に内包化し、これを担持するリポソームの経時的不安定化を防止するために、リポソーム内に封入されるヨウド系化合物の量は、むしろ限定的である。すなわちX線造影剤における全ヨウド系化合物の10〜35質量%、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜25質量%であることが望ましい。造影剤において、リポソーム内に封入されたヨウド系化合物の割合が、全体の5〜30質量%(好ましくは5〜25質量%)であれば、残り70〜95質量%(好ましくは75〜95質量%)が存在するリポソーム外の水性分散液へ流出する量については実質的に無視できる。したがって、ヨウド系化合物をカプセル化したリポソームの浸透圧効果による不安定化を防止でき、リポソームにおける造影物質の経時的な保持安定性は向上する。このことは、リポソーム含有X線造影剤でも、製剤調製時におけるヨウド系化合物の内包率と使用時における内包率が実質的に同一に保たれることを意味し、品質管理の観点からも好ましい。リポソームへの内包率が貯蔵・保管の間に低下する結果、製剤ごとにまたは保管期間ごとに異なっては、その造影性能も影響を受ける。
リポソーム膜構成成分
本発明の方法により製造されるリポソーム含有製剤は、脂質膜内外の水相に水溶性薬剤などを内包し、実質的に有機溶媒を含まないリポソームを含有することを特徴としている。すなわち水溶性薬剤をマイクロキャリヤーとしてのリポソーム内に封入した形態で使用することにより、標的の臓器、組織の病巣へ効率よく送達させることを図っている。特に本発明に用いられるリポソームの好ましい態様は、X線造影剤用に最適なリポソームとして設計された形態、構造を有する。そのようなリポソームは、その脂質膜が実質的に数枚膜で構成されるために経時的な安定性および血中での安定性が改善されており、しかも造影物質の内包率を高めることにより造影剤の造影性能を向上させている。
本発明のリポソーム含有製剤において、水溶性薬剤を内包するリポソームの粒径およびその脂質膜を適切に設計することによりターゲティング機能を付与することができる。特に全身投与の場合には、受動的ターゲティングおよび能動的ターゲティングいずれも考慮することが望ましい。前者は、リポソームの粒径、脂質組成、荷電などの調整を通じてその生体内挙動を制御することができる。リポソーム粒径を狭い範囲に揃える調整もまた容易に行うことができる。リポソーム膜表面の設計では、リン脂質の種類と組成、共存物質を変えることにより所望の特性を付与することができる。さらに投与されたリポソームの体内移動と分布に関して、より高度な送達選択性と集積性を可能とする能動的ターゲティングの採用もまた検討されるべきである。一例として、リポソーム膜表面にポリアルキレンオキシド高分子鎖またはポリエチレングリコール基を導入することは、標的部位への誘導を制御し得るために有益である。
他方、がん組織などの患部に到達しなかったリポソームは、正常な組織には集積することなく、比較的速やかに分解されて体外に排泄される。これはリポソームを設計する際にその安定性を体外排出時間との関係で適切にコントロールすることにより可能である。そうしたクリアランスの制御により、遊離形態では副作用が皆無ではない水溶性薬剤をリポソームに内包させるDDS剤形のもう一つの効果が期待できる。例えば水溶性の非イオン型ヨウド系化合物をリポソームに内包させると、ヨウド系化合物が肝臓、脾臓、腎臓などに非特異的に沈着して、分解・排泄に時間がかかる事態に陥りにくくなる。このため徒に体内に留まることによる弊害、遅発性の副作用などを防止できる。
リポソームの脂質膜を構成する脂質膜成分には、少なくともリン脂質、糖脂質、ステロール類、グリコール類、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール基を有する脂質(例えばPEG-リン脂質などが含まれる。本発明のリポソーム含有製剤に含まれるリポソームの脂質膜成分として、一般にリン脂質および/または糖脂質が好ましく使用される。好ましい中性リン脂質として、大豆、卵黄などから得られるレシチン、リゾレシチンおよび/またはこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体を挙げることができる。
その他のリン脂質として、卵黄、大豆またはその他の動植物に由来するか、または半合成のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、合成により得られるホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジパルミトイルホスフチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などが挙げられる。
本発明のリポソームを構成する脂質膜のリン脂質類には、転移温度を有するリン脂質が少なくとも含まれていることが望ましい。リン脂質の「(相)転移温度」とは、リン脂質がとり得るゲルと液晶との両状態間の相転移を生じる温度である。その測定は、示差走査熱量計(DSC)を使用する示差熱分析による。22〜60℃の範囲にある相転移点を有するリン脂質として、ジミリストイルホスファチジルコリン(転移温度、以下同じ、23〜24℃)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(41.0〜41.5℃)、水素添加大豆レシチン(53℃)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(54℃)、ジステアロイルホスファチジルコリン(54.1〜58.0℃)などが例示される。
本発明において使用するカチオン性脂質として、1、2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、N、N−ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−[1−(2、3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、2、3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミン−カルボキサミド)エチル]−N、N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)およびN−[1−(2、3−ジミリスチルオキシ)プロピル]−N、N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムブロミド(DMRIE)などが挙げられる。
カチオン性リン脂質として、ホスファチジン酸とアミノアルコールとのエステル、例えばジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)もしくはジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)とヒドロキシエチレンジアミンとのエステルなどが挙げられる。これらのカチオン性脂質は全脂質量に対し0.1〜5質量%、好ましくは全脂質量に対し0.3〜3質量%、より好ましくは全脂質量に対し0.5〜2質量%の割合で含有するように添加すればよい。
これらのリン脂質は通常、単独で使用されるが、2種以上併用してもよい。ただし2種以上の荷電リン脂質を使用する場合には、負電荷のリン脂質同士または正電荷のリン脂質同士で使用することが、リポソームの凝集防止の観点から望ましい。中性リン脂質と荷電リン脂質を併用する場合、質量比として通常、200:1〜3:1、好ましくは100:1〜4:1、より好ましくは40:1〜5:1である。
糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステルなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4などのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができる。
リポソーム膜の構成成分として、上記脂質の他に必要に応じて他の物質を加えることもできる。例えば、脂質膜安定化剤として作用するステロール類、例えばコレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、またはラノステロールなどが挙げられる。また1−O−ステロールグルコシド,1−O−ステロールマルトシドまたは1−O−ステロールガラクトシドといったステロール誘導体もリポソームの安定化に効果があることが示されている(特開平5-245357号公報)。これらの中で、特にコレステロールが好ましい。
リポソーム膜中のコレステロールは、ポリアルキレンオキシド導入用のアンカーにもなり得る。特開平09−3093号公報には、ポリオキシアルキレン鎖の先端に、種々の機能性物質を共有結合により固定化することができ、リポソーム形成用の成分として利用することができる新規なコレステロール誘導体が開示されている。
ステロール類の使用量として、リン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ステロール類のモル比が100/60〜100/90、好ましくは100/70〜100/85である。このモル比は、PEG-リン脂質を除くリン脂質量を基準としている。モル比が100/60未満であると混合脂質の分散性を向上させるステロール類による安定化が充分に発揮されない。
上記ステロール類の他にリポソーム膜の構成成分として、グリコール類を加えてもよい。リポソームを作製する際に、リン脂質などともにグリコール類を添加すると、リポソーム内での水溶性ヨウド系化合物の保持効率が上昇する。グリコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオールなどが挙げられる。グリコール類の使用量として、脂質全質量に対して0.01〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%の割合が望ましい。
本発明のリポソーム含有製剤の意図する目的に応じて、高分子鎖であるポリアルキレンオキシド(ポリオキシアルキレン鎖)(PAO)基または類似の基を有するリン脂質または化合物を、リポソーム膜の一成分として使用してもよい。ポリアルキレンオキシド基またはポリエチレングリコール(PEG)基をリポソーム膜表面に付けることにより、崩壊、凝集といったリポソーム自体の不安定性が解決され、経時安定性も改善される。さらに新たな機能をリポソームに付与することができる。例えば、PEG化リポソームには免疫系から認識されにくくなる効果が期待できる。さらにリポソームは、PEG基の導入により水和層が形成されて親水的傾向を示すことにより、血中安定性を増して長時間にわたり血液中の濃度を維持できることが明らかになっている(Biochim. Biophys. Acta., 1066,
29-36(1991))。よって−(CH2CH2O)n−HであらわされるPEG基のオキシエチレン単位の長さと導入する割合を適宜変えることにより、その機能を調節することができる。PEG基として、オキシエチレン単位が10〜3500、好ましくは100〜2000のポリエチレングリコールが好適である。ポリエチレングリコールを使用する場合の使用量は、該リポソームを構成する脂質に対して1〜40質量%、好ましくは5〜25質量%含むのがよい。リポソームのPEG化には、公知の技術を利用することができる。好ましくはPEG−リン脂質を、ポリエチレングリコール基を有する脂質として用いてもよい。これは、後述するように、リン脂質などを超臨界二酸化炭素に混合する際に、溶解助剤的な作用も示すからである。
上記ポリエチレングリコールに代わり、公知の各種ポリアルキレンオキシド基、−(AO)n−Yをリポソーム膜表面に導入してもよい。ここでAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜2000、好ましくは10〜500、さらに好ましくは20〜200の正の整数である。また、Yは、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1〜5の、分岐していてもよい脂肪族炭化水素基)または機能性官能基を表す。
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(AOで表される)として、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシ−1−エチルエチレン基、オキシ−1,2−ジメチルエチレン基などが挙げられる。
nが2以上の場合、オキシアルキレン基の種類は、同一のものでも異なるものでもよい。後者の場合、ランダム状に付加していても、ブロック状に付加していてもよい。ポリアルキレンオキシド鎖に親水性を付与する場合、オキシアルキレン基としてはエチレンオキシドが単独で付加したものが好ましく、この場合、nが10以上のものが好ましい。また種類の異なるアルキレンオキシドを付加する場合、エチレンオキシドが20モル%以上、好ましくは50モル%以上付加しているのが望ましい。ポリアルキレンオキシド鎖に親油性を付与する場合には、エチレンオキシド以外のオキシアルキレン基の付加モル数を多くする。例えばポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合物を含有するリポソームは、本発明の好ましい態様である。
上記のYで表される機能性官能基は、ポリアルキレンオキシド鎖の先端に糖、糖タンパク質、抗体、レクチン、細胞接着因子といった「機能性物質」を付するためのもので、例えばアミノ基、オキシカルボニルイミダゾール基、N-ヒドロキシコハク酸イミド基といった反応性に富む官能基が挙げられる。
先端に「機能性物質」を結合しているポリアルキレンオキシド鎖が固定化されたリポソームは、ポリアルキレンオキシド鎖導入の効果に加えて、「機能性物質」の機能、例えば「認識素子」として特定臓器指向性、腫瘍組織指向性などの作用が充分に発揮される。腫瘍組織指向性を付与するには、腫瘍細胞のみに存在する腫瘍特異抗原に対応する抗腫瘍モノクローナル抗体を、機能性物質としてリポソーム膜に結合させると、よりターゲット選択性の高いリポソームとなる(例えば、特開平11-28087号公報)。
リポソーム膜へのポリアルキレンオキシド鎖の導入は、公知の技術を利用することができる。ポリアルキレンオキシド基を有するリン脂質または化合物は、一種類を単独で使用することができ、あるいは二種以上のものを組み合わせて使用することもできる。その含有量は、リポソーム膜構成成分の合計量に対し、0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜25モル%、より好ましくは0.1〜10モル%である。
他に添加できる化合物として、負荷電物質であるジセチルホスフェートといったリン酸ジアルキルエステルなど、正電荷を与える化合物としてステアリルアミンなどの脂肪族アミンが例示される。
本発明のリポソーム含有製剤において、微細粒子としてのリポソームのサイズとその分布の調整は、高い薬剤の内包率、ターゲティング性、送達効率と密接に関わっている。粒径(粒子径)は水溶性薬剤を内包するリポソームを含む分散液を凍結し、その後破砕した界面をカーボン蒸着し、このカーボンを電子顕微鏡で観察すること(凍結破砕TEM法)により測定することができる。ここで「平均粒径」とは、観察されたリポソーム粒子の一定の個数、例えば20個の径の単純平均を指している。これは粒径分布で最も出現頻度の高い粒径を言う「中心粒径」と、通常一致するか、または概ね近似している。
受動的ターゲティング能力をリポソームに持たせるには、リポソームを作製する際に、その粒径のサイズを適切に揃えて調製することが必要になる。特許2619037号公報には、粒径3μm以上のリポソームを排除することにより、肺の毛細血管におけるリポソームの不都合な滞留が回避されると記載されている。しかし、0.5〜3μmの粒径範囲のリポソームは、必ずしも自然に向腫瘍性とはならない。本発明のリポソーム含有製剤においては、その用途に応じて平均粒径を、好ましくは0.05〜0.8μmの範囲内で適宜調整してリポソームを作製する。
例えば、肝臓の撮像を目的とするX線造影剤の場合、リポソームの好ましい平均粒径は、0.2μm〜0.8μmである。水溶性ヨウド系化合物を内包するリポソームがこの範囲のサイズであれば、非腫瘍組織に多い細網系内皮細胞による捕獲貪食の対象になり、腫瘍組織とのコントラストが明瞭となるためである。なお肝臓用の造影剤に使用するリポソームは、その表面にあるPEGは、なるべく少ない方が望ましい。
血流を利用する「EPR効果(Enhanced permeability and retention、透過性の亢進および滞留)」に基づいてリポソームを向腫瘍性とするためには、その平均粒径を0.1〜0.2μm 、より好ましくは0.11〜0.13μmとすることが望ましい。例えばリポソームの平均粒径を0.11〜0.13μm の範囲に揃えることにより、リポソーム含有製剤をがん組織へ選択的に集中させることが可能となる。
リポソームの製造方法
リポソームを作製する方法として、これまで種々の方法が提案されている。作製方法が異なると、最終的にでき上がったリポソームの形態および特性も著しく異なることが多い(特開平6-80560号公報)。そのため所望するリポソームの形態、特性に応じて製造方法が選択される。一般にリポソームの調製は、まずリン脂質、カチオン性脂質、ステロールといった脂質膜成分を、ほとんど例外なく有機溶媒(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、エチルエーテル、四塩化炭素、酢酸エチル、ジオキサン、THFなど)とともに容器中で混合、溶解することから始まる。特にクロル系溶媒がよく用いられている。このようなリポソームの調製品は、必ず有機溶媒を含んでいる。
他方、超臨界二酸化炭素を利用してリポソームを調製する方法は、二酸化炭素の臨界温度が31.1℃、臨界圧力が7.38 MPa と比較的扱いやすく、不活性なガスゆえ残存しても人体に無害であり、高純度流体が安価で容易に入手できるなどの理由により魅力ある製造方法であると言える。しかしながら、例え有機溶媒を使用しないとする従来の超臨界二酸化炭素法でも、脂質類を超臨界二酸化炭素に効率よく分散させるためにエタノールなどの使用が推奨されていた(非特許文献1参照)。残存するこれらの有機溶媒を除去するために、複数の工程および長時間の処理を要しているのが現状である。そうした残留する有機溶媒、特にクロル系有機溶媒については、生体に及ぼす悪影響、例えば副作用が懸念される。
本発明の製造方法は、通常の医薬品と比べてとりわけ投与量の多いX線造影剤用に最適な形態、構造を有するリポソームを製造できるように開発された方法である。すなわち、超臨界二酸化炭素を用いる方法により作製されたリポソームは、実質的にクロル系溶剤、エタノールおよびその他の有機溶媒を含有せず、水溶性薬剤を内包するのに種々の好ましい特性、すなわち、従来法に比べてリポソームの生成率、封入する薬物の内包率、内包されている薬物のリポソーム内の保持率が高いことが示されている。さらに工業的スケールでの応用も可能である。なお「実質的に」とは、リポソーム含有製剤における残存有機溶媒の濃度の上限値が10μg/Lであることを意味する。
本発明によるそのリポソームの製造方法において、第1工程および第2工程は、混合順序の相違より、次の2通りがある。
(i)圧力容器内で32〜65℃の下、リポソーム膜構成成分と超臨界二酸化炭素とを混合して懸濁液を得る第1工程
(ii)次いで、該懸濁液に薬剤溶水溶液を添加して混合する第2工程
あるいは次の順序でもよい。
(i)リポソーム膜構成成分と薬剤水溶液とを混合することにより得られた懸濁液を収容している圧力容器内に、液化二酸化炭素を供給する第1工程
(ii)次いで、前記の懸濁液と液化二酸化炭素とを混合させながら、該圧力容器内を32〜65℃の下、加圧して液化二酸化炭素を超臨界二酸化炭素とする第2工程
さらに次の第3工程および第4工程が続く。
(iii)その後圧力容器内を減圧して二酸化炭素を排出し、水溶性薬剤、好ましくは水溶性薬剤および製剤助剤を内部に含有するリポソームの水性分散液を作製する第3工程
(iv)前記の第3工程の後で、0.1〜1μmの孔径を有するろ過膜を装着した静圧式押出装置で、50〜90℃、0.01〜0.8MPaの圧力下で、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液をろ過して、平均粒径が0.05〜0.8μmのリポソームに整粒する第4工程。
前記の第3工程または第4工程の後、引き続き該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液は、限外ろ過を行なうことにより濃縮する工程を行なってもよい。さらに前記限外ろ過の後、115〜140℃で蒸気滅菌してもよい。
これらの工程によりリン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ステロール類のモル比が100/60〜100/90、リン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ポリエチレングリコール基を有する脂質のモル比が100/5〜100/25であり、脂質膜が2〜10枚膜で構成されるリポソームが少なくとも70%を占めていることを特徴とするリポソーム含有製剤が得られる。
以下、各工程について説明する。
・第1工程および第2工程
第1および第2工程では、圧力容器内で、リポソーム膜構成成分と、液化二酸化炭素と、薬剤水溶液(水溶性薬剤および製剤助剤を含有する)とを混合するが、その添加順序に基づいて2方法に別れる。
圧力容器にリポソーム膜を構成する脂質成分としてリン脂質類および脂質膜の安定化作用を有する物質を加え、さらに液化二酸化炭素を添加して、好ましくは強撹拌条件下で混合する。脂質膜の安定化作用を有する物質として、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール基を有する脂質、ステロール類などを加える。リン脂質類としては、22〜60℃の範囲にある転移温度を有する少なくとも1種以上のリン脂質を含む各種のリン脂質が好ましい。後記の範囲にある圧力および温度のもとに液化二酸化炭素を超臨界状態もしくは亜臨界状態にする。リポソーム膜構成成分と超臨界(もしくは亜臨界)状態の二酸化炭素とを充分に混合して、溶解または分散させる。または予め圧力容器内にある液化二酸化炭素に、これらの化合物を加えて混合し、次いで温度、圧力を調整して超臨界状態にして混合してもよい。引き続き生成したリン脂質および脂質膜安定化物質などを含有する超臨界二酸化炭素中に、内包させる水溶性薬剤、例えば非イオン型ヨウド系化合物および製剤助剤を含む薬剤水溶液を導入することによりミセルを形成させる。
あるいは、リポソーム膜構成成分としてリン脂質、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール基を有する脂質およびステロール類から選ばれる少なくとも1つと、水溶性薬剤、好ましくは水溶性薬剤および製剤助剤を含む薬剤水溶液とを混合した懸濁液を収容している圧力容器内に、液化二酸化炭素を供給し、好ましくは強撹拌下で、混合し分散させ、次いで加温加圧して液化二酸化炭素を超臨界状態とし、さらに強撹拌下で混合することによりミセルを形成させてもよい。前記懸濁液は圧力容器内でリポソーム膜構成成分と薬剤水溶液とを混合して調製されるが、代わりにそうした懸濁液を別途に調製して、次いで圧力容器内に供給してもよい。
封入物質のリポソーム内への内包化の効率は、リポソーム膜用脂質の全脂質量と、超臨界二酸化炭素との比率、封入物質などを含む水溶液との比率によっても左右される。ここでいう全脂質量とは、リポソーム膜を構成するリン脂質類、ステロール類、その他の添加した脂質類すべてを対象とした総和の質量である。大部分のリポソームが1枚膜よりはむしろ数枚膜のリポソームとして形成させるために、添加する脂質量は、従来使用されている脂質量よりも1.5〜2.5倍多くしてもよい。具体的には強撹拌下で、最終的に二酸化炭素、1質量部に対して、脂質、0.075〜0.125質量部、好ましくは0.08〜0.1質量部の割合で混合し分散させる。脂質量が多すぎると、リポソーム作成時には脂質の溶け残りが生じるおそれがある。しかしながら撹拌当初は上記脂質を含む脂質相が存在してもよく、次のような強撹拌により、脂質分子が配列する、CO2/水の界面を多数生じさせて脂質の小ミセルが多数形成されれば内包率も上昇することとなる。脂質と超臨界二酸化炭素との乳化は、エタノールなどを添加しなくとも下記のようにPEG基を有する脂質の存在で促進される。
「強撹拌」とは、混合溶液の容量や撹拌手段によって好ましい範囲が異なる。例えば、混合溶液の容量が10〜100mL程度の場合において、長さ15mm、直径5mmの略円柱状の撹拌子を用い、マグネチックスターラーで回転数400〜4000rpm、好ましくは1000〜1500rpm、特に好ましくは1200〜1400rpmで撹拌することを意味する。なお、混合溶液の容量や撹拌手段が上記とは異なる場合であっても、前記撹拌条件で混合溶液に与えられるせん断力等を考慮して、適宜撹拌条件を定めることが好ましい。具体的には、撹拌条件が以下の式を満たすことが特に好ましい。
式:C = N × V -0.15
C:撹拌子または撹拌羽根の回転数回転数(rpm)
V:混合溶液の容量(L)
N:300〜3000
また、強撹拌の時間は、1〜120分間、好ましくは5〜60分間であることが望ましく、混合液量、脂質量に応じて適宜設定する。なお、上記強撹拌の時間には、薬剤水溶液を供給する時間も含む。
このような条件を満たす強撹拌下で、リポソーム膜構成成分と、超臨界二酸化炭素とを所定の時間混合することにより、リポソームの生成効率が良くなり、水溶性薬剤の内包率がより高いリポソームを含有する水性分散液を得ることができる。撹拌手段として、特に限定されないが、マグネチックスターラー、ホモジナイザー、ホモミキサー、ウルトラミキサーなど、通常の撹拌機を使用してもよい。
リン脂質、カチオン性脂質、コレステロールを含む脂質類は、そもそも超臨界二酸化炭素、水のいずれにも溶けにくいし、分散もしにくい。所望する形態のリポソームが効率的に形成されるためには、脂質類が超臨界二酸化炭素中に良好に分散し、両者間の乳化が進んで均質な状態を形成することが重要な鍵である。そのための溶解助剤(または助溶剤、分散促進剤)として、ヒドロキシル基を有する少なくとも1種の化合物を利用して溶解、分散または混合をすることが好ましい。
ヒドロキシル基を有する化合物(すなわちヒドロキシル基含有化合物)には、親水性基として例えば、ヒドロキシル基、ポリオール基、ポリアルキレングリコールエーテル基、またはポリオール/ポリグリコールエーテル基などの組み合わせを、有する化合物が含まれる。実際に溶解助剤として使用できるヒドロキシル基含有化合物としては、リン脂質、コレステロールなどの脂質膜成分と親和性を示し、これらと充分混合するものが望ましい。さらに、脂質膜成分を極性の液化二酸化炭素中に良好に分散させ、溶解させるためには、適度の親水性と疎水性を兼ね備えた両親媒性のものが好適である。
上記のヒドロキシル基を有する化合物において、さらに残存する溶解助剤の毒性をも懸念する場合には、安全性の観点から、低級アルコールなどを用いないことが望ましい。したがって、効力および安全性を考慮してより好ましい溶解助剤は、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール基を有する化合物である。ポリエチレングリコール基を有する化合物として、具体的にはポリエチレングリコール基を有する脂質、例えばPEG−リン脂質が好ましい。そのオキシエチレン単位が10〜3500、好ましくは100〜2000のポリエチレングリコールが適する。
このようなヒドロキシル基を有する化合物を1種または2種以上併用することは、内包率を向上させるために望ましい。ヒドロキシル基を有する化合物を、超臨界状態もしくは亜臨界状態にする二酸化炭素の0.01〜1質量%、好ましくは、0.1〜0.8質量%の割合で溶解助剤として使用するのがよい。ヒドロキシル基を有する化合物が、ポリエチレングリコール基を有する脂質である場合、リン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ポリエチレングリコール基を有する脂質のモル比が100/5〜100/25、好ましくは100/5〜100/10である。
溶解助剤としてエタノールなどを用いる従来の超臨界二酸化炭素法では、エタノールが、超臨界二酸化炭素中へ脂質類が溶解もしくは分散することを促進する。その結果、コレステロールとリン脂質などを含有する二酸化炭素領域と、主にPEG化リン脂質および水溶性薬剤を含有する水の領域からなる2相系を形成し、これが撹拌されると超臨界二酸化炭素の乳化が進行し、脂質のミセルが形成される。最終的には、1枚膜の脂質膜を有するリポソームが主として調製されている。
これに対し本発明の方法では、リポソーム膜構成成分としてのポリエチレングリコール基を有する脂質(例えばPEG−リン脂質)が、エタノールなどの溶解助剤に代わって乳化促進作用をする。水溶性薬剤およびPEG化リン脂質が水相に溶解もしくは分散して水の表面張力を下げるとともに、リン脂質およびコレステロールなどが集まった脂質相もまた形成され、脂質類をほとんど含まない超臨界二酸化炭素の相との3相系の状態となる。撹拌により超臨界二酸化炭素の乳化が進行するが、界面を従来法よりも多く形成することとなり、そうした多数の界面に脂質が配列して脂質単膜を形成する。特に脂質量を多くして上記の強撹拌を行なう条件下では、ミセルが均一で小さいものが多数生成する。
結局、エタノールなどが存在してもしなくとも、超臨界二酸化炭素の乳化が起きて脂質ミセルが形成される点では同じであるが、強撹拌を行なう本発明の方法では、均一な微小ミセルが効率的に形成されるため、その後の二酸化炭素の排出によって誘発される、脂質単膜から脂質二分子膜の形成の過程において、水溶性薬剤の内包率は、例えば17%から21%へと高くなる。エタノールなどを用いる従来の超臨界二酸化炭素法では、主に1枚膜リポソームが形成されるのに対し、本発明の方法では、脂質量を増やしたので2枚膜から10枚膜までの多重膜リポソームを主体に形成される。このように、脂質量、撹拌条件および溶解助剤を変更することにより、内包率の向上と、生成したリポソームの形態が異なることが注目される。さらに驚くべきことにこのような多重膜リポソームにおいては、整粒工程で再び内包率の上昇が観察され、膜の再構成が起きていることが示唆される。
本発明の製造方法で使用する超臨界状態(亜臨界状態を含む)の二酸化炭素の温度は、一般には32〜70℃に設定されるが、好ましくは32〜65℃、より好ましくは45〜65℃である。リポソーム膜構成成分に転移温度を有するリン脂質が含まれる場合、「転移温度+10℃」以下、好ましくは「転移温度+5℃」以下、さらに好ましくは「ほぼ転移温度」となるように設定することが望ましい。従来は、リン脂質の転移温度よりも高い温度に加温すると、転移温度を有するリン脂質は液晶状態となって流動性が高まり、リン脂質が超臨界二酸化炭素と効率良く混合されるとして、リポソームの調製が50〜80℃で行われていた。しかし本発明者らは、超臨界状態の二酸化炭素の温度を、上記のようにリン脂質の転移温度付近であっても、リン脂質に過度の熱がかからないため変性することがなく、さらにリン脂質が規則的に配列してリポソーム膜が生成されることを見出した。乳化促進のために強撹拌の操作を行なう状況下では、局所的過熱を軽減する意味からも上記の温度範囲を採用することが望ましい。また、上記温度範囲において適宜選択されるが、超臨界状態の二酸化炭素の好適な圧力は、5〜50 MPa、好ましくは10〜30 MPaである。
・第3工程
第3工程では、リポソーム膜構成成分と、超臨界二酸化炭素と、薬剤水溶液とを充分に混合した後に、系内に必要であれば水を加えて、圧力容器内を減圧する。この混合溶液から二酸化炭素を排出することにより、水溶性薬剤などが内包されたリポソームの水性分散液が調製される。この過程でリポソームは水相に転相していると推定されるため、二酸化炭素を排出するだけで、水溶性薬剤を内包するリポソームが分散している水性分散液が生成する。リポソーム内部にも上記水溶液が封入されているため、水溶性薬剤はリポソームの外部水相のほかにリポソーム内部の水相に存在し、「内包」の状態にある。
前記第3工程で得られたリポソームの水性分散液を、該リポソーム膜構成成分のリン脂質の転移温度〜(該転移温度+10)℃で、0.1〜3時間、好ましくは10〜60分間、インキュベートしてもよい。上記条件でのインキュベーションを行なうことにより、例えば、凝集して塊状になったリポソームの離反、分散が促される。このような追加操作を行なうことにより、その後に行なわれる第4工程の加圧ろ過処理の間に、流動性が増した脂質分子の脂質膜内での再配置が起こって、安定な膜構造が形成されるとともに水溶性薬剤の内包が促進される。
・第4工程
リポソームの粒径の調整は、処方またはプロセス条件を変更することにより行なうことができる。例えば、上記の超臨界状態の圧力を大きくすると形成されるリポソームの粒径は小さくなる。作製するリポソームの粒径分布をより狭い範囲に揃えるには、ポリカーボネート膜、セルロース系の膜などでろ過してもよい。第4工程では、圧力容器内を空気などの導入により大気圧に調整すること(第3工程)により得られたリポソームの水性分散液を、0.1〜1.0μmの孔径を有する複数のろ過膜を通す。このろ過膜としては、ポリカーボネート系、セルロース系などのタイプを適宜使用することができ、孔径は大きいものから小さいものへと順次小さくしていくことが好ましく、最終的には0.05〜0.4μm、好ましくは0.1〜0.4μm、さらに好ましくは0.15〜0.2μmの範囲まで孔径を小さくしていくことが望ましい。加圧押出しろ過の操作は、50〜90℃、好ましくは55〜85℃で、0.01〜1.0MPa、好ましくは0.01〜0.8MPaの圧力下で行なわれる。リン脂質の転移温度以上に加温すると、転移温度を有するリン脂質は液晶状態となり、流動性が高まる。本発明の製造方法において、リポソームを構成する脂質膜のリン脂質類には、転移温度を有するリン脂質が少なくとも含まれているため、水溶性薬剤を封入した比較的粘度の高いリポソーム分散液であっても、フィルターの目詰まりを起こすことなく粒径の揃ったリポソームを作製することができる。
整粒のための操作は、例えばろ過膜として0.1〜1μmの孔径のフィルターを装着した静圧式押出装置に通すことにより行われる。各種の静圧式押出装置、例えば「エクストルーダ」(商品名、日油リポソーム製)、「リポナイザー」(商品名、野村マイクロサイエンス製)などを使用して、フィルターを強制的に通過させる。静圧式押出装置に通すことにより、粒径分布が狭い範囲に揃ったリポソームを効率よく調製することができる。さらに小さい平均粒径に揃えるには、0.45μmなどのフィルターでろ過する。加圧ろ過操作は、必要であれば繰り返し実施される。この押出しろ過法については、例えばBiochim.
Biophys.Acta 557巻,9ページ(1979)に記載されている。このような「押出し」操作を取り入れることにより、本発明者らは上記サイジングに加えて、水溶性薬剤の内包率が上昇することを見出した。第1工程において脂質量を通常よりも多く使用した場合、形成されるリポソームは既に報告されているような1枚膜(非特許文献1)ではなく多重層膜が多い。上記の加圧押出し操作により、多重層膜からなるリポソームにおいても、外層のはがれやすい膜が脱落するとともに脂質膜の再構成を含む膜構造の再構築および整粒化が起きて、2枚〜10枚膜からなるリポソームが生成しているためと推測される。さらにこのような処理を行うことにより、実質的にエタノールなどの有機溶媒系の溶解助剤を用いなくても、封入物質のリポソーム内への内包率が向上するとともに、リポソームを微細粒子化することができる。さらに、残存する溶解助剤により膜強度が低下するおそれもないため、リポソームの保存安定性に優れる。内包率の上昇の他に、リポソーム外に存在する水溶性薬剤の濃度の調整、リポソーム分散液の交換、望ましくない物質の除去も併せて可能になるという利点もある。なお、必要であれば上記孔径のろ過膜でろ過する前に、1.0〜2.0μm程度のろ過膜でろ過し、サイジングや、望ましくない物質の除去を予備的に行ってもよい。
・濃縮工程
本工程は、形成されたリポソームを含有する濾過液を濃縮する工程である。リポソームの水性分散液を上記のようにろ過膜でろ過し、必要に応じてさらに限外ろ過、遠心分離、ゲルろ過などの方法により、リポソーム内に内包されなかった薬剤を除去して精製してもよい。本発明の方法では、水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液を前記の第3工程または第4工程の後に、限外ろ過を行なうことにより濃縮することが好ましい。
限外ろ過は、通常の限外ろ過膜および装置を使用して行なうことができる。限外ろ過膜として、アクリルニトリル共重合体、芳香族ナイロン、ポリサルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルサルホン、ポリイミドなどの樹脂からなる膜が利用できる。これらの限外ろ過膜のカットオフ分子量は、10,000〜20,000が望ましい。限外ろ過の操作は、20〜30℃、好ましくは25℃で、0.01〜0.5MPa、好ましくは0.1〜0.45MPaの圧力下、下で回収するデッドエンドのろ過方式か、またはクロス・フローのろ過方式で行なう。あるいは迅速で行なえるが、処理容量が極めて少ない場合に好都合な遠心操作でろ過を促進する遠心式限外ろ過であってもよい。
本発明による製造方法では、これらのろ過操作を行なうことにより、水溶性薬剤のリポソームへの内包率(すなわち、水溶性薬剤全量に対するリポソームに内包される水溶性薬剤の比率)を25〜35%まで上昇させることができる。限外ろ過による濃縮で、リポソーム外にある水溶性薬剤は、塩類、水性媒体などともに限外ろ過膜の二次側に移行する。これに対し、高分子のために膜を透過しないリポソームを含有している水性媒体においては、水溶性薬剤の濃度は減少し、反対にリポソームの濃度が上昇する。結局、リポソーム内に内包されている水溶性薬剤は、リポソーム膜内にそのまま保持されているために、内包率は増大することとなる。
限外ろ過法による濃縮を第3工程の後に実施してもよく、この場合には続いて行なわれるエクストルーダなどを用いる、第4工程となる押出しろ過のための濃縮操作の意味をもつ。そうした中間的な濃縮をする場合にも第4工程の後に再び限外ろ過を実施することとなる。また所定のリポソーム濃度となるまで限外ろ過法により濃縮し、さらに通常使用される希釈剤等の製剤補助剤を適宜混合して、リポソーム、薬剤、製剤助剤のそれぞれの濃度について最終的な調整をさらに行なってもよい。また、リポソームの水性分散液を濃縮して容量を減らしてからリポソームを凍結乾燥させて、粉末形態のリポソームを効率よく得ることもできる。リポソームを凍結乾燥した場合には、使用直前に水性媒体などで再懸濁させて用いる。
さらに前記限外ろ過の後、115〜140℃、好ましくは118〜125℃、より好ましくは121℃で蒸気滅菌してもよい。これによって無菌調製品が得られ、包装工程に移される。
本発明の方法により製造されるリポソームは、実質的に2枚膜〜10枚膜、好ましくは2枚膜〜数枚膜(例えば3枚、4枚、5枚または6枚の膜)からなるリポソームである。このようなリポソームは、上記工程(i)〜(v)による製造方法において主成分として生成する。「実質的に」とは、本発明のリポソーム含有製剤において、2枚から10枚の膜で構成されるリポソームを、製剤中に含まれる全リポソームのうち、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%を占めることを意味し、80〜98%含むことがより好ましい。
これに対して1枚膜のリポソームは、リン脂質二重層が一層としてなる膜(unilamellar vesicle)で構成されるリポソームである。これは凍結かつ断(Freeze fracture )レプリカ法による透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において、レプリカが概ね1つの層として認められるリン脂質二重層により構成されているものである。すなわち、観察したカーボン膜に残された粒子の跡について段差がないものが1枚膜と判定され、2つ以上の段差が認められるものは「多重層膜」と判定される。2枚もしくは3枚の膜で構成されるリポソームは、1枚膜リポソームよりも強度が増しており、上記の第4工程で実施される整粒処理でも壊れない。
1枚膜リポソームは、脂質膜成分の溶媒として超臨界二酸化炭素を使用し、水による相分離方式により生成することが知られ、特にエタノールを溶解助剤として用いると、効率よく作製できる。これに対して従来のBangham法や逆相蒸発法(REV法)などによるリポソーム作製方法によると、様々なサイズ、形態の多重層膜(multilamellar vesicles; MLV)からなるリポソームがかなりの割合で存在することが多い。1枚膜または数枚膜のリポソームは、MLVと比較して、リポソームの投与量、換言すると投与脂質量が大きくならないという利点もある。
リポソーム膜の脂質膜枚数が少ない数枚膜のリポソーム、特に粒径の大きい1枚膜リポソームであるLUV(Large unilamellar vesicles)は、多重層膜リポソームに比べて、大きい内包容量を提供するという利点がある。反面、水溶性薬剤の内包率が良好な1枚膜または数枚膜のリポソームでも、内包する化合物の質量が相対的に多過ぎるとリポソームの安定性は低下する。特にイオン強度の急激な変化には脆弱である傾向が観察されていた。本発明の製剤に使用するリポソームの作製では、2枚膜〜10枚膜構造のリポソーム、好ましくは数枚膜リポソームが効率よく形成されるように超臨界二酸化炭素法およびその後の整粒工程を改良している。さらにリポソーム膜にポリアルキレンオキシド基を有する化合物(例えばリン脂質)、ステロール類、グリコールなどを含有させて、脂質膜の安定化を図っている。その結果、作製されたリポソームは、塩ショックに対しても安定的であることが判明した。
リポソーム含有製剤の製造
本発明のリポソーム含有製剤は、上記リポソームを含み、さらに1種類以上の生理的に許容され得る製剤助剤を用いて、当業界において公知の技術により製造することができる。本発明の製剤は、リポソームの脂質膜内部の水相およびリポソームを懸濁する水性媒体中に製剤助剤を含有している。この製剤助剤は、リポソームの製剤化に際し、水溶性薬剤とともに添加される物質であり、これまでの製剤製造技術に基づいて各種の物質が必要に応じて使用される。具体的には生理学的に許容される各種の緩衝剤、EDTANa2−Ca、EDTANa2などといったエデト酸系のキレート化剤、無機塩類、薬理的活性物質(例えば血管拡張剤、凝固抑制剤など)、さらには浸透圧調節剤、安定化剤、抗酸化剤(例えばα‐トコフェロール、アスコルビン酸)、粘度調節剤、保存剤なども挙げられる。好ましくは、アミン系緩衝剤およびキレート化剤をともに含めるのがよい。pH緩衝剤として、水溶性アミン系緩衝剤および炭酸塩系緩衝剤が好ましく用いられる。特に好ましくはアミン系緩衝剤であり、中でもトロメタモールが望ましい。キレート化剤は好ましくは、EDTANa2−Ca(エデト酸カルシウム2ナトリウム)である。
また、「水性媒体」とは、水溶性薬剤もしくは非イオン型ヨウド系化合物、製剤助剤などを溶解もしくは懸濁する水をベースとする溶媒である。その水は、滅菌した発熱物質を含まない水を使用する。リポソーム脂質膜内部の水相以外の水溶液(すなわち該リポソームを懸濁する水性媒体)にも上記の水溶性薬剤および製剤助剤が含まれている場合、より好ましくは、脂質膜内外の水相に水溶性薬剤が実質的に同一の濃度で含有されている態様であり、そうした場合には該膜内外で著しい浸透圧差が生じることはなく、リポソームの構造安定性が保たれる。貯蔵期間中でもリポソームの浸透圧効果による不安定化を防止でき、リポソーム内における水溶性薬剤の保持安定性は向上する。
上記溶液もしくは懸濁液の好ましいpH範囲は、室温で6.5〜8.5、さらに好ましくは6.8〜7.8である。造影物質が多ヒドロキシル基を有する水溶性ヨウド系化合物である場合、好ましい緩衝液は、米国特許第4278654号に記載されているような負の温度係数を有する緩衝液である。アミン系緩衝液はこのような要求を満たす性質を有しており、好ましくはトリス(TRIS)である。このタイプの緩衝液は、オートクレーブ温度で低いpHを有し、このことがオートクレーブ中のリポソーム含有製剤の安定性を増し、他方、室温では生理的に許容されるpHに戻る。したがって、注射用無菌製剤を製造するために、リポソーム調製物をオートクレーブ滅菌できることは極めて便利であり、貯蔵安定性なども確保できる。本発明の製剤は、好ましくは滅菌した形態として上市される。その場合、滅菌ろ過、オートクレーブ滅菌、または加熱滅菌により無菌製剤を得る。
本発明において、水溶性薬剤の内包効率および内包の安定性に加えてリポソームの膜脂質の質量も考慮されねばならない。リポソームの膜脂質の質量が多くなると製剤の粘度が大きくなる。リポソーム内への薬剤の封入量として、リポソーム内に封入された水溶液中に、全薬剤(非イオン型ヨウド系化合物および製剤助剤を含む)がリポソーム膜脂質に対して、1〜8、好ましくは3〜8、より好ましくは5〜8の質量比(g/g)で含有されていることが望ましい。リポソーム内に内包された全薬剤の質量比が1未満であると、比較的多量の脂質を含有することとなり、製剤の粘度は増大し、結果的に薬剤の送達効率が悪くなる。1枚膜もしくは数枚膜のリポソームは、内包容積および送達効率に優れるため有利である。反対に、リポソーム膜脂質に対する全薬剤の封入質量比が8を超えると、リポソームは構造的にも不安定となり、リポソーム膜外への薬剤の拡散、漏出は、貯蔵中または生体内に注入された後でも避けられない。
X線造影剤
本発明による製造方法で得られるリポソーム含有製剤は、本発明の範囲内にある。本発明のリポソーム含有製剤の好ましい態様は、水溶性薬剤が非イオン型ヨウド系化合物であり、かつ、1種類以上の生理的に許容される製剤助剤を含有し、X線造影剤として用いられるリポソーム含有製剤である。その濃度は、撮像の目的、部位、造影剤中の化合物の性質、および患者の状態に依存し、必要に応じて調節することができる。またX線造影剤の至適投与量は上記条件を勘案して個々に設定するのが通例である。このためリポソーム内外のヨウド系化合物の総量が、従来の投与量と同程度になるようにしてもよい。余りに高濃度の溶液とすると、リポソーム同士の凝集、粘度の増大という不都合な事態も起こり得る。本発明のX線造影剤は、ヨウド含有量として、通常、想定される10〜300mLの製剤溶液の投与量では、40〜450mgI/mLであり、好ましくは70〜400mgI/mL、リポソーム内への造影物質を内包する効率の観点からは 100〜350mgI/mL、特に好ましくは、150〜300mgI/mLの範囲である。また、前記脂質膜内外の水相に、ヨウド系化合物および製剤助剤がそれぞれ実質的に同一の濃度で含有されることが好ましい。
本発明のX線造影剤における全脂質の含有量は、20〜100 mg/mL造影剤、好ましくは20〜80 mg/mL造影剤である。この場合の「全脂質」とは、リポソームを構成するリン脂質、ステロール、グリコールといったすべての種類の脂質類を含める意味である。そうした全脂質は、造影剤に含まれるリポソームの量と概ね見なしてもよい。リポソームの形態には種々あるために、全脂質量は単純にリポソームの数には対応しない。本発明による製造方法によれば、リポソームの形成が効率的に行われ、ある量までは脂質量を多くするほど内包率も増加する傾向にあった。
本発明のX線造影剤は、全身投与または局所投与いずれにも使用される。好ましくは注射剤または点滴注入剤として全身的に静注投与される。直接投与ができない部位へ局所的に投与する場合は、例えばカテーテルまたは他の適当な薬物送達システムなどを用いて、当業界で公知の技術により投与を行うことができる。注入抵抗を少なくして患者の苦痛を軽減し、血管外漏出の危険を回避するため、本発明のリポソーム分散液の粘度(オストワルド法で測定した場合)は、37℃で、30 mPa・s以下、好ましくは25 mPa・s以下、である。このような範囲内では実用上問題ないとされる(特許文献1)。またX線造影剤の浸透圧モル濃度は、典型的には250〜500 mosmol/L、好ましくは290〜350 mosmol/Lである。投与する造影剤のオスモル濃度が高いと、心臓・循環系の負担が大きい。血液と等張の溶液または懸濁液を得るには、等張液を提供する濃度で、造影剤を媒質中に溶解もしくは懸濁させる。例えば造影物質の溶解性が低いために造影物質だけでは等張液を提供できない場合、等張の溶液もしくは懸濁液が形成されるように他の非毒性の水溶性物質、例えば塩化ナトリウムのごとき塩類、マンニトール、グルコース、ショ糖、ソルビトールなどの糖類を媒質中に添加してもよい。
本発明を以下の実施例によって、具体的に説明する。実施例は実例を挙げて説明しようとするものであり、本発明の範囲を何ら限定しようとする意図のものではない。
[実施例1]
ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)340.2mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE-020CN)111.5mgの混合物をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、次いで液体二酸化炭素13gを加え、33℃、12MPaの超臨界状態にした。次いで容器内を撹拌しながら、さらに造影剤溶液(日局イオパミドール溶液(ヨウド濃度300mgI/mL)、トロメタモールを1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)、10mLを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、造影剤溶液を含有するリポソーム分散液を得た。
[実施例2]
ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)396.6mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE-020CN)111.5mgの混合物をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、次いで液体二酸化炭素13gを加え、65℃、12MPaの超臨界状態にした。次いで容器内を撹拌しながら、さらに造影剤溶液(日局イオヘキソール(ヨウド濃度300mgI/mL)、トロメタモールを1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)、10mLを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、造影剤溶液を含有するリポソーム分散液を得た。
[実施例3]
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)368.4mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE-020CN)111.5mgの混合物をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、次いで液体二酸化炭素13gを加え、50℃、12MPaの超臨界状態にした。次いで容器内を撹拌しながら、さらに造影剤溶液(日局イオヘキソール(ヨウド濃度300mgI/mL)、トロメタモールを1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)、10mLを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、造影剤溶液を含有するリポソーム分散液を得た。得られた分散液を80℃まで加熱し、アドバンテック社製のポリカーボネート・フィルター、0.8μmおよび0.4μmを用いた静圧式押出装置で加圧濾過して造影剤溶液を含有するリポソーム分散液を得た。
[実施例4]
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)368.4mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE-020CN)111.5mgの混合物をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、次いで液体二酸化炭素13gを加え、50℃、12MPaの超臨界状態にした。次いで容器内を撹拌しながら、さらに造影剤溶液(日局イオヘキソール(ヨウド濃度150mgI/mL)、トロメタモールを1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)、10mLを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、分散液を得た。
得られた分散液を80℃まで加熱し、実施例3と同様にしてアドバンテック社製のポリカーボネート・フィルター、0.8μmおよび0.4μmで加圧濾過して造影剤溶液を含有するリポソーム分散液を得た。この分散液に対して、ウルトラフィルター(アドバンテック社製、分画分子量20,000)を用いて限外濾過することにより濃縮されたリポソーム分散液を得た。
[実施例5]
ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)396.6mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE-020CN)111.5mg、および造影剤溶液(日局イオメプロール(ヨウド濃度300mgI/mL)、トロメタモールを1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)、10mLをステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、よく混合し懸濁液を得た。次いで容器内を撹拌しながら、液体二酸化炭素13gを加え、60℃、12MPaの超臨界状態とした。二酸化炭素注入後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、分散液を得た。
得られた分散液を80℃まで加熱し、実施例3と同様にしてアドバンテック社製のポリカーボネート・フィルター、0.8μmおよび0.4μmで加圧濾過して造影剤溶液を含有するリポソーム分散液を得た。この分散液を、45℃で1時間インキュベートし、目的のリポソーム分散液を得た。[比較例1]
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)368.4mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE-020CN)111.5mgの混合物をクロロホルムとエタノールと水との混合物(重量比 100:20:0.1)10mLをメスフラスコ中で混合した。この混合物を湯浴(65℃)上で加熱し、溶液をロータリーエバポレータで溶媒を蒸発させた。残渣をさらに2時間、真空乾燥して、脂質フィルムを形成させた。ここに、さらに造影剤溶液(日局イオパミドール:ヨウド濃度300mgI/mL)10mLを混合し、この混合物を50℃に加熱しながらミキサーで約10分間撹拌した。さらに撹拌することにより造影剤溶液を含有するリポソームの分散液を得た。この混合物を80℃まで加熱し、実施例3と同様にしてアドバンテック社製のポリカーボネート・フィルター、0.8μmおよび0.4μmで加圧濾過してリポソーム含有造影剤を得た。
[比較例2]
ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)340.2mgと、コレステロール147.4mg、PEG−リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE-020CN)111.5mgの混合物をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、次いで液体二酸化炭素13gを加え、70℃、12MPaの超臨界状態にした。次いで容器内を撹拌しながら、さらに造影剤溶液(日局イオパミドール溶液(ヨウド濃度300mgI/mL)、トロメタモールを1mg/mL、エデト酸カルシウム2ナトリウム0.1mg/mLを含有)、10mLを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、造影剤溶液を含有するリポソームの分散液を得た。
Figure 2006115155
[評価]
<リポソームの平均粒径および多分散指数>
粒径(粒子径)および多分散指数は、水溶性薬剤を内包するリポソームを含む分散液を、動的光散乱粒径測定器(シスメックス社、Malvern HPPS)を用いて、25℃の条件下で測定した。粒径はz平均による平均粒子サイズを示す。多分散指数は多分散度を示し、多分散指数が0に近いほど、その粒度分布が単分散であることを示す。

Claims (14)

  1. (i)圧力容器内で32〜65℃の下、リポソーム膜構成成分と超臨界二酸化炭素とを混合して懸濁液を得る第1工程と、
    (ii)次いで、該懸濁液に薬剤水溶液を添加して混合する第2工程と、ならびに
    (iii)その後、該圧力容器内を減圧して二酸化炭素を排出することにより、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液を調製する第3工程と、を有し、該リポソーム膜構成成分には、少なくとも転移温度を有するリン脂質が含まれることを特徴とするリポソーム含有製剤の製造方法。
  2. (i)リポソーム膜構成成分と薬剤水溶液とを混合することにより得られた懸濁液を収容している圧力容器内に、液化二酸化炭素を供給する第1工程と、
    (ii)次いで、前記の懸濁液と液化二酸化炭素とを混合しながら、該圧力容器内を32〜65℃の下、加圧して液化二酸化炭素を超臨界二酸化炭素とする第2工程と、ならびに
    (iii)その後、該圧力容器内を減圧して二酸化炭素を排出することにより、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液を調製する第3工程と、を有し、該リポソーム膜構成成分には、少なくとも転移温度を有するリン脂質が含まれることを特徴とするリポソーム含有製剤の製造方法。
  3. 前記の第3工程の後で、0.1〜1μmの孔径を有するろ過膜を装着した静圧式押出装置を用いて、50〜90℃、0.01〜0.8MPaの圧力下で、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液をろ過して、平均粒径が0.05〜0.8μmのリポソームに整粒する第4工程をさらに有することを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  4. 前記の第3工程または第4工程の後、該水溶性薬剤が内包されたリポソームの水性分散液を、限外ろ過を行なうことにより濃縮する工程を有することを特徴とする請求の範囲第3項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  5. 前記のろ過により、水溶性薬剤のリポソームへの内包率を25〜35%まで上昇させることを特徴とする請求の範囲第4項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  6. 前記限外ろ過の後、115〜140℃で蒸気滅菌することを特徴とする請求の範囲第4項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  7. 前記第3工程の後、該リポソーム膜構成成分のリン脂質の転移温度〜該転移温度+10℃で、0.1〜3時間インキュベートすることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  8. 前記リポソーム膜内外の水相における水溶性薬剤の濃度が実質的に同じであることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第7項のいずれか1項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  9. 前記懸濁液が、リポソーム膜構成成分と薬剤水溶液とを混合して調製され、次いで圧力容器内に供給された懸濁液であることを特徴とする請求の範囲第2項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  10. 前記の転移温度が、22〜60℃の範囲にあることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  11. 前記の工程により作製されたリポソームのうち、その脂質膜が2〜10枚膜で構成されるリポソームが少なくとも70%を占めていることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第10項のいずれか1項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  12. 前記リポソーム膜構成成分として、少なくともリン脂質、カチオン性脂質、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する脂質およびステロール類を含む脂質を含み、リン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ステロール類のモル比が100/60〜100/90、リン脂質(PEG-リン脂質を含まず)/ポリエチレングリコール基を有する脂質のモル比が100/5〜100/25であることを特徴とする請求の範囲第11項に記載のリポソーム含有製剤の製造方法。
  13. 請求の範囲第1項乃至第12項のいずれか1項に記載された製造方法で得られることを特徴とするリポソーム含有製剤。
  14. 水溶性薬剤が、非イオン型ヨウド系化合物および1種類以上の生理的に許容される製剤助剤であり、X線造影剤として用いられることを特徴とする請求の範囲第13項に記載のリポソーム含有製剤。
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