JP2005144734A - ポリエステルフィルム被覆金属板、ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法、及びポリエステルフィルム被覆金属缶 - Google Patents

ポリエステルフィルム被覆金属板、ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法、及びポリエステルフィルム被覆金属缶 Download PDF

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芳輝 近藤
Yukihiro Takao
幸博 高尾
Junji Matsumura
淳治 松村
Tomohiko Hayashi
知彦 林
Kuniharu Mori
邦治 森
Hirohisa Fujita
裕久 藤田
Hideto Ohashi
英人 大橋
Tsutomu Isaka
勤 井坂
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Abstract

【課題】高速・高加工度での製缶性に優れたポリエステルフィルム被覆金属板を提供する。
【解決手段】エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルに、亜リン酸エステル系安定剤が該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合し、且つ重量平均分子量、密度を限定した混合ポリエステルを、表面粗度(Ra)が0.2μm以上〜4.0μm未満の冷却ロールで冷却固化後、少なくとも縦方向に1軸延伸してポリエステルフィルムを製造する。該ポリエステルフィルムのブチレンテレフタレートの融点−10℃から融点+50℃に加熱された金属板の少なくとも片面に圧着させて金属板を被覆した後、更に該被覆金属板の板温度を該ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートの融点以上に加熱した後に急冷して製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明はポリエステルフィルム被覆金属板、ポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法、及びポリエステルフィルム被覆金属板を成形して得られるポリエステルフィルム被覆金属缶に関するものである。
更に詳細には、成形性、特に金属缶の製缶性(例えば、絞り・しごき加工性)に優れたポリエステルフィルム被覆金属板に関するもので、そのポリエステルフィルム被覆金属板は従来の製造方法に比べて安価な方法で得られ、更に、そのポリエステルフィルム被覆金属板を製缶して得られる缶は、耐食性や、後述する耐デント性に優れているため内容物の保存性に優れ、又、内容物を充填・密封した後に施されるレトルト殺菌処理と言った熱水処理やパストロ殺菌処理と言った温水処理が施された後にも缶の外面フィルムは透明感を失わないため、印刷外観の保持性に優れたポリエステルフィルム被覆金属缶に関するものである。
スチールやアルミニウムを素材とした金属缶・容器は、その形状からスリーピース缶とツーピース缶とに大別される。
スリーピース缶は、地蓋、缶胴、天蓋から成るためスリーピース缶と呼ばれており、製胴方法が現在はシーム溶接や接着が主であることから、価格の安いスチールが使用されている。
一方、ツーピース缶は、地蓋と缶胴とが一体となったもので、それに天蓋とから成るためツーピース缶、又は缶胴部に接合部がないことからシームレス缶とも呼ばれ、絞り加工や絞り・しごき加工で製缶され、スチールとアルミニウムが使用されている。
従来、金属缶の場合、内面は内容物による腐食防止の点から塗装が施され、一方、外面は内容物の提示や商標デザインの提示等の点から塗装・印刷が施されている。こうした塗装にはエポキシ系、フェノール系と言った各種の熱硬化性塗料が使用され、該熱硬化性塗料は熱硬化性樹脂を有機溶剤に溶解したものや分散させたものを塗布・乾燥して金属を被覆するもので、一般に広く使用されている。しかしながら、こうした熱硬化性樹脂による被覆方法は乾燥時間が長くかかって生産性が低下したり、多量の有機溶剤による環境汚染など、種々の問題を発生させることが多い、と言った欠点があった。
こうした種々の問題を解消するため、近年、熱可塑性樹脂フィルムを積層した被覆缶が開発され、市場に出回っており、樹脂フィルムを金属板に被覆させる技術は、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3等、数多く提案され、開示されている。
しかし、こうした開示されている技術では、下記の数式1で表される缶壁部の加工度(板厚減少率とも呼ばれる)が高い絞り・しごき加工に耐えるフィルムは、内容物を充填・密封した後に施されるレトルト殺菌処理と言った熱水処理やパストロ殺菌処理と言った温水処理でフィルムの白化(フィルムが白くなる現象)が起こり易く、缶の外観を損ねることになり、一方、白化が起こり難いフィルムは高加工性に劣る、と言った状況で、両立できる樹脂フィルムがなかなか無く、高加工性と耐白化性の両立できるフィルム被覆缶が所望されている。
加工度(%)=((元板厚−缶壁部板厚)/元板厚))×100 …… 数式1
又、フィルム被覆材の製造技術の面からは、被覆金属板の製缶性は前述したようにツーピース缶の場合、熱可塑性樹脂フィルム被覆金属板の加工度(又は変形度合)が大きいので成形時に缶内面側の樹脂フィルムに傷が入り易く、その場合、缶内面の品質確保ができなくなるため、缶の品質検査を厳重に行う必要性が生じ、製品歩留まりが現行の塗装缶に比べて劣る、といった欠点が挙げられている。
又、内容物が充填・密封された缶を落とした場合、その部位に衝撃が加わり材料が変形するばかりでなく、同時にその衝撃と変形で被覆されているフィルムや塗膜にクラックが入り、激しい場合にはそこが缶の金属の腐食起点となる、と言った現象があり、内容物によっては金属腐食が孔食となり缶に孔が開くと言った穿孔缶となる場合があることから、耐食性は内容物の保存の点から重要な特性となっている。
従って、塗膜やフィルムは缶が落下させられてもクラックが入り難いことが重要で、こうした缶特性は、塗膜やフィルム面からは「耐デント性」と呼ばれているが、耐デント性は、特に、前述したレトルト殺菌処理と言った熱水処理やパストロ殺菌処理と言った温水処理によって、特に結晶性ポリエステルから形成されたフィルムの場合では著しく低下するため、充填する内容物に制約があった。
こうした背景もあって、成形技術の改善や同時に廉価な被覆金属板の製造方法の検討がなされてきている。
例えば、低価格の被覆金属板を得る方法としては、熱可塑性樹脂を溶融押出法で被覆する方法が、例えば特許文献4等で開示されている。
しかし、該方法ではTダイから金属板までの距離を短くすることが困難であり、その結果、両端部の厚みが非常に厚くなるため、厚みが均一な中央部分(実質的に金属板に被覆できる部分)が狭くなり、かつ切断除去した両端部を再利用できないため材料ロスが大きい、と言った欠点を有していた。
かかる欠点を回避するため、溶融押出後に冷却固化して得たポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートの未配向フィルムを、加熱された金属板に圧着させる方法が特許文献5等で開示されている。
該方法では、Tダイから金属板までの距離を短くすることが可能であり、その結果、厚みが均一な中央部分(実質的に金属板に被覆できる部分)が前記した方法より広がり、かつ切断除去した両端部を再利用できるため、材料ロスを少なくすることができる方法である。
しかしながら、該方法は両端部を切断する際、フィルムが破断し易く、又、原料ポリエステルとして、ポリブチレンテレフタレートの含有率が多くなると(例えば40重量%以上)、該原料ポリエステルからなるポリエステル製膜用として公知のクロムメッキの鏡面ロールを用いて30m/分以上の高速で製膜した場合、フィルム表面に微細な凹凸を発生させ易く、このフィルムを被覆した場合、金属板とフィルムの間に気泡が存在する状態となり、製缶時にこの気泡を起点とした微細なフィルム破れが発生し易い、と言う欠点があった。
又、前述した耐デント性について言えば、耐デント性が良好なポリエステル被覆積層体として、特許文献6等に、(I):ポリエチレンテレフタレート・セグメント、(II):ブチレングリコールと芳香族二塩基酸から誘導されたポリエステル・セグメント、(III):ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸から誘導されたポリエステル・セグメントを(I):(II):(III)=10〜70:12〜81:3〜54の重量比で含有し、更にヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜1.5重量%含有するポリエステルよりなる積層体が開示されている。
しかしながら、該積層体を被覆させた金属板を、例えば80缶/分の速い速度で絞り・しごき加工して金属缶を得ようとした場合、加工パンチ、又はダイスとの離型性が悪く、フィルムの破れが発生し易く、又、缶の外面側のフィルムがしごき加工の際に発生する、通称「カジリ」と呼ばれる缶高さ方向の疵が付き易く、ポリエステル被覆積層体として満足できるものではなかった。
特開平7−2241号公報 特開平7−195619号公報 特開平8−244750号公報 特開昭57−203545号公報 特開2001−1447号公報 特開平10−119183号公報
そこで、本発明の目的は、高速・高加工度での製缶性(例えば、絞り・しごき加工性)に優れた、ポリエステルフィルム被覆金属板を提供することである。
又、本発明の別の目的は、得られるフィルムの厚みが均一な中央部分(実質的に金属板に被覆できる部分)が広く、かつ切断除去した両端部を再利用できるため材料ロスを少なくすることができ、更に両端部を切断除去する際に、フィルムが切断しやすく、高速で溶融樹脂膜を冷却して固化した場合にもフィルムに微細な凹凸を発生させにくい、と言った利点を有し、生産効率の高い、低価格のポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法を提供することである。
更に、本発明の別の目的は、耐食性や缶が落下させられた時に起こるフィルムのマイクロクラックが発生し難い、と言った良好な耐デント性を、特にレトルト殺菌処理と言った熱水処理を経た後でも有しているため、内容物の保存性に優れ、又、レトルト殺菌処理と言った熱水処理やパストロ殺菌処理と言った温水処理を経てもフィルムの白化現象が起こらないため、缶の外観は美麗観を確保されるなど、従来にない優れた特徴を有するポリエステルフィルム被覆金属缶を提供するものである。
上記目的を達成するために、本発明のポリエステルフィルム被覆金属板は、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルに、亜リン酸エステル系安定剤が該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合されたポリエステルからなるポリエステルフィルムを金属板の両面に被覆させた金属板であって、該金属板の少なくとも缶の外面側に相当する面に被覆されている該ポリエステルフィルムの重量平均分子量(MW)が65000以上、密度が1.320g/cm以下であることを特徴とする。
又、上記目的を達成するために、本発明のポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法は、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルに、亜リン酸エステル系安定剤が該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合された、重量平均分子量(MW)が65000以上の混合ポリエステルを、Tダイから溶融押出して、押出した溶融樹脂膜を表面粗度(Ra)が0.2μm以上〜4.0μm未満の冷却ロールで冷却固化させた後、少なくとも縦方向に1軸延伸を行ってポリエステルフィルムとし、次いで両端部を切断除去した該ポリエステルフィルムを、該ポリエステルフィルムのブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点−10℃から融点+50℃に加熱された金属板の少なくとも片面に圧着させて金属板を被覆した後、更に該被覆金属板の板温度を該ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上に加熱した後に急冷することを特徴とする。
更に、上記目的を達成するために、本発明のポリエステルフィルム被覆金属缶は、前記のポリエステルフィルム被覆金属板を成形加工して得られるシームレス缶であって、少なくとも缶の内面側に被覆されているポリエステルフイルの密度が1.320g/cm以下であることを特徴とする。
本発明のポリエステルフィルム被覆金属板は、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルに、亜リン酸エステル系安定剤が該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合されたポリエステルからなるポリエステルフィルムを金属板の両面に被覆させた金属板であって、該金属板の少なくとも缶の外面側に相当する面に被覆されている該ポリエステルフィルムの重量平均分子量(MW)が65000以上、密度が1.320g/cm以下であることを特徴としており、これによって高速・高加工度での製缶性(例えば、絞り・しごき加工性)に優れた、ポリエステルフィルム被覆金属板を提供することが可能になった。
また、本発明のポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法は、金属板の少なくとも片面に、結晶性のポリエステルフィルムで、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルであり、更に、亜リン酸エステル系安定剤が該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合された混合ポリエステルを溶融し、表面粗度(Ra)が0.2μm以上〜4.0μm未満の冷却ロールにより冷却固化させた後、少なくとも縦方向に1軸延伸を行い、次いで両端部を切断除去した該ポリエステルフィルムを、該ポリエステルフィルムのブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点−10℃から融点+50℃に加熱された金属板の少なくとも片面に圧着させて被覆し、更に該被覆金属板の板温度を該ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上に加熱した後に急冷することを特徴としており、得られるフィルムの厚みが均一な中央部分(実質的に金属板に被覆できる部分)が広く、かつ切断除去した両端部を再利用できるため材料ロスを少なくすることができ、更に両端部を切断除去する際に、フィルムが切断しやすく、高速で溶融樹脂膜を冷却固化した場合にもフィルムに微細な凹凸が発生しにくい、と言った利点を有し、生産効率の高い、低価格のポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法を提供することができるようになった。
又、本発明のポリエステルフィルム被覆金属板を使用して、良好な耐食性や耐デント性を備えた、優れたポリエステルフィルム被覆金属缶が得られ、又、内容物を充填・密封した後に行われるレトルト殺菌処理で、フィルムの白化といった外観を大きく損ねる現象が発生せず、優れた印刷外観が保持・確保できるなど、多くの利点を有したポリエステルフィルム被覆金属缶が得られるようになった。
更に、本発明のポリエステルフィルム被覆金属板を成形して得られる缶は、少なくとも缶の内面側に被覆されているポリエステルフイルの密度が1.320g/cm以下であることを特徴としており、耐食性や缶が落下された時に起こるフィルムのマイクロクラックが発生し難い、と言った良好な耐デント性を、特にレトルト殺菌処理と言った熱水処理を経た後でも有しているため、内容物の保存性に優れた金属缶を提供することができるようになった。
まず、本発明で使用されるポリエステルフィルムについて述べる。
本発明で使用されるポリエステルフィルムは、製缶性と、内容物を充填・密封した後に施される殺菌処理時の白化の問題から、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルであり、該混合ポリエステル100重量部に対して亜リン酸エステル系安定剤を0.01〜3重量部配合してなる混合ポリエステルからなるポリエステルフィルムであることが必要である。
この中で、ブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルが40重量%未満では、内容物を充填・密封した後に施されるレトルト殺菌処理と言った熱水処理や、パストロ殺菌処理と言った温水処理でフィルムの白化現象が起こり、特に缶の外面外観を損ねるため、好ましくない。
一方、ブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルが70重量%を超えると製缶性に問題が発生し易く、特に缶外面側のフィルムが、しごき加工で缶高さ方向に縦疵が入る、通称、「カジリ」と呼ばれている現象が起こり、印刷外観を損ねるため、製品にならず好ましくない。
カジリは、特にしごき加工の加工度が高くなると発生しやすく、生産歩留まりが低下するだけでなく、場合によっては製造ラインをストップして金型の手入れを行う必要があり、生産性を著しく低下させる原因となる。
本発明では、被覆材や成形缶に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にするべく加熱する際、その熱による分子量の低下を防止するため、亜リン酸エステル系安定剤を、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とする混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合させてなる混合ポリエステルを用いることが必要である。
亜リン酸エステル系安定剤が0.01重量部未満の場合、特に80缶/分の高速製缶加工になると、カジリが起こり易く正常な缶が得られなくなり、又、耐デント性も低下し、好ましくない。
一方、亜リン酸エステル系安定剤が3重量部を超えても耐カジリ性や耐デント性と言った特性はさほど向上せず、配合による効果は飽和してくるだけでなく、フィルムの透明性が局部的に劣る透明欠陥が発生し易くなったり、また気泡の発生が起こることがあり、逆効果となってしまう結果となる場合があり、好ましくない。
なお、フィルムに配合される亜リン酸エステル系安定剤の組成は、特に限定されるものではないが、好ましい一例としては、ビス(2,4−ジ−第三ブチル)フェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−第三ブチル−4メチル)フェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジメチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等が挙げられる。
又、混合ポリエステルフィルムへの亜リン酸エステル系安定剤の配合方法も、特に限定するものでなく、ポリエステル製造時に亜リン酸エステル系安定剤を配合したポリマーを用いてフィルムを作製する方法、ポリエステルと亜リン酸エステル系安定剤を溶融混練して得たポリマーを用いてフィルムを作製する方法、混合ポリエステルと亜リン酸エステル系安定剤との混合物を用いてフィルムを作製する方法等の、いずれの方法も可能で、設備に合った方法を採用することができる。
更に、亜リン酸エステル系安定剤と、それ以外の安定剤又は酸化防止剤とを併用することも可能である。
なお、本発明におけるポリエステルには、必要に応じて紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤、無機又は有機粒子よりなる滑剤等を配合させてもよい。
本発明では、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主成分とする混合ポリエステルの特性を損なわない範囲でテレフタル酸以外のジカルボン酸成分とエチレングリコール、及びブタンジオール以外のグリコール成分を使用できる。
例えば、ジカルボン酸として、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボ酸、マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。又、エチレングリコール、及びブタンジオール以外の成分として、プロパンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコールが使用できる。
本発明におけるポリエステルの製造方法については特に限定しない。即ち、エステル交換法、又、は直接重合法のいずれの方法で製造されたものであっても使用できる。又、分子量を高めるために固相重合法で製造されたものであってもかまわない。更に、缶に内容物を充填・密封した後に実施されるレトルト殺菌処理、パストロ殺菌処理等でのポリエステル樹脂からの溶出オリゴマー量を少なくする点から、減圧固相重合法で製造されたオリゴマー含有量が低いポリエステルを使用することは好ましい。
次に、本発明の、被覆用ポリエステルフィルムの製造について述べる。
本発明の方法では、前述したエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルで、亜リン酸エステル系安定剤を該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部含む混合ポリエステルを、公知の1軸、又は2軸押出機内で溶融させた後、Tダイから層状に押出した溶融樹脂膜を冷却ロールで冷却固化させる。冷却ロールの表面粗度(Ra)は、Tダイから層状に押出す速度との関係で、フィルム製造の重要な要件となっており、本発明の方法では表面粗度(Ra)は0.2μm以上〜4.0μm未満であることが必要である。
即ち、Tダイから層状に押出した溶融樹脂膜を30m/分以上の速度で冷却固化させた場合、冷却ロールに沿って流れる空気が高速になり、高速になる程空気は逃げにくくなるため、冷却ロールの表面粗度(Ra)が0.2μm未満の場合はフィルムに微細な凹凸を発生させ易くなる。こうした状態のフィルムを金属板に被覆した場合、金属板とフィルムの間に気泡を巻き込んだ被覆金属板となり、成形でこの気泡を起点とした微細な破れがフィルムに発生するため、好ましくない。
一方、冷却ロールの表面粗度(Ra)が4.0μm以上の場合、冷却ロールに沿って流れる空気は逃げ易くなるが、熱伝導が不十分になってTダイから層状に押出した溶融樹脂膜の冷却固化が不完全となる場合があり、更にはロール表面の粗度プロフィルがフィルム面に転写してしまう場合があり、好ましくない。
特に、ロール表面の粗度プロフィルがフィルム面に転写した状態のフィルムを金属板に被覆させた場合、フィルム表面が斑状の外観になり、特に缶外面側で使用するフィルムの場合は外観不良となり易く、商品価値が低下する原因となり、好ましくない。
冷却ロールの表面粗度(Ra)は、溶融樹脂膜の冷却固化速度や得られるフィルムの表面外観から最適範囲を選定することが必要であるが、好ましくは0.2μm〜3.5μmの範囲、更に好ましくは0.2μm〜2.5μmの範囲が最適である。
又、冷却ロールの表面粗度(Ra)は、後述するロール表面温度、更には冷却ロール径等の関係からも最適範囲が決まってくるが、基本的には冷却固化速度が速い場合は冷却ロールの表面粗度(Ra)は大きく、ロール表面温度は低めで、ロール径は大きくした方が良い。
冷却ロール表面に形成する表面粗度の形状は特に限定するものではなく、スパイラル状の溝に仕上げたもの、ダイヤカット状の溝に仕上げたもの、梨地状に溝を仕上げたもの等が使用できるが、特に梨地状の形状の粗度プロフィルを有するものが空気の流れ問題、及びロール表面粗度プロフィルのフィルム面への転写問題の両立面から、バランス良く両立する範囲が広く、最適である。
なお、本発明における冷却ロールの表面粗度(Ra)は、冷却ロールの幅方向に測定した値を指示するものである。
又、層状に押出した溶融樹脂膜を冷却固化させるに際し、冷却ロールの表面温度は50℃以下にすることが好ましい。冷却ロールの表面温度が50℃を超えると、製膜性には直接影響を及ぼすことはないが、後述する、その後に行う縦方向の延伸でフィルムに微細なクラックが入る場合がある。特に、縦方向の延伸倍率を大きくするとフィルムに微細なクラックが入り易くなる傾向が見られるため、好ましくない。冷却ロールの表面温度は45℃以下がより好適である。
なお、冷却ロールの表面温度が低すぎると、冷却ロール表面が結露する場合があり、水滴がフィルムに触れると表面状態や結晶状態が変わるため好ましくない。
本発明では溶融樹脂を冷却ロールに接触させる際、強制的にエアーを吹き付ける方法、又は静電気で密着させる方法を採用することが好ましい。又、強制エアー吹き付け法、静電密着法のいずれにおいても層状樹脂の両端部と中央部を独立させて実施する方法がより好ましい。更に、溶融樹脂が冷却ロールに接触する際、反対側を減圧して随伴流を低減させる方策(例えば、バキュームチャンバー、バキュームボックス等の装置)を併用することがより好ましい。
冷却固化後のフィルムの中央部の平均厚みは250μm以下であることが、延伸性が良好となり、好ましい。
本発明では冷却固化させた後、少なくとも縦方向に1軸延伸することが必要で、次いで両端部を切断除去してポリエステルフィルムを得る。縦延伸条件としては、ポリエステルのガラス転移温度以上の温度で縦方向に1.3〜6.0倍延伸することが好ましい。
縦延伸を実施しない場合、フィルムの両端部を切断除去する際にフィルムの破断が起こり易く、好ましくない。又、フィルムの両端部を切断・除去しなければ、金属板に被覆させた際に被覆金属板の両端部のフィルム厚みが厚くなり、その部位は成型加工に供することができなくなるため、金属板、フィルム双方の材料ロスが増大し、経済的に好ましくない。
本発明では、両端部を含む樹脂をポリエステルフィルムとして再利用する場合、再使用率は特に限定しないが、5〜60重量%の範囲に留めることが好ましい。
本発明では、ポリエステルフィルムの生産性を向上させるために、縦延伸後に横延伸を実施することは勿論可能である。又、一般に縦延伸フィルムもしくは縦横延伸フィルムは、一般的に熱収縮率が大きい特性を有しており、ラミネートの際フィルム収縮が起こり易く、必要とするラミネート幅が得難い場合がある。こうした場合には、必要に応じて延伸後のポリエステルフィルムを緊張下で、50℃以上〜ポリエステルの(融点−20℃)の温度範囲で1〜20秒間熱処理を行い、フィルムの延伸後の熱収縮率を制御することも可能である。
次に、本発明の、ポリエステルフィルム被覆金属板について述べる。
本発明におけるポリエステルフィルム被覆金属板は、ポリエステルフィルムのブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点近くの温度に加熱された金属板の片面あるいは両面に、ポリエステルフィルムを圧着させて被覆し、更に該金属板の板温度をポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上の温度に加熱した後、急冷する方法で製造される。
本発明におけるポリエステルフィルムを金属板に被覆させる方法は、前述したように、第1の要件であるポリエステルフィルムのブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点近く、詳細には(融点−10℃)から(融点+50℃)の温度範囲に加熱された金属板の片面あるいは両面に、ポリエステルフィルムを圧着させて被覆すること、及び第2の要件であるポリエステルフィルムを被覆した後、金属板の板温度をポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上の温度に加熱した後、急冷すること、の2要件から成っている。
通常、第1の要件は、金属板の温度をポリエステルフィルムの融点以上の温度に加熱して、ポリエステルフィルムを被覆させるのが一般的に行われている方法であるが、本発明では、前述したポリエステルフィルムの縦方向への延伸により、延伸程度(延伸倍率)にもよるが、ポリエステルの(融点−10℃)からの被覆が可能となり、本発明の効果として現れている。
金属板に被覆する手段としては、圧着ロールを用いてフィルムを同時あるいは逐次に被覆させる方法、等の周知の方法が適用できる。
ポリエステルフィルムを金属板へ被覆するためのフィルム供給方法としては、フィルム製造設備と被覆設備が一貫ラインとしてある場合は、製膜後のフィルムをインラインで被覆させることができる。
フィルム製造設備と被覆設備が別ラインの場合は、製膜したフィルムを一度巻き取り、被覆設備で巻きほどいて金属板に被覆させることができる。どの方法を採用するかは、設備との関係で適宜選択することが可能である。
金属板の加熱方法としては、電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、加熱ロールに接触させて加熱する方法、高周波で誘導加熱する方法、等の加熱方法が採用できる。
又、急冷する方法としては加圧空気(または圧縮空気)や冷却された加圧空気(または圧縮空気)を吹きかけて冷却する方法等が採用できる。又、状況によっては水等に浸漬して冷却することも可能である。
本発明では、金属に被覆されているポリエステルフィルムの重量平均分子量(MW)は、65000以上が必要である。
重量平均分子量(MW)は、ポリエステルフィルムの特性に大きく影響を及ぼし、重量平均分子量(MW)が65000より低いと前述した耐デント性が低下し、カジリが発生し易くなり、缶の品質低下や缶の生産性を低下させる原因となる。
特に、成形速度が少なくとも80缶/分以上の高速化や高加工度化に対応するためには、混合ポリエステルフィルムの分子量は重要で、重量平均分子量(MW)が65000以上であれば、内面フィルムの耐デント性や外面フィルムの耐カジリ性と、言った特性の良好なものが得られ、実用上問題のない品質が確保される。
ポリエステルフィルムの重量平均分子量(MW)は、基本的は高い方が良く、特に缶の内面側に適用されるフィルムの場合、腐食性の強い内容物に対しては高い方が安心であり、好ましくは67000以上が良い。
本発明において、金属板に被覆されているポリエステルフィルムの密度は、1.320g/cm以下であることが必要である。
ポリエステルフィルムの密度は、それが結晶性であるか否かで変化し、密度が1.320g/cm以下であると言うことは実質的に非晶質状態、或いは非晶質状態に極めて近い結晶状態であることを意味している。このことは、金属板に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にすることで密度1.320g/cm以下を達成できることを示している。
本発明では、金属板に被覆されているポリエステルフィルムの密度は1.320g/cm以下であるので、フィルムを絞り・しごき加工に追随させることができる。
金属板に被覆されているポリエステルフィルムの密度が1.320g/cmを超えると、即ちフィルムが結晶化するとフィルムの伸び特性が落ちてくるため、特に缶壁部の板厚減少率が大きい高加工度に追随できず、局部的フィルム破断が起こり、缶の内外面フィルムの健全性が確保できないことがある。
缶の内面側のフィルムの健全性が確保できなくなると、素地金属の腐食に発展するため、内容物の保存性の点で大きな問題となり、好ましくない。従って、缶の内面側に相当するポリエステルフィルムを非晶質にし、その密度を1.320g/cm以下にすることで、耐食性の優れたシームレス缶の成形が達成できる。
金属板に被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にし、その密度を1.320g/cm以下にする方法としては、圧着ロールを用いてフィルムを被覆させた金属板を、ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上に加熱した後、水冷又は/及び空冷(空気を吹き付けて冷却する)等で急冷する方法、等が適用できる。
本発明で使用されるポリエステルの融点は180℃以上であることが、製缶性(特に、絞り・しごき加工において、缶内面側はパンチの離型性の確保、缶外面側は樹脂の耐カジリ性)の点から好ましい。ポリエステルの融点は、更に好ましくは200℃以上、特に好ましくは220℃以上がパンチの離型性や耐カジリ性の観点からは良い。
本発明のポリエステルフィルム被覆金属板に被覆されるフィルム厚みは、8μm〜40μmであるのが好ましい。フィルム厚みは缶の内面側に適用する場合は内容物に対する金属の耐食性確保を、缶の外面側に適用する場合は耐カジリ性や加工による肌荒れ等の外観の点から規定するものである。缶の内面側に適用する場合、8μm未満では、前述した缶壁部の加工度、及び内容物の腐食性にもよるが、金属板の内容物に対する防食性を確保するのは難しく、一方、40μm超の場合、防食性は飽和し、経済的でない。缶の内面側に相当するフィルムの厚みとしては、12μm〜40μmが好ましい。
又、缶の外面側に適用する場合、これも缶壁部の加工度によるが、基本的にはフィルムの耐カジリ性は薄い方が良好であるが、8μm未満では高加工度の場合、フィルムにカジリは発生しないが加工による肌荒れが発生し、外観が劣ってくるので好ましくない。缶の外面側に相当するフィルムの厚みとしては、8μm〜16μmが好ましい。
次に、本発明に使用される金属板について述べる。
本発明では金属板は特に限定されるものではなく、鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板が使用される。
鋼板は、板厚や引張破断強度等の機械的特性は特に限定するものでなく、通常製缶用鋼板として使用されているもの、具体的には絞り缶用、絞り・しごき缶用、蓋用のそれぞれの用途に用いられている鋼板が使用される。
鋼板表面に施される表面処理も同様で、通称TFS−CTと呼ばれている電解クロム酸処理鋼板、Niめっき皮膜の上層に電解クロム酸処理を施した鋼板、等が使用される。
アルミニウム板やアルミニウム合金板も同様で、板厚や引張破断強度等の機械的特性は特に限定するものでなく、通常製缶用アルミニウム板として使用されているもの、具体的には絞り・しごき缶用、蓋用のそれぞれの用途に用いられているアルミニウム板が使用される。
アルミニウム板やアルミニウム合金板の表面処理については、リン酸クロム処理やその他の化成処理が施されたアルミニウム板やアルミニウム合金板が使用される。
次に、本発明のポリエステルフィルム被覆金属缶について述べる。
本発明の金属缶の缶胴は前述したように絞り加工や絞り・しごき加工によって得られる。
特に、本発明の缶は絞り・しごき加工を行った後、開口部を正規の缶高さにトリミングし、開口部を更に絞り加工を行い、開口部を缶胴の径に比べ小径に加工(ネックイン加工)した後、缶蓋を巻締められるようにフランジを加工(フランジ加工)し形成するシームレス缶であり、又、絞り・しごき加工によりシームレス缶を作成し、その後、シームレス缶開口部あるいは缶底部に絞り加工を行って、肩部を形成すると共にキャップで密封出来る径にまで縮径し、更にキャップで閉缶することが出来るようにネジ切り加工を行った、再栓可能なボトル型缶等の金属缶である。
従って、本発明の金属缶においては、最終的にどの形状の缶を得るかによって前述した数式1で示される缶壁部の加工度は異なるが、加工度としては25%〜65%の範囲が最適である。
本発明における金属缶の、少なくとも内面側に被覆されているポリエステルフィルムの密度は、1.320g/cm以下であることが必要である。密度が1.320g/cm以下であると言うことは、前述したように実質的に非晶質状態、或いは非晶質状態に極めて近い状態であることを意味している。本発明における金属缶に被覆されているポリエステルフィルムの密度を1.320g/cm以下にする理由は、次行程の成形加工性を確保するためである。
即ち、ポリエステルフィルム被覆金属板を絞り・しごき加工を経て作成されたシームレス缶は、前述したように開口部を更に絞り加工を行い、開口部を缶胴の径に比べ小径に加工(この加工はネックイン加工と呼ばれている)した後、蓋を巻締めるためのフランジ出し加工(この加工はフランジ加工と呼ばれている)をするのが、アルミ製の易開缶蓋(イージーオープンエンド、通称EOEと呼ばれている)の低コスト化を図る観点から一般的である。
このネックイン加工、及びフランジ加工は、口部の小径化が大きいほど加工が厳しく、この部位でフィルム剥離が起こり易い。ポリエステルフィルム被覆金属板から絞り・しごき加工を経て形成された缶の被覆フィルムは、その加工の熱履歴によって再度、結晶化している場合があり、そこが起点となって問題が発生し易い。勿論、フィルム剥離が起こった缶は、剥離部が内容物に曝されるため下地金属の腐食に繋がり、製品としては使用できない。
こうした問題を回避するためには、被覆されているフィルムの伸び特性と下地金属との密着性が良好である必要があり、そのためには、被覆されているポリエステルフィルムは実質的に非晶質状態、或いは非晶質状態に極めて近い状態であることが必要で、それは密度を1.320g/cm以下にすることで達成される。
又、前述した再栓可能なボトル型缶の場合は、成形加工が通常のシームレス缶の加工に比べ、肩成形加工、ネジ切り加工等の、一層厳しい加工を受けることになるため、ポリエステルフィルムの密度は1.320g/cm以下にすることが絶対条件となる。
絞り・しごき加工で得られた金属缶に被覆されているポリエステルフィルムを実質的に非晶質にし、密度を確実に1.320g/cm以下にするには、缶をもう一度ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上に加熱し再溶融した後、急冷する方法をとることで実現できる。
金属缶の加熱により被覆されているポリエステルフィルムを非晶質にする工程としては、(1)絞り・しごき加工で得られた金属缶の開口部をトリミングする前に脱脂剤で潤滑剤を脱脂後、少なくともトリミングされる開口部を非晶質にする、(2)絞り・しごき加工で得られた金属缶を加熱して潤滑剤を揮発させると同時に非晶質にする、(3)トリミング後、シームレス缶であればネック・フランジ加工前に、再栓可能なボトル型缶であればネジ切り加工前に、少なくとも加工該当個所を非晶質にする、等があり、どの工程で、どのような手段で行うかは、設備との関係で適宜選択することができる。
金属缶の加熱方法としては電気炉中で加熱する方法、熱風による加熱方法、高周波で誘導加熱する方法、等の加熱方法が採用できる。
従って、金属缶の外面に施す塗装・印刷工程の熱を利用して金属缶を加熱することも可能である。
又、急冷する方法としては加圧空気(あるいは圧縮空気)や冷却された加圧空気(あるいは圧縮空気)を吹きかけて冷却する方法等が採用できる。又、状況によっては水等に浸漬して冷却する方法も可能である。
以下、実施例にて本発明の方法の効果を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、実施例1〜5(テスト1〜テスト9)、比較例1〜8(テスト10〜テスト17)で行った評価法は以下の通りである。
(1)ポリエステルフィルムの融点(Tm)は、ポリエステルフィルム10mgを用い、窒素気流中、示差走査熱量計(DSC)で、10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定したときの、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点Tm(℃)とした。
(2)ポリエステルフィルムの重量平均分子量(MW)は、10mgのポリエステルフィルムをクロロホルム/HFIP=96/4(容量%)に溶解させ、Shodex GPC24Hの測定装置を用いて、40℃・UV254nmの条件で測定した。
(3)樹脂フィルムの密度は、密度勾配管法にて測定した。
(4)缶内面のフィルムと加工パンチの離型性は、成形缶上部に起こる缶の坐屈程度を観察し評価した。離型性の評価は、次のように評価基準を設定し、行った。
○:缶開口部の坐屈なく良好
□:軽微な缶開口部の坐屈あり
△:開口部円周の1/3程度坐屈
×:開口部円周の1/3以上坐屈
(5)缶外面のフィルムの耐カジリ性は、成形した缶の缶壁部外面のカジリ発生程度を観察して評価した。耐カジリ性の評価は、次のように評価基準を設定し、行った。
○:カジリなく良好
□:フィルム表面に浅い軽微なカジリ発生
△:フィルム表面に円周の1/3程度にカジリ発生
×:フィルム表面に円周の1/3以上に激しいカジリ発生
(6)缶内面の樹脂フィルムの傷付き程度については、1.0%食塩水に界面活性剤を0.1%添加した電解液を缶内に注入し、注入した電解液中に銅製棒電極を挿入して、缶を陽極、陰極を銅製棒電極とし印加電圧6Vで3秒後の電流値(mA/缶)を測定し、被覆フィルムの健全性の評価とした。(以降、この評価法をQTV試験と称する。)
(7)缶内面のフィルムの耐デント性については、缶にお茶を充填してから開口部を缶蓋で密封し、125℃で30分レトルト殺菌処理を行った後、4℃の保冷庫に保存し、缶の温度が4℃になった時点で、高さ45cmの位置から60°の角度で缶底部を下にして落下させ、その後、缶蓋のパネル部を切断除去して缶を開缶した後、落下によって変形した部位以外を絶縁物でシールし、前記QTV試験と同様に、缶内に電解液と銅製棒電極とを入れて、缶を陽極、陰極を銅製棒電極とし、印加電圧6Vで30秒後の電流値(mA)を測定し、デント部フィルムの健全性の評価とした。(以降、この評価法を耐デント性評価と称する。)
(8)内容物を充填・密封した後に施される殺菌処理時のフィルム耐白化性の評価は、125℃で30分レトルト殺菌処理を行った後のフィルムの白化程度を観察して評価した。耐白化性の評価は、次のように評価基準を設定し、行った。
◎:白化なく良好
○:ごくわずかな白化で実用レベルにある
×:明確に白化しており実用レベルにない
なお、実施例、及び比較例に用いたポリエステルの略号と内容は次の通りである。
[1] PET−I :ポリエチレンテレフタレート(IV:0.75)
[2] PET−II:ポリエチレンテレフタレート(IV:0.58)
[3] PBT−I :ポリブチレンテレフタレート(IV:1.20)
[4] PBT−II:ポリブチレンテレフタレート(IV:1.00)
ここで、ポリエステルの極限粘度(IV)は、ウベローデ粘度計でオルトクロルフェノール溶液中にポリエステルフィルムを0.100±0.003g溶解し、25.0±0.1℃で測定した値である。
又、実施例、及び比較例に用いた安定剤、酸化防止剤の内容は次の通りである。
[5] 亜リン酸エステル系安定剤:ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト
(旭電化製、商品名:アデカ・スタブPEP−45)
[6] 酸化防止剤:テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン (日本チバガイギー製、商品名:irganox1010)
[実施例1]
ポリエステルフィルムの原料として、PET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステルを使用し、混合ポリエステル100重量部に対して安定剤を0.7重量部配合して280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、Tダイと冷却ロールとの間隔2cm、中央部と両端部は別々の装置で静電密着させ(中央部:4.5kV、両端部:6kVの直流電源を印加)冷却固化させた後、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断して厚みが9μm(フィルム1)、15μm(フィルム2)、24μm(フィルム3)、32μm(フィルム4)、37μm(フィルム5)のフィルムを作成した。得られたフィルム1〜4は両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で245℃(PBT−Iの融点+23℃)に加熱された、板厚0.28mmの3004系アルムニウム合金板の両面に前記のフィルムを、缶の内面側に当たる面に15μm/缶の外面側に当たる面に15μm(テスト1)、缶の内面側に当たる面に24μm/缶の外面側に当たる面に15μm(テスト2)、缶の内面側に当たる面に32μm/缶の外面側に当たる面に9μm(テスト3)、缶の内面側に当たる面に37μm/缶の外面側に当たる面に9μm(テスト4)の組み合わせでそれぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで、得られた該被覆板を、板温度が275℃(PET−Iの融点+24℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し、被覆アルミニウム合金板を得た。得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
こうして得た被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、90缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工、及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。それぞれの評価結果は表2に示した。
更に、開口部をトリミングし、缶の板温度が272℃(PET−Iの融点+21℃)になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに加圧空気(あるいは圧縮空気)で急冷し、ポリエステルフィルムを非晶質にした後、ネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズ缶を作成した。缶の内外面共フィルム剥離はなく、良好な缶が得られた。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
表2から、実施例1(テスト1〜4)の被覆アルミニウム合金板は、良好なパンチ離型性や耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られた缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものが得られていることが判る。そしてフィルムの製膜方法や被覆材製造方法においても優れた方法であるということができる。
[実施例2]
ポリエステルフィルムの原料として、PET−I/PBT−I=50/50重量%の混合比で混合した混合ポリエステルを用い、混合ポリエステル100重量部に対して安定剤を0.7重量部配合し、実施例1の手順に従ってポリエステルを280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を40℃にした表面粗度(Ra)が2.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に5.5倍延伸し、両端部を切断して、厚みが16μm(フィルム6)、及び26μm(フィルム7)のフィルムを作成した。得られたフィルムは両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で250℃(PBT−Iの融点+30℃)に加熱された、板厚0.28mmの3004系アルムニウム合金板の一方の面に26μmフィルムを、他の面に16μmフィルムを、それぞれロール圧着させて被覆板を得た。次いで、得られた被覆板を、板温度が270℃(PET−Iの融点+20℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト5)を得た。
又、加熱ロール(ジャケットロール)で240℃(PBT−Iの融点+20℃)に加熱された、板厚が0.19mmの、片面の付着量としてNiを500mg/m 、その上層に金属クロム換算で6mg/mの水和酸化クロム皮膜を有するNiめっき鋼板の、一方の面に26μmフィルムを、他の面に16μmフィルムをロール圧着させて被覆板を得た。次いで得られた被覆板を、板温度が270℃(PET−Iの融点+20℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆鋼板(テスト6)を得た。
得られたテスト5の被覆アルミニウム合金板、及びテスト6の被覆鋼板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
こうして得たテスト5の被覆アルミニウム合金板、及びテスト6の被覆鋼板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが26μmの面が缶の内面側になるように、90缶/分の加工速度でカップ絞り加工、再絞り加工、及びしごき加工を行って、缶壁部の加工度が被覆アルミニウム合金板の場合は62%の、被覆鋼板の場合は52%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。評価結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
表2から、実施例2の、テスト5の被覆アルミニウム合金板、及びテスト6の被覆鋼板は良好なパンチ離型性や耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られる缶はレトルト殺菌処理でごくわずかに白化はしていたが実用レベルであり、内面品質や耐デント性は良好なものが得られていることが判る。そしてフィルムの製膜方法や被覆材製造方法においても優れた方法であるということができる。
[実施例3]
ポリエステルフィルムの原料として実施例1で用いた混合ポリエステルを用い、実施例1の手順に従ってポリエステルを280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が0.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:55m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に2.4倍延伸し、両端部を切断して、厚みが16μm(フィルム8)、及び35μm(フィルム9)のフィルムを作成した。得られたフィルムは両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
こうして得たフィルムを、加熱ロール(ジャケットロール)で215℃(PBT−Iの融点−7℃)に加熱された、板厚0.28mmの3004系アルムニウム合金板の一方の面に35μmフィルムを、他の面に16μmフィルムをロール圧着させて被覆板を得た。次いで、得られた被覆板を板温度が270℃(PET−Iの融点+19℃)になるように熱風炉中で加熱した後、水中に浸漬して急冷し被覆アルミニウム合金板(テスト7)を得た。得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
こうして得た被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが35μmの面が缶の内面側になるように、実施例1の手順に従って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。評価結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について、内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その評価結果は表2に示した。
表2から、実施例3(テスト7)の被覆アルミニウム合金板は、良好なパンチ離型性や耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られた缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものが得られていることが判る。そしてフィルムの製膜方法や被覆材製造方法においても優れた方法であるということができる。
[実施例4]
ポリエステルフィルムの原料として実施例1で用いた混合ポリエステルを用い、実施例1の手順に従ってポリエステルを280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が3.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に3.0倍延伸し、次いで予熱温度60℃、延伸温度100℃で横方向に3.0倍延伸した後両端部を切断して、厚みが16μm(フィルム10)、及び25μm(フィルム11)のフィルムを作成した。得られたフィルムは透明観があり、両端部のフィルム割れもなかったが、空気の巻き込み跡がごくわずかに残ったものであった。
こうして得たフィルムを、実施例1の手順に従いアルミニウム合金板に被覆を行い、被覆アルミニウム合金板(テスト8)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板は、外観は良好で、空気の巻き込み跡がごくわずかに残った程度では被覆外観には影響しなかった。なお、得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
次いで、被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが35μmの面が缶の内面側になるように、実施例1の手順に従って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
表2から、実施例4(テスト8)の被覆アルミニウム合金板は、良好なパンチ離型性や耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られた缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものが得られていることが判る。そしてフィルムの製膜方法や被覆材製造方法においても優れた方法であるということができる。
[実施例5]
ポリエステルフィルムの原料としてPET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステルを用い、混合ポリエステルに100重量部に対して安定剤を0.7重量部、酸化防止剤を0.2重量部配合して実施例1の手順に従ってポリエステルを280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に5.5倍延伸し、両端部を切断して厚みが15μm(フィルム12)、及び26μm(フィルム13)のフィルムを作成した。得られたフィルムは両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
こうして得たフィルムを、実施例1の手順に従いアルミニウム合金板に被覆を行い、被覆アルミニウム合金板(テスト9)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
次いで、被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが35μmの面が缶の内面側になるように、実施例1の手順に従って、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
表2から、実施例5(テスト9)の被覆アルミニウム合金板は、良好なパンチ離型性や耐カジリ性を示し、製缶性に優れていることが判る。又、得られた缶はレトルト殺菌処理で白化はなく、内面品質や耐デント性も良好なものが得られていることが判る。そしてフィルムの製膜方法や被覆材製造方法においても優れた方法であるということができる。
[比較例1]
ポリエステルフィルムの原料として、PET−I/PBT−I=20/80重量%の混合比で混合した混合ポリエステルを用い、混合ポリエステル100重量部に対して安定剤を0.7重量部配合して実施例1の手順に従ってポリエステルを280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸した後両端部を切断して、厚みが16μm(フィルム14)、及び25μm(フィルム15)のフィルムを作成した。
得られたフィルムは、製膜時に両端部に割れが発生するなど形状の良好なものではなかった。
こうして得たフィルムを、実施例1の手順に従いアルミニウム合金板に被覆を行い、被覆アルミニウム合金板(テスト10)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、缶の内面側に相当するフィルムの密度は表2に示した。
次いで、被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが25μmの面が缶の内面側になるように、実施例1の手順に従い、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
比較例1(テスト10)の被覆アルミニウム合金板は、PBT−Iの配合割合が多いため、表2から判るように耐カジリ性に劣り、製缶性に問題があった。又、フィルム製膜時に両端部に割れが発生するなど、フィルムの製膜方法を含む被覆材製造方法として好ましくない方法であった。
[比較例2]
ポリエステルフィルムの原料として、PET−I/PBT−I=70/30重量%の混合比で混合した混合ポリエステルを用い、混合ポリエステルに100重量部に対して安定剤を0.7重量部配合して実施例1の手順に従ってポリエステルを280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断して厚みが16μm(フィルム16)、及び25μm(フィルム17)のフィルムを作成した。得られたフィルムは両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
こうして得たフィルムを、実施例1の手順に従いアルミニウム合金板に被覆を行い、被覆アルミニウム合金板(テスト11)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
次いで、被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが25μmの面が缶の内面側になるように、実施例1の手順に従い、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例2(テスト11)の被覆アルミニウム合金板は、フィルムの製膜方法を含む被覆材製造方法としては問題なく、パンチ離型性や耐カジリ性と言った製缶性についても良好であったが、PBT−Iの配合割合が少ないため耐デント性が劣り、又、レトルト殺菌処理で内面側、及び外面側両方のフィルムで白化が起こっており、外観上、好ましくないものであった。
[比較例3]
ポリエステルフィルムの原料としてPET−II/PBT−II=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステルを用い、混合ポリエステル100重量部に対して安定剤を0.7重量部配合して実施例1の手順に従ってポリエステルを280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:40m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.5倍延伸し、両端部を切断して厚みが16μm(フィルム18)、及び25μm(フィルム19)のフィルムを作成した。得られたフィルムは両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
こうして得たフィルムを、実施例1の手順に従いアルミニウム合金板に被覆を行い、被覆アルミニウム合金板(テスト12)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
次いで、被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが25μmの面が缶の内面側になるように、実施例1の手順に従い、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例3(テスト12)の被覆アルミニウム合金板は、離型性は良好で、レトルト殺菌処理でフィルムの耐白化性は良好であったが、ポリエステルフィルムの重量平均分子量(MW)が小さい(このことはPET−IIの極限粘度(IV)が小さいことが示している)ため、耐カジリ性が実施例に比べ若干劣り、又、QTV値、耐デント性も劣っていた。ただ、フィルムの製膜方法を含む被覆材製造方法としては問題なかった。
[比較例4]
ポリエステルフィルムの原料として実施例1で用いた混合ポリエステルを用い、実施例1の手順に従って280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が0.05μmの鏡面状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して厚みが16μm(フィルム20)、及び25μm(フィルム21)のフィルムを作成した。
得られたフィルムは、両端部のフィルム割れはなかったが、空気の巻き込み跡が残り、透明観が劣ったフィルムであった。
こうして得たフィルムを、実施例1の手順に従いアルミニウム合金板に被覆を行い、被覆アルミニウム合金板(テスト13)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
次いで、被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが25μmの面が缶の内面側になるように、実施例1の手順に従い、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
比較例4(テスト13)の被覆アルミニウム合金板は、冷却ロールの表面粗度(Ra)が0.05μmと小さく鏡面状であったため、空気の巻き込み跡が残り、しごき加工で気泡が原因と思われるフィルム破れが発生し、表2から判るように、QTV値、耐デント性共に大きな値を示して内面フィルムの健全性が劣り、更に、外面フィルムにはカジリが発生して製缶性に劣り、好ましいものではなかった。
[比較例5]
ポリエステルフィルムの原料として実施例1で用いた混合ポリエステルを用い、実施例1の手順に従ってポリエステルを280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が4.3μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸し、両端部を切断して厚みが16μm(フィルム22)、及び25μm(23)のフィルムを作成した。
得られたフィルムは両端部のフィルム割れはなかったが、梨地の跡型が斑状に広がり、透明観の劣ったフィルムであった。
こうして得たフィルムを、実施例1の手順に従いアルミニウム合金板に被覆を行い、被覆アルミニウム合金板(テスト14)を得た。
テスト14の被覆アルミニウム合金板は気泡の発生が見られ、外観が悪かった。なお、得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
次いで、被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが25μmの面が缶の内面側になるように、実施例1の手順に従い、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
比較例5(テスト14)の被覆アルミニウム合金板は、冷却ロールの表面粗度(Ra)が大きいため、表2から判るように、しごき加工後の、特に外面外観が劣り、耐カジリ性も劣っていた。又、缶の内面側のフィルムはQTV値、耐デント性何れも高く、健全性が実施例に比べて劣ったものであった。
[比較例6]
ポリエステルフィルムの原料としてPET−I/PBT−I=40/60重量%の混合比で混合した混合ポリエステルを用い、但し安定剤の配合なしで実施例1の手順に従って280℃で溶融させ、Tダイを用いて、表面温度を35℃にした表面粗度(Ra)が1.5μmの梨地状の冷却ロール(周速:50m/分)へ層状にキャストし、冷却固化させた後、余熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に4.0倍延伸した後両端部を切断して、厚みが16μm(フィルム24)、及び25μm(フィルム25)のフィルムを作成した。得られたフィルムは両端部のフィルム割れや外観不良もなく、良好であった。
こうして得たフィルムを、実施例1の手順に従いアルミニウム合金板に被覆を行い、被覆アルミニウム合金板(テスト15)を得た。
得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの融点、重量平均分子量(MW)は表1に、又、フィルムの密度は表2に示した。
次いで、被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、フィルム厚みが25μmの面が缶の内面側になるように、実施例1の手順に従い、缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
表2から判るように、比較例6(テスト15)の被覆アルミニウム合金板は、パンチ離型性は良好であったが、安定剤無添加のため、ポリエステルフィルムを非晶質にするべく加熱する際、その熱による分子量の低下が生じたと思われ、耐カジリ性が実施例1に比べ若干劣っていた。又、内面も耐デント性の値が高く、フィルム健全性が実施例1に比べ若干劣ったものであった。
[比較例7]
実施例1のテスト2から得た缶壁部の加工度が62%の350mlサイズのシームレス缶を用いて、開口部をトリミングした後、缶の板温度が245℃(PET−I融点−6℃)になるよう熱風炉中を通過させて加熱し、その後、直ちに加圧空気(あるいは圧縮空気)で急冷した後、ネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズ缶を作成(テスト16)した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
比較例7(テスト16)の金属缶は、ポリエステルフィルムを非晶質にするべく加熱する際に、PET−Iの融点に達していなかったため、十分非晶質化しなかったと思われ、フランジ部端面からフィルム剥離が起こっており、缶としては劣ったものであった。非晶質化が不十分であることは、フィルムの密度の測定結果(表2)からも推察できる。従って、テスト16の比較例7は、他の評価は行わなかった。
[比較例8]
実施例1で用いた3004系アルムニウム合金板を加熱ロール(ジャケットロール)で245℃(PBT−I融点+23℃)に加熱し、実施例1で得た15μm、及び24μmのフィルムを被覆し、次いで板温度が245℃(PET−I融点−6℃)になるように熱風炉中で加熱した後、直ちに水中に浸漬して急冷し、被覆アルミニウム合金板(テスト17)を得た。得られた被覆アルミニウム合金板に被覆されているフィルムの密度は表2に示した。
こうして得た被覆アルミニウム合金板の両面に潤滑剤を塗布後、実施例1の手順に従って、フィルム厚みが24μmの面が缶の内面側になるように、350mlサイズのシームレス缶を製缶した。
得られた缶について、缶の内面側についてはパンチの離型性、缶の外面側については耐カジリ性を調べた。結果は表2に示した。
更に、実施例1の手順に従ってネックイン加工、及びフランジ加工を行い、350mlサイズの缶を作成した。缶の内面側フィルムの密度の測定結果は表2に示した。
こうして得た缶について内面側フィルムのQTV試験、耐デント性を調べた。又、内面側フィルム、及び外面側フィルムについてレトルト殺菌処理での耐白化性を調べた。その結果は表2に示した。
比較例8(テスト17)の被覆アルミニウム合金板は、ポリエステルフィルムを非晶質にするべく加熱する際に、PET−Iの融点に達していなかったため、十分非晶質化しなかったと思われ、表2に示されているように、QTV値が実施例に比べ高く、内面フィルムの健全性が劣っていることが判る。又、耐カジリ性も実施例に比べ若干劣っていた。非晶質化が不十分であることは、フィルムの密度の測定結果(表2)からも推察できる。但し、表2の、缶内面フィルムの密度のデータが示すように製缶後の再加熱で非晶質化ができたため、耐デント性は実施例と同等の値が得られた。
Figure 2005144734
Figure 2005144734
本発明のポリエステルフィルム被覆金属板は、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルに、亜リン酸エステル系安定剤が該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合されたポリエステルからなるポリエステルフィルムを金属板の両面に被覆させた金属板であって、該金属板の少なくとも缶の外面側に相当する面に被覆されている該ポリエステルフィルムの重量平均分子量(MW)が65000以上、密度が1.320g/cm以下であることを特徴としており、これによって高速・高加工度での製缶性(例えば、絞り・しごき加工性)に優れた、ポリエステルフィルム被覆金属板を提供することが可能になった。
また、本発明のポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法は、金属板の少なくとも片面に、結晶性のポリエステルフィルムで、エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルであり、更に、亜リン酸エステル系安定剤が該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合された混合ポリエステルを溶融し、表面粗度(Ra)が0.2μm以上〜4.0μm未満の冷却ロールにより冷却固化させた後、少なくとも縦方向に1軸延伸を行い、次いで両端部を切断除去した該ポリエステルフィルムを、該ポリエステルフィルムのブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点−10℃から融点+50℃に加熱された金属板の少なくとも片面に圧着させて被覆し、更に該被覆金属板の板温度を該ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上に加熱した後に急冷することを特徴としており、得られるフィルムの厚みが均一な中央部分(実質的に金属板に被覆できる部分)が広く、かつ切断除去した両端部を再利用できるため材料ロスを少なくすることができ、更に両端部を切断除去する際に、フィルムが切断しやすく、高速で溶融樹脂膜を冷却固化した場合にもフィルムに微細な凹凸が発生しにくい、と言った利点を有し、生産効率の高い、低価格のポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法を提供することができるようになった。
又、本発明のポリエステルフィルム被覆金属板を使用して、良好な耐食性や耐デント性を備えた、優れたポリエステルフィルム被覆金属缶が得られ、又、内容物を充填・密封した後に行われるレトルト殺菌処理で、フィルムの白化といった外観を大きく損ねる現象が発生せず、優れた印刷外観が保持・確保できるなど、多くの利点を有したポリエステルフィルム被覆金属缶が得られるようになった。
更に、本発明のポリエステルフィルム被覆金属板を成形して得られる缶は、少なくとも缶の内面側に被覆されているポリエステルフイルの密度が1.320g/cm以下であることを特徴としており、耐食性や缶が落下された時に起こるフィルムのマイクロクラックが発生し難い、と言った良好な耐デント性を、特にレトルト殺菌処理と言った熱水処理を経た後でも有しているため、内容物の保存性に優れた金属缶を提供することができるようになった。

Claims (3)

  1. エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルに、亜リン酸エステル系安定剤が該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合されたポリエステルからなるポリエステルフィルムを金属板の両面に被覆させた金属板であって、該金属板の少なくとも缶の外面側に相当する面に被覆されている該ポリエステルフィルムの重量平均分子量(MW)が65000以上、密度が1.320g/cm以下であることを特徴とするポリエステルフィルム被覆金属板。
  2. エチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルとの混合比が60:40〜30:70重量%の混合ポリエステルに、亜リン酸エステル系安定剤が該混合ポリエステル100重量部に対して0.01〜3重量部配合された、重量平均分子量(MW)が65000以上の混合ポリエステルを、Tダイから溶融押出して、押出した溶融樹脂膜を表面粗度(Ra)が0.2μm以上〜4.0μm未満の冷却ロールで冷却固化させた後、少なくとも縦方向に1軸延伸を行ってポリエステルフィルムとし、次いで両端部を切断除去した該ポリエステルフィルムを、該ポリエステルフィルムのブチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点−10℃から融点+50℃に加熱された金属板の少なくとも片面に圧着させて金属板を被覆した後、更に該被覆金属板の板温度を該ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルの融点以上に加熱した後に急冷することを特徴とするポリエステルフィルム被覆金属板の製造方法。
  3. 請求項1に記載された前記のポリエステルフィルム被覆金属板から成形して得られる缶であって、少なくとも缶の内面側に被覆されているポリエステルフイルの密度が1.320g/cm以下であることを特徴とするポリエステルフィルム被覆金属缶。
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