JP2002307631A - 金属板ラミネート用ポリエステルフィルム、およびこれを用いてなる金属板、金属容器 - Google Patents

金属板ラミネート用ポリエステルフィルム、およびこれを用いてなる金属板、金属容器

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JP2002307631A
JP2002307631A JP2001114105A JP2001114105A JP2002307631A JP 2002307631 A JP2002307631 A JP 2002307631A JP 2001114105 A JP2001114105 A JP 2001114105A JP 2001114105 A JP2001114105 A JP 2001114105A JP 2002307631 A JP2002307631 A JP 2002307631A
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Yukiko Inui
由起子 乾
Yuji Ikemoto
裕二 池本
Mikio Kusunoki
幹夫 楠
Akira Menjo
彰 氈受
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属板との熱ラミネート性、缶の成形性、特
に絞り成形やしごき成形等の高次加工性に優れ、さらに
内容物の保味保香性にも優れたフィルムラミネート金属
缶に好適なフィルム提供する。 【解決手段】 ポリエステルA層とポリエステルB層と
を積層してなる少なくとも2層以上の積層フィルムであ
って、 A層が、PBT又はこれを主体とするポリエステル
(I)90〜45質量%と、PET又はこれを主体とす
るポリエステル(II)10〜55質量%とからなり、 B層が、(I)55〜25質量%と(II)45〜75
質量%とからなり、 A層とB層がそれぞれ、200〜223℃に(I)の
融点を、230〜256℃に(II)の融点を有し、 A層のポリエステルの極限粘度が0.70〜0.95
であり、積層フィルム全体の極限粘度が0.75以上で
あるフィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金属板ラミネート用
ポリエステルフィルム、およびそれを用いたフィルムラ
ミネート金属板および金属容器に関し、特に、金属板に
ラミネートして得られるフィルムラミネート金属板が、
絞り成形やしごき成形等に使用することができるポリエ
ステルフィルム、およびそれを用いたフィルムラミネー
ト金属板および金属容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、金属缶の内外面に腐食防止の目的
で、熱硬化性樹脂を主成分とする溶剤型の塗料が塗布さ
れていた。しかし、溶剤型塗料は塗膜を形成するために
高温での加熱が必要であり、その時に多量の溶剤が発生
するため、作業の安全性および環境の面からも問題があ
った。そのため、最近は溶剤を用いない腐食防止法とし
て、熱可塑性樹脂による金属板の被覆が提案され、熱可
塑性樹脂の中でも特にポリエステルは加工性、耐熱性等
に優れることから、ポリエステルをベースとした金属板
ラミネート用フィルムの開発が進められている。
【0003】フィルムを金属板に被覆する方法として
は、熱可塑性樹脂を溶融させて直接金属上に押出す方法
や、熱可塑性樹脂フィルムを直接、又は接着剤を介して
熱圧着する方法がある。中でも、熱可塑性樹脂フィルム
を用いる方法は、樹脂の取扱いが容易で作業性に優れ、
かつ、樹脂膜厚の均一性にも優れるために有効な手法と
されている。また、接着剤を介した方法では環境面やコ
ストの問題があるために、フィルムを直接熱圧着する方
法が有利であり注目されている。
【0004】熱可塑性樹脂フィルムを被覆した金属缶
は、鋼板、アルミ板等の金属板(メッキ等の表面処理を
施したものを含む)に熱可塑性樹脂フィルムをラミネー
トした、ラミネート金属板を成形加工して製造される。
このような用途に用いられる熱可塑性樹脂フィルムに
は、金属板との熱ラミネート性がよいこと、缶の成
形性に優れていること、つまり、缶の成形時にフィルム
の剥離、亀裂、ピンホール等の発生がないこと、缶成
形後の印刷、レトルト殺菌処理および長期の保存の際に
脆化しないこと、内容物の保味保香性に優れること等
の数々の特性が同時に要求される。
【0005】このような金属板ラミネート用ポリエステ
ルフィルムとしては、熱ラミネート性を付与し、缶の成
形性を向上させる目的で、他の成分を混合したり、共重
合する等、いくつかの方法が提案されている。例えば、
(イ)ポリエチレンテレフタレート(PET)に他の成
分を共重合したものが特公平8−19245号公報、特
公平8−19246号公報、特許第2528204号公
報等に、また、(ロ)融点が210〜245℃のエチレ
ンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする共重合ポ
リエステル99〜60重量%とポリブチレンテレフタレ
ート(PBT)もしくはその共重合体1〜40重量%を
配合したものが、特許第2851468号公報、特開平
5−186612号公報、特開平5−186613号公
報にそれぞれ開示されている。また、(ハ)特開平10
−316775号公報には共重合ポリエステル99〜6
0重量%と融点180〜223℃のブチレンテレフタレ
ートを主とするポリエステル1〜40重量%からなり、
極限粘度数が0.68以上0.75未満のフィルムが開
示されている。また、(ニ)特公平7−84532号公
報には極限粘度が0.75以上のポリエステルフィルム
が開示されている。さらに(ホ)特開平11−2792
94号公報にはエチレンテレフタレート単位が少なくと
も90モル%である還元粘度0.8〜1.1dl/gの
ポリエステルフィルムが開示されている。
【0006】しかしながら、(イ)ではPETを共重合
化し、低融点化、低結晶化することにより熱ラミネート
性と成形性は改良されるものの、缶成形後の熱処理およ
びレトルト殺菌処理時に脆化し、耐衝撃性が低下すると
いう問題があった。
【0007】また、(ロ)ではPBT系の樹脂を配合す
ることにより、熱ラミネート性と上記の缶の脆化や耐衝
撃性は向上するが、金属との熱ラミネート性や接着性が
十分ではなく、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工
成形性が十分ではなかった。
【0008】また(ハ)では極限粘度が0.68以上
0.75未満と、低いレベルにあるため、より厳しい絞
りしごき加工に対する変形追随性が不足していたこと、
樹脂成分が実質的にポリブチレンテレフタレート成分と
して40重量%以下であり、フィルムの結晶化特性が不
足し、レトルト処理に対する耐性、処理後の長時間保存
における安定性、耐衝撃吸収性の面で必ずしも十分なも
のとは言えなかった。
【0009】また(ニ)では極限粘度が0.75以上の
ポリエステルフィルムを用いることを提案しており、耐
レトルト性、耐衝撃性、内容物の味の変質防止性に効果
があるとしている。さらに好ましくは、231℃以上の
高融点のポリエステル層と、金属への接着に有利な23
0℃以下の融点の層を積層することを提案している。し
かしながら、具体的に提案されているポリマーとして
は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタ
レート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート
を主成分とする共重合した重合体で、且つ均一系ポリマ
ーであることを必要としており、熱ラミネート性に加
え、より厳しい高加工変形追随性、加工治具との粘着
性、レトルト処理後の長期保存安定性など、相反する特
性を具備することが必要な最近の高パフォーマンスを要
求される缶用フィルムとしては、このような単一の組成
の均一ポリマー系ですべてを満足することは困難となっ
ている。
【0010】また(ホ)ではエチレンテレフタレート単
位が少なくとも90モル%である還元粘度0.8〜1.
1dl/gの絞りしごき加工に耐え、沸騰水につけても
白化しにくいポリエステルフィルムを提案している。し
かしながら、沸騰水に対する耐性は耐熱性、耐熱水性の
高いエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含ま
せることで対応し、金属との接着性は3モル以上10モ
ル未満の共重合成分の導入によって対応する均一系ポリ
マーの技術範疇にあるもので、(ニ)と同様、限界があ
るものであって、最近の高速、高加工変形追随性の要求
に対して十分な対応の出来るものとはなっておらず、ま
た、変形追随性を重視すると、ポリエステル中の共重合
成分濃度を高くせざるを得ず、缶加工時の治具との粘着
性がまして生産性を阻害したり、缶としての耐レトルト
性や、長期保存安定性を阻害することとならざるを得な
かった。
【0011】これに対して、本発明者らは、先にPB
T、又はこれを主体とするポリエステル(A)90〜4
5質量%と、PET、又はこれを主体とするポリエステ
ル(B)10〜55質量%とからなる二軸延伸フィルム
を提案している(特開平9−194604号公報、特開
平10−110046号公報)。ここに提案されたフィ
ルムは、結晶化度が高く、かつ比較的低温で熱圧着で
き、しかも得られたラミネート金属板は加工性に優れて
いる。また、レトルト殺菌処理および長時間の保存後に
おいてもフィルムが脆化せず、耐衝撃性にも優れてい
る。
【0012】しかし、最近、製罐速度の増大、缶サイズ
の大容量化、缶の薄肉化の要求が進みつつあり、絞り加
工やしごき成形時の金属の変形加工比がさらに増大しつ
つあること、また加工治具との摩擦が更に大きくなるこ
とから、特に厳しい変形を伴う缶の胴部において上記フ
ィルムを使用しても、ラミネート金属板の製造条件、缶
の成形加工条件の微妙な揺らぎによってはフィルムが白
化したりミクロクラックが発生したりする問題が新たに
生じた。また、加工比の増大によって生じたフィルムの
残留ひずみによって金属との部分的な接着不良による剥
離が生じ、内容物の保護性に懸念が生ずる場合も想定さ
れた。また、製罐時に、絞りしごき加工治具とフィルム
との粘着が生じ、缶成形時に、缶胴部が破断する問題が
指摘されるなど、更に厳しい加工条件下でも性能を維持
できるフィルムへの改善が望まれるに至った。さらに、
缶が冷却される清涼飲料に拡大利用されるに及んで、缶
の落下や、加工流通段階での衝撃的外力が加わった場合
に、ラミネートフィルムの耐衝撃性が強く要望されるよ
うになってきている。缶の保存期間が長いこともあり、
長期間、冷却保存されたり、冬場に加温保存されたりし
た場合の長期安定性もまた重要な性質である。このよう
にフィルムラミネート缶の利用範囲が増大するととも
に、フィルムやそれをラミネートし成形された缶に対す
る要求性能はますます高度化してきているのが現状で、
それに適したフィルムの開発と改良が早期に要求されて
いる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、金属
板との熱ラミネート性、缶の成形性、特に絞り成形やし
ごき成形等の高次加工性、耐衝撃性に優れ、さらに内容
物の保味保香性にも優れたフィルムラミネート金属缶に
好適な金属ラミネート用ポリエステルフィルム、ラミネ
ート金属板およびそれを用いた金属容器を提供すること
にある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、結晶性の異なる2
種以上ポリエステル、すなわちPBT主体のポリエステ
ル(I)とPET主体のポリエステル(II)の特定の配
合割合からなる少なくとも2種以上のポリエステル層を
積層したポリエステルフィルムを用い、その各ポリエス
テル層の極限粘度を独立に最適化することにより、金属
との熱ラミネート性、缶の成形性、特に絞り成形やしご
き成形等に優れ、さらに耐衝撃性、保味保香性に優れた
金属容器を製造し、提供できることを見出し本発明に到
達した。
【0015】すなわち、本発明の要旨は次の通りであ
る。ポリエステルA層とポリエステルB層とを積層して
なる少なくとも2層以上の積層フィルムであって、 ポリエステルA層が、ポリブチレンテレフタレート又
はこれを主体とするポリエステル(I)90〜45質量
%と、ポリエチレンテレフタレート又はこれを主体とす
るポリエステル(II)10〜55質量%とからなり、 ポリエステルB層が、ポリエステル(I)55〜25
質量%とポリエステル(II)45〜75質量%とからな
り、 ポリエステルA層とB層がそれぞれ、200〜223
℃にポリエステル(I)の融点を、230〜256℃に
ポリエステル(II)の融点を有し、 A層のポリエステルの極限粘度が0.70〜0.95
であり、積層フィルム全体の極限粘度が0.75以上で
あることを特徴とする金属板ラミネート用フィルム。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明において、PBT主体のポリエステル
(I)としてはPBT、又はこれに他の成分を共重合し
たものであるが、ポリエステル(II)とブレンドしたポ
リエステル層A、Bにおいて、ポリエステル(I)の融
点は200℃以上、PBTの融点223℃以下であるこ
とが必要であり、融点が200℃より低いとポリエステ
ルとしての結晶性が低く、結果としてフィルムの耐熱性
が低下する。共重合PBTを用いる場合には、共重合割
合は融点が上記範囲内となるように共重合の割合や共重
合する成分の構造を選択すればよいが、全アルコール成
分に対し、1,4−ブタンジオールは80モル%以上が
好ましく、特に90モル%以上が好ましい。1,4−ブ
タンジオールが80モル%未満であると、結晶性、特に
結晶化速度が低下し、レトルト処理後の耐衝撃性やバリ
アー特性が低下する。
【0017】共重合成分としては、特に限定されない
が、酸成分としてイソフタル酸、フタル酸、2,6−ナ
フタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタ
ル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、
アゼライン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイ
ン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコ
ン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のジ
カルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラク
トンや乳酸などが挙げられる。また、アルコール成分と
しては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、
1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、
1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノー
ル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレング
リコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチ
レンオキシド付加体等が挙げられる。さらに、トリメリ
ット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロー
ルプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3
官能化合物等を少量用いてもよい。これらの共重合成分
は2種以上併用してもよい。
【0018】本発明のフィルムにおいて、PET主体の
ポリエステル(II)としては、PET、又はPETに他
の成分を共重合したものを挙げることができるが、ポリ
エステル(I)とブレンドしたポリエステル層A、Bに
おいて、ポリエステル(II)の融点は230〜256℃
の範囲であることが必要であり、好ましくは236〜2
56℃の範囲である。さらに好ましくは、246〜25
6℃の範囲である。融点が230℃未満であると、結晶
性が低下し、レトルト処理後に白化や白斑が発生した
り、レトルト処理後の耐衝撃性が低下したりする。融点
が256℃を超えると、熱ラミネート性が低下する。特
に、ポリエステル(II)の融点が246℃以上である
と、耐熱性、レトルト処理後の耐衝撃性および長期保存
後の耐衝撃性が向上する。また、缶加工時の治具との融
着トラブルや、缶胴部の加工途中における破断トラブル
の低減に効果がある。
【0019】PETに共重合することができる成分とし
ては特に限定されず、ポリエステル(I)と同様の化合
物を例示できる。
【0020】本発明のフィルムは、A層のポリエステル
の極限粘度IVAが0.70〜0.95であることが必
要である。A層は金属と熱接着されるためその極限粘度
は低く流動性に優れたものが良い。しかし、A層にはま
た、缶成形時に絞りしごき成形加工の大きな局部的な応
力がかかる。その際に金属の変形に追随して接着性を維
持しながら自身も変形して行く性質が特に重要であり、
そのため出来るだけ平均分子量の大きなポリマーである
ことが必要である。この特性が劣ると、金属との接着界
面での剥離が生じ、最悪の場合、金属板全体の破断につ
ながる。この相反する特性を満足するために本発明のフ
ィルムのA層は極限粘度として上記範囲を満足しなけれ
ばならない。
【0021】本発明のポリエステルフィルムは原料ポリ
エステルを各々溶融混合した後の積層フィルム全体の極
限粘度として0.75以上が必要である。極限粘度が上
記範囲未満では、フィルムの実用性能が不足し、特に缶
の高次加工時に破断したりクラックが発生したりするこ
とがある。また、缶の容量が大きいものへと加工がなさ
れる場合、缶の胴部の薄肉化が進み、その部分が缶に成
形され、内容物を充填された形態では最も外力がかかり
易い部分となって、耐衝撃性が不足する。また、逆に、
極限粘度が1.4を超える場合にはフィルムの生産工程
において樹脂の溶融押出機にかかる負荷が大きくなり、
単位時間当たりの樹脂の押出量を下げざるを得ず、その
結果、押出機中の樹脂の溶融滞留時間が長くなりすぎて
ポリエステル樹脂間の反応が進み、フィルム特性の劣化
を招く。その結果、ラミネートフィルム金属板の物性低
下をもたらす。また、極限粘度の高いものは、重合時間
や重合プロセスが長くなること、またフィルム生産速度
の速度を下げざるをえなくなることから、総じてコスト
を押し上げる要因ともなる。
【0022】原料のポリエステルの重合方法は特に限定
されず、例えば、エステル交換法、直接重合法等で重合
することができる。エステル交換触媒としては、Mg、
Mn、Zn、Ca、Li、Tiの酸化物、酢酸塩等が挙
げられる。また、重縮合触媒としては、Sb、Ti、G
e酸化物、酢酸塩等の化合物が挙げられる。重合後のポ
リエステルは、モノマーやオリゴマー、副生成物のアセ
トアルデヒドやテトラヒドロフラン等を含有しているた
め、減圧もしくは不活性ガス流通下、200℃以上の温
度で固相重合することが好ましい。
【0023】ポリエステルの重合においては必要に応じ
添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、
帯電防止剤等を添加することができる。酸化防止剤とし
ては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒンダー
ドアミン系化合物等を、熱安定剤としては、例えばリン
系化合物等を、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフ
ェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系の化合物等を挙
げることができる。また、異なるポリエステル間の反応
抑制剤として、従来知られているリン系化合物を重合
前、重合中、重合後に添加することが好ましい。特に、
固相重合前の溶融重合終了時に添加することがさらに好
ましい。
【0024】本発明において、ポリエステルA層におけ
るポリエステル(I)とポリエステル(II)は、(I)/
(II)=90〜45/10〜55(質量%)、好ましく
は(I)/(II)=80〜50/20〜50(質量
%)、さらに好ましくは(I)/(II)=70〜55/
30〜45(質量%)であることが必要である。また、
ポリエステルB層におけるポリエステル(I)とポリエ
ステル(II)は、(I)/(II)=55〜25/45〜
75(質量%)、さらに好ましくは(I)/(II)=5
5〜30/45〜70(質量%)であることが必要であ
る。
【0025】ポリエステルA層におけるポリエステル
(I)が90質量%を超えると、結晶性の高いポリエス
テル(I)の特性が顕著に発現して、金属との接着性が
低下したり、フィルムラミネート金属板の成形性が低下
する。また、得られた缶の耐衝撃性も悪くなる。ポリエ
ステル(I)が45質量%未満の場合には結晶化速度が
低下し、レトルト処理後の物性が低下する。また、金属
との接着性や、缶としての耐衝撃性も悪くなる。特に、
ポリエステル(I)の含有量が70〜55質量%の範囲
の場合、ラミネート金属板の成形性、耐衝撃性、金属と
の接着性、レトルト処理後の物性バランスがとれ、好ま
しい形態である。
【0026】ポリエステルB層におけるポリエステル
(I)が55質量%を超えると耐熱性が低下し、金属板
を高速で、高次の絞りしごき加工を行う場合、加工治具
との摩擦が大きくなり、成形性が低下する。またそれに
伴い最終製品の品位が低下する。また、缶の耐食性、内
容物のフレーバー維持性が悪化する。ポリエステル
(I)が25質量%未満の場合には、缶の成形加工時に
変形追随性が悪くなり、フィルムの白化やマイクロクラ
ックが発生し、缶内面では耐食性、内容物の保護性が悪
くなる。外面では印刷図柄の光沢度が低下したり、耐食
性に問題が生じたりする。特に、ポリエステル(I)の
含有量が55〜30質量%の範囲の場合、ラミネート金
属板の成形性、内容物のフレーバー維持性、レトルト処
理後の物性バランスがとれ、好ましい。
【0027】ポリエステルB層におけるポリエステル
(I)の含量(WB3)は、A層のポリエステル(I)の
含量(WA1)以下であることが好ましい。具体的に
は、その含量比RW(RW=WA1/WB3)は1〜2
の範囲が好ましい。RWが1未満では耐熱性が低下し、
金属板を高速で、高次の絞りしごき加工を行う場合、加
工治具との摩擦が大きくなり、成形性が低下する場合が
ある。またそれに伴い最終製品の品位が低下する場合が
ある。また、缶の耐食性、内容物のフレーバー維持性が
悪化する傾向にある。またRWが2を超えると、ラミネ
ート金属板の缶への成形加工時に変形追随性が悪くなり
やすく、フィルムの白化やマイクロクラックが発生し、
缶内面では耐食性、内容物の保護性が悪くなる場合があ
る。外面では印刷図柄の光沢度が低下したり、耐食性に
問題が生じたりする傾向がある。
【0028】本発明のフィルムは、各層のポリエステル
(I)と(II)のエステル交換指数(測定法は実施例に
記載)が、下記一定範囲内であることが好ましい。すな
わち、ポリエステルA層中のポリエステル(I)とポリ
エステル(II)のエステル交換指数が1〜10%、さら
には2〜7%であることが好ましい。A層のエステル交
換指数が高くなり、ポリエステル(I)と(II)の構成
成分のランダム化が進行した場合、特に10%を超える
と、フィルムの融点が低下し、耐熱性が低下する。ま
た、成形加工時の延伸に伴う結晶化速度が著しく速くな
り成形加工性が低下する。逆に1%未満の場合、ポリエ
チレンテレフタレート成分がその性質を保持したまま、
また結晶性の高いPBTがそのままA層中に存在するた
めに、フィルムの変形追随性が悪く、金属板の成形加工
性が低下する。一方、ポリエステルB層中のポリエステ
ル(I)とポリエステル(II)のエステル交換指数は7
%以下、さらには5%以下であることが好ましい。B層
のエステル交換率が7%を超えると、フィルムの融点が
下がり、金属板の缶への成形加工の際に加工治具と粘着
しやすくなり、摩擦が大きくなって缶表面が不均一にな
ったり、最悪の場合、成形加工途上で金属の破断にいた
ったりする。
【0029】エステル交換指数を上記範囲内に調整する
方法は特に限定されないが、押出機中でのポリエステル
(I)と(II)の溶融温度や、押出機内での混練度、押
出機中での滞留時間を調整する等の方法が挙げられる。
溶融混合方法は特に限定されず、ブレンドした原料チッ
プを同一の押出機中で混合溶融する方法、また、各々別
々の押出機で溶融させた後に混合する方法等が挙げられ
るが、エステル交換反応の制御の面からは後者の方法が
好ましい。またエステル交換はポリエステルの重合触媒
の種類、量、その残存活性度によっても大きく影響され
る。したがって、触媒の選択、量の適正化、また、リン
化合物などの触媒活性抑制剤を添加する等の技術を併用
してもよい。
【0030】本発明のポリエステルフィルムは、ポリエ
ステル層Aとポリエステル層Bとを積層してなる少なく
とも2層以上の構造を有するものであり、かかる多層構
造のフィルムは、例えば、それぞれの層を構成するポリ
エステル組成物を別々に溶融して押出し、固化前に積層
融着させた後、二軸延伸、熱固定する方法、ポリエステ
ルA層とB層とを別々に溶融、押出してフィルム化し、
未延伸状態又は延伸後、両者を積層融着させる方法など
によって製造することが出来るが、プロセスの簡便性か
ら、複層ダイスを用い、固化前に積層融着させることが
好ましい。
【0031】ポリエステルA層の厚みとB層の厚み比R
(R=A層の厚み/B層の厚み)は0.5〜5の範囲が
好ましい。更には、1〜4の範囲が好ましい。Rが0.
5未満の場合、缶への加工時において変形追従性が悪く
なる。一方、Rが5を超えると、缶成形用治具との接触
面であるB層の厚みが薄くなりすぎて表面の十分な硬度
が得られず、治具との粘着を生じやすくなったり、磨耗
性が高くなり、表面に傷がつきやすくなったりして、缶
の特性を悪くする。
【0032】フィルムの製造方法としては、A層および
B層を構成するポリエステル(I)と(II)を夫々の適
正な比率にブレンドし、A層形成用の押出機とB層形成
用押出機より別々に250〜280℃の温度で3〜15
分間溶融混合して押出し、夫々の層を合流させる構造を
有するTダイ(複層ダイスと呼ぶ)で固化前に積層合流
させた後シート状に押出し、このシートを室温以下に温
度調節した冷却ドラム上に密着させて冷却し、得られた
未延伸フィルムをその後同時二軸延伸機に導き、50〜
150℃の温度でMDおよびTD(横方向)に夫々2〜
4倍程度の延伸倍率となるよう二軸延伸し、さらにTD
の弛緩率を数%として、80〜220℃で数秒間熱処理
を施すことによって製造することが出来る。また、同時
延伸機に導く前に、1〜1.2倍程度の予備縦延伸を施
しておいてもよい。
【0033】またこのフィルムは逐次延伸法によっても
製造することが出来る。その方法を概説すると、前記未
延伸フィルムをロール加熱、赤外線等で加熱し、縦方向
に延伸して縦延伸フィルムを得る。延伸は2個以上のロ
ール周速差を利用し、ポリエステルのガラス転移点(T
g)〜Tgより40℃高い温度の範囲で2.5倍以上、
3.6倍以下とするのが好ましい。縦延伸フィルムは続
いて連続的に、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施
して二軸配向フィルムとするが、横延伸はポリエステル
のTg〜Tgより40℃高い温度で開始し、最高温度は
ポリエステルの融点(Tm)より(100〜40)℃低
い温度であることが好ましい。横延伸の倍率は最終的な
フィルムの要求物性に依存し調整されるが、2.7倍以
上、更には3.0倍以上とするのが好ましい。さらに
3.5倍以上とするのが好ましい。延伸に続く熱固定処
理時にフィルム幅方向に2〜20%の伸張を加えてもよ
いが、この伸張率はトータルの延伸倍率の中に含まれる
ことが好ましい。熱固定処理後、フィルムの熱収縮特性
を調整するためフィルムの幅を連続的に縮める処理(リ
ラックス処理と呼ぶ)を行いその後フィルムのTg以下
に冷却して二軸延伸フィルムを得る。
【0034】延伸後の熱処理は、フィルムの寸法安定性
を付与するために必要な工程であるが、その方法として
は、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マ
イクロ波を照射する方法等の公知の方法を用いることが
できる。このうち、均一に精度良く加熱できることから
熱風を吹き付ける方法が最適である。
【0035】フィルム製造時や製缶時の工程通過性をよ
くするため、シリカ、アルミナ、カオリン等の無機滑剤
を少量添加して製膜してフィルム表面にスリップ性を付
与することが望ましい。さらに、フィルム外観や印刷性
を向上させるため、たとえば、フィルムにシリコーン化
合物等を含有させることもできる。また、金属とのラミ
ネート性を向上させたり、強度をさらに高めるために、
フィルム製造中のインラインコーティングもしくはフィ
ルム製造後のポストコーティングにより、接着層等の任
意のコーティング層を形成させてもよい。A層とB層と
の積層フィルムの場合、金属に接着されるA層のかかる
無機滑剤の含有量はB層のそれに比べ同等か、それより
も少ないことが好ましい。また各フィルムへのかかる無
機滑剤の含有量は0.001〜0.5質量%、好ましく
は0.1〜0.3質量%である。また、滑剤の機能と併
用して、隠蔽性の目的からA層又はB層に二酸化チタン
を20質量%程度まで添加することも出来る。特に同時
二軸延伸においては40質量%を超える二酸化チタンを
添加しても延伸フィルムを得ることができ好ましい。
【0036】本発明のポリエステルフィルムは、鋼板、
アルミ等の金属板に熱ラミネートされるが、ラミネート
する金属板は、クロム酸処理、リン酸処理、電解クロム
酸処理、クロメート処理等の化成処理や、ニッケル、ス
ズ、亜鉛、アルミ、砲金、真鍮、その他の各種メッキ処
理などを施した鋼板を用いることができる。
【0037】本発明のフィルムには、金属板との熱圧着
性及びその後の密着性を更に向上させる目的で、共押出
法やラミネート加工、あるいはコーティング加工により
接着層を設けることができる。接着層は乾燥膜厚で1μ
m以下が好ましい。接着層は、特に限定されないが、エ
ポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂やこ
れらの各種変性樹脂からなる熱硬化性樹脂層であること
が好ましい。また、金属板と熱圧着するフィルムの反対
側には、金属缶体の外観や印刷性を向上させたり、フィ
ルムの耐熱性や耐レトルト性等を向上させるために1種
もしくは2種以上の樹脂層を設けることができる。これ
らの層は、共押出法やラミネートあるいはコーティング
加工により設けることができる。
【0038】本発明のフィルムと金属板をラミネートす
る方法としては、金属板を予め160〜250℃まで予
熱しておき、これとフィルムとを、金属板より30℃、
更には50℃以上低く温度制御されたロールによって圧
接して熱圧着させた後、室温まで冷却することにより連
続的に製造される。金属板の加熱方法としては、ヒータ
ーロール伝熱方式、誘導加熱方式、抵抗加熱方式、熱風
伝達方式等があげられ、特に、設備費及び設備の簡素化
を考慮した場合、ヒーターロール伝熱方式が好ましい。
また、ラミネート後の冷却方法については、水等の冷媒
中に浸漬する方法や冷却ロールと接触させる方法を用い
ることができる。
【0039】以上のようにして得られた金属板は、その
まま加工処理を施してもよいが、ポリエステルの融点よ
り10〜30℃高い温度で熱処理後急冷して、本ポリエ
ステルフィルムを非晶状態にすることにより、さらに高
い加工性を付与することができる。
【0040】金属容器としては、飲食料を充填して使用
に供することができ得る形態にまで加工処理が施された
金属容器及びその一部分、例えば巻き締め加工が可能な
形状に成形された缶蓋も含まれる。特に、厳しいネック
イン加工が施される3ピース缶(3P缶)の缶胴部材
や、絞りしごき加工によって製造される2ピース缶(2
P缶)の缶胴部材として用いる場合に、本発明のフィル
ムの優れた加工性が発揮される。本発明のフィルムを用
いた金属容器は、その優れた耐レトルト性、フレーバー
性、耐食性から、コーヒー、緑茶、紅茶、ウーロン茶、
各種加工食品等の内容物を充填する場合に適している。
【0041】
【実施例】次に、実施例によって本発明を具体的に説明
する。実施例及び比較例におけるフィルムの原料、およ
び、特性値の測定法は、次の通りである。
【0042】(1)原料 ポリエステル(I) A−1:固相重合を施したPBT、IV1.40dl/
g、Tm223℃、Ti触媒40ppm含有。 A−2:固相重合を施したPBT、IV1.22dl/
g、Tm223℃、Ti触媒40ppm含有。 A−3:固相重合を施したPBT、IV1.08dl/
g、Tm223℃、Ti触媒40ppm含有。 A−4:固相重合を施したPBT、IV0.94dl/
g、Tm223℃、Ti触媒100ppm含有。 A―5:固相重合を施したPBT、IV0.80dl/
g,Tm223℃、Ti触媒40ppm含有。 A―6:固相重合を施していないPBT、IV0.72
dl/g、Tm223℃、Ti触媒60ppm含有。 A−7:セバチン酸(SEA)5mol%共重合し、固
層重合を施したPBT、IV1.30dl/g、Tm2
17℃、Ti触媒40ppm含有。 A−8:SEA5mol%共重合し、固相重合を施した
PBT、IV0.92dl/g、Tm217℃、Ti触
媒40ppm含有。 A−9:SEA12mol%共重合し、固相重合を施し
ていないPBT、IV0.95dl/g、Tm204
℃、Ti触媒40ppm含有。
【0043】ポリエステル(II) B−1:固層重合を施したPET、IV0.90dl/
g、Tm255℃、Ge触媒40ppm含有。 B−2:固相重合を施したPET、IV0.75dl/
g、Tm255℃、Ge触媒40ppm含有。 B−3:固相重合を施したPET、IV0.64dl/
g、Tm255℃、Sb触媒100ppm含有。 B−4:イソフタル酸(IPA)5mol%共重合し、
固相重合を施していないPET、IV0.81dl/
g、Tm243℃、Sb触媒100ppm含有。 B−5:IPA12mol%共重合し、固相重合を施し
ていないPET、IV0.65dl/g、Tm226
℃、Sb触媒100ppm含有。
【0044】(2)測定法 A.極限粘度(IV) フェノール/四塩化エタンの等質量混合溶媒を用いて、
温度20℃、濃度0.5g/dlで測定した溶液粘度か
ら求めた。
【0045】B.エステル交換指数(Ex) Varian社製、GEMINI2000/300核磁
気共鳴装置(磁場強度7.05T)にて、13C NM
Rの測定を行った。測定サンプルは、フィルム60〜1
00mgをCF3COOD溶媒0.7mlに溶解したも
のを用い、指数は、エステル交換に起因するピーク(図
2)の積分値から、下記式により求めた。 Ex=(Sab+Sba)/(Saa+Sbb+Sab
+Sba)×100(%)
【0046】C.融点(Tm) Perkin Elmer社製DSCを用い、20℃/
minで昇温時の融点を測定した。フィルムの測定サン
プルは、延伸フィルムを溶融後、100℃/min以上
の速度で急冷して非晶状態としたものを用いた。
【0047】D.熱ラミネート性 200℃に加熱した金属ロールと、シリコンゴムロール
との間に、試料フィルムと厚みが0.21mmのティン
フリースチール板とを重ね合わせて供給し、速度20m
/min、線圧4.9×104N/mで加熱接着し、2
sec後に氷水中に浸漬し、冷却してラミネート金属板
を得た。得られた積層体から、幅18mmの短冊状の試
験片(端部はラミネートせず、ラミネートされた部分が
MDに8cm以上確保されるようにする)をTDに11
枚切り出した。次に、この試験片のフィルム面に、JI
S Z−1522に規定された粘着テープを貼り付け、
島津製作所社製オートグラフで、10mm/minの速
度で180度剥離試験を行い、その剥離強力を測定する
ことにより、次の基準にしたがって接着性を評価した。 ◎:10枚以上の試験片の剥離強力が2.9N以上であ
るか、又は2.9N以上でフィルムが破断。 ○:5〜9枚の試験片の剥離強力が2.9N以上である
か、又は2.9N以上でフィルムが破断。 △:剥離強力が2.9N未満の試験片が7枚以上。 熱ラミネート性が△のフィルムについては、そのフィル
ムの最適熱ラミネート温度を求めて再度熱ラミネート
し、以降の試験に供した。
【0048】E.成形性 上記Dで得られたラミネート金属板のフィルム側を缶胴
内面として、絞りしごき加工を行い500ml相当の2
ピース缶を成形した。得られた缶に、1質量%食塩水を
満たし、缶体を陽極にして6Vの電圧をかけた時の電流
値を測定し、ポリエステルフィルムの欠陥の程度を評価
した。電流が多く流れるほど欠陥が多く、缶品位として
は1mA以下が好ましい。電流値が5mA以上であるも
のを×とした。
【0049】F.耐レトルト性 上記Dで得られたラミネート金属板を、125℃で30
minレトルト処理後のフィルムの状態を観察した。評
価は、明らかな白化又は白斑が認められるものを×、明
らかではないが目視で識別可能程度の白化が認められる
ものを△、目視では変化が認められないものを○とし
た。
【0050】G.耐衝撃性 上記Dで得られたラミネート金属板10枚を、(イ)1
25℃で30minレトルト処理後、および、(ロ)1
25℃で30minレトルト処理後、50℃雰囲気下で
1ヶ月保存後、それぞれ、5℃の雰囲気下において、1
kgの重り(先端は直径1/2inchの球面)を50
cmの高さからフィルム面に落下させたときのフィルム
の状態を観察し、次の基準により耐衝撃性を評価した。 ×:1枚でも剥離又は破断が目視で認められたもの。 △:目視では認められず、硫酸銅水溶液に浸して金属の
腐食が認められたものが3枚以上。 ○:目視では認められず、硫酸銅水溶液に浸して腐食が
認められたものが2枚以下。 ◎:目視では認められず、硫酸銅水溶液に浸しても10
枚全て腐食が認められなかった。
【0051】H.保味保香性 上記Eで得られた2P500ml缶胴部を用いて、蒸留
水500gを充填し、市販の202径アルミEO蓋を巻
き締めてこれを密封し、125℃で30minレトルト
処理を行った。次に、室温まで十分に冷却した後に、内
容物をパネラー50人に試飲してもらい、におい、味覚
等が蒸留水と違いがないかを判断してもらい、その結果
を次の基準に従って保味保香性の指標とした。 ○:両者の違いを感知した人数が5人未満。 △:両者の違いを感知した人数が5人以上10人未満。 ×:両者の違いを感知した人数が10人以上。
【0052】実施例1〜12および比較例1〜13 平均粒径1.1μmのシリカを0.08質量%含有し、
表1に示す組成のポリエステル(I)とポリエステル(I
I)とからA層とB層とを構成し、表1に示す割合で配
合し、独立した2台の押出機を用い、各々260〜29
0℃の範囲で溶融押出し、夫々の溶融体をTダイの出口
に至る前で層状に合流積層した後、Tダイ出口より押出
し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。次いで、この
未延伸フィルムの端部をテンター式同時二軸延伸機のク
リップに把持し、60℃の予熱ゾーンを走行させた後、
温度80℃でMDに3.0倍、TDに3.3倍で同時二
軸延伸した。その後TDの弛緩率を5%として、温度1
50℃で4秒間の熱処理を施した後、室温まで冷却して
巻き取り、厚さ25μmの二軸延伸フィルムを得た。得
られたフィルムから、Dに記述した方法でラミネート金
属板を得、同時に評価した。更に、上記Dで得られたラ
ミネート金属板のフィルムの成形性を、Eに記載した方
法で評価した。更にラミネート金属板の耐レトルト性、
耐衝撃性、保味保香性の評価を夫々、F、G、Hに示す
方法で評価した。上記試験で得られたフィルムの諸物性
と各評価結果を表2に示す。なお、フィルムの各層の独
立した基礎物性を測定するために、同一のポリマー組成
の原料を用い、各押出機に同一の押出条件で同一の滞留
時間となるよう押出して未延伸フィルムを得、BとCに
示す方法でエステル交換指数と融点測定し、評価結果を
表1に示した。
【0053】実施例13〜17、および比較例14〜1
9 実施例1と同様に表1に示した未延伸フィルムを得た。
この未延伸フィルムを、ロール式縦(MD)延伸機に導
き、60℃から75℃まで予熱した後、80℃で2.8
倍に縦延伸した。室温に冷却後、連続的にテンター式横
延伸機に導き、フィルムの両端をクリップで把持しなが
ら82℃で予熱し、90℃から120℃まで暫時昇温し
ながら3.6倍に横延伸した。その後150℃で4秒間
熱処理を行い、続いて4%の弛緩処理を行った後冷却し
て巻き取り、厚さ25μmの逐次二軸延伸フィルムを得
た。得られたフィルムから、実施例1と同様にラミネー
ト金属板を得、同様に評価した。フィルムおよびその評
価結果を表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】実施例1〜17で得られたフィルムは、熱
ラミネート性、成形性、耐衝撃性、耐レトルト性、保味
保香性に優れていたが、比較例1〜17で得られたフィ
ルムは、上記のすべての性能を満足するものは得られな
かった。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、優れた熱ラミネート
性、成形性、特に絞り成形やしごき成形等の高次加工性
を有するとともに、成形後の耐衝撃性や耐レトルト性に
も優れた金属缶の被覆に好適な、金属板ラミネート用ポ
リエステルフィルムを提供することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフィルムのNMRチャートである。
【図2】図1において、エステル交換に起因するピーク
(Sab、Sba、Saa、Sbb)の部分を拡大した
NMRチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 氈受 彰 京都府宇治市宇治樋ノ尻31−3 ユニチカ 株式会社宇治プラスチック工場内 Fターム(参考) 4F100 AA20 AA20H AB01C AK41A AK41B AK42A AL05A BA02 BA03 BA07 BA10A BA10C CB00 DA01 GB16 JA04B JA05A JA06 JA06A JL01 JL11

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエステルA層とポリエステルB層と
    を積層してなる少なくとも2層以上の積層フィルムであ
    って、 ポリエステルA層が、ポリブチレンテレフタレート又
    はこれを主体とするポリエステル(I)90〜45質量
    %と、ポリエチレンテレフタレート又はこれを主体とす
    るポリエステル(II)10〜55質量%とからなり、 ポリエステルB層が、ポリエステル(I)55〜25
    質量%とポリエステル(II)45〜75質量%とからな
    り、 ポリエステルA層とB層がそれぞれ、200〜223
    ℃にポリエステル(I)の融点を、230〜256℃に
    ポリエステル(II)の融点を有し、 A層のポリエステルの極限粘度が0.70〜0.95
    であり、積層フィルム全体の極限粘度が0.75以上で
    あることを特徴とする金属板ラミネート用フィルム。
  2. 【請求項2】 A層とB層の厚み比R(R=A層厚み/
    B層厚み)が0.5〜5である請求項1に記載の金属板
    ラミネート用フィルム。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2に記載の金属板ラミネー
    ト用フィルムのA層が直接又は接着剤を介して金属板に
    積層されてなるフィルムラミネート金属板。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載のフィルムラミネート金
    属板を用いて成形された金属容器。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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