JP3991259B2 - 金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルム - Google Patents
金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルムInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂被覆金属板に好適なポリエステルフィルムに関するものである。特には、2ピース缶の内壁面に好適に用いられるポリエステル積層フィルムに関する。さらに詳細には、製缶(例えば、絞り・しごき加工)及び温水処理が実施された後の低温での耐衝撃性に優れる金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属缶の内壁面及び外壁面の腐食防止の方法として、熱可塑性フィルムをラミネートする方法がある。例えば、特開平7―227946号公報に、食品缶詰め用の金属材料にラミネートするためのポリエステルフィルムが開示されている。
【0003】
このポリエステルフィルムは耐スクラッチ性に優れていて、例えば、金属板を円筒成形し、この円筒の上下開口部分に蓋体を巻締め加工するという製缶工程において、フィルムがラミネートされた金属板(以下、「フィルムラミネート金属板」という)を移送する時や巻締め加工などによりラミネート金属板を加工する時にも、フィルム表面にスクラッチ傷が発生したり等して、商品価値を低下せしめるということがなくて済む。
また、巻締め加工時の耐性に優れかつ製缶後に食品を充填し、レトルト処理などの加熱温水処理を行ったときのオリゴマーの溶出量が少ないので、金属容器の内壁面にラミネートするポリエステルフィルムとして優れている。
【0004】
ところで、食品用缶には、金属板を円筒成形してなる金属円筒の上下開口部に蓋体を取り付けてなる、所謂3ピース缶の他に、金属板を深絞り成形して容器部を形成し、この容器部の上面開口部に蓋体を巻締め加工してなる、所謂2ピース缶がある。
【0005】
3ピース缶の場合には、フィルムラミネート金属板は円筒状に成形されるだけであるが、2ピース缶の場合には、フィルムラミネート金属板は、絞りしごき成形されることになる。
従って、2ピース缶に適用できるためには、金属板の成形に追随して成形されるという良好な成形性を有し、金属板に対する密着性が優れている必要がある。成形性が不十分であったり、金属板に対するフィルムの密着性が不十分な場合には、フィルムが金属板から剥がれるという、所謂デラミネート現象が起こったり、2ピース缶の容器部の作製時にフィルムが破れてしまったりするからである。
【0006】
さらに、絞り加工では、ポンチの下降上昇を繰返しながらフィルムラミネート金属板を容器状に加工していくので、容器内壁面側にラミネートされるフィルムの場合には、ポンチとの離型性が良好であることが要求される。また、食品用缶では内容物の充填後に店頭にて低温保管・販売、若しくは自動販売機等で低温保管・販売の過程を経る。よって、製缶・温水処理後に低温で衝撃を受けた際の、耐衝撃性が該フィルムに要求される事となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はこのような事情に鑑みてなされたものであり、所謂2ピース缶用のラミネートフィルムとしても適用できるように、金属との密着性や成形加工性に優れ、低温で衝撃を受けた際の耐衝撃性にも優れるポリエステル積層フィルム、フィルムラミネート金属板、及びフィルムラミネート金属容器を提供することにある。
【0008】
【課題を解決しようとする手段】
上記目的を達成し得た本発明の金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルムは、ポリエステルA層及びポリエステルB層の二層構成よりなり、ポリエステルB層中の全酸成分の5〜15mol%が炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸であることを特徴とし、非晶無配向状態で温水処理を施した、該フィルムの5℃での4%伸張時強度が40MPa以下である金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルムを用いる事によって達成される。
この場合において、前記フィルムのポリエステルB層側が金属板とのラミネート面となる事が好適である。
また、この場合において、前記フィルムの常温での縦方向・横方向での破断強度の平均が200MPa以下である事が好適である。
さらにまた、この場合において、前記フィルムのポリエステルB層の昇温時結晶化ピーク温度Tcbが100〜150℃の範囲にある事が好適である。
さらにまた、この場合において、前記フィルムのポリエステルB層の融解ピーク温度Tmbが200℃〜245℃の範囲にある事が好適である。
さらにまた、この場合において、前記フィルムのポリエステルA層がポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートよりなる樹脂組成物であり、該重量比率が20〜80/80〜20である事が好適である。
さらにまた、この場合において、前記フィルムのポリエステルA層/ポリエステルB層の層厚み比率が30〜70/70〜30の範囲にある事が好適である。
さらにまた、この場合において、前記フィルムのポリエステルA層の融解ピーク温度Tmaが200℃〜260℃の範囲に存在する事が好適である。
前記フィルムをラミネートした金属板を用いてなるフィルムラミネート金属容器としては、2ピース缶であることが好適である。。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル積層フィルムは、表層部を構成するポリエステル層が、以下に示すような、特定のポリエステルで構成されているフィルムである。
まず、本発明のポリエステルA層の側、具体的にはフィルムラミネート金属板において金属板とラミネートされない側を構成するポリエステルA層について説明する。
【0010】
本発明におけるポリエステルA層は結晶性のポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートを20〜80/80〜20重量%で混合溶融押し出しする。特に好ましくは、40〜60/60〜40重量%の比率である事が好ましい。ポリブチレンテレフタレート比率が20重量%未満だと温水処理時に白化し、80重量%を超えると過剰品質となり、生産性・原料コストの面からも経済的ではなく、共に好ましくない。
【0011】
また、本発明におけるポリエステルA層の融解ピークは200℃〜260℃の範囲内に存在する。 融解ピークが200℃未満であると製缶性が損なわれ、260℃を超える場合はポリエステルB層との溶融押出し時のバランスが崩れ製膜性が低下する為、共に好ましくない。また該融解ピークは複数個存在してもよく、達成の手段としては、溶融押出し時のエステル交換反応を抑制する事などが挙げられる。
【0012】
ポリエステルA層の滑剤量は限定しないが、0.01〜1重量%の範囲である事が好ましい。
本発明の積層フィルムが絞り加工の際に、ポンチとの離型性を確保するために、0.01重量%以上の滑剤量が好ましいからである。一方、1重量%を超える量を含有しても、離型性の効果が変わらず、コスト的に不利になるだけだからである。
ここで、滑剤としては、シリカ、アルミナ、カオリン、クレー、酸化チタン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化リチウム、硫酸バリウム、カーボンブラック等の不活性無機粒子が好ましい。滑剤の平均粒径は、1〜3μmが好ましい。1μm未満ではポンチ離型性の改良効果が発現できないからである。逆に3μmを越えるとポンチ離型性の向上効果が飽和する一方、摩耗による滑剤の脱落が起こりやすくなったり、金属板とのラミネート時にフィルム破断が起こる場合があるからである。
【0013】
また、エチレンテレフタレート環状三量体をはじめとする環状三量体の含有量は好ましくは0.7重量%以下である。これは、フィルムにおけるオリゴマーの析出を抑制するためである。後述するように、2ピース缶を製造する場合、本発明の積層フィルムは、無配向ポリエステルとするリメルト処理を経た後、絞り加工されることとなる。無配向ポリエステルでは、配向ポリエステルよりもオリゴマーが析出しやすい。従って、環状三量体が0.7重量%超含まれていると、例えば、このフィルムをラミネートしてなる2ピース缶に、飲料を充填し、レトルト処理などの加熱処理を行ったときに、ポリエステルA層からオリゴマーが多量に溶出し、更にこのオリゴマーが食品に移行して、食品の味やフレーバーに対して悪影響を及ぼすことになるからである。
【0014】
ポリエステルA層中のエチレンテレフタレート環状三量体をはじめとする環状三量体の含有量を0.7重量%以下にする方法は特に限定せず、▲1▼積層フィルム形成後に、この積層フィルムから水または有機溶剤で環状三量体を抽出除去する方法、▲2▼環状三量体の少ないポリエステルを用いて、ポリエステルA層を構成する方法などが挙げられる。これらのうち、▲2▼の方法の方が経済的で好ましい。
上記▲2▼の方法において、環状三量体の含有量の少ないポリエステルを製造する方法も限定されず、固相重合法;重合後、減圧加熱処理により、あるいは水または有機溶剤による抽出により環状三量体を抽出除去する方法;及びこれらの方法を組合わせた方法などが挙げられる。特に、固相重合法により環状三量体含有量の少ないポリエステルを製造した後、得られたポリエステルを水で抽出してさらに環状三量体を低減させる方法は、フィルム形成工程での環状三量体の生成量が押さえられるので最も好ましい。
【0015】
本発明に用いられるポリエステルは、ジカルボン酸とジオールとを直接反応させる直接エステル化法;ジカルボン酸ジメチルエステルとジオールとを反応させるエステル交換法などの従来より公知の方法により合成される。これらの方法はそれぞれ、回分式および連続式のいずれの方法で行ってもよい。あるいは、分子量を高めるために固相重合法を用いてもよい。固相重合法は、前述のように環状三量体の含有量を低減する点からも好ましい。このようにして合成されるポリエステルは、ポリエステルA層に1種類だけ含まれていてもよいし、2種以上が混合して含まれていてもよい。
【0016】
上記ポリエステルA層には、上記化合物の他、必要に応じて、無機微粒子、非相溶の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤などの添加剤が含有され得る。ポリエステルA層中に、酸化防止剤を0.01〜1重量%含有することは好ましい実施態様である。
以上のような組成を有するポリエステルA層は、昇温時の結晶化ピーク温度が70〜100℃の範囲に存在する事が好ましい。積層フィルム全体としての昇温時の結晶化ピーク温度を80〜120℃とするためである。
【0017】
上記各種成分を混合したときのポリエステルA層の極限粘度は、0.6〜1.2の範囲であることが好ましい。ポリエステルA層の極限粘度が0.6未満の場合には、得られるフィルムの力学特性が低下するおそれがあり、1.2を越えても力学特性の効果は変わらず、また原料のポリエステルの生産性も低下するので経済的ではない。
次に、金属板とラミネートされる側を構成するポリエステルB層について説明する。
本発明に於けるポリエステルB層では、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を5〜15mol%含む他は、本フィルムの特性を損なわない範囲で、どのジカルボン酸成分・グリコール成分を用いてもよい。
【0018】
例えば、ジカルボン酸成分として、イソフタル酸,オルソフタル酸,ナフタレンジカルボン酸,シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸、その他オキシカルボン酸,脂環族ジカルボン酸を用いる事ができる。
また、グリコール成分としてはエチレングリコール,プロパンジオール,ペンタンジオール,ヘキサンジオール,ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタンール等の脂環族グリコール、ビスフェンールA,ビスフェノールS等の芳香族グリコールが使用できる。
【0019】
また、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸成分としては5〜15mol%の範囲で含むことが好ましく、特に好ましくは6mol%〜10mol%の範囲である。
炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸はフィルムの耐衝撃性を向上させるために含有される。これが5mol%未満では、低温(5℃)での耐衝撃性が得られず、フィルムが破れたり、傷が入ったりするからである。一方、15mol%を超えると、製膜性、耐熱性、強度が低下することになるからである。
【0020】
非晶無配向状態で温水処理を施した、該フィルムの5℃での4%伸張時強度は、40MPa以下である事が好ましく、特に好ましくは30MPa以下である。5℃での4%伸張時強度が、40MPa以上であると最終製品・流通での耐衝撃性が得られないからである。
【0021】
ポリエステルB層の融解ピークは200℃〜245℃の範囲にあることが好ましい。
特に好ましくは、210℃〜235℃の範囲である。融解ピークが200℃未満の場合製缶性を損ない、245℃を超えた場合原料のポリエステルの生産性も落ちるので経済的ではない。
【0022】
以上のような組成を有するポリエステル層Bの昇温時の結晶化ピーク温度Tcbは、100℃〜150℃の範囲にある事が好ましい。特に好ましくは、110℃〜135℃の範囲である。Tcbが100℃未満だとフィルム製膜時の生産性が落ち好ましくない。Tcbが150℃を超えると、ラミネート性が低下し且つ温水処理後の白化が悪化し好ましくない。
【0023】
尚、ポリエステルB層を構成するポリエステルの合成方法として従来の方法を使用できること、上記要件を満たす範囲内でポリエステル組成物に必要に応じて他の添加剤が含有され得ること、ポリエステル組成物の極限粘度等について、ポリエステルA層の場合と同様である。
【0024】
本発明の積層フィルムは、一側の表層がポリエステルA層、他層がポリエステルB層となるように積層されていればよい。また、積層方法も特に制限はなく、多層押出し法で製造してもよいし、押出しラミネート法等で製造してもよい。
本発明の積層フィルムは、積層フィルム全体として、昇温時の結晶化ピーク温度が80〜120℃である事が好ましく、特に好ましくは、80〜100℃の範囲である。昇温時の結晶化ピーク温度が80℃未満の場合は、製膜の生産性が落ち好ましくなく、120℃を超えると温水処理時に白化が激しくなり好ましくない。
【0025】
本発明の積層フィルムは、常温での縦・横方向での破断強度の平均が200Mpa以下であることが好ましい。特に好ましくは、180Mpa以下である。常温での破断強度が200Mpaを超えると耐衝撃性が得られないからである。
【0026】
本発明の積層フィルムにおいて、A層とB層の層比率は30〜70/70〜30重量%である事が好ましく、特に好ましくは50〜60/50〜40重量%の比率である。B層の比率として30%未満では、低温(5℃)での耐衝撃性が得られず、70%を超えると、製膜性、耐熱性が低下するからである。
【0027】
また、本発明の積層フィルムはニ軸延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。ここで、ニ軸延伸法としては、遂次ニ軸延伸、同時ニ軸延伸、それらを組合わせたいずれの方法であってもよい。そして遂次ニ軸延伸の場合は、一般的には縦方向に延伸した後、横方向に延伸する方法が採用されているが、逆の順序で延伸する方法で実施してもかまわない。またニ軸延伸後、熱処理によりポリエステルの配向を固定することが好ましいが、二軸延伸後、熱処理工程を供する前に長手方向および/または幅方向に再延伸を行なってもよい。さらに、延伸工程またはその前後において、フィルムの片面または両面にコロナ放電処理や所定の塗布処理を施すことも何ら制限を受けない。
【0028】
本発明のフィルムラミネート金属板は、本発明の積層フィルムを、ポリエステルB層が金属板と接するようにラミネートするのが好ましい。離型性を有するポリエステルA層がフィルムラミネート金属板の表層を構成することにより、絞り成形時にポンチとの離型性を発揮できるからである。
【0029】
ポリエステル積層フィルムの金属板へのラミネート方法は特に限定せず、例えば、ドライラミネート法、サーマルラミネート法などを採用することができる。具体的には、B層の融点以上に加熱した金属板の表面に積層フィルムのポリエステルB層側を接触させ、かかる状態でニップロール間を通過させる。次いで、10〜40℃で急冷硬化させることにより、ラミネートさせる。ニップロールを通過させた後、必要に応じて、 B層の融点以上で熱処理してもよい。
【0030】
また、フィルムのラミネートは金属板の片面だけに行っても、両面に行ってもよい。両面ラミネートの場合は同時にラミネートしても遂次でラミネートしてもよい。
【0031】
本発明中のニ軸延伸フィルムラミネート金属板を2ピース缶に適用する場合、ラミネート後、ポリエステルの配向を除去するために、フィルムを構成するポリエステルの融点以上で加熱した後、急冷するというリメルト処理を行なうことが好ましい。リメルト処理後のX線観察による配向度は、10%以下で、実質的に無配向と言えるものである。つまり、ポリエステルが配向状態にある2軸延伸フィルムでは、塑性変形したり、延びにくいため、容器部を形成するための絞り成形工程を行いにくくなり、ひどい場合には、絞りしごき成形時に金属板から剥がれるというデラミネート現象が起こったり、破れたり、削れたりするからである。一方、実質的に無配向であれば、ラミネートしている金属板の変形に追随できるので、デラミネートや破れ等を生じることなく、2ピース缶のように、金属の塑性変形を伴う成形を行なうことができるからである。
本発明のフィルムラミネート金属容器は、本発明の二軸延伸タイプ又は無配向タイプのフィルムラミネート金属板を、適宜成形してなる金属容器であり、その容器の形状、金属容器を成形する方法は、特に限定しない。具体的には、天地蓋を巻き締めて内容物を充填する、いわゆる3ピース缶は勿論、金属板を絞り成形して容器部を形成する2ピース缶などが挙げられる。
【0032】
本発明の金属容器において、本発明のポリエステルフィルムは、金属容器の内壁面側になるように成形してもよいし、外壁面側になるように成形してもよい。但し、2ピース缶の場合には、その絞り加工適正の点から、離型性に優れているポリエステルA層がポンチと接するように、容器内壁面側に用いることが好適である。
【0033】
尚、絞りしごき成形を行なう場合、必要に応じて、ポンチが接触するフィルム表面に、潤滑剤を塗布してもよい。
本発明のフィルムラミネート金属容器には、必要に応じて印刷等を施してもよく、また製缶工程・印刷工程等の後、再リメルト処理を行ってもかまわない。
また、本発明におけるポリエステルには、必要に応じて酸化防止剤,熱安定剤,紫外線吸収剤,可塑剤,顔料,帯電防止剤,潤滑剤,結晶核剤,無機又は有機粒子よりなる滑剤等を配合させてもよい。
【0034】
本発明では金属板として、ティンフリースティール等の表面処理鋼板あるいはアルミニウム板又はアルミニウム合金板あるいは表面処理を施したアルミニウム板又はアルミニウム合金板が使用できる。
本発明では金属板上の樹脂膜厚みは特に限定されないが、10〜50μmが被覆効果(防錆性)と耐衝撃性と経済性の点から好ましい。該樹脂膜厚みが10μm未満では、低温での耐衝撃性が得られず、50μmを超えても過剰品質であり、経済的に好ましくない。
【0035】
【実施例】
以下、実施例をもとに本発明を説明する。
【0036】
以下に本発明における各種評価方法を示す。
【0037】
(1) ポリエステルの熱特性
ポリエステル組成物を300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷して得たサンプル10mgを用い、窒素気流中、示差走査型熱量計(DSC)を用いて10℃ /分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定したときの、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点Tm(℃)とし昇温結晶化時の頂点温度をTC(℃)とした。
【0038】
(2) 缶内面樹脂と加工ポンチの離型性
リメルトアルミ板をn=10で製缶し、成形缶上部に起る座屈程度を目視観察した。評価基準は以下のとおり設定し、○を実用性ありと評価した。
○:缶開口部の座屈未発生
△:缶開口部円周の約1/3に座屈発生
×:缶開口部円周の1/3以上に座屈発生
【0039】
(3) 耐衝撃性
リメルトアルミ板を製缶して得た缶を280℃で40秒加熱後水中急冷した缶の胴壁中央部より7cm角のサンプルを切り出す。このサンプルの缶外面に相当する面に先端径10mmの重り(600g)を高さ10cmから落して衝撃を付与する。ついで7%の希塩酸を満たしたガラス容器上にサンプルを置き(サンプルの凸部が浸漬する状態で置き)、3日後に凸部の腐蝕状態を目視観察した。評価基準は以下のとおり設定し、○を実用性ありと評価した。
○:凸部の腐蝕未発生
×:凸部の腐蝕発生
【0040】
(4) 温水処理後の白化程度
リメルトアルミ板を製缶して得た缶を、更に270℃で40秒間加熱した後水中急冷したものをサンプルとする。このサンプルを80℃の温水中に10分間浸漬した後、水中急冷して得た缶を目視観察した。評価基準は以下のとおり設定し、○を実用性ありと評価した。
○:白化が目立たない
△:明らかに白化しているが、アルミニウム合金板の色が見える
×:白化によりアルミニウム合金板の色がみえない
【0041】
(5) 低温での4%伸長時強度
上記(4)の処理を行った缶から、希塩酸によってアルミニウム金属部を溶解除去し、フィルムのみを取り出した。5℃の環境下で、TMAを用い該フィルムのラミネート方向の
破断強度測定を行った。この破断曲線より、4%伸長時の強度を得た。
【0042】
(実施例−1)
〔積層ポリエステルフィルムの作製〕
ポリエステルA層:PET/PBTの重量比率が40/60重量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3重量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4重量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PETを60重量%とPETを混合した、ポリエステル組成物Bを用いた。
【0043】
組成物A及び組成物Bを別々の押し出し機で溶融させ、この溶融体をダイ内で合流させた後、押し出し急冷して未延伸積層シートを得た。
この未延伸積層シートを、予熱温度65℃、延伸温度100℃で、縦方向に3.3倍延伸し、さらにテンター中で予熱温度65℃、延伸温度90℃で、横方向に4.0倍延伸した後、160℃にて8秒間熱処理を行い、160℃で4%の弛緩処理を行い、厚さ20μm(ポリエステルA層の厚み10μm、ポリエステルB層の厚み10μm)の二軸延伸積層フィルムを得た。
【0044】
〔フィルムラミネート金属板の作製〕
予熱したアルミ板の両面に、上記で作製したポリエステル積層フィルムのポリエステルB層がアルミ板と接するように、ニップロール間を通過させてラミネートした後、熱処理を行い、直後に10〜40℃の水槽中で急冷し、両面にフィルムがラミネートされたアルミ板を得た。ラミネート時には、初期密着性や張力変動、ニップロールへの巻付け等もなく、本実施例の積層フィルムのラミネート適性は良好であった。
次に該フィルムラミネートアルミ板を、275℃で加熱した後水中急冷して、リメルトアルミ板を作製した。
【0045】
〔フィルムラミネート金属容器の作製〕
上記で作製したリメルトアルミ板を、板厚減少率30%となるように、絞りしごき成形を行なって、フィルムラミネート金属容器を成形した。成形時には、フィルムの剥離や破れはなく、金型との離型性等もよく、また熱処理後の急冷時にもフィルムの白化による外観変化はなかった。
さらに外面を印刷した後、ニスを塗布し、加熱硬化後、冷風で急冷した。
このようにして成形した容器に飲料を充填し、タブの付いた蓋を巻き締め接合後、100℃で30分間温水処理をして、2ピース飲料缶を製造した。
できた飲料缶は、温水処理による白化、白化斑もなく、また飲料へのオリゴマーの溶出やフィルムからの析出もなかった。さらに流通段階や低温保管時に予想される外部からの衝撃に対してもフィルムの破れ等はなかった。
【0046】
(実施例−2)
ポリエステルA層:PET/PBTの重量比率が50/50重量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3重量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4重量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PETを60重量%とPETを混合した、ポリエステル組成物Bを用いた。
これ以降の製膜工程、製缶工程、評価については実施例−1に準ずる。
できた飲料缶は、実施例−1と同様に、温水処理による白化、白化斑もなく、また飲料へのオリゴマーの溶出やフィルムからの析出もなかった。さらに流通段階や低温保管時に予想される外部からの衝撃に対してもフィルムの破れ等はなかった。
【0047】
(実施例−3)
ポリエステルA層:PET/PBTの重量比率が60/40重量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3重量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4重量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PETを80重量%とPETを混合した、ポリエステル組成物Bを用いた。
これ以降の製膜工程、製缶工程、評価については実施例−1に準ずる。
できた飲料缶は、実施例−1と同様に、温水処理による白化、白化斑もなく、また飲料へのオリゴマーの溶出やフィルムからの析出もなかった。さらに流通段階や低温保管時に予想される外部からの衝撃に対してもフィルムの破れ等はなかった。
【0048】
(実施例−4)
ポリエステルA層:PET/PBTの重量比率が40/60重量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3重量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4重量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PETを100重量%であるポリエステル組成物Bを用いた。
これ以降の製膜工程、製缶工程、評価については実施例−1に準ずる。
できた飲料缶は、実施例−1と同様に、温水処理による白化、白化斑もなく、また飲料へのオリゴマーの溶出やフィルムからの析出もなかった。さらに流通段階や低温保管時に予想される外部からの衝撃に対してもフィルムの破れ等はなかった。
【0049】
(比較例−1)
ポリエステルA層:PET/PBTの重量比率が100/0重量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3重量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4重量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PETを60重量%であるポリエステル組成物Bを用いた。
これ以降の製膜工程、製缶工程、評価については実施例−1に準ずる。
できた飲料缶は、温水処理による白化・白化斑において、実施例での品質には及ばなかった。また飲料へのオリゴマーの溶出やフィルムからの析出はないものの、流通段階や低温保管時に予想される外部からの衝撃に対して、フィルムの破れ等が発生した。
【0050】
(比較例−2)
ポリエステルA層:PET/PBTの重量比率が40/60重量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3重量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4重量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PETを40重量%であるポリエステル組成物Bを用いた。
これ以降の製膜工程、製缶工程、評価については実施例−1に準ずる。
できた飲料缶は、温水処理による白化・白化斑もなく、また飲料へのオリゴマーの溶出やフィルムからの析出はないものの、流通段階や低温保管時に予想される外部からの衝撃に対して、フィルムの破れ等が発生した。
【0051】
(比較例−3)
ポリエステルA層:PET/PBTの重量比率が40/60重量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3重量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4重量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位80モル%、イソフタル酸単位20モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるイソフタル酸共重合PETを100重量%であるポリエステル組成物Bを用いた。
これ以降の製膜工程、製缶工程、評価については実施例−1に準ずる。
できた飲料缶は、温水処理による白化・白化斑において、実施例での品質には及ばなかった。また飲料へのオリゴマーの溶出やフィルムからの析出はないものの、流通段階や低温保管時に予想される外部からの衝撃に対して、フィルムの破れ等が発生した。
【0052】
上記結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
本発明の金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルムは、2ピース缶用のラミネートフィルムとして使用した場合でも、金属との密着性や成形加工性及び意匠性に優れ、低温で衝撃を受けた際の耐衝撃性にも優れる。
Claims (5)
- ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレートからなり、その重量比率が20〜80/80〜20であるポリエステルA層及び全酸成分に炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を5〜15mol%含むポリエステルB層の二層構成よりなり、非晶無配向状態で温水処理を施した前記積層フィルムの5℃での4%伸張時強度が40MPa以下である事、前記積層フィルムの、常温での縦方向・横方向での破断強度の平均が200MPa以下である事、ポリエステルA層の融解ピーク温度Tmaが200℃〜260℃の範囲に複数存在する事を特徴とする金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルム。
- 請求項1記載の金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルB層側が金属板とのラミネート面となる事を特徴とする金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルム。
- 請求項1記載の金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルB層の昇温時結晶化ピーク温度Tcbが100〜150℃の範囲にある事を特徴とする金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルム。
- 請求項1記載の金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルB層の融解ピーク温度Tmbが200℃〜245℃の範囲にある事を特徴とする金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルム。
- 請求項1記載の金属板貼り合せ成形加工用ポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルA層/ポリエステルB層の層厚み比率が30〜70/70〜30の範囲にある事を特徴とする金属板貼り合せ成形加工用ポエステルフィルム。
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