JP4910273B2 - 絞りしごきアルミニウム缶被覆用フィルム及びこれを用いた絞りしごき缶用アルミニウム板、並びに絞りしごきアルミニウム缶 - Google Patents

絞りしごきアルミニウム缶被覆用フィルム及びこれを用いた絞りしごき缶用アルミニウム板、並びに絞りしごきアルミニウム缶 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂被覆金属板用として好適な熱可塑性樹脂フィルムに関し、特に、絞りしごき缶用として絞り・しごき加工などの製缶加工性に優れると共に、耐レトルト性や耐衝撃性にも優れた被覆用フィルム、及び、該フィルムを金属板にラミネートしてなる絞りしごき缶用金属板、並びに絞りしごき缶に関するものである。
金属缶の内壁面や外壁面の腐食を防止する方法として、熱可塑性樹脂フィルムをラミネートする方法があり、例えば特許文献1には、食品缶詰め用の金属材にラミネートするためのポリエステルフィルムが開示されている。
このポリエステルフィルムは優れた耐スクラッチ性を有しており、例えば金属板を円筒状に成形し、該円筒の上下開口部に蓋体を巻締め加工して製缶する際に、フィルムがラミネートされた金属板(以下、「フィルムラミネート金属板」という)を移送したり、巻締め加工などでラミネート金属板を加工する際にも、スクラッチ傷の発生により商品価値を低下させるといった問題を防止できる。
また、このフィルムは巻締め加工時の耐性にも優れており、且つ製缶後に食品を充填してからレトルト処理などを行った時のオリゴマー溶出量も少ないので、金属容器の内壁面にラミネートするポリエステルフィルムとして好適である。
ところで食品用缶としては、金属板を円筒状に成形してなる金属円筒の上下開口部に蓋体を取付けた所謂3ピース缶の他に、金属板を深絞り加工することによって容器部を形成し、該容器部の上面開口部に蓋体を巻締め加工してなる所謂2ピース缶がある。
上記3ピース缶の場合、フィルムラミネート金属板は円筒状に成形されるだけであるが、2ピース缶の場合、フィルムラミネート金属板は上記の様に絞りしごき成形される。従って2ピース缶に適用するには、ラミネート用フィルムについても金属板の成形に追随し得る優れた成形性が求められると共に、金属板に対する密着性も必要となる。成形性が不十分であったり、金属板に対するフィルムの密着性が不十分である場合は、フィルムが金属板から剥離する現象(デラミネート現象)を起こしたり、2ピース缶の容器部の作製時にフィルムが剥離したり破れる恐れがあるからである。
また絞り加工では、ポンチの下降と上昇を繰り返しながらラミネート金属板を容器状に加工していくので、容器の内壁面側にラミネートされるフィルムでは、ポンチとの離型性が求められ、容器の外壁面側にラミネートされるフィルムでは、ダイスとの離型性が要求される。
特開平7―227946号公報
本発明は上記の様な事情に鑑みてなされたものであり、所謂2ピース缶用のラミネートフィルムとして、製缶時の成形加工性に優れると共に、低温保管時や移送時の耐衝撃性に優れた性能を有する絞りしごきアルミニウム缶被覆用フィルムを提供し、また該フィルムを用いた絞りしごき缶用アルミニウム板、更には該アルミニウム板を用いた絞りしごき缶を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明の絞りしごき缶被覆用フィルムは、ポリエステルからなるA層、B層、C層の3層で構成される積層フィルムであって、中間層を構成する前記B層における全酸成分の2〜10モル%がダイマー酸であり、且つ前記C層は水分散型共重合ポリエステル樹脂からなる厚み1〜50nmの層であり、該C層側をアルミニウム板と熱ラミネートしたときのアルミニウム板との密着強度が10N/15mm以上であるところに特徴を有している。
本発明に係る上記被覆用フィルムにおいては、熱ラミネート板を前記フィルムの融点以上の温度に加熱して該フィルムを再溶融させた後の、当該フィルムとアルミニウム板の密着強度が18N/15mm以上であるものが好ましく、また前記C層を構成する水分散型共重合ポリエステル樹脂のTg(ガラス転移温度)は60℃以上であることが好ましい。
また本発明の絞りしごき缶用アルミニウム板は、上記被覆用フィルムをアルミニウム板に被覆してなるところに特徴を有し、更には、該フィルム被覆アルミニウム板を製缶してなる絞りしごき缶も本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の絞りしごき缶被覆用フィルムは、2ピース缶用のラミネートフィルムとして使用した場合でも、金属との密着性や成形加工性に優れると共に意匠性にも優れており、更には低温で衝撃を受けた時の耐衝撃性にも優れた特性を発揮する。
本発明におけるポリエステルA層、具体的にはフィルムラミネート金属板において金属板とラミネートされない側(即ち、金属とラミネートされる面の反対側)を構成するポリエステルA層について説明する。
該ポリエステルA層に用いるポリエステル樹脂の種類は特に限定されないが、好ましいのは、結晶性のポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートとポリエチレンイソフタレートを20〜80/80〜20質量%で構成されるものである。ポリエチレンイソフタレート乃至はポリブチレンテレフタレートの比率が20質量%未満では、製缶工程で延展不足になることがあり、逆に80質量%を超えると、融解ピーク温度が200℃未満となって製缶性が損なわれるばかりでなく、製膜・原料コストの面からも経済的でない。
また、本発明における該ポリエステルA層の融解ピーク温度は200〜250℃の範囲が好ましい。融解ピーク温度が200℃未満では製缶性が損なわれ、250℃を超えると、後述するポリエステルB層と溶融押出しする際のバランスが崩れ、製膜性が低下するので好ましくない。該融解ピーク温度は複数個存在してもよい。この様な融解ピーク温度を得るための手段としては、溶融押出し時のエステル交換反応を抑制する方法などが挙げられる。
該ポリエステルA層には、滑剤として不活性無機粒子や架橋高分子粒子など、若しくはワックスを用いることが好ましい。該不活性無機粒子としては、シリカ、アルミナ、カオリン、クレー、酸化チタン、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、フッ化リチウム、硫酸バリウム、カーボンブラック等が好ましい。
架橋高分子粒子としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの(メタ)アクリル系単量体、スチレンやアルキル置換スチレン等のスチレン系単量体などと、ジビニルベンゼン、ジビニルスルホン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラメチル(メタ)アクリレート等の架橋性単量体との共重合体;メラミン系樹脂;ベンゾグアナミン系樹脂;フェノール系樹脂;シリコン含有系樹脂等が例示できる。
前記粒子系滑剤の平均粒径は1〜3μmが好ましい。1μm未満ではポンチに対する離型性改良効果が発現できないからである。逆に3μmを超えるとポンチ離型性の向上効果が飽和する一方、摩耗による滑剤の脱落が起こり易くなったり、金属板とのラミネート時にフィルムが破断する恐れが生じてくる。
また前記ワックスとしては、ポリオレフィン系ワックス、ポリエステル系ワックス等の合成ワックス、カルナバワックス等の天然ワックス等が例示できる。
滑剤は0.01〜2質量%の範囲で添加することが好ましい。ポンチとの離型性を確保する上では滑剤量を0.01質量%以上とするのがよく、一方、2質量%を超えて過度に添加してもそれ以上の離型性向上効果は得られず、コスト的に不利になるだけだからである。
また、エチレンテレフタレート環状三量体を始めとする環状三量体の含有量は0.7質量%以下とするのがよい。これは、フィルムにおけるオリゴマーの析出を抑制するためである。後述する如く2ピース缶を製造する場合、本発明の積層フィルムは、無配向ポリエステルとするためのリメルト処理を経た後に絞り加工されるが、無配向ポリエステルでは、配向ポリエステルよりもオリゴマーが析出し易い。そのため、環状三量体が0.7質量%超含まれていると、例えば、このフィルムをラミネートした金属板を用いた2ピース缶に飲料を充填し、レトルト処理などの加熱処理を行ったときに、ポリエステルA層からオリゴマーが多量に溶出し、このオリゴマーが食品に移行して食品の味やフレーバーに悪影響を及ぼす恐れがあるからである。
ポリエステルA層中に含まれるエチレンテレフタレート環状三量体をはじめとする環状三量体の含有量を0.7質量%以下にする方法は特に限定されず、a)積層フィルムとした後に、該積層フィルムから水または有機溶剤で環状三量体を抽出除去する方法、b)環状三量体の少ないポリエステルを用いて、ポリエステルA層を構成する方法などが挙げられる。これらのうち、b)の方法の方が経済的で好ましい。
上記b)の方法において、環状三量体の含有量の少ないポリエステルを製造する方法も特に限定されず、固相重合法、または重合後の減圧加熱処理、あるいは水または有機溶剤による抽出で環状三量体を抽出除去する方法、もしくはこれらの方法を組合せた方法などを採用できる。中でも、固相重合法により環状三量体含有量の少ないポリエステルを製造した後、得られたポリエステルを水で抽出して更に環状三量体を低減させる方法は、フィルム形成工程での環状三量体の生成量をより効果的に押えることができるので最も好ましい。
本発明で使用されるポリエステルは、ジカルボン酸とジオールを直接反応させる直接エステル化法;ジカルボン酸ジメチルエステルとジオールとを反応させるエステル交換法など、従来から公知の方法で合成することができる。これらの方法はそれぞれ、回分式および連続式のいずれの方法で行ってもよい。あるいは、分子量を高めるために固相重合法を採用してもよい。固相重合法は、前述の様に環状三量体の含有量を低減できる点でも好ましい方法である。
この様にして合成されるポリエステルは、ポリエステルA層に1種類だけ含まれていてもよいし、2種以上が混合して含まれていてもよい。
上記ポリエステルA層には、上述した化合物の他、必要に応じて無機微粒子、非相溶の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤などの添加剤が含まれていてもよい。ポリエステルA層内に0.01〜1質量%程度の酸化防止剤を含有させることも、好ましい実施態様である。
上記各種成分を混合したときのポリエステルA層の極限粘度は、0.6〜1.2の範囲であることが好ましい。該ポリエステルA層の極限粘度が0.6未満では、得られるフィルムの力学特性が低くなる恐れがあり、また1.2を超えてもそれ以上に力学特性は上がらず、原料ポリエステルの生産性が低下するので経済的ではない。
次に、中間層を構成するポリエステルB層について説明する。
該ポリエステルB層は、ダイマー酸を2〜10モル%含むことが好ましい。ここでダイマー酸とは、オレイン酸等の高級不飽和脂肪酸の二量化反応によって得られ、通常、分子中に不飽和結合を有しているが、水素添加により不飽和度を下げたものも使用できる。水素添加すると耐熱性や柔軟性が更に向上するのでより好ましい。また、二量化反応の過程で直鎖分岐状構造や脂環構造、芳香核構造などが生成するが、これらの構造や量も特に限定されない。
ダイマー酸以外の成分として、以下に示す様なジカルボン酸成分やグリコール成分を用いることができる。
例えば、ジカルボン酸成分としては、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、その他オキシカルボン酸、脂環族ジカルボン酸などを用いることができる。
また、グリコール成分としてはプロパンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコールなどを使用できるが、特に好ましいのは、酸成分としてイソフタル酸、グリコール成分としてエチレングリコールを用いることである。
また、ダイマー酸成分は2〜10モル%の範囲で含むことが好ましく、特に好ましいのは4〜6モル%の範囲である。ダイマー酸はフィルムの耐衝撃性を向上させるのに有効である。
含有量が2モル%未満では低温(5℃)での耐衝撃性が得られず、フィルムが破れたり、傷が入ったりするからである。一方、10モル%を超えると、製膜性、耐熱性、強度が低下し好ましくない。
該ポリエステルB層の融解ピーク温度は200〜245℃の範囲にあることが好ましい。特に好ましくは210〜235℃の範囲である。融解ピーク温度が200℃未満では製缶性が損なわれ、245℃を超えると、原料ポリエステルの生産性が低下するので経済的でない。
尚、ポリエステルB層を構成するポリエステルの合成法としては従来の方法を採用できること、上記要件を満たす範囲内でポリエステル組成物に必要に応じて他の添加剤を含有させることができること、更には、ポリエステル組成物の極限粘度などについては、前記ポリエステルA層の場合と同様である。
次に、金属板と貼り合わされるポリエステルC層について説明する。
このポリエステルC層は、Tg(ガラス転移温度)が60℃以上の水分散型共重合ポリエステル樹脂を塗布して形成したものが好ましい。ここで、水分散型共重合ポリエステル樹脂とは、それ自身は水に不溶であるが水系溶媒に分散乃至溶解することのできる樹脂である。具体的には分子内に親水性基を有するモノマー成分を共重合したポリエステル系樹脂が挙げられる。この様な水分散型共重合ポリエステル樹脂を用いることにより、金属板との優れた密着強度を実現することができる。
また、有機溶剤を使用しないことで、人体や環境への悪影響も低減できる。該水分散型共重合ポリエステル樹脂からなるC層は、所謂コーティングにより、1〜50nmの厚みに制御されていることが好ましい。コート厚みが1nm未満では、コート層が所謂膜割れを起こして適正な樹脂膜を形成できず、一方、膜厚が50nmを超えると過剰品質となり不経済になるからである。該C層を形成するためのコーティング処理は、製膜中(インライン)でも製膜後(オフライン)のどちらで行なってもよい。
上記水分散型共重合ポリエステル樹脂としては、親水性基を有するモノマー成分を共重合したポリエステル樹脂が挙げられる。親水性基とは、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、またはそれらの誘導体や金属塩、エーテル等であり、これらの基を分子内に含むモノマーを共重合することで、水に溶解乃至分散可能な状態としたものである。
親水性基を含むモノマーとしては、具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のスルホン酸含有モノマーの金属塩等が挙げられる。
また、共重合ポリエステルに、親水性基を有するビニル系モノマーをグラフト重合させる方法がある。親水性基を有するビニル系モノマーとしては、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、アミド基等を含むもの、更には、親水性基に変化させることのできる基として酸無水物基、グリシジル基、クロル基などを含むものが挙げられる。中でもカルボキシル基を有するものが好ましい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、或いはそれらの塩等のモノマーである。
本発明の積層フィルムは、特にリメルト(再溶融)処理後のフィルムと金属板との密着強度が18N/15mm以上であるのが好適である。リメルト後の密着強度が18N/15mm未満では、製缶時の成形加工性が悪くなり、成形加工中にフィルムと金属板が剥離することがある。
フィルムと金属板との密着強度は次の様にして行なう。
a)フィルムラミネート金属板の作製
220℃に予熱した金属板に、上記の様に構成された積層フィルムのポリエステルC層側が金属板と接する様にニップロール間を通過させてラミネートした後、10〜40℃の水槽に通して急冷し、積層フィルムがラミネートされた金属板を得る。
b)リメルト処理(再溶融処理)
フィルムラミネート金属板を、270℃に加熱した後に空冷し、更に水中急冷してリメルト金属板を作製する。
c)密着強度
上記リメルト金属板から、希塩酸により金属部の一部を溶解除去し、フィルムのみを取り出し、これをきっかけとしてフィルムと金属板を剥離する。充分に剥離した後、フィルムが伸びない様に補強材を貼り付け、15mm巾にカッティングする。カッティングして得たサンプルを引張試験機にかけ、引張速度5mmで剥離強度を測定する。
本発明の積層フィルムは、一方側の表層がポリエステルA層、中間層がポリエステルB層、金属板と接する面側にポリエステルC層となる様に積層されていればよい。A層/B層の積層方法も特に制限はなく、多層押出し法を採用してもよいし、押出しラミネート法等を採用してもよい。
本発明の積層フィルムにおいて、上記A層とB層の構成比率は30〜70/70〜30質量%の範囲が好ましく、特に好ましいのは50〜60/50〜40質量%の範囲である。B層の比率が30%未満では、低温(5℃)での耐衝撃性が得られず、70%を超えると、製膜性や耐熱性が低下するからである。
また本発明の積層フィルムは、無延伸のままであっても二軸延伸されたものであってもよい。この時に採用することのできる二軸延伸法としては、遂次二軸延伸、同時二軸延伸、或いはそれらを組合せた何れの方法であってもよい。遂次二軸延伸の場合、一般的には縦方向に延伸してから横方向に延伸する方法が採用されるが、逆の順序で延伸する方法で実施しても構わない。二軸延伸後は、熱処理によってポリエステルの配向を固定することが好ましいが、二軸延伸後、熱処理を行なう前に長手方向および/または幅方向に再延伸してもよい。更に、延伸の前後任意の時期に、フィルムの片面または両面にコロナ放電処理を施すことも可能である。
本発明に係るラミネート金属板は、本発明に係る上記積層フィルムを、ポリエステルC層側が金属板側となる様に金属板にラミネートすることによって製造される。離型性を有するポリエステルA層でフィルムラミネート金属板の表層を構成することにより、絞り成形時にポンチとの離型性を高めることができるからである。
ポリエステル積層フィルムを金属板にラミネートする方法には特に制限がなく、例えばドライラミネート法、サーマルラミネート法などを採用することができる。より具体的には、例えば220℃程度に予熱した金属板に、上記で作製したポリエステル積層フィルムのポリエステルC層が該金属板と接する様にニップロール間を通過させてラミネートし、その後10〜40℃の水槽中で急冷固化させることによりラミネートする。
また、積層フィルムのラミネートは金属板の片面だけに行ってもよく、或いは両面に行ってもよい。両面ラミネートの場合は、同時ラミネート法、遂次ラミネート法の何れを採用しても構わない。
本発明における二軸延伸フィルムラミネート金属板を2ピース缶に適用する場合、金属板にラミネートした後、ポリエステルの配向を除去するため、ラミネートフィルムを構成するポリエステルの融点以上に加熱した後に急冷するというリメルト処理を行なうことが好ましい。リメルト処理後のX線観察による配向度は、10%以下で実質的に無配向と言えるものである。つまり、ポリエステルが配向状態にある2軸延伸フィルムでは、塑性変形したり延びたりし難いため、容器部を形成するための絞り成形が困難となり、ひどい場合は、絞りしごき成形時にフィルムが金属板から剥がれるデラミネート現象を起こしたり、破れや削れ等を起こし易くなるからである。しかしフィルムが実質的に無配向であれば、ラミネートしている金属板の変形に追随することができ、デラミネートや破れ等を起こすこともないので、2ピース缶の様に金属の塑性変形を伴う成形であっても支障なく行なうことができる。
本発明のフィルムラミネート金属容器は、上記の様にして得られる二軸延伸タイプもしくは無配向タイプのフィルムラミネート金属板を缶状に成形してなる金属容器であり、容器の形状や金属容器の成形法などは特に制限されない。例えば、天地蓋を巻き締めて内容物を充填する所謂3ピース缶は勿論のこと、金属板を絞り成形して容器部を形成する2ピース缶などが含まれる。
本発明の金属容器において、ポリエステル系の積層フィルムが金属容器の内壁面側になる様に成形してもよいし、外壁面側になる様に成形してもよい。但し、2ピース缶の場合は、前述した如く絞り加工適正の観点から、離型性に優れているポリエステルA層がポンチと接する様に、容器内壁面側に用いることが好ましい。
尚、絞りしごき成形を行なう場合、必要に応じて、ポンチが接触するフィルム表面に潤滑剤を塗布してもよい。
本発明のフィルムラミネート金属容器には、必要に応じて印刷等を施してもよく、また製缶工程・印刷工程等の後、再リメルト処理を行ってもかまわない。
また、本発明で用いる各種のポリエステルには、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、潤滑剤、結晶核剤、無機又は有機粒子よりなる滑剤等を配合してもよい。
本発明で用いる金属板としては、ティンフリースティール等の表面処理鋼板、アルミニウムまたはアルミニウム合金板、あるいは表面処理を施したアルミニウムまたはアルミニウム合金板などが使用できる。
また本発明における金属板上のフィルム厚みは特に限定されないが、被覆効果(防錆性)や耐衝撃性、経済性などを総合すると10〜50μmの範囲が好ましい。該フィルム厚みが10μm未満では低温での耐衝撃性が得られず、50μm超では過剰品質となって経済的に好ましくないからである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
また、下記実施例で採用した各種評価法は下記の通りである。
(1)ポリエステルの熱特性
ポリエステル組成物を300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷して得たサンプル10mgを用い、窒素気流中、示差走査型熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定したときの、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点Tm(℃)とし、昇温結晶化時の頂点温度をTc(℃)とした。
(2)製缶性
リメルトアルミ板をn=10で製缶し、成形缶上部に起こる座屈の程度を目視観察した。評価基準は以下の通りとし、○を実用性ありと評価した。
○:缶開口部の座屈未発生
△:缶開口部円周の約1/3に座屈発生
×:缶開口部円周の1/3以上に座屈発生
(3)耐衝撃性
リメルトアルミ板を製缶して得た缶を280℃で40秒間加熱した後水中急冷した缶の、胴壁中央部より7cm角のサンプルを切り出す。このサンプルの缶外面に相当する面に先端径10mmの重り(600g)を高さ10cmから落して衝撃を与える。次いで7%の希塩酸を満たしたガラス容器上にサンプルを置き(サンプルの凸部が浸漬する状態で置き)、3日後に凸部の腐蝕状態を目視観察した。評価基準は以下の通りとし、○を実用性ありと評価した。
○:凸部の腐蝕未発生
×:凸部で腐蝕発生
(4)密着強度
リメルトアルミ板から、希塩酸によってアルミニウム板の一部を溶解除去し、フィルムのみを取り出した。これをきっかけとしてフィルムとアルミ板を剥離し、充分に剥離した後、フィルムが伸びない様に補強材を貼り付け、15mm巾にカッティングする。該サンプルを用いて引張試験機により引張速度5mmで剥離強度を測定した。
実施例1
〔積層ポリエステルフィルムの作製〕
ポリエステルA層:PET(東洋紡績社製の商品名「SG554」PETレジン)/PET−I(東洋紡績社製の商品名「RN163C」IPA10モル%共重合PET)の質量比率が50/50質量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3質量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4質量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PETを100質量%のポリエステル組成物Bを用いた。
上記組成物Aと組成物Bを別々の押出し機で溶融し、それらの溶融体をダイ内で合流させてから押出しし、急冷して未延伸積層シートを得た。
この未延伸積層シートを、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に3.3倍延伸し、更にテンター中で予熱温度65℃、延伸温度90℃で横方向に4.0倍延伸する。その後、160℃で8秒間熱処理してから、160℃で4%の弛緩処理を行い、厚さ20μm(ポリエステルA層の厚み10μm、ポリエステルB層の厚み10μm)の二軸延伸積層フィルムを得た。該積層フィルムに対し、グラビアコーティング法でコート層厚みが50nmとなる様に調整したコート液(東洋紡績社製の商品名「バイロナール」)をポリエステルB層側にコーティングし、160℃で8秒間乾燥してポリエステルC層とした。
〔フィルムラミネート金属板の作製〕
予熱したアルミ板の両面に、上記で作製したポリエステル積層フィルムのポリエステルC層がアルミ板と接する様にニップロール間を通過させてラミネートした後、熱処理を行い、直後に10〜40℃の水槽中で急冷し、両面にフィルムがラミネートされたアルミ板を得た。ラミネート時には、初期密着性や張力変動、ニップロールへの巻付け等も起こらず、本実施例の積層フィルムのラミネート適性は良好であった。
次に該フィルムラミネートアルミ板を、270℃に加熱してから空冷し、更に水中急冷することによりリメルトアルミ板を作製した。
〔フィルムラミネート金属容器の作製〕
上記で作製したリメルトアルミ板を、板厚減少率が30%となる様に絞りしごき成形を行なって、フィルムラミネート金属容器を成形した。成形時には、フィルムの剥離や破れはなく、金型との離型性等も良好であり、また熱処理後の急冷時にもフィルムの白化等の外観変化はなかった。
更に外面を印刷した後、ニスを塗布し、加熱硬化後、冷風で急冷した。この様にして成形した容器に飲料を充填し、タブの付きの蓋を巻き締め接合した後、100℃で30分間温水処理して2ピース飲料缶を製造した。得られた飲料缶は、密着性、製缶性に優れており、また飲料へのオリゴマーの溶出やフィルムからの析出も生じなかった。更に、流通段階や低温保管時に予想される外部からの衝撃に対しても、フィルムの破れ等はなかった。
実施例2
ポリエステルA層:PET(東洋紡績社製の商品名「SG554」PETレジン)/PBT(東レ社製の商品名「1200S」PBT)の質量比率が50/50質量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3質量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4質量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PET40質量%と、PET(東洋紡績社製の商品名「SG554」PETレジン)/PBT(東レ社製の商品名「1200S」PBT)を質量比率30/30で混合したポリエステル組成物Bを用いた。
上記組成物Aと組成物Bを別々の押出し機で溶融し、それらの溶融体をダイ内で合流させて押出した後、急冷して未延伸積層シートを得た。
得られた未延伸積層シートを、予熱温度65℃、延伸温度100℃で縦方向に3.3倍延伸した後、テンター中で予熱温度65℃、延伸温度90℃で横方向に4.0倍延伸し、更に160℃で8秒間熱処理した後160℃で4%の弛緩処理を行い、厚さ20μm(ポリエステルA層の厚み10μm、ポリエステルB層の厚み10μm)の二軸延伸積層フィルムを得た。該フィルムに対し、グラビアコーティング法で、コート層厚みが50nmとなる様に調整したコート液(東洋紡績社製の商品名「バイロナール」)をポリエステルB層側にコーティングし、160℃で8秒間乾燥することによりポリエステルC層とした。
これ以降の製缶工程および評価は、前記実施例1と同様にして行った。
得られた飲料缶は、前記実施例1と同様に、密着性、製缶性に優れ、飲料へのオリゴマーの溶出やフィルムからの析出も生じなかった。更に、流通段階や低温保管時に予想される外部からの衝撃に対してもフィルムの破れ等は生じなかった。
比較例1
ポリエステルA層:PET(東洋紡績社製の商品名「SG554」PETレジン)/PET−I(東洋紡績社製の商品名「RN163C」IPA10モル%共重合PET)の質量比率が50/50質量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3質量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4質量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PET100質量%のポリエステル組成物Bを用いた。
これ以降の製膜工程、製缶工程、評価は、前記実施例1と同様にして行った。
得られた飲料缶は、耐衝撃性は良好であるものの、密着性や製缶性において前記実施例の品質には及ばなかった。
比較例2
ポリエステルA層:PET(東洋紡績社製の商品名「SG554」PETレジン)/PBT(東レ社製の商品名「1200S」PBT)の質量比率が40/60質量%のベース樹脂に、凝集タイプのシリカ粒子(平均粒径1.5μm)0.3質量%を含有させ、極限粘度0.7、エチレンテレフタレート環状3量体が0.4質量%のポリエステル組成物Aを用いた。
ポリエステルB層:ジカルボン酸成分がテレフタル酸単位90モル%、炭素数36個のダイマー酸単位10モル%よりなり、ジオール成分がエチレングリコール単位100モル%であるダイマー酸共重合PETを80質量%と、PET(東洋紡績社製の商品名「SG554」PETレジン)/PBT(東レ社製の商品名「1200S」PBT)を質量比率8/12で混合したポリエステル組成物Bを用いた。
これ以降の製膜工程、製缶工程、評価は、前記実施例1と同様にして行った。
得られた飲料缶は、耐衝撃性は高いものの、密着性、製缶性において前記実施例には著しく劣るものであった。
結果を下記表1に一括して示す。
本願発明の絞りしごき缶被覆用フィルムは、製缶における成形加工性に優れ、且つ低温保管時や移送時の耐衝撃性も良好であるため、2ピース缶用のラミネートフィルムとしても利用することができ、産業界に寄与すること大である。

Claims (5)

  1. ポリエステルからなるA層、B層、C層の3層で構成された積層フィルムであって、中間層を構成する前記B層における全酸成分の2〜10モル%がダイマー酸であり、且つ前記C層は水分散型共重合ポリエステル樹脂からなる厚み1〜50nmの層であり、該C層側をアルミニウム板と熱ラミネートしたときのアルミニウム板との密着強度が10N/15mm以上であることを特徴とする絞りしごきアルミニウム缶被覆用フィルム。
  2. アルミニウム板と熱ラミネートした板を、前記積層フィルムの融点以上の温度に加熱して該フィルムを再溶融させた後の、当該フィルムとアルミニウム板の密着強度が18N/15mm以上である請求項1に記載の絞りしごきアルミニウム缶被覆用フィルム。
  3. 前記C層のTgが60℃以上である請求項1または2に記載の絞りしごきアルミニウム缶被覆用フィルム。
  4. 前記請求項1〜3のいずれかに記載の絞りしごきアルミニウム缶被覆用フィルムをアルミニウム板にラミネートしたものであることを特徴とする絞りしごき缶用アルミニウム板。
  5. 前記請求項4に記載の絞りしごき缶用アルミニウム板を製缶してなることを特徴とする絞りしごき缶。
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