JP2005143493A - もやし栽培方法及びその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】姿を損なわずに一定長に切揃えたもやしの収穫を可能にする栽培装置の
構成を簡単化し、育成作業にかかる手間を少なくする。
【解決手段】栽培床体10と栽培ボックス20の二つの簡単な要素で栽培装置を構成し、栽培床体の全面に根を通す孔又はメッシュを施し、そこに豆を載せ、床体を積み重ねた状態で栽培室22に収納し、栽培室を密閉状態にして発芽・成長させる。育成過程では、温度や湿度を最適な条件に保つための給水処理以外には外から操作を加えず、収納状態を保ったままもやし自身の成長により生じる力で上段の栽培床体を押し上げる。この作用で長さが均等に保たれ且つ太さの太いもやしが得られる。成長の終りで、栽培床体10に設けた根切り用の開口から床体上面に刃を入れ、姿を損なわずに一定長に切揃えたもやしを収穫する。
【選択図】図6

Description

本発明は、もやしを生産し、流通・利用に適した形態に切り揃えて出荷することを可能にするもやし栽培方法及びその装置に関する。
食用に広く使われている芽物野菜としてのもやしの栽培方法としてよく知られている最も単純な方法は、大型の容器(例えば40リットル広口容器や袋)に直接もやしの種子(豆)を入れ、容器中でもやしを成長させるという方法であるが、この方法では、成長後に収穫したもやしの根及び茎の長さや向きが不揃いであるので、もやしの見栄えを良くして商品価値を高めるために、根切りしてから袋詰めして出荷している。従来、向きや長さの不揃いのもやしの根切りを手作業で行うことは非常に作業効率が悪いため、それを解消する方法として自動的に値切りを行う装置が種々提案されている(例えば、特許文献1、2)。従来提案されている根切り装置は、もやしをベルトコンベヤやロールコンベヤで搬送中にもやしの向きを揃えてカッター等で根を切断除去するものであるが、装置が大掛かりで多額の設備投資が必要であり、小規模生産業者にとって採用することが困難である。一方、向きを揃えて一定の長さに生育させることによって、大型な根切り装置によらずに容易に値切りできるようにする方法も提案されている(例えば特許文献3)。
特許文献3に開示された従来の方法について、図11を参照して概略を説明する。この栽培方法は、栽培箱外枠104、底部孔開板103、培地体110、栽培箱内枠102を組み立てて構成する栽培装置101を図示のように多段に積み重ね、培地体
110に蒔かれた種子(この例は小大豆)からもやしを発芽させる。もやしは一定
方向に成長が進み、下段の培地体110から生育したもやし191は、上段の栽培
装置101の底部孔開板103に達すると、自重圧が加えられて芽揃えが行われる。
収穫時期には、栽培装置101を倉出しし、栽培箱内枠102を外して栽培箱外枠
104の上面の線Aに沿って切断機を用いて茎193の下側を根切りし、もやしの
姿を損なわずに一定の長さで切り揃え、出荷するという工程を行うことが示されている。
特開平8−56634号公報 特開平10−136959号公報 特開2001−320967号公報
しかしながら、上記従来の栽培装置は、組み立て部品数が多く、また、栽培の過程で栽培箱内枠といった部品を新たに加えて装置を組み立て直し、また、収穫時には装置を分解する必要があり、作業に手間がかかってしまう。また、栽培箱内枠は積み重ねた上下の栽培装置の間隔を一定に保持し、もやしの生育長さを規制する役目を持っているので、生育長さを調整する必要があるときには、栽培装置の間隔調整用のスペーサ等の部品を用意し適応させる必要がある。さらに、積み重ねられた栽培装置の上方から給水を行い、底部孔開板の開孔を通して下段に供給するという給水方法をとると、開孔が根の成長により塞がれると水が十分に行き渡らないという不具合が起きる可能性がある。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解消しようとするもので、栽培床体を多段に積重ねてもやしを栽培するもやし栽培装置において、向き及び長さを一定に揃えて生育させることができ、もやしの姿を損なわずに簡単に一括に根切りして収穫することを可能にしてもやしの商品価値を高めることができ、しかも栽培装置を構成する要素をより簡単にして、作業にかかる手間を少なくし、種子の種類或いは生育条件等の違いにも柔軟に対応でき、さらに各段のもやしへの給水を適正に行うことができ効率よくもやしを栽培できるもやし栽培方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
上記問題点を解決するための本発明のもやし栽培方法は、もやし栽培用の豆から生育する根が通過可能な孔又はメッシュを全面に施した栽培床体の上面に豆を均一に播き、豆が播かれた栽培床体を栽培ボックスに互いに垂直に移動自在に積み重ね、収納してから収穫までの間は、温度や湿度を生育条件に保つように前記栽培ボックスに給水・排水を行うことにより、もやし自身の成長により生じる力で上段にある前記栽培床体を押し上げ、垂直に移動させるようにして、栽培床体面からの長さをほぼ均等に保ちながら生育させ、収穫時に前記栽培床面に沿ってもやしの根切りを行うことを特徴とするものである。
前記栽培床体に播かれた豆の上に薄板状の仕切板を落とし蓋状に重ね、もやし自身の成長により該仕切板を押上げると共に該仕切板が上段にある栽培床体に生育するもやしの根を受け、上段の栽培床体のもやしの根がその下段のもやしの葉に絡まることを防止するようにすることによって、収穫作業をより歩留まりよく効果的に行うことができる。そして、もやしが発芽から所定長さに成長するまでは、上段にある前記栽培床体の圧力が作用せずに成長し、その後の成長段階では上段にある栽培床体を押上げながら成長するようにすることによって、成長力が弱い初期段階での傷みを防止し、より歩留まりがよく且つ高品質のもやしを得ることができる。
また、上記栽培方法を実施する本発明のもやし栽培装置は、もやし栽培用の種子から生育する根を通すことが可能な孔又はメッシュを全面に施した板状床体と、外光の遮蔽、保温及び保湿を可能とする栽培室を形成し、該栽培室に積み重ねた複数の前記板状床体それぞれを互いに垂直に移動自在に収納可能とする栽培ボックスとを備えたことを特徴とするものである。また、請求項5記載の発明は、請求項4に記載されたもやし栽培装置において、栽培ボックスに栽培室への給水口と、栓で開閉自在とした栽培室からの排水口を備えたことにより、各段への給水を適正に行うことを可能にしたものである。さらに、請求項6記載の発明は、請求項3又は4に記載されたもやし栽培装置において、前記板状床体の端部を側壁とすることによりかご状とするとともに、該側壁に壁の内外に水を通す流通口を備えたことを特徴とするものである。請求項7記載の発明は、請求項6に記載されたもやし栽培装置において、前記側壁の一部を切り欠いて形成した根切り用の開口を備え、簡単に一括して値切りができるようにしたものである。また、請求項8の発明は、前記板状床体の端部に設けられた側壁に段差部を形成して側壁を下段部、段差部、前記下段部よりも外側に位置する上段部より構成し、前記段差部に上段の栽培床体の底面を受けるようにして複数段積み重ね可能にすることによって、初期段階は圧をかけずに成長させ、一定の長さに成長した後は上段の栽培床体により圧力を付与しながら成長させる管理が人手によらず自動的に制御可能としたものである。
本発明のもやし栽培方法及びその装置によると、もやしの姿を損なわずに簡単に一定の長さに切り揃えて収穫することを可能にし、その装置は板状床体と栽培ボックスという二つの簡単な構成からなり、且つもやし自身の成長により生じる力で上段にある板状床体を押し上げ、垂直に移動させるような動作原理が働くようにしたので、使用時に必要になる装置の組み立て作業等にかかる手間が少なく、栽培管理も容易であり、効率良く且つ高品質のもやしを栽培できる。しかも耐久性に優れた安価な装置を提供できる。特に、もやしの根の部分のカットが容易であり、しかも均一に除去され、歩留まりが良く、且つもやしの姿勢が損なわれないので見た目もきれいで商品価値を高めることができる。また、豆殻の部分が完全に分離するので、除去が簡単である。
加えて、もやし自身の成長に任せるという方法による上記動作原理は、もやしの特性への適応性を意味するので、種子の種類或いは生育条件等の違いにも柔軟に対応し得る装置を実現することが可能になる。また、浸水法による豆(もやし)への給水により、積み重ねた栽培床体の床体上面に播かれた各々の豆(もやし)を均等な給水条件に保つことが可能になる(請求項5)。さらに、栽培床体の側壁に水を通す流通口を備えたので、床体上面に播かれた各々の豆(もやし)を均等な給水条件に保つことが可能になる(請求項6)。そして、請求項4及び請求項5の発明により、もやしへの適正な給水管理ができ、請求項1及び請求項4の構成と相俟って、一様に太く育った良質なもやしが得られる。また、側壁に根切り用の開口を備えたことにより、開口から刃を挿入することにより、もやしの姿を損なわずに根切り作業を容易に行うことができ、収穫作業の短縮化及び歩留まりを高めることができる(請求項7)。また、前記栽培床体に播かれた豆の上に薄板状の仕切板を落とし蓋状に重ね、もやし自身の成長により該仕切板を押上げると共に該仕切板が上段にある栽培床体に生育するもやしの根を受けることによって、上段の栽培床体のもやしの根がその下段のもやしの葉に絡まることを完全に防止することができ、収穫作業をより歩留まりよく効果的に行うことができる(請求項2)。また、側壁の途中に段差を設けて上段の栽培床体を該段差部指示することにより、所定長さに成長するまでは圧をかけずに成長させることができ、成長力が弱い初期段階での傷みを防止し、より歩留まりがよく且つ高品質のもやしを得ることができる(請求項3、7)。
本発明は、もやしの種子(豆)が播かれる栽培の床(培地)体を多段に積み重ね
る方式を採用するもやし栽培装置において、栽培床体と、多段に積み重ねた栽培床体を収納する栽培ボックスという二つの要素により栽培装置を構成するとともに、栽培ボックスの栽培室内に収納された栽培床体それぞれがもやしの成長という変化の過程で自立して動作するという条件を満たすように構成することにより、上記課題の解決を図っている。
つまり、栽培の初期段階で豆を載せた栽培床体を積み重ねて栽培ボックスに収納
してから収穫までの間には、温度や湿度を生育条件に保つ以外には外部からの操作
は何もすることなく、もやし自身の成長により生じる力で上段にある栽培床体を押
し上げ、垂直に移動させるようにして、床体面からの長さを均等に保ちながら生育
させるようにすることにより、もやし栽培装置における構成要素をより簡単にして、
栽培時の作業にかかる手間を少なくし、豆の種類或いは生育条件等の違いにも柔軟
に対応し得るようにすると共に、もやし自体の成長に応じて上段の栽培床体を持ち上げるという自生圧が作用することによって、もやしを太くて一様な高さに成長させることができ、上記目的を達成したものである。
以下、本発明のもやし栽培装置の実施形態を図面に基き、詳細に説明する。図1は、本発明に係るもやし栽培装置の実施形態を示すもので、図中の(A)は栽培床体10、(B)は栽培ボックス20を示し、(C)は複数の栽培床体10を積み重ねて栽培ボックス20に収納した状態の栽培装置の全体図を示す。
栽培床体10は、床体を孔又はメッシュを全面に施した板状体(この例では、四角形)とし、この板状床体12の上面に豆1が重ならないように均一に播かれる。なお、同図では、豆がすでに播かれた状態を表しているので、床体の孔又はメッシュが省略されているが、豆1から普通に生育する根を通すことを可能にする程度の大きさの孔(例えば、3mm位)として形成される。また、この例では、板状床体12の縁(端部)を側壁15とすることにより、栽培床体10を全体としてかご状の構造となるようにし、載せられた豆1の安定を保ちながら栽培床体10の持ち運び、積み重ね等の作業を容易にする。また、この場合に側壁15の上端をフランジ部15fとして、この部分を手で掴むようにすれば、栽培床体10の扱いがさらに便利になる。
ところで、栽培床体10は、かご状の構造とした各床体を積み重ねて栽培ボックス20に収納し、収納したままで、外からの操作を加えることなく床体それぞれがもやし自身の成長によって成長方向(板状床体12の板面の垂直方向に)に移動するメカニズムを作用するから、豆を播いた成長の初期に積み重ねた栽培床体10の板状床体12は、図1の(C)に示すように平行を保ち、安定して垂直移動できるような構成にすることが当然必要になる。また、この例では、栽培床体10の側壁15の一部を切り欠いている。即ち、図1(A)に示すように側壁15を板状床体12の一縁には設けないようにするか、或いは低い高さの壁にすることにより、ここを根切り用の開口として、収穫時に根切りを行う(板状床体12の上面に沿ってもやしの根を切り取る工程)際に用いる根切り刃を挿入するために用いるようにし、根切り作業を容易にする。さらに、栽培床体10の側壁15には、水の流通口16を一定の間隔をおいて壁を貫通させて設ける。この流通口16は、板状床体12の上面から適当な高さに開け、ここを流通する水流により、豆(もやし)1への給・排水を安定化させ(後述の浸水法に関する説明、参照)、積み重ねた栽培床体10の床体上面に播かれた各々の豆(もやし)1を均等な給水条件に保つことを可能にする。
上記のような構造を持つ栽培床体10は、木製、金属製、合成樹脂製とその材質は特に限定されないが、丈夫で耐久性のある例えば合成樹脂製の一体成型品とすることにより、安価に提供することが可能である。
栽培装置のもう一つの構成要素である栽培ボックス20は、外光の遮蔽、保温及
び保湿を可能とする栽培室22を構成し、この栽培室22に複数の栽培床体10を
積み重ねて収納し、収納してから収穫するまでの間には、温度や湿度を生育にとっ
て最適な条件に保つための給水・排水等の処理が栽培室内の豆(もやし)に施され
る。給水は、実験的に予め求められた最適な水温、タイミングに従って繰り返され
る。
ただし、栽培室内に収納される栽培床体10に対しては、給水のような温度や湿
度を生育条件に保つための処理以外には外からの操作(上記従来例(図7)では、
成長の過程で栽培箱内枠といった部品を新たに加えて装置を組み立て直すという操作を必要とする)を加えることなく、栽培室内で収納状態を保ちながら、栽培床体10それぞれがもやし自身の成長によって成長方向(板状床体12の板面の垂直方向に)に移動するメカニズムが働くので、こうしたメカニズムが働く条件に適した構造を備える。
ボックスの形状は、図1の例では(B),(C)に示すように、四角形の板状床体12を収納するので、収納スペース(即ち栽培室22)は板状床体12に合わせた四角い断面形状と収穫時まで成長したもやしをボックス内に保有できる高さを有する直方体状をなす(以下、このボックス形状を「箱型」という)。ただ、ボックス20の上部は開口として開放状態にし、空気を流通可能にしたり、給水をしたりすることに利用することができるようにしておくが、それ以外は密閉状態(後述するように、栽培室22に水を溜め、収納された栽培床体10ごと豆を水に浸すために必要な状態)とする。また、栽培室22は外光を遮断することが望ましく、その効果を高めるためにボックス20の内側面を黒くする等反射率を低くするようにするとよい。
また、積み重ねた栽培床体10の収納作業を容易にするために、ボックス20の一部を扉25として収納・取り出し時に複数の栽培床体10を積み重ねたまま一度に収納・取り出し作業ができるようにして、作業の効率化を図るようにする。
温度や湿度を生育条件に保つために行う給水・排水等の処理をここでは、豆(もやし)を水に浸す方法(以下「浸水法」という)、即ち、栽培ボックス20の密閉した栽培室22に収納された栽培床体10ごと豆(もやし)1が没するまで水を注いで、水に浸す方法により行う。浸水法による場合、注いだ水により栽培室22を満たし、積み重ねた栽培床体10の豆(もやし)1に給水する際に、栽培床体10の側壁15に一定の間隔をおいて設けた流通口16を通して水が流入(排水時には流出)するので、給・排水が具合よく行われ、安定した給水を行うことができる。
この浸水法は、全ての豆(もやし)に等しく給水を行うために有効な方法であり、
この方法により浸水した後、排水をする工程をもって一回の給水工程の処理とする。
排水は、栽培ボックス20の側面下部に栓で開閉自在とした排水口27を備えるこ
とにより、給水後に栓を解除して排水口27を開くことにより排水を行う。
次に、本発明に係わる栽培装置の他の実施形態を示す。
図1示す実施形態(参照)では、箱型の栽培ボックス20とし、ここに積み重ねて収納する栽培床体10のつくりをかご状(側壁1を有する)にし、側壁の一部に根切り用の開口(切り欠き)を備えるものとしたが、栽培床体のつくりについては、図2に示すような構造にしてもよい。図2の(A)に示す栽培床体10aは、側壁を有しない板状床体12aのみの単純な板状構造としたものである。この栽培床体10aは、かご状の構造のものに比べて、製造が簡単で、安価に提供できる。
また、図2の(B)に示す栽培床体10bは、側壁15bを四方に有するかご状の
構造、つまり上記実施形態(図1参照)における栽培床体10(図1(A))における根切り用の開口を持たないものである。この栽培床体10bは、上記栽培床体10(図1(A))に比べて根切り用の開口を設けない分だけ強度に優れ、損傷を受けにくい。図2に示した各栽培床体10a,10bは、上記実施形態におけると同様に箱型の栽培ボックス20(図1(B))に収納する形態で本発明の栽培装置を構成し得る。
ところで、図1の実施形態では、栽培ボックス20を扉付きのボックスとし、扉を通して栽培床体を収納する例を示したが、必ずしも扉を設ける必要はなく、図3に示すような扉なしの単なる箱型の栽培ボックス20'としてもよい。単なる箱型の栽培ボックス20'は、扉やそれに付随する要素(開閉具或いは栽培室を密閉状態に保つ扉のシール等の付加的な要素)を必要としないので、製造が簡単であり、安価に提供でき、耐久性に優れる利点がある。単なる箱型の栽培ボックス20を採用する場合に組み合わせて用いる栽培床体は、かご状(図1(A),図2(B))、平板状(図2(A))いずれであってもよい。なお、栽培ボックスの側面下部には、栓で開閉自在とした排水口27'を備え、浸水法による給水を行うために使用するようにした点は、上記実施形態で図1(B)を参照して説明したと同様である。
また、上記した扉なしの栽培ボックス20を用いた実施形態(図3参照)では、ボックスの形状は箱型であったが、図4に示すように円筒型にしてもよい。図4に示すような円筒型の栽培ボックス20"では、栽培床体として、図5に示すような円板状の床体を用い、それを箱型におけると同様に、積み重ね方式により栽培床体を収納する方法をとる。栽培ボックス20"内に形成される栽培室が円筒型であるだけで、栽培方法については基本的に箱型の扉なし栽培ボックスにおけると変わりがなく、栽培ボックスの側面下部には、箱型と同様に栓で開閉自在とした排水口27"を備える。
図5は、円筒型の栽培ボックス20"に適用する栽培床体の例を示す。この実施形態においても、箱型の栽培ボックス20"(図3参照)に適用するものとして例示した上記実施形態の構造と同様に、かご状或いは平板状の構造をなす栽培床体と組み合わせた形態で実施することができる。図5(A)の栽培床体10cは、円形の板状床体12cのみの単純な板状構造としたものであり、図5(B)の栽培床体10dは、側壁15dを有し全体がかご状の構造の床体とし、また側壁15dの一部を切り欠くか、或いは低い高さの壁にすることにより、ここを根切り用の開口として、収穫時に根切りを行う際に用いる根切り刃を挿入するために用いるようにする。なお、図5には示さないが、根切り用の開口を設けないかご状の構造としてもよい。
上記した円筒型の栽培ボックス20"(図4)と円形の板状床体を基本とする栽培床体(図5)を組み合わせて構成する栽培装置は、箱型に比べてさらに製造が容易であり、安価に提供でき、耐久性が高い。
次に、上記した各実施形態のもやし栽培装置を用いて行うもやしの生産(栽培)工程について説明する。
もやし栽培装置は、栽培ボックスとして箱型(扉付き、扉なしの2種)、円筒型の中からどれを用いるか、また栽培ボックスに組み合わせる栽培床体として平板型、かご型(根切り用開口の有る、無しの2種)の中からどれを用いるかによって、多種のバリエーションで実施し得るが、生産(栽培)工程そのものは下記に説明する工程を基本として、どのバリエーションにおいても同様の工程を適用することが可能である。
ここでは、図1の実施形態(即ち、扉付き箱型の栽培ボックスと根切り用開口を有するかご型の栽培床体を組み合わせた装置)を例に、栽培装置内で生育するもやしの様子を概略図として示す図6を参照して、その工程(図6に示す(A)→(B)→(C)
→(D)の順に行われる)を説明する。
「工程1(播種・発芽)」
この工程は、栽培床体10上に豆を播き、発芽させるための工程である。栽培床
体10上に豆を播く場合には、床体全面に施した孔又はメッシュに対応するような
形で豆が重ならないように板状床体12の上面に均一に播き、豆が播かれた栽培床
体10を図6(A)に示すように、例えば6段に積み重ねた状態として、栽培ボック
ス20の扉25を開けて栽培室22に収納し、扉25を閉めて栽培室22を密閉状態にして発芽をさせる。なお、栽培床体10上に播かれる豆は、発芽までに一般的に行
う、豆の殺菌やぬるま湯に浸けて発芽を促進する処理の各工程は済ませたものであ
る。
「工程2(育成)」
この工程は、図6(B)に示すように、扉25を閉めて栽培室22を密閉状態にし
たまま、栽培室内でもやしを育成する工程である。このもやしを育成させる過程で
は、外光の遮断、保温及び保湿を可能とする栽培室内に積み重ねられた複数の栽培
床体10上の豆(もやし)に対して、温度や湿度を生育にとって最適な条件に保つ
ための給水が、収穫するまでの間、実験で確認された最適な水温、タイミングで繰
り返される。この給水処理は、図6(B)に示すように、扉25を閉めたまま、栽培
ボックス20の上部開口から密閉状態の栽培室内の栽培床体10ごと豆(もやし)
が没するまで注水し、その後、栽培ボックス20の側面下部の排水口27より排水
するという方法による。
この工程において、この給水処理以外には外からの操作を加えることはない。栽培室内で収納状態を保ちながら、栽培床体10それぞれがもやし自身の成長によって上段の栽培床体を押し上げ、成長方向に平行移動するメカニズムの働きで、床体面からの長さを均等に保ちながら生育が進行する。
なお、上記育成工程で、播種初日は、発芽を容易にするため、栽培ボックスに注入した水は7〜8時間後に排水することが望ましい。また、栽培ボックスの最上段の栽培床体の上に播種してない空の栽培床体を載せ、その中にタオル地布等の保水性の良い布を敷設しておくと、給水がし易く且つ湿度が保たれ、しかも空の栽培床体が後述する重しの役目も果たし、良好な栽培条件をもたらす。播種後4日目頃からは、給水後15〜20分程度もやしを浸し、その後排水すると太ったもやしが収穫できた。また他の方法として、栽培ボックスの上部をバスタオルのような厚手の布で覆い、排水後栓をすると、前記のように15〜20分程度水に浸さなくても、太ったもやしが収穫でき、単収も向上した。さらに、播種後3日目頃から根が伸びてくると、積重ねた栽培床体が一体となり、給水すると全体が一つの塊となって浮き上がる傾向にあるので、それを防ぐために、最上段の栽培床体に適度の重さ(例えば400〜500グラム)の錘をおいておくと効果的である。
「工程3(収穫)」
この工程は、もやしの成長の最終段階でもやしを収穫する工程である。このときの工程は、上記した育成過程で床体面からの長さを均等に保つように生育したもやしが成長の最終段階にあることを確認して、図6(C)に示すように、栽培ボックス20の扉25を開け、栽培室22から成長したもやしを栽培床体10ごと取り出す。この後、取り出した栽培床体10上で成長したもやしの根切り、即ち床体面に沿って根の部分を切り離すことにより、収穫を行う。根切り作業は、図6(D)に示すように、栽培床体10の側壁15の一部を切り欠いて設けた根切り用の開口から根切り刃を挿入して、板状床体12の上面に沿って(図中の矢示、参照)根切りを行う。こうした工程により、もやしの姿を損なわずに一定の長さに切り揃えた形でもやしを収穫することが可能になる。
以上のように本発明の栽培方法で栽培したもやしは、栽培ボックスから個々の栽培床体10を取出し、前記方法で根切りすることにより、容易且つ効果的にしかも体裁良く収穫できる。しかしながら、図7(a)に示すように、まれに上段の栽培床体10−1のもやし35の根36が下段の栽培床体10−2のもやしの葉37に絡まり、同図(b)に示すように上段の栽培床体10−1を持ち上げるとき、下段の栽培床体10−2の一部のもやしが持ち上げられることがある。根に絡んで持ち上げられるもやしは、ごく少量であるが、値切りされた根と一緒に廃棄されるのでより歩留まりを高めるためには、根の絡みを確実に防止する必要がある。
それを防止するために、本実施形態では、図8(a)に示すように、最上段の栽培床体を除き、各段の栽培床体10に播かれた豆の上に薄板状の仕切板30を落とし蓋状に重ね、その状態で栽培するようにした。このように、仕切板30を各栽培床体に播種した豆の上に落し蓋状に重ねることによって、もやしが発芽して成長するに応じてもやし自身の成長力により仕切板30を押上げると共に、仕切板30がその上段にある栽培床体10−1に生育するもやしの根を受け、上段の栽培床体10−1のもやしの根がその下段の栽培床体10−2のもやしの葉37に絡まることを防止する。その結果、収穫時には上段の栽培床体10−1を持ち上げると図8(b)に示すように、上段のもやしの根が下段のもやしの葉に絡まることを確実に防止でき、収穫作業をより歩留まりよく効果的に行うことができる。なお、仕切板30の材質は特に限定されるものでなく、また、剛性、可撓性何れでもよく、例えば合成樹脂シートやフィルム、金属薄板、木製薄板等任意の材質のものが採用できる。
上記実施形態の栽培装置は、発芽の段階から上段にある板状床体により負荷を与え、もやし自身の成長により生じる力で上段にある板状床体を押し上げ垂直移動させることにより、一様の太さ及び長さのもやしを得ることができたものである。しかしながら、栽培床体を多段に積み重ねた場合、特に下段の栽培床体では発芽の段階での成長にムラや根腐れが生じ、一様な太さ長さのもやしが得られない場合が生じた。本発明はその問題を解決するために種々研究した結果、発芽から約2〜3cmに成長するまでは、負荷をかけずに自由状態で成長させ、その後一定の負荷を与え、自生圧で負荷を押し上げるようにすることによって、太い一様な長さのもやしを得ることができることを知得した。また、もやしの根切りを床面ぎりぎりでなく床面から5〜6mm上から切断することによって、より美麗に根切りをすることができ商品価値を高めることが知得された。
図9に示す実施形態の栽培装置は、上記知見に基づくもので、簡単な構成で成長段階に応じて無負荷状態と負荷状態に切り替えて栽培管理を全く人手に寄らないで、自動的に行なって上記問題点を解決したものであると共に、根切りをその位置で床面に沿って切断する場合と同様にして切断できるように工夫した。
本実施形態の栽培装置50は、図1に示すものと同様に栽培ボックス51と複数の栽培床体60との組み合わせからなり、栽培ボックス51は、図1に示す栽培ボックス20と同様な構成であるので、同様な符号を付し詳細な説明は省略する。なお、図9(A)において栽培ボックス51の扉は、図示を省略してある。
栽培床体60は、上記問題点を解決するために工夫された次のような構成を有する。
栽培床体60は、栽培ボックス50の形状に合わせて本実施形態では全体として四角箱状に形成され、板状床体64、両側壁61a、61c、背壁61bとからなる。 床体64は、孔又はメッシュを全面に施した板状体で形成されている。両側壁61a、61c及び背壁61bは、中間に段差部62を有して、それぞれ下段部と上段部の2段となっており、下段部が上段部よりも内側に位置しており、栽培床体を積重ねた場合、板状床体の周縁部が段差部62面に載るように構成されている。しかしながら、段差は両側側壁のみに設け、後壁はテーパー状に傾斜させるかまたは直壁状態に形成することも可能である。但し後壁を直壁状態にすると、栽培床体を積み重ねた場合、後壁の板厚分だけ次第に前にずれた状態で重ねなければならない。
段差部を設ける目的は、上記のように栽培床体を積重ねた場合、下段の栽培床体の床面とその上段の栽培床体の裏面との間に一定高さの空間を確保するためのものであり、それにより発芽したもやしは、その空間高さに達するまではその上段の栽培床体の加圧を受けず成長し、その後は成長に応じて栽培床体を自生圧により押上げて成長する。本発明者の実験によれば、発芽から約20〜40mm、好ましくは20〜30mmに達するまでは負荷をかけずに成長させ、その後は負荷をかけても成長が阻害されることがなく、上部から負荷をかけることによって太さが太くなり、一様高さに成長することが判明した。したがって、本実施形態の栽培床体60において段差部62までの下段部の高さaは、板状床体に播種した豆が発芽して略2〜3cm程度まで成長するまでは、その上段に重ねた栽培床体によって負荷されずに自由に成長できる空間を確保するために、20〜40mm好ましくは20〜30mmの高さとするのが望ましい。
一方、段差部62から上の上段部の高さbは、特に限定されるものではないが、
図9に示すように栽培ボックス51に同軸的に積重ねるには、下段部高さaと段差部62の板厚の和よりも低いほうが望ましく、且つ収穫するもやしの最適長さより高い方が望ましい。また、本実施形態の栽培床体60は、収穫時にもやしを板状床体の上面から根切りするために開口している開口壁面63の下端部には、板状床面から高さ4〜6mm程度の低壁65を形成してある。それと共に、図10に示すように床面にカッターガイドとして低壁65と同じ高さの桟70を所定間隔(例えば5cm間隔)ごとに設けてある(なお、図9には、図面が煩雑になるため、後述する押え桟と共に図示を省略してある)。このように、低壁65及び桟70を設けることによって、播種した豆が栽培床面からこぼれ落ちること、あるいは給水のときに豆が一方に片寄ることを防止すると共に、該低壁がもやし収穫時にもやしを根切りする際のカッターガイドとなり、該ガイド面に沿ってもやしを一様高さに容易に切断することができる。それにより、もやしを床面から4〜6mmの高さで切断することができ、根や豆が混じらないより純度の高い根切りができるという効果を奏する。
また、各栽培床体60の板状体64の裏面には適宜間隔で高さ5mm程度の長尺状の支え桟71を複数個設けてある。それにより、もやしが成長して自生圧により上段の栽培床体を押上げるとき、下段のもやしの上に載っている仕切り板と板状床体裏面との間に、もやしの根がうまい具合に縦横に走り易くなり、且つ保水性にもよく、もやしの生育に良好な条件を作り出す。また、支え桟71を設けることによって、板状床体の穴に付着している根切りした根の除去が容易になるという効果もある。なお、側壁及び背壁の下段部には,図1に示す実施形態と同様に所定間隔ごとに水の流通口66が形成されている。
本実施形態のもやし栽培装置は、以上のように構成され、図1に示すもやし栽培装置と同様な栽培原理でもやしを栽培できるものであるが、本実施形態では、特に栽培床体の周壁に段差部を設けることによって、発芽から約3cmに成長するまでの間(通常3〜4日間)圧をかけないで成長させることができる。それにより、もやし発芽から初期段階に発生し易い傷みを完全に除去することができた。そして、3〜4cmに成長した段階以後は自動的に上段の栽培床体による負荷がかかるが、その段階ではそれを押上げて成長する成長力を有しているので、一定の負荷の基で成長を続けることにより、高さ方向への成長を抑制されて太さが太く、且つ均一長さのもやしが得られる。また、本実施形態では、板状の床体上面に低壁及び桟を設けたので、床面から4〜6mmの高さでもやしの根切りを容易に均一高さに切断することができる。また、支え71と桟70を設けたので、根が下段のもやしと絡まることを防止できると共に、適度の空間を形成することにより根の成長を促進し、根腐れ等の発生を防止する効果も高い。
本発明は、もやしの姿を損なわずに簡単に一定の長さに切り揃えて収穫することができ、且つ良質で歩留まり良く栽培でき、しかも安価な装置により手軽に簡単にもやしを栽培できるから、広く大量生産用のもやし栽培装置として、又家庭用等のもやし栽培装置として産業上の利用可能性が極めて高いもやし栽培方法および装置である。
本発明に係わるもやし栽培装置の一実施形態を示し、(A)は板状床体の斜視図、(B)は栽培ボックスの斜視図、(C)は全体斜視図である。 (A)(B)はもやし栽培装置の構成要素である栽培床体の実施形態(箱型栽培ボックスヘの適用例)を示す斜視図である。 もやし栽培装置の構成要素である栽培ボックスの他の実施形態(箱型)の概略斜視図である。 もやし栽培装置の構成要素である栽培ボックスのさらに他の実施形態(円筒型)の概略斜視図である。 もやし栽培装置の構成要素である栽培床体の実施形態(円筒型栽培ボックスヘの適用例)を示す。 本発明のもやし栽培装置を用いたもやしの生産(栽培)工程を説明するための図である。 (a)は本発明のもやし栽培装置において上段の栽培床体のもやしとその下段の栽培床体のもやしの関係を示す要部断面図であり、(b)は上段の栽培床体を持ち上げた際に下段のもやし絡んで持ち上げられる状態を示す要部断面図である。 (a)は本発明のもやし栽培装置において、落し蓋状に仕切り板を設けた場合の上段の栽培床体のもやしとその下段の栽培床体のもやしの関係を示す要部断面図であり、(b)は上段の栽培床体を持ち上げた際に下段の栽培床体との関係を示す要部断面図である。 本発明に係わるもやし栽培装置の他の実施形態を示し、(A)は栽培床体の斜視図、(B)は栽培床体を栽培ボックス内に収納した状態の扉を外した状態での斜視図である。 図9に示す栽培床体の詳細図で、(A)はその斜視図、(B)はそのA−A断面図である。 従来のもやし栽培装置の一例の要部を示す概念図である。
符号の説明
10(10a,10b,10c,10d)、10−1、10−2、60…栽培床体、
12(12a,12b)、64…板状床体、
15(15b,15d)…側壁、15f…フランジ部、
16(16b,16d)、66…流通口、
20(20',20")、51…栽培ボックス、
22…栽培室、25…扉、
27(27'、27")…排水口。
30 仕切板
61 側壁
62 段差部
65 低壁
70 桟
71 支え桟

Claims (8)

  1. もやし栽培用の豆から生育する根が通過可能な孔又はメッシュを全面に施した栽培床体の上面に豆を均一に播き、豆が播かれた栽培床体を栽培ボックスに互いに垂直に移動自在に積み重ね、収納してから収穫までの間は、温度や湿度を生育条件に保つように前記栽培ボックスに給水・排水を行うことにより、もやし自身の成長により生じる力で上段にある前記栽培床体を押し上げ、垂直に移動させるようにして、栽培床体面からの長さをほぼ均等に保ちながら生育させ、収穫時に前記栽培床面に沿ってもやしの根切りを行うことを特徴とするもやし栽培方法。
  2. 前記栽培床体に播かれた豆の上に薄板状の仕切板を落とし蓋状に重ね、もやし自身の成長により該仕切板を押上げると共に該仕切板が上段にある栽培床体で生育するもやしの根を受け、上段の栽培床体のもやしの根がその下段のもやしの葉に絡まることを防止するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のもやし栽培方法。
  3. もやしが発芽から所定長さに成長するまでは、上段にある前記栽培床体の圧力が作用せずに成長し、その後の成長段階では上段にある栽培床体を押上げながら成長するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のもやし栽培方法。
  4. もやし栽培用の種子から生育する根を通すことが可能な孔又はメッシュを全面に施した板状床体と、外光の遮蔽、保温及び保湿を可能とする栽培室を形成し、該栽培室に積み重ねた複数の前記板状床体それぞれを互いに垂直に移動自在に収納可能とする栽培ボックスとの組合せからなることを特徴とするもやし栽培装置。
  5. 栽培ボックスに栽培室への給水口と、栓で開閉自在とした栽培室からの排水口を備えたことを特徴とする請求項3に記載されたもやし栽培装置。
  6. 前記板状床体の端部を側壁とすることによりかご状とするとともに、該側壁に壁の内外に水を通す流通口を備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載されたもやし栽培装置。
  7. 前記側壁の一部を切り欠いて形成した根切り用の開口を備えたことを特徴とする請求項4〜6何れかに記載のもやし栽培装置。
  8. 前記板状床体の端部に設けられた側壁に段差部を形成して側壁を下段部、段差部、前記下段部よりも外側に位置する上段部より構成し、前記段差部に上段の栽培床体の底面を受けるようにして複数段積み重ね可能にしたことを特徴とする請求項6又は7に記載のもやし栽培装置。

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