JP2005139427A - インク及びインクジェット記録用インク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アゾ基に直結していない芳香族の共役π電子が合計で12個を超えるアゾ染料を少なくとも1種含むことを特徴とするインク。
【選択図】なし
Description
これらのカラー画像記録材料では、フルカラー画像を再現あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現出来る吸収特性を有し、且つさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な染料がないのが実状であり、改善が強く望まれている。
インクジェット記録方法には、連続的に液滴を飛翔させるコンティニュアス方式と画像情報信号に応じて液滴を飛翔させるオンデマンド方式とが有り、その吐出方式にはピエゾ素子により圧力を加えて液滴を吐出させる方式、熱によりインク中に気泡を発生させて液滴を吐出させる方式、超音波を用いた方式、あるいは静電力により液滴を吸引吐出させる方式がある。また、インクジェット記録用インクとしては、水性インク、油性インク、あるいは固体(溶融型)インクが用いられる。
従来、ブラック染料としてはジスアゾ染料、トリスアゾ染料が一般に使用されてきた。それらのジスアゾ染料、トリスアゾ染料の原料としてフェノール、ナフトール、ナフチルアミン、アニリン等の非複素環化合物が広く使用されている。これらの原料により得られるジスアゾ染料として、特許文献1や特許文献2等に開示された染料が知られているが、何れも光堅牢性が劣るという問題点を有し、またオゾンなどの酸化性ガスに対する堅牢性は極めて不十分である。
本発明者らは、オゾン等の酸化性ガスに対して堅牢な着色剤を開発すべく、従来のフェノール、ナフトール、ナフチルアミン、アニリン等の原料から脱却して、主に複素環化合物を原料として使用するという考えに至った。これまで、複素環が2個以上含まれるジスアゾ染料、トリスアゾ染料としては、特許文献3、特許文献4、特許文献5等に記載されているが、これらの染料はいずれも繊維を染色する為に開発された所謂染料であって、本発明で求められるような性能、すなわち色再現上好ましい吸収特性を持っているかどうかや、使用される環境条件下における堅牢性(例えば耐光性、耐熱性、耐湿性、特にインクジェット画像形成において問題となるオゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他亜硫酸ガスなどの耐薬品堅牢性)については一切開示されていないし、ましてやどのような構造が本発明の画像形成に最適であるのかについては全く不明である。また複素環が2個以上含まれる水溶性ジスアゾ染料が記載されている特許文献5の水溶性染料は、水溶性基の数が多くても2個しかないために、水への溶解性が低く、インクジェット用途には適さなかった。
即ち、本発明によれば下記構成のインクが提供されて、本発明の上記目的が達成される。
1.アゾ基に直結していない芳香族の共役π電子が合計で12個を超えるアゾ染料を少なくとも1種含むことを特徴とするインク。
2.下記安定性試験方法で染料の残存率が60%以下のアゾ染料に、アゾ基に直結していない芳香環を共役π電子6個以上に相当する量増やすことによって、染料の残存率が向上したアゾ染料を少なくとも1種含むことを特徴とするインク。
安定性試験方法:染料0.1mmolを水10mlに溶かし、NaHCO384mgを加えて、1時間加熱還流し、冷却後、分光光度計で染料の残存率を測定する。
3.アゾ染料が、水溶性ジスアゾまたはポリアゾ染料であることを特徴とする上記1または2に記載のインク。
4.アゾ染料が、下記物性1を有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のインク。
物性1:DMF溶媒で測定した吸収スペクトルの最大吸収波長をλmax(DMF)としたとき、680≧λmax(DMF)≧570nmである。
5.アゾ染料が下記物性2を有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のインク。
物性2:酸化電位が1.0V(vs SCE)より貴である。
6.アゾ染料が下記物性3を有することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のインク。
物性3:水溶媒で測定した吸収スペクトルの最大吸収波長をλmax(水)としたときに、|λmax(DMF)−λmax(水)|≧30nmである。
7.アゾ染料が下記物性4を有することを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のインク。
物性4:DMF溶媒でのモル吸光係数をε(DMF)、水溶媒でのモル吸光係数をε(水)としたときに、ε(水)/ε(DMF)≦0.9である。
8.アゾ染料が下記物性5を有することを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載のインク。
物性5:λmax(水)を会合体の吸収極大波長、λmax(DMF)をモノマーの吸収極大波長と定義するときに、水溶媒での吸収スペクトルにおいて会合体の吸収極大波長の吸光度をAbs(会合)、モノマーの吸収極大波長での吸光度をAbs(モノマー)としたときに、Abs(モノマー)/Abs(会合体)≦0.75である。
9.アゾ染料が、含窒素6員環を含むことを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のインク。
10.アゾ染料が、5員複素環を含むことを特徴とする上記1〜9のいずれかにインク。
11.請求項1〜10のいずれかに記載のインクを用いたことを特徴とするインクジェット記録用インク。
アゾ基に直結している芳香環について説明する。アゾ基に直結した芳香環とは、アゾ基に結合している芳香環全体のことを指す。例えばアゾ基にナフタレン環が直結していた場合、ナフタレン環の、アゾ基に結合しているベンゼン環1つのみを指すのではなく、ナフタレン環全体を指す。アゾ基にビフェニル基が結合している場合は、アゾ基に結合しているフェニル基は直結した芳香環であり、もう一方のフェニル基は直結していない芳香環とする。芳香環とは、アリール基のみならず、複素芳香環も包含する。
本発明で用いるアゾ染料は、アゾ基に直結していない芳香族の共役π電子が12個を超える。共役π電子の算出は、例えば、アゾ基に直結していない芳香族環として、ベンゼン環1個、ナフタレン環1個を有するアゾ染料では、6個+10個=16個と計算される。また、芳香族の共役π電子とは、芳香族環(複素環を含み、6員環に限らない)に含まれる共役のπ電子である。
下記染料(f)はアゾ基に直結していない芳香族環の共役π電子は12個であり、また、本発明で定義する安定性試験により水溶液安定性を測定すると40%以下である。
λmaxがこのように長波長になるためにはLUMO(最低空軌道)がHOMO(最高被占軌道)に近くなければならない。また酸化電位がこのように高くなるためにはHOMOが低くなければならない。したがって、これらの波長と電位の2つの条件を満たすためにはLUMOが低くなければならない。しかし、LUMOが低いと求核攻撃を受けやすくなり、溶液安定性が低下するのである。つまり、堅牢性が良好の染料の開発するために、酸化電位を上げるという方針で長波長の染料を分子設計すれば、溶液安定性が低下するのである。
しかし、この染料のチオフェン環の4位にフェニル基を導入した染料a−2(後述)は、溶液安定性が80%を超える。またナフチル基を導入した結果、染料a−3は溶液安定性が90%を超える。また4−メチルフェニル基を導入した結果、染料a−1は溶液安定性が90%を超える。これらデータから明らかにフェニル基、ナフチル基、4−メチルフェニル基の導入によって溶液安定性が向上している。
この原因については、アゾ基に直結していない芳香環の共役π電子が6個以上分増やしたことによる、会合効果、疎水性効果、立体的効果、フェニル基の4位にメチル基を導入したことによる会合効果、疎水性効果等により、溶液安定性が高くなると推定される。
上記安定性試験方法は、下記の方法による。
〔安定性試験方法〕
染料0.1mmolを水10mlに溶かし、NaHCO384mgを加えて、1時間加熱還流し、冷却後、分光光度計で染料の残存率を測定する。
本発明では、溶液安定性を向上させた染料の溶液安定性が80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
本発明は、溶液安定性の高い、堅牢性の良好な長波長の染料を提供できるという意味で、産業上非常に有益である。
物性3:|λmax(DMF)−λmax(水)|
物性4:ε(水)/ε(DMF)
物性5:Abs(モノマー)/Abs(会合)
について説明する。
発明者等が堅牢性の良好な染料について研究したところ、堅牢性の良好な染料は、
物性3:|λmax(DMF)−λmax(水)|≧30nm
物性4:ε(水)/ε(DMF)≦0.9
物性5:Abs(モノマー)/Abs(会合)≦0.75
の3物性のうち、少なくとも一つの物性を満たすことを見出した。この物性を満たす染料は、水溶媒中では、会合状態をとっていると推定している。
一般に溶媒によって染料のλmaxが異なる場合、その原因として2つの可能性が考えられる。1つが溶媒によって染料の会合状態が異なる場合であり、もう1つがソルバトクロミズムによる場合である。本発明においては、前者の場合であると推定している。
また染料が会合する場合は、εが低下する場合がある。ε(水)/ε(DMF)は会合状態を取りやすい水溶媒でのεを、会合状態をとり難いDMF溶媒でのεで割った値である。この値を会合の目安にすることができる。
また吸収スペクトルからも染料の会合について情報を得ることができる。水溶媒での吸収スペクトルからも染料の会合について情報を得ることができる。λmax(水)を会合体の吸収極大波長、λmax(DMF)をモノマーの吸収極大波長と定義するときに、水溶媒での吸収スペクトルにおいて会合体の吸収極大波長の吸光度をAbs(会合)、モノマーの吸収極大波長での吸光度をAbs(モノマー)としたときに(いずれも2×10-5mol/Lで測定)、Abs(モノマー)/Abs(会合)は、みかけ上の非会合分子の割合になる。すなわち、この値が小さいほど、会合状態の分子が多くなっているといえる。酸化電位の高い染料がここで述べた会合状態を取っていれば、更に堅牢な染料になる。
一般式(A):A−N=N−B−N=N−C
含窒素6員環とは、例えばピリジン環のように環の構成原子に窒素原子を含む環のことをさし、一般式(1)で表される環が好ましく、一般式(A)のCの部分がこの環であることが更に好ましい。
G、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキル及びアリールチオ基、複素環チオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、またはスルホ基を表し、各基は更に置換されていても良い。
R3、R4は、各々独立に、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、スルファモイル基を表し、各基は更に置換基を有していても良い。但し、R3、R4が同時に水素原子であることはない。
また、R1とR5、あるいはR3とR4が結合して5乃至6員環を形成しても良い。
5員複素環とはヘテロ原子を含む5員環を指し、芳香族環であることが好ましい。好ましいヘテロ原子は、硫黄、窒素、酸素であり、5員複素環としてはチオフェン環、チアゾール環、イミダゾール環などを挙げることができる。また、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環などのように更に縮環していてもよい。各複素環基は更に置換基を有していても良い。中でも下記一般式(2)〜一般式(6)で表されるチオフェン環、チアゾール環、イミダゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環が好ましい。チオフェン環、チアゾール環がさらに好ましく、一般式(A)においてBの部分がこの環であることが更に好ましい。
本発明において、特に好ましいアゾ染料の構造は、下記一般式(7)、(8)で表されるものである。
好ましい具体的な置換基について説明すると、ハメット置換基定数σp値が0.60以上の電子吸引性基としては、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、アリールスルホニル基(例えばベンゼンスルホニル基)を例として挙げることができる。
ハメットσp値が0.45以上の電子吸引性基としては、上記に加えアシル基(例えばアセチル基)、アルコキシカルボニル基(例えばドデシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、m−クロロフェノキシカルボニル)、アルキルスルフィニル基(例えば、n−プロピルスルフィニル)、アリールスルフィニル基(例えばフェニルスルフィニル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ハロゲン化アルキル基(例えば、トリフロロメチル)を挙げることができる。
ハメット置換基定数σp値が0.30以上の電子吸引性基としては、上記に加え、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、ハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフロロメチルオキシ)、ハロゲン化アリールオキシ基(例えば、ペンタフロロフェニルオキシ)、スルホニルオキシ基(例えばメチルスルホニルオキシ基)、ハロゲン化アルキルチオ基(例えば、ジフロロメチルチオ)、2つ以上のσp値が0.15以上の電子吸引性基で置換されたアリール基(例えば、2,4−ジニトロフェニル、ペンタクロロフェニル)、およびヘテロ環(例えば、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル)を挙げることができる。
σp値が0.20以上の電子吸引性基の具体例としては、上記に加え、ハロゲン原子などが挙げられる。その中でも、炭素数2〜20のアシル基、炭素数2〜20のアルキルオキシカルボニル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基及び炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基が好ましい。特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜20のアルキルスルホニル基、炭素数6〜20のアリールスルホニル基であり、最も好ましいものはシアノ基である。
R16は、アルキル基、芳香族基、複素環基、を表し、中でも芳香族基が特に好ましい。
またカルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれ、リチウム塩、アンモニウム塩が好ましく、リチウム塩が更に好ましい。
また、本発明の「アゾ基に直結していない芳香族の共役π電子」は、一般式(A)のBまたはCに含まれることが好ましい。
なお、酸化電位の値は、試料から電極への電子の移りやすさを表わし、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極へ電子が移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表わす。化合物の構造との関連では、電子求引性基を導入することにより酸化電位はより貴となり、電子供与性基を導入することにより酸化電位はより卑となる。
また、用いる支持電解質や溶媒は、被験試料の酸化電位や溶解性により適当なものを選ぶことができる。用いることができる支持電解質や溶媒については例えばP. Delahay著"New Instrumental Methods in Electrochemistry(1954年 Interscience Publishers)
やA. J. Bard他著"Electrochemical Methods"(1980年 John Wiley & Sons)、藤嶋昭他著 電気化学測定法 (1984年 技報堂出版社刊)101〜118ページに記載がある。
本発明の染料は、ジアゾ成分とカプラーとのカップリング反応によって合成することができる。下記に合成例を示す。
(ジアゾ成分B−2の合成)
7−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸(以下C酸)ジナトリウム22.7g(65.4mmol)を水190mlに添加し、濃塩酸25mlを添加し、0℃まで冷却した。そして、亜硝酸ナトリム4.74g(68.7mmol)を水20mlに溶解させた液を0〜5℃で添加し、0〜5℃で1時間攪拌し、これをC酸のジアゾ液とした。これとは別に、2−アミノ−4−フェニル−チアゾール10.0g(59.5mmol)を水150mlに分散させた。この分散液に前記C酸のジアゾ液を室温で添加した。添加後、酢酸ナトリウムを添加し、pH=2にした。液体クロマトグラフィーでチオフェンの消失を確認し、酢酸ナトリウムを更に添加し、pH=7にする。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。取り出した湿ケーキを水400mlに溶解させ、塩化リチウム31gを添加し、塩析させた。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。
得られた湿ケーキを乾燥させ、ジアゾ成分B−2を26.3g(粗収率88%)得た。
(染料b−2の合成)
リン酸300mlと酢酸150mlに40%ニトロシル硫酸7.0gを添加し、−2℃まで冷却した。そして、ジアゾ成分B−2:10g(19.9mmol)を水30mlに溶解させた液を−2℃〜0℃で滴下し、−2℃〜0℃で1時間攪拌し、これをB−2のジアゾ液とした。これとは別に、カプラーP9.8g(19.9mmol)を水450mlに溶解させ、5℃まで冷却した。この液に上記B−2ジアゾ液を5〜10℃で滴下し、5〜10℃で1時間攪拌した。この反応液を40℃まで加熱し、塩化リチウム52gを添加し、塩析させた。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた湿ケーキを水300mlに溶解させ、濃塩酸100mlを添加した。これを40℃まで加熱し、塩化リチウム49gを添加し、塩析させた。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた湿ケーキを水30ml、メタノール60mlに溶解させ、水酸化リチウム水溶液でpH=7まで中和し、65℃まで加熱して、イソプロピルアルコール270mlを滴下して、晶析させた。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた湿ケーキのうち1/4量を水30mlに溶解させ、Amersham Biosciences社のセファデックスLH-20カラムで精製し、目的物(染料b−2)2.3g(
収率47%)を得た。(M/S:(M−H)-=961、(M−2H)2-=480、λmax(水)=588nm)
合成ルートを下記に示す。
(ジアゾ成分B−3の合成)
7−アミノナフタレン−1,5−ジスルホン酸(以下C酸)ジナトリウム16.9g(48.6mmol)を水140mlに添加し、濃塩酸19mlを添加し、0℃まで冷却した。そして、亜硝酸ナトリム3.35g(48.6mmol)を水12mlに溶解させた液を0〜5℃で添加し、0〜5℃で1時間攪拌し、これをC酸のジアゾ液とした。これとは別に、2−アミノ−4−ナフチル−チアゾール10.0g(44.2mmol)を水500mlに分散させた。この分散液に上記C酸のジアゾ液を室温で添加した。添加後、30分攪拌し、酢酸ナトリウムを添加し、pH=4にして、40℃まで加熱し2時間攪拌した。液体クロマトグラフィーでチアゾールの消失を確認し、酢酸ナトリウムを更に添加し、pH=7にした。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。取り出した湿ケーキを水400mlに溶解させ、塩化リチウム29gを添加し、塩析させた。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。
得られた湿ケーキを乾燥し、ジアゾ成分B−3を19.3g(粗収率79%)得た。
(染料b−3の合成)
リン酸300mlと酢酸150mlに40%ニトロシル硫酸6.3gを添加し、−2℃まで冷却した。そして、ジアゾ成分B−3:10g(18.1mmol)を水30mlに溶解させた液を−2℃〜0℃で滴下し、−2℃〜0℃で1時間攪拌し、これをB−3のジアゾ液とした。これとは別に、カプラーP9.0g(18.1mmol)を水450mlに溶解させ、5℃まで冷却した。この液に上記B−3ジアゾ液を5〜10℃で滴下し、5〜10℃で1時間攪拌した。この反応液を40℃まで加熱し、塩化リチウム38gを添加し、塩析させた。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた湿ケーキを水300mlに溶解させ、濃塩酸100mlを添加した。これを40℃まで加熱し、塩化リチウム43gを添加し、塩析させた。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた湿ケーキを水30ml、メタノール60mlに溶解させ、水酸化リチウム水溶液でpH=7まで中和し、65℃まで加熱して、イソプロピルアルコール270mlを滴下して、晶析させた。このスラリーをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。得られた湿ケーキのうち1/4量を水30mlに溶解させ、Amersham Biosciences社のセファデックスLH-20カラムで精製し、目的物(染料b−3)2.1g(
収率45%)を得た。(M/S:(M−H)-=1011、(M−2H)2-=505、λmax(水)=600nm)
合成ルートを下記に示す。
インクジェット記録用インクは、親油性媒体や水性媒体中に前記アゾ染料を溶解または分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有される。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
これらの各種添加剤は、水溶性インクの場合にはインク液に直接添加する。油溶性染料を分散物の形で用いる場合には、染料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相または水相に添加してもよい。
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
適用できるイエロー染料としては、任意のものを使用することができる。例えばカップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラゾロンやピリドン等のようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;例えばベンジリデン染料やモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料;例えばナフトキノン染料、アントラキノン染料等のようなキノン系染料などがあり、これ以外の染料種としてはキノフタロン染料、ニトロ・ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げることができる。
適用できるマゼンタ染料としては、任意のものを使用することができる。例えばカップリング成分(以降カプラー成分と呼ぶ)としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピラジンのようなヘテロ環類、開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料;例えばカプラー成分として開鎖型活性メチレン化合物類などを有するアゾメチン染料;アントラピリドン染料をあげることができる。
本発明のインクジェット記録方法は、前記インクジェット記録用インクにエネルギーを供与して、公知の受像材料、即ち普通紙、樹脂コート紙、例えば特開平8−169172号公報、同8−27693号公報、同2−276670号公報、同7−276789号公報、同9−323475号公報、特開昭62−238783号公報、特開平10−153989号公報、同10−217473号公報、同10−235995号公報、同10−337947号公報、同10−217597号公報、同10−337947号公報等に記載されているインクジェット専用紙、フィルム、電子写真共用紙、布帛、ガラス、金属、陶磁器等に画像を形成する。
記録紙及び記録フィルムにおける支持体は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等からなり、必要に応じて従来公知の顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、カチオン剤、紙力増強剤等の添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機等の各種装置で製造されたもの等が使用可能である。これらの支持体の他に合成紙、プラスチックフィルムシートのいずれであってもよく、支持体の厚みは10〜250μm、坪量は10〜250g/m2が望ましい。支持体には、そのままインク受容層及びバックコート層を設けてもよいし、デンプン、ポリビニルアルコール等でサイズプレスやアンカーコート層を設けた後、インク受容層及びバックコー卜層を設けてもよい。更に支持体には、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置により平坦化処理を行ってもよい。本発明では支持体としては、両面をポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテン及びそれらのコポリマー)でラミネートした紙及びプラスチックフィルムがより好ましく用いられる。ポリオレフィン中に、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛)又は色味付け染料(例えば、コバルトブルー、群青、酸化ネオジウム)を添加することが好ましい。
インク受容層は、顔料及び水性結着剤の他に媒染剤、耐水化剤、耐光性向上剤、界面活性剤、その他の添加剤を含有することができる。
ポリマー媒染剤については、特開昭48−28325号、同54−74430号、同54−124726号、同55−22766号、同55−142339号、同60−23850号、同60−23851号、同60−23852号、同60−23853号、同60−57836号、同60−60643号、同60−118834号、同60−122940号、同60−122941号、同60−122942号、同60−235134号、特開平1−161236号の各公報、米国特許2484430号、同2548564号、同3148061号、同3309690号、同4115124号、同4124386号、同4193800号、同4273853号、同4282305号、同4450224号の各明細書に記載がある。特開平1−161236号公報の212〜215頁に記載のポリマー媒染剤を含有する受像材料が特に好ましい。同公報記載のポリマー媒染剤を用いると、優れた画質の画像が得られ、かつ画像の耐光性が改善される。
[実施例1]
下記の成分に脱イオン水を加え1リッターとした後、30〜40℃で加熱しながら1時時間撹拌した。その後LiOH 10mol/LにてpH=9に調製し、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過し染料インク液Aを調製した。
本発明の染料(b−2) 25g
ジエチレングリコール 20g
グリセリン 120g
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 230g
2−ピロリドン 80g
トリエタノールアミン 17.9g
ベンゾトリアゾール 0.06g
サーフィノールTG 8.5g
PROXEL XL2 1.8g
以上の各インク液A〜E及び比較インク液1からなるインクジェット用インクについて、下記評価を行った。その結果を表2に示した。
なお、表2において、「紙依存性」、「耐水性」、「耐光性」、「暗熱保存性」及び「耐オゾンガス性」は、各インクジェット用インクを、インクジェットプリンター(EPSON(株)社製;PM−700C)でフォト光沢紙(EPSON社製PM写真紙<光沢>(KA420PSK、EPSON)に画像を記録した後、下記方法で評価したものである。
染料0.1mmolを水10mlに溶かし、NaHCO384mgを加えて、1時間加熱還流し、冷却後、吸光度で染料の残存率を測定し、残存率が80%以上の場合をA、60%以上80%未満の場合をB、60%未満の場合をCとした。
<紙依存性>
前記フォト光沢紙に形成した画像と、別途にPPC用普通紙に形成した画像との色調を比較し、両画像間の差が小さい場合をA(良好)、両画像間の差が大きい場合をB(不良)として、二段階で評価した。
前記画像を形成したフォト光沢紙を、1時間室温乾燥した後、10秒間脱イオン水に浸漬し、室温にて自然乾燥させ、滲みを観察した。滲みが無いものをA、滲みが僅かに生じたものをB、滲みが多いものをCとして、三段階で評価した。
前記画像を形成したフォト光沢紙に、ウェザーメーター(アトラスC.I65)を用いて、キセノン光(85000lx)を7日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、染料残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。
何れの濃度でも染料残存率が70%以上の場合をA、1又は2点が70%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
前記画像を形成したフォト光沢紙を、80℃−15%RHの条件下で7日間試料を保存し、保存前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、染料残存
率として評価した。染料残存率について反射濃度が1,1.5,2の3点にて評価し、いずれの濃度でも染料残存率が90%以上の場合をA、1又は2点が90%未満の場合をB、全ての濃度で90%未満の場合をCとした。
前記画像を形成したフォト光沢紙を、オゾンガス濃度が0.5±0.1ppm、室温、暗所に設定されたボックス内に7日間放置し、オゾンガス下放置前後の画像濃度を反射濃度計(X-Rite310TR)を用いて測定し、染料残存率として評価した。なお、前記反射濃度は、1、1.5及び2.0の3点で測定した。ボックス内のオゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。
何れの濃度でも染料残存率が70%以上の場合をA、1又は2点が70%未満をB、全ての濃度で70%未満の場合をCとして、三段階で評価した。
実施例1で作製した同じインクを用いて、実施例1の同機にて画像を富士写真フイルム製インクジェットペーパーフォト光沢紙EXにプリントし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。
実施例1で作製した同じインクを、インクジェットプリンターBJ−F850(CANON社製)のカートリッジに詰め、同機にて同社のフォト光沢紙GP−301に画像をプリントし、実施例1と同様な評価を行ったところ、実施例1と同様な結果が得られた。
Claims (11)
- アゾ基に直結していない芳香族の共役π電子が合計で12個を超えるアゾ染料を少なくとも1種含むことを特徴とするインク。
- 下記安定性試験方法で染料の残存率が60%以下のアゾ染料に、アゾ基に直結していない芳香環を共役π電子6個以上に相当する量増やすことによって、染料の残存率が向上したアゾ染料を少なくとも1種含むことを特徴とするインク。
安定性試験方法:染料0.1mmolを水10mlに溶かし、NaHCO384mgを加えて、1時間加熱還流し、冷却後、分光光度計で染料の残存率を測定する。 - アゾ染料が、水溶性ジスアゾまたはポリアゾ染料であることを特徴とする請求項1または2に記載のインク。
- アゾ染料が、下記物性1を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のインク。
物性1:DMF溶媒で測定した吸収スペクトルの最大吸収波長をλmax(DMF)としたとき、680≧λmax(DMF)≧570nmである。 - アゾ染料が、下記物性2を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のインク。
物性2:酸化電位が1.0V(vs SCE)より貴である。 - アゾ染料が、下記物性3を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のインク。
物性3:水溶媒で測定した吸収スペクトルの最大吸収波長をλmax(水)としたときに、|λmax(DMF)−λmax(水)|≧30nmである。 - アゾ染料が、下記物性4を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のインク。
物性4:DMF溶媒でのモル吸光係数をε(DMF)、水溶媒でのモル吸光係数をε(水)としたときにε(水)/ε(DMF)≦0.9である。 - アゾ染料が、下記物性5を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のインク。
物性5:λmax(水)を会合体の吸収極大波長、λmax(DMF)をモノマーの吸収極大波長と定義するときに、水溶媒での吸収スペクトルにおいて会合体の吸収極大波長での吸光度をAbs(会合)、モノマーの吸収極大波長での吸光度をAbs(モノマー)としたときに、Abs(モノマー)/Abs(会合体)≦0.75である。 - アゾ染料が、含窒素6員環を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のインク。
- アゾ染料が、5員複素環を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のインク。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のインクを用いたことを特徴とするインクジェット記録用インク。
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