JP2005119946A - エレクトロクロミズムを起こす酸化スズ - Google Patents

エレクトロクロミズムを起こす酸化スズ Download PDF

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Abstract

【課題】 エレクトロクロミズム有効量の金属、例えばアンチモンまたはニオブでドープされた酸化スズを開示する。
【解決手段】アンチモンやニオブは、ドープされた酸化スズが可動イオンの存在下に電気化学的電位に曝露されると色変化をもたらす。例えば白色またはパステルカラー顔料支持体上の被覆とされた、エレクトロクロミズムを起こす本発明のドープされた酸化スズの粒子は1.2より大きいコントラスト比を有し、その際コントラスト比とは物質のエレクトロクロミズム機能性の測定値、即ち物質の、該物質が酸化状態に有る時の反射率対還元状態に有る時の色の比であり、ここで色とは、酸化または還元された物質を照らす定光源から発せられ、かつ前記物質により反射された光のホトダイオード測定値のことである。ドープされた酸化スズを含有する上記のような粒子は表示装置において、エレクトロクロミック材料として有用である。
【選択図】なし

Description

ここに、高いコントラストを有する酸化スズ含有粒子を含む新規なエレクトロクロミック材料並びに該材料の製造方法、及び例えばエレクトロクロミック装置における該材料の使用方法を開示する。
金属酸化物中、ドープされた酸化スズは比較的透明であり、かつ導電性が高いことで知られている。このような特性を有するドープされた酸化スズは、例えば粒子または表面上に透明な導電被覆を設けるなどの様々な電気光学的用途に有利に用いられる。そのような用途の一つにエレクトロクロミック表示装置の透明電極の製造が有り、前記装置では典型的には電解質材料がエレクトロクロミック材料と、互いの界面と交叉する方向に電位が付与されるとエレクトロクロミズム効果が発生するように接触している。電極が、例えばサンドイッチ様構造で上記二つの材料の両側に設置される場合、表示積層体の少なくとも一方の側に配置される電極はエレクトロクロミズム効果の目視を可能にするべく比較的透明でなければならない。このような装置に用いられる典型的なエレクトロクロミック材料に、酸化タングステン、プルシアンブルー、ポリアニリン及びビオローゲンが含まれる。透明電極は、アンチモンでドープされた酸化スズ(ATO)の被覆をガラスまたはプラスチック支持体に蒸着することによって製造されている。ドープされた酸化スズはエレクトロクロミック装置において透明導体として用いられているが、ドープされた酸化スズが実用的なエレクトロクロミック材料として有用であり得る可能性は発見されていなかったと考えられる。例えば、Orel等はJournal of the Electrochemical Society 141,p.L127,1994に、ATOのフィルムは還元状態と酸化状態との間で5%未満の光反射率変化を示し、この変化は1.05未満のコントラスト比(後段に定義)に対応すると報告した。このような色変化は典型的なヒトの眼では容易に識別できないので、ドープされた酸化スズが有用なエレクトロクロミズム特性を有することは認識または発見されてこなかった。
様々なドーパントを用いて導電性の金属酸化物が製造され、それらのうちの幾つか、例えばフッ素でドープされた酸化スズは改質されるかどうかにかかわらず、何らかの有用なエレクトロクロミズム効果を示すとは認識されていない。同様に、フィルム状のATOも有用なエレクトロクロミズム効果は一切示さない。特定のドープされた酸化スズ、例えばATO及びニオブでドープされた酸化スズを粒子の形態でエレクトロクロミズム発生環境内に置くと驚くべきエレクトロクロミズム効果が実現する。即ち本発明は、或る種の導電性のドープされた酸化スズは有用な高コントラストエレクトロクロミック材料であり得るという驚くべき発見を提示し、そのようなドープされた酸化スズをエレクトロクロミック材料として用いるエレクトロクロミック装置を提供する。
(発明の概要)
本発明は、異なる酸化状態間で大きいコントラスト比を有するドープされた酸化スズを含む新規なエレクトロクロミック材料を提供する。本発明の高コントラストエレクトロクロミック酸化スズ材料はエレクトロクロミズム有効量の金属でドープされており、前記金属は電場内でイオン移動に曝露されると色変化をもたらす。好ましいドーパントはアンチモン及びニオブである。
本発明は、本発明のエレクトロクロミック酸化スズ材料を、該材料が例えばアンチモンでドープされた酸化スズ材料である場合は導電性酸化スズの製造に通常用いられるアンチモンより高レベルのアンチモンを用いることによって製造する方法も提供する。
本発明は、本発明のエレクトロクロミック酸化スズ材料を例えば表示装置において有利に用いる方法も提供する。本発明は特に、可動イオンと接触したドープされた酸化スズに電気化学的電位を付与することによってエレクトロクロミズム効果を発生させる方法も提供する。
本発明は、アンチモン−スズ酸化物化合物基材を酸化または還元して該基材の粉体抵抗率の少なくとも2倍の粉体抵抗率を実現することにより得られる粒状の、アンチモンでドープされた酸化スズも提供する。抵抗性であるこのドープされた酸化スズはまた、高い導電性及び透明性を有する類似の酸化スズに比べて独得な色を有する。
本発明は、本発明の高コントラストエレクトロクロミック酸化スズ材料を含むエレクトロクロミック装置も提供する。本発明の装置は典型的には、イオン供給電解質層と接触したエレクトロクロミック材料層を含む積層構造体である。
(好ましい具体例の詳細な説明)
本明細書中「%」によって示した比率は特に断わらないかぎりモル百分率であり、例えば重量百分率は「wt%」によって示してある。
本明細書中に用いた「粉体抵抗率」という語は、狭いが所定のスペース内で高圧で圧縮された粉体において、2個のプローブを具備した装置で測定された電気抵抗率を意味する。装置の2個のプローブは、プレート、例えば厚み9mm、直径5cmのディスクの中心から約15mm伸長する直径約6.5mmの金属製、例えばステンレス鋼製のロッドを含み、前記ディスクはオーム計と電気的に接続されている。伸長するロッドの長さの合計は、金属、例えばアルミニウムから成る囲繞スリーブによって補強された、ロッドの直径より僅かに広い中心孔を具えた非導電材料製、例えばアクリルポリマー製のシリンダーの孔の長さを僅かに上回る。粉体抵抗率の測定では、シリンダーを一方のディスク上に設置し、その際ロッドを孔に挿入する。開いている孔を粒状材料で部分的に満たし、第二のロッドを孔に押し込むことによって前記材料を圧縮する。粉体への圧力が845kg/cm(12,000psiに相当)になったところで抵抗をオーム計で測定する。前記圧力下に、2個のディスクの間隔をマイクロメーターにより単位cmで測定することによって孔内の圧縮粒子の高さ(H)を確認する。ロッドの横断面積(A)は0.3318cmである。測定した抵抗に横断面積(A)対孔内の圧縮粒子の高さ(H)の比を乗じることによって粉体抵抗率(ρ)を求める。
本明細書中に用いた「酸化」及び「還元」という語は、物質の原子価状態に関連する電子の数を化学的または電気化学的手段によって変更することを意味する。酸化された金属酸化物とは、自然状態に有る時より少ない電子を有する当該金属酸化物のことである。反対に、還元された金属酸化物とは自然状態に有る時より多い電子を有する当該金属酸化物のことである。一般的な化学的還元剤の一つにホウ水素化ナトリウムが有り、この還元剤はイオン、例えば陽子や、ナトリウム、リチウム等といった他のカチオンを伴った電子を酸化スズの格子内に配置し得る。還元状態において、例えば電子が飽和すると、ドープされた酸化スズはより暗色となり、その導電性は低下する。興味深いことに、ドープされた酸化スズの導電性は還元状態でも酸化状態でも、自然状態に有る時より著しく低下する。酸化状態のドープされた酸化スズの導電性は、電子伝達体の数が実質的に減少するために低下する。還元状態のドープされた酸化スズの導電性は、該物質において電子が飽和し、その結果電子移動度が低下することから低下する。エレクトロクロミズム効果の実現には、エレクトロクロミズムを発生させる酸化または還元をエレクトロクロミック材料の表面において、例えば典型的には約1.5V以下の電位を付与してカチオン及び電子のエレクトロクロミック材料中へかまたは前記材料外への移動を惹起することにより生起させなければならないと考えられる。
本明細書中に用いた「コントラスト比(CR)」という語は物質の、酸化状態に有る時と還元状態に有る時との色の差を意味する。コントラスト比とは特に物質の、電気化学的酸化状態に有る時の反射率対電気化学的還元状態に有る時の反射率の比であり、その際反射率とは、酸化または還元された物質を照らす定光源から発せられ、かつ前記物質により反射された光のホトダイオード測定値のことである。CR=1の物質はエレクトロクロミズム効果を有せず、即ち還元状態の該物質によって反射された光と酸化状態の該物質によって反射された光との間には測定可能な相違が存在しない。本発明のエレクトロクロミック装置に用いる本発明のエレクトロクロミック酸化スズ材料は、少なくとも1.2以上、例えば少なくとも1.4または1.6のCRを有する。好ましい本発明のエレクトロクロミック酸化スズ材料は少なくとも1.8以上、例えば少なくとも2または3のCRを有する。更に好ましい本発明のエレクトロクロミック酸化スズ材料は少なくとも4以上、例えば少なくとも4.5または5のCRを有する。
物質が還元状態の時より少数の電子しか有しない場合、この状態を酸化状態と呼称する。例えば酸化物中のアンチモンは、外殻に2個または0個の電子が存在する二つの安定な酸化状態を有する。これらの状態はSb(III)及びSb(V)と表記される。天然に生成した混合酸化物ATOでは、金属酸化物格子内のアンチモン原子はIIIとVとの中間の酸化状態に有り、アンチモンからの電子はスズの5s電子軌道に基づく伝導帯に有る。ATOが天然に有する青味掛かった灰色は電荷移動吸収帯がもたらすと考えられる。
本発明者は、エレクトロクロミック金属酸化物、例えばATOの場合、材料の酸化状態即ち電子数を変更することによって金属酸化物粉末の色及び導電性を、所与のドーパント対主金属比において様々に変化させ得ることを発見した。例えばATOの、アンチモンに関連する非局在化電子の数は化学的または電気化学的酸化もしくは還元によって変更可能である。
特に、酸化されたATOでは電子が材料から有効に除去されてアンチモンを、自由電子を有せず、実質的に無色であるアンチモンVにより近い種に変換し、その際電荷移動を起こす非局在化電子は残存しない。これに対して、還元されたATOでは非局在化電子が金属酸化物中に増加し、その結果電荷移動光吸収は増大し、従ってより濃い色が実現する。例えば酸化または還元を惹起する電位に曝露されない自然状態において、天然のATOは元来半透明の青味掛かった灰色を有し、その際色の彩度及び色相は混合金属酸化物中のアンチモンによって左右される。
ドーパントの説明では、酸化スズ材料の金属成分のモル比を用いることが有用である。特に断わらないかぎり、酸化スズ中のドーパントの量はモル比として表わす。例えば、6% ATOとはアンチモンでドープされた酸化スズであって、アンチモンのモル数がアンチモン及びスズの合計モルに基づくパーセンテージとして6%であるもののことである。
ドープされた酸化スズのコントラスト比に影響する要因にドーパントの量、及び場合によっては用いられる、ドープされた酸化スズの粒子と混合されるかまたはドープされた酸化スズから成る被覆のための支持体となる着色粒子などの助剤のカバリングパワー即ち吸光力が含まれる。
ドープされた酸化スズは典型的には、特にフィルムとして適用される場合透明または半透明であると看做されるが、特定のドープされた酸化スズは知覚可能な色を有し得、これはおそらく少なくとも部分的には光と粒子との相互作用に起因する。即ち、通常の実験の範囲内で色に影響を及ぼす要因に、粒径、ドーパントの量、クリスタリット寸法、及びドープされた酸化スズ材料の外形厚みが含まれる。例えば、10% ATOの粒子は暗い灰色に見える色を有する。暗い灰色のドープされた酸化スズをエレクトロクロミック装置に用いることは可能であるが、コントラストがしばしば最適でなく、なぜなら還元された酸化スズは通常更に暗色となり、表示画像における適当なコントラストのための色スペクトルに僅かな余裕しか残さないからである。しかし、ドープされた酸化スズを明色の顔料から成る支持体と組み合わせて用いると、より明るい顔料の色によって本来の色がより明るくなり、その結果ドープされた酸化スズが還元及び/または酸化された時のコントラストは著しく増大することが発見された。即ち、エレクトロクロミックディスプレイ用の材料を製造する際にはしばしばドープされた酸化スズに、通常透明であるかまたは少なくとも半透明であるドープされた酸化スズを通して目視可能な明るい背景色を提供する明色の助剤、例えば白色またはパステルカラー顔料を加えることが好ましい。ドープされた酸化スズ及び顔料は粒子混合物として提供し得る。ドープされた酸化スズを明色の助剤から成る支持体上に設けられた被覆として、または前記支持体との混合状態で提供する方が好ましい。助剤として有用な顔料には、二酸化チタン(TiO)、マイカ、ホウ酸アルミニウム、シリカ、硫酸バリウム及びアルミナが含まれる。ドープされた酸化スズを顔料粒子と混合して用いる場合、顔料はドープされた酸化スズほど水性電解質中で電気化学的に活性でないことが好ましい。ドープされた酸化スズを該酸化スズの支持体としての明色顔料助剤と共に用いる場合、被覆中のドープされた酸化スズの量は粒子が充分に導電性であるかぎりは重要でない。特に断わらないかぎり、ドープされた酸化スズ及び顔料の相対量は重量比で表わす。ドープされた酸化スズ対顔料支持体の重量比は、例えば1:4から約4:1とする。有用な顔料はマイクロメートル(ミクロン)級の粒径を有し、例えば約0.05〜20μm、より典型的には約0.2〜10μmで、好ましくは約1〜5μmの定格直径を有する。
助剤が粒状TiO(通常用いられる、格別高いカバリングパワーを具えた顔料)である場合、ATO/TiO重量比2:3でTiO上の被覆とされた6% ATOは1.2のCRを有することが判明した。ATO中のアンチモンを約11モル%に増加させると、CRは1.6となる。1〜約13%のアンチモンを含有する導電性金属酸化物粒子として市販されている幾つかのATO被覆TiO顔料が本発明のディスプレイに有用である。一例として、Mitsubishi Materials Company Ltd.からW−1導電粒子として入手可能な明るい灰色の粉末である、ATO/TiO重量比23:77で0.2μm TiO粒子上に配置された12.25% ATOを含む明るい灰色の導電性粉末を挙げることができる。E.I.Dupont de Nemours and Companyからは、ATO/TiO重量比33:77で1〜5μm TiO粒子上に配置された12.3% ATOを含む灰色の導電性粉末が商品名Zelec(登録商標)1410T及び3410Tの下に入手可能である。これらの市販材料は約1.6のCRを有する。アンチモンを22モル%に増加させると、驚くべきことにCRは2より大きい値にまで上昇する。即ち、本発明はその一構成において、1.6を上回り、例えば少なくとも約1.8であり、好ましくは2を上回るCRを有する新規なATO被覆TiO粒子を提供する。
本発明者は、TiOより低いカバリングパワーを具えた他の顔料、例えばホウ酸アルミニウム上に(重量比約0.5の)ATOを配置すれば、例えば約4〜5に達する格別高いCRを有するドープされた酸化スズ材料を製造できることを発見した。本発明者は特に、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、シリカ及びマイカなどの顔料上に配置されたATOを含む幾つかの市販導電性粉末が驚くべきエレクトロクロミズム効果を有することを発見した。特に、MitsuiからPasstran 5210 Type V導電粒子として入手可能である、54:46の重量比で4μmホウ酸アルミニウム粒子上に配置された11.5% ATOは、驚くほど高い、即ち4を上回るコントラスト比を有する灰色の導電性粉末である。
本発明のドープされた酸化スズ材料は市販ソースから取得するか、または良く知られた方法で製造することが可能であり、その際用いる物質に関して、例えばドーパントレベル並びに助剤顔料の量及び特性などを最適のエレクトロクロミズム効果が得られるように適宜調節する。本発明によるATO被覆TiOは、例えばTiO粒子の水性分散液に塩化アンチモン(例えば三塩化物または五塩化物)及び四塩化スズの塩酸酸性化水溶液を添加し、同時に水酸化ナトリウムも添加してpHを約2に維持することにより製造し得る。この方法によって非導電性の金属水酸化物で被覆されたTiO粒子が得られ、この粒子は、例えば300〜700℃で加熱して水を放出させれば、導電性のドープされた酸化スズで被覆された粒子に変換できる。酸化または還元状態に有る粒状のドープされた酸化スズも望ましいエレクトロクロミズム特性を示す。
エレクトロクロミズムを起こす本発明のドープされた酸化スズ材料をエレクトロクロミック表示装置に用いる場合、典型的には前記材料を、例えばイオン供給電解質層と接触したエレクトロクロミック材料層から成る積層構造で配置する。あるいは他の場合には、電解質マトリックス中のエレクトロクロミック粒子を含む層を形成することによってディスプレイを製造することも可能である。電位は通常電極によって、材料と交叉する方向に適用し、その結果電位はエレクトロクロミック材料と電解質との界面の位置に創出される。このような電位は陽子、リチウムイオンまたはナトリウムイオンといったイオンをエレクトロクロミック材料中へかまたは前記材料外へと移動させ、エレクトロクロミズム効果を発生させる還元または酸化を惹起する。エレクトロクロミズムを起こす本発明のドープされた酸化スズ材料を用い、本発明者が以前に取得した米国特許第5,413,739号に示したディスプレイ製造原理や当業者に明らかな他の原理に従うことによって、有用なエレクトロクロミックディスプレイを製造することができる。
本発明は、ディスプレイに有用なエレクトロクロミック装置も提供する。この装置は好ましくは、イオン供給電解質層と接触したエレクトロクロミック材料層を含む。好ましい一具体例においてエレクトロクロミック材料層は、本明細書に開示した、エレクトロクロミズムを起こす高コントラストのドープされた酸化スズを含有し、この酸化スズは透明または半透明のポリマーマトリックス中に、エレクトロクロミック材料が導電性となるような量で分散している。マトリックスを構成するポリマーは様々な通常のポリマーのうちのいずれか、例えば好ましくは本発明の分散粒子を含有させやすいニトリルゴム、ブチルゴムまたはブチルアクリレートといった強靱な弾性もしくはゴム状ポリマーなどの非脆性ポリマーを含み得る。ポリマーマトリックスは、例えばブチルゴムのようにイオン絶縁性であるか、または例えばスルホン化ポリスチレンやNafionイオノマーといったスルホン化ポリマーのようにイオン導電性であり得る。電解質層も望ましくは透明であるか、または少なくとも半透明である。イオンを供給する電解質は水性溶媒または有機溶媒含有ポリマーゲルに溶解した塩を含み得るが、好ましい電解質は保湿または吸湿性充填剤を含有し得るイオン導電性水性ポリマーゲルである。有用な吸湿性物質には、塩化リチウム、塩化カルシウム、グリセリン、リン酸二水素ナトリウムまたはトリフルオロメチルスルホン酸リチウムなどの潮解性物質が含まれる。好ましい水性ポリマーゲルに、POLYAMPSとして知られたポリアクリルアミドメチルプロパンスルホネートが有る。
上述のようなエレクトロクロミック装置において、エレクトロクロミズムを起こす金属酸化物材料は、イオン導電性電解質媒質の中または外へ電子を移動させるための電極として機能する。前記のような電子移動と同時にイオンが、エレクトロクロミック材料層とイオンを供給する上記電解質の層との界面と交叉する方向に移動する。本発明の好ましい具体例では、電極は上掲米国特許に開示された並行(side by side)電極であり得る。前記並行電極は装置のエレクトロクロミック層の背後に、例えば前記層で隠蔽して配置される。
上記電極を機能させるためには該電極を、銀インク、炭素インク、金属酸化物インクといった様々な導電材料のうちのいずれかを含み得る電流供給体、例えば導線によって、または先に述べた金属酸化物がATOなどの導電性金属酸化物である場合はデポジションによって電位と接続しなければならない。あるいはまた、電極をサンドイッチ状に配置することも可能であり、その場合少なくとも一方の電極は、エレクトロクロミズム効果の目視を可能にする透明または半透明材料から成るべきである。このような透明電極材料は、好ましくはATOなどの導電性金属酸化物である。電流供給体として用いる場合に最も好ましく高い導電性を有するATOは6〜10% ATOである。サンドイッチ型ディスプレイに透明金属酸化物電極を用いる場合、電流供給体は典型的には一体的な被膜である。膜状のATOは粒状である本発明のドープされた酸化スズ材料と比較して、エレクトロクロミズム特性を有しないと看做されるような低いコントラスト比しか有しないと考えられる。即ち、そのコントラスト比は1.2未満である。
以下の実施例に、エレクトロクロミズムを起こす本発明のドープされた酸化スズ及び本発明のエレクトロクロミックディスプレイの様々な具体例の製造及び使用を詳述するが、これらの様々な実施例からは、該実施例が本発明の範囲を限定するべく提示されたものではないことが明確に理解されるべきである。反対に、以下の実施例によって詳述する本発明の範囲は、エレクトロクロミズム利用分野の当業者には明らかであろう他の具体例にも該当するものとする。
この実施例では本発明によるエレクトロクロミック装置の、市販のATO被覆TiO粒子を用いる一具体例を詳述する。Mitsubishi Materials Company Ltd.からW−1導電粒子として入手可能である、ATO/TiO重量比23:77で0.2μm TiO粒子上に配置された12.25% ATOを含む明るい灰色の導電性粉末1.5gを、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ゴムの10%トルエン溶液5g中に分散させた。電極支持体として銅被覆ポリエステルフィルムを用いた。銅層上に分散液で被膜を形成し、この被膜をヒートガンで乾燥し、トルエン溶媒を蒸発させた。このように被覆した支持体を、5%の硫酸ナトリウムを含有する電解質水溶液に浸漬した。1〜2Vの印加で被覆の色は、該被覆の本来の色より暗いことが見て判る灰色に変わった。極性を反転させると色は、被覆の本来の色よりも明るいことが見て判る、より明るい灰色へと急速に戻った。
この実施例では、エレクトロクロミック表示装置の製造を詳述する。第一の表示導体パターンをポリエステルフィルムから成る支持基板上に、中心を合わせた25mm正方形の形状に印刷した。ポリエステル基板は、25mm正方形から基板周縁まで続く狭い導電リード部(conductor lead)を有した。対電極導体を、上記正方形パターン及びリード部をその周縁から1mm離隔した位置で囲繞する幅12mmの線の形状に印刷した。各導体パターンは通常の銀インクで印刷し、かつ通常の炭素インクで被覆した。導体パターンを、12% ATO被覆TiOをフッ素化エラストマーの溶液中に分散させた分散液で重ねて被覆することにより、エレクトロクロミックディスプレイを製造した。12% ATO被覆TiOはMitsubishi Materials Company Ltd.から得たもので、この材料はATO及びTiOが23:77の重量比で存在する粒径0.2μmの明るい灰色の導電性粉末として特徴付けられる。フッ素化エラストマーは酢酸ブトキシエチルに22重量%(wt%)の量で溶解させた。エラストマー溶液中に十分なATO被覆粉末を分散させ、それによってATO被覆粉末対エラストマーの重量比を2.5:1とした。得られた分散液で導体パターンを被覆し、ただしその際、電気的接続を行ない得る部分である基板周縁のリード部は除外した。分散液被覆を130℃で10分間乾燥し、再度分散液で被覆し、かつ乾燥して、透明なイオン絶縁性エラストマーマトリックス中に分散した、エレクトロクロミズムを起こす明るい灰色のドープされた酸化スズ粒子から成る、実質的にピンホールの無い導電被覆を設け、これを「基本ATO被覆表示素子」と名付けた。基本ATO被覆表示素子のエレクトロクロミック層を複数の接着性ポリエステルガスケットの積み重ねで覆い、それによって電極領域上に深さ約1mmの電解質ウェルを設置した。このウェルに、30wt%の塩化リチウム及び5wt%のアクリルポリマー増粘剤、即ちRohm and Haas Companyから入手可能なAcrysol ASE−95の水溶液を含む電解質を充填した。電解質を充填したウェルを接着性ポリエステルフィルムで封止して、D1と呼称するエレクトロクロミック表示装置の構成を完了した。
この実施例では、エレクトロクロミズム効果発生環境内で機能する、エレクトロクロミズムを起こすドープされた酸化スズに関するコントラスト比の測定を詳述する。実施例2で製造したエレクトロクロミック表示装置D1の導電リード部を関数発生器と接続し、この関数発生器により50mHz、±1.5Vの矩形波電位を付与してエレクトロクロミック装置を駆動し、電解質被覆を通して目視できる、エレクトロクロミズム特性を有するATO被覆粒子の、ATOが逐次酸化及び還元されるにつれての明るい灰色と暗い灰色との間での周期的色変化を惹起した。装置を、Melles−Griotホトダイオード広帯域増幅器を具備した顕微鏡下に設置することによって色変化のコントラスト比の大きさを測定した。装置中の、エレクトロクロミズムを起こす12% ATO含有材料は1.38のコントラスト比を示した。
この実施例では、アンチモンの増量がATOのエレクトロクロミズム特性に及ぼす絶大な影響を詳述する。33% ATOを用いた以外は実質的に実施例2と同様にして、実施例2に従って製造した基本ATO被覆表示素子を付加的なエレクトロクロミック分散液で被覆し、エレクトロクロミックディスプレイに仕上げた。実施例3の方法で測定したコントラスト比は1.92であった。
この実施例では、アンチモンの増量がATOのエレクトロクロミズム特性に及ぼす絶大な影響を更に詳述する。ドープされた酸化スズが11〜60%のアンチモンを含有し、かつATO及びTiOが36:64の重量比で存在する以外は実質的に実施例2と同様にして、実施例2に従って製造した基本ATO被覆表示素子を付加的なエレクトロクロミック分散液で被覆し、エレクトロクロミックディスプレイに仕上げた。実施例3の方法で測定したコントラスト比を表1に報告する。
Figure 2005119946
この実施例では、支持体顔料の選択によって実現するエレクトロクロミズム効果の劇的増大を詳述する。実施例2の操作に類似の操作で製造したATO被覆表示素子を、ホウ酸アルミニウム上の被覆とした12% ATO(MitsuiからPasstran 5210導電性粉末として入手)をフルオロカーボンエラストマー溶液中に分散させたエレクトロクロミック分散液で更に被覆した。乾燥したエレクトロクロミック最上被覆において、ATO含有粒子対フルオロカーボンエラストマーの重量比は28:15であった。実施例2の方法で製造し、実施例3の方法で評価したエレクトロクロミック装置は、ホウ酸アルミニウム支持体上のドープされた酸化スズが5.14のコントラスト比を有することを示した。
この実施例では、エレクトロクロミズムを起こす、本発明によりニオブでドープされた酸化スズの製造を詳述する。50gの硫酸バリウム粉末を750mlの水中に分散させ、かつ75℃に加熱することによって硫酸バリウムスラリーを用意し、このスラリーを水酸化ナトリウムの25%溶液でpH12に調節した。スラリーにスズ溶液(75℃において98.5gのスズ酸ナトリウム三水和物を250mlの水に溶解させたもの)を添加した。30分間攪拌後、得られた酸化スズ含有スラリーに酸性ニオブ溶液(0.735gの三塩化ニオブを25mlのメタノールに溶解させ、これを270ccの20%硫酸で酸性化したもの)を90分掛けて添加した。ニオブ/スズ含有スラリーのpHを20%硫酸で2.5に調節した。3時間後、溶液を冷却し、かつ250mlの水で10回濾過洗浄して粒子を得、これを真空炉内で130℃で乾燥した。乾燥した粒子を窒素下に450℃で2時間焼成して、1.54のコントラスト比を有する、0.72%のニオブでドープされたエレクトロクロミック酸化スズで被覆された硫酸バリウム支持体粒子を得た。
この実施例ではドープされた酸化スズ粒子と顔料粒子との混合物の、エレクトロクロミック材料としての使用を詳述する。0.4gの13.4% ATO粒子(DuPontからZelec(登録商標)3010XC ATOとして市販されているもの)と0.15gのTiO粒子との混合物をフルオロエラストマーの22wt%酢酸ブトキシエチル溶液1g中に分散させ、それによって本明細書に開示したエレクトロクロミックディスプレイに用いるのに適した分散液を得た。得られた材料は2.4のコントラスト比を示した。
この実施例では、酸化または還元状態の本発明によるドープされた酸化スズ粒子が大きい抵抗を有することを詳述する。DuPontから入手したZelec 35005XC ATOが0.12Ω・cmのATO基材粉体抵抗率を有することを確認した。ATO基材をホウ水素化ナトリウムで処理し、洗浄し、かつ乾燥して、404Ω・cmの粉体抵抗率を有する還元ATO(ナトリウムイオン0.58%含有)を得た。ATO基材を過硫酸アンモニウムで処理して、5.5Ω・cmの粉体抵抗率を有する酸化ATOを得た。酸化ATOを加熱すると、粉体抵抗率は0.1Ω・cmに近い値に戻る。
ここに特定の具体例を説明したが、これらの具体例が本発明の真の思想及び範囲を逸脱することなく様々に変形可能であることは当業者には明らかなはずである。従って、請求の範囲各項は、完全な発明概念の範囲内での上記のような変形を総て包含するものとする。

Claims (3)

  1. 混合状態のアンチモン及びスズ化合物粒子から、該粒子を熱処理してアンチモン−スズ酸化物化合物基材の粒子を形成し、前記基材の酸化または還元によって抵抗性でかつ粒状の、アンチモンでドープされた酸化スズを得ることにより製造された抵抗性でかつ粒状の、アンチモンでドープされた酸化スズであって、前記アンチモン−スズ酸化物化合物基材の粉体抵抗率の少なくとも2倍の粉体抵抗率を有することを特徴とする酸化スズ。
  2. 定格寸法0.2〜10μmの粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の酸化スズ。
  3. 混合状態のアンチモン及びスズ水酸化物粒子を溶液から沈澱させ、得られた粒子を300℃より高温で熱処理し、それによって水を除去してアンチモン−スズ酸化物化合物基材の粒子を形成し、その後前記基材を酸化または還元して抵抗性でかつ粒状の、アンチモンでドープされた酸化スズを得ることにより製造された抵抗性でかつ粒状の、アンチモンでドープされた酸化スズであって、前記アンチモン−スズ酸化物化合物基材の粉体抵抗率の少なくとも2倍の粉体抵抗率を有することを特徴とする酸化スズ。
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