JP2005105221A - 難燃性塩化ビニル系樹脂組成物および難燃性塩化ビニル系樹脂成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂100重量部、有機錫系安定剤1〜10重量部、モリブデン化合物0.05〜8重量部、塩基性化合物0.1〜3重量部を含んでなり、塩基性化合物は、アルミノカルボン酸誘導体、尿素誘導体、ドロマイト系誘導体、金属石鹸から選ばれる1種以上であってよい。
難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、モリブデン化合物を含む難燃性塩化ビニル系樹脂組成物からなり、60℃×48時間の温水変色試験の前後における色差Δa値が−0.5〜+0.5であり、ASTM E1354に準拠する平均発熱量が65kW/m2以下、平均減光体積が800m2/g以下である。
Description
しかし、この成形体は、難燃性の向上効果はあるが、有毒ガス発生の抑制効果が十分でなく、また成形加工時における熱安定性が悪い上、上記添加剤の分散不良に伴う成形体中での凝集物の発生があり、外観が満足できるものではない。
しかし、この成形体は、難燃性、押出成形時における熱安定性、外観は良好であっても、押出成形体の軟化温度が低下するという問題がある。
しかし、これらのPVC組成物は、温水での洗浄を要する半導体の洗浄槽の材料、あるいはその周辺部材の材料としては、安定な耐温水洗浄性と難燃性とを満足することが困難である。
この安定な耐温水変色性と難燃性は、鉛化合物の添加である程度解消することができるものの、鉛化合物は、環境負荷物質であり、使用が制限されたり、使用が禁止されたり等の動きがあり、他の手法による安定な耐温水変色性と難燃性との改善が切望されている。
この低温分解促進剤としての塩基性化合物は、アルミノカルボン酸誘導体、尿素誘導体、ドロマイト系誘導体、金属石鹸から選ばれる1種以上であってもよい。
また、上記の目的を達成するために、〔2〕本発明の燃性PVC成形体は、モリブデン化合物を含む難燃性PVC組成物からなる難燃性PVC成形体であって、60℃×48時間の温水変色試験の前後における色差Δa値が−0.5〜+0.5であることを特徴とする。
この成形体は、ASTM E1354に準じて測定される平均発熱量が65kW/m2以下であり、平均減光体積が800m2/g以下であってもよく、この成形体の材料であるモリブデン化合物を含む難燃性PVC組成物は、上記〔1〕の難燃性PVC組成物であってもよい。
本発明における低温分解とは、成形加工温度領域である220℃までの温度領域における分解を言い、高温分解とは、主鎖の切断やカーボン燃焼が生じる450℃以上の温度領域における分解を言う。
この変色について、未だ不明確な点もあるが、本発明者等の検討結果では、モリブデン金属の価数が変化することに起因することが略確認されている(なお、化学大辞典では、モリブデン化合物は、6価のものが最も安定で無色であるが、低価数に向かうと青味を帯びると記載している)。
そこで、本発明者等は、モリブデン化合物のMo価数の低下を抑制する手法を追求した結果、温水浸漬中におけるPVC組成物や成形体中の水素イオン濃度を中性に制御する手法が、温水浸漬後の変色を安定して防止できるとの知見を得た。
このPVCに配合する有機錫系安定剤は、上記のように、ラウレート系、マレート系、メルカプタイド系のものであって、ラウリン酸、マレイン酸、チオグリコール酸等に代表される酸性物質で合成されているため、安定剤自体が酸性を有している。
この価数低下を抑えるために、上記した水素イオン濃度の調整剤として、本発明では、塩基性化合物を配合する。
つまり、塩基性化合物を配合することにより、60℃×48時間の条件での温水変色試験後の水溶液における水素イオン濃度(pH)を5.5〜8.5に調整し、これによって安定な耐温水変色性を確保するものである。
また、塩基性化合物は、本発明では、低温分解抑制剤としての作用をも有しており、モリブデン化合物の配合によって低温すなわち加工温度領域でも分解が促進され、樹脂焼けを生じて外観において満足できる成形体が得られないことを防止したり、あるいはこの低温領域での分解で発生する微量の塩酸による成形加工機の腐食を防止する等のために配合される化合物である。
中でも、PVCへの相溶性等の観点から、尿素誘導体、アミノカルボン酸誘導体、ドロマイト系誘導体、金属石鹸が好ましい。
さらに、ドロマイト系誘導体としては、例えば、苦灰石(MgCO3・CaCO3)、苦土生石灰(MgO・CaO)、苦土消石灰(MgO(OH)2・Ca(OH)2)等の天然物、ドロマイトプラスター、合成マグドロクリンカー等のMgCO3・CaCO3複塩でMg,Caの重量比率がMgO,CaO換算で5:95〜95:5の合成品が挙げられ、金属石鹸としては、例えば、一般式M(OOCR)n(式中、MはBa,Ca,Al,Mg等の金属、Rはステアリン酸、ラウリン酸、2−エチルヘキソイン酸等のアルキル基である)で示されるものが挙げられ、代表例としステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
この成形体の、60℃×48時間の条件下での温水変色試験の前後における色差Δa値は、−0.5〜+0.5であることが重要である。色差Δa=0.0すなわち変色が生じないことが最も好ましいが、この範囲内であれば十分実用性を有したものとなり、色差Δa<−0.5や、Δa>+0.5では、半導体の洗浄槽や、その周辺部材等のように、常時あるいは頻繁に温水と接触する成形体に、使用中に変色が生じてしまい、実用性を欠くことになるからである。
この評価は、コーンカロリメータを用いた燃焼試験により評価される難燃特性であって、単位面積および単位時間あたりの燃焼による発熱量の最大値(最大発熱量、PHRRとも記載する;単位:kW/m2)、平均値(平均発熱量、AHRRとも記載する;単位:kW/m2)、総発熱量(総発熱量、THRとも記載する;単位:MJ/m2)、質量減少率の平均値(質量減少率、AMLRとも記載する;単位:g/sec・m2)、減光体積の最大値(最大減光体積、PSEAとも記載する;単位:m2/g)、減光体積の平均値(平均減光体積、ASEAとも記載する;単位:m2/g)等を挙げることができる。
この評価基準は、Clsaa Number 4910として挙げられているクリーンルーム材料の難燃性テスト(FMRC、Clean Room Materials Flammability Test Protocol)に基づいて測定された、難燃性を示す延焼指数(FPI)、発煙性を示す発煙指数(SDI)、腐食性ガス発生を示す腐食指数(CDI)等が指標(総じてFM規格とも記載する)とされている。
本発明においては、このようなFM規格による評価値に代えて、評価値を求める者が行うことができるASTM E1354に準じたコーンカロリメータを用いる燃焼試験により評価される値を難燃性の指標とするものである。
また、上記のFM規格による発煙指数(SDI)は、上記のコーンカロリメータによって測定される最大減光体積(PSEA)、平均減光体積(ASEA)等の減光体積に関する指標と強い相関を有する。
さらに、上記のFM規格による腐食指数(CDI)は、上記のコーンカロリメータによって測定される質量減少率(AMLR)等の質量減少に関する指標と強い相関を有する。
従って、コーンカロリメータを用いて難燃性を評価することにより、FM規格の指標をも効果的に得ることができる。
本発明では、このFM規格と同等以上の値を得るために、最大発熱量(PHRR)130Kw/m2以下、平均発熱量(AHRR)82Kw/m2以下、総発熱量(THR)100MJ/m2以下、質量減少率(AMLR)13g/sec・m2以下、最大減光体積(PSEA)1500m2/g以下、平均減光体積(ASEA)1000m2/g以下とすることが好ましく、中でも特に平均発熱量(AHRR)、平均減光体積(ASEA)が難燃性に対して支配的であるため、平均発熱量(AHRR)65kW/m2以下、かつ平均減光体積(ASEA)800m2/g以下とすることが好適である。
重合度780の塩化ビニル樹脂(塩化ビニルのホモポリマー)100重量部に対して、有機錫系安定剤(ジブチル錫マレートポリマー/ジブチル錫マレートエステル=4/1混合品《三共有機合成社製商品名“BM/90E”》)、鉛系安定剤(二塩基性硫酸鉛/二塩基性ステアリン酸鉛=4/1混合品《水澤化学社製商品名“TC/C18”》)、モリブデン化合物(モリブデン酸アンモニウム《日本無機化学社製商品名“モリアン・AHM”》)、塩基性化合物(表1に示すもの)、着色剤として酸化チタンを表1に示す割合で添加し、本発明の難燃性塩化ビニル系樹脂組成物を得た。
実施例1〜9および比較例1〜5で得た各難燃性塩化ビニル系樹脂組成物を、厚さ5mmのシート状に押出成形し、この押出成形品を幅20mm、長さ20mmにカットして試験片Aとし、下記の項目につき評価し、結果を表1に併せて示す。
上記の試験片Aについて、アトラス社製コーンカロリメータを用い、ASTM E1354に準じ、AHRR(Kw/m2)とASEA(m2/g)を測定した。
上記の試験片Aを60℃に加温した20mlの純水に浸漬し、この状態の純水を60℃に48時間保持した後、浸漬前と後の色相変化について、色差測定装置を用いて測定し、Δα値を求めた。
上記の試験片Aを60℃に加温した20mlの純水に浸漬し、この状態の純水を60℃に48時間保持した後、水溶液のpHをpHメータにより測定した。
厚さを1mmとする以外は上記の試験片と同様にしてシート状の押出成形品を得、これを100mm×100mmの大きさにカットして試験片Bとし、この試験片Bを200℃のオーブンで加熱し、黒変しない時間を目視判定し、次の基準で評価した。
○;30分以上
△;20分以上30分未満
×;15分以下
上記の試験片Bを蛍光X線測定装置に掛けて鉛金属の定性分析を行い、次の基準で評価した。
○;鉛金属検出されなかった場合
×;鉛金属検出された場合
なお、比較例5は、塩基性化合物を配合していないにも拘わらず、耐変色性に優れた結果を得ているが、これは比較例5で使用している鉛系安定剤が、本発明で使用する有機錫系安定剤よりも塩基性が強いことによると推測される。
また、本発明は、難燃性に優れ、発煙量も少なく、優れた外観を有する成形体を得ることができる。
Claims (5)
- 塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、
有機錫系安定剤1〜10重量部、
モリブデン化合物0.05〜8重量部、
塩基性化合物0.1〜3重量部
を含んでなることを特徴とする難燃性塩化ビニル系樹脂組成物。 - 塩基性化合物が、アルミノカルボン酸誘導体、尿素誘導体、ドロマイト系誘導体、金属石鹸から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性塩化ビニル系樹脂組成物。
- モリブデン化合物を含む難燃性塩化ビニル系樹脂組成物からなる難燃性塩化ビニル系樹脂成形体であって、60℃×48時間の温水変色試験の前後における色差Δa値が−0.5〜+0.5であることを特徴とする難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
- ASTM E1354に準じて測定される平均発熱量が65kW/m2以下であり、平均減光体積が800m2/g以下であることを特徴とする請求項3に記載の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
- モリブデン化合物を含む難燃性塩化ビニル系樹脂組成物が、請求項1または2記載の難燃性塩化ビニル系樹脂組成物であることを特徴とする請求項3または4に記載の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
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