JP4164382B2 - 難燃性塩化ビニル系樹脂組成物成形品 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性のポリ塩化ビニル系樹脂(PVCとも記載する)組成物とその成型品に関する。
【0002】
【従来の技術】
PVCは分子中に塩素を含有するため、難燃性に優れている。また、各種の無機添加剤を広い含有量で添加できるため、広範囲の機械的特性、耐熱性、成形性、耐候性を実現することができる。
【0003】
以上の様な特性をPVCは有しているため、特に硬質PVC組成物の成形品は、航空機、船舶、車両等の輸送機内外装材;建築物内外装材;家具、事務用具等の日用物品;家電機器、電子機器等のハウジング材;半導体装置の部品等として使用されてきた。
【0004】
しかしながら、PVCは、火災等の理由により耐熱温度以上の高温に晒されると、分子内の塩素に起因して、多量に発煙すると共に、塩素ガスや塩化水素ガス等の有毒ガスを発生する。このため、無機添加剤の種類および配合量を検討することにより、有毒ガスの発生を抑制することが試みられてきた。
【0005】
例えば、特許文献1では、難燃性の規格であるFM規格を満足するPVC系樹脂を目的として、塩化ビニル樹脂に、酸化チタン4〜30重量部、亜鉛化合物、モリブデン化合物、リン化合物等の難燃助剤1〜10重量部を添加し、所望の形状に成形してなる難燃性塩化ビニル樹脂成形体が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記成形体の耐薬品性試験での重量変化が大きくまた樹脂組成物の熱安定性が悪く成形加工性がわるかった。また分散不良に伴う凝集物が発生するなど外観が満足できる範囲ではなかった。
【0007】
上記の不具合を回避するために、特許文献2には、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、モリブデン化合物0.1〜2.5重量部(金属モリブデンとして0.05〜1.5重量部)で添加した難燃性塩化ビニル樹脂成形体が提案されている。しかしながら、上記成形体では添加剤の分散性分散性は向上するが成形体の耐薬品性試験の重量変化が改善できず、また成形加工における熱安定性低下は避けられない等の問題があった。
【0008】
よって、以上に記載した様な難燃性塩化ビニル樹脂組成物(難燃性PVC組成物とも記載する)においては、難燃性、耐薬品性と成形加工性、外観のいずれをも満足することが非常に困難であった。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−264976号公報
【特許文献2】
特開2002−226659号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明においては、十分な難燃性、耐薬品性および成形加工における熱安定性および成形物の外観が良好な難燃性PVC組成物およびその成型品を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は以下の態様を包含する。
【0012】
[1] ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部と、酸化チタンの基材にモリブデン化合物を被覆した防煙剤0.1質量部以上10質量部以下とを含むことを特徴とする難燃性塩化ビニル系樹脂組成物成形品。
【0015】
] さらにポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して金属水酸化物0.01質量部以上1質量部以下を添加したことを特徴とする[1]に記載の難燃性塩化ビニル系樹脂組成物成形品
【0016】
] ASTM E1354に準じて測定される平均発熱量(AHRR)と平均減光積(ASEA)は、それぞれ65kW/m2以下、800m2/g以下である[1]または[2]に記載の難燃性塩化ビニル樹脂組成物成形品
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
本発明においてPVCとしては、一般のポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル共重合体等を使用することができる。
【0020】
ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部と、基材に防煙化合物を被覆した防煙剤0.1質量部以上10質量部以下、好ましくは0.5質量部以上、3質量部以下を含んでなることを特徴とする難燃性塩化ビニル系樹脂組成物。
【0021】
防煙剤は添加しないと塩素ガスが発生するため難燃性が向上しない。添加量が多すぎると、物性低下および成型品に分散不良欠陥が現れ、満足できる成型品が得られない。
【0022】
本発明において、防煙剤とは防煙化合物を耐薬品性が良好な基材の表面に防煙化合物を被覆したものが使用される。
【0023】
防煙化合物としては、これまで多くのものが提案されており、これらを1種又は2種以上の組み合わせで使用することができるが、中でも、亜鉛系化合物および錫化合物やモリブデン系化合物が好ましく、これ等とリン化合物が含まれても差し支えない。
【0024】
亜鉛系化合物としては、ホウ酸亜鉛、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等を例示することができ、これらの化合物は燃焼時にPVCの炭化を促進し、発煙量を低減する。
【0025】
錫化合物としては、ヒドロキシスズ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、酸化錫等を例示することができ、これらの化合物は燃焼時にPVCの炭化を促進し、発煙量を低減する。
【0026】
モリブデン系化合物としては、三酸化モリブデン、オクタモリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸亜鉛等を例示することができる。
【0027】
リン系化合物としては、リン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リン等を例示することができる。リン化合物は基材に被覆しても良いが、単に塩化ビニル樹脂に添加しても本願の目的である難燃性がさらに向上することができる。その添加量は塩化ビニル樹脂に対して、0.5質量部〜15質量部である。
【0028】
また、本発明において用いられる基材としては耐薬品性が良好な無機充填材であって、樹脂に充填剤として通常用いられているものが好ましく用いられ、なかでもタルク、シリカ、酸化チタン等を例示することもできる。
【0029】
基材に対する防煙化合物の被覆量は5〜60質量%、好ましくは10〜50質量%である。基材に防煙化合物を被覆する方法は特に限定はなく、触媒の製造等で担体に種々の化合物を担持するのに通常行われている方法で容易に製造することができ、例えば基材存在下に防煙化合物またはその前駆体を水等の溶媒を溶解させ、例えばpHを変化させて防煙化合物またはその前駆体を不溶化させて基材に被覆させ、乾燥または加熱して焼成する方法で製造する方法、基体に防煙化合物またはその前駆体の溶液を噴霧して被覆し、乾燥または焼成する方法、基体と防煙化合物またはその前駆体の溶融物を混合し、固溶物を粉砕する方法等が例示される。
【0030】
本発明において、追加成分として添加される金属水酸化物としては、これまで塩化ビニル樹脂に熱安定性を向上させるために添加する多くの金属水酸化物が提案されており、これらを使用することができるが、中でも、マグネシウム系水酸化物およびアルミニウム系水酸化物が好ましい。
【0031】
高い動的熱安定性を要しない成形加工方法では金属水酸化物はさほど有効でないが、押出成形等の高い動的熱安定性を必要とする場合には金属水酸化物の添加が有効になる。しかしその添加量が多すぎると、物性低下および耐薬品性の悪化が生じ、満足できる成型品が得られない。
【0032】
その添加量は塩化ビニル系樹脂100質量部に対して金属水酸化物0.01質量部以上1質量部以下、好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下である。
【0033】
次に、所定量のPVC、防煙剤、金属水酸化物等を、ブレンダーやヘンシェルミキサー等を用いて粉体混合する。
【0034】
表面被覆していない防煙剤では難燃性は良好であるがその分散不良欠陥が現れ、満足できる成型品が得られない。また耐薬品性の悪化が生じる。よって耐薬品性が良好な基材に防煙化合物を表面被覆した防煙剤を使用することで難燃性、耐薬品性、成形加工性、外観を満足できる。
【0035】
以上の様にして得られた組成物は、押出成形法により、フィルム、シート、板材、パイプ、異型品等の難燃性PVC成形品に加工される。
【0036】
以上の様にして製造された難燃性PVC成形品の難燃性は、ASTM E1354に準じ、コーンカロリメータを用いて評価することができる。コーンカロリメータを用いた燃焼試験により評価される難燃特性としては、単位面積および単位時間当たりの燃焼による発熱量の最大値(最大発熱量、PHRRとも記載する;単位:kW/m2)、単位面積および単位時間当たりの燃焼による発熱量の平均値(平均発熱量、AHRRとも記載する;単位:kW/m2)、燃焼による総発熱量(総発熱量、THRとも記載する;単位:MJ/m2)、単位面積および単位時間当たりの燃焼による質量減少率の平均値(質量減少率、AMLRとも記載する;単位:g/sec.m2)、単位重量当たりの燃焼による減光積の最大値(最大減光積、PSEAとも記載する;単位:m2/g)、単位重量当たりの燃焼による減光積の平均値(平均減光積、ASEAとも記載する;単位:m2/g)等を挙げることができる。
【0037】
従来、難燃性の指標の一つとしては、産業相互保険組織(Factory Mutual System)を構成するFactory Mutual reserch Corp.が定める評価基準が有効に利用されてきた。
【0038】
この評価基準は、Class Number 4910として挙げられているクリーンルーム材料の難燃性テスト(FMRC、Clean Room Materials Flammability Test Protocol)に基づいて測定され、難燃性を示す延焼指数FP1、発煙性を示す発煙指数SD1、腐食性ガス発生を示す腐食指数CDI等が指標(FM規格とも記載する)とされる。
【0039】
本発明においては、FM規格に代えて、コーンカロリメータを用いた燃焼試験により評価される値を難燃性の指標とした。FM規格は、産業相互保険組織に試験片を提出し、産業相互保険組織が評価して得られる規格であるため、評価結果が得られるまでに時間を要し、非効率的であるのに対し、コーンカロリメータを用いた燃焼試験は、発明者らによって行うことができるため、効率的である。
【0040】
特に、FPIは、コーンカロリメータによって測定されるPHRR、AHRRおよびTHR等の発熱量に関する指標と強い相関を有する。また、SDIは、PSEAおよびASEA等の減光積に関する指標と強い相関を有する。更に、CDIは、AMLR等の質量減少に関する指標と強い相関を有する。
【0041】
従って、コーンカロリメータを用いて難燃性を評価することにより、FM規格の凡その値を、効率的に得ることができる。
【0042】
FM規格においては、FPIが6以下、SDIが0.4以下と要求されているが、本発明においては、この規格と同等以上として、PHRRが130kW/m2以下、AHRRが82kW/m2以下、THRが100MJ/m2以下、AMLRが13g/sec・m2以下、PSEAが1500m2/g以下、ASEAが1000m2/g以下であることが好ましい。そのなかで好ましくはAHRRが65kW/m2以下、ASEAが800m2/g以下であることが好ましい。
【0043】
本発明における成形加工性は、熱安定性に優れる。具体的にはプラストミルでの動的熱安定性評価法によっての分解時間で評価することができる。
【0044】
本発明における難燃性PVC組成物は成形加工が容易でその成形品は、難燃性に優れ発煙量も少なく、耐薬品性の重量変化が少ない特徴を有するものである。
【0045】
従って、特に、硬質PVC組成物の成形品は、航空機、船舶、車両等の輸送機内外装材;建築物内外装材;家具、事務用具等の日用物品;家電機器、電子機器等のハウジング材;半導体装置の部品等として、好適に使用することができる。
【0046】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。なお、以下の実施例1〜6のうち、実施例1、5及び6が本発明の実施例であり、実施例2〜4は本発明に関連する参考例である。
【0047】
(評価方法)
(ア)難燃性の評価:アトラス社製コーンカロリメータを用いて、ASTM E1354に準じ、AHRR(kW/m2)、ASEA(m2/g)を測定した。
【0048】
(イ)耐薬品性の評価:JIS6745に準じて、成形品を30%硫酸、40%硝酸または35%塩酸にそれぞれ浸漬した場合の、60℃24時間の重量変化率を求めた。
【0049】
(ウ)押出加工性特性の評価(動的熱安定性):プラストミルでの動的熱安定性評価法によって、200℃における分解時間を測定した。分解時間はトルクが10%以上増加し始めた時間。
【0050】
(エ)押出成型品の外観評価:本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を二軸押出機を用いて温度200℃で押出成型して厚さ3mmのシートを作製しその表面分散状態を目視で評価した。
(防煙剤の製造方法)
水2リットルに酸化チタン200gを懸濁し、ついでこれにモリブデン塩と亜鉛塩混合物(酸化物になった特に、Mo/Zn=1であって酸化チタンに対して20質量%となる量)溶解し、溶液のpHを調節してモリブデン化合物と亜鉛化合物を酸化チタンの上に析出させ、ろ過、水洗した。次いで得られた固体を乾燥、粉砕し、モリブデン酸亜鉛と酸化亜鉛とが被覆された防煙剤を得た。発明の実施例で用いた防煙剤はこの方法に準じて製造し、実施例に使用した。実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
Figure 0004164382
【0052】
【発明の効果】
本発明によって、十分な難燃性、耐薬品性および成形加工における熱安定性および成形物の外観が良好な難燃性PVC組成物およびその成型品を提供することが可能となった。

Claims (3)

  1. ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部と、酸化チタンの基材にモリブデン化合物を被覆した防煙剤0.1質量部以上10質量部以下とを含むことを特徴とする難燃性塩化ビニル系樹脂組成物成形品。
  2. さらにポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して金属水酸化物0.01質量部以上1質量部以下を添加したことを特徴とする請求項1記載の難燃性塩化ビニル樹脂組成物成形品
  3. ASTM E1354に準じて測定される平均発熱量(AHRR)と平均減光面積(ASEA)は、それぞれ65kW/m 2 以下、800m 2 /g以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性塩化ビニル樹脂組成物成形品
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