JP2009263457A - 高耐熱性・高難燃性を有する樹脂組成物 - Google Patents

高耐熱性・高難燃性を有する樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】厚み0.2mm以下のフィルム(薄物)の片面に粘着剤を塗布した状態で不燃であるか、若しくは自消する、高難燃性を発現する成形品を製造できる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリオレフィン系樹脂30〜70重量部、及び(B)(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体5〜20重量部と(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体25〜50重量部との合計量30〜70重量部と、
上記成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂20〜60重量部、(D)金属水酸化物20〜65重量部、(E)赤燐3〜25重量部、及び(F)トリアジン系化合物5〜25重量部を溶融混練してなる樹脂組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐熱性及び難燃性に優れる樹脂組成物及びその成形品に関する。
従来、耐熱性、難燃性を必要とする自動車の電装材、OA・家電工業用ケーブル、建材用途で塩化ビニル系材料が、難燃性,耐熱性,機械的特性,柔軟性に優れている為に使用されていた。しかし近年環境に対する意識の高まりから、塩化ビニルは火災や燃焼の際に、塩化水素等の有毒ガスや腐食性ガスを発生するといった問題や、材料に含まれている可塑剤の使用を控える動きがあり、環境負荷がより小さい材料、特にポリオレフィン系材料に変えていく動きが活発化している。
そのような中、ポリオレフィン材料として、ポリプロピレン(PP)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)といった樹脂に、リン酸塩系難燃剤や金属水酸化物を添加し難燃性を付与した材料が開発されつつあるが、例えば、リン酸塩系難燃剤を使用した材料は、厚物(厚み2.0mm以上)であれば難燃性が発現されるが、薄物(厚み0.2mm以下)として使用すると難燃性が発現されない。一方、金属水酸化物を使用した場合、大量に添加したとしても機械的物性の低下が著しい上に、薄物での高難燃化は難しい。
薄物でも所望の不燃レベルを達成するようなポリオレフィン樹脂の高難燃化方法として、特許文献1ではPP系樹脂に、赤燐、膨張黒鉛及び金属水酸化物を複合化した組成物が提案されているが、膨張黒鉛は熱安定性が十分でなく、そのため製品加工や二次加工する際に発泡する可能性がある。また、膨張黒鉛は粒径が大きい為、大きく物性を低下させたりフィルム外観を悪化させる。
薄物でも不燃レベルを達成し、機械的物性も良好なポリオレフィン系樹脂組成物として、特許文献2では、PP系樹脂に、リン化合物、メラミンシアヌレ−ト等を添加した組成物が提案されている。しかしながら、この組成物は、150℃以上になると収縮や著しい熱変形が起こってしまい、耐熱性が十分ではない。
上記のように、可燃性粘着剤を塗布した状態でも燃えない高難燃性を有し、柔軟性、機械的特性等のテープ特性を兼ね備えた材料は開発されていないのが現状である。
特開平06−25485号公報 特開平06−157820号公報
そこで、本発明は、薄物であっても高難燃性及び高耐熱性を有し、機械的特性に優れる樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明では、厚み0.2mm以下のフィルム(薄物)の片面にアクリル系粘着剤等の可燃性粘着剤を塗布した状態で不燃であるか、若しくは自消する、高難燃性を発現する成形品を製造できる樹脂組成物が提供される。
また、本発明では、厚み0.2mm以下のフィルム(薄物)でも190℃で収縮や著しい変形が抑制され、高耐熱性を発現する成形品を製造できる樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明では、伸び、引張強度等の機械的特性を保持した、テープ材として使用可能な成形品を製造できる樹脂組成物が提供される。
本発明者らは、上記の特性を兼ね備えた成形品を製造できる樹脂組成物を開発するため、鋭意研究を行い、ポリオレフィン系樹脂、EEA及びEVAからなるベース樹脂に、ポリオレフィン系酸変性樹脂、金属水酸化物、赤燐及びトリアジン系化合物をそれぞれ特定の割合で配合し、溶融混練してなる樹脂組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明によれば、以下の樹脂組成物及び成形品が提供される。
1.(A)ポリオレフィン系樹脂30〜70重量部、及び
(B)(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体5〜20重量部と(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体25〜50重量部との合計量30〜70重量部と、
前記成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、
(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂20〜60重量部
(D)金属水酸化物20〜65重量部
(E)赤燐3〜25重量部
(F)トリアジン系化合物5〜25重量部
を溶融混練してなる樹脂組成物。
2.前記(A)ポリオレフィン系樹脂の割合が40〜60重量部の範囲内であり、前記(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体と前記(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体の合計量の割合が60〜40重量部の範囲内である上記1に記載の樹脂組成物。
3.前記(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂の割合が、前記成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、25〜55重量部の範囲内である上記1又は2に記載の樹脂組成物。
4.前記(A)ポリオレフィン系樹脂の常温キシレン可溶成分量が、30〜90重量%の範囲内である上記1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.前記(A)ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが、0.5〜50g/10分の範囲内である上記1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.前記(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体のメルトフローレートが、0.05〜50g/10分の範囲内であり、エチレン−エチルアクリレート共重合体中のエチルアクリレート含量が、5〜75重量%の範囲内である上記1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
7.前記(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが、0.05〜50g/10分の範囲内であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含量が、4〜50重量%の範囲内である上記1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.前記(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂が、不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸及びその無水物で変性されたポリオレフィン系樹脂である上記1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
9.前記(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂のベースとなる樹脂が、ポリプロピレン系樹脂である上記1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
10.前記(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂のグラフト量が、0.2〜2.8重量%の範囲内である上記1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物。
11.前記(D)金属水酸化物が、平均粒径0.5〜10μmの範囲内である粒子である上記1〜10のいずれかに記載の樹脂組成物。
12.前記(E)赤燐が、平均粒径が1.0〜20μmの粒子である上記1〜11のいずれかに記載の樹脂組成物。
13.前記(E)赤燐中の赤燐分が、92重量%以上である上記12に記載の樹脂組成物。
14.前記(F)トリアジン系化合物が、平均粒径0.5〜15μmの範囲内の粒子である上記1〜13のいずれかに記載の樹脂組成物。
15.上記1〜14のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明によれば、100μmの厚みでも不燃であるか、若しくは自消する、難燃性を有する成形品を製造できる樹脂組成物を提供できる。
本発明によれば、厚み100μmのフィルムの片面に可燃性の粘着剤を100μmの厚みで塗布した状態でも、不燃であるか、若しくは自消する、難燃性を有する成形品を製造できる樹脂組成物を提供できる。
また、本発明によれば、上記特性に加え、耐熱性、機械的物性や柔軟性にも優れる樹脂組成物が提供できる。
I.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物(以下、本発明の組成物という)は、(A)ポリオレフィン系樹脂、及び(B)(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体と(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体、(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂、(D)金属水酸化物、(E)赤燐、及び(F)トリアジン系化合物を、それぞれ所定の割合で配合し、溶融混練してなることを特徴とする。
以下、各成分について説明する。
(A)成分:ポリオレフィン系樹脂
本発明の組成物において、ポリオレフィン系樹脂(A)は、ベース樹脂となる。
ポリオレフィン系樹脂(A)としては、例えば、ホモPP、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体等のランダムPP、プロピレン基とエチレン基を構成単位とするPP系熱可塑エラストマー(TPO)やブロックPPに代表されるプロピレンとエチレンとのブロック共重合体、プロピレンとα−オレフィンとのブロック共重合体等のブロックPP、プロピレンとエチレンとのランダムブロック共重合体、プロピレンとα−オレフィンとのランダムブロック共重合体等のランダムブロックPP等のポリプロピレン系樹脂や、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレン系樹脂を単独で又は2種以上を混合して使用できる。ここで、α−オレフィンとしては、炭素数4〜8のものが好ましい。
上記のポリオレフィン系樹脂(A)としては、2種以上の樹脂を混合して使用する場合として、PP(例えばホモPP、ブロックPP、ランダムブロックPP等)に、エチレン−オクテン共重合体(EOR)、エチレン−ブテン共重合体(EBR)等のエチレン−α−オレフィン共重合体、及びアタクチックPP等を1種類以上混合してなる組成物が使用できる。ここで、エチレン−α−オレフィン共重合体やアタクチックPPの常温キシレン可溶成分量が30〜100重量%であることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂(A)としては、市販のポリプロピレン(PP)を使用することができる。具体的な例としては、ホモPP、ブロックPP、ランダムPPとして、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ(商品名)やTPOとして、プライムTPO(商品名)等がある。或はこれらを2種類以上混合して使用してもよい。ホモPP、ブロックPP、ランダムブロックPP等にエチレン−α−オレフィン共重合体を混合する際のエチレン−α−オレフィンとしては、三井化学株式会社製のタフマーA、H及び/又はダウケミカル日本株式会社製のエンゲージ等がある。
ポリオレフィン系樹脂(A)は、JIS K7210に準拠して230℃、2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5〜50g/10分の範囲内であることが好ましく、1.0〜25g/10分の範囲内であることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂(A)は組成物の主成分であるため、そのMFRが0.5g/10分より小さいと、他の成分、即ち、後述する(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)成分の添加により粘度がさらに上昇し、溶融混練する際に押出機への負荷が高くなり、混練ができないおそれがある。また、発熱が激しくなり、樹脂劣化に繋がるおそれがある。この樹脂劣化は、製品の機械的特性を大きく損ね、分解物による外観不良やベタツキの問題にも繋がる。一方、MFRが50g/10分より大きいと、ポリオレフィン系樹脂(A)自体の伸び、引張り強度等の機械的特性が低下するため、成形品の機械的特性が損なわれるおそれがある。
本発明の組成物からなる成形品が、テープとして使用される場合、ポリオレフィン系樹脂(A)の常温キシレン可溶成分の割合(キシレン可溶成分量)が30〜90重量%の範囲内であることが好ましく、50〜80重量%の範囲内であることがより好ましい。キシレン可溶成分量が30重量%未満であると、柔軟性が不十分となるおそれがあり、90重量%を超えると、機械的強度、耐摩耗性の低下、耐熱性の低下のおそれがある。
本発明の組成物中において、成分(A)は、後述する成分(B)と共に本発明の組成物のベース樹脂となるが、成分(A)+(B)の合計を100重量部としたときに、30〜70重量部であることが必要であり、40〜60重量部であることが好ましい。成分(A)の配合量が30重量部未満では、充分な耐熱性が得られないおそれがあり、また配合量が70重量部を超える場合は、充分な難燃性が得られないおそれがある。
(B)成分:(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体及び(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体
本発明の組成物における成分(B)は、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)(B−1)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(B−2)であり、前記成分(A)と共に、本発明の組成物のベース樹脂となる。さらに、成分(B)は、本発明の組成物から製造される成形品の難燃性を向上させる成分である。
図3−2(a’)は、前記成分(A)と、後述する成分(C)〜(F)とをブレンドした組成物から製造された短冊状の試験片を、吊した状態で下からローソクで10秒間接炎させたときの燃焼状態と燃焼残渣(チャーと称する)の模式図である(比較例12)。図3−2(b’)は、このブレンド系組成物に成分(B)をさらに添加したブレンド系組成物から製造された試験片を用いた場合の燃焼状態と燃焼残渣の模式図である(実施例3)。試験の詳細は後述するが、図3−2から、組成物に成分(B)が添加されていることで、燃焼残渣が大きく横に膨張することがわかる。このように燃焼残渣が大きく横に膨張することにより、燃焼残渣が壁となって、炎がさらに上昇することを抑制する。チャーの形状は、断面積増加倍率(=燃焼後のチャー断面積/燃焼前の試験片の断面積)が2.8倍以上であることが好ましい。また、チャーの角度は、150°以下であることが好ましい。チャーの断面積増加倍率及び角度が上記の値未満であると、炎の上昇を効果的に抑制できないおそれがある。
さらに、燃焼残渣が横に広がることの影響で、後述する成分(F)(トリアジン系化合物)の熱分解により発生する不燃性ガスが完全に成形品を包み込むことで難燃性をさらに向上させていると考えられる。この不燃性ガスの状態と燃焼残渣(チャー)の模式図を図3−1に示す。図3−1中、(a)は比較例12、(b)は実施例3の状態を示す。
EEA(B−1)は市販のものを使用することができる。具体的な例としては、三井・デュポンポリケミカル社製のエバフレックス−EEA系シリーズや日本ユニカー(株)社製等が挙げられる。また、EEA(B−1)は、エチルアクリレート含量が5〜75重量%の範囲内であることが好ましい。エチルアクリレート含量がこの範囲外となると、難燃性や機械当て基物性が不十分となるおそれがある。
EVA(B−2)も市販のものを使用することができる。具体的な例としては、三井・デュポンポリケミカル社製のエバフレックスシリーズや東ソー社製のウルトラセンシリーズ等が挙げられる。
また、EVA(B−2)は、酢酸ビニル含量が4〜50%の範囲内のものであることが好ましい。酢酸ビニル含量がこの範囲外となると、難燃性や機械的物性が不十分となるおそれがある。
また、成分(B−1)及び(B−2)は、いずれも、メルトフローレート(MFR)が0.05〜50g/10分の範囲内のものを用いることが好ましい。MFRがこの範囲内であれば、混練時の負荷や発熱が抑えられ、伸びや引張り強度等の機械的物性に優れる成形品が得られる。
本発明の組成物中における成分(B)の配合量(即ち、EEA(B−1)及びEVA(B−2)の合計量)は、成分(A)+(B)の合計を100重量部としたときに、30〜70重量部であることが必要であり、40〜60重量部であることが好ましい。成分(B)が30重量部より少ないと、充分な難燃性が得られないおそれがある。一方、70重量部を超えると、充分な耐熱性が得られないおそれがある。
また、EEA(B−1)の配合量は5〜20重量部であることが必要であり、8〜15重量部であることが好ましい。EEA(B−1)の配合量が5重量部未満であると、難燃性が不十分となるおそれがあり、一方20重量部を超えると、引張り強度等の機械的物性の低下や難燃性の低下のおそれがある。
EVA(B−2)の配合量は25〜50重量部であることが必要であり、32〜45重量部であることが好ましい。EVA(B−2)の配合量が25重量部未満であると、難燃性が不十分となるおそれがあり、一方50重量部を超えると、引張り強度等の機械的物性の低下や難燃性の低下のおそれがある。
(C)成分:ポリオレフィン系酸変性樹脂
ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)は、酸を用いて変性させたポリオレフィン系樹脂であり、酸基がポリオレフィン系樹脂に共重合、或はグラフト結合したものであり、得られる成形品に耐熱性を付与する。
図1はポリオレフィン系酸変性樹脂(C)、後述する金属水酸化物(D)及び前記ポリオレフィン系樹脂(A)が擬似巨大分岐構造体を形成している本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の概念図である。ポリオレフィン系酸変性樹脂10の酸基12が、後述する塩基を分子構造に持つ金属水酸化物20と反応し、複数のポリオレフィン系酸変性樹脂10が金属水酸化物20を中心に結合し、擬似巨大分岐構造体を形成する。さらに、上記擬似巨大分岐構造体中の高分子鎖(ポリオレフィン系酸変性樹脂10)とポリオレフィン系樹脂30とが絡み合い、さらなる巨大分岐構造体を形成する。巨大分岐構造体を形成することにより高温時の変形緩和が抑制されるため、耐熱性が向上すると考えられる。
ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)のベースとなるポリオレフィン系樹脂(酸変性ベース樹脂)としては、(A)成分として用いるポリオレフィン系樹脂を使用することができ、例えば、各種PP、TPO、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の(A)成分として用いるポリオレフィン系樹脂及びスチレン−エチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SEBS)等が挙げられる。本発明の組成物から製造される成形品が、より高い柔軟性を必要とする場合には、TPO又はエチレン−α−オレフィン系共重体をベース樹脂として用いることが好ましく、より高い耐熱性を必要とする場合には、各種PP、TPO又はプロピレン−α−オレフィン共重合体を用いることが好ましい。また、前記ポリオレフィン系樹脂(A)との親和性を考慮すると、PP又はTPOが好ましい。
変性に用いる酸として、例えば、種々のカルボン酸、ジカルボン酸又はジカルボン酸無水物が好ましく、不飽和カルボン酸、不飽和ジカルボン酸又はその無水物がより好ましい。具体的には、酢酸、アクリル酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、2−ナフトエ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、イソニコチン酸、2−フロ酸、ギ酸、プロピオン酸、プロピオル酸、酪酸、イソ酪酸、メタクリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、ケイ皮酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢酸、ベンジル酸、アントラニル酸、エチレンジアミン四酢酸、イタコン酸等が挙げられる。
ポリオレフィン系酸変性樹脂の製造法としては、特開平4−132711号公報、特開平8−143739号公報、特開2002−20560号公報、特開平7−316239号公報、特開平08−127697号公報、特開平07−232324号公報、特開2004−99736号公報等に記載の公知の方法を使用することができ、過酸化物と共にポリオレフィン系樹脂を押出変性する方法やポリオレフィン系樹脂のポリマー重合時に変性する方法が有効である。
例えば、有機過酸化物、マレイン酸及び酸変性ベース樹脂を溶媒中で反応させる(溶液法)、有機過酸化物、マレイン酸及び酸変性ベース樹脂を溶融混練する(溶融法)、熱分解した酸変性ベース樹脂にマレイン酸を反応させる(熱分解法)等の方法が使用できる。溶液法は、溶媒と副反応を起こしやすく有機溶媒が残留しやすく、また、熱分解法は、分子量分布が広くなりすぎるため、溶融法が好ましい。
ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)のグラフト量は、0.2〜2.8重量%の範囲内であることが好ましく、0.4〜2.5重量%の範囲内であることがより好ましい。ここで、グラフト量とは、ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)中に含まれるグラフト変性物(即ち、酸)の量の割合を意味する。
グラフト量が0.2重量%未満であると、後述する金属水酸化物(D)との反応が不十分となり、得られる成形品の引張り強度、耐熱性及び耐摩耗性等の機械的特性が十分に得られないおそれがある。一方、グラフト量が2.8重量%を超えると、ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)の分子量が小さいため、ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)自体の伸び、引張り強度等の機械的特性が低下するため、成形品の機械的特性が損なわれるおそれがある。また、ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)と金属水酸化物(D)との反応が過剰となり、発熱が激しくなり、樹脂劣化に繋がるおそれがある。この樹脂劣化は、得られる成形品の機械的特性を大きく損ね、分解物による外観不良やベタツキの原因にもなる。
ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)のMFRは、5〜40g/10分の範囲内にあることが好ましい。MFRが5g/10分未満では、混練の際に発熱が激しくなり、樹脂劣化につながるおそれがある。一方、MFRが40g/10分を超えると、機械的強度が低下するおそれがある。
本発明の組成物中におけるポリオレフィン系酸変性樹脂(C)の配合量は、前記成分(A)+(B)の合計100重量部に対して、20〜60重量部であることが必要であり、25〜55重量部であることが好ましい。ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)の配合量が20重量部未満では、ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)と後述する金属水酸化物(D)との反応が不十分となり、得られる成形品の引張り強度、耐熱性及び耐摩耗性等の機械的特性が十分に得られないおそれがある。一方、60重量部を超えると、ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)と金属水酸化物(D)との反応が過剰となり、本発明の組成物を溶融した際に粘度が極度に増加するおそれがある。高粘度の溶融樹脂を強混練すると、発熱が激しくなり、樹脂劣化に繋がるおそれがある。この樹脂劣化は、得られる成形品の機械的特性を大きく損ね、分解物による外観不良やベタツキの原因にもなる。
(D)成分:金属水酸化物
本発明の組成物における成分(D)は金属水酸化物である。金属水酸化物(D)は、本発明の組成物に難燃性を付与する機能を有する成分の一つである。
金属水酸化物(D)としては特に制限はないが、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムがコストと性能面、難燃効果から見て好ましい。特に、本発明の組成物は混練時の樹脂温度が高くなりやすいため、水酸化マグネシウムが好適である。
水酸化マグネシウムには、天然の水酸化マグネシウムを粉砕した天然品と、海水や天然の原石等を原料に化学的な処理を施して得られる合成品とがあるが、いずれを使用してもよい。要求される性能、若しくは価格を考慮して使い分ければよい。
合成品の水酸化マグネシウムの具体例としては、協和化学工業株式会社製のキスマシリーズ、アルベマール株式会社のマグニフィンシリーズ、ブロモケム・ファーイースト株式会社製のFR20シリーズ、神島化学工業株式会社製のマグシーズシリーズ等が挙げられる。天然物の水酸化マグネシウムの具体例としては、味の素ファインテクノ株式会社製のポリセーフシリーズ、株式会社ファイマテック製のジュンマグシリーズ等が挙げられる。
金属水酸化物(D)は、その平均粒径(レーザー回折法における累積分布50%の粒径)が0.5〜10μmの範囲内であることが好ましく、0.6〜5.0μmの範囲内であることがより好ましい。平均粒径が0.5μm未満では、混練機での良分散化が難しく、均一分散性に欠け、得られる成形品の物性低下や外観不良に繋がるおそれがある。一方、平均粒径が10μmを超えると、分散は容易であるが、得られる成形品の引張り伸びや衝撃特性等の機械的特性の低下及び外観不良を生じるおそれがある。
金属水酸化物(D)としては、表面処理を施したものでも、施していないものでも使用できる。但し、金属水酸化物(D)の未処理表面は活性が高いため、ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)(カルボン酸又はその無水物又はその誘導体による変性体)と反応し、増粘して樹脂劣化や分解、ゲルの発生や分散不良生じる場合がある。そのような場合には、金属水酸化物(D)の表面をステアリン酸等で適度に表面処理を施し、活性を制御すればよい。一方、表面未処理の金属水酸化物(D)やアミノシラン処理した金属水酸化物(D)を使用する場合には、低グラフト量(0.4〜1.0重量%)のポリオレフィン系酸変性樹脂(C)を用いることが望ましい。
本発明の組成物中における金属水酸化物(D)の配合量は、成分(A)+(B)の合計100重量部に対して、20〜65重量部であることが必要であり、30〜45重量部であることが好ましい。金属水酸化物(D)の配合量が20重量部未満では、ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)との反応が不十分となり、得られる成形品の引張り強度、難燃性、耐熱性及び耐摩耗性等の十分な機械的特性が得られないおそれがある。一方、65重量部を超えると、ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)との反応が過剰となり、本発明の組成物を得る際に溶融したときに粘度が極度に増加するおそれがある。高粘度の溶融樹脂を強混練すると、発熱が激しくなり、樹脂劣化に繋がるおそれがある。この樹脂劣化は、得られる成形品の機械的特性を大きく損ね、分解物による外観不良やベタツキの原因となるおそれがある。
(E)成分:赤燐
本発明の組成物における成分(E)は赤燐である。赤燐(E)は、得られる成形品に難燃性を付与する成分の一つである。
赤燐(E)の具体例としては、燐化学工業株式会社製のノーバルエクセルシリーズ、日本化学工業株式会社製のヒシガードシリーズ等が挙げられる。
赤燐(E)中の赤燐分は、92重量%以上であることが好ましい。赤燐分が92重量%未満であると、難燃レベルが低下するおそれがある。尚、赤燐(E)において、赤燐分を除く成分は、赤燐安定化のために必要な特殊樹脂等である。尚、赤燐(E)の配合量とは、赤燐分の量を意味し、赤燐安定化のための樹脂等は含まない。
赤燐(E)は、その平均粒径(レーザー回折法における累積分布50%の粒径)が、1〜20μmの範囲内であることが好ましく、5.0〜10.0μmの範囲内であることがより好ましい。平均粒径が1μm未満であると、混練機での分散が難しく、均一分散性に欠け、得られる成形品の物性低下や外観不良に繋がるおそれがある。一方、平均粒径が20μmを超えると、分散は容易であるが、得られる成形品の引張り伸びや衝撃特性等の機械的特性の低下に繋がるおそれがある。
本発明の組成物中における赤燐(E)の配合量は、成分(A)+(B)の合計100重量部に対して、3〜25重量部であることが必要であり、5〜20重量部であることが好ましい。赤燐(E)の配合量が3重量部未満であると、得られる成形品の難燃性が不十分となるおそれがある。一方、25重量部を超えると、得られる成形品の伸び、引張り強度等の機械的特性を低下させるおそれがあり、製品の外観も損なわれるおそれがある。
(F)成分:トリアジン系化合物
本発明の組成物における成分(F)はトリアジン系化合物である。トリアジン系化合物(F)は、熱分解により不燃性ガスを発生し、この不燃性ガスが成形品を包み込むことで難燃性をさらに向上させる。
トリアジン系化合物(F)は、トリアジン骨格を有する化合物であり、メラミン、メラミン誘導体であることが好ましい。メラミン誘導体としては、メラミンシアヌレート、ベンゾグアナミン、燐酸メラミン及びポリ燐酸メラミンからなる群から選択される1以上の化合物であることが好ましい。
また、トリアジン系化合物(F)は、分散性及び機械的特性の向上のため、脂肪酸等で表面処理されていることが好ましい。
トリアジン系化合物(F)の具体例としては、日産化学工業株式会社製のMC6000、MC4000及びMC610、ブロモケム・ファーイースト株式会社製のFR−6120、堺化学工業株式会社製のMC−5S、MC−5F等が挙げられる。
トリアジン系化合物(F)は、その平均粒径(レーザー回折法における累積分布50%の粒径)が0.5〜15μmの範囲内であることが好ましく、2.0〜6.0μmの範囲内であることがより好ましい。平均粒径が0.5μm未満であると、混練機での分散が難しく、均一分散性に欠け、得られる成形品の物性低下や外観不良の原因となるおそれがある。一方、平均粒径が15μmを超えると、耐摩耗性等の機械的特性の低下及び外観不良が生じるおそれがある。
本発明の組成物中におけるトリアジン系化合物(F)の配合量は、成分(A)+(B)の合計100重量部に対して、5〜25重量部であることが必要であり、8〜15重量部であることが好ましい。トリアジン系化合物(F)の配合量が5重量部未満であると、得られる成形品の難燃性が不十分となるおそれがある。一方、25重量部を超えると、得られる成形品の伸び、引張り強度等の機械的特性が低下するおそれがあり、製品の外観も損なわれるおそれがある。
その他の成分
本発明の組成物は、さらに必要に応じ、酸化防止剤、耐熱老化剤、滑剤や金属不活性剤(銅害防止剤)等の添加剤及び着色顔料等を添加することができる。
本発明の組成物は、上記成分を溶融混練して得られる。溶融混練の方法に特に制限はなく、公知の方法で行うことができる。溶融混練温度も樹脂に応じて適宜選択すればよい。通常、押出機を用い、180〜220℃程度で溶融混練すればよい。
II.成形品
本発明の成形品は、前記本発明の組成物を成形して得られる。具体的には、本発明の組成物を、カレンダー成形、押出成形(Tダイ成形)、プレス成形、射出成形、その他各種成形法により成形して得られる。
本発明の成形品は、厚さ100μmという薄いテープ状の成形品に、可燃性の粘着剤を塗布した状態でも、不燃性であるか、又は自消し、かつ、190℃雰囲気下でも著しい収縮や変形が起こらない。また、機械的特性(伸び、引張り強度)及び柔軟性にも優れる特徴を有している。
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
尚、各成分及び本発明の組成物の特性の測定、並びに本発明の組成物及び成形品の評価は、以下のようにして行った。
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS K7210(1999)に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定した。
(2)常温キシレン可溶成分量
ポリオレフィン系樹脂(A)の25℃におけるキシレン可溶成分量は、次のようにして求めた。まず、試料を5.0g精秤して1,000mLのナス型フラスコに入れ、さらにBHT(ジブチルヒドロキシトルエン、フェノール系酸化防止剤)1.0gを添加した後、回転子及びパラキシレン700mLを投入した。
次いで、ナス型フラスコに冷却器を取り付け、回転子を作動させながら、140℃のオイルバスでフラスコを120分間加熱して、試料をパラキシレンに溶解させた。
次に、1,000mLのビーカーにフラスコの内容物を注いだ後、ビーカー内の溶液をスターラーで攪拌しながら、室温(25℃)になるまで放冷(8時間以上)した後、析出物を金網で濾過して除去した。濾液を、さらに、濾紙で濾過した後、3,000mLのビーカーに収容されたメタノール2,000mL中に注ぎ、この液を、室温(25℃)下、スターラーで攪拌しながら、2時間以上放置した。得られた析出物を金網で濾取した後、5時間以上風乾し、さらに真空乾燥機で100℃で250分間乾燥し、25℃におけるキシレン可溶成分を回収した。
25℃におけるキシレン可溶成分の含有量(x)は、試料重量をAg、回収したキシレン可溶成分の重量をCgとすれば、
x(重量%)=C/A×100
で表される。
(3)ポリオレフィン系酸変性樹脂のグラフト量
ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)を約2g採取し、500mLの沸騰p−キシレンに完全に加熱溶解させた。この溶液を冷却後、1200mLのアセトン中に投入し、析出物を濾取し、乾燥してポリマー精製物を得た。このポリマー精製物から熱プレスにより厚さ20μmのフィルムを作成した。この作成したフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、グラフトされている酸の特有の吸収から、グラフトされている酸の量(重量)を定量し、ポリオレフィン系酸変性樹脂の全体重量に対するグラフトされている酸の重量の割合(重量%)を算出した。
尚、変性に用いた酸の特有の吸収は、無水マレイン酸であれば1780cm−1付近、メタクリル酸エステルであれば1730cm−1付近である。
(4)赤燐分
赤燐(E)中の赤燐分を、バナドモリブデン酸アンモニウム法を用いて測定した。
(5)垂直燃焼性
本発明の組成物からなる練込んだペレットを用い、キャスト成形により0.1mm厚のフィルムを作製した。このフィルムから幅13mm×長さ65mmの短冊形サンプルを切り出し、これを粘着剤無しの試験片とした。また、別に、この短冊形サンプルの片面に粘着剤(スプレーのり77、住友スリーエム社製)を100μmの厚さに塗布したものを粘着剤有りの試験片とした。これらの試験片を、吊るした状態で、下からローソク(ニホンローソク製:太さ11mm、長さ147mm)で5秒間接炎させ、不燃の場合は○、数秒で自消した場合は△、燃焼した場合は×と評価した。
(6)チャーの形状測定
本発明の組成物からなる練込んだペレットを用い、射出成形によって、短冊状の試験片(厚さ4mm×巾10mm×長さ80mm)を作製した。図3−1(a)、図3−2(a’)に示すように、この試験片を吊るした状態で、下からローソク(ニホンローソク社製:太さ11mm、長さ147mm)で10秒間接炎させ、接炎後にできたチャーの断面積を、図3−1(d)に示すようにノギスを使用して測定した。また、チャーの角度については、図3−1(c)に示すように、チャー部分の写真を撮影し、写真から分度器を用いて測定した。
(7)瞬間耐熱性
0.1mm厚のキャストフィルムから幅13mm×長さ65mmの短冊型フィルムを切り出し、これを評価サンプル(フィルム1)とした。この評価サンプル(フィルム1)を、図2(a)に示す高さ15mm×幅25mmのアルミ製U字型治具に設置し(図2(a)参照)、両末端をテープ等で固定した状態で、特定の温度に設定した恒温槽中(温度条件:150℃、170℃、190℃)に30分間入れた後、放冷(23℃、湿度(RH)50%)した。評価サンプルは、熱により中央部が縮んで狭くなり、図2(b)に示すような形状となっていた。
評価サンプルの耐熱試験後の収縮率(%)を次式から求めた。
収縮率(%)=(L−L)/L×100
:評価サンプルの耐熱試験前の幅(初期幅)
L:評価サンプルの耐熱試験後の最少幅
収縮率が40%未満の場合を合格と評価した。これにより耐熱性を評価した。
(8)引張り伸び率(%)
JIS K7113に準拠して測定した。尚、試験片は射出成形により作製したJIS2号 1/2縮小ダンベル試験片を用いた。試験条件は、試験速度25mm/min、チャック間40mmとした。
(9)引張り強度(引張り破断強度)(MPa)
JIS K7113に準拠して測定した。
(10)耐摩耗性試験(mg)
キャピログラフ(東洋精機製作所株式会社製)を用いて作製(成形温度:200℃、押出し速度:20mm/分、余熱時間:6分)したストランドをサンプル(Φ3mm,70mm)とした。ISO6722に準拠し、得られたサンプルを図4記載の装置を用いて、荷重(3N)をかけた状態で、ピアノ線を左右に動かし、サンプルの削れた量を測定した。測定条件は以下の通りである。
往行距離 :15mm
往行スピード:60rpm
往行回数 :600回
(11)フィルム外観の総合評価
後述する実施例1(2)の方法で得られたフィルムを用い、幅13cm×長さ20cm×厚さ0.1mmのフィルムあたり、ブツやピンホール(小さい孔)の有無を目視で、及び触った時の感触を以下の基準でそれぞれ評価し、フィルムを総合的に評価した結果を表1−1〜1−3に示した。
[感触評価]
つるつるしている:良好
ざらざらしている:悪い
[外観評価]
ピンホール無し:良好
ピンホール有り:悪い
[総合評価]
感触及び外観の両方が良好:特に良好
外観のみが良好 :良好
外観が悪い :悪い
実施例及び比較例で使用したマレイン化TPO−I及びIIは、以下の方法で製造した。
製造例1
マレイン化TPO−I(ポリオレフィン系酸変性樹脂(C))の製造
混練機(TEX44α、JSW製)のホッパーにTPO(R110M、株式会社プライムポリマー製、MFR=2.0g/10分、非晶部量(常温キシレン可溶成分量)=64.0重量%)を100重量部、無水マレイン酸(日本油脂株式会社製)を3.5重量部及び分解剤AD2(化薬アクゾ株式会社製)を1.5重量部投入し、サイドホッパーにブロックPP(J−783V、株式会社プライムポリマー製、MFR=12.0g/10分、非晶部量(常温キシレン可溶成分量)=11.0重量%)を45重量部投入して混練した。混練したTPOを冷却機で冷却し、ペレタイザーにてペレット化し、マレイン化TPO−Iを得た。尚、混練機の運転条件は、以下の通りである。
スクリュー回転数:450rpm
入口設定温度:40℃
出口設定温度:200℃
ホッパー吐出量:120kg/h
サイドホッパー吐出量:50kg/h
製造例2
マレイン化TPO−II(ポリオレフィン系酸変性樹脂(C))の製造
無水マレイン酸を1.48重量部、分解剤AD2を0.125重量部、ホッパー吐出量を112kg/h及びサイドホッパー吐出量を48kg/hとした他は、製造例1と同様にしてマレイン化TPO−IIを得た。
実施例及び比較例で使用した成分は以下の通りである。
成分(A):
ホモポリプロピレン:プライムポリプロY−400GP、プライムポリマー製、非晶部量(常温キシレン可溶成分量):1.2重量%、MFR=4.5g/10分
ブロックポリプロピレン:プライムポリプロJ−466HP、プライムポリマー製、非晶部量(常温キシレン可溶成分量):17重量%、MFR=3.0g/10分
TPO:プライムTPO R110MP、プライムポリマー製、非晶部量(常温キシレン可溶成分量):75.0重量%、MFR=2.5g/10分(プライムTPO−I)
TPO:プライムTPO M142E、プライムポリマー製、非晶部量(常温キシレン可溶成分量):65.0重量%、MFR=10.0g/10分(プライムTPO−II)
TPO:プライムTPO T310V、プライムポリマー製、非晶部量(常温キシレン可溶成分量):50.3重量%、MFR=1.0g/10分(プライムTPO−III)
ランダムポリプロピレン:プライムポリプロF−744NP、プライムポリマー製、非晶部量(常温キシレン可溶成分量):6.0重量%、MFR=7.0g/10分
エチレン−オクテン共重合体(EOR):EG8180、ダウケミカル社製、非晶部量(常温キシレン可溶成分量):98.0重量%、MFR=1.1g/10分
成分(B):
(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体:エバフレックスA710、三井デュポンポリケミカル製、エチルアクリレート含量:15重量%、MFR=0.5g/10分
(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体:エバフレックスV5274、三井デュポンポリケミカル製、酢酸ビニル含量:17重量%、MFR=0.8g/10分
成分(C):
マレイン化TPO−I:製造例1で製造、MFR=28.0g/10分、グラフト量=1.4〜2.5重量%
マレイン化TPO−II:製造例2で製造、MFR=12.4g/10分、グラフト量=0.4〜1.0重量%
成分(D):
水酸化マグネシウム−I:キスマ5A、協和化学株式会社製、ステアリン酸で表面処理、平均粒径:0.6〜1.0μm
水酸化マグネシウム−II:キスマ5P、協和化学株式会社製、アミノシランで表面処理、平均粒径:0.6〜1.0μm
炭酸カルシウム
商品名:ホワイトンP−30、白石工業(株)製
成分(E):
赤燐−I:ノーバエクセル140F、燐化学工業株式会社製、平均粒径:7μm、赤燐分:92%以上
赤燐−II:ノーバエクセル140、燐化学工業株式会社製、平均粒径:30μm、赤燐分:92%以上
成分(F):
メラミンシアヌレート−I:ブロモケム・ファーイースト(株)製、FR−6120、平均粒径:4μm
メラミンシアヌレート−II:日産化学(株)製、MC−610、平均粒径:4μm、脂肪酸で表面処理されたもの
実施例1
(1)樹脂組成物の調製
ホモポリプロピレン(プライムポリマー製、Y−400GP)50重量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル製、エバフレックスV5274)40重量部、エチレン−エチルアクリレート共重合体(三井・デュポンポリケミカル製、エバフレックスA710)10重量部の計100重量部に対し、赤燐−I(燐化学工業製、ノーバエクセル140F)14重量部、メラミンシアヌレート−I(ブロモケム・ファーイースト(株)製、FR−6120)10重量部及び水酸化マグネシウム−I(協和化学製、キスマ5A)45重量部となるように配合し、これらをSuper−Floater:SFC−50(KAWATA MFG CO.LTD製)にて2分間ドライブレンドした。
その後、混合物を、異方向回転二軸押出機(NCM60、株式会社神戸製鋼所製)を用いて混練し、ウォーターバスで冷却し、ペレタイザーにてペレット化した。尚、二軸押出機の運転条件は、スクリュー回転数を600rpm、混練温度を200℃、吐出量を60kg/Hとした。得られたペレットを熱風乾燥器にて、90℃で1日間乾燥し、樹脂組成物を得た。
(2)フィルム成形
上記(1)で得られた樹脂組成物を厚さ100μmのフィルム状に成形した。具体的には、20mmΦキャスト成形機(塚田樹機製作所製)にて設定温度を、ホッパー下部(C1)を200℃、シリンダー中央部(C2)を210℃、シリンダー末端部(C3)を220℃、ダイス(D)を230℃にし、スクリュー回転数を1100rpm、冷却ロール回転数を4rpm(冷却温度:30℃)、引取りロール及び巻取りロール回転数を4rpmにして、フィルムの厚みが100μmとなるようにフィルムを形成した。
(3)試験片の作製
上記(2)で得た上記フィルムを、エアー式試料裁断機(株式会社ダンベル製)を使用して、幅13mm、縦65mm、厚さ0.1mmに打ち抜いた短冊状のフィルムとし、これを試験片として用いた。
得られた試験片について、上記各物性を評価した。結果を表1−1に示す。
実施例2〜15及び比較例1〜20
表1−1〜1−3に示す組成とした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物、フィルム及び試験片を製造し、各物性を評価した。結果を表1−1〜1−3に示す。
Figure 2009263457
Figure 2009263457
Figure 2009263457
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、自動車搭載用テープ、粘着テープ、シート材、部品、工業用シート、シート材等の薄物品、家電材及び建材用途として好適である。
本発明の樹脂組成物は、高耐熱性や高難燃性を要する自動車用途(電装材分野)や建材用途、特に薄物(フィルムやシート、粘着テープ等)の成形品の製造材料として好適である。
図1はポリオレフィン系酸変性樹脂(C)、金属水酸化物(D)及びポリオレフィン系樹脂(A)が擬似巨大分岐構造体を形成している本発明のポリオレフィン系樹脂組成物の概念図である。 図2は、得られる成形体の瞬間耐熱性を評価するために用いたアルミ製冶具及び評価方法を説明するための模式図である。 図3−1は、垂直燃焼性試験方法及びチャーの角度及びチャーの断面積測定方法並びに不燃性ガスの状態を説明するための模式図である。 図3−2は、短冊状の試験片を吊した状態で下からローソクで10秒間接炎させたときの燃焼状態と燃焼残渣(チャー)の模式図である。 図4は、耐摩耗性試験に用いた装置及び試験方法を示す模式図である。
符号の説明
1 フィルム(試験片)
2 アルミ製冶具
3 固定用テープ
4 サンプル
5 ピアノ線
フィルム(試験片)の初期幅
L 加熱後のフィルム(試験片)の最少幅
10 ポリオレフィン系酸変性樹脂(C)
12 酸基
20 金属水酸化物(D)
30 ポリオレフィン系樹脂(A)

Claims (15)

  1. (A)ポリオレフィン系樹脂30〜70重量部、及び
    (B)(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体5〜20重量部と(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体25〜50重量部との合計量30〜70重量部と、
    前記成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、
    (C)ポリオレフィン系酸変性樹脂20〜60重量部
    (D)金属水酸化物20〜65重量部
    (E)赤燐3〜25重量部
    (F)トリアジン系化合物5〜25重量部
    を溶融混練してなる樹脂組成物。
  2. 前記(A)ポリオレフィン系樹脂の割合が40〜60重量部の範囲内であり、前記(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体と前記(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体の合計量の割合が60〜40重量部の範囲内である請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂の割合が、前記成分(A)及び(B)の合計100重量部に対して、25〜55重量部の範囲内である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記(A)ポリオレフィン系樹脂の常温キシレン可溶成分量が、30〜90重量%の範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記(A)ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレートが、0.5〜50g/10分の範囲内である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 前記(B−1)エチレン−エチルアクリレート共重合体のメルトフローレートが、0.05〜50g/10分の範囲内であり、エチレン−エチルアクリレート共重合体中のエチルアクリレート含量が、5〜75重量%の範囲内である請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. 前記(B−2)エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレートが、0.05〜50g/10分の範囲内であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含量が、4〜50重量%の範囲内である請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. 前記(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂が、不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸及びその無水物で変性されたポリオレフィン系樹脂である請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 前記(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂のベースとなる樹脂が、ポリプロピレン系樹脂である請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10. 前記(C)ポリオレフィン系酸変性樹脂のグラフト量が、0.2〜2.8重量%の範囲内である請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  11. 前記(D)金属水酸化物が、平均粒径0.5〜10μmの範囲内である粒子である請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  12. 前記(E)赤燐が、平均粒径が1.0〜20μmの粒子である請求項1〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  13. 前記(E)赤燐中の赤燐分が、92重量%以上である請求項12に記載の樹脂組成物。
  14. 前記(F)トリアジン系化合物が、平均粒径0.5〜15μmの範囲内の粒子である請求項1〜13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  15. 請求項1〜14のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形してなる成形品。
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