JP3765651B2 - 難燃性壁装材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性壁装材に関し、更に詳しくは、特に耐NOx 性に優れたオレフィン系難燃性壁装材に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン・α−オレフィン共重合体に難燃性を付与する目的で水酸化マグネシウム等の金属水和物を配合することは公知であり、種々の提案がなされている(特開昭61−254647号公報、特開昭61−255950号公報等)。
しかし、エチレン・α−オレフィン共重合体に、表面未処理の水酸化マグネシウムを配合した樹脂組成物の成形品では、着色し易く、NOx ガス雰囲気下での変色が顕著であるという問題がある。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体に、該エチレン・α−オレフィン共重合体との相溶性、分散性を向上させる観点から高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、シランカップリング剤等を用いて表面処理された水酸化マグネシウムを配合した樹脂組成物の成形品では、初期における前記着色又は変色は問題にならないものの、NOx ガス雰囲気下あるいは蛍光灯下で放置すると着色又は変色が生じてしまい、長期保管が問題となる。
【0003】
特開平7−90134号公報においては、前記着色又は変色の問題を解決するため、エチレン・α−オレフィン共重合体に、表面処理された水酸化マグネシウムと、脂肪酸の金属塩とを併用する旨が記載されている。
しかし、この場合でも、NOx ガス雰囲気下での着色又は変色は依然として防止することができない。
前記水酸化マグネシウムを含む系では、該系に添加されたフェノール系酸化防止剤と、NOx ガスや紫外線等とが複合的に作用し合い、フェノール系酸化防止剤がキノン系化合物に変化すること等により、着色又は変色が生じると考えられるが、この着色又は変色を効果的に防止し得る有効な技術は依然として提供されていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、耐NOx 性、収縮性及び難燃性のバランスが良好で、特に耐NOx 性に優れた難燃性壁装材を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、前記着色又は変色には、水酸化マグネシウムの種類、酸化防止剤の種類等が大きく影響しており、表面処理された水酸化マグネシウムとリン系酸化防止剤を含む特定の酸化防止剤とを併用して初めて前記着色又は変色の問題を解消し得るという知見を得た。
【0006】
本発明は前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 密度が0.89g/cm3以下であり、かつメルトインデックスが0.5〜10g/10分であり、メタロセン化合物を中心とする幾何拘束触媒を用いた溶液重合法で製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体100重量%からなるオレフィン系樹脂40〜60重量%と、表面処理された水酸化マグネシウム40〜60重量%とを含む組成物100重量部に対し、分子量が500以上であるリン系酸化防止剤及び分子量が500以上であるフェノール系酸化防止剤合計量で0.1〜0.5重量部含有する難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする難燃性壁装材である。
<2> 前記水酸化マグネシウムの表面処理が、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、リン酸エステル、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミネートカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を用いて行われている前記<1>に記載の難燃性壁装材である。
<3> 水酸化マグネシウムにおける、BET比表面積が1〜15m2 /gであり、かつ平均2次粒子径が0.3〜4.0μmである前記<1>又は<2>に記載の難燃性壁装材である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の難燃性壁装材を構成する難燃性樹脂組成物は、オレフィン系樹脂と、水酸化マグネシウムと、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤とを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0008】
−オレフィン系樹脂−
前記オレフィン系樹脂は、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分としてなり、必要に応じて更に他のオレフィン系樹脂を含有してなる。
前記他のオレフィン系樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。
【0009】
前記オレフィン系樹脂における、前記エチレン・α−オレフィン共重合体の含有量としては、80〜100重量%が好ましく、90〜100重量%がより好ましく、100重量%が特に好ましい。
また、本発明においては、前記含有量として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0010】
前記含有量が80重量%未満であると、成形品の収縮が大きくなり、風合いも硬くなることがあり、好ましくない。
【0011】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体の密度としては、0.89g/cm3以下であることが必要とされ、0.85〜0.89g/cm3が好ましく、0.86〜0.88g/cm3が特に好ましい。
また、本発明においては、前記密度として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該密度の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該密度の値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0012】
前記密度が0.89g/cm3を越えると、成形品の触感が十分でないことがあり、成形品が収縮することがあり、好ましくない。一方、前記密度が0.89g/cm3以下乃至前記好ましい範囲内にあると、前記欠点がない上、広い温度範囲で加工が可能である点で好ましい。
【0013】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体のメルトインデックス(以下「MI」と略称することがある。)としては、0.5〜10g/10分であることが必要とされ、1.0〜7.0g/10分が好ましく、2.0〜5.0g/10分が特に好ましい。
また、本発明においては、前記メルトインデックスとして、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該メルトインデックスの値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該メルトインデックスの値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0014】
前記メルトインデックスが0.5g/10分未満であると、加工性が悪くなる上、成形品の外観が悪くなるので、高温で加工する必要を生じ、成形品の製造が困難になり、10g/10分を越えると、得られる成形品の強度が低下したり、また、加工性、特に粘着性・ネックインが大きくなることがある。一方、前記メルトインデックスが前記好ましい範囲内にあると、前記欠点がない上、加工性を良好にすることができる点で好ましい。
【0015】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体のDSCによる最高融解ピーク温度:Tm(℃)としては、60〜100℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
また、本発明においては、前記DSCによる最高融解ピーク温度として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該最高融解ピーク温度の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該最高融解ピーク温度の値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0016】
前記DSCによる最高融解ピーク温度が100℃を越えると、加工が困難になる。一方、前記DSCによる最高融解ピーク温度が前記数値範囲内にあると、前記欠点がない上、低温で加工できるので、省エネルギーである点で好ましい。
【0017】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体は、メタロセン化合物を中心とするシングルサイト触媒(SSC触媒)の一種である幾何拘束触媒(CGC触媒)、を用いた溶液重合法により好適に得られる。
前記幾何拘束触媒を用いた場合、従来におけるチーグラー触媒等を用いた場合に比べて、コモノマーの量が多くても分子鎖構造が乱れることがなく、均一にコモノマーを多量に導入することができ、また分子量分布を狭い範囲にすることができるので、その結果、溶融粘度のズリ速度の依存性が大きく、メルトテンションが高く、優れた成形性を有する共重合体が得られる点で有利である。
【0018】
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体の市販品としては、例えば、デュポン・ダウエラストマー(株)製の「エンゲージ(登録商標)」、ダウ・ケミカル日本(株)製の「アフィニティー(登録商標)」、三井石油化学工業(株)製の「タフマ−H(登録商標)」等のエチレン・オクテン−1共重合体が好適に挙げられる。
【0019】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体の難燃性樹脂組成物における含有量は、40〜60重量%である。
また、本発明においては、前記含有量として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0020】
前記含有量が、40重量%未満であると、成形性・機械的強度が低下することがあり、60重量%を越えると、難燃性が不十分になることがある。
【0021】
−水酸化マグネシウム−
前記水酸化マグネシウムは、表面処理されていることが必要である。本発明において、表面処理された水酸化マグネシウムとしては、表面未処理の水酸化マグネシウムに適宜表面処理を行ったものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。該市販品としては、例えば、協和化学工業(株)製の「キスマ5A」、「キスマ5B」、「キスマ5J」、「キスマ5E」などが好適に挙げられる。
【0022】
前記表面処理は、公知の表面処理剤を用いて行われる。前記表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、リン酸エステル、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤などが好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、これらの中でも、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、エルカ酸、ベヘン酸等の高級脂肪酸、及びこれらのナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を用いて行われている表面処理が特に好ましい。前記表面処理剤の少なくとも1種を用いて表面処理した水酸化マグネシウムは、前記エチレン・α−オレフィン共重合体との相溶性が良好になり、難燃性樹脂組成物中での分散性が良好である点で好ましい。
【0023】
前記水酸化マグネシウムに表面処理を行う際に用いる前記表面処理剤の量としては、該水酸化マグネシウム100重量部に対して、0.1〜6重量部が好ましく、0.5〜6重量部がより好ましく、1〜6重量部が特に好ましい。なお、前記表面処理剤の処理量が多くなる程、本発明においては一般に、良好な効果が得られる傾向が強くなる。
前記表面処理の時間としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、1〜60分程度が好ましい。なお、前記表面処理の時間が長くなる程、本発明においては一般に、良好な効果が得られる傾向が強くなる。
【0024】
本発明の難燃性樹脂組成物において、前記表面処理された水酸化マグネシウムが、以下の特性を有していると、該難燃性樹脂組成物を成形して得た成形品の機械的強度や表面外観を好適に維持するのに有利である。即ち、
前記前記表面処理された水酸化マグネシウムは、そのBET比表面積が1〜15m2 /gであるのが好ましく、4〜12m2 /gであるのがより好ましい。
前記前記表面処理された水酸化マグネシウムは、その平均2次粒子径が0.3〜4.0μmであるのが好ましく、0.5〜1.5μmであるのがより好ましい。なお、前記平均2次粒子径は、例えば、マイクロトラック法により測定することができる。
【0025】
本発明の難燃性樹脂組成物における前記表面処理された水酸化マグネシウムの含有量は、60〜40重量%である。
また、本発明においては、前記含有量として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0026】
前記含有量が、40重量%未満であると、難燃性が不十分であることがあり、60重量%を越えると、成形性が悪く、成形品の機械的強度や表面外観が悪くなることがある。
【0027】
−リン系酸化防止剤を含む酸化防止剤−
前記リン系酸化防止剤を含む酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤を必須成分として含み、更に必要に応じてフェノール系酸化防止剤を含む。前記フェノール系酸化防止剤を前記リン系酸化防止剤に併用すると、両者の相乗効果により、耐熱安定性が向上する点で好ましい。
【0028】
前記フェノール系酸化防止剤は、NOx ガス雰囲気下で着色又は変色が少ない点で、多価フェノール系であるのが好ましく、かつ、その分子量が500以上であり、1000以上好ましい。
本発明においては、前記フェノール系酸化防止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、適宜調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記フェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「Irganox1010」、「Irganox1330」、住友化学工業(株)製の「スミライザーGA−80」などが好適に挙げられる。
【0029】
前記リン系酸化防止剤は、その分子量が500以上であり、1000以上であるのが好ましい。
本発明においては、前記リン系酸化防止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、適宜調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記リン系酸化防止剤の市販品としては、例えば、サンド(株)製の「Sandostab P−EPQ」、旭電化(株)製の「アデカスタブ3010」、「アデカスタブ PEP−36」などが好適に挙げられる。
【0030】
前記リン系酸化防止剤を含む酸化防止剤の前記難燃性樹脂組成物における含有量としては、オレフィン系樹脂を20〜80重量%及び表面処理された水酸化マグネシウムを80〜20重量%含む組成物100重量部に対し、0.1〜0.5重量部である
本発明においては、前記含有量として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を上限とする数値範囲も好ましい。
前記含有量が、0.1重量部未満であると耐NOx 性に効果が少なく、着色又は変色が生じることがあり、0.5重量部を越えると成形品の表面にブルーム・ブリードし、商品価値が著しく低下することがある。
【0031】
前記リン系酸化防止剤を含む酸化防止剤においては、前記リン系酸化防止剤100重量部に対して前記フェノール系酸化防止剤を、100重量部以下(多くとも100重量部)含むのが好ましく、80重量部以下(多くとも80重量部)含むのがより好ましく、50重量部以下(多くとも50重量部)含むのが特に好ましい。
本発明においては、前記リン系酸化防止剤100重量部に対する前記フェノール系酸化防止剤の含有量として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の実施例で採用したいずれかの該含有量の値を上限とする数値範囲も好ましい。
前記リン系酸化防止剤100重量部に対する前記フェノール系酸化防止剤の含有量が100重量部を越えると、NOx ガスによる変色が大きくなり好ましくない。
【0032】
−その他の成分−
本発明におけるその他の成分としては、本発明の目的を害しない限りにおいて特に制限はなく、難燃性樹脂組成物の用途等に応じて適宜選択することができ、例えば、中和剤、分散剤、光安定剤、耐候性改良剤、充填剤、帯電防止剤、顔料、難燃剤、発泡剤、加工性改良剤等の公知の各種添加剤あるいは補助資材が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、これらの中でも光安定剤、中和剤、顔料(特に酸化チタン)等は耐NOx 性に影響することがあり、十分に配慮して選択することが好ましい。
【0033】
前記顔料としては、例えば、酸化チタン以外にも、フタロシアニン系顔料、カーボンブラック等が好適に挙げられる。前記難燃剤としては、例えば、ポリリン酸カルバメート系化合物、シリコーン系化合物、金属酸化物等が好適に挙げられる。前記加工性改良剤としては、例えば、金属石鹸、鉱物油系軟化剤等が好適に挙げられる。前記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)等のアゾ系化合物;P,P’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)等のスルホニルヒドラジド系化合物;ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ系化合物等の化学発泡剤が挙げられ、中でも加工中の安定性の点でアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。
【0035】
本発明における難燃性樹脂組成物は、例えば、前記各成分をそれ自体公知の混合装置、混練装置等を用いて混合すること等により得ることができる。
前記混合装置、混練装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、バンバリーミキサー、押出機などが挙げられる。
前記混合乃至混練の条件としては、特に制限はなく、難燃性樹脂組成物の組成等に応じて適宜決定することができるが、一般に、その時間としては1〜20分程度であり、その温度としては100〜250℃程度である。
【0036】
本発明における難燃性樹脂組成物は、例えば、ロール加工、押出加工等に好適であり、特に耐NOx 性に優れるため、フィルム、シート、壁装材等の製品の材料として極めて有用である。
【0037】
また、本発明における難燃性樹脂組成物は、例えば、以下のような公知の成形装置を用いて成形することができる。前記成形装置としては、例えば、カレンダー成形機、押出成形機、熱プレス成形機等が挙げられる。
本発明の難燃性樹脂組成物を成形する際の条件としては、特に制限はなく、その組成、成形方法等に応じて適宜選択することができるが、通常、その温度としては100〜200℃程度であり、その時間としては1〜10分程度である。
【0039】
(難燃性壁装材)
本発明の難燃性壁装材は、前記本発明の難燃性樹脂組成物を成形してなる。
前記成形は、上述の成形装置を用いて行うことができ、前記成形の条件は上述の条件を好適に採用することができる。前記成形後に、プライマー処理、グラビア印刷等の印刷及び/又は絞押加工などを適宜施してもよい。
また、本発明の難燃性壁装材は、前記本発明の難燃性樹脂組成物を成形したシートを、適宜選択した公知の難燃性基材(例えば、水酸化アルミニウム紙等)に積層して難燃性壁装材としたものであってもよい。
【0040】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1〜10及び比較例1〜8
表1に示す各成分を表1に示す割合で配合し、バンバリーミキサーを用いて160℃で10分間混練し、造粒することにより難燃性樹脂組成物のペレットを得た後、この難燃性樹脂組成物のペレットを用い、120℃のロール温度で5分間混練した後、カレンダー成形(圧延)して厚みが0.15mmのシートを得た。このシートを水酸化アルミニウム紙に積層し、難燃性壁装材とした。
【0042】
得られた各難燃性壁装材について、ロール加工性、耐NO2 性、収縮性、及び難燃性の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0043】
<評価>
−ロール加工性−
前記各難燃性樹脂組成物を6インチのテストロールを用いて混練し、該テストロールからの各シートの取り出し易さ(粘着性)とその表面の外観(平滑性)とを目視にて、以下の基準に従って評価した。なお、△以上であれば実用上問題ない。
(粘着性)
◎・・・粘着せず、取り出し易い。
○・・・少し粘着するが、取り出し易い。
△・・・やや粘着するが、取り出すのに支障はない。
×・・・粘着し、取り出し不能である。
(平滑性)
◎・・・平滑性に極めて優れる。
○・・・平滑性は良好である。
△・・・平滑性の程度はやや劣るが、外観上支障はない。
×・・・極めて悪く、実用上問題がある。
【0044】
−耐NO2 性−
内容積6000cm3 のデシケーター中に各難燃性壁装材の試験片(40×70mm)をセットする。更に、このデシケーター中で、亜硝酸ナトリウム水溶液に硫酸を反応させることにより、濃度約400ppmのNO2 ガスを発生させた。この状態のままで20℃、20時間放置した後、前記試験片をデシケーターから取り出し、変色の有無を評価した。
該評価は、デシケーターに入れる前の試験片と、NO2 ガス雰囲気中に放置し、デシケーターから取り出した試験片とについて、スガ試験機(株)製、カラーコンピューターSM−4を用いて測色し、イエローインデックス(Y.I.)として評価した。
【0045】
−収縮性(カール)−
テストロールで作製した各シートと、接着剤を塗布した水酸化アルミニウム紙とをヒートシールして積層体とした後、この積層体を室温で放置し、収縮の度合い(カール)を目視にて評価した。なお、評価の基準は以下の通りであり、△以上であれば問題ない。
○・・・ほどんどカールしない。
△・・・ややカールするが、実用上は問題ない。
×・・・カールが大きく、好ましくない。
【0046】
−難燃性−
発熱量(Tdθ)及び発煙量(CA)は、JIS A 1321建築物の内装材料及び工法の難燃性試験方法に従って測定を行った。
なお、「Tdθ」は、温度時間面積(℃分)を意味し、「CA」は、発煙係数を意味する。
【0047】
【表1】
Figure 0003765651
【0048】
表1において、水酸化マグネシウムにつき、「A」は、BET比表面積=5.5m2 /g、平均2次粒子径=0.9μmであり、「B」は、BET比表面積=4.9m2 /g、平均2次粒子径=1.0μmで、その100重量部に対して表面処理剤(ステアリン酸)3重量部による表面処理済のものであり、「C」は、BET比表面積=10m2 /g、平均2次粒子径=0.6μmで、その100重量部に対して表面処理剤(オレイン酸)3重量部による表面処理済のものであり、「D」は、BET比表面積=9.1m2 /g、平均2次粒子径=0.6μmである。なお、「D」は、「C」に対し、表面処理剤の量を1.5倍にしたものである。また、「E」は、BET比表面積=20m2 /g、平均2次粒子径=0.3μmで、その100重量部に対して表面処理剤(ステアリン酸)3重量部による表面処理済のものである。
【0049】
酸化防止剤に関し、フェノール系酸化防止剤は、住友化学工業(株)製の「スミライザーBHT」(分子量=220)、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「Irganox1076」(分子量=531)、「Irganox1010」(多価フェノール系、分子量=1178)であり、リン系酸化防止剤は、サンド(株)製「Sandstab P−EPQ」(分子量=1035)、旭電化(株)製の「アデカスタブ3010」(分子量=503)である。
【0050】
なお、ここで用いたオレフィン樹脂は、メタロセン化合物を中心とするシングルサイト触媒(SSC触媒)の一種である幾何拘束触媒(CGC触媒)を用いた溶液重合法で製造された、エチレン−オクテン−1共重合体(MI=5.0g/10分、密度=0.87g/cm3 )及びエチレン−オクテン−1共重合体(MI=18g/10分、密度=0.88g/cm3 )、従来の製法で製造されたエチレン−プロピレン共重合体(MI=4.5g/10分、密度=0.87g/cm3 )、並びに、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(MI=3.5g/10分、密度=0.94g/cm3 )である。
【0051】
表1の結果から以下のことが明らかである。即ち、水酸化マグネシウムを用いない比較例1では、ロール加工性、難燃性が不十分である。また、表面未処理の水酸化マグネシウムを用いた比較例2では、ロール加工性、耐NO2 性が極めて悪い。また、エチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とするオレフィン系樹脂のメルトインデックスが0.5〜10g/10分の範囲外である比較例3では、ロール加工性(粘着性)が不十分である。
一方、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体からなるオレフィン系樹脂と、表面処理された水酸化マグネシウムと、リン系酸化防止剤、及びフェノール系酸化防止剤の酸化防止剤とを用いた実施例1〜8では、以上のような問題がなく、ロール加工性、耐NO2 性、収縮性及び難燃性のバランスが良好で、特に耐NO2 性及び難燃性が極めて良好であることが明らかである。
【0052】
【発明の効果】
本発明によると、前記従来における問題を解決することができる。また、ロール加工性、耐NO2 性、収縮性及び難燃性のバランスが良好で、特に耐NOx 性に優れた難燃性壁装材を提供することができる。

Claims (3)

  1. 密度が0.89g/cm3以下であり、かつメルトインデックスが0.5〜10g/10分であり、メタロセン化合物を含有する幾何拘束触媒を用いた溶液重合法で製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体100重量%からなるオレフィン系樹脂40〜60重量%と、表面処理された水酸化マグネシウム40〜60重量%とを含む組成物100重量部に対し、分子量が500以上であるリン系酸化防止剤及び分子量が500以上であるフェノール系酸化防止剤を合計量で0.1〜0.5重量部含有する難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする難燃性壁装材。
  2. 前記水酸化マグネシウムの表面処理が、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、リン酸エステル、アニオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミネートカップリング剤から選ばれる少なくとも1種を用いて行われている請求項1に記載の難燃性壁装材。
  3. 水酸化マグネシウムにおける、BET比表面積が1〜15m2 /gであり、かつ平均2次粒子径が0.3〜4.0μmである請求項1又は請求項2に記載の難燃性壁装材。
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