JP2005014775A - 車両用走行支援装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車載の演算装置でのリアルタイムでの経路演算に適したアルゴリズムにより経路計算を行う車両用走行支援装置を提供する。
【解決手段】現在の車両方向と、目標位置での車両方向を基にして車両方向を一致させる基本経路Pを算出し、この基本経路に必要ならば直線経路を付与することで現在位置から目標位置までの経路Pを算出する。
【選択図】 図6

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、目標位置への走行経路を求めて、この経路に沿って車両が走行するよう、その走行を支援する車両用走行支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動操舵や操舵指示を用いて、車両を目標位置へと誘導する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。目標位置へ車両を的確に誘導するとともに、その目標位置における車両の方位角を目標方位角に合致させるため、3つの基本となる軌道パターンを用意し、位置、方位角、曲率の誤差を補償するために3次方程式を解き、求めた解を用いて、これらの軌道パターンを相似変換することで目標軌道を設定するものである。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−297935号公報(段落0054〜0068、図7)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この手法では3次方程式を解く必要があり、複素数を含む演算を行うことになるため、演算負荷が大きくなり、リアルタイムで計算を行うのは、既存の車載の演算装置では困難である。演算能力の高い演算装置を利用することはコストアップにつながり、好ましくない。
【0005】
そこで本発明は、車載の演算装置でのリアルタイムでの経路演算に適したアルゴリズムにより経路計算を行う車両用走行支援装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両用走行支援装置は、目標位置へ至る経路を算出して、該経路に沿って車両を誘導する車両用走行支援装置において、目標位置における車両の向きに対する現在の車両の向きである偏向角の初期位置における角度である初期偏向角を求める偏向角検出手段と、走行距離に応じて所定の条件で操舵を行うことにより、初期偏向角から偏向角0の状態へと移行する基本経路を走行距離と操舵角または旋回曲率の対応として求める基本経路算出手段と、この基本経路を基にして、必要ならその前後の少なくとも一方に直線経路を付与することで初期位置から目標位置へと至る目標経路を算出する目標経路算出手段と、を備えているものである。
【0007】
現在の車両の向きから所定の条件で操舵を行って目標位置における車両の向きと一致させる基本経路は、方位角のみに着目しているため、比較的簡単な演算で経路を求めることができる。こうして設定した経路に直線経路を付与して目標経路を算出するので、経路算出が簡単であり、また、精度よく経路を算出することができる。
【0008】
あるいは本発明に係る車両用走行支援装置は、目標位置における車両の向きに対する現在の車両の向きである偏向角の初期位置における角度である初期偏向角を求める偏向角検出手段と、走行距離に応じて所定の条件で操舵を行うことにより、初期偏向角から所定の偏向角へと移行する第1の基本経路を走行距離と操舵角または旋回曲率の対応として求める第1基本経路算出手段と、走行距離に応じて所定の条件で操舵を行うことにより、この所定の偏向角から偏向角0の状態へと移行する第2の基本経路を走行距離と操舵角または旋回曲率の対応として求める第2基本経路算出手段と、これら第1基本経路と第2基本経路を基にして、必要なら第1基本経路と第2基本経路の中間またはそれらの前後の少なくともいずれか1か所に直線経路を付与することで初期位置から目標位置へと至る目標経路を算出する目標経路算出手段と、を備えているものである。
【0009】
この手法によれば、縦列駐車のように経路の途中まで偏向角を増大させ、その後偏向角を減少させて目標位置での車両方向に一致させる経路を設定する必要がある場合でも、同様に方位角変化のみに着目して基本経路(この場合は、第1基本経路と第2基本経路の2つの基本経路を有する。)を設定し、この前後または中間に直線経路を付与することで目標経路を算出するので、経路算出が簡単であり、また、精度よく経路を算出することができる。
【0010】
これら各基本経路は、舵角を一方向に増大させる段階と、増大後に所定舵角で保持する段階と、舵角を中立方向に戻す段階から構成される操舵を組み合わせて構成されていることが好ましい。舵角増大、減少段階での走行距離に対する旋回曲率変化量を一定とすると、走行距離に対する旋回曲率変化の図形は台形として表される。旋回曲率変化量の走行距離に対する積分値、つまり、この図形の面積が偏向角の変化量に合致するから、偏向角を所定量偏向するのに必要な基本経路の演算式が簡略化できる。
【0011】
設定した目標経路を走行するよう自動的に操舵を行う自動操舵手段をさらに備えていると、経路に沿った誘導を確実に行うことができ、好ましい。
【0012】
この目標経路の設定は、初期位置における操舵角が略0の場合に設定を行うことが好ましい。操舵角が略0の場合に設定を行うことで、経路演算における方位角以外の影響を排除することができ、演算の精度が向上し、目標位置への誘導精度が向上する。
【0013】
目標経路算出手段は、各基本経路を相似拡大し、目標経路の算出を行うことが好ましい。基本経路を相似拡大すると、経路全体で変更される偏向角は元の基本経路と同一となるが、操舵速度を遅くすることができるため、自動操舵装置への負荷を低減することができ、また、操舵遅れの発生も抑制されるので、目標位置への誘導精度がさらに向上する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0015】
以下、本発明に係る走行支援装置として駐車支援装置を例に説明する。図1は、本発明の実施形態である駐車支援装置100のブロック構成図である。この駐車支援装置100は、自動操舵装置20を備えており、制御装置である駐車支援ECU1により制御される。駐車支援ECU1は、CPU、ROM、RAM、入力信号回路、出力信号回路、電源回路などにより構成され、後述する後方カメラ32で取得された画像を処理する画像処理部10と、自動操舵装置の制御を行う操舵制御部11を有している。この画像処理部10と操舵制御部11とは駐車支援ECU1内でハード的に区分されていてもよいが、共通のCPU、ROM、RAM等を用い、ソフト的に区分されていてもよい。
【0016】
ステアリングホイール22の動きを転舵輪25に伝えるステアリングシャフト21には、ステアリングシャフト21の操舵量を検出する操舵角センサ23と、操舵力を付与する操舵アクチュエータ24が接続されている。ここで、操舵アクチュエータ24は、自動操舵時に操舵力を付与するほか、運転者の操舵時にアシスト操舵力を付与するパワーステアリング装置を兼ねてもよい。操舵制御部11は、操舵アクチュエータ24の駆動を制御するとともに、操舵角センサ23の出力信号が入力される。
【0017】
また、操舵制御部11には、操舵角センサ23の出力のほか、各輪に配置されてその車輪速を検出する車輪速センサ41と、車両の加速度を検出する加速度センサ42の出力が入力されている。
【0018】
駐車支援ECU1の前述した画像処理部10には、車両後部に配置されて、後方画像を取得する後方カメラ32の出力信号である画像信号が入力されるほか、駐車支援にあたって運転者の操作入力を受け付ける入力手段31と、運転者に対して画像により情報を表示するモニタ34と、音声により情報を提示するスピーカー33が接続されている。
【0019】
次に、この駐車支援装置における支援動作を具体的に説明する。まず、支援動作の第1の制御形態について説明する。この第1の制御形態においては、図2に示されるように、道路210に面して設けられた車庫220内に、後退によって車両200を収容する、いわゆる車庫入れ操作の支援を行う。図3は、この第1の制御形態の制御フローチャートであり、図5、図6は、この制御における支援経路の設定を説明する図である。ここで、図5が走行距離と曲率の関係として支援経路を説明する図であり、図6は、車両と目標位置の位置関係とともに経路を説明する図である。
【0020】
図3に示される制御は、運転者が入力手段31を操作して、駐車支援制御の開始を駐車支援ECU1に指示してから、指示した目標駐車位置近傍へ到達するまで、あるいは、目標駐車位置へ1回の後退で到達することができないと判定されるまで、運転者が入力手段31から支援動作をキャンセルしない限り駐車支援ECU1により実行され続ける。
【0021】
具体的には、運転者は、任意の駐車支援の開始位置へと車両を移動させ、モニタ34に表示されている後方カメラ32で撮像した後方画像中で目標位置を確認した後、入力手段31を操作して、この駐車支援制御を開始する。目標位置がモニタ34の表示画像中で確認できない場合には、確認可能な位置へと車両を移動させて支援をスタートさせる。以下、この駐車支援の開始位置における車両200の基準点(以下の説明では、車両の後輪の車軸中心を基準点として説明する。もちろん、他の位置、例えば、車両の後端の中心や重心、片側の前端あるいは後端等を基準点にとってもよい。)をA点とし、この位置での車両を200aで表すものとする。
【0022】
駐車支援ECU1は、操舵角センサ23の出力から操舵角δの絶対値としきい値δthとを比較する(ステップS1)。δがδth以下であって十分に小さいときには、舵角中立状態であると判定し、駐車支援制御への移行を許可し、ステップS2へと移行する。図Xに示されるように、中立付近では、ステアリングホイール22、ステアリングシャフト21の回転量である操舵角δに対して転舵輪25の転舵量である曲率γは小さく設定されているため、このしきい値δthは、γが略0の範囲を規定しうるよう設定されていればよく、例えば、15度程度に設定される。これに対して、舵角が中立状態でない場合には、ステップS40へと移行し、スピーカ33とモニタ34により、運転者に対して、舵角が制御範囲から外れている旨を報知し、ステアリングホイール22を操作して、舵角中立状態へと戻すよう促し、再びステップS1へと戻る。これにより、運転者が据え切り操作等によって舵角を略中立状態に戻すと駐車支援制御へと移行することができる。
【0023】
ステップS2では、運転者はモニタ34に表示されている後方カメラ32で撮像した画像を見ながら、入力手段31を操作することにより、画面上に表示されている駐車枠を動かして目標駐車位置へと移動させることにより目標駐車位置の設定を行う。
【0024】
駐車支援ECU1は、画像認識処理により目標駐車位置における車両位置200g、具体的には、基準点Gの位置と、その位置における車両の方向を求める(ステップS4)。このG点の位置は、例えば現在の車両位置における基準点Aに対する相対座標として求めればよい。以下、図2に示されるように、目標位置G点を原点とし、目標位置における車両の向きをz軸方向にとり、これに直交する方向をx軸にとった座標系により説明する。以下、現在の車両の向きとz軸のなす角度を偏向角θと称する。また、A点の位置を座標(x,z)で表す。
【0025】
次に、現在位置(初期位置A点)、現在の偏向角θから、偏向角θを0にする最短経路(以下、基本経路と称する。)Pを算出する(ステップS6)。この走行軌跡Pは、走行距離に対する旋回曲率(=旋回半径の逆数)変化として設定される。図5(a)は、この基本経路Pの走行距離−旋回曲率線図を示している。
【0026】
この最短経路Pは、舵角を増大させる過程(過程1)と、増大した状態で舵角を維持する過程(過程2)と、舵角を中立に戻す過程(過程3)の3つの過程からなり、過程1と過程3においては、走行距離に対する旋回曲率の変化量(旋回曲率の変化速度)を一定としている。この旋回曲率の変化速度は、車速が走行支援時の上限値の場合であっても、操舵アクチュエータ24の最大操舵速度での曲率変化量を下回るように設定されている。これにより、確実に操舵が行える経路を算出しうる。このとき設定される軌跡の代表例は、まず、初期位置B点からC点まで旋回曲率の走行距離に対する変化速度を一定として旋回曲率を増大させていき、C点で操舵角、旋回曲率が設定最大値で、旋回半径が設定最小旋回半径(Rmin、曲率γmax=1/Rmin)となる状態に移行する(過程1)。C点からD点まではこの操舵角(旋回曲率、旋回半径)を維持する(過程2)。D点からは逆に旋回曲率の走行距離に対する変化速度を一定として旋回曲率を減少させて、E点で舵角0の中立状態へと移行する(過程3)。この結果、走行軌跡Pは、CD間が半径Rminの円弧であり、BC間、DE間は、それぞれ一端が曲率1/Rmin、他端が曲率0のクロソイド曲線となる。
【0027】
偏向角θが小さい場合には、円弧区間を有しない場合もありうる。ここでBE間の偏向角θの変化量Δθは、以下の(1)式で表せる。
【0028】
【数1】
Figure 2005014775
ここで、γ(p)は、走行距離pにおける曲率を表す。すなわち、偏向角の変化量Δθは、図5(a)に示される走行軌跡の面積Sに合致する。この面積はBC間の経路長をL(DE間の経路長も同じLになる。)、CD間の経路長をLとすると、円弧区間が存在するときは、γmax×(L+L)で表せる。一方、Δθが小さい場合には、走行距離に対する曲率変化量を増大時はω、減少時は−ωで一定とした場合、その面積はL×ωで表せる。したがって、簡単な演算で経路を求めることができる。
【0029】
次に、この基本経路PのX方向、Z方向のそれぞれの長さを求める(ステップS8)。基本経路PのX方向の長さXfとZ方向の長さZfは、以下の(2)(3)式から求めることができる。
【0030】
【数2】
Figure 2005014775
ここで、θ(p)は走行距離pにおける偏向角である。
【0031】
続いて、基本経路Pに直線経路を付与して目標経路Pを設定する(ステップS10)。すなわち、図6に示されるように、基本経路Pの両端を延長してA点からG点へと至る経路を求める。具体的には、A点から基本経路Pの始点B点へと至る直線経路の経路長をL、基本経路Pの終点E点からG点へと至る直線経路の経路長をLとすると、次の(4)(5)式が成り立つ。
【0032】
【数3】
Figure 2005014775
、L以外は既知であるから、2式からL、Lを簡単に求めることができる。
【0033】
図5(b)にこうして設定された目標経路Pの走行距離に対する曲率の対応を示す。図6には、この目標経路Pが描く軌跡を示している。この経路Pにおいては、目標経路が車両の速度、加速度に依存しない。そのため、走行時に経路に追従する制御が簡略化できる利点がある。
【0034】
続く、ステップS12では、経路が設定できたか否かを判定する。具体的には、L、Lのいずれもが負でない。つまり、0か正であれば経路が設定できたと判断される。Lが負の場合とは、基本経路PのX方向の長さXfが、A点とG点とのX方向の距離(x)を上回る場合であり、Lが負の場合とは、基本経路PのZ方向の長さZfが、A点とG点とのZ方向の長さzから初期直線経路のZ軸方向の長さL×sinθを差し引いた長さを超えている場合である。A点から目標位置G点に到達する経路が正しく設定できないと判定した場合には、ステップS50に移行し、現在位置Aからは目標位置G点に到達できない旨をモニタ34やスピーカー33を用いて運転者に報知し、処理を終了する。運転者は、必要であれば、車両200を移動させて再度駐車支援動作を作動させればよい。
【0035】
目標経路が設定できた場合には、ステップS14に移行して、実際の支援制御を開始する。ここで、駐車支援ECU1は、シフトレバーが後退位置に設定されたら、図示していない駆動系に対して、エンジンのトルクアップ制御を行うよう指示することが好ましい。トルクアップ制御とは、エンジンを通常のアイドル時より高い回転数で回転させることで、駆動力の高い状態(トルクアップ状態)に移行させるものである。これにより、運転者がアクセル操作を行うことなく、ブレーキペダルのみで調整できる車速範囲が拡大し、車両のコントロール性が向上する。運転者がブレーキペダルを操作すると、そのペダル開度に応じて各輪に付与される制動力を調整することで車速の調整を行う。このとき、車輪速センサ32で検出している車速が上限車速を超えないよう各車輪に付与する制動力を制御することで上限車速のガードを行うことが好ましい。
【0036】
誘導制御においては、まず、車両の現在位置の判定を行う(ステップS14)。この現在位置判定は、後方カメラ32で撮像している画像における特徴点の移動を基に判定することも可能であるし、車輪速センサ41や加速度センサ42の出力を基にした走行距離変化と操舵角センサ23の出力を基にした舵角変化を基にして判定を行うこともできる。
【0037】
そして、この現在位置(走行距離)を基に先に設定した走行距離−操舵角の設定経路に基づいて実際の舵角制御を行う(ステップS16)。具体的には、操舵制御部11は、操舵角センサ23の出力を監視しながら、操舵アクチュエータ24を制御してステアリングシャフト21を駆動し、転舵輪25の舵角が設定した舵角変位(曲率)に合致するよう制御する。
【0038】
こうして設定した経路に沿った移動が行われるので、運転者は進路上の安全確認と車速調整に専念することができる。進路上に障害物や歩行者等が存在した場合は、運転者がブレーキペダルを踏み込むと、それに応じた制動力が各車輪へと付与されるので安全に減速、停止することができる。
【0039】
舵角制御後は、現在位置が目標経路上からずれていないかを判定し、ずれが大きい場合には経路修正を要すると判定する(ステップS18)。この目標経路からのずれは、目標位置と現在の位置のずれ、あるいは、目標操舵量と実際の操舵量のずれを走行距離に対して積算すること等により求めることができる。経路修正を要する場合には、ステップS6へと移行することで、経路を設定し直す。
【0040】
一方、目標経路とのずれが小さい場合には、ステップS20へと移行し、目標駐車位置G点近傍に到達したか否かを判定する。目標駐車位置へ到達していない場合には、ステップS14へと戻ることで、支援制御を継続する。目標駐車位置へと到達したと判定された場合には、ステップS22へと移行し、モニタ34、スピーカー33により運転者に目標駐車位置へと到達した旨を報知して処理を終了する。
【0041】
このように、基本経路を求め、必要ならその両端またはいずれか一方に直線経路を付与することで経路設定を行うので、経路演算のアルゴリズムが単純化され、また、計算も簡略化できるので、演算負荷が小さくて済み、少ない計算機資源で容易にリアルタイムでの演算を行うことができる。また、計算に際して精度の低下もないため、目的位置へ高精度で誘導することができる。
【0042】
次に、支援動作の第2の制御形態について説明する。この第2の制御形態は、図7に示されるように、道路211の脇に沿って駐車している前車両210と後車両202の間の駐車スペース221に自車両200を後退によって収容する、いわゆる縦列駐車操作の支援を行うものである。図8は、この第2の制御形態の制御フローチャートであり、図9は、この制御における支援経路の設定を説明する図である。
【0043】
この実施形態は、基準点と目標位置との関係を求めるまでの処理は、上述した第1の実施形態と同様である。まず、舵角を逆方向に転換する中間位置である切り返し点M点までの経路P52を目標駐車位置G点から逆算により求める(ステップS31)。以下、この中間位置M点の位置座標を(x、z)で表す。この中間位置M点における偏向角θは予め設定された値を採るものとする。ここで、計算を簡略化するため、経路P52は、中間位置M点からは、走行距離に対する曲率変化量を−ωで変化させるものとし、N点で、曲率が−γmaxに達したら、曲率を−γmaxで維持したまま目標位置G点へと至る経路であるものとする(以下、第2の基本経路と称する)。
【0044】
MN間の経路長をL51、NG間の経路長をL52とすると、この経路P52の走行距離と曲率の関係は図9(a)に示されるようになる。そして、上述したようにこの走行距離−曲率曲線の面積Sが偏向角の変化量に合致するから、目標位置で偏向角θを0にするためには、この面積Sがθに合致する必要がある。したがって、以下の(6)(7)式が成立する。
【0045】
【数4】
Figure 2005014775
以上の関係からL51とL52が求まる。こうして設定される経路P52が第2の基本経路にあたる。
【0046】
次に、こうして設定した経路P52を基にして中間地点Mの位置座標を求める(ステップS32)。まず、G点からN点までは、円弧区間となるから、この部分における偏向角変動量θは、円弧の中心角に等しい。したがって、N点の座標を(x,z)とすると、以下の(8)〜(10)式が成り立つ。
【0047】
【数5】
Figure 2005014775
これらの式と先ほど求めたL52からN点の位置座標を求めることができる。さらに、N点の位置からM点の位置を逆算する。M点の位置関係については、以下の(11)〜(13)式が成立する。
【0048】
【数6】
Figure 2005014775
この式から中間地点M点の位置を算出することができる。
【0049】
続いて、初期位置A点からM点までの経路算出を行う。この経路算出手法は、車庫入れの経路算出手法と類似する。すなわち、まず、ステップS6と同様の手法により、現在の偏向角0から偏向角θの状態に移行するための基本経路(第1の基本経路)Pを算出する(ステップS33)。
【0050】
次に、ステップS8と同様の手法により、この第1の基本経路PのX方向、Z方向のそれぞれの長さを求める(ステップS34)。続いて、ステップS10と同様の手法により基本経路Pに直線経路を付与してM点までの目標経路P51を設定する(ステップS35)。図9(b)はこうして設定した第1の基本経路Pの走行距離に対する曲率変化量を示したグラフである。この目標経路P51とM点からの目標経路P52とを組み合わせることで、A点からG点へと至る経路Pが求まる(ステップS36)。図9(c)はこうして設定した経路Pを示したものである。
【0051】
ここでは、第1の基本経路P側に直線経路を付与する例を説明したが、第2の基本経路P52側でハンドルを中立に戻す操作を行う場合には、第2の基本経路側に直線経路を付与することもできる。また、第1の基本経路、第2の基本経路の双方に直線経路を付与することも可能である。
【0052】
経路設定後の実際の誘導処理は、図3に示される処理と同一であることから、その説明は省略する。本制御形態によれば、第1の制御形態における車庫入れ操作の場合と同様に、縦列駐車の支援操作においても基本経路を求め、必要なら直線経路を付与して実際の誘導経路を設定することで、経路演算のアルゴリズムが単純化され、また、計算も簡略化できるので、演算負荷が小さくて済み、少ない計算機資源で容易にリアルタイムでの演算を行うことができる。また、計算に際して精度の低下もないため、目的位置へ高精度で誘導することができる。
【0053】
次に、支援動作の第3の制御形態について説明する。この第3の制御形態は、上述した第1の制御形態と同様に、車庫入れ操作の支援を行うものである。本実施形態では、基本経路Pからの目標経路の設定方法のみが異なる。具体的には、図10にその設定部分のフローチャートを示すように、基本経路Pに直線経路を付与して目標経路を設定するのではなく、基本経路Pを相似拡大した経路Pに直線経路を付与して目標経路Pを生成する(ステップS11)。
【0054】
図11は設定される経路の位置関係を示す図である。相似拡大の倍率をεとし、この相似拡大経路Pの始点をB’、終点をE’で表す。そして、A点からB’点へと至る直線経路の経路長をL、E’点からG点へと至る直線経路の経路長をLとすると、次の(14)(15)式が成り立つ。
【0055】
【数7】
Figure 2005014775
ここでεは、Zf/Xfがz/x以下のとき、つまり、基本経路PのZ方向とX方向の比が、目標経路のZ方向とX方向の比に比べて小さく、横(X方向)に長い場合には、ε≦x/Xfに設定すればよい。逆に基本経路が縦に長い場合には、例えば、ε=x/Xfとすると、相似拡大経路の終点が目標駐車位置G点を通過してしまうので、これより小さい値、に設定する必要がある。この場合、εの最大値は、Lを0とした時の値であり、(14)(15)式より
【0056】
【数8】
Figure 2005014775
となる。最大値でなく、これを下回る任意の値を用いてもよい。相似拡大係数εを設定すれば、(14)(15)式より各直線区間の長さを計算できる。これにより、目標経路Pを設定することができる。
【0057】
ここで、こうして設定された目標経路Pにおける相似変換経路Pにおいては、基本経路Pにおいて、A点から走行距離p離れた位置における曲率がγ(p)で表されるとき、そのA点から走行距離εp離れた位置における曲率が、γ(p)/εとして表される。図12に示されるように、この相似拡大経路Pは、基本経路Pを距離方向にε倍に引き延ばすとともに、曲率方向に1/ε倍へと圧縮(旋回半径をε倍に拡大)したものである。したがって、相似変換経路Pの走行距離−曲率線図における面積は、基本経路Pの走行距離−曲率線図における面積は合致し、偏向角の変化量は同一に保たれる。
【0058】
この相似変換によって、曲率の最大値は基本経路のγmaxから1/ε倍のγmax/εへと低下し、操舵速度ωは1/εに低下させることができるので、操舵アクチュエータ24の負荷を減らすことができ、操舵制御の制御性が向上する。
【0059】
ここでは、車庫入れについて基本経路を相似変換する例を説明したが、縦列駐車の場合も同様に基本経路を相似変換することが可能である。この場合、基本経路が第1の基本経路と第2の基本経路2つあることになる。その相似拡大は、それぞれの基本経路を同じ倍率で相似拡大してもいいが、それぞれの基本経路を異なる倍率で相似拡大してもよく、さらには、一方の基本経路はそのまま維持して他方の基本経路のみを相似拡大してもよい。ところで、縦列駐車の場合、切り返し点以降の経路のZ方向の長さは、前車両201に接触しないよう前車両201と後車両202との間隔に比べてできるだけ短くすることが好ましい。そのため、基本経路の相似拡大は、第1の基本経路の相似拡大を優先して行うことが好ましい。
【0060】
ここでは、初期操舵角(旋回曲率)が略0の場合に、経路を設定し、初期操舵角(旋回曲率)が大きい場合には、経路設定を行わない例を説明したが、初期操舵角が大きい場合には、初期操舵角を略0とする据え切り操作を運転者に指示するようにしてもよい。このようにすれば、初期操舵角が略0でない場合であっても、支援制御を中止することなく、そのまま継続することができるため、操作性が向上する。
【0061】
なお、基本経路は、演算によって求めてもよいが、駐車支援ECU1内に、偏向角θに対して状態量をマップ形式で保持しておいてもよい。このようにすると、駐車支援ECU1の演算能力を高くする必要がなく、また、経路の算出をより高速で行うことができる。
【0062】
以上の説明では、自動操舵機能を有する駐車支援装置における実施例を説明してきたが、操舵を自動的に行う技術だけでなく、運転者に対して適切な操舵量を指示する操舵ガイダンスを行う技術においても同様に用いることができる。また、駐車支援装置に限らず、経路に応じた移動を誘導する走行支援装置、レーンキープシステム等にも適用可能である。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、車両の向きを目標の向きに一致させるための基本経路を求め、この基本経路に必要ならば直線経路を付与することで目標経路を算出することで、目標経路を算出するため、目標経路算出のアルゴリズムが簡略化され、演算能力の高くない車載演算装置においてもリアルタイムで経路演算を行うことができる。
【0064】
さらに、基本経路を相似拡大して目標経路設定を行えば、誘導時の操舵速度を小さくすることができるため、操舵負荷を抑制することができるので、目標位置への誘導精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である駐車支援装置100のブロック構成図である。
【図2】図1の装置の第1の制御形態における駐車支援である車庫入れ操作を説明する図である。
【図3】図1の装置における第1の制御形態の制御を示すフローチャートである。
【図4】図1の装置における操舵角δと旋回曲率γの関係を示す図である。
【図5】図3の制御形態で設定される支援経路を走行距離と曲率の関係として説明する図である。
【図6】図3の制御形態で設定される支援経路を車両と目標位置の位置関係とともに説明する図である。
【図7】図1の装置の第2の制御形態における駐車支援である縦列駐車操作を説明する図である。
【図8】図1の装置における第2の制御形態の制御を示すフローチャートである。
【図9】図8の制御形態で設定される支援経路を走行距離と曲率の関係として説明する図である。
【図10】図1の装置における第3の制御形態の特徴部分を示すフローチャートである。
【図11】図10の制御形態により設定される経路の位置関係を示す図である。
【図12】図10の制御形態により設定される経路を走行距離と曲率の関係として説明する図である。
【符号の説明】
1…駐車支援ECU、10…画像処理部、11…操舵制御部、20…自動操舵装置、31…入力手段、32…後方カメラ、33…スピーカー、34…モニタ、41…車輪速センサ、42…加速度センサ、24…操舵アクチュエータ、22…ステアリングホイール、21…ステアリングシャフト、23…操舵角センサ、100…駐車支援装置、200…車両、201…前車両、202…後車両、210、211…道路、220…車庫、221…駐車スペース。

Claims (6)

  1. 目標位置へ至る経路を算出して、該経路に沿って車両を誘導する車両用走行支援装置において、
    目標位置における車両の向きに対する現在の車両の向きである偏向角の初期位置における角度である初期偏向角を求める偏向角検出手段と、
    走行距離に応じて所定の条件で操舵を行うことにより、初期偏向角から偏向角0の状態へと移行する基本経路を走行距離と操舵角または旋回曲率の対応として求める基本経路算出手段と、
    前記基本経路を基にして、必要ならその前後の少なくとも一方に直線経路を付与することで初期位置から目標位置へと至る目標経路を算出する目標経路算出手段と、
    を備えていることを特徴とする車両用走行支援装置。
  2. 目標位置へ至る経路を算出して、該経路に沿って車両を誘導する車両用走行支援装置において、
    目標位置における車両の向きに対する現在の車両の向きである偏向角の初期位置における角度である初期偏向角を求める偏向角検出手段と、
    走行距離に応じて所定の条件で操舵を行うことにより、初期偏向角から所定の偏向角へと移行する第1の基本経路を走行距離と操舵角または旋回曲率の対応として求める第1基本経路算出手段と、
    走行距離に応じて所定の条件で操舵を行うことにより、前記所定の偏向角から偏向角0の状態へと移行する第2の基本経路を走行距離と操舵角または旋回曲率の対応として求める第2基本経路算出手段と、
    前記第1基本経路と前記第2基本経路を基にして、必要なら前記第1基本経路と第2基本経路の中間またはそれらの前後の少なくともいずれか1か所に直線経路を付与することで初期位置から目標位置へと至る目標経路を算出する目標経路算出手段と、
    を備えていることを特徴とする車両用走行支援装置。
  3. 前記各基本経路は、舵角を一方向に増大させる段階と、増大後に所定舵角で保持する段階と、舵角を中立方向に戻す段階から構成される操舵を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用走行支援装置。
  4. 設定した目標経路を走行するよう自動的に操舵を行う自動操舵手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用走行支援装置。
  5. 前記目標経路の設定は、初期位置における操舵角が略0の場合に設定を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用走行支援装置。
  6. 前記目標経路算出手段は、前記各基本経路を相似拡大し、目標経路の算出を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両用走行支援装置。
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