JP2005001920A - 水酸化タンタル、水酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ニオブ、およびこれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水酸化物の場合、フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液と、沈澱剤(例えばアンモニア水)とを混合して沈澱物を生成し、生成された沈澱物を分離・洗浄した後、得れた沈殿物を50℃〜300℃の水蒸気含有ガス雰囲気中に少なくとも0.5時間以上保持するという内容の水蒸気含有ガス処理を行い、当該水蒸気含有ガス処理により得られた処理物を、その強熱減量が理論強熱減量の20%〜90%になるまで乾燥する。このようにすると、均一に分散する状態に混合しやすく、電子セラミックス素子の原料等として好適なタンタルやニオブの水酸化物または酸化物が製造される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水酸化タンタル、水酸化ニオブ、酸化タンタルまたは酸化ニオブに関すると共にこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化タンタルまたは酸化ニオブは、ニオブ酸リチウム(LN)結晶、タンタル酸リチウム(LT)結晶あるいはセラミックスコンデンサなどの電子セラミックスの原料として広く用いられている。また、電子セラミックスの原料としては、水酸化タンタルや水酸化ニオブも使用されることがある。
【0003】
これら、タンタルやニオブの酸化物や水酸化物(以下、酸化タンタル等とも称する)を用いてセラミックスコンデンサ等の電子セラミックス素子を製造する場合は、通常、酸化タンタル等を粉末にしたものと、次に挙げるような物質の酸化物、水酸化物あるいは炭酸塩といった化合物の粉末とを混合して得られる混合物を、所定形状に成型し、焼結するなどによって電子セラミックスを製造している。なお、混合する粉末とは、Al,Ba,Ca,Co,Mg,Mn,Ni,Pb,Sn,Ti,W,Zn,Zr,希土類元素といった物質の酸化物、水酸化物あるいは炭酸塩(化合物)等の粉末である。このようにして用いられる酸化タンタル等の粉末としては、均一に分散する状態に混合できる粉末が望ましい。そして、これまでの実験の結果や経験則から、比表面積が大きい粉末ほど、より確実に、均一に分散する状態に混合できることが解っている。このようなことから、電子セラミックスの製造等に用いられる酸化タンタル等の粉末として、比表面積が大きな粉末が望まれている。
【0004】
酸化タンタルおよび/または酸化ニオブの製造方法としては、例えば次のような方法がある。まず、タンタルおよび/またはニオブを含有する鉱石またはスクラップ等を原料として用意し、当該原料を必要に応じて粉砕し、次にアルカリ水溶液による疎解や鉱酸洗浄などの前処理を行う。その後、フッ化水素酸などを用いてタンタルおよび/またはニオブを溶解し、この溶解によって得られた溶液を溶媒抽出により分離精製してフッ化タンタル溶液および/またはフッ化ニオブ溶液を得る。そして、得られた溶液とアンモニア水を混合して沈澱物を生成する。この沈殿物を洗浄、濾過、乾燥すると、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブが得られる。また、得られた水酸化タンタルや水酸化ニオブを焙焼すると、酸化タンタルまたは酸化ニオブが得られる。
【0005】
ところが、このような製造方法では、タンタルやニオブの水酸化物や酸化物(特に水酸化タンタルや酸化タンタル)の比表面積を大きくすることが難しい。また、比較的比表面積が大きなものが得られても、得られたタンタルやニオブの水酸化物や酸化物中にフッ素が比較的大量に残留する。フッ素を多く含有したものを原料として用いると、製造される電子セラミックス素子等の中に多くのフッ素が含有され、電子セラミックス素子の性能が低下することがある。
【0006】
このようなことから、ある程度比表面積が大きく、フッ素の含有率が低いタンタルやニオブの水酸化物や酸化物を製造する方法が種々検討されている。
【0007】
例えば、フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液とアンモニア水とを、2個以上の容器を用い、温度、pHおよび滞溜時間を制御しつつ水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを得る、連続沈澱法を用いた製造方法がある(特許文献1参照)。この連続沈澱法によって得られた水酸化タンタルを790℃以上の温度で焙焼すると、例えば、BET法比表面積が6.7m2/g、フッ素含有率が50ppm以下、圧縮嵩密度が1.81g/ccの酸化タンタルが得られる。そして、連続沈澱法によって得られた水酸化ニオブを650℃以上の温度で焙焼すると、例えば、BET法比表面積が2.82m2/g以上、フッ素含有率が100ppm以下、圧縮嵩密度が1.71g/cc未満の酸化ニオブが得られる。
【0008】
また、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを所定時間、所定温度で焙焼して得られた酸化タンタルまたは酸化ニオブを、タンタルシートで内張りされたビードミル内で円柱形状のタンタル金属物体を用いて磨砕することによって酸化タンタルまたは酸化ニオブの粉末を得る方法がある(特許文献2参照)。このようにすると、BET法比表面積が4m2/g以上で、フッ素含有率が20ppm以下の酸化タンタル等の粉末が得られる。
【0009】
フッ化ニオブ溶液とアンモニア水とを混合して沈澱させた水酸化ニオブを、濾過、洗浄した後、強熱減量が10重量%〜50重量%になるように乾燥し、得られた乾燥品を600℃〜1000℃で焙焼し、得られた焙焼品を粉砕して酸化ニオブ粉末を得る製造方法がある(特許文献3参照)。この方法によれば、BET法比表面積が3.5m2/g以上、フッ素含有率が1000ppm以下であり、目開き45μmのふるいを通過する割合が99.9%以上の酸化ニオブが得られる。
【0010】
フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液とアンモニアとを混合して水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを沈澱生成し、生成された水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを濾過・洗浄するときに、洗浄廃液(濾液)中のフッ素濃度が所定値以下になるまで洗浄を繰り返し、その後、得られた水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを焼成して酸化タンタルまたは酸化ニオブを得る製造方法がある(特許文献4参照)。この方法によれば、例えば、BET法比表面積が5.23m2/g、フッ素含有率が3900ppmの酸化タンタルが得られる。
【0011】
水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを焙焼して酸化タンタルまたは酸化ニオブを得る(焼成する)際に、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを水蒸気流通雰囲気中で焙焼し(750℃〜900℃)、これによりフッ素含有率の低い酸化タンタルまたは酸化ニオブを得る製造方法がある(特許文献5参照)。
【0012】
そして、これらのような従来の製造方法によって得られた低フッ素含有率の酸化ニオブを湿式多段階粉砕し、得られた酸化ニオブスラリーを乾燥することで、BET法比表面積が5.0m2/g以上、湿式ふるい試験における目開き45μmのふるい(篩上)に残る割合が1.0重量%、「D90/D10」の値が10以下であり、他の粉末物質と混合したときに均一に分散する酸化ニオブ粉末を製造する方法がある(特許文献6参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開平11−513652号公報
【特許文献2】
特開平2−248325号公報
【特許文献3】
特開平3−23222号公報
【特許文献4】
特開平7−101726号公報
【特許文献5】
特開平63−156013号公報
【特許文献6】
特開2002−356328号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
これらの製造方法によれば、フッ素含有率が低いタンタルやニオブの酸化物または水酸化物を得ることができる。ところが、均一に分散する状態に混合できるほど十分に比表面積が大きなタンタルやニオブの酸化物または水酸化物(の粉末)を得ることは容易でない。最後に挙げた従来の製造方法によって得られる酸化ニオブ粉末は、低フッ素含有で、且つ比表面積もある程度大きく均一分散性を有するが、この製造方法では、従来の製造方法によって酸化ニオブを製造した後、さらに複数の工程が必要である。つまり、製造工程が煩雑であり、生産性が低い。
【0015】
また、近年、電子セラミックス素子の大きさが益々小さくなっていることから、混合物をより微視的に見た状態で、各粉末を均一に分散する状態に混合できることが要求されるようになっている。つまり、より比表面積が大きなタンタルやニオブの酸化物または水酸化物の粉末が望まれるようになっている。ところが、先に説明した従来の製造方法では、これらの要求を満たすほど比表面積が大きなタンタルやニオブの酸化物または水酸化物の粉末を製造することは難しい。
【0016】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、均一に分散する状態に混合できるほど比表面積が大きく、フッ素の含有率が低いタンタルやニオブの酸化物または水酸化物を提供すること、これらの製造方法を提供することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決する本発明は、フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液と、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して沈澱物を生成する工程と、生成された沈澱物を分離・洗浄する工程と、得られた沈殿物を、50℃〜300℃の水蒸気含有ガス雰囲気中に少なくとも0.5時間以上保持する水蒸気含有ガス処理工程と、当該水蒸気含有ガス処理により得られた処理物を、その強熱減量が理論強熱減量の20%〜90%になるまで乾燥する工程と、を有する水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの製造方法である。
【0018】
そして、酸化タンタルまたは酸化ニオブについては次の製造方法である。すなわち、フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液と、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して沈澱物を生成する工程と、生成された沈澱物を分離・洗浄する工程と、得られた沈殿物を、50℃〜300℃の水蒸気含有ガス雰囲気中に少なくとも0.5時間以上保持する水蒸気含有ガス処理工程と、水蒸気含有ガス処理された物質を焙焼する工程を有する酸化タンタルまたは酸化ニオブを製造する方法である。
【0019】
これらの製造方法を用いると、均一に分散する状態に混合しやすく、電子セラミックス素子の原料等として好適なタンタルやニオブの水酸化物または酸化物を製造できる。製造されたタンタルやニオブの水酸化物または酸化物は、フッ素含有率が十分に低く、しかも比表面積値が大きいからであると考えられる。また、製造されるタンタルやニオブの水酸化物または酸化物は、微視的に見ても均一に分散する状態に混合できるという点で優れている。したがって、本発明に係る製造方法によって製造されるタンタルやニオブの水酸化物または酸化物は、小型の電子セラミックス素子用の原料としても好適である。
【0020】
また、これらの製造方法や従来の製造方法によって製造されるタンタルやニオブの水酸化物や酸化物について検討した。その結果、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブとしては、フッ素含有率が1.0重量%以下であり、BET法比表面積が15m2/g以上であり、強熱減量が理論強熱減量の20%〜90%の値であるが好ましいことが解った。強熱減量が理論強熱減量の20%未満であると、固く大きな粒子が存在して粉砕コストが高くなるからであり、また90%を超えると比表面積の測定が困難だからである。電子セラミックス用途に好適であるか否かの一つの指標として比表面積の大きさがあるが、比表面積を測定できなければこの判断が困難だからである。そして、より均一に分散する状態に混合しやすいという点、低温で焙焼しやすいという点、および他の粉末とより均一に混合しやすいという点で、BET法比表面積が15m2/g以上である水酸化タンタルまたは水酸化ニオブがより好ましいことが解った。また、検討の結果、酸化タンタルまたは酸化ニオブとしては、フッ素含有率が0.5重量%以下であり、BET法比表面積が10m2/g以上であるものが、均一に分散する状態に混合しやすいという点で好ましいことが解った。なお、BET法比表面積の上限値は特に限定されるものではないが、大き過ぎると嵩が大きくなって取扱いにくくなる。このような点で、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブとしては、BET法比表面積が300m2/g以下のものが好ましく、200m2/g以下のものがさらに好ましい。また、酸化タンタルまたは酸化ニオブとしては、BET法比表面積が150m2/g以下のものが好ましく、60m2/g以下のものがさらに好ましい。
【0021】
そして、より高品質で、しかもより均一に分散する状態に混合できるという点、低温での焼結性や反応性が優れているという点では、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブとしては、フッ素含有率が0.5重量%以下、強熱減量が理論強熱減量の40%〜90%、BET法比表面積が20m2/g以上のものが好ましい(30m2/g以上がさらに好ましい)。このような物性の水酸化タンタルまたは水酸化ニオブは、水蒸気含有ガス処理工程において沈澱物を100℃〜300℃に1時間以上保持し、その後強熱減量が理論強熱減量の40%〜90%になるまで乾燥することによって製造される。そして、より高品質で、しかもより均一に分散する状態に混合できるという点、低温での焼結性や反応性が優れているという点では、酸化タンタルまたは酸化ニオブとしては、フッ素含有率が0.2重量%以下(さらに好ましくは0.1重量%以下)であり、BET法比表面積が15.0m2/g以上(さらに好ましくは20.0m2/g以上)であるものが好ましい。そして、このような酸化タンタルまたは酸化ニオブは、上記の水酸化タンタルもしくは水酸化ニオブまたは水蒸気含有ガス処理後乾燥前の水酸化タンタルもしくは水酸化ニオブを焙焼することによって焼成される。
【0022】
さらに、タンタルやニオブの水酸化物または酸化物は、混合しやすいことから粉末のものが好ましい。粉末の方が大きな比表面積を得やすいという利点もある。例えば、目開きが45μmのふるいを用いた湿式ふるい分け試験を行った場合に、ふるい通らない量が1.0重量%以下であるタンタルやニオブの水酸化物または酸化物の粉末が好ましい。湿式ふるいで45μmのふるいを通過しないような凝集粒子が粉末中に多く含まれている場合は、粉砕などによってより微粒にするとよい。なお、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを粉砕して粉末にする場合は、粉砕前に一旦乾燥させることが好ましい。
【0023】
なお、タンタル、ニオブの水酸化物は含水酸化物と称されることがあり、タンタル、ニオブの酸化物は無水タンタル酸または無水ニオブ酸と称されることがある。また、酸化物だけでなく水酸化物を含む総称として酸化物と称することがある。このように、水酸化物と酸化物との区別は必ずしも明確でない場合があるが、ここでは強熱減量が3.0重量%以下であるものを酸化物と称し、3.0重量%を超えるものを水酸化物と称する。強熱減量は、JIS K 0067−1992(化学製品の減量及び残分試験方法)の「4.2 強熱減量試験」に準拠して測定を行ったものである。本測定では強熱温度を1000℃とした。JISに記載の650℃では、長時間強熱しても測定値(強熱減量)が安定しないからである。なお、後述の実施例および比較例から解るように、試料(測定対象)であるタンタル、ニオブの水酸化物中の水分量が多い場合があるが、このような場合に試料を急に1000℃の電気炉中に入れると水蒸気が発生する勢いで試料が容器の外へこぼれるおそれがある。このようなおそれがある場合は、一旦100℃〜150℃に加熱して乾燥させて、その後1000℃にて強熱するのが好ましい。
【0024】
また、ここでいう水酸化タンタルや水酸化ニオブの理論強熱減量とは、水酸化タンタルがTa(OH)5、水酸化ニオブがNb(OH)5と示される組成物でありそれぞれその他の水分等を含有していないと仮定し、焙焼すると全てTa2O5やNb2O5に変化すると仮定した場合に、これらの物質の化学式(分子量)に基づいて算出される強熱減量のことである。具体的には、水酸化タンタル(Ta(OH)5)の理論強熱減量は16.9重量%、また水酸化ニオブ(Nb(OH)5)の理論強熱減量は25.3重量%であり、次式によって算出される。
【0025】
【式1】
【0026】
したがって、理論強熱減量の20%〜90%とは、水酸化タンタルの場合は強熱減量が3.4重量%〜15.2重量%のことであり、水酸化ニオブの場合は強熱減量が5.1重量%〜22.8重量%のことである。なお、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの強熱減量が理論強熱減量よりも小さくなるのは、乾燥により水酸化物の一部が分解して酸化物になる(水酸化物と酸化物の中間体になる)からである。
【0027】
BET法比表面積(BET)は、JIS R 1626−1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2 流動法」の(3.5)一点法に準拠して行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用した。また前処理は、試料が水酸化物である場合は105℃で、そして試料が酸化物である場合は300℃で行った。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るタンタルやニオブの水酸化物または酸化物の製造方法の好適な実施形態を、図1に示した製造工程のフローを参照しつつ説明する。
【0029】
水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの製造方法
まず、タンタルおよび/またはニオブを含有する鉱石(スクラップ等でもよい)であって必要に応じて粉砕されたものを原料として用意する。そして、用意した原料に対して、アルカリ水溶液疎解、鉱酸洗浄処等の前処理を必要に応じて施した後、フッ化水素酸(HF)だけを用いて、あるいはフッ化水素酸とフッ化水素酸以外の鉱酸を用いてタンタルおよび/またはニオブが溶解された溶液を得る。そして、得られた溶液から溶媒抽出によって分離精製することにより、タンタル含有溶液および/またはニオブ含有溶液を得る(図1の第1工程)。
【0030】
なお、得られたタンタル含有溶液は、フッ化タンタル溶液(H2TaOF5の溶液またはH2TaF7の溶液)であり、ニオブ含有溶液は、フッ化ニオブ溶液(H2NbOF5の溶液またはH2NbF7の溶液)であると考えられる。なお、タンタル含有溶液またはニオブ含有溶液としては、タンタルまたはニオブの濃度が、酸化タンタルまたは酸化ニオブ換算で10g/L(グラム/リットル)〜100g/Lであるものが好ましい。当該濃度が10g/L未満あるいは100g/L超の溶液を用いると、最終的に得られる水酸化タンタルや水酸化ニオブの粉末の粒子が大きくなり易いからである。得れた溶液が高濃度である場合は濃度が上記範囲の値になるように水などで希釈する。
【0031】
続いて、得られたフッ化タンタル溶液および/またはフッ化ニオブ溶液に混合して沈澱物を得るための沈澱剤を用意する。
【0032】
沈澱剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムから選択した一種以上のものを用いることができる。なお、アンモニアと炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムとでは、アンモニアを沈澱剤として用いた方が、最終的により微粒の粉末を得やすい。例えば、アンモニアを用いる場合、アンモニアガス、液体アンモニア、アンモニア水(アンモニア水溶液)のいずれの形態とも沈澱剤として使用可能であるが、取扱性に優れるという点でアンモニア水が好ましい。そして、アンモニア水の場合、アンモニア(NH3)の濃度が5.0重量%〜30重量%であるものが好ましい。5.0重量%未満のものを用いると、得られる水酸化タンタルや水酸化ニオブの粉末の粒子が大きくなり易いからである。他方、濃度が30重量%を超えるものは入手が困難であるなど、用意する手間がかかる。また、先に説明した通り、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムをフッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液との混合に供用してもよいが、固形状あるいはスラリー状のものを用いると不均一な沈澱が生ずることがある。このような不均一な沈澱をより確実に防止するためには、沈澱剤用の炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムとしては水溶液状のものがより好ましい。
【0033】
用意した沈澱剤をフッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液と混合して沈澱物を生成する(第2工程。以下、混合・沈澱生成工程とも称する)。
【0034】
混合方法としては、フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液を撹拌しながら当該溶液中に沈澱剤を添加する方法、水溶液状あるいはスラリー状の沈澱剤を撹拌しながら当該沈澱剤の水溶液中にフッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液を添加する方法、フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液と水溶液状あるいはスラリー状の沈澱剤とを同時に同じ容器に添加して混合する方法などを挙げることができる。これらのうち、比表面積が大きな水酸化タンタルや水酸化ニオブを得るという観点では、攪拌状態のフッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液中に沈澱剤を添加する方法や、フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液と、沈澱剤の水溶液を同時に添加して混合する方法がより好ましい。
【0035】
そして、当該混合・沈澱生成工程では、混合物の最高温度が40℃〜100℃になるように混合するのが好ましい。100℃を超えると突沸が生ずるおそれがあるからである。突沸が生ずるような状態では、例えば混合物の取扱い性が低下し、作業性が低下する。他方、40℃未満では、最終的に得られる水酸化タンタルや水酸化ニオブの粉末の粒子が大きくなりやすい。また、混合・沈澱生成工程では、混合物の最終的なpH値が8〜11になるように、必要に応じてpH値を調整するのが好ましい。最終的なpH値が下限値未満になるようであると、溶液中に多量のタンタルまたはニオブが残留し、水酸化タンタルや水酸化ニオブの生産性が低下する。他方、上限値を超えるようであると、この後に行われる焼成工程において焼結し、得られる粒子が固いものになりやすい。そして、生産性がより高く、しかも焙焼時に焼結が生じないようにするには、混合・沈澱生成工程で得られる混合物の最終的なpH値が9〜10になるようにするのがより好ましい。
【0036】
沈澱剤の添加速度であるが、フッ化タンタル溶液中またはフッ化ニオブ溶液中に沈澱剤を添加する場合、1分間当たり、フッ化タンタル溶液中のタンタルまたはフッ化ニオブ溶液中のニオブの3.0%〜30%が中和されるような速度(中和速度)が好ましい。5.0%〜20%が中和されるような速度であればさらに好ましい。また、沈澱剤を撹拌しながら当該沈澱剤(通常は水溶液またはスラリー)中にフッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液を添加する方法の場合、フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液を1分間当たり全添加量の3.0%〜30%添加するのが好ましい。全添加量の5.0%〜20%添加するのがさらに好ましい。添加速度が下限値未満では、最終的に得られる水酸化タンタル粉末や水酸化ニオブ粉末の粒子が大きくなりやすいからである。他方、上限値を超えると、発熱が激しく混合物の温度等を安定した状態に保持することが難しく、しかも最終的に得られる水酸化タンタル粉末や水酸化ニオブ粉末の粒子の大きさが不均一になりやすいからである。
【0037】
なお、混合・沈澱生成工程では、必要に応じて、上記のようにして行う混合・沈澱生成の前処理として、アンモニア水などを添加する予備中和を行っても良い。このような予備中和を行うと、その後の沈澱剤の添加において添加速度を速くしても過度の発熱を防止できるので、例えば比較的低い温度に保ちたいような場合に有効である。また、沈澱剤として炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムを使用する場合に、アンモニアで予備中和を行うと、pHが適正範囲まで上がりやすく、より多くの沈澱物が得られる。
【0038】
混合・沈澱生成工程が終了すると、生成された沈澱物(水酸化物)に対して洗浄を施し、洗浄された沈澱物を得る(第3工程)。
【0039】
洗浄方法としては種々の方法を用いることができるが、主な方法は次の4つの方法である。すなわち、i)沈澱物を沈降させた状態で上澄み液を取り除いて洗浄液を添加しリパルプ(混合・撹拌)するという工程を適宜回数(例えば2回〜6回)繰り返し、その後濾過を行って沈澱物と溶液とを分離する洗浄方法、ii)濾過(例えばフィルタープレス法による濾過)を行って得られた濾過ケーキと洗浄液をリパルプするという工程を適宜回数(例えば1回〜5回)繰り返し、その後濾過を行って沈澱物と溶液とを分離する洗浄方法、iii)濾過(例えば真空濾過法やフィルタープレス法による濾過)を行って得られた濾過ケーキを濾過装置内に存置させたまま洗浄液を通液する洗浄方法、iv)洗浄液を通液可能な濾過装置(例えばロータリーフィルタープレス)を用いて、濾過を行いつつ同時に洗浄を行う洗浄方法である。なお、実際の洗浄では、1種類の洗浄方法だけを使用してもよいし、複数種類の洗浄方法を組合せて使用してもよい。
【0040】
洗浄液は水でもよいがアンモニア性水溶液がより好ましい。また、アンモニア性水溶液による洗浄後に水による洗浄を実施してもよい。洗浄に用いる水やアンモニア性水溶液の調製に用いる水としては、純水あるいは超純水が不純物が少なく好ましい。また、ここでいうアンモニア性水溶液とは、例えば、アンモニア水、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液などである。このような洗浄液としては、換算により求められるアンモニア濃度が0.1重量%〜5.0重量%であるのが好ましい。濃度0.1重量%未満では十分なフッ素低減効果(洗浄効果)が得られないからである。他方、濃度が5.0重量%を超える洗浄液を用いても、得られるフッ素低減効果は変わらず、フッ素低減成分を無駄に使うこと(コスト高)になるからである。また、リパルプ工程を適宜回数繰り返して洗浄を行う場合であれば、例えば3回目(あるいは4回目以降)の工程で使用された洗浄液を、次の沈澱物に対する洗浄における1回目または2回目のリパルプ工程で再利用する等、洗浄液の一部を再利用することでコストを低減することも可能である。
【0041】
水酸化物である沈澱物を得ると、得られた沈澱物に対して、水蒸気含有雰囲気中で水蒸気含有ガス処理を施す(第4工程)。
【0042】
水蒸気含有ガス処理の方法としては、例えば、蓋を閉じた状態で用いる閉タイプの容器に沈澱物を入れて加熱し、所定時間、所定温度に保持する方法がある。この方法によれば、沈澱物に含まれる水分を利用して水蒸気雰囲気をつくることができ、しかも容器を閉じた状態にしておくと水分の逃げが防止される状態あるいは水分の逃げが徐々に進行する状態にすることができ、水蒸気雰囲気が比較的長時間維持される。また、開放状態で用いられる開タイプの容器に沈澱物を入れて加熱し、所定時間、所定温度に保持する方法がある。
【0043】
これらの方法によって水蒸気含有ガス処理を行う場合に、水蒸気含有ガス雰囲気を維持するための水分が不足することがある。特に開タイプの容器を用いる場合に水分の不足が生じやすい。そこで、水分が不足して水蒸気含有ガス雰囲気を所望の処理時間の間維持できないような場合は、容器内または容器の周囲に必要に応じて水分を供給しながら処理を行うことが好ましい。
【0044】
水分供給方法としては、沈澱物を容器内に入れる時に同時に水分を供給する方法がある。例えば、分離・洗浄工程によって得られた水分を含む沈澱物を乾燥することなく、あるいはさらに水を加えて容器に入れる方法はこの方法に含まれる。また、沈澱物を容器に入れた後、水蒸気含有ガス処理中に水分を供給する方法がある。例えば、容器内または容器の周囲に、加湿器等を用いて水蒸気含有ガスや水蒸気を供給する方法や、噴霧器等を用いて霧状等の水を供給する方法などである。
【0045】
このように、水蒸気含有ガス処理では、水分を供給できるので、強熱減量がどのような値の沈澱物であっても処理可能である。ただし、水蒸気含有ガス処理前に乾燥した場合においては、乾燥後の強熱減量が理論強熱減量の20%未満(つまり水酸化タンタルでは3.4%未満、水酸化ニオブでは5.1%未満)になると、その後に水分を供給して水蒸気含有ガス処理を行ったとしても、十分な微粒化効果およびフッ素低減効果が得られない。つまり、水蒸気含有ガス処理開始時の沈澱物の強熱減量は、水酸化タンタルでは3.4%以上、水酸化ニオブでは5.1%以上が必要である。また、水蒸気含有ガス処理開始時の沈澱物の強熱減量は、開タイプの容器でしかも水蒸気含有ガス処理中に外部から水分を供給しない場合を除いては、90%以下が好ましい。90%を超えると、水蒸気含有ガス処理後の強熱減量も非常に大きく、後の乾燥工程や、乾燥を行わずに行われる焙焼工程のコストが増大する。他方、開タイプの容器でしかも水蒸気含有ガス処理中に外部から水分を供給しない場合、沈澱物の強熱減量は80%以上が好ましい。これ未満では処理の途中で水分が不足する状態になる可能性が高いからである。さらに、閉タイプの容器の場合の水蒸気含有ガス処理開始時の強熱減量は40%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。強熱減量がこのような値であれば、水蒸気含有ガス処理の途中で水分が不足するようなことははとんど生じないからである。
【0046】
なお、水蒸気含有ガスとしては、空気と水蒸気との混合ガスのほか、酸素、窒素、水素あるいはアルゴン等のガスと水蒸気との混合ガスなどを用いることができるが、用意することが容易であるなど利便性が高い点で、空気と水蒸気との混合ガスが好ましい。
【0047】
容器および閉タイプ容器の蓋の材質としては、例えば、高分子材料、耐蝕性を有する金属あるいは合金、シリカ、アルミナ、マグネシア等のセラミックスを挙げることができる。これらの中でも高分子材料が容器材料として好ましい。容器構成材料による沈澱物の汚染をより確実に防止できるからである。容器材料として好適な高分子材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルペンテン、フッ素樹脂等を挙げることができる。これらの中でもフッ素樹脂は耐熱温度が高く特に好ましい。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),パーフルオロアルコキシアルカン(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、PFA),エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE),パーフルオロエチレン−プロペン共重合体(FEP),ポリビニリデンフルオライド(PVdF),エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)を挙げることができる。
【0048】
そして、蓋の形態としては、シート状のものなど種々の形態のものを用いることができる。例えば、フッ素樹脂等の高分子材料製のシートを用いると、閉タイプの容器の容器本体と蓋の間にわずかな隙間が形成され、水蒸気含有ガス処理時に水蒸気含有ガスが少しずつ容器外へ出るため、水蒸気含有ガス処理後に得られる処理物中の含水含有率は低くなる。処理物の水分含有率が低ければ、その後の乾燥における乾燥コストが低く抑えられる。なお、高分子材料製の蓋(例えば高分子材料製のシート状の蓋)には紙製の濾紙が含まれる。
【0049】
容器内を所定温度に加熱して保持する手段としては、ヒーターなどの加熱手段や乾燥機など、種々の加熱手段を用いることができる。それらの中で、好ましい手段としては、例えば、バッチ式のヒータや乾燥器(加熱タイプ)を挙げることができる。バッチ式の加熱手段によれば容器内または容器の周囲の雰囲気を比較的容易に安定させることができる。なお、閉タイプの容器に比べて水蒸気ガス雰囲気を安定的に確保することが難しい開タイプの容器を用いる場合に、特にバッチ式の加熱手段が好ましい。また、加熱保温手段として乾燥機を用いると、水蒸気含有ガス処理後、乾燥を行う場合に、容器を移動させることなく乾燥でき作業性に優れる。
【0050】
水蒸気含有ガス処理時間は0.5時間以上が好ましい。これより短いと十分なフッ素低減効果や微粒化効果が得られないからである。そして、これらの点を考慮すると、処理時間は1時間以上がより好ましい。他方、処理時間の上限は特に限定されることはないが、60時間以下が好ましい。60時間以上処理を行ってもフッ素低減効果や微粒化効果がそれほど高まることはないからである。
【0051】
水蒸気含有ガス処理温度は50℃〜300℃が好ましい。50℃未満では、十分なフッ素低減効果や微粒化効果が得られないからである。他方、300℃を超えると、微粒化効果が低減するからである。そして、処理中の雰囲気ガス中の水蒸気濃度がある程度高い方がフッ素低減効果や微粒化効果は高く、この点を考慮すると、処理温度は水の沸点である100℃以上が好ましい。
【0052】
水蒸気含有ガス処理が終了すると、処理済の沈澱物を乾燥して、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを得る(第5工程)。
【0053】
乾燥方法は、特に限定されるものではなく、水蒸気含有ガス処理済の沈澱物から水分を除去できればどのような方法でもよい。例えば、水蒸気含有ガス処理において閉タイプの容器を用いると共に水蒸気含有ガス処理用の加熱保持手段として乾燥機を用いる場合に、水蒸気含有ガス処理で用いる乾燥機を乾燥手段として用いることができる。この場合、水蒸気含有ガス処理終了後も乾燥機の運転を継続することとすれば、蓋を取り外して容器内を開放状態にするだけで乾燥工程を行うことができ、乾燥を簡単に行うことができる。また、開タイプの容器を用いる場合であれば、必要に応じて行っていた水分供給を水蒸気含有ガス処理終了の時点で停止し、この状態で乾燥機を運転し続けて乾燥してもよい。乾燥温度は100℃〜300℃が好ましい。100℃未満では、乾燥対象である沈澱物の強熱減量を理論強熱減量の90%以下にすることが困難だからである。他方、300℃を超えると、乾燥対象である沈澱物の一部が酸化タンタルや酸化ニオブになるおそれがあるからである。なお、水蒸気含有ガス処理によって得られた処理物の強熱減量が既に理論強熱減量の90%以下の場合は、水蒸気含有ガス処理中に乾燥(工程)が行わたことになるので、水蒸気含有ガス処理後、さらに乾燥工程を行う必要はない。例えば、水蒸気含有ガス処理開始前に外部から水分を補給せずに長時間水蒸気含有ガス処理を行うと、水蒸気含有ガス処理の途中で水分がなくなって乾燥(工程)が行われたのと同じ状態になる。
【0054】
乾燥によって水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを得ると、必要に応じてこれを粉砕し(第6工程)、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの粉末を得る。
【0055】
乾燥により得られたものが既に粉末の状態であれば必ずしも粉砕する必要はないが、乾燥により得られたものはかたまり状のものを含んでいることがあり、このような場合は特に粉砕を行うのが好ましい。粉砕方法としては、ボール等の粉砕媒体を用いて粉砕する方法、得られた水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの粒子を衝撃板等に衝突させて粉砕する方法、当該粒子どうしを衝突させて粉砕する方法あるいはこれらの粉砕方法を組合せて粉砕する方法など乾式の粉砕方法が好ましい。そして、粉砕媒体を用いて粉砕する方法で用いる場合、粉砕媒体としては、球形または円柱形状のものが使用される。また、材質としては、少なくとも粉砕媒体の表面がナイロン等のプラスチック,ジルコニア,アルミナ等からなるものが好ましい。したがって、媒体全体がこれらの材質からなるもの他、プラスチック等の材質が粉砕媒体の表面にコーティングされたものも好ましい。そして、コンタミネーションの少ないプラスチック製の粉砕媒体またはこのようなプラスチックがコーティングされた粉砕媒体が特に好ましい。
【0056】
なお、粉砕する工程を用いる場合と比べると、水酸化タンタル粉末または水酸化ニオブ粉末の収率は低くなりやすいが、粉砕する工程に替えて、ふるいに通す工程を用いても良い。ふるいを通過したものは十分微粒だからである。なお、ふるい(篩上)に残留した水酸化物を粉砕して再度ふるいを通すと収率が向上する。本工程で用いるふるいとしては、目開きが75μm〜500μmのものを必要に応じて選んで用いる。なお、粉砕したものをふるいに通すようにすると、微粒でより粒の揃った粉末を得ることができるのでより好ましい。
【0057】
このように、分離・洗浄工程によって得られた沈澱物に対して、乾燥前に、水蒸気含有ガス処理を施すと、乾燥によって均一に分散する状態に混合しやすい水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを製造できる。
【0058】
酸化タンタルまたは酸化ニオブの製造方法
次に、酸化タンタルまたは酸化ニオブの製造方法の好適な実施形態を、図1に示した製造工程のフローを参照しつつ説明する。
【0059】
まず、タンタルおよび/またはニオブ含有しており粉砕された状態の原料を用意し、この原料を用いて中間原料である水酸化タンタルまたは水酸化ニオブを得る。中間原料として用いる水酸化タンタルまたは水酸化ニオブは、強熱減量が理論強熱減量の20%以上のもの(つまり、強熱減量が3.4%以上の水酸化タンタル、または強熱減量が5.1%以上の水酸化ニオブ)である。なお、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの製造方法としては、例えば、先に実施形態として説明した水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの製造方法を挙げることができる。そして、先に説明した実施形態の分離・洗浄工程(第3工程)後に得られる沈澱物、水蒸気含有ガス処理工程(第4工程)後に得られる処理品、乾燥工程(第5工程)後に得られる乾燥品、あるいは粉砕/分級工程(第6工程)後に得られる粉砕品や分級品(つまり最終的に得られる水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの粉末)を本実施形態の中間原料として用いることができる。なお、原料として用いる水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの製造工程は、先に説明したとおりであり、その説明を省略する。
【0060】
中間原料として、分離・洗浄工程(第3工程)後に得られた沈澱物を用いる場合は、これに水蒸気含有ガス処理を施し(第7工程)、得られた処理品を焙焼して、酸化タンタルまたは酸化ニオブを焼成する(第8工程)。水蒸気含有ガス処理工程については先に説明したので、ここでは説明を省略する。
【0061】
また、中間原料として、水蒸気含有ガス処理工程(第4工程)後の処理品、乾燥工程(第5工程)後の乾燥品、あるいは粉砕/分級工程(第6工程)後の分級品を用いる場合は、用意した中間原料を焙焼して、酸化タンタルまたは酸化ニオブを焼成する(第8工程)。
【0062】
上記焙焼工程(第8工程)における焙焼温度(焼成温度)は350℃〜800℃が好ましい。下限値未満の焼成温度では、酸化タンタルまたは酸化ニオブを焼成によって得ることが難しいからである。別言すれば、下限値未満の焼成温度では、強熱減量を3.0重量%以下にすることが難しいからである。他方、上限値を越える焼成温度では、比表面積(例えばBET法比表面積)が大きな酸化タンタルまたは酸化ニオブを得ることができないからである。これらの点を考慮すると焼成温度は350℃〜700℃であるのがより好ましい。また、酸化ニオブを製造する場合、焙焼温度は450℃以上がより好ましい。なお、水蒸気含有ガス処理後(ただし、水蒸気含有ガス処理後に乾燥を行う場合は乾燥後)、焙焼工程の初期段階までの間に、必要に応じて水を供給してもよい。酸化タンタルや酸化ニオブの製造において、このような水の供給を行うと、焙焼時のフッ素低減効果や、最終的に得られる酸化タンタルや酸化ニオブの比表面積を大きくする効果を若干得ることができる。
【0063】
焙焼時間は3時間〜80時間が好ましい。3時間未満では、最終的に得られる酸化タンタルまたは酸化ニオブの強熱減量を3.0重量%以下にすることが難しく、十分に酸化された酸化タンタルまたは酸化ニオブを得ることが難しいからである。特に、比較的低温領域の温度で焼成した場合、強熱減量を3.0重量%以下にすることが難しい。他方、80時間を超えて焼成したとしても、得られる酸化タンタルまたは酸化ニオブのフッ素含有率は低くならず、強熱減量も低くならないからである。
【0064】
焼成により酸化タンタルまたは酸化ニオブを得ると、必要に応じてこれを粉砕して(第9工程)、酸化タンタル粉末または酸化ニオブ粉末を得る。
【0065】
焼成により得られたものが既に粉末の状態であれば必ずしも粉砕する必要はないが、焼成により得られたものは、かたまり状のものを含んでいることがあり、そのような場合は特に粉砕を行うのが好ましい。なお、粉砕方法や粉砕時に必要に応じて用いる粉砕媒体については、水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの粉砕工程のところで説明した通りであり、これらの説明を省略する。
【0066】
また、粉砕工程に替えてふるいに通す工程を用いてもよい。ふるいに通過させることで十分に微粒のものが得られるからである。なお、ふるいに通す工程は、粉砕する場合に比べて酸化タンタル粉末または酸化ニオブ粉末の収率が低くなりやすいが、簡単に微粒の酸化タンタルまたは酸化ニオブが得られるという利点がある。この工程で用いるふるいとしては、目開きが75μm〜500μmのものを必要に応じて選んで用いる。なお、粉砕したものをふるいに通すようにすると、微粒で粒の揃った粉末を効率良く得ることができ、より好ましい。
【0067】
【実施例】
水酸化タンタルの製造
まず、タンタルおよびニオブを含有する鉱石をフッ化水素酸を用いて溶解し、濾過して硫酸を加えて液調整を実施し、その後、4−メチル−2−ペンタノンを有機溶媒として用いた溶媒抽出を行って分離・精製することにより、フッ化タンタル溶液(タンタル含有溶液)およびフッ化ニオブ溶液(ニオブ含有溶液)を得た。このようにして得られた溶液のうちのフッ化タンタル溶液に純水を加えて、タンタル濃度が酸化タンタル(Ta2O5)換算で50g/L(グラム/リットル)であるフッ化タンタル溶液を得た(図1の第1工程)。また、沈澱剤として25%(13.2mol/L)アンモニア水を用意した。
【0068】
そして、フッ化タンタル溶液2000Lを沈殿槽に入れて撹拌しながら40℃まで昇温させた後、アンモニア水を槽内の溶液のpHが約9になるまで添加して沈澱物を生成した(第2工程)。なお、アンモニア水の添加速度は17.1L/min(リットル/分)であった。これは、1分間で溶液中のタンタルの約10%を中和する速度に相当する。アンモニア水添加終了後、1時間撹拌を継続した。撹拌終了後、生成物を沈降させるために5時間沈殿槽を静置し、その後分離・洗浄工程を行った(第3工程)。当該工程では、まず、槽内の上澄み液を抜出し、洗浄液2000Lを添加して1時間撹拌し、5時間静置させるという洗浄操作を3回繰り返し行った。洗浄液としては、1容量部の25%アンモニア水と25容量部の純水とを混合して得たものを用いた。この後、純水を洗浄液として用い、同様に上記洗浄操作を1回行った。このような洗浄工程を経て得られたスラリーをフィルタープレスにて濾過して水酸化タンタルのウェットケーキ180kgを得た。得られたウェットケーキの強熱減量は45%(理論強熱減量の266%)であった。
【0069】
このようにして得られたウェットケーキを、実施例1〜実施例10および比較例1〜比較例6においてそれぞれ6kg使用した(実施例2については5セット分のウェットケーキ(5×6kg=30kg)使用した)。
【0070】
実施例1〜9および比較例2,4,5
得られたウェットケーキ(6kg)を水蒸気含有ガス処理し(第4工程)、その後乾燥を行い(第5工程)、ロールクラッシャで解砕して(第6工程)、粉末状の水酸化タンタルを得た。なお、水蒸気含有ガス処理では、シート(蓋)によって蓋をすることが可能なトレイ(閉タイプの容器)を用い、このトレイにウェットケーキ(6kg)を入れて蓋をした状態でバッチ式の乾燥機に入れて水蒸気含有ガス処理を行った。トレイおよびシートはいずれもフッ素樹脂(PTFE)製であった。また、トレイ(閉タイプの容器)は蓋をした状態で若干の隙間を有するものであり、この隙間から水分を徐々に放出させることができるものであった。そして、各実施例1〜6,8,9および比較例2,4,5のように、乾燥工程を有する例では、水蒸気含有ガス終了後、シートを取り外して乾燥を行った。水蒸気含有ガス処理条件、乾燥条件および得られた水酸化タンタルの強熱減量等を表1に示す。
【0071】
比較例1
本比較例では、得られたウェットケーキ(6kg)を水蒸気含有ガス処理を行わずに乾燥し、ロールクラッシャで解砕して粉末状の水酸化タンタルを得た。行われた各工程の方法は実施例1と同じであった。乾燥条件および得られた水酸化タンタルの強熱減量等を表1に示す。
【0072】
比較例3
本比較例では、得られたウェットケーキ(6kg)を水蒸気含有ガス処理したものを水酸化タンタルとした。つまり、本比較例では乾燥工程およびロールクラッシャによる解砕を行わなかった。行われた各工程の方法は実施例1と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件および得られた水酸化タンタルの強熱減量等を表1に示す。
【0073】
比較例6
本比較例では、水蒸気含有ガス処理のトレイとして石英製トレイを用いた。水蒸気含有ガス処理では、石英製トレイ内に白金製シートを敷いた状態でトレイにウェットケーキ(6kg)を詰めて白金製シートで蓋をした状態で、トレイを乾燥機に入れて水蒸気含有ガス処理を行った。これ以外の工程の方法は実施例1と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件、乾燥条件および得られた水酸化タンタルの強熱減量等を表1に示す。
【0074】
実施例10
本実施例では、水蒸気含有ガス処理中に、PTFEシートで蓋をしないトレイ(開タイプ容器)が入れられた乾燥機内に水蒸気を0.5kg/minの割合で吹き込んだ。これ以外、工程の方法は実施例1と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件および得られた水酸化タンタルの強熱減量等を表1に示す。
【0075】
実施例11
本実施例では、上記実施例や比較例と異なる沈澱剤を用いた。まず、実施例1と同様、タンタル濃度が酸化タンタル(Ta2O5)換算で50g/Lであるフッ化タンタル溶液を用意した(第1工程)。また、沈澱剤として炭酸アンモニウム水溶液(100g/L(NH3換算で2.08mol/L))を用意すると共に予備中和に用いる25%アンモニア水を用意した。そして、フッ化タンタル溶液100Lを小型沈殿槽に入れて撹拌しながら25%アンモニア水を1L添加して予備中和を行った。その後、撹拌を続けながら槽内の溶液を50℃まで昇温させた後、炭酸アンモニウム水溶液を54L添加して沈澱物を生成した(第2工程)。なお、炭酸アンモニウム水溶液の添加速度は5.4L/minであった。これは、1分間で溶液中のタンタルの約10%を中和する速度に相当する。炭酸アンモニウム水溶液添加終了後、1時間撹拌を継続した。撹拌終了後、生成物を沈降させるために5時間沈殿槽を静置し、その後、分離・洗浄工程を行った(第3工程)。当該工程は実施例1と同じであるのでその説明を省略する。そして、洗浄工程を経て得られたスラリーを真空濾過機で濾過して水酸化タンタルのウェットケーキ8.4kgを得た。
【0076】
得られたウェットケーキ(6kg)を、水蒸気含有ガス処理し(第4工程)、その後乾燥を行い(第5工程)、ロールクラッシャで解砕して(第6工程)、粉末状の水酸化タンタルを得た。水蒸気含有ガス処理以降の工程の方法は実施例1と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件、乾燥条件および得られた水酸化タンタルの強熱減量等を表1に示す。
【0077】
実施例12
本実施例では、上記実施例や比較例と異なる沈澱剤を用いた。まず、実施例1と同様にタンタル濃度が酸化タンタル(Ta2O5)換算で50g/Lであるフッ化タンタル溶液を用意した(第1工程)。また、沈澱剤として用いられる炭酸水素アンモニウム水溶液(100g/L(NH3換算で1.26mol/L))を用意すると共に予備中和に用いる25%アンモニア水を用意した。そして、フッ化タンタル溶液100Lを小型沈殿槽に入れて撹拌しながら25%アンモニア水を1L添加して予備中和を行った。その後、撹拌を続けながら槽内の溶液を50℃まで昇温させた後、炭酸アンモニウム水溶液を90L添加して沈澱物を生成した(第2工程)。なお、炭酸アンモニウム水溶液の添加速度は9.0L/minであった。これは、1分間で溶液中のタンタルの約10%を中和する速度に相当する。炭酸アンモニウム水溶液添加終了後、1時間撹拌を継続した。撹拌終了後、生成物を沈降させるために5時間沈殿槽を静置し、その後、分離・洗浄工程を行った(第3工程)。分離・洗浄工程は実施例1と同じであるのでその説明を省略する。そして、洗浄工程を経て得られたスラリーを、真空濾過機で濾過して水酸化タンタルのウェットケーキ8.2kgを得た。
【0078】
得られたウェットケーキ(6kg)を、水蒸気含有ガス処理し(第4工程)、その後乾燥を行い(第5工程)、ロールクラッシャで解砕して(第6工程)、粉末状の水酸化タンタルを得た。水蒸気含有ガス処理以降の工程の方法は実施例1と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件、乾燥条件および得られた水酸化タンタルの強熱減量等を表1に示す。
【0079】
各実施例および比較例において得られた水酸化タンタルについては、強熱減量の他、フッ素含有率、BET法比表面積を測定した。測定値を表1に示す。それぞれの測定方法を次に示す。
【0080】
強熱減量:JIS K 0067−1992(化学製品の減量及び残分試験方法)の「4.2 強熱減量試験」に準拠して測定を行った。なお、本測定では強熱温度を1000℃とした。また、本測定では、強熱前の試料の重量(1000℃に加熱する前に一旦100℃〜150℃程度の温度で試料を乾燥させた場合は乾燥前の重量)を基準として強熱減量を算出した。
【0081】
フッ素含有量:フッ素含有率が0.05%以上の可能性がある試料についてはフッ素イオン電極法を用いて測定した。なお、フッ素イオン電極法による測定では酸化ニオブ粉末を、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ試薬によりアルカリ溶融し、さらに温湯抽出したものを測定試料として用いた。また、フッ素含有率が0.05%以下が確実な試料およびフッ素イオン電極法で測定した結果0.05%未満であった試料については、熱加水分解ランタン・アリザリンコンプレクソン吸光光度法(JIS H 1698−1976(タンタル中のフッ素定量方法))に準拠して測定した。
【0082】
BET法比表面積:JIS R 1626−1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2 流動法 キャリアガス−ヘリウム、吸着質ガス−窒素、一点法」に準拠して測定を行った。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示されるように、実施例1や実施例2をはじめ、各実施例の方法では、いずれも水蒸気含有ガス処理が行われており、得られた水酸化タンタルは、いずれもフッ素含有率が低く(1.0重量%以下)、且つ均一に分散する状態に混合できるほど十分にBET法比表面積が大きく(15m2/g以上)、良好なものであった。これに対し、比較例1および比較例2の水酸化タンタルはフッ素含有率が高く、BET法比表面積が小さかった。比較例1では水蒸気含有ガス処理を行わなかったからであると考えられ、また比較例2では水蒸気含有ガス処理を行ったが処理時間が短かった(0.25時間)からであると考えられる。他方、比較例3の水酸化タンタルは、フッ素含有率は低かったが、BET法比表面積を測定できないという問題があることが解った。強熱減量が理論強熱減量の219%と著しく高かったからである。BET法比表面積を測定できない水酸化タンタルは、例えば電子セラミックス用途に好適であるか否か判断できないことから好ましくない。この結果、良好な水酸化タンタルを得るには、水蒸気含有ガス処理を0.5時間以上行うことが好ましく、また水蒸気含有ガス処理後、BET法比表面積を測定できる程度まで乾燥を行うことが好ましいことが解った。
【0085】
比較例4、実施例3,4,2および5は、それぞれ、乾燥工程における乾燥時間の条件が異なる。これらのうち、比較例4の水酸化タンタルは、比較例3同様、フッ素含有率は低かったものの、強熱減量が高過ぎてBET法比表面積を測定できないという問題があることが解った。そして、この結果から、水蒸気含有ガス処理後の乾燥工程における乾燥時間は、水蒸気含有ガス処理によって得られた処理品を強熱減量が理論強熱減量の90%以下になるまで乾燥できる時間が好ましいことが解った。
【0086】
また、実施例7は、水蒸気含有ガス処理時間が上記実施例よりも長い(200時間)ものであった。そして、この結果から、水蒸気含有ガス処理中に乾燥が進んで、得られた処理品の強熱減量が理論強熱減量の90%以下になっている場合は、その後さらに乾燥工程を設ける必要がないことが解った。つまり、実施例7のように水蒸気含有ガス処理(第4工程)を比較的長時間行った場合(特に、処理中に外部から水分を補給せず、容器と蓋との間から水蒸気が少しずつ出て行く場合)にあっては、途中で水分がなくなって強熱減量が理論強熱減量の90%以下になることもあり、長時間行った水蒸気含有ガス処理で乾燥工程(第5工程)を兼ねることができる(換言すれば、長時間処理を行えば途中で蓋を取り外さずに水蒸気含有ガス処理(第4工程)と乾燥工程(第5工程)を連続的に行うことができる)ということが解った。
【0087】
比較例5、実施例8,2,9および比較例6は、それぞれ、水蒸気含有ガス処理温度の条件が異なる。これらのうち、比較例5の水酸化タンタルは、フッ素含有率が高く、BET法比表面積が小さかった。そして、比較例6の水酸化タンタルは、BET法比表面積が小さかった。これらの結果から、水蒸気含有ガス処理温度は50℃〜300℃(特に100℃以上)が好ましいことが解った。また、乾燥工程における乾燥温度も、水蒸気含有ガス処理温度に準じて300℃以下が好ましいことが解った。
【0088】
実施例10,3,11,12および2は、それぞれ、水蒸気含有ガス処理で用いる沈澱剤および又は処理方法が異なる。そして、これらの結果から、全ての沈澱剤は本実施例の水酸化タンタルの製造方法に好適であることが解った。また処理方法としても種々の方法を用いることができるということが解った。
【0089】
酸化タンタルの製造
ここで例示する酸化タンタルの製造例では、中間原料(水酸化タンタル)として、上記実施例1〜12または比較例1〜6で得られた水酸化タンタル、および、沈澱剤としてアンモニア水を使用した分離・洗浄工程(第3工程)後に得られたウェットケーキから分取した水酸化タンタルを用意した。酸化タンタル製造の各実施例または比較例で用いた中間原料(水酸化タンタル)がいずれの実施例や比較例等で製造されたものであるかについては、後掲の表2中に示した。
【0090】
なお、実施例28および比較例13以外の例では、用意した水酸化タンタル(2.5kg)をそのまま中間原料として用いたが、実施例28では、用意した水酸化タンタル(実施例2の水酸化タンタル2.5kg)に純水1Lを加えて混ぜたものを中間原料として用いた。また、比較例13では、ウェットケーキから分取した水酸化タンタル(4.0kg)に純水2Lを加えて混ぜたものを中間原料として用いた。
【0091】
このような中間原料を焙焼して焼成品(酸化タンタル)を得た(第8工程)。当該焙焼工程では、石英製トレイを用意し、石英製トレイ内に白金製シートを敷いてその上に水酸化タンタルを載せて電気炉にて焙焼した。焙焼温度および焙焼時間条件を表2に示す。そして、得られた焼成品を、振動ふるいを用いて粉砕すると同時に分級して(第9工程)、酸化タンタル粉末を得た。なお、振動ふるいでは、粉砕媒体として直径20mmのナイロンコーティング鋼球を用い、ふるいとして目開きが250μmのものを用いた。
【0092】
各実施例および比較例において得られた酸化タンタルについて、強熱減量、フッ素含有率、湿式ふるい評価、BET法比表面積を測定した。各測定値を表2に示す。
【0093】
湿式ふるい評価:JIS Z 8815−1994(ふるい分け試験方法通則)の「6.試験方法 6.2湿式ふるい分け試験」に準拠して、目開き45μmの標準ふるいを使用して行った。また、ふるいを通過しなかった割合(>45μmの割合)は、同JISの「8.結果の表示方法 8.1粒径分布(1)ふるい上百分率」にしたがって計算した。
【0094】
【表2】
【0095】
表2に示されるように、各実施例で得られた酸化タンタルは、いずれもフッ素含有率が低く(1.0重量%以下)、均一に分散する状態に混合できるほど十分にBET法比表面積が大きく(10m2/g以上)、且つ湿式ふるい試験の結果(篩上百分率)が1.0%以下と低く、良好なものであった。これに対し、比較例の酸化タンタルはフッ素含有率が高く、BET法比表面積が小さかった。そして、実施例13〜26と、比較例7〜10は、中間原料が異なること以外の条件は同じであった。この結果、実施例1〜12によって得られた水酸化タンタルを中間原料として用いる酸化タンタルの製造方法(実施例13,14および17〜26)が好ましいことが解った。また、実施例15,16は、比較例3,4の方法によって得られた水酸化タンタルを中間原料として用いたものであるが、これらの実施例では良好な酸化タンタルが得られた。比較例3は、乾燥工程を行わなかった例であり、また比較例4は乾燥工程を行ったが、乾燥時間が短かった例である。この結果、酸化タンタルの製造においては、乾燥工程を必ずしも行う必要はないことが解った。
【0096】
実施例14および27と、比較例11および12は、それぞれ、焙焼工程における焙焼温度の条件が異なる。これらのうち、比較例12の酸化タンタルは、フッ素含有率は低かったが、BET法比表面積が小さく、また湿式ふるい試験の結果も悪かった。この結果から、焙焼工程における焙焼温度(焼成温度)は、350℃〜800℃が好ましいことが解った。
【0097】
実施例28と、比較例13は、いずれも、用意した中間原料である水酸化タンタルに水を加えてスラリー状態にしたものを中間原料としても用いたものである。このうち、比較例13で得られた酸化タンタルは、フッ素含有率が高く、BET法比表面積が小さかった。この結果、焙焼の対象である中間原料は、必ずしも乾燥された状態のものでなくてもよいが、水蒸気含有ガス処理を施したものではなければならないことが解った。
【0098】
水酸化ニオブの製造
既に水酸化タンタルの製造で説明したように、まず、タンタルおよびニオブを含有する鉱石をフッ化水素酸を用いて溶解し、濾過して硫酸を加えて液調整を実施し、その後、4−メチル−2−ペンタノンを有機溶媒として用いた溶媒抽出を行って分離・精製することにより、フッ化タンタル溶液(タンタル含有溶液)およびフッ化ニオブ溶液(ニオブ含有溶液)を得た。このようにして得られた溶液のうちのフッ化ニオブ溶液に純水を加えて、ニオブ濃度が酸化ニオブ(Nb2O5)換算で50g/L(グラム/リットル)であるフッ化ニオブ溶液を得た(図1の第1工程)。また、沈澱剤として25%(13.2mol/L)アンモニア水を用意した。
【0099】
そして、フッ化ニオブ溶液2000Lを沈殿槽に入れて撹拌しながら40℃まで昇温させた後、アンモニア水を槽内の溶液のpHが約9になるまで添加して沈澱物を生成した(第2工程)。なお、アンモニア水の添加速度は28.5L/min(リットル/分)であった。これは、1分間で溶液中のニオブの約10%を中和する速度に相当する。アンモニア水添加終了後、1時間撹拌を継続した。撹拌終了後、生成物を沈降させるために5時間沈殿槽を静置し、その後分離・洗浄工程を行った(第3工程)。当該工程では、まず、槽内の上澄み液を抜出し、洗浄液2000Lを添加して1時間撹拌し、5時間静置させるという洗浄操作を3回繰り返し行った。洗浄液としては、1容量部の25%アンモニア水と25容量部の純水とを混合して得たものを用いた。この後、純水を洗浄液として用い、同様に上記洗浄操作を1回行った。このような洗浄工程を経て得られたスラリーをフィルタープレスにて濾過して水酸化ニオブのウェットケーキ330kgを得た。得られたウェットケーキの強熱減量は70%(理論強熱減量の277%)であった。このようにして得られたウェットケーキを、実施例29〜実施例40および比較例14〜比較例19においてそれぞれ11kg使用した(実施例30については5セット分のウェットケーキ(5×11kg=55kg)使用した)。
【0100】
実施例29〜37および比較例15,17,18
得られたウェットケーキ(11kg)を、水蒸気含有ガス処理し(第4工程)、その後乾燥を行い(第5工程)、ロールクラッシャで解砕して(第6工程)、粉末状の水酸化ニオブを得た。水蒸気含有ガス処理で用いた容器、および水上記含有ガス処理の方法は実施例1(水酸化タンタルの製造例)と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件、乾燥条件および得られた水酸化ニオブの強熱減量等を表3に示す。
【0101】
比較例14
本比較例では、得られたウェットケーキ(11kg)を水蒸気含有ガス処理を行わずに乾燥し、ロールクラッシャで解砕して粉末状の水酸化ニオブを得た。行われた各工程の方法は実施例29と同じであった。乾燥条件および得られた水酸化ニオブの強熱減量等を表3に示す。
【0102】
比較例16
本比較例では、得られたウェットケーキ(11kg)を水蒸気含有ガス処理したものを水酸化ニオブとして得た。つまり、本比較例では乾燥工程およびロールクラッシャで解砕を行わなかった。行われた各工程の方法は実施例29と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件および得られた水酸化ニオブの強熱減量等を表3に示す。
【0103】
比較例19
本比較例では、水蒸気含有ガス処理のトレイとして石英製トレイを用いた。水蒸気含有ガス処理では、石英製トレイ内に白金製シートを敷いた状態でトレイにウェットケーキ(11kg)を詰めて白金製シートで蓋をした状態で、トレイを乾燥機に入れて水蒸気含有ガス処理を行った。これ以外の工程の方法は実施例29と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件、乾燥条件および得られた水酸化ニオブの強熱減量等を表3に示す。
【0104】
実施例38
本実施例では、水蒸気含有ガス処理中に、PTFEシートで蓋をしないトレイ(開タイプ容器)が入れられた乾燥機内に水蒸気を0.5kg/minの割合で吹き込んだ。これ以外、工程の方法は実施例29と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件および得られた水酸化ニオブの強熱減量等を表3に示す。
【0105】
実施例39
本実施例では、上記実施例や比較例と異なる沈澱剤を用いた。まず、実施例29と同様に、ニオブ濃度が酸化ニオブ(Nb2O5)換算で50g/Lであるフッ化ニオブ溶液を用意した(第1工程)。また、沈澱剤として炭酸アンモニウム水溶液(100g/L(NH3換算で2.08mol/L))を用意し、予備中和に用いる25%アンモニア水を用意した。そして、フッ化ニオブ溶液100Lを小型沈殿槽に入れて撹拌しながら25%アンモニア水を1.6L添加して予備中和を行った。その後、撹拌を続けながら槽内の溶液を50℃まで昇温させた後、炭酸アンモニウム水溶液を90L添加して沈澱物を生成した(第2工程)。なお、炭酸アンモニウム水溶液の添加速度は9.0L/minであった。これは、1分間で溶液中のニオブの約10%を中和する速度に相当する。炭酸アンモニウム水溶液添加終了後、1時間撹拌を継続した。撹拌終了後、生成物を沈降させるために5時間沈殿槽を静置し、その後、分離・洗浄工程を行った(第3工程)。当該工程は実施例29と同じであるのでその説明を省略する。そして、洗浄工程を経て得られたスラリーを真空濾過機で濾過して水酸化ニオブのウェットケーキ13.2kgを得た。得られたウェットケーキ(11kg)を、水蒸気含有ガス処理し(第4工程)、その後乾燥を行い(第5工程)、ロールクラッシャで解砕して(第6工程)、粉末状の水酸化ニオブを得た。水蒸気含有ガス処理以降の工程の方法は実施例29と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件、乾燥条件および得られた水酸化ニオブの強熱減量等を表3に示す。
【0106】
実施例40
本実施例では、上記実施例や比較例と異なる沈澱剤を用いた。まず、実施例29と同様に、ニオブ濃度が酸化ニオブ(Nb2O5)換算で50g/Lであるフッ化ニオブ溶液を用意した(第1工程)。また、沈澱剤として炭酸水素アンモニウム水溶液(100g/L(NH3換算で1.26mol/L))を用意し、予備中和に用いる25%アンモニア水を用意した。そして、フッ化ニオブ溶液100Lを小型沈殿槽に入れて撹拌しながら25%アンモニア水を1.6L添加して予備中和を行った。その後、撹拌を続けながら槽内の溶液を50℃まで昇温させた後、炭酸アンモニウム水溶液を149L添加して沈澱物を生成した(第2工程)。なお、炭酸アンモニウム水溶液の添加速度は14.9L/minであった。これは、1分間で溶液中のニオブの約10%を中和する速度に相当する。炭酸アンモニウム水溶液添加終了後、1時間撹拌を継続した。撹拌終了後、生成物を沈降させるために5時間沈殿槽を静置し、その後、分離・洗浄工程を行った(第3工程)。分離・洗浄工程は実施例29と同じであるのでその説明を省略する。そして、洗浄工程を経て得られたスラリーを、真空濾過機で濾過して水酸化ニオブのウェットケーキ12.2kgを得た。得られたウェットケーキ(11kg)を、水蒸気含有ガス処理し(第4工程)、その後乾燥を行い(第5工程)、ロールクラッシャで解砕して(第6工程)、粉末状の水酸化ニオブを得た。水蒸気含有ガス処理以降の工程の方法は実施例29と同じであった。水蒸気含有ガス処理条件、乾燥条件および得られた水酸化ニオブの強熱減量等を表3に示す。
【0107】
また、各実施例および比較例において得られた水酸化ニオブについては、強熱減量の他、フッ素含有率、BET法比表面積を測定した。測定値を表3に示す。
【0108】
【表3】
【0109】
表3に示されるように、実施例29や実施例30をはじめ、各実施例の方法では、いずれも水蒸気含有ガス処理が行われており、得られた水酸化ニオブは、いずれもフッ素含有率が低く(1.0重量%以下)、且つ均一に分散する状態に混合できるほど十分にBET法比表面積が大きく(15m2/g以上)、良好なものであった。これに対し、比較例14および比較例15の水酸化ニオブはフッ素含有率が高く、BET法比表面積が小さかった。比較例1では水蒸気含有ガス処理を行わなかったからであると考えられ、また比較例2では水蒸気含有ガス処理を行ったが処理時間が短かった(0.25時間)からであると考えられる。
【0110】
他方、比較例16の水酸化ニオブは、フッ素含有率は低かったが、強熱減量が著しく高く、BET法比表面積を測定できないという問題があることが解った。そして、この結果から良好な水酸化ニオブを得るには、水蒸気含有ガス処理を0.5時間以上行うことが好ましく、また水蒸気含有ガス処理後、BET法比表面積を測定できる程度まで乾燥を行うことが好ましいことが解った。
【0111】
そして、乾燥工程の乾燥時間条件が異なる、比較例17、実施例31,32,30および33のうち、比較例17の水酸化ニオブは、比較例16同様、フッ素含有率は低かったものの、強熱減量が高過ぎてBET法比表面積を測定できないという問題があることが解った。そして、この結果から、水蒸気含有ガス処理後の乾燥工程における乾燥時間は、水蒸気含有ガス処理によって得られた処理品を強熱減量が理論強熱減量の90%以下になるまで乾燥できる時間が好ましいことが解った。
【0112】
実施例35は、温度120℃であるが、水蒸気乾燥処理を長時間実施することにより途中で水分がなくなり乾燥も兼ねることができたものである。この結果から、水蒸気含有ガス処理中に乾燥され、得られた処理品の強熱減量が理論強熱減量の90%以下になっている場合は、その後さらに乾燥工程を設ける必要がないことが解った。つまり、水蒸気含有ガス処理(第4工程)は乾燥工程(第5工程)を兼ねることができるものであることが解った。
【0113】
比較例18、実施例36,30,37および比較例19は、それぞれ、水蒸気含有ガス処理温度の条件が異なる。これらのうち、比較例18の水酸化ニオブは、フッ素含有率が高く、BET法比表面積が小さかった。そして、比較例19の水酸化ニオブは、BET法比表面積が小さかった。これらの結果から、水蒸気含有ガス処理温度は50℃〜300℃(特に100℃以上)が好ましいことが解った。また、乾燥工程における乾燥温度も、水蒸気含有ガス処理温度に準じて300℃以下が好ましいことが解った。
【0114】
実施例38,31,39,40および30は、それぞれ、水蒸気含有ガス処理で用いる沈澱剤および又は処理方法が異なる。そして、これらの結果から、全ての沈澱剤は本実施例の水酸化ニオブの製造方法に好適であることが解った。また処理方法としても種々の方法を用いることができるということが解った。
【0115】
酸化ニオブの製造
ここで例示する酸化ニオブの製造例では、中間原料(水酸化ニオブ)として、上記実施例29〜40または比較例14〜19で得られた水酸化ニオブ、および、沈澱剤としてアンモニア水を使用した分離・洗浄工程(第3工程)後に得られたウェットケーキから分取した水酸化ニオブを用意した。水酸化ニオブの製造の各実施例および比較例で用いた中間原料(水酸化ニオブ)がいずれの実施例や比較例等で製造されたものであるかについては、後掲の表4に示した。
【0116】
なお、実施例57以外の例では、用意した水酸化ニオブ(2.7kg)をそのまま中間原料として用いたが、実施例57では、用意した水酸化ニオブ(実施例30の水酸化ニオブ2.7kg)に純水1Lを加えて混ぜたものを中間原料として用いた。また、比較例26では、ウェットケーキから分取した水酸化ニオブ(7.5kg)をそのまま中間原料として用いた。
【0117】
そして、中間原料を焙焼した(第8工程)。当該焙焼工程では、石英製トレイを用意し、石英製トレイ内に白金製シートを敷いてその上に水酸化ニオブを載せて電気炉にて焙焼した。焙焼温度および焙焼時間条件を表4に示す。そして、得られた焼成品を、振動ふるいを用いて粉砕すると同時に分級して(第9工程)、酸化ニオブ粉末を得た。なお、振動ふるいでは、粉砕媒体として直径20mmのナイロンコーティング鋼球を用い、ふるいとして目開きが250μmのものを用いた。
【0118】
各実施例および比較例において得られた酸化ニオブについて、フッ素含有率、強熱減量、湿式ふるい評価、BET法比表面積を測定した。測定値を表4に示す。
【0119】
【表4】
【0120】
表4に示されるように、各実施例で得られた酸化ニオブは、いずれもフッ素含有率が低く(0.5重量%以下)、均一に分散する状態に混合できるほど十分にBET法比表面積が大きく(10m2/g以上)、且つ湿式ふるい試験の結果(篩上百分率)が1.0%以下と低く、良好なものであった。これに対し、比較例の酸化ニオブはフッ素含有率が高く、BET法比表面積が小さかった。そして、実施例41〜54と、比較例20〜23は、中間原料が異なること以外の条件は同じであった。この結果、実施例29〜40によって得られた水酸化ニオブを中間原料として用いる酸化ニオブの製造方法(実施例41,42および45〜54)が好ましいことが解った。また、実施例43,44は、比較例16,17の方法によって得られた水酸化ニオブを中間原料として用いたものであるが、これらの実施例では良好な酸化ニオブが得られた。比較例16は、乾燥工程を行わなかった例であり、また比較例17は乾燥工程を行ったが、乾燥時間が短かった例である。この結果、酸化ニオブの製造においては、乾燥工程を必ずしも行う必要はないことが解った。
【0121】
実施例55,42および56と、比較例24および25は、それぞれ、焙焼工程における焙焼温度の条件が異なる。これらのうち、比較例25の酸化ニオブは、フッ素含有率は低かったが、BET法比表面積が小さく、また湿式ふるい試験の結果も悪かった。この結果から、焙焼工程における焙焼温度(焼成温度)は、350℃〜800℃が好ましいことが解った。
【0122】
実施例57は、用意した水酸化ニオブに水を加えてスラリー状態にしたものを中間原料として用いるものであり、また比較例26は、水蒸気含有ガス処理前のウェットケーキを中間原料として用いるものであり、いずれも、強熱減量が多基な値である中間原料を用いるものである。これらのうち、比較例26で得られた酸化ニオブは、フッ素含有率が高く、BET法比表面積が小さかった。この結果、焙焼の対象である中間原料は、必ずしも乾燥された状態のものでなくてもよいが、水蒸気含有ガス処理を施したものではなければならないことが解った。
【0123】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る研摩材によれば、フッ素の含有率が低く、しかも比表面積が大きなタンタルやニオブの酸化物または水酸化物を製造できる。このようなタンタルやニオブの酸化物または水酸化物は、均一に分散する状態に混合しやすいので、電子セラミックス素子の原料等として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブの製造方法、酸化タンタルおよび/または酸化ニオブの製造方法の流れを示すフロー図。
Claims (4)
- フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液と、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して沈澱物を生成する工程と、
生成された沈澱物を分離・洗浄する工程と、
得られた沈殿物を、50℃〜300℃の水蒸気含有ガス雰囲気中に少なくとも0.5時間以上保持する水蒸気含有ガス処理工程と、
当該水蒸気含有ガス処理により得られた処理物を、その強熱減量が理論強熱減量の20%〜90%になるまで乾燥する工程と、を有する水酸化タンタルまたは水酸化ニオブの製造方法。 - フッ化タンタル溶液またはフッ化ニオブ溶液と、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムから選択される少なくとも1種の沈澱剤とを混合して沈澱物を生成する工程と、
生成された沈澱物を分離・洗浄する工程と、
得られた沈殿物を、50℃〜300℃の水蒸気含有ガス雰囲気中に少なくとも0.5時間以上保持する水蒸気含有ガス処理工程と、
水蒸気含有ガス処理された物質を焙焼する工程を有する酸化タンタルまたは酸化ニオブを製造する方法。 - フッ素含有率が1.0重量%以下であり、BET法比表面積が15m2/g以上であり、強熱減量が理論強熱減量に対して、20%〜90%ある水酸化タンタル粉末または水酸化ニオブ粉末。
- フッ素含有率が0.5重量%以下であり、BET法比表面積が10m2/g以上である酸化タンタル粉末または酸化ニオブ粉末。
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