JP2004323283A - フェライト焼結体、フェライト焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高強度なフェライト焼結体を低コストで得るための技術を提供する。
【解決手段】Fe2O3:40〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOからなるフェライト焼結体であって、他の金属元素よりもNiが多い酸化物から構成される偏析物が、面積率で3〜15%含有されるようにした。これにより、製造コストの上昇を回避しつつ、少なくとも20kgf/mm2以上の抗折強度を備えたフェライト焼結体を得ることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】Fe2O3:40〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOからなるフェライト焼結体であって、他の金属元素よりもNiが多い酸化物から構成される偏析物が、面積率で3〜15%含有されるようにした。これにより、製造コストの上昇を回避しつつ、少なくとも20kgf/mm2以上の抗折強度を備えたフェライト焼結体を得ることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフェライト焼結体に関し、特に高強度が必要なフェライト部品に使用するのに適したフェライト焼結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェライト材料が適用される部品には一層の小型化の要求がある。小型部品を得る場合に、フェライト材料の強度が不足すると、その加工過程で、欠け、割れといった不具合が生ずることがある。したがって、より高い強度を発現しうるフェライト材料の開発が望まれている。
【0003】
これまでフェライト材料の強度を向上させる手法として、ZrO2を添加する提案がなされている。例えば、特許第2599887号公報には、Fe2O3を40〜52.5mol%、ZnOを35mol%以下、CuOを2〜20mol%、残部NiOからなる組成を主成分とし、これにZrO2を0.01〜3.0wt%添加含有するチップ部品用磁性材料が開示されている。
また特開平8−157253号公報には、Fe2O3換算で59〜72wt%、NiO換算で7〜31wt%、ZnO換算で1〜23wt%、CuO換算で0〜4wt%、MnO換算で0〜2wt%であるNi−Zn系フェライトの主成分100wt%に対して0.1〜10.0wt%のZrO2を添加し、平均結晶粒径が1〜18μmである高強度フェライトが開示されている。そして、特開平8−157253号公報によれば、3点曲げ強度で15kgf/mm2以上の強度のフェライト材料が得られており、その実施例では3点曲げ強度で20kgf/mm2を超える強度をフェライト材料も開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2599887号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−157253号公報(特許請求の範囲、表1〜4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、フェライト材料の強度を向上させるためにZrO2を添加することは有効な方法である。しかしながら、高い強度を得るためにZrO2の添加量を増やすと、その一方で透磁率等の特性が劣化してしまう。
また、フェライト材料を用いた部品にも、当然のように、低コスト化が要求される。高強度なフェライト材料を得る場合にも、その要求を満足する必要がある。したがって、高強度化のために添加物を添加する場合には、その添加物を安価なものにすべきであるが、従来提案されているZrO2は比較的高価である。よって、高強度なフェライト材料を、より低コストで得るための技術が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、透磁率等の特性を劣化させることなく、高強度なフェライト焼結体を得るための技術を提供することを課題とする。また本発明は、高強度なフェライト焼結体を低コストで得るための技術を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は様々な検討を行った。その結果、Feが比較的少ない組成とし、フェライト焼結体中に偏析物を所定範囲内で偏析させることが、高強度なフェライト焼結体を得る上で極めて有効であることを知見した。すなわち、本発明は、Fe2O3:40〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOからなるフェライト焼結体であって、他の金属元素よりもNiが多い酸化物から構成される偏析物が、面積率で3〜15%含有されることを特徴とするフェライト焼結体を提供する。なお、本発明でいうところの「他の金属元素」とは、フェライト焼結体を構成するNi以外の金属元素である。
本発明に係るフェライト焼結体において、上述した偏析物は、Cuおよび/またはZnをさらに含有するウスタイト(FeO)相とすることができる。Feを比較的少ない組成とすることで、ウスタイト相を容易に生成させることができる。
【0008】
また、平均結晶粒径を2〜6μmとすることが、高強度かつ高特性のフェライト焼結体を得る上で有効である。
上述した本発明のフェライト焼結体によれば、抗折強度が20kgf/mm2以上という高い強度を得ることができる。
また、本発明では、上述した偏析物をフェライト焼結体の三重点に散在させることができる。詳しくは後述するが、本発明に係るフェライト焼結体において、偏析物はクラックの成長を抑制するという働き、および結晶粒径を微細化するという働きを担う。こうした働きを担う偏析物を、フェライト焼結体の三重点に散在させることで、フェライト焼結体の高強度化が達成される。なお、本発明に係るフェライト焼結体において、すべての偏析物を三重点に散在させる必要はない。一部の偏析物は独立した粒としても存在しうるし、結晶粒界に散在することもある。
【0009】
さらに本発明は、Fe2O3量をa(mol%)、NiO量をb(mol%)、CuO量をc(mol%)、ZnO量をd(mol%)としたときに、(b+c+d)/a>1であり、かつ抗折強度が22kgf/mm2以上であることを特徴とするフェライト焼結体を提供する。
本発明に係るフェライト焼結体によれば、25℃における飽和磁束密度を350mT以上とすることができる。
【0010】
また、本発明は、焼成に供される粉砕粉末の粒度分布を所定の範囲に制御するという新規なアプローチで、高強度かつ高特性なフェライト焼結体を、安価に製造する技術も提供する。すなわち、本発明のフェライト焼結体の製造方法は、D50(粒度分布の累積体積頻度が50%となる粒径)が0.8〜1.2μm、D90(粒度分布の累積体積頻度が90%となる粒径)が1〜3μmであり、Fe2O3量が40〜48.5mol%であるNi−Cu−Znフェライト粉末を作製し、このNi−Cu−Znフェライト粉末を加圧成形することにより所定形状の成形体を作製し、さらに成形体を焼結することでフェライト焼結体を得ることを特徴とする。Fe2O3量を40〜48.5mol%と少な目に設定するとともに、D50およびD90を所定の範囲内に制御することで、高い強度を得ることができる。
【0011】
本発明のフェライト焼結体の製造方法において、Ni−Cu−Znフェライト粉末の組成は、Fe2O3:42〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOとすることが望ましい。
ここで、D90とD50の比「D90/D50」を2.6未満とすることが、高強度のフェライト焼結体を得る上で有効である。
本発明のフェライト焼結体の製造方法によれば、抗折強度が20kgf/mm2以上という高強度のフェライト焼結体を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
はじめに、本発明の概要を説明する。
本発明は、Feが比較的少ない組成で、結晶粒径を微細化し、かつ偏析物を所定範囲内で偏析させることで、高強度かつ高特性のフェライト焼結体を得ることを特徴とする。本発明において、Feが比較的少ない組成とは、Ni,Cu,ZnがFeに対して余剰となる組成を意味する。
【0013】
<組織>
まず本発明によって得られるフェライト焼結体の組織について説明する。
本発明によって得られるフェライト焼結体は、Ni−Cu−Znフェライト結晶粒を主体とし、偏析物が占める割合が面積率で3〜15%である。偏析物量が面積率で3〜15%の範囲にあるときに、高い抗折強度を得ることができるという知見に基づく。詳しくは後述するが、本発明における偏析物は、Niが多い酸化物である。
物が破壊するときにはクラックが発生して、それが成長していく必要がある。つまり、クラックの成長をいかにして抑制するか、ということがフェライト焼結体の強度を向上させる上で鍵となる。クラックが成長する上では、偏析物が障害物となる。換言すれば、所定量の偏析物をフェライト焼結体中に偏析させることで、クラックの成長を抑制し、フェライト焼結体の強度を向上させることができる。
このように、偏析物は、クラックの成長を抑制するという働きを担うが、偏析物量が3%未満になるとクラックの成長を抑制することが困難となる。一方、偏析物量が15%を超えると、焼結密度が低下したり、透磁率が低下するという不具合が生じる。よって、本発明では偏析物量を面積率で3〜15%とする。望ましい偏析物量は3〜12%、より望ましい偏析物量は5〜12%である。
【0014】
ここで、本発明において、偏析物量は、以下の方法で求めるものとする。まず、フェライト焼結体を研磨し、その表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察する。フェライト結晶粒と偏析物は、その重さが異なるために、SEM組成像においてフェライト結晶粒はグレー、偏析物は白色に近い色として観察される。偏析物量の数値化は、このグレーと白のコントラストを明確にし、SEM組成像中の色の薄い部分の面積比を偏析物量として算出する。
【0015】
上述のように、本発明では、Feが比較的少ない組成を採用する。Ni−Cu−Znフェライトでは、通常、Ni,CuおよびZnが、Feとともにフェライトを生成するが、本発明ではFe量を比較的少なくしているために、化学量論組成よりも余剰のNi,Cuおよび/またはZnが、Niの多い酸化物としてフェライト焼結体中に偏析してしまう。この偏析物は、Niが多いウスタイト(FeO)相で構成され、このウスタイト相には、Niの他に、Cuおよび/またはZnが含有されうる。偏析物は主として三重点に散在するが、独立した結晶粒として存在しているものもある。また、一部の偏析物は結晶粒界に存在しうる。
【0016】
ここで、Ni−Cu−Znフェライトの化学量論組成は式(1)に示すとおりである。
{(NiO)b(CuO)c(ZnO)d}(Fe2O3)a ・・・式(1)
ただし、式(1)中、a,b,c,dはmol%であり、b+c+d=aである。
したがって、Ni,Cu及びZnを化学量論組成よりも余剰に含ませるためには、以下の式(2)が成立するように組成を決定する。
(b+c+d)/a>1 ・・・式(2)
【0017】
式(2)に示すようにNi,CuおよびZnが化学量論組成よりも余剰である場合には、化学量論比のフェライトが形成されるが、それとともにFeとフェライトを生成することができなかったNi,Cuおよび/またはZnがウスタイトを構成する元素となる。
【0018】
ところで、フェライト焼結体の結晶粒径が小さいほど、クラックがたどる経路が長くなり、クラックの伝播を抑制しやすい。換言すれば、フェライト焼結体の結晶粒径を微細化することで、フェライト焼結体の強度を高めることができる。
平均結晶粒径が小さくなると焼結体の強度は向上する傾向にあるが、平均結晶粒径が2μm未満になると強度が低下する。焼結密度が低下するためと推察される。一方、平均結晶粒径が6μmを超えると、クラックがたどる経路が短くなり、クラックの伝播が進行しやすい。このため、やはり強度が低下し、20kgf/mm2以上という高い抗折強度を得ることが困難となる。よって、本発明では、フェライト焼結体の平均結晶粒径を2〜6μmとする。望ましい平均結晶粒径は2〜5μm、より望ましい平均結晶粒径は3〜5μmである。
ここで、結晶粒径と偏析物は密接に関係しており、偏析物を本発明が推奨する範囲内で偏析させることで、フェライト焼結体の平均結晶粒径を微細化、具体的には平均結晶粒径を2〜6μmとすることができる。偏析物が存在すると、フェライト焼結体の平均結晶粒径が微細化されるのは、偏析物の存在がフェライト結晶粒の粒成長を阻害するためである。
【0019】
<組成>
次に、本発明によるフェライト焼結体の組成範囲の限定理由について説明する。
本発明によるフェライト焼結体において、Fe2O3の量は40〜48.5mol%とする。
Fe2O3が40mol%より少ないと焼結密度が低下して、焼結体の抗折強度が低下する。一方、Fe2O3が48.5mol%を超えると偏析物が減少し、焼結体の平均結晶粒径が大きくなるため、やはり焼結体の抗折強度が低下してしまう。
また、磁気特性の観点からは、Fe2O3の量は透磁率に大きな影響を与える。Fe2O3が40mol%より少ないと初透磁率(μi)が低い。一方、フェライトとしての化学量論組成に近づくにしたがって透磁率は上昇するが、化学量論組成をピークとして急激に低下する。
したがって、本発明では、高い抗折強度および高い磁気特性を兼備するために、Fe2O3の量は40〜48.5mol%とする。望ましいFe2O3量は42〜48.5mol%、さらに望ましいFe2O3量は45〜48mol%である。
【0020】
CuOの量は3〜9mol%とする。CuOが3mol%より少ないと焼結密度が低下して、焼結体の抗折強度が低下する。一方、CuOが9mol%を超えると結晶粒が異常成長し、焼結体の平均結晶粒径が大きくなり抗折強度が低下する。したがって、本発明では、CuO量を3〜9mol%の範囲とする。望ましいCuO量は5〜9mol%、さらに望ましいCuO量は6〜9mol%である。
【0021】
ZnOの量は15〜35mol%とする。ZnOは、その量の増加とともに透磁率を向上させるが、15mol%未満だとμiが不足し、一方35mol%を超えるとキュリー温度が低くなりすぎる。したがって、本発明ではZnO量を15〜35mol%の範囲とする。望ましいZnO量は18〜30mol%、さらに望ましいZnO量は20〜30mol%である。
【0022】
なお、Mn2O3は、通常、Fe2O3中に不純物として含有されており、本発明においてもその含有を許容する。その含有量は、Fe2O3のグレードによって左右されるが、1mol%を超えるとフェライト焼結体のμiが低下する。したがって、Mn2O3は1mol%以下に規制することが望ましい。望ましいMn2O3量は0.5mol%以下、さらに望ましいMn2O3量は0.3mol%以下である。
【0023】
以上、本発明のフェライト焼結体の組成範囲の限定理由を説明した。ここで、本発明によるフェライト焼結体は、Fe2O3量の上限が48.5mol%と、従来よりも低めである点に特徴を有する。上述の通り、Fe2O3量は透磁率に大きな影響を与えるものであり、Fe2O3量が49mol%前後の範囲で特に高い透磁率を得ることができる。このため、従来のフェライト焼結体では、通常、Fe2O3量を48.5〜49.8mol%としている。ところが、Fe2O3量が48.5mol%を超えると、焼結体中の偏析物量が3%未満となり、20kgf/mm2という高い抗折強度を得ることが困難となる。よって、本発明では、高い磁気特性のみならず、高い抗折強度を得るための1つの要素として、Fe2O3量を40〜48.5mol%の範囲とする。
【0024】
本発明のフェライト焼結体は、上述した組成を適宜選択することにより、20kgf/mm2以上、さらには22kgf/mm2以上という高い抗折強度を得ることができる。それに加えて、25℃における飽和磁束密度が350mT以上(測定磁界:4kA/m)、さらには400mT以上という特性を得ることができる。また、20kgf/mm2以上という高い抗折強度を維持しつつ、25℃におけるμiが150以上、さらには200以上という特性も得ることができる。
【0025】
次に、本発明に係るフェライト焼結体の製造方法を説明する。本発明は、焼結に供されるフェライト粉末の粒度分布を以下に説明するように制御することで、高い抗折強度を備えたフェライト焼結体を得ることを特徴とする。
【0026】
<出発原料>
原料としては、酸化物または加熱により酸化物となる化合物の粉末を用いる。具体的には、Fe2O3粉末、CuO粉末およびZnO粉末等を用いることができる。各原料粉末の平均粒径は0.1〜3.0μmの範囲で適宜選択すればよい。
【0027】
<仮焼>
原料粉末を所定量だけ秤量したのちに、これら原料粉末をボール・ミル等の混合装置を用いて十分混合した後に、仮焼を行う。混合は、ボール・ミルの運転条件にも左右されるが、20時間程度行えば均一な混合状態を得ることができる。仮焼温度は800〜1000℃の範囲内での所定温度で、また雰囲気はN2あるいは大気中で行えばよい。仮焼きの安定時間は0.5〜5.0時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0028】
<粉砕>
仮焼き後には、例えばボール・ミルを用いて仮焼き体を粉砕する。粉砕は、混合と同様に、湿式で行うことが望ましい。この粉砕の条件を特定することにより、得られるフェライト粉末の粒度分布を本発明が推奨する所定の範囲に制御することが可能となる。具体的には、本発明では、粉砕粉末のD50(D50:粒度分布の累積体積頻度が50%になる粒径)が0.8〜1.2μm、D90(D90:粒度分布の累積体積頻度が90%になる粒径)が1〜3μmとなるように、粉砕条件を制御する。
粉砕粉末のD50が1.2μmを超えると、焼結密度の低下や残留ポアの増加により抗折強度が低下する。一方、粉砕粉末のD50が0.8μmを下回ると、ハンドリング面で問題がある。
また、粉砕粉末のD90が3μmを超えると、やはり焼結密度の低下や残留ポアの増加により抗折強度が低下する。そして、粉砕粉末のD90が1μmを下回ると、ハンドリング面で問題がある。
よって、本発明では、粉砕粉末のD50を0.8〜1.2μm、D90を1〜3μmとする。上述した組成を採用するとともに、D50およびD90をこの範囲で制御することで、製造コストの上昇を招くことなく20kgf/mm2以上という従来よりも高い抗折強度を備えたフェライト焼結体を得ることができる。D90とD50の比「D90/D50」は2.6未満とすることが、高強度のフェライト焼結体を得る上で有効である。望ましい粒度比「D90/D50」は2.5以下、より望ましい粒度比「D90/D50」は1.2〜2.5である。
【0029】
<造粒>
粉砕粉末は、後の成形工程を円滑に実行するために顆粒に造粒することが望ましい。顆粒を作製するには、粉砕粉末に適当な結合剤、例えばポリビニルアルコール(PVA)を少量添加し、これをスプレー・ドライヤで噴霧、乾燥すればよい。
成形に供するための顆粒の平均径は30〜80μmの範囲に制御することが望ましい。顆粒が小さいほど強度は向上する傾向にあるため、その上限は80μmとする。一方で、顆粒の平均径が30μm未満だとハンドリングが悪くなり、成形体の作製に支障がでる。よって、顆粒の平均径は30〜80μmの範囲とする。望ましい顆粒の平均径は30〜70μm、さらに望ましい顆粒の平均径は30〜60μmである。顆粒の平均径を30〜80μmにするためには、スラリの濃度、スプレー・ドライヤによる噴霧条件、その他を調整すればよい。
【0030】
<成形>
得られた顆粒は、例えば所定形状の金型を有するプレスを用いて所望の形状に成形され、この成形体は焼成工程に供される。
【0031】
<焼成>
焼成工程においては、焼成温度と焼成雰囲気を制御する必要がある。
焼成温度は1000〜1200℃の範囲から適宜選択することができる。本発明では、Ni,Cu,ZnをFeに対して余剰となるように、つまりFe量を少な目に設定しているために、1000〜1200℃と比較的低温で焼成した場合にも、高温域における飽和磁束密度が高く、かつ低損失のフェライト焼結体を得ることが可能となる。
【0032】
以上のように、組成を本発明が推奨する範囲内で適宜設定するとともに、焼結に供するフェライト粉末の粒度分布を所定の範囲とすることにより、本発明のフェライト焼結体は、20kgf/mm2以上の抗折強度を容易に達成することができる。さらには、22kgf/mm2以上、24kgf/mm2以上の抗折強度を達成することができる。
また、組成を本発明が推奨する範囲内で適宜設定するとともに、焼結に供するフェライト粉末の粒度分布を所定の範囲とすることにより、焼結体中の偏析物量が面積率で3〜15%の範囲であり、かつ平均結晶粒径が2〜6μmであるフェライト焼結体を得ることができる。焼成に供される粉砕粉末の粒度分布を制御したとしても、実際には焼成時に粒成長が生じるため、従来は最終的に得られるフェライト焼結体の平均結晶粒径を厳密に制御することは困難であった。これに対し、本発明では、粒成長を抑制する働きをも担う偏析物がフェライト焼結体中に所定量存在するように予め組成を設定しているため、焼成に供される粉砕粉末の粒度分布を所定範囲内とすることで、最終的に得られるフェライト焼結体の平均結晶粒径を所望の範囲内に容易に制御することができる。
【0033】
なお、以上では、Fe2O3粉末、CuO粉末およびZnO粉末を出発原料としてフェライト焼結体を製造する場合について説明したが、本発明は副成分の添加を排除するものではない。副成分としては、ZrOよりも安価なSi,Ca等を適宜選択することができる。副成分の原料としては、酸化物または加熱により酸化物となる化合物の粉末を用いることができる。具体的には、SiO2,CaCO3,Nb2O5,ZrO2,Ta2O5,In2O5,Ga2O5,SnO2,TiO2,MoO3,V2O5,GeO2,Bi2O3,Sb2O3等を用いることができる。これら副成分の原料粉末は、仮焼き後に粉砕された主成分の粉末と混合される。ただし、主成分の原料粉末と混合した後に、主成分とともに仮焼きに供することもできる。また、これらの添加量は、所望の特性に応じて適宜設定すればよいが、主成分に対して0.005〜0.5wt%程度添加すればよい。これらの副成分を添加することで、より一層高い強度を達成することも可能である。
【0034】
【実施例】
以下本発明を具体的実施例に基づき説明する。
(実施例1)
主成分としてFe2O3,NiO,CuOおよびZnOを、47.3Fe2O3 −8.5CuO−25.5ZnO−bal.NiO(mol%)となるように秤量した。これらの原料を鋼鉄製のボール・ミルで16時間湿式混合し、その後、得られた混合粉末を表1に示す温度でそれぞれ2時間、大気中で仮焼した。
次いで、表1に示す粒度分布になるように鋼鉄製のボール・ミルにて仮焼物を粉砕した。このとき、いくつかの異なる条件で粉砕を行い、表1に示すように異なる粒度分布を有する粉砕粉末を得た。
【0035】
【表1】
【0036】
湿式粉砕して得られたスラリにPVA(ポリ・ビニル・アルコール)を加えた。その後、PVAと粉砕粉末の混合物を、スプレー・ドライヤを用いてその平均径が30〜80μmの範囲内になるように造粒した。こうして得られた顆粒を用いて成形密度を3.20Mg/m3となるように、トロイダル状のサンプルと角型形状のサンプルをプレス成形した。次にこのサンプルを大気中、表1に示す温度でそれぞれ2時間焼成してフェライト焼結体を得た。
【0037】
以上で得られた7種類のフェライト焼結体について、焼結密度、平均結晶粒径、抗折強度、ポア密度および偏析物量を測定した。抗折強度は角型サンプルを用い、かつJISR1601にしたがって測定した。なお、偏析物量は上述した方法で測定した。また、以下の要領でポア密度を求めた。まず、フェライト焼結体を研磨し、その表面を光学顕微鏡で観察する。研磨面においてフェライト部分は白く、ポア部分は黒く観察される。ポア密度の数値化は、400×400μmの範囲にて黒いポア部分の数をカウントし、単位面積当たりのポア数を算出することで求めた(光学顕微鏡により500倍の視野で研磨面の観察を行った)。
測定結果を表1に示す。
【0038】
表1から、D90が減少するにつれて抗折強度が向上することがわかる。ここで、No.3とNo.4は同等のD50を示し、焼結密度および平均結晶粒径についても同等の値を示している。ところが、No.4(D90:3.4μm)の抗折強度が19.6kgf/mm2であるのに対し、No.3(D90:2.8μm)の抗折強度は24.0kgf/mm2である。よって、20.0kgf/mm2以上の抗折強度を得るためには、D90を3.4μm未満、さらには3μm以下とすることが有効であるといえる。
また、表1から、D90が増加するにつれて、ポア密度も増加するという傾向があることがわかる。この傾向から、粗大なD90が増えるとポア密度が増加して、これによって抗折強度が低下しているものと推察される。
さらに、ポア密度と抗折強度の関係に着目すると、ポア密度が0.049個/μm2(No.4)になると、抗折強度が20kgf/mm2を下回る。よって、20.0kgf/mm2以上の抗折強度を得るためには、ポア密度を0.049個/μm2未満、さらには0.045個/μm2以下とすることが有効である。
【0039】
ここで、表1には各試料についての粒度比「D90/D50」の値も示している。D50がほぼ一致するNo.1〜6において、粒度比「D90/D50」の値が小さいほど抗折強度が大きくなることがわかる。No.1〜7が同一組成を有していることから、同一組成のフェライト焼結体において、より高い抗折強度を得るためには粒度比「D90/D50」を制御すればよいことがわかる。粒度比「D90/D50」が2.6未満であるNo.1〜3は、いずれも20kgf/mm2以上という高い抗折強度を示していることから、望ましい粒度比「D90/D50」は2.6未満であるといえる。
【0040】
(実施例2)
主成分としてFe2O3,NiO,CuOおよびZnOを表2に示す量比(mol%)となるように秤量した。これらの原料を実施例1と同様の条件で湿式混合し、その後、得られた混合粉を表2に示す温度でそれぞれ2時間仮焼した。この仮焼成粉をD50が0.8〜1.2μm、D90が1.0〜3.0μmの範囲内になるように、鋼鉄製のボール・ミルにて湿式粉砕した。湿式粉砕して得られたスラリにPVA(ポリ・ビニル・アルコール)を加えた。
その後、実施例1と同様の条件で顆粒を造粒し、成形密度を3.20Mg/m3となるように、トロイダル状のサンプルと角型形状のサンプルをプレス成形した。次にこのサンプルを大気中、表2に示す温度でそれぞれ2時間焼成してフェライト焼結体を得た。
【0041】
【表2】
【0042】
以上で得られた16種類のフェライト焼結体について、焼結密度、平均結晶粒径、抗折強度、偏析物量、初透磁率(μi)、キュリー温度および飽和磁束密度を測定した。その結果を表2に示す。なお、抗折強度、偏析物量の測定方法は、実施例1と同様である。また初透磁率(μi)は、トロイダル・コアにワイヤを20回巻き線した後、LCRメータにて測定した100kHzのインダクタンス値に基づいて求めた。飽和磁束密度は、トロイダル・コアに1次側40回、2次側20回、巻き線した後、BHトレーサにて磁界を4kA/mかけたときの磁束密度を測定した。なお、表2中、初透磁率(μi)および飽和磁束密度の値は、いずれも25℃における値である。
【0043】
表2において、No.8〜14は、Fe2O3(NiO)が及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。この7つのサンプルの特性の比較より、Fe2O3が39.5mol%から増えるにつれて平均結晶粒径が大きくなることがわかる。その一方で、Fe2O3量の増加にともなって偏析物量が減少する。ここで、抗折強度と偏析物量の関係に着目すると、抗折強度は偏析物量が増えるにつれて向上する傾向がある。そして、Fe2O3が40〜48.5mol%の範囲にあるときに偏析物量が5%以上となり、20kgf/mm2以上という高い抗折強度を得ることができることがわかる。
また、抗折強度と平均結晶粒径の関係に着目すると、平均結晶粒径が大きくなるにつれて抗折強度が徐々に低下する傾向があることがわかる。ここで、平均結晶粒径が2〜6μmの範囲にあるサンプルについては20kgf/mm2以上という高い抗折強度を得ている。
さらに、磁気特性に着目すると、Fe2O3量の増大に伴って、初透磁率(μi)および飽和磁束密度が向上する。但し、Fe2O3が49.0mol%になると、抗折強度が20kgf/mm2を下回ってしまうため、高い磁気特性および高い強度を兼備するためには、Fe2O3量を49.0mol%未満、望ましくは48.5mol%以下とすることが有効であるといえる。
次に、No.15〜18は、CuOが及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。この4つのサンプルの特性の比較より、CuO量により平均結晶粒径および抗折強度が変動することがわかる。具体的には、CuOが2.5mol%、10.0mol%の場合には抗折強度が低下する傾向があることから、望ましいCuO量は3〜9mol%であるといえる。
【0044】
次に、No.19〜23は、ZnOが及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。この5つのサンプルの特性の比較より、ZnO量は、初透磁率(μi)、キュリー温度および飽和磁束密度に大きな影響を及ぼすことがわかる。ZnOが14.0mol%(No.19)の場合には、初透磁率が低下する。一方、ZnOが36.0mol%(No.23)の場合には、キュリー温度および飽和磁束密度が低下する。そして、ZnOが15〜35mol%の範囲にあるときに高い磁気特性および高強度が得られることがわかる。
【0045】
ここで、25.4kgf/mm2という高い抗折強度を得ているNo.10のSEM観察像を図1に示しておく。図1から、本発明に係るフェライト焼結体は、組織が微細かつ均一であることが伺える。また、主として三重点に偏析物が偏析していることがみとめられる。この偏析物の組成解析を行ったところ、偏析物はNi,Cu,Znが含有されるウスタイト相であり、Ni量が最も多いことが確認された。
【0046】
以上の結果から、フェライト焼結体の組成を本発明が推奨するようにFe2O3:40〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOとし、かつ偏析物量を面積率で3〜15%とすることによって、高い磁気特性および高強度を兼備したフェライト焼結体が得られることがわかった。表2に示したように、本発明のフェライト焼結体によれば、20kgf/mm2以上という高い抗折強度を維持しつつ、25℃におけるμiを150以上、キュリー温度を100℃以上、25℃における飽和磁束密度を350mT以上(測定磁界:4kA/m)とすることができる。また、20kgf/mm2以上の抗折強度を維持しつつ、μiを200以上、さらには350以上とすることも可能である。さらにまた、20kgf/mm2以上の抗折強度を維持しつつ、400mT以上(測定磁界:4kA/m)、さらには430mT以上の飽和磁束密度を得ることも可能である。
【0047】
以上の実施例1、2より、以下のことがわかった。
(1)フェライト焼結体の高強度化のためには、フェライト焼結体を構成する成分であるFe2O3,ZnO,CuOの量を規制することが有効である。特に、Fe2O3量と偏析物量は密接に関係しており、従来よりもFe2O3量を低めに設定してある程度まで偏析物を偏析させることで、フェライト焼結体の強度を向上させることができる。
(2)フェライト焼結体を製造する過程の粉砕粉末の粒度分布を制御することにより、フェライト焼結体の強度を向上することができる。
(3)フェライト焼結体の平均結晶粒径、偏析物量は、フェライト焼結体の強度を左右する因子であり、これら因子を所定の範囲に制御することにより、高強度なフェライト焼結体を得ることができる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高特性かつ高強度なフェライト焼結体を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で作製したNo.10のSEM(走査型電子顕微鏡)観察像である。
【発明の属する技術分野】
本発明はフェライト焼結体に関し、特に高強度が必要なフェライト部品に使用するのに適したフェライト焼結体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェライト材料が適用される部品には一層の小型化の要求がある。小型部品を得る場合に、フェライト材料の強度が不足すると、その加工過程で、欠け、割れといった不具合が生ずることがある。したがって、より高い強度を発現しうるフェライト材料の開発が望まれている。
【0003】
これまでフェライト材料の強度を向上させる手法として、ZrO2を添加する提案がなされている。例えば、特許第2599887号公報には、Fe2O3を40〜52.5mol%、ZnOを35mol%以下、CuOを2〜20mol%、残部NiOからなる組成を主成分とし、これにZrO2を0.01〜3.0wt%添加含有するチップ部品用磁性材料が開示されている。
また特開平8−157253号公報には、Fe2O3換算で59〜72wt%、NiO換算で7〜31wt%、ZnO換算で1〜23wt%、CuO換算で0〜4wt%、MnO換算で0〜2wt%であるNi−Zn系フェライトの主成分100wt%に対して0.1〜10.0wt%のZrO2を添加し、平均結晶粒径が1〜18μmである高強度フェライトが開示されている。そして、特開平8−157253号公報によれば、3点曲げ強度で15kgf/mm2以上の強度のフェライト材料が得られており、その実施例では3点曲げ強度で20kgf/mm2を超える強度をフェライト材料も開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特許第2599887号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平8−157253号公報(特許請求の範囲、表1〜4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、フェライト材料の強度を向上させるためにZrO2を添加することは有効な方法である。しかしながら、高い強度を得るためにZrO2の添加量を増やすと、その一方で透磁率等の特性が劣化してしまう。
また、フェライト材料を用いた部品にも、当然のように、低コスト化が要求される。高強度なフェライト材料を得る場合にも、その要求を満足する必要がある。したがって、高強度化のために添加物を添加する場合には、その添加物を安価なものにすべきであるが、従来提案されているZrO2は比較的高価である。よって、高強度なフェライト材料を、より低コストで得るための技術が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、透磁率等の特性を劣化させることなく、高強度なフェライト焼結体を得るための技術を提供することを課題とする。また本発明は、高強度なフェライト焼結体を低コストで得るための技術を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は様々な検討を行った。その結果、Feが比較的少ない組成とし、フェライト焼結体中に偏析物を所定範囲内で偏析させることが、高強度なフェライト焼結体を得る上で極めて有効であることを知見した。すなわち、本発明は、Fe2O3:40〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOからなるフェライト焼結体であって、他の金属元素よりもNiが多い酸化物から構成される偏析物が、面積率で3〜15%含有されることを特徴とするフェライト焼結体を提供する。なお、本発明でいうところの「他の金属元素」とは、フェライト焼結体を構成するNi以外の金属元素である。
本発明に係るフェライト焼結体において、上述した偏析物は、Cuおよび/またはZnをさらに含有するウスタイト(FeO)相とすることができる。Feを比較的少ない組成とすることで、ウスタイト相を容易に生成させることができる。
【0008】
また、平均結晶粒径を2〜6μmとすることが、高強度かつ高特性のフェライト焼結体を得る上で有効である。
上述した本発明のフェライト焼結体によれば、抗折強度が20kgf/mm2以上という高い強度を得ることができる。
また、本発明では、上述した偏析物をフェライト焼結体の三重点に散在させることができる。詳しくは後述するが、本発明に係るフェライト焼結体において、偏析物はクラックの成長を抑制するという働き、および結晶粒径を微細化するという働きを担う。こうした働きを担う偏析物を、フェライト焼結体の三重点に散在させることで、フェライト焼結体の高強度化が達成される。なお、本発明に係るフェライト焼結体において、すべての偏析物を三重点に散在させる必要はない。一部の偏析物は独立した粒としても存在しうるし、結晶粒界に散在することもある。
【0009】
さらに本発明は、Fe2O3量をa(mol%)、NiO量をb(mol%)、CuO量をc(mol%)、ZnO量をd(mol%)としたときに、(b+c+d)/a>1であり、かつ抗折強度が22kgf/mm2以上であることを特徴とするフェライト焼結体を提供する。
本発明に係るフェライト焼結体によれば、25℃における飽和磁束密度を350mT以上とすることができる。
【0010】
また、本発明は、焼成に供される粉砕粉末の粒度分布を所定の範囲に制御するという新規なアプローチで、高強度かつ高特性なフェライト焼結体を、安価に製造する技術も提供する。すなわち、本発明のフェライト焼結体の製造方法は、D50(粒度分布の累積体積頻度が50%となる粒径)が0.8〜1.2μm、D90(粒度分布の累積体積頻度が90%となる粒径)が1〜3μmであり、Fe2O3量が40〜48.5mol%であるNi−Cu−Znフェライト粉末を作製し、このNi−Cu−Znフェライト粉末を加圧成形することにより所定形状の成形体を作製し、さらに成形体を焼結することでフェライト焼結体を得ることを特徴とする。Fe2O3量を40〜48.5mol%と少な目に設定するとともに、D50およびD90を所定の範囲内に制御することで、高い強度を得ることができる。
【0011】
本発明のフェライト焼結体の製造方法において、Ni−Cu−Znフェライト粉末の組成は、Fe2O3:42〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOとすることが望ましい。
ここで、D90とD50の比「D90/D50」を2.6未満とすることが、高強度のフェライト焼結体を得る上で有効である。
本発明のフェライト焼結体の製造方法によれば、抗折強度が20kgf/mm2以上という高強度のフェライト焼結体を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
はじめに、本発明の概要を説明する。
本発明は、Feが比較的少ない組成で、結晶粒径を微細化し、かつ偏析物を所定範囲内で偏析させることで、高強度かつ高特性のフェライト焼結体を得ることを特徴とする。本発明において、Feが比較的少ない組成とは、Ni,Cu,ZnがFeに対して余剰となる組成を意味する。
【0013】
<組織>
まず本発明によって得られるフェライト焼結体の組織について説明する。
本発明によって得られるフェライト焼結体は、Ni−Cu−Znフェライト結晶粒を主体とし、偏析物が占める割合が面積率で3〜15%である。偏析物量が面積率で3〜15%の範囲にあるときに、高い抗折強度を得ることができるという知見に基づく。詳しくは後述するが、本発明における偏析物は、Niが多い酸化物である。
物が破壊するときにはクラックが発生して、それが成長していく必要がある。つまり、クラックの成長をいかにして抑制するか、ということがフェライト焼結体の強度を向上させる上で鍵となる。クラックが成長する上では、偏析物が障害物となる。換言すれば、所定量の偏析物をフェライト焼結体中に偏析させることで、クラックの成長を抑制し、フェライト焼結体の強度を向上させることができる。
このように、偏析物は、クラックの成長を抑制するという働きを担うが、偏析物量が3%未満になるとクラックの成長を抑制することが困難となる。一方、偏析物量が15%を超えると、焼結密度が低下したり、透磁率が低下するという不具合が生じる。よって、本発明では偏析物量を面積率で3〜15%とする。望ましい偏析物量は3〜12%、より望ましい偏析物量は5〜12%である。
【0014】
ここで、本発明において、偏析物量は、以下の方法で求めるものとする。まず、フェライト焼結体を研磨し、その表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察する。フェライト結晶粒と偏析物は、その重さが異なるために、SEM組成像においてフェライト結晶粒はグレー、偏析物は白色に近い色として観察される。偏析物量の数値化は、このグレーと白のコントラストを明確にし、SEM組成像中の色の薄い部分の面積比を偏析物量として算出する。
【0015】
上述のように、本発明では、Feが比較的少ない組成を採用する。Ni−Cu−Znフェライトでは、通常、Ni,CuおよびZnが、Feとともにフェライトを生成するが、本発明ではFe量を比較的少なくしているために、化学量論組成よりも余剰のNi,Cuおよび/またはZnが、Niの多い酸化物としてフェライト焼結体中に偏析してしまう。この偏析物は、Niが多いウスタイト(FeO)相で構成され、このウスタイト相には、Niの他に、Cuおよび/またはZnが含有されうる。偏析物は主として三重点に散在するが、独立した結晶粒として存在しているものもある。また、一部の偏析物は結晶粒界に存在しうる。
【0016】
ここで、Ni−Cu−Znフェライトの化学量論組成は式(1)に示すとおりである。
{(NiO)b(CuO)c(ZnO)d}(Fe2O3)a ・・・式(1)
ただし、式(1)中、a,b,c,dはmol%であり、b+c+d=aである。
したがって、Ni,Cu及びZnを化学量論組成よりも余剰に含ませるためには、以下の式(2)が成立するように組成を決定する。
(b+c+d)/a>1 ・・・式(2)
【0017】
式(2)に示すようにNi,CuおよびZnが化学量論組成よりも余剰である場合には、化学量論比のフェライトが形成されるが、それとともにFeとフェライトを生成することができなかったNi,Cuおよび/またはZnがウスタイトを構成する元素となる。
【0018】
ところで、フェライト焼結体の結晶粒径が小さいほど、クラックがたどる経路が長くなり、クラックの伝播を抑制しやすい。換言すれば、フェライト焼結体の結晶粒径を微細化することで、フェライト焼結体の強度を高めることができる。
平均結晶粒径が小さくなると焼結体の強度は向上する傾向にあるが、平均結晶粒径が2μm未満になると強度が低下する。焼結密度が低下するためと推察される。一方、平均結晶粒径が6μmを超えると、クラックがたどる経路が短くなり、クラックの伝播が進行しやすい。このため、やはり強度が低下し、20kgf/mm2以上という高い抗折強度を得ることが困難となる。よって、本発明では、フェライト焼結体の平均結晶粒径を2〜6μmとする。望ましい平均結晶粒径は2〜5μm、より望ましい平均結晶粒径は3〜5μmである。
ここで、結晶粒径と偏析物は密接に関係しており、偏析物を本発明が推奨する範囲内で偏析させることで、フェライト焼結体の平均結晶粒径を微細化、具体的には平均結晶粒径を2〜6μmとすることができる。偏析物が存在すると、フェライト焼結体の平均結晶粒径が微細化されるのは、偏析物の存在がフェライト結晶粒の粒成長を阻害するためである。
【0019】
<組成>
次に、本発明によるフェライト焼結体の組成範囲の限定理由について説明する。
本発明によるフェライト焼結体において、Fe2O3の量は40〜48.5mol%とする。
Fe2O3が40mol%より少ないと焼結密度が低下して、焼結体の抗折強度が低下する。一方、Fe2O3が48.5mol%を超えると偏析物が減少し、焼結体の平均結晶粒径が大きくなるため、やはり焼結体の抗折強度が低下してしまう。
また、磁気特性の観点からは、Fe2O3の量は透磁率に大きな影響を与える。Fe2O3が40mol%より少ないと初透磁率(μi)が低い。一方、フェライトとしての化学量論組成に近づくにしたがって透磁率は上昇するが、化学量論組成をピークとして急激に低下する。
したがって、本発明では、高い抗折強度および高い磁気特性を兼備するために、Fe2O3の量は40〜48.5mol%とする。望ましいFe2O3量は42〜48.5mol%、さらに望ましいFe2O3量は45〜48mol%である。
【0020】
CuOの量は3〜9mol%とする。CuOが3mol%より少ないと焼結密度が低下して、焼結体の抗折強度が低下する。一方、CuOが9mol%を超えると結晶粒が異常成長し、焼結体の平均結晶粒径が大きくなり抗折強度が低下する。したがって、本発明では、CuO量を3〜9mol%の範囲とする。望ましいCuO量は5〜9mol%、さらに望ましいCuO量は6〜9mol%である。
【0021】
ZnOの量は15〜35mol%とする。ZnOは、その量の増加とともに透磁率を向上させるが、15mol%未満だとμiが不足し、一方35mol%を超えるとキュリー温度が低くなりすぎる。したがって、本発明ではZnO量を15〜35mol%の範囲とする。望ましいZnO量は18〜30mol%、さらに望ましいZnO量は20〜30mol%である。
【0022】
なお、Mn2O3は、通常、Fe2O3中に不純物として含有されており、本発明においてもその含有を許容する。その含有量は、Fe2O3のグレードによって左右されるが、1mol%を超えるとフェライト焼結体のμiが低下する。したがって、Mn2O3は1mol%以下に規制することが望ましい。望ましいMn2O3量は0.5mol%以下、さらに望ましいMn2O3量は0.3mol%以下である。
【0023】
以上、本発明のフェライト焼結体の組成範囲の限定理由を説明した。ここで、本発明によるフェライト焼結体は、Fe2O3量の上限が48.5mol%と、従来よりも低めである点に特徴を有する。上述の通り、Fe2O3量は透磁率に大きな影響を与えるものであり、Fe2O3量が49mol%前後の範囲で特に高い透磁率を得ることができる。このため、従来のフェライト焼結体では、通常、Fe2O3量を48.5〜49.8mol%としている。ところが、Fe2O3量が48.5mol%を超えると、焼結体中の偏析物量が3%未満となり、20kgf/mm2という高い抗折強度を得ることが困難となる。よって、本発明では、高い磁気特性のみならず、高い抗折強度を得るための1つの要素として、Fe2O3量を40〜48.5mol%の範囲とする。
【0024】
本発明のフェライト焼結体は、上述した組成を適宜選択することにより、20kgf/mm2以上、さらには22kgf/mm2以上という高い抗折強度を得ることができる。それに加えて、25℃における飽和磁束密度が350mT以上(測定磁界:4kA/m)、さらには400mT以上という特性を得ることができる。また、20kgf/mm2以上という高い抗折強度を維持しつつ、25℃におけるμiが150以上、さらには200以上という特性も得ることができる。
【0025】
次に、本発明に係るフェライト焼結体の製造方法を説明する。本発明は、焼結に供されるフェライト粉末の粒度分布を以下に説明するように制御することで、高い抗折強度を備えたフェライト焼結体を得ることを特徴とする。
【0026】
<出発原料>
原料としては、酸化物または加熱により酸化物となる化合物の粉末を用いる。具体的には、Fe2O3粉末、CuO粉末およびZnO粉末等を用いることができる。各原料粉末の平均粒径は0.1〜3.0μmの範囲で適宜選択すればよい。
【0027】
<仮焼>
原料粉末を所定量だけ秤量したのちに、これら原料粉末をボール・ミル等の混合装置を用いて十分混合した後に、仮焼を行う。混合は、ボール・ミルの運転条件にも左右されるが、20時間程度行えば均一な混合状態を得ることができる。仮焼温度は800〜1000℃の範囲内での所定温度で、また雰囲気はN2あるいは大気中で行えばよい。仮焼きの安定時間は0.5〜5.0時間の範囲で適宜選択すればよい。
【0028】
<粉砕>
仮焼き後には、例えばボール・ミルを用いて仮焼き体を粉砕する。粉砕は、混合と同様に、湿式で行うことが望ましい。この粉砕の条件を特定することにより、得られるフェライト粉末の粒度分布を本発明が推奨する所定の範囲に制御することが可能となる。具体的には、本発明では、粉砕粉末のD50(D50:粒度分布の累積体積頻度が50%になる粒径)が0.8〜1.2μm、D90(D90:粒度分布の累積体積頻度が90%になる粒径)が1〜3μmとなるように、粉砕条件を制御する。
粉砕粉末のD50が1.2μmを超えると、焼結密度の低下や残留ポアの増加により抗折強度が低下する。一方、粉砕粉末のD50が0.8μmを下回ると、ハンドリング面で問題がある。
また、粉砕粉末のD90が3μmを超えると、やはり焼結密度の低下や残留ポアの増加により抗折強度が低下する。そして、粉砕粉末のD90が1μmを下回ると、ハンドリング面で問題がある。
よって、本発明では、粉砕粉末のD50を0.8〜1.2μm、D90を1〜3μmとする。上述した組成を採用するとともに、D50およびD90をこの範囲で制御することで、製造コストの上昇を招くことなく20kgf/mm2以上という従来よりも高い抗折強度を備えたフェライト焼結体を得ることができる。D90とD50の比「D90/D50」は2.6未満とすることが、高強度のフェライト焼結体を得る上で有効である。望ましい粒度比「D90/D50」は2.5以下、より望ましい粒度比「D90/D50」は1.2〜2.5である。
【0029】
<造粒>
粉砕粉末は、後の成形工程を円滑に実行するために顆粒に造粒することが望ましい。顆粒を作製するには、粉砕粉末に適当な結合剤、例えばポリビニルアルコール(PVA)を少量添加し、これをスプレー・ドライヤで噴霧、乾燥すればよい。
成形に供するための顆粒の平均径は30〜80μmの範囲に制御することが望ましい。顆粒が小さいほど強度は向上する傾向にあるため、その上限は80μmとする。一方で、顆粒の平均径が30μm未満だとハンドリングが悪くなり、成形体の作製に支障がでる。よって、顆粒の平均径は30〜80μmの範囲とする。望ましい顆粒の平均径は30〜70μm、さらに望ましい顆粒の平均径は30〜60μmである。顆粒の平均径を30〜80μmにするためには、スラリの濃度、スプレー・ドライヤによる噴霧条件、その他を調整すればよい。
【0030】
<成形>
得られた顆粒は、例えば所定形状の金型を有するプレスを用いて所望の形状に成形され、この成形体は焼成工程に供される。
【0031】
<焼成>
焼成工程においては、焼成温度と焼成雰囲気を制御する必要がある。
焼成温度は1000〜1200℃の範囲から適宜選択することができる。本発明では、Ni,Cu,ZnをFeに対して余剰となるように、つまりFe量を少な目に設定しているために、1000〜1200℃と比較的低温で焼成した場合にも、高温域における飽和磁束密度が高く、かつ低損失のフェライト焼結体を得ることが可能となる。
【0032】
以上のように、組成を本発明が推奨する範囲内で適宜設定するとともに、焼結に供するフェライト粉末の粒度分布を所定の範囲とすることにより、本発明のフェライト焼結体は、20kgf/mm2以上の抗折強度を容易に達成することができる。さらには、22kgf/mm2以上、24kgf/mm2以上の抗折強度を達成することができる。
また、組成を本発明が推奨する範囲内で適宜設定するとともに、焼結に供するフェライト粉末の粒度分布を所定の範囲とすることにより、焼結体中の偏析物量が面積率で3〜15%の範囲であり、かつ平均結晶粒径が2〜6μmであるフェライト焼結体を得ることができる。焼成に供される粉砕粉末の粒度分布を制御したとしても、実際には焼成時に粒成長が生じるため、従来は最終的に得られるフェライト焼結体の平均結晶粒径を厳密に制御することは困難であった。これに対し、本発明では、粒成長を抑制する働きをも担う偏析物がフェライト焼結体中に所定量存在するように予め組成を設定しているため、焼成に供される粉砕粉末の粒度分布を所定範囲内とすることで、最終的に得られるフェライト焼結体の平均結晶粒径を所望の範囲内に容易に制御することができる。
【0033】
なお、以上では、Fe2O3粉末、CuO粉末およびZnO粉末を出発原料としてフェライト焼結体を製造する場合について説明したが、本発明は副成分の添加を排除するものではない。副成分としては、ZrOよりも安価なSi,Ca等を適宜選択することができる。副成分の原料としては、酸化物または加熱により酸化物となる化合物の粉末を用いることができる。具体的には、SiO2,CaCO3,Nb2O5,ZrO2,Ta2O5,In2O5,Ga2O5,SnO2,TiO2,MoO3,V2O5,GeO2,Bi2O3,Sb2O3等を用いることができる。これら副成分の原料粉末は、仮焼き後に粉砕された主成分の粉末と混合される。ただし、主成分の原料粉末と混合した後に、主成分とともに仮焼きに供することもできる。また、これらの添加量は、所望の特性に応じて適宜設定すればよいが、主成分に対して0.005〜0.5wt%程度添加すればよい。これらの副成分を添加することで、より一層高い強度を達成することも可能である。
【0034】
【実施例】
以下本発明を具体的実施例に基づき説明する。
(実施例1)
主成分としてFe2O3,NiO,CuOおよびZnOを、47.3Fe2O3 −8.5CuO−25.5ZnO−bal.NiO(mol%)となるように秤量した。これらの原料を鋼鉄製のボール・ミルで16時間湿式混合し、その後、得られた混合粉末を表1に示す温度でそれぞれ2時間、大気中で仮焼した。
次いで、表1に示す粒度分布になるように鋼鉄製のボール・ミルにて仮焼物を粉砕した。このとき、いくつかの異なる条件で粉砕を行い、表1に示すように異なる粒度分布を有する粉砕粉末を得た。
【0035】
【表1】
【0036】
湿式粉砕して得られたスラリにPVA(ポリ・ビニル・アルコール)を加えた。その後、PVAと粉砕粉末の混合物を、スプレー・ドライヤを用いてその平均径が30〜80μmの範囲内になるように造粒した。こうして得られた顆粒を用いて成形密度を3.20Mg/m3となるように、トロイダル状のサンプルと角型形状のサンプルをプレス成形した。次にこのサンプルを大気中、表1に示す温度でそれぞれ2時間焼成してフェライト焼結体を得た。
【0037】
以上で得られた7種類のフェライト焼結体について、焼結密度、平均結晶粒径、抗折強度、ポア密度および偏析物量を測定した。抗折強度は角型サンプルを用い、かつJISR1601にしたがって測定した。なお、偏析物量は上述した方法で測定した。また、以下の要領でポア密度を求めた。まず、フェライト焼結体を研磨し、その表面を光学顕微鏡で観察する。研磨面においてフェライト部分は白く、ポア部分は黒く観察される。ポア密度の数値化は、400×400μmの範囲にて黒いポア部分の数をカウントし、単位面積当たりのポア数を算出することで求めた(光学顕微鏡により500倍の視野で研磨面の観察を行った)。
測定結果を表1に示す。
【0038】
表1から、D90が減少するにつれて抗折強度が向上することがわかる。ここで、No.3とNo.4は同等のD50を示し、焼結密度および平均結晶粒径についても同等の値を示している。ところが、No.4(D90:3.4μm)の抗折強度が19.6kgf/mm2であるのに対し、No.3(D90:2.8μm)の抗折強度は24.0kgf/mm2である。よって、20.0kgf/mm2以上の抗折強度を得るためには、D90を3.4μm未満、さらには3μm以下とすることが有効であるといえる。
また、表1から、D90が増加するにつれて、ポア密度も増加するという傾向があることがわかる。この傾向から、粗大なD90が増えるとポア密度が増加して、これによって抗折強度が低下しているものと推察される。
さらに、ポア密度と抗折強度の関係に着目すると、ポア密度が0.049個/μm2(No.4)になると、抗折強度が20kgf/mm2を下回る。よって、20.0kgf/mm2以上の抗折強度を得るためには、ポア密度を0.049個/μm2未満、さらには0.045個/μm2以下とすることが有効である。
【0039】
ここで、表1には各試料についての粒度比「D90/D50」の値も示している。D50がほぼ一致するNo.1〜6において、粒度比「D90/D50」の値が小さいほど抗折強度が大きくなることがわかる。No.1〜7が同一組成を有していることから、同一組成のフェライト焼結体において、より高い抗折強度を得るためには粒度比「D90/D50」を制御すればよいことがわかる。粒度比「D90/D50」が2.6未満であるNo.1〜3は、いずれも20kgf/mm2以上という高い抗折強度を示していることから、望ましい粒度比「D90/D50」は2.6未満であるといえる。
【0040】
(実施例2)
主成分としてFe2O3,NiO,CuOおよびZnOを表2に示す量比(mol%)となるように秤量した。これらの原料を実施例1と同様の条件で湿式混合し、その後、得られた混合粉を表2に示す温度でそれぞれ2時間仮焼した。この仮焼成粉をD50が0.8〜1.2μm、D90が1.0〜3.0μmの範囲内になるように、鋼鉄製のボール・ミルにて湿式粉砕した。湿式粉砕して得られたスラリにPVA(ポリ・ビニル・アルコール)を加えた。
その後、実施例1と同様の条件で顆粒を造粒し、成形密度を3.20Mg/m3となるように、トロイダル状のサンプルと角型形状のサンプルをプレス成形した。次にこのサンプルを大気中、表2に示す温度でそれぞれ2時間焼成してフェライト焼結体を得た。
【0041】
【表2】
【0042】
以上で得られた16種類のフェライト焼結体について、焼結密度、平均結晶粒径、抗折強度、偏析物量、初透磁率(μi)、キュリー温度および飽和磁束密度を測定した。その結果を表2に示す。なお、抗折強度、偏析物量の測定方法は、実施例1と同様である。また初透磁率(μi)は、トロイダル・コアにワイヤを20回巻き線した後、LCRメータにて測定した100kHzのインダクタンス値に基づいて求めた。飽和磁束密度は、トロイダル・コアに1次側40回、2次側20回、巻き線した後、BHトレーサにて磁界を4kA/mかけたときの磁束密度を測定した。なお、表2中、初透磁率(μi)および飽和磁束密度の値は、いずれも25℃における値である。
【0043】
表2において、No.8〜14は、Fe2O3(NiO)が及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。この7つのサンプルの特性の比較より、Fe2O3が39.5mol%から増えるにつれて平均結晶粒径が大きくなることがわかる。その一方で、Fe2O3量の増加にともなって偏析物量が減少する。ここで、抗折強度と偏析物量の関係に着目すると、抗折強度は偏析物量が増えるにつれて向上する傾向がある。そして、Fe2O3が40〜48.5mol%の範囲にあるときに偏析物量が5%以上となり、20kgf/mm2以上という高い抗折強度を得ることができることがわかる。
また、抗折強度と平均結晶粒径の関係に着目すると、平均結晶粒径が大きくなるにつれて抗折強度が徐々に低下する傾向があることがわかる。ここで、平均結晶粒径が2〜6μmの範囲にあるサンプルについては20kgf/mm2以上という高い抗折強度を得ている。
さらに、磁気特性に着目すると、Fe2O3量の増大に伴って、初透磁率(μi)および飽和磁束密度が向上する。但し、Fe2O3が49.0mol%になると、抗折強度が20kgf/mm2を下回ってしまうため、高い磁気特性および高い強度を兼備するためには、Fe2O3量を49.0mol%未満、望ましくは48.5mol%以下とすることが有効であるといえる。
次に、No.15〜18は、CuOが及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。この4つのサンプルの特性の比較より、CuO量により平均結晶粒径および抗折強度が変動することがわかる。具体的には、CuOが2.5mol%、10.0mol%の場合には抗折強度が低下する傾向があることから、望ましいCuO量は3〜9mol%であるといえる。
【0044】
次に、No.19〜23は、ZnOが及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。この5つのサンプルの特性の比較より、ZnO量は、初透磁率(μi)、キュリー温度および飽和磁束密度に大きな影響を及ぼすことがわかる。ZnOが14.0mol%(No.19)の場合には、初透磁率が低下する。一方、ZnOが36.0mol%(No.23)の場合には、キュリー温度および飽和磁束密度が低下する。そして、ZnOが15〜35mol%の範囲にあるときに高い磁気特性および高強度が得られることがわかる。
【0045】
ここで、25.4kgf/mm2という高い抗折強度を得ているNo.10のSEM観察像を図1に示しておく。図1から、本発明に係るフェライト焼結体は、組織が微細かつ均一であることが伺える。また、主として三重点に偏析物が偏析していることがみとめられる。この偏析物の組成解析を行ったところ、偏析物はNi,Cu,Znが含有されるウスタイト相であり、Ni量が最も多いことが確認された。
【0046】
以上の結果から、フェライト焼結体の組成を本発明が推奨するようにFe2O3:40〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOとし、かつ偏析物量を面積率で3〜15%とすることによって、高い磁気特性および高強度を兼備したフェライト焼結体が得られることがわかった。表2に示したように、本発明のフェライト焼結体によれば、20kgf/mm2以上という高い抗折強度を維持しつつ、25℃におけるμiを150以上、キュリー温度を100℃以上、25℃における飽和磁束密度を350mT以上(測定磁界:4kA/m)とすることができる。また、20kgf/mm2以上の抗折強度を維持しつつ、μiを200以上、さらには350以上とすることも可能である。さらにまた、20kgf/mm2以上の抗折強度を維持しつつ、400mT以上(測定磁界:4kA/m)、さらには430mT以上の飽和磁束密度を得ることも可能である。
【0047】
以上の実施例1、2より、以下のことがわかった。
(1)フェライト焼結体の高強度化のためには、フェライト焼結体を構成する成分であるFe2O3,ZnO,CuOの量を規制することが有効である。特に、Fe2O3量と偏析物量は密接に関係しており、従来よりもFe2O3量を低めに設定してある程度まで偏析物を偏析させることで、フェライト焼結体の強度を向上させることができる。
(2)フェライト焼結体を製造する過程の粉砕粉末の粒度分布を制御することにより、フェライト焼結体の強度を向上することができる。
(3)フェライト焼結体の平均結晶粒径、偏析物量は、フェライト焼結体の強度を左右する因子であり、これら因子を所定の範囲に制御することにより、高強度なフェライト焼結体を得ることができる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高特性かつ高強度なフェライト焼結体を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2で作製したNo.10のSEM(走査型電子顕微鏡)観察像である。
Claims (11)
- Fe2O3:40〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOからなるフェライト焼結体であって、
他の金属元素よりもNiが多い酸化物から構成される偏析物が、面積率で3〜15%含有されることを特徴とするフェライト焼結体。 - 前記偏析物はCuおよび/またはZnをさらに含有するウスタイト(FeO)相であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト焼結体。
- 前記フェライト焼結体の平均結晶粒径は2〜6μmであることを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト焼結体。
- 抗折強度が20kgf/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフェライト焼結体。
- 前記偏析物は前記フェライト焼結体の三重点に散在することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフェライト焼結体。
- Fe2O3量をa(mol%)、NiO量をb(mol%)、CuO量をc(mol%)、ZnO量をd(mol%)としたときに、(b+c+d)/a>1であり、かつ、
抗折強度が22kgf/mm2以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフェライト焼結体。 - 25℃における飽和磁束密度が350mT以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフェライト焼結体。
- D50(粒度分布の累積体積頻度が50%となる粒径)が0.8〜1.2μm、D90(粒度分布の累積体積頻度が90%となる粒径)が1〜3μmであり、Fe2O3量が40〜48.5mol%であるNi−Cu−Znフェライト粉末を作製し、
前記Ni−Cu−Znフェライト粉末を加圧成形することにより所定形状の成形体を作製し、
前記成形体を焼結することを特徴とするフェライト焼結体の製造方法。 - 前記Ni−Cu−Znフェライト粉末は、Fe2O3:42〜48.5mol%、CuO:3〜9mol%、ZnO:15〜35mol%、残部実質的にNiOであることを特徴とする請求項8に記載のフェライト焼結体の製造方法。
- 前記D90と前記D50の比が2.6未満であることを特徴とする請求項8または9に記載のフェライト焼結体の製造方法。
- 焼結後に得られる前記フェライト焼結体は、抗折強度が20kgf/mm2以上であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載のフェライト焼結体の製造方法。
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