JP4183187B2 - フェライト焼結体 - Google Patents

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Description

本発明は、広い温度範囲で透磁率の変化が少なく、温度係数の絶対値が小さいフェライト焼結体に関するものである。
これまで、低温度係数を示すNi−Cu−Zn系フェライト材料として、特許文献1〜3に開示されたものが知られている。特許文献1〜3ではいずれも主組成を制御するとともに、副成分としてBi等を所定量含有させることで低温度係数を実現している。
具体的には、特許文献1ではFe換算で46.0〜49.0モル%の範囲、酸化銅の含有量がCuO換算で4.0〜11.0モル%の範囲、酸化亜鉛の含有量がZnO換算で30.1〜33.0モル%の範囲、および、残部酸化ニッケルを含有し、これら主成分に対して副成分として酸化コバルトをCoO換算で0.005〜0.03重量%の範囲、酸化ビスマス をBi換算で0.1〜0.5重量%の範囲、酸化ケイ素をSiO換算で0.1〜0.6重量%の範囲、酸化マグネシウムをMgO換算で0.05〜1.0重量%の範囲で含有させている。
特許文献2では酸化鉄の含有量がFe23換算で40〜46モル%の範囲、酸化亜鉛の含有量がZnO換算で25.1〜30モル%の範囲、酸化ニッケルの含有量がNiO換算で10〜25モル%の範囲、および、残部酸化銅を含有し、これら主成分に対して副成分として酸化ビスマスをBi23換算で2重量%未満の範囲、酸化コバルトをCo34換算で0.1重量%以下の範囲で含有させている。
特許文献3ではNi−Cu−Zn系フェライトを主成分とし、NbをNb換算で0.2〜0.8wt%、TaをTa換算で0.3〜1.2wt%、MoをMoO換算で0.15〜1.35wt%の範囲で含有させている。
特開2002−60224号公報 特開2001−348226号公報 特開平5−3112号公報
Ni−Cu−Zn系フェライト材料の主成分を制御するとともに上記副成分を含有させることで、上記特許文献1、2では初透磁率の相対温度係数(以下、αμir)の絶対値を5ppm/℃以下、上記特許文献3ではαμirの絶対値を1.3ppm/℃以下という特性を得ている。
しかしながら、特許文献1、2のαμirは20〜60℃における値であり、また特許文献3におけるαμirは−25〜85℃における値である。よって、より広範囲な温度域、例えば−40〜140℃においてαμirの絶対値が小さいフェライト材料が求められている。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、−40〜140℃という広範囲な温度域においてαμirの絶対値が小さいフェライト材料の提供を課題とする。
かかる目的のもと、本発明者らは、主成分および副成分を制御するとともに、焼結体の結晶粒径を微細なものとするアプローチにより、上記課題を解決した。すなわち、本発明はFe:45.5〜48mol%、CuO:5〜10mol%、ZnO:26〜29.5mol%、残部実質的にNiOの主成分に対して副成分として酸化コバルトをCoO換算で0.005〜0.045wt%の範囲で含有し、平均結晶粒径が5μm以下、かつ結晶粒径の標準偏差が2μm以下であり、αμir −40〜20 の絶対値及びαμir 20〜140 の絶対値が3ppm/℃以下であることを特徴とするフェライト焼結体を提供する。主成分を上記した範囲内に制御するとともに、酸化コバルトをCoO換算で0.005〜0.045wt%で含有させることで、αμirの絶対値を小さくすることができる。
それに加え、αμirと相関がある平均結晶粒径を5μm以下に制御することで、αμir−40〜20の絶対値及びαμir20〜140の絶対値をともに3ppm/℃以下とすることができ、また、本発明者らの検討によると、結晶粒径の標準偏差を2μm以下とすることが、αμirの絶対値を小さくする上で重要である。なお、αμir−40〜20及びαμir20〜140は、以下に従って求められるものとする。
αμir−40〜20=[(μi20−μi−40)/μi−40 ]×[1/(T20−T−40)]
αμir20〜140=[(μi140−μi20)/μi20 ]×[1/(T140−T20)]
μi−40:−40℃における初透磁率
μi20:20℃における初透磁率
μi140:140℃における初透磁率
発明のフェライト焼結体は125kHzにおける品質係数(Q値)が170以上、また125kHzにおける初透磁率μiが300以上という特性も有している。つまり、以上の本発明のアプローチによれば、磁気特性等を何ら損なうことなく−40〜140℃という広い温度範囲でαμirの絶対値を小さくすることができる。
また本発明のフェライト焼結体によれば、キュリー温度を160℃以上とすることができる。
さらに本発明は、Fe:45.5〜48mol%、CuO:5〜10mol%、ZnO:26〜29.5mol%、残部実質的にNiOからなり、平均結晶粒径が5μm以下、かつ結晶粒径の標準偏差が2μm以下であることを特徴とするフェライト焼結体を提供する。
このフェライト焼結体は酸化コバルトの含有を必須とするものではないが、主成分を上記した範囲内に制御するとともに、平均結晶粒径を5μm以下、かつ結晶粒径の標準偏差を2μm以下とすることによって、αμir−40〜20の絶対値及びαμir20〜140の絶対値をともに3ppm/℃以下とすることができる。
なお、本発明において、副成分として酸化コバルトをCoO換算で0.005〜0.045wt%の範囲で含有することができる。
また、本発明のフェライト焼結体は、−40〜140℃という広い温度範囲でαμirの絶対値を小さくすることができるのみならず、曲げ強度が20kgf/mm 以上という特性を有することもできる。ただし、曲げ強度はJIS R1601により測定される値である。
本発明によれば、高いQ値を有するとともに、−40〜140℃、さらには−40〜160℃という広範囲な温度域においてαμirの絶対値が小さいフェライト焼結体が提供される。
<組織>
本発明のフェライト焼結体は、平均結晶粒径が5μm以下であり、結晶粒径の標準偏差が2μm以下であることを特徴としている。
本発明において平均結晶粒径を5μm以下とするのは、αμirと平均結晶粒径の相関が大きく、平均結晶粒径が5μmを超えると−40〜20℃におけるαμir(αμir−40〜20)の絶対値が3ppm/℃を上回ってしまうからである。一方、後述する実施例2で示すように、20〜140℃におけるαμir(αμir20〜140)は平均結晶粒径が小さくなるにつれてその値が小さくなる傾向がある。そこで、本発明では平均結晶粒径を5μm以下、望ましくは2〜5μmとする。これにより、−40〜20℃におけるαμir(αμir−40〜20)および20〜140℃におけるαμir(αμir20〜140)の両者を絶対値で3ppm/℃以下、さらには2.5ppm/℃以下、より望ましくは2ppm/℃以下とすることができる。
また、本発明において標準偏差を2μm以下とするのは、標準偏差とαμirも相関があるためである。標準偏差を2μm以下とすることで、−40〜20℃におけるαμir(αμir−40〜20)および20〜140℃におけるαμir(αμir20〜140)の両者を絶対値で3ppm/℃以下とすることができる。
平均結晶粒径が5μm以下である場合、結晶粒径の標準偏差を2μm以下とすることが望ましい。この場合における、望ましい標準偏差は1.9μm以下、より望ましくは1.5μm以下である。平均結晶粒径を5μm以下かつ結晶粒径の標準偏差を1.5μm以下とすることにより、−40〜20℃におけるαμir(αμir−40〜20)および20〜140℃におけるαμir(αμir20〜140)の両者を絶対値で2.0ppm/℃以下とすることも可能となる。
なお、標準偏差は平均結晶粒径にある程度依存するものではあるが、後述する手法、すなわち、粉砕時のメディア条件の制御、粉砕時間の調整、単位時間あたりの処理量の調整、焼成条件の制御等により変動させることができる。
<組成>
以下、本発明によるフェライト焼結体の組成限定理由について説明する。
本発明のフェライト焼結体の主成分を構成するFeの含有量が45.5mol%未満だとQ値が低く、キュリー点(以下、Tc)も低くなる。一方、Feの含有量が48mol%を超えるとαμir、特に−40〜20℃におけるαμir(αμir−40〜20)が大きくなり、その絶対値が3ppm/℃を上回ってしまう。したがって、本発明ではFeの含有量を45.5〜48mol%とする。望ましいFeの含有量は45.7〜47.5mol%、さらに望ましいFeの含有量は46.0〜47.0mol%である。
本発明のフェライト焼結体の主成分を構成するCuOの含有量が5mol%未満だとQ値が低くなるとともに、抗応力特性が大きくなる。一方、CuOの含有量が10mol%を超えると、αμir、特に−40〜20℃におけるαμir(αμir−40〜20)が大きくなる。したがって、本発明ではCuOの含有量を5〜10mol%とする。望ましいCuOの含有量は5.5〜10mol%、さらに望ましいCuOの含有量は6〜9.5mol%である。
本発明のフェライト焼結体の主成分を構成するZnOの含有量が26mol%未満だとαμir、特に−40〜20℃におけるαμir(αμir−40〜20)が大きくなる。一方、ZnOの含有量が30mol%を超えるとTcが低くなる。したがって、本発明ではZnOの含有量を26〜30mol%とする。望ましいZnOの含有量は26.5〜29.5mol%、さらに望ましいZnOの含有量は27〜29mol%である。
本発明のフェライト焼結体の主成分の残部が実質的にNiOである。
本発明のフェライト焼結体は、上記の主成分に対して酸化コバルトをCoO換算で0.005〜0.045wt%含有する。CoOは高いQ値を得る上で、及びαμirの絶対値を小さくする上で重要な成分であり、0.005wt%未満だとQ値が低くなり、0.045wt%を超えるとαμirが大きくなる。望ましいCoOの含有量は0.01〜0.03wt%、さらに望ましいCoOの含有量は0.015〜0.025wt%である。
以上の組成を有するフェライト焼結体は、125kHzにおける初透磁率μiが300以上、また125kHzにおけるQ値が170以上を示すとともに、αμir−40〜20及びαμir20〜140が3ppm/℃以下という低い値を示す。
ところで、αμirは一般に以下の通り定義される。
αμir=[(μi−μi)/μi ]×[1/(T−T)]
μi:温度Tのときの初透磁率
μi:温度Tのときの初透磁率
本発明は、−40〜140℃の温度範囲においてαμirの絶対値を小さくすることを目的としているが、本発明のフェライト焼結体は室温近傍でμi(初透磁率)にピークが存在している。そのため、μiを−40℃の初透磁率、μiを140℃の初透磁率としてαμirを求めると、当該ピーク位置において初透磁率μiの温度係数が大きくなったとしても、それが反映されないおそれがある。そこで本発明では、−40〜20℃、20℃〜140℃の2つの温度範囲に分けてαμirを求め、その両者の絶対値が3ppm/℃以下であることを要件としている。
また、本発明のフェライト焼結体は、以上の組成を採用することにより、Tc(キュリー温度)を160℃以上とすることができる。高温度環境下における使用を確保する上でTcが高いことが要求され、本発明では180℃以上、さらには200℃以上のTcを得ることができる。
さらに、本発明のフェライト焼結体は、機械的強度も優れている。具体的には、20kgf/mm以上の3点曲げ強度を有している。なお、3点曲げ強度は角型サンプルを用いてJIS R1601に従って測定される値である。
さらに、本発明のフェライト焼結体は抗応力特性の絶対値を5%以下にすることができる。ここで、抗応力特性とは、圧縮応力に対するフェライト焼結体のインダクタンス値の変化の程度を言う。樹脂モールドタイプのインダクタ素子ではフェライト焼結体を樹脂モールドするが、樹脂硬化時にフェライト焼結体に圧縮応力が加わる。フェライト焼結体は圧縮応力の大きさに応じてインダクタンス値が変化するため、樹脂モールドタイプのインダクタンス素子では圧縮応力に対してインダクタンスの変化の少ない、抗応力に優れたフェライト焼結体であることが望まれる。絶対値で5%以下の抗応力特性を有している本発明のフェライト焼結体は、この要請に応え樹脂モールドタイプのインダクタ素子用フェライト焼結体として用いることができる。本発明のフェライト焼結体は、抗応力特性の絶対値を4%以下、さらには3%以下とすることができる。抗応力特性の具体的な算出方法は以下の通りである。
角型サンプルにワイヤを20回巻線した後、これに一定速度で一軸圧縮力を印加し、このときのインダクタンス値を連続的に測定し、得られた測定値からインダクタンス変化率を算出する。このときの一軸圧縮応力は1ton/cmとし、インダクタンス変化率は以下の式により求める。
(L−L)/L×100(%)
:一軸圧縮力印加時のインダクタンス値
:一軸圧縮力印加なしのインダクタンス値
次に、本発明によるフェライト焼結体の好適な製造方法を各工程順に説明する。上述のように、本発明によるフェライト焼結体は、焼結体の平均結晶粒径が5μm以下であること、ならびに焼結体の結晶粒径の標準偏差が2μm以下であることを特徴としている。このように微細かつばらつきが少ない組織を有するフェライト焼結体を得るためには、例えば仮焼き後の粉砕条件、焼成条件等を制御すればよい。これらの望ましい条件については各工程で説明する。
<配合、混合工程>
まず、主成分をなす原料粉末として、例えば、Fe粉末、CuO粉末、ZnO粉末およびNiO粉末を用意する。これらの主成分をなす粉末に加えて、副成分をなすCoO粉末を用意する。用意する各原料粉末の粒径は0.1〜10μm、望ましくは0.1〜5μmの範囲で適宜選択すればよい。また、用意された原料粉末は例えばボールミルを用いて湿式混合する。混合は、ボールミルの運転条件にも左右されるが、20時間程度行なえば均一な混合状態を得ることができる。なお、副成分であるCoOの添加は湿式混合時に限らず、後述する仮焼き粉の粉砕時であっても同様の効果を得ることができる。
なお、本発明では、上述の主成分の原料に限らず、2種以上の金属を含む複合酸化物の粉末を主成分の原料としてもよい。例えば、塩化鉄、塩化Niを含有する水溶液を酸化焙焼することによりFe、Niを含む複合酸化物の粉末が得られる。この粉末とZnO粉末を混合して主成分原料としてもよい。このような場合には、後述する仮焼きは不要である。
<仮焼き工程>
原料粉末を混合した後、仮焼きを行なう。仮焼きは、保持温度を750〜900℃の範囲とし、また、雰囲気を大気とすればよい。また仮焼きの保持時間は2〜4時間とすればよい。
<粉砕工程>
仮焼き粉は例えばボールミルや気流粉砕機を用いて平均粒径0.5〜2.0μm程度、望ましくは0.5〜1.0μmまで粉砕される。粉砕粉末のサイズの指標として、平均粒径の他に比表面積があるが、比表面積は2.0〜4.0m/g、望ましくは2.5〜3.5m/gとすればよい。
平均結晶粒径が5μm以下、ならびに焼結体の結晶粒径の標準偏差が2μm以下である焼結体を得るには、粒径が小さく、かつ粒度分布の狭い粉末を成形する必要がある。よって、粉砕段階で粒径が小さく、かつ粒度分布の狭い粉末を得ておくことが望ましい。例えば、メディア条件の制御、粉砕時間の調整、単位時間あたりの処理量の調整、湿式粉砕の場合はスラリ濃度の調整等を行なうことにより、粒径が小さく、かつ粒度分布の狭い粉末を得ることができる。
具体的には、ボールミルを用いて粉砕を行う場合には、メディア条件の制御(メディアの量を多くする等)、粉砕時間を長くすることが有効である。メディアの量が少ないと粉砕されにくいため、メディアの量は被処理物200gに対し、600〜1800gとすることが望ましい。また粉砕時間は所定の比表面積が得られる程度に設定すればよい。
また粒径が小さく、かつ粒度分布の狭い粉末を得るためには気流粉砕機を用いて粉砕を行うことも有効である。気流粉砕機としては、分級機付きのものが望ましく、分級機付きの粉砕機を用いることにより、粗粉を除去あるいは再粉砕し目的の粒度分布とすることができる。また、粉砕レートを変更することも有効である。
なお、粒径が小さく、かつ粒度分布の狭い粉末を得る工程は、粉砕工程に限定されない。例えば、粉砕工程後に、粉砕工程で得られた粉砕粉末に対し、粗大粉を除去又は再粉砕する等の操作を行うことによって、粒度分布の狭い粉末を得るようにしてもよい。
主成分および副成分からなる粉砕粉末は、後の成形工程を円滑に実行するために顆粒に造粒することが望ましい。顆粒に造粒することで、粒度分布を狭い範囲に制御することが容易となる。
粉砕粉末に適当な結合材、例えばポリビニルアルコール(PVA)を少量添加し、これをスプレードライヤで噴霧、乾燥することにより顆粒を得ることができる。得られる顆粒の粒径は60〜200μm程度とすることが望ましい。
得られた顆粒は、例えば所定形状の金型を有するプレスを用いて所望の形状に成形され、この成形体は焼成工程に供される。焼成における保持温度は、960〜1100℃、望ましくは980〜1060℃の範囲とすればよい。焼成温度が1070℃を超えると、粒成長が進みやすいため、焼結体の平均結晶粒径を5μm以下とすることが困難となる。一方、焼成温度が900℃を下回ると、焼結体の密度が低下し抗応力特性が低下するため望ましくない。
焼成時間は1〜4時間とすればよい。焼成時間が長くなるにつれ粒成長が進み、結晶粒径が大きくなる。それにともない、結晶粒径の標準偏差も大きくなってしまう。よって、平均結晶粒径を5μm以下とするには、焼成温度の制御とともに、焼成時間の制御も重要である。
なお、焼成は大気中で行えばよい。
主成分組成としてFe粉末、ZnO粉末、NiO粉末およびCuO粉末を最終組成(mol%)がFe:46.3,NiO:17.1,CuO:8.0,ZnO:28.6(mol%)となるように秤量し、この主成分組成に対してCoOを0.02wt%加えた。
次に、これらの原料を鋼鉄製のボールミルを用いて湿式混合し、得られた混合粉末を900℃で2時間仮焼きした。鋼鉄製のボールミルを使用し、表1に示す各種粉砕条件でこの仮焼き粉200gを粉砕し、4種類の粉砕粉末を得た。得られた粉砕粉末の比表面積および平均粒径を表2に示す。なお、以下で得られた粉砕粉末を適宜「種別Aの粉砕粉末(比表面積:2.86m/g、平均粒径:0.813μm)」、「種別Bの粉砕粉末(比表面積:2.70m/g、平均粒径:0.859μm)」、「種別Cの粉砕粉末(比表面積:3.16m/g、平均粒径:0.782μm)」、「種別Dの粉砕粉末(比表面積:2.56m/g、平均粒径:0.895μm)」という。
次いで、得られた種別A〜Dの粉砕粉末に、バインダとしてポリビニルアルコール水溶液を添加して造粒した。こうして得られた平均粒径60〜200μmの顆粒を用いて、電磁気特性評価用のトロイダル形状試料(外径20mm、内径10mm、高さ5mm)をプレス成形により得た。なお、成形密度が3.20Mg/mとなるように成形した。
成形体を表1に示す各温度で焼成し、試料No.1〜12を得た。試料No.1〜12の平均結晶粒径を求め、その結果に基づき結晶粒径の標準偏差を求めた。それらの結果を表1に示す。なお、ここでの焼結体の結晶粒径とは、焼結体の断面(磁気配向方向の軸を含む面)を観察し、個々の結晶粒径を画像解析により計測した結果から求めた値である。具体的には鏡面研磨した焼結体断面を光学顕微鏡にて観察し、個々の粒子を認識した後、個々の粒子の面積を画像処理により求め、その値と同面積となる円の直径として算出した値である。1試料あたり、200〜300個の結晶粒について計測を行った。平均結晶粒径は、全測定粒子の結晶粒径の平均値とした。
得られたトロイダル形状の試料にワイヤを20回巻線した後、インピーダンスアナライザ(横河ヒューレットパッカード社製4192A)にて125kHzにおける透磁率を測定した。この測定結果に基づくμi、αμir−40〜20及びαμir20〜140を表1に示してある。なお、図1は試料No.1〜4の焼結体平均結晶粒径とαμir−40〜20との関係を示すグラフ、図2は試料No.1〜4における結晶粒径の標準偏差とαμir−40〜20との関係を示すグラフである。
また、得られたトロイダル形状の試料にワイヤを20回巻線した後、上述のインピーダンスアナライザにて125kHzにおけるR値を測定し、式:R/2πfL=1/QよりQ値を求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0004183187
表1に示すように、比表面積および平均粒径が等しい粉砕粉末を用いても、焼成温度を高くすることで、焼結体の平均結晶粒径および標準偏差が大きくなる。
また、例えば種別Aの粉砕粉末を用いた試料No.1〜4と種別Dの粉砕粉末を用いた試料No.9〜12との比較により、焼成条件が等しくても、粉砕条件が異なれば得られる焼結体の平均結晶粒径および標準偏差が相違することがわかる。具体的には、種別Aの粉砕粉末を用いた試料No.1〜4と、種別Bの粉砕粉末を用いた試料No.5、6との比較により、粉砕粉末の粒径が小さく粉砕時間が長いほど、焼結体平均結晶粒径および標準偏差を小さくできることが確認できた。また、試料No.1〜4と、試料No.9〜12との比較により、メディアの量が少ないと粉砕時間を長くしても粉砕粉末の平均粒径が大きく、これを焼成するとやはり焼結体の平均結晶粒径が大きくなる傾向が確認できた。
ここで図1および表1に示すように、試料No.1〜4のいずれにおいても、平均結晶粒径が大きくなるにつれてαμir−40〜20が増加する。そして表1中、平均結晶粒径が5μmを上回る試料No.4、11、12については、−40〜20℃におけるαμir(αμir−40〜20)が3ppm/℃を超えてしまう。一方、平均結晶粒径が5μm以下の本発明による試料(試料No.1〜3、5〜10)によれば、αμir−40〜20およびαμir20〜140の両者について絶対値で3ppm/℃以下の値を得ることができる。
次に、標準偏差とαμirに着目すると、図2に示すように標準偏差とαμirも相関があることがわかる。そして、標準偏差が2μm以下の試料(試料No.1〜3、5〜10)はαμir−40〜20およびαμir20〜140の両者について絶対値で3ppm/℃以下という値を得ることができる。これに対し、標準偏差が2μmを上回る試料(試料No.4、11、12)ではαμir−40〜20が大きいために、絶対値で3ppm/℃以下という低αμirを達成できる温度範囲が狭い。
以上の結果から、平均結晶粒径を5μm以下、さらには標準偏差を2μm以下と本発明が推奨する範囲内とすることにより、−40〜140℃という広い温度範囲で低い温度係数を得ることができることが確認できた。また、本発明による試料は測定周波数125kHzにおける初透磁率μiが300以上、Q値が170以上という特性を兼備している。よって、平均結晶粒径を5μm以下、標準偏差を2μm以下とする本発明による手法は、透磁率やQ値に悪影響を及ぼすものではない。
主成分組成としてFe粉末、ZnO粉末、NiO粉末およびCuO粉末を表2に示される最終組成(mol%)となるように秤量し、この主成分組成に対してCoOを表2に示す量(wt%)だけ加えた。
次に、これらの原料を鋼鉄製のボールミルを用いて湿式混合し、得られた混合粉末を850℃で2時間仮焼きし、この仮焼き粉を鋼鉄製のボールミルにて混合粉砕した。得られた粉砕粉末は、平均粒径が0.5μmであった。
次いで、得られた各仮焼き粉に、バインダとしてポリビニルアルコール水溶液を添加して造粒した。こうして得られた平均粒径70μmの顆粒を用いて、電磁気特性評価用のトロイダル形状試料(外径20mm、内径10mm、高さ5mm)、および、機械的強度評価用の角柱試料(幅5mm、厚さ4mm、長さ50mm)をプレス成形により得た。なお、成形密度が3.20Mg/mとなるように成形した。成形体を大気中、1020℃で2時間焼成し、表2に示す試料No.13〜33を得た。
得られたトロイダル形状の試料について、125kHzにおける透磁率を測定した。この測定は、実施例1と同様の条件で行なった。この測定結果に基づくμi、αμir−40〜20及びαμir20〜160を表2に示してある。
また、実施例1と同様の条件でQ値を求めた。さらに、得られたトロイダル形状の試料についてTcを測定した。Tcの測定には、熱分析装置(真空理工社製TA7000)を用いた。また実施例1と同様の手順で焼結体の平均結晶粒径および標準偏差を求めた。これらの結果を表2に示す。
次に、得られた角柱試料を用いて3点曲げ強度及び抗応力特性を測定した。その結果も表2に示した。
Figure 0004183187
表2に示すように、本発明の組成を有し、かつ焼結体平均結晶粒径が5μm以下である試料(No.14〜16、19〜22、25〜27、30〜32)は、−40〜20℃及び20〜160℃におけるαμirが3ppm/℃以下、Q値が170以上、Tcが160℃以上の特性を有している。加えて、これら試料は、20kgf/mm以上の曲げ強度及び5%以下の抗応力特性を有している。
以上を前提にして試料No.13〜17を参照すると、Feが45.4mol%と少ないと品質係数(Q値)が170未満となることがわかる。また逆にFeが48.1mol%と多くなると、αμir−40〜20が3ppm/℃を超えてしまう。
また、試料No.18〜23を参照すると、ZnOが25.5mol%と少ないとαμir−40〜20が3ppm/℃を超えてしまう。逆に、ZnOが30.5mol%と多いとTcが160℃未満と低くなることがわかる。
さらに、試料No.24〜28を参照すると、CuOが4.9mol%と少ないとQ値が170未満と低い値を示すとともに、抗応力特性が−5.1%と低下することがわかる。また逆にCuOが11.0mol%と多くなると、αμir−40〜20が3ppm/℃を超えるとともにQ値が170未満となることがわかる。
さらにまた、試料No.29〜33を参照すると、CoOを添加しないとQ値が170未満の低い値を示す。しかし、CoOの添加量が0.05wt%と多くなるとαμir−40〜20が3ppm/℃を超えることがわかる。
以上の通り、主成分および副成分を制御するとともに、焼結体の結晶粒径を微細なものとするアプローチを採用する本発明によれば、高いQ値及び−40〜160℃という広い温度範囲で温度係数の絶対値を小さくすることが可能となる。
試料No.1〜4の焼結体平均結晶粒径とαμir−40〜20との関係を示すグラフである。 試料No.1〜4における結晶粒径の標準偏差とαμir−40〜20との関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. Fe:45.5〜48mol%、CuO:5〜10mol%、ZnO:26〜29.5mol%、残部実質的にNiOの主成分に対して副成分として酸化コバルトをCoO換算で0.005〜0.045wt%の範囲で含有し、
    平均結晶粒径が5μm以下、かつ結晶粒径の標準偏差が2μm以下であり、
    αμir −40〜20 の絶対値及びαμir 20〜140 の絶対値が3ppm/℃以下であることを特徴とするフェライト焼結体。
    ただし、αμir −40〜20 =[(μi 20 −μi −40 )/μi −40 ]×[1/(T 20 −T −40 )]
    αμir 20〜140 =[(μi 140 −μi 20 )/μi 20 ]×[1/(T 140 −T 20 )]
    μi −40 :−40℃における初透磁率
    μi 20 :20℃における初透磁率
    μi 140 :140℃における初透磁率
  2. 125kHzにおける品質係数(Q値)が170以上であることを特徴とする請求項に記載のフェライト焼結体。
  3. 125kHzにおける初透磁率μiが300以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のフェライト焼結体。
  4. 前記フェライト焼結体のキュリー温度は160℃以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のフェライト焼結体
  5. Fe:45.5〜48mol%、CuO:5〜10mol%、ZnO:26〜29.5mol%、残部実質的にNiOからなり、
    平均結晶粒径が5μm以下、かつ結晶粒径の標準偏差が2μm以下であり、
    αμir−40〜20の絶対値及びαμir20〜140の絶対値が3ppm/℃以下であることを特徴とするフェライト焼結体。
    ただし、αμir−40〜20=[(μi20−μi−40)/μi−40 ]×[1/(T20−T−40)]
    αμir20〜140=[(μi140−μi20)/μi20 ]×[1/(T140−T20)]
    μi−40:−40℃における初透磁率
    μi20:20℃における初透磁率
    μi140:140℃における初透磁率
  6. 副成分として酸化コバルトをCoO換算で0.005〜0.045wt%の範囲で含有することを特徴とする請求項に記載のフェライト焼結体。
  7. 曲げ強度が20kgf/mm以上であることを特徴とする請求項またはに記載のフェライト焼結体。
    ただし、曲げ強度はJIS R1601により測定される値。
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