JP4135869B2 - フェライト焼結部材およびフェライト焼結部材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はフェライト材料に関し、特に高強度が必要なフェライト部品に使用するのに適したフェライト材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまでフェライト材料の強度を向上させる手法として、ZrO2を添加する提案がなされている。例えば、特許第2599887号公報には、Fe2O3を40〜52.5mol%,ZnOを35mol%以下,CuOを2〜20mol%,残部NiOからなる組成を主成分とし、これにZrO2を0.01〜3.0wt%添加含有するチップ部品用磁性材料が、また特開平8−157253号公報にはFe2O3換算で59〜72重量%、NiO換算で7〜31重量%、ZnO換算で1〜23重量%、CuO換算で0〜4重量%、MnO換算で0〜2重量%であるNi−Zn系フェライトの主成分100重量部に対して0.1〜10.0重量部のZrO2を添加し、平均結晶粒径が1〜18μmである高強度フェライトが開示されている。そして、特開平8−157253号公報によれば、3点曲げ強度で20kgf/mm2を超える強度のフェライト材料が得られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
フェライト材料が適用される部品には一層の小型化の要求がある。小型部品を得る場合に、フェライト材料の強度が不足すると、その加工過程で、欠け、割れといった不具合が生ずることがある。したがって、より高い強度を発現しうるフェライト材料の開発が望まれている。
一方、フェライト材料を用いた部品にも、当然のように、低コスト化が要求される。高強度なフェライト材料を得る場合にも、その要求を満足する必要がある。フェライト材料を構成する基本的な組成を変動することによる低コスト化は、所望する特性を得ることを前提にすると容易ではない。したがって、高強度化のための添加物をより安価なものにすべきであるが、従来提案されているZrO2は、比較的高価な添加物である。
【0004】
そこで本発明は、コストの上昇を回避しつつ高強度なフェライト材料を提供することを課題とする。
また本発明は、低コストで高強度なフェライト材料を得るための製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者はNiCuZnフェライトの高強度化のための添加物について検討したところ、SiO2が添加された焼結体は組織が微細化されることによりフェライト材料の強度を向上できること、さらに結晶粒の大きさの均一性が高いほど高強度化を図ることができることを知見した。また、以上のような組織を得るためには、添加物であるSiO2に頼るだけでなく、焼結に供される粉末の粒度分布、さらに成形体を効率よく得るために前記粉末を凝集させた顆粒の粒度を制御することが、フェライト材料の高強度化に寄与することをも知見した。
本発明のフェライト焼結部材は以上の知見に基づいてなされたものであり、Fe2O3:40〜49.8mol%、ZnO:20〜33mol%、CuO:5〜10mol%、残部実質的にNiOに対して、SiO2を0.03wt%以上0.1wt%未満含有する焼結部材であって、フェライト焼結部材におけるフェライト結晶の粒径の標準偏差が3.5以下で、かつ前記フェライト焼結部材におけるフェライト結晶の平均粒径が2〜9μmであり、3点曲げ強度が18kgf/mm2以上であることを特徴とする。
【0006】
本発明のフェライト材料は、添加されたSiO2が、フェライト結晶粒間の粒界に存在することにより、焼結時のフェライト結晶粒の成長を抑制して、微細な結晶組織を実現する。この微細な結晶組織が、高強度化に寄与する。本発明のフェライト材料を構成する焼結体の平均結晶粒径が、2〜9μmの範囲にあることが、高強度化のために望ましい。加えて、フェライト材料を構成する焼結体の結晶粒径の標準偏差が、3.5以下であることが、高強度化のために望ましい。以上の微細な結晶組織を有する本発明のフェライト材料によれば、3点曲げ強度を18kgf/mm2以上とすることが容易である。後述する実施例に示すように、本発明では21kgf/mm2以上という高い強度を実現することもできる。しかも、本発明において高強度化のために添加するSiO2は、価格が前述したZrO2の30%程度と安価である。
【0007】
本発明は、高強度フェライト材料を得る以下の方法を提供する。すなわち本発明によるフェライト材料の製造方法は、はじめに、Fe2O3:40〜49.8mol%、ZnO:20〜33mol%、CuO:5〜10mol%、残部実質的にNiOに対して、SiO2を0.03wt%以上0.1wt%未満含有し、かつその粒度分布のピークが単一でありかつその位置が0.5〜1.5μmのフェライト粉末を作製する。次いで、前記フェライト粉末を凝集させた顆粒を造粒する際には、顆粒の平均径を30〜80μmの範囲に制御する。そうすることが、得られるフェライト焼結体の高強度化にとって望ましい。このフェライト粉末からなる顆粒を加圧成形することにより所定形状の成形体を作製する。そして、この成形体を焼結する、という一連の工程を有している。
本発明のフェライト焼結体の製造方法において、フェライト粉末のピークの頻度を7%以上に制御することが、得られるフェライト焼結体の高強度化にとって望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明をより具体的に説明する。はじめに本発明によるフェライト材料の組成範囲の限定理由について説明する。Fe2O3の量は透磁率に大きな影響を与える。Fe2O3が40mol%より少ないと初透磁率(μi)が低い。一方、フェライトとしての化学量論組成に近づくにしたがって透磁率は上昇するが、化学量論組成をピークとして急激に低下するとともに、焼結密度が低下して焼結体の強度が低下する。したがって、上限を49.8mol%とする。望ましいFe2O3量は45〜49.8mol%、さらに望ましいFe2O3量は48〜49.8mol%である。
ZnOは、その量の増加とともに透磁率を向上させるが、20mol%未満だとμiが不足し、一方33mol%を超えるとキュリー点が低くなりすぎる。したがって、本発明ではZnO量を20〜33mol%の範囲とする。望ましいZnO量は20〜30mol%である。
【0010】
CuOは、その量が5mol%未満だと焼結密度が低く、強度が低下する。一方、10mol%を超えると結晶粒が異常成長し、強度が低下する。したがって、本発明では、CuO量を5〜10mol%の範囲とする。望ましいCuO量は5〜9mol%、さらに望ましいCuO量は5〜8mol%である。
Mn2O3は、通常、Fe2O3中に不純物として含有されており、本発明においてもその含有を許容する。その含有量は、Fe2O3のグレードによって左右されるが、1mol%を超えるとフェライト材料のμiが低下する。したがって、Mn2O3は1mol%以下に規制することが望ましい。望ましいMn2O3量は0.5mol%以下、さらに望ましいMn2O3量は0.3mol%以下である。
SiO2は、本発明において強度向上に貢献する最も特徴的な元素である。しかし、その量が0.03wt%未満だと強度の効果が不十分であり、逆に0 . 1wt%以上になると焼結密度が低下するため強度が劣化する。また、この範囲でSiO2を添加することにより焼結体中の結晶粒径の標準偏差が3.5以下となり、強度にとって望ましい組織が得られることを見出した。そこで本発明では、SiO2量を0.03wt%以上0 . 1wt%未満とする。望ましいSiO2量は0 . 05wt%以上0.1wt%未満である。
【0011】
本発明によるフェライト材料は、以上の組成、特にSiO2を添加する点に特徴を有しているが、SiO2の添加効果を最大限に引き出すためには、焼結に供されるフェライト粉末の粒度分布およびフェライト粉末を凝集した顆粒のサイズを以下に説明するように制御することが重要である。
はじめに、フェライト粉末の粒度分布がシャープであるほど、焼結体を構成する結晶粒径の標準偏差が小さくなる。具体的には、フェライト粉末の粒度分布のピーク位置を0.5〜1.5μmの範囲にする。この範囲外の粒度分布のフェライト粉末は、SiO2添加によるフェライト材料の強度向上効果を十分に得ることができない。ここで、本発明は、粒度分布のピークが2つ以上あると認められるフェライト粉末を含まない。つまり、本発明における粒度分布のピークとは、ピークが単一であることをいう。以上のように、シャープな粒度分布を有するフェライト粉末を用いることにより、焼結体の結晶粒径の標準偏差を、3.5以下という高強度化のために望ましい焼結組織を実現することが可能となる。このとき、焼結体の平均結晶粒径を制御することも重要である。平均結晶粒径を1〜12μmの範囲に制御することが、フェライト材料の高強度化を達成するためのひとつの要素である。平均結晶粒径が小さくなると焼結体の強度は向上する傾向にあるが、後述する実施例に示すように、あまり結晶粒径が小さすぎると強度が低下する。焼結密度が低下するためと解される。一方、平均結晶粒径が12μmを超えても強度が低下する。
【0012】
以上のフェライト粉末を得る手法は、従来公知の手法を採用することができる。はじめに、原料粉末を所定量だけ秤量したのちに、これら原料粉末をボール・ミル等の混合装置を用いて十分混合した後に、仮焼成を行う。混合は、ボール・ミルの運転条件にも左右されるが、20時間程度行えば均一な混合状態を得ることができる。
原料粉末を十分に混合した後に、仮焼きを行う。仮焼きは、800〜950℃の温度範囲で0.1〜10時間保持すればよい。
仮焼き後には、例えばボール・ミルを用いて仮焼き体を粉砕する。粉砕は、混合と同様に、湿式で行うことが望ましい。この粉砕の条件を特定することにより、得られるフェライト粉末の粒度分布を所定の範囲に制御することが可能となる。
【0013】
粉砕後のフェライト粉末の粒度分布をシャープなものに制御することに加えて、成形に供するための顆粒の平均径を30〜80μmの範囲に制御することも重要である。顆粒が小さいほど強度は向上する傾向にあるため、その上限は80μmとする。一方で、顆粒の平均径が30μm未満だとハンドリングが悪くなり、成形体の作成に支障がでる。そこで本発明では、顆粒の平均径を30〜80μmの範囲に制御する。望ましい顆粒の平均径は30〜70μm、さらに望ましい顆粒の平均径は30〜60μmである。なお、顆粒を得るための手法も、従来公知の方法によればよい。例えば、フェライト粉末同士を凝集させるためのバインダとしてPVAを加えたスラリを、スプレー・ドライヤを用いて造粒して顆粒を得ることができる。顆粒の平均径を30〜80μmにするためには、スラリの濃度、スプレー・ドライヤによる噴霧条件、その他を調整すればよい。
【0014】
以上のように、SiO2を所定量添加することに加えて、焼結に供するフェライト粉末の粒度分布、顆粒の平均径を所定の範囲とすることにより、フェライト材料からなる本発明の部材は、18kgf/mm2以上の3点曲げ強度を容易に達成し、さらに20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上の3点曲げ強度を達成することができる。
【0015】
【実施例】
以下本発明を具体的実施例に基づき説明する。
(実施例1)
主成分としてFe2O3 、NiO、CuO、ZnOおよびMn2O3を表1に示す量比(mol%)となるように秤量した。これらの原料を鋼鉄製のボール・ミルで16時間湿式混合し、その後、得られた混合粉を900℃で2時間仮焼した。この仮焼成粉に、主成分に対してSiO2 を表1の量比(wt%)になるように秤量し、添加した後、鋼鉄製のボール・ミルにて16時間湿式粉砕した。粉砕後の各粉末の粒度分布のピークは、いずれも単一かつ0.5〜1.5μmの範囲内にあった。
【0016】
【表1】
【0017】
湿式粉砕して得られたスラリにPVA(ポリ・ビニル・アルコール)を加えた。その後、PVAと粉砕粉末の混合物を、スプレー・ドライヤを用いてその平均径が30〜80μmの範囲内になるように造粒した。こうして得られた顆粒を用いて成形密度を3.20Mg/m3となるように、トロイダル状のサンプルと角型形状のサンプルをプレス成形した。次にこのサンプルを大気中、1080℃で2時間焼成してフェライト材料を得た。
なお、SiO2添加については、以上の例のようにフェライト材料を構成する主成分のみを仮焼した後の粉砕工程時SiO2を添加する方法の他に、配合時に主成分に添加して主成分とともに仮焼きする方法もあるが、本発明の本質的な効果に影響を与えることはない。
【0018】
以上で得られた20種類のフェライト材料について、焼結密度(Mg/m3)、初透磁率(μi)、3点曲げ強度およびキュリー温度(Tc)を測定した。
初透磁率(μi)は、トロイダル・コアにワイヤを20回巻き線した後、LCRメータにて測定した100kHzのインダクタンス値に基づいて求めた。3点曲げ強度は角型サンプルを用い、かつJISR1601にしたがって測定した。測定結果を表1に示す。
【0019】
表1において、No.1〜4は、Fe2O3(NiO)が及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。この4つのサンプルの特性の比較より、Fe2O3が40〜49.8mol%の範囲にあるときに高い焼結密度および強度が得られることがわかる。また、Fe2O3量の増大に伴って、初透磁率(μi)が向上することもわかる。
次に、No.5および6は、Mn2O3(NiO)が及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。表1に示すように、Mn2O3量が1.0mol%を超えて1.5mol%に達すると、初透磁率(μi)が低下する。しかも、焼結密度および強度も低下することがわかる。
表1において、No.7〜10は、CuOが及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。この4つのサンプルの特性の比較より、CuO量により焼結密度および強度が変動することがわかる。具体的には、CuOを5〜10mol%の範囲とすることにより、高い強度を得ることができる。
【0020】
次に、No.11〜14は、ZnOが及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。この4つのサンプルの特性の比較より、ZnO量は、初透磁率(μi)およびキュリー温度(Tc)に大きな影響があることがわかる。ZnO量によって強度も変動するが、高いレベルでの推移である。
最後に、No.15〜20は、SiO2が及ぼす特性の変化を観察するためのサンプルである。SiO2が0.02wt%から増えるにつれて強度は上昇し、0.07wt%において21.1kgf/mm2とピークに達する。ピークを過ぎても0.50wt%までの範囲であれば18kgf/mm2以上の強度を得ることができる。
【0021】
(実施例2)
実施例2は、仮焼き後の粉砕粉末の粒度分布が焼結後のフェライト材料の強度に及ぼす影響を観察するために行ったものである。
主成分としてFe2O3:48.8mol%,NiO:16.2mol%, CuO:6.8mol%,ZnO:28.0mol%,Mn2O3:0.2mol%となるように秤量した。これらの原料を鋼鉄製のボール・ミルで16時間湿式混合し、その後、得られた混合粉を900℃で2時間仮焼した。得られた仮焼き粉に対してSiO2 を0.1wt%になるように秤量、添加した後、鋼鉄製のボール・ミルにて湿式粉砕を行った。このとき、いくつかの異なる条件で粉砕を行い、A〜Eの5種類の異なる粒度分布を有する粉砕粉末を得た。ただし、これら5種類の粉砕粉末の比表面積はほぼ同じである。A〜Eの5種類の粉砕粉末の粒度分布を図1、図2および表2に示す。図1に示すように、AおよびBは粒度分布のピークが1〜1.5μmの範囲にあり、かつその頻度が7%以上である。図1に示すように、Cは、粒度分布のピークが2つ存在し、頻度の大きいほうのピークが1μm未満、頻度の小さいほうのピークが1.5μmを超えている。図2に示すように、Dは、粒度分布のピークが1〜1.5μmの範囲にあるが、その頻度が7%未満である。さらに、Eは、粒度分布のピークが1.5μmを超えている。
【0022】
粉砕後の粉末を含むスラリにPVAを加え、その後、スプレー・ドライヤを用いて造粒した。こうして得られた5種類の顆粒の平均径は60μmであった。これら顆粒を用いて成形密度が3.20Mg/m3となるように角型形状のサンプルをプレス成形により得た。次にこのサンプルを大気中で2時間、1080℃で焼成してフェライト材料を得た。得られたフェライト材料について、実施例1と同様に3点曲げ強度を測定した。結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
表2に示すように、粒度分布のピークが1〜1.5μmの範囲にあり、かつその頻度が7%以上であるAおよびBは、19kgf/mm2以上の高い強度を得ている。これに対して、粒度分布のピークが2つ存在するC、粒度分布のピークが1〜1.5μmの範囲にあるがその頻度が7%未満のDおよび粒度分布のピークが1.5μmを超えるEは、18kgf/mm2以上の強度を得るに至っていない。
以上のように、仮焼き後の粉砕粉末の粒度分布を制御することにより、強度を向上することができる。
【0025】
(実施例3)
実施例3は、仮焼き後の粉砕粉末を造粒して得られる顆粒の粒径が、焼結後のフェライト材料の強度に及ぼす影響を観察するために行ったものである。
主成分としてFe2O3:48.8mol%,NiO:16.2mol%, CuO:6.8mol%,ZnO:28.0mol%,Mn2O3:0.2mol%となるように秤量した。これらの原料を鋼鉄製のボール・ミルで16時間湿式混合し、その後、得られた混合粉を900℃で2時間仮焼した。得られた仮焼き粉に対してSiO2 を0.1wt%になるように秤量、添加した後、鋼鉄製のボール・ミルにて湿式粉砕を行った。粉砕後の各粉末の粒度分布のピークは、いずれも単一かつ0.5〜1.5μmの範囲内にあった。
粉砕後の粉末を含むスラリにPVAを加え、その後、スプレー・ドライヤを用い、平均顆粒径が30〜105μmになるよう種々の条件で造粒した。こうして得られた顆粒を用いて成形密度が3.20Mg/m3となるように角型形状サンプルをプレス成形によりえた。次にこのサンプルを大気中で2時間、1080℃で焼成してフェライト材料を得た。得られたフェライト材料について、実施例1と同様に3点曲げ強度を測定した。結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
表3に示すように、平均顆粒径が小さくなるほど強度が向上することがわかる。特に、平均顆粒径が30μmの場合には、24kgf/mm2を超える強度を得ることができることが注目される。また、18kgf/mm2以上の強度を得るためには、平均顆粒径を80μm以下にすべきことがわかる。
【0028】
(実施例4)
実施例4は、焼結後のフェライト材料の結晶粒径と強度との関係を観察するために行ったものである。
主成分としてFe2O3:48.8mol%,NiO:16.2mol%, CuO:6.8mol%,ZnO:28.0mol%,Mn2O3:0.2mol%となるように秤量した。これらの原料を鋼鉄製のボール・ミルで16時間湿式混合し、その後、得られた混合粉を900℃で2時間仮焼した。得られた仮焼き粉に対してSiO2 を0.1wt%になるように秤量、添加した後、鋼鉄製のボール・ミルにて湿式粉砕を行った。粉砕後の各粉末の粒度分布のピークは、単一かつ0.5〜1.5μmの範囲内にあった。
湿式粉砕して得られたスラリにPVA(ポリ・ビニル・アルコール)を加えた。その後、PVAと粉砕粉末の混合物を、スプレー・ドライヤを用いてその平均径が30〜80μmの範囲内になるように造粒した。こうして得られた顆粒を用いて成形密度を3.20Mg/m3となるように、トロイダル状のサンプルと角型形状のサンプルをプレス成形により得た。次にこのサンプルを大気中で、温度および保持時間を種々変えてフェライト材料を得た。得られたフェライト材料にいて、実施例1と同様に3点曲げ強度を測定した。結果を表4に示す。
【0029】
【表4】
【0030】
表4に示すように、結晶粒の平均粒径が0.9μmから大きくなるにしたがって、強度が向上することがわかる。しかし、3.4μmをピークに強度が次第に低下することがわかる。また、表4より、18kgf/mm2以上の3点曲げ強度を得るためには、結晶粒の平均粒径を1〜12μmの範囲とすべきことが推察される。
【0031】
(実施例5)
実施例5は、フェライト材料の結晶粒径の標準偏差と強度との関係を観察するために行ったものである。
実施例1のサンプル15〜20および実施例2のサンプルA〜Eの焼結体の結晶粒径の標準偏差(σ)を求めた。結果を表5に示す。表5に各サンプルの強度をも併せて示すが、結晶粒径の標準偏差(σ)が3.5以下になると、18kgf/mm2以上の3点曲げ強度が得られることがわかった。
【0032】
【表5】
【0033】
以上の実施例1〜5より、以下のことがわかった。
(1)フェライト材料の高強度化のためには、フェライト材料を構成する成分であるFe2O3、ZnO、CuO、Mn2O3の量を規制すること、および適切な量のSiO2を添加することが有効である。
(2)フェライト材料を製造する過程の粉砕粉末の粒度分布、顆粒径を制御することにより、フェライト材料の強度を向上することができる。
(3)フェライト材料の平均結晶粒径、結晶粒径の標準偏差は、フェライト材料の強度を左右する因子であり、これら因子を所定の範囲に制御することにより、高強度なフェライト材料を得ることができる。
なお、以上の、実施例1〜5では、特定組成のNiCuZnフェライトについて言及した。しかし、SiO2添加による高強度化、粉砕粉末の粒度分布および顆粒径を制御することによる高強度化、平均結晶粒径および結晶粒径の標準偏差を制御することによる高強度化は、他の組成のフェライト材料についても適用できる技術事項であることは当業者にとって明らかである。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高強度なフェライト材料が得ることができる。しかも、本発明のフェライト材料は、従来の高強度フェライト材料に比べて安価な添加物で、従来の高強度フェライト材料を凌駕する強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2で用いた粉末の粒度分布を示すグラフである。
【図2】 実施例2で用いた粉末の粒度分布を示すグラフである。
Claims (4)
- Fe2O3:40〜49.8mol%、ZnO:20〜33mol%、CuO:5〜10mol%、残部実質的にNiOに対して、SiO2を0.03wt%以上0.1wt%未満含有するフェライト焼結部材であって、
前記フェライト焼結部材におけるフェライト結晶の粒径の標準偏差が3.5以下で、かつ前記フェライト焼結部材におけるフェライト結晶の平均粒径が2〜9μmであり、3点曲げ強度が18kgf/mm2以上であることを特徴とするフェライト焼結部材。 - 前記フェライト結晶の粒界にSiO2が散在していることを特徴とする請求項1に記載のフェライト焼結部材。
- 3点曲げ強度が20kgf/mm2以上であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト焼結部材。
- Fe2O3:40〜49.8mol%、ZnO:20〜33mol%、CuO:5〜10mol%、残部実質的にNiOに対して、SiO2を0.03wt%以上0.1wt%未満含有し、粒度分布のピークが単一でありかつその位置が0.5〜1.5μm、ピークの頻度が7%以上のフェライト粉末を平均径が30〜80μmの顆粒に造粒し、
前記顆粒を加圧成形することにより所定形状の成形体を作製し、
前記成形体を焼結することを特徴とするフェライト焼結部材の製造方法。
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