JP2004311303A - 電解質膜/電極接合体、その製造法および燃料電池 - Google Patents

電解質膜/電極接合体、その製造法および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】広い温度域にわたって高いイオン伝導性を示し、耐熱性および耐水性に優れた接着力を有する電解質膜/電極接合体、その製造法、ならびに耐久性に優れ、低抵抗で、高電流操作が可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜および電極層を、結着剤層を介しまたは介さずに、積層して接合するに際し、接合前および/または接合後に、電解質膜および/または電極層に放射線を照射する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質膜/電極接合体、その製造法および燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の点から新しいエネルギー蓄電素子またはエネルギー発電素子が社会で強く求められてきている。燃料電池もその1つとして注目されており、低公害、高効率という特徴から最も期待される発電素子である。燃料電池とは、水素やメタノールなどの燃料を酸素または空気を用いて電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すものである。
【0003】
このような燃料電池は、電解質の種類によって、りん酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型および高分子電解質型に分類される。りん酸型燃料電池は、すでに電力用に実用化されている。しかしながら、りん酸型燃料電池は200℃前後の高温で作用させる必要があるので、起動に長時間を要し、システムの小型化が困難である。また、りん酸のプロトン伝導度が低いために、大きな電流を取り出せないという欠点を有している。
【0004】
これに対し、高分子型燃料電池は、操作温度が最高でも約80〜100℃程度である。また、電解質膜を薄くすることによって、電池内の内部抵抗を低減できるので、高電流での操作が可能になり、そのため小型化が可能である。このような利点から、高分子型燃料電池の研究が盛んになってきている。
【0005】
高分子型燃料電池は、通常、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜とその両側に接触して配置される正極および負極から構成される。正極側には酸素が供給され、負極側にはたとえば水素などの燃料が供給される。水素は負極において電気化学的に酸化され、それによりプロトンと電子とが生成する。プロトンは高分子電解質膜内を、酸素が供給される正極に移動する。一方、電子は電池に接続された負荷を通り、正極に流れ、正極においてプロトンと電子とが反応して水を生成する。
【0006】
高分子型燃料電池に用いる正極、負極といった電極は、電気伝導性を有する導電材、水素の酸化反応、酸素の還元反応を促進する触媒など電極材料と、それを固定する結着剤とにより構成される。
【0007】
高分子型燃料電池に用いる高分子電解質膜には、燃料電池の電極反応に関与するプロトンについて高いイオン伝導性が要求される。このようなイオン伝導性高分子電解質膜材料としては、商品名Nafion(デュポン社製)、Dow膜(ダウ社製)などの超強酸基含有フッ素系高分子が知られている。また、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などの、イオンに解離し得る残基すなわちプロトン酸基を含有する樹脂からなる高分子電解質膜が提案され(たとえば、特許文献1参照)、さらに様々なプロトン酸基含有芳香族樹脂からなる電解質膜が開発されている(たとえば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。しかしながら、超強酸基含有フッ素系高分子は、100℃前後での水分保持が充分ではないことにより、その温度領域ではプロトン伝導性が急激に低下するという欠点がある。また、従来のプロトン酸基含有芳香族樹脂からなる電解質膜には、室温でのプロトン伝導性が低いという欠点がある。
【0008】
一方、高分子型燃料電池において、電極層の固定、電極層と電解質膜との接着などに用いられる結着剤についてはほとんど報告例が無く、わずかに超強酸基含有フッ素系高分子が用いられているのみである。しかしながら、この超強酸基含有フッ素系高分子は、超強酸基含有フッ素系高分子からなる高分子電解質膜には接着するものの、プロトン酸基含有芳香族樹脂からなる電解質膜に対する接着性に乏しい。このため、プロトン酸基含有芳香族樹脂からなる電解質膜および電極材料に対して優れた接着力を有する結着剤が求められている。
【0009】
【特許文献1】
特表平8―504293号公報
【非特許文献1】
Macromolecular Chemistry and Physics,199,1421−1426(1998)
【非特許文献2】
Polymer 40 795−799(1999)
【非特許文献3】
Polymer 42 3293−3296(2001)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、広い温度域にわたって高いイオン伝導性を示し、耐熱性および耐水性に優れた接着力を有する電解質膜/電極接合体、その製造法、ならびに耐久性に優れ、低抵抗で、高電流操作が可能な燃料電池を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電解質膜と、電極材料および結着剤とを含む電極層とが結着剤層を介しまたは介さずに接合している電解質膜/電極接合体において、電解質膜および/または電極層に放射線が照射されたことを特徴とする電解質膜/電極接合体である。
【0012】
本発明に従えば、電解質膜/電極接合体を構成する電解質膜および/または電極層に放射線を照射する処理を施す場合には、電解質膜と電極層とが高い接着力によって接合され、たとえば、この接合体を燃料電池に用いた場合には、発電の際の温度上昇、発電の際に生成する水などによってその接着力が低下することなく、長期間にわたって接着力が高水準で維持される電解質膜/電極接合体が得られる。さらに、本発明の電解質膜/電極接合体は、広い温度域にわたって優れたイオン伝導性を示す。
【0013】
したがって、本発明の電解質膜/電極接合体を、アルコールなどを燃料として用いる燃料電池、二次電池などに用いると、耐久性に優れ、かつ長期間にわたって安定的に高電気出力を得ることができ、しかも電解質膜、電極層などの損傷、それらの剥離などによる起電力の低下も起こり難い、極めて信頼性の高い電池を得ることができる。また、本発明の電解質膜/電極接合体は、電池用途だけでなく、各種の電気分解反応にも好適に使用できる。
【0014】
また本発明の電解質膜/電極接合体は、電解質膜および/または結着剤が、下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造単位10〜100モル%および下記一般式(2)で表される繰り返し構造単位0〜90モル%を含む架橋性ポリエーテルケトンから選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする。
【0015】
【化6】
Figure 2004311303
【0016】
〔式中、Arは、炭素数1〜20のアルキル基が1または2以上置換し、かつハロゲン原子またはハロゲン化炭化水素基が置換してもよい芳香環を含む基を示す。ただしArで示される基に含まれる芳香環の少なくとも1つは炭素数1〜20のアルキル基の1または2以上で置換されている。XおよびYは同一または異なって、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基およびスルホンイミド基から選ばれるプロトン酸基またはそれらの金属塩を示す。xおよびyは同一または異なって0〜4の整数を示し、x+yは1以上である。〕
【0017】
【化7】
Figure 2004311303
〔式中、Arは前記に同じ。〕
【0018】
本発明に従えば、電解質膜および/または結着剤には、繰り返し構造単位(1)または繰り返し構造単位(1)と繰り返し構造単位(2)とを含むプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンが含まれていることが好ましい。このようなプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンは、公知のスルホン酸基含有樹脂と同等またはそれ以上の高いイオン伝導性を示す。また、この樹脂は、従来電解質膜や結着剤としての使用が検討されてきた超強酸基含有フッ素系樹脂と異なり、その構造中に、芳香環、エーテル結合などの極性基を有するので、他の物質に対して高い接着性を示し、これに放射線を照射すると、その接着性は一層向上する。さらに、この樹脂は耐熱性および耐水性に優れており、この樹脂を光、熱、放射線などにより架橋することによって、その耐熱性および耐水性はさらに向上する。
【0019】
したがって、このようなプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンを含む本発明の電解質膜/電極接合体は、イオン伝導性がさらに高くなり、また電解質膜と電極層との接合性がさらに向上し、熱および水への耐性が増加する。
【0020】
また本発明の電解質膜/電極接合体は、一般式(1)および(2)において、符号Arで示される基が、下記一般式(3)または(4)で表される基であることを特徴とする。
【0021】
【化8】
Figure 2004311303
【0022】
〔式中、R〜Rは同一または異なって水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン化炭化水素基またはハロゲン原子を示す。ただしR〜Rの少なくとも一つは炭素数1〜20のアルキル基を示すものとする。Aは単結合、―CH―、―C(CH―、―O―、―S―、―SO―または基
【化9】
Figure 2004311303
を示す。〕
【0023】
【化10】
Figure 2004311303
【0024】
〔式中、R〜R12は同一または異なって水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン化炭化水素基またはハロゲン原子を示す。ただしR〜R12の少なくとも一つは炭素数1〜20のアルキル基を示すものとする。〕
【0025】
本発明に従えば、繰り返し構造単位(1)からなる重合体および繰り返し構造単位(1)と繰り返し構造単位(2)とを含む重合体であるプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンの中でも、繰り返し構造単位(1)および/または繰り返し構造単位(2)中に特定の芳香環を含むものが特に好ましい。このようなプロトン酸基含有樹脂は、特に高いプロトン伝導性、ならびに耐熱性および耐水性に一層優れた接着性を有し、電解質膜および/または結着剤の成分に用いた場合に特に有用である。
【0026】
また本発明の電解質膜/電極接合体は、プロトン酸基がスルホン酸基であることを特徴とする。
【0027】
本発明に従えば、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンにおけるプロトン酸基としては、スルホン酸基が好ましい。スルホン酸基を持つ架橋性ポリエーテルケトンは、さらに優れたイオン伝導性を示す。
【0028】
また本発明の電解質膜/電極接合体は、電解質膜および/または結着剤が架橋されていることを特徴とする。
【0029】
本発明に従えば、電解質膜および/または結着剤を、熱、光などの一般的な架橋手段にて架橋することによって、それらが有する接着性が一層向上し、長期間にわたって高熱および水に晒されても、高い接着強度が発現される。
【0030】
したがって、電解質膜および/または結着剤を架橋してなる本発明の接合体は、電解質膜と電極層とが極めて強固に接合し、高い信頼性(たとえば長期にわたって起電力が高水準で安定していること、故障、損傷などを起こさないことなど)が要求される燃料電池、二次電池などの発電装置として有用である。
【0031】
また本発明の電解質膜/電極接合体は、放射線の加速電圧が0.1〜5.0MeVでありかつ照射線量が10〜1000kGyであることを特徴とする。
【0032】
本発明に従えば、特定の放射線量を有する放射線を照射することによって、電解質膜と電極層とがより強固に接合する。
【0033】
また本発明の電解質膜/電極接合体は、放射線が電子線であることを特徴とする。
【0034】
本発明に従えば、電解質膜および/または電極層に照射する放射線が電子線であることが好ましい。それによって、電解質膜と電極層との接合強度がより一層高くなる。
【0035】
また本発明の電解質膜/電極接合体は、電極層がカーボンブラック、活性炭、黒鉛、鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウムおよびそれらの2種以上の合金から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする。
【0036】
本発明に従えば、電極層に含まれる電極材料が特定の金属または合金であることが好ましい。これによって、本発明接合体のイオン伝導性をさらに向上できるとともに、電解質膜と電極層との接合強度をも高めることができる。
【0037】
本発明は、電解質膜と、電極材料および結着剤を含んで構成される電極層とを、結着剤層を介しまたは介さずに積層して接合するに際し、接合前および/または接合後に、電解質膜および/または電極層に放射線を照射することを特徴とする電解質膜/電極接合体の製造法である。
【0038】
本発明に従えば、電解質膜と電極層とを積層して接合するに際し、接合前および/または接合後に、電解質膜および/または電極層に放射線を照射することによって、電解質膜および電極層が強固に接合し、長期間にわたって高温および/または水に晒されても、電解質膜と電極層とが剥離することがない、信頼性の高い電解質膜/電極接合体を得ることができる。
【0039】
本発明は、前述のうちのいずれかの電解質膜/電極接合体を含んで構成されることを特徴とする燃料電池である。
【0040】
本発明に従えば、本発明の電解質膜/電極接合体を用いて燃料電池を構成することによって、耐久性に優れ、内部抵抗が低く、高電流操作が可能であり、小型化が容易な信頼性の高い燃料電池を得ることができる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明の電解質膜/電極接合体は、電解質膜と、電極材料および結着剤を含んで構成される電極層とが結着剤層を介しまたは介さずに接合しており、電解質膜および/または電極層には放射線を照射する処理が施されている。
【0042】
本発明の電解質膜/電極接合体の中でも、電解質膜および結着剤のいずれか一方または両方が、プロトン酸基を含有する架橋性ポリエーテルケトン(以後「プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトン」と称す)を含んでいるのが好ましい。
【0043】
また本発明の電解質/電極接合体の中でも、電解質膜と電極層との間に、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンを含む結着剤層が形成されているものが好ましい。このとき、電解質膜および電極層に含まれる結着剤には、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンが含まれていてもよくまたは含まれていなくてもよい。
【0044】
電解質膜および/または結着剤に含まれるプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンとしては、たとえば、一般式
【0045】
【化11】
Figure 2004311303
【0046】
〔式中、Ar、X、Y、xおよびyは前記に同じ。〕
で表されるプロトン酸基を含有する繰り返し構造単位(1)を10〜100モル%、および一般式
【0047】
【化12】
Figure 2004311303
〔式中、Arは前記に同じ。〕
で表される繰り返し構造単位(2)を0〜90モル%含むプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンが挙げられる。
【0048】
なお、繰り返し構造単位(1)と繰り返し構造単位(2)とを含む架橋性ポリエーテルケトンにおいては、繰り返し構造単位(1)を10〜99.95モル%および繰り返し構造単位(2)を0.05〜90モル%含むものが好ましい。
【0049】
上記一般式(1)および(2)において、XおよびYで示されるプロトン酸基の中でも、スルホン酸基が好ましい。
【0050】
Arで示される基中に含まれる芳香環に置換する炭素数1〜20のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert―ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基などの炭素数1〜20の直鎖または分岐鎖状アルキル基が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖状アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基などが特に好ましい。芳香環上には、一種のアルキル基が1または2以上置換してもよく、または異なる二種以上のアルキル基がそれぞれ1または2以上置換してもよい。
【0051】
Arで示される基中に含まれる芳香環に置換してもよいハロゲン化炭化水素基としては、たとえば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、フルオロメチル基、クロロメチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基などが挙げられる。芳香環上には、一種のハロゲン化炭化水素基が1または2以上置換してもよく、または異なる二種以上のハロゲン化炭化水素基がそれぞれ1または2以上置換してもよい。
【0052】
Arで示される基中に含まれる芳香環に置換してもよいハロゲン原子としては、たとえば、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素などが挙げられる。芳香環上には、一種のハロゲン原子が1または2以上置換してもよく、または異なる二種以上のハロゲン原子がそれぞれ1または2以上置換してもよい。
【0053】
また、繰り返し構造単位(1)および繰り返し構造単位(2)において、符号Arで示される、炭素数1〜20のアルキル基が置換している芳香族環を含む基としては、たとえば、一般式(3)
【0054】
【化13】
Figure 2004311303
【0055】
〔式中、AおよびR〜Rは前記に同じ。〕
で表される基、一般式(4)
【0056】
【化14】
Figure 2004311303
〔式中、R〜R12は前記に同じ。〕
で表される基などが挙げられる。
【0057】
プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンは1種を単独で使用できまたは異なる繰り返し構造単位を有する2種以上を併用することができる。
【0058】
プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンにおいて、主鎖中に含まれる芳香環に置換した炭素数1〜20のアルキル基が架橋反応に関与する機構を、炭素数1〜20のアルキル基がメチル基である場合を例に取り、下記反応式に基づいて説明する。
【0059】
【化15】
Figure 2004311303
【0060】
上記反応式に示すように、放射線により生じたベンゾフェノン上のラジカルが、メチル基から水素を引き抜く。引き続き、ベンジルラジカルの二量化、ベンジルラジカルとアルコール性炭素ラジカルカップリング反応、アルコール性炭素ラジカルの二量化のような架橋が起こっていると考えられる。
【0061】
プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンは、たとえば、以下の方法によって得ることができる。
【0062】
たとえば、一般式(5)
【化16】
Figure 2004311303
【0063】
〔式中、R〜RおよびAは前記に同じ。ただしR〜Rの少なくとも1つは炭素数1〜20のアルキル基を示す。〕
で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(5)および一般式(6)
【0064】
【化17】
Figure 2004311303
【0065】
〔式中、R〜R12は前記に同じ。ただしR〜R12の少なくとも1つは炭素数1〜20のアルキル基を示す。〕
で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(6)から選ばれる1種または2種以上と、一般式(7)
【0066】
【化18】
Figure 2004311303
【0067】
〔式中、X、Y、xおよびyは前記に同じ。Zはハロゲン原子を示す。〕
で表される芳香族ジハライド化合物(7)および一般式(8)
【0068】
【化19】
Figure 2004311303
〔式中Zは前記に同じ。〕
で表される芳香族ジハライド化合物(8)とを縮合重合させることによって製造することができる。
【0069】
アルキル基を含有する芳香族ジヒドロキシ化合物(5)としては、たとえば、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α’−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられる。
【0070】
アルキル基を含有する芳香族ジヒドロキシ化合物(6)としては、たとえば、2−メチルハイドロキノン、2−エチルハイドロキノン、2−イソプロピルハイドロキノン、2−オクチルハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,3−ジエチルハイドロキノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジエチルハイドロキノン、2,5−ジイソプロピルハイドロキノン、2,6−ジメチルハイドロキノン、2,3,5−トリメチルハイドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルハイドロキノンなどを挙げることができる。
【0071】
アルキル基を有さない芳香族ジヒドロキシ化合物(5)および(6)としては、たとえば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジメチルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,4−ビス(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゼン、3,3−ジフルオロ−4,4’−ジヒドロキビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコールなどが挙げられる。
【0072】
芳香族ジヒドロキシ化合物(5)および(6)は、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。芳香族ジヒドロキシ化合物(5)および(6)の種類およびその使用量を適宜選択することによって、架橋性のアルキル基を所望量含有するプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンを得ることができる。
【0073】
プロトン酸基を含有する芳香族ジハライド化合物(7)としては、芳香族ジハライド化合物(8)のスルホン化物が挙げられる。スルホン化物はNa、Kなどのアルカリ金属塩も含む。スルホン化物は芳香族ジハライド化合物に発煙硫酸などの公知のスルホン化剤を作用させる方法(Macromolecular Chemistry and Physics, 199, 1421(1998))などの公知のスルホン化法によって得ることができる。プロトン酸基含有芳香族ジハライド化合物としては前記のスルホン化物のほかに、2カルボン酸基を有する芳香族ジハライド化合物およびそのアルカリ金属塩、5,5’−カルボニルビス(2−フルオロベンゼンホスホン酸)などのリン酸基を有する芳香族ジハライド化合物およびそのアルカリ金属塩、スルホンイミド基を有する芳香族ジハライド化合物およびそのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0074】
芳香族ジハライド化合物(8)としては、たとえば、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、3,3’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジクロロベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0075】
芳香族ジハライド化合物(7)および(8)は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。プロトン酸基を含有する芳香族ジハライド化合物およびプロトン酸基を含有しない芳香族ジハライド化合物を適宜組み合わせて使用し、かつその使用量を適宜選択することによって、所望のプロトン酸基の量を有するプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンを得ることができる。
【0076】
縮合重合の条件は、従来公知の方法に基づいて適宜選択することができる。条件の選択にあたっては、たとえば、「新高分子実験学3高分子の合成・反応(2)」155〜175頁〔共立出版(1996年)〕、「実験化学講座28高分子化学」326〜332頁〔丸善株式会社(1992年)〕、「新実験化学講座19高分子化学(I)」137〜138頁〔丸善株式会社(1978年)〕などに記載の方法を参照することができる。
【0077】
なお、プロトン酸基をNa塩、K塩などの金属塩の形態で有している芳香族ジハライド化合物(7)を原料化合物として用いる場合、得られる架橋性ポリエーテルケトンも、金属塩の形態でプロトン酸基を含有している。このような架橋性ポリエーテルケトンについては、イオン交換を行ってプロトン酸の金属塩をプロトン酸基に変換することができる。また、このような架橋性ポリエーテルケトンを用いて、電解質膜、電極層または結着剤層を形成したのちに、イオン交換を行い、プロトン酸基に変換することができる。イオン交換は公知の方法に従って実施でき、たとえば、硫酸水溶液などの酸水溶液を用いる方法などが挙げられる。
【0078】
プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンの分子量は特に制限はないが、製膜性などを考慮すると、その分子量が還元粘度(ηinh)にして通常0.1〜5.0dl/g、好ましくは0.2〜4.0dl/g、さらに好ましくは0.3〜3.0dl/gである。なお、前記の還元粘度は、ジメチルスルホキシド中、試料濃度0.5g/dl、35℃で測定した値である。0.1dl/gより著しく低いと、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンの機械的強度が低下し、電解質膜および結着剤として用いる場合に、充分な膜強度および接着力を得ることができない可能性がある。5.0dl/gを著しく超えると、製膜する際に溶媒に溶解することが困難になり、製膜性が低下するとともに、電極材料との混合、ワニスとしての使用などが困難になる。
【0079】
プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンは、好ましくは、溶液または懸濁液であるワニスの形態で使用される。ここで使用される溶媒としては、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンを溶解、分散または懸濁できるものであれば特に制限されず、たとえば、水、メタノール、エタノール、1―プロパノール、2―プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、塩化メチル、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジクロロエチルエーテル、1,4―ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの脂肪酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、N,N―ジメチルアセトアミドなどのアミド類、N―メチルー2―ピロリドン、ジメチルスルホキシド、炭酸ジメチルなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。溶媒は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。ワニス中のプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトン濃度は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるが、通常は1〜80重量%、好ましくは3〜50重量%である。
【0080】
電解質膜は、イオン伝導性樹脂を含む電解質材料を製膜化することによって製造できる。イオン伝導性樹脂としては、たとえば、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトン、公知のイオン伝導性樹脂などが挙げられる。公知のイオン伝導性樹脂としては、たとえば、フッ素樹脂、ポリエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリオレフィンなどの合成樹脂に、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、スルホンイミド基などのプロトン酸基を付与したものが挙げられる。イオン伝導性樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。これらの中でも、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトン、該架橋性ポリエーテルケトンと他のプロトン伝導性樹脂との混合物(前者を全量の1〜95重量%含みかつ残部が後者であるものが好ましい)などが好ましい。プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンと公知のプロトン伝導性樹脂とを併用する場合は、該架橋性ポリエーテルケトンの好ましい特性を損なわない範囲で、公知のプロトン伝導性樹脂を添加するのが好ましい。また、電解質材料は、シリカなどのイオン伝導性無機物質などを含んでいてもよい。電解質材料のワニスの形態に調製する際は、溶媒としては前述のものと同様のものを使用できる。また、ワニス中の固形分濃度は3〜50重量%程度にすればよい。
【0081】
製膜化は公知の方法に従って実施でき、たとえば、固形物の形態の電解質膜材料をプレス成形によって製膜化する方法、ワニス形態の電解質膜材料を基板上にキャストして製膜化する方法などが挙げられる。製膜化後の乾燥は、通常は100〜300℃程度、好ましくは120〜250℃程度の温度下に行われ、通常5分〜20時間程度、好ましくは20分〜10時間程度で終了する。
【0082】
電解質膜の厚さに特に制限はないが、通常10〜200μm、好ましくは30〜100μmである。この範囲内であれば、十分な膜強度が得られ、かつ膜抵抗が実用上十分に低くなる。すなわち、電池の正極と負極の燃料を遮断し、かつ、十分なイオン伝導性を有することで、燃料電池として優れた発電性能を得ることができる。膜厚が10μmを著しく下回ると、正極燃料と負極燃料とのクロスオーバーを十分に抑制しきれない可能性がある。200μmを大幅に超えると、膜抵抗が高くなりすぎ、発電性能に悪影響をおよぼすおそれがある。膜厚の制御は、製膜時の条件、たとえばプレス成形時の温度、圧力、キャスト時のワニス濃度、塗布厚などを適宜調整することにより行われる。
【0083】
結着剤は、イオン伝導性樹脂を含んで構成される。イオン伝導性樹脂としては、電解質膜材料と同様のものを使用できる。その中でも、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトン、該架橋性ポリエーテルケトンと公知のプロトン伝導性樹脂との混合物などが好ましい。結着剤は、通常、前述と同様のワニスの形態で使用される。このような結着剤は、電極材料を分散および固定化して電極層を形成するためのマトリックスとして使用でき、また電解質膜と電極層とを積層するのにも使用できる。
【0084】
電極層は、電極材料と結着剤とを含んで構成される。電極材料としては公知のものを使用でき、たとえば、導電性材料、水素の酸化反応および/または酸素の還元反応を促進する触媒などが挙げられる。導電材料としては公知の電気伝導性物質を使用でき、各種金属、炭素材料などが挙げられる。それらの中でも、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、活性炭、黒鉛などが好ましい。導電材料は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。導電材料は、たとえば、粉末状またはシート状に形成して使用される。触媒としては水素の酸化反応および/または酸素の還元反応を促進する金属できる。その中でも、たとえば、鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウム、それらの2種以上の合金などが挙げられる。触媒は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。さらに導電性材料の1種または2種以上と、触媒の1種または2種以上とを併用することもできる。
【0085】
結着剤としては、前述の結着剤を使用できる。
電極層における電極材料と結着剤の配合比率は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるが、たとえば、電極層の機械的強度、発電効率などを考慮すると、結着剤の含有量を、電極材料と結着剤(固形分)との合計量の5〜90重量%にするのが好ましい。
【0086】
電極層の厚さは特に制限されず、各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、燃料電池としての発電性能などを考慮すると、通常500μm以下、好ましくは300μm以下である。
【0087】
電極層は、公知の方法に従って、たとえば下記1)〜3)のようにして形成することができる。
【0088】
1)結着剤および電極材料を混合したワニスを、カーボンペーパーなどの基材に噴霧・塗布し、基材ごと電極層とする方法。
【0089】
2)結着剤および電極材料を混合したワニスを、PTFEシートなどの基材に噴霧・塗布した後、剥離し電極層とする方法。
【0090】
3)結着剤および電極材料を混合したワニスを、直接電解質膜に噴霧・塗布の後、乾燥し、電極層とする方法。
【0091】
本発明の電解質膜/電極接合体は、イオン伝導性高分子電解質膜と、この両側に接触して配置される正極電極層および負極電極層から構成される。
【0092】
本発明の電解質膜/電極接合体は、たとえば、電解質膜と電極層とを積層して接合するに際し、接合前および/または接合後に、電解質膜および/または電極層に放射線を照射することによって製造できる。
【0093】
具体的には、本発明の電解質膜/電極接合体は、たとえば、下記のようにして製造できる。
【0094】
1)基材上に形成した電極層または基材より剥離した電極層を、結着剤層を介しまたは介さずに電解質膜に積層した後に、放射線を照射する方法。
【0095】
2)基材上に形成した電極層または基材より剥離した電極層を、結着剤層を介しまたは介さずに電解質膜に積層し、接合したのち、放射線を照射する方法。
【0096】
3)基材上に形成した電極層または基材より剥離した電極層および/または電解質膜に放射線を照射したのち、結着剤層を介しまたは介さずに電解質膜に積層し、接合する方法。
【0097】
4)基材上に形成した電極層または基材より剥離した電極層および/または電解質膜に放射線を照射したのち、結着剤層を介しまたは介さずに電解質膜に積層し、接合した上で、更に放射線を照射する方法。
【0098】
5)電解質膜上に、結着剤層を介しまたは介さずに、電極を形成し、これに放射線を照射する方法。
【0099】
6)電解質膜上に、結着剤層を介しまたは介さずに、電極を形成し、これを接合した上で、更に放射線を照射する方法。
【0100】
これらの方法において、電解質膜と電極との積層・接合には、熱プレス、コールドプレス、超音波溶着などの公知の接合方法が採用できる。その中でも熱プレスが好ましい。電解質膜と正極電極層との積層・接合、および電解質膜と負極電極層との積層・接合は、同じ方法または異なる方法で実施することができる。
【0101】
電解質膜、電極層および結着剤層に照射する放射線としては公知のものを使用でき、たとえば、紫外線、X線、γ線、電子線、イオンビームなどが挙げられる。これらの中でも、放射線量、材料に対する透過性、照射時間、工業的な生産性などを考慮すると、電子線が好ましい。放射線の照射雰囲気は、空気、無酸素雰囲気および真空のいずれでもよい。電解質膜/電極接合体中に含まれる成分などに応じて、該接合体の劣化が生じない雰囲気を適宜選択すればよい。また、放射線照射を効率的に行うため、電解質膜/電極接合体を加熱しても良い。放射線の加速電圧は、電解質膜の材質/厚さ、電極層の材質/厚さ、カーボンペーパーなどの基材の有無/材質/厚さなどに応じて広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは0.1〜5.0MeVである。加速電圧が0.1MeVより著しく低いと、接合体に対する放射線の透過度が低くなり、接合体内部まで均質に架橋せず、接着力を均一に向上させることが困難になる可能性がある。また、必要な照射線量を確保するのに長時間の照射が必要となり、生産性が低下するおそれがある。また加速電圧5.0MeVを大幅に超えると、接合体に含まれる成分が劣化するおそれがある。さらに照射装置が大きくなりすぎ、生産性が低下するおそれがある。放射線の照射線量は電解質膜の材質/厚さ、電極層の材質/厚さ、カーボンペーパーなどの基材の有無/材質/厚さなどに応じて広い範囲から適宜選択できるが、好ましくは10〜1000kGyである。照射線量が10kGyより著しく少ないと、十分な接着力の向上が得られない可能性がある。また照射線量が1000kGyより著しく多いと、接合体に含まれる成分が劣化するおそれがある。放射線照射は接合体の片面から行っても良いが、両面から行うのが望ましい。また、放射線は少線量で複数回に分け、照射するのが望ましい。放射線の照射方法には特に制限は無いが、電解質膜と電極層の積層体にそのまま照射する方法、電解質膜と電極層の積層体をフィルムに挟んだ状態で照射する方法などが挙げられる。なお、溶剤が残存し、未乾燥の状態にある電解質膜および/または結着剤層に放射線を照射してもよい。
【0102】
本発明においては、必要に応じて、電解質膜、電極層および結着剤層のいずれか1種または2種以上を、接合前または接合後に、光および/または熱によって架橋してもよい。光による架橋を行う場合、用いる光源は特に限定されず、通常、紫外線光、可視光の範囲の光が照射できる光源を用いることができる。具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライド灯等が挙げられる。また、照射線量は、用いる架橋性ポリエーテルケトンの種類、膜厚などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常100〜40000mJ/cm、好ましくは500〜20000mJ/cmである。熱による架橋を行う場合、その熱供給方法は特に限定されず、通常のオーブン等による加熱で十分である。また、加熱時の温度および時間は、用いる架橋性ポリエーテルケトンの種類、その膜厚などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は120〜300℃、好ましくは150〜250℃、および0.1〜180分、好ましくは1〜60分である。
【0103】
本発明の電解質膜/電極接合体は、放射線により、電解質膜および結着剤それぞれの内部の架橋と界面での架橋が起き、化学結合が生じるため、接合体の接着力が向上すると考えられる。
【0104】
このようにして作成した電解質膜/電極接合体を、燃料および酸素の流路の加工を施したセパレータで挟むことによって、本発明の燃料電池を得ることができる。
【0105】
本発明の燃料電池は、イオン伝導性を有する高分子電解質膜とこの両側に接触して配置される正極電極層および負極電極層から構成された電解質膜/電極接合体を含んで構成される。燃料の水素は負極において電気化学的に酸化されてプロトンと電子を生成する。このプロトンは高分子電解質膜内を、酸素が供給される正極に移動する。一方、負極で生成した電子は電池に接続された負荷を通り、正極に流れ、正極においてプロトンと電子が反応して水を生成する。
【0106】
【実施例】
以下に合成例、参考例および実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種試験の試験方法は次に示すとおりである。
【0107】
(イ)スルホン酸基含有ポリエーテルケトンの還元粘度
ポリエーテルケトン粉0.50gをジメチルスルホキシド100mlに溶解した後、35℃において測定した。
【0108】
(ロ)5%重量減少温度
空気中にてDTA−TG(商品名:TG−DTA2000、マック・サイエンス社製)を用い、昇温速度10℃/分で測定した。
【0109】
(ハ)ガラス転移温度
示差走査熱量測定機(DSC、商品名:DSC3100、マック・サイエンス社製)により昇温速度10℃/分で測定した。
【0110】
(ニ)プロトン交換
プロトン酸の金属塩などは以下の方法でフリーのプロトン酸に戻した。
1)スルホン酸基含有ポリエーテルケトン膜を2N硫酸に一晩浸す。
2)酸処理した膜を蒸留水に一晩浸した。
3)酸処理および蒸留水で洗浄した膜を150℃で4時間乾燥して、フリーのスルホン酸を含有する膜を得た。
【0111】
(ホ)架橋
メタルハライドランプを用いて6000mJ/cmの光照射を行い、架橋させた。
【0112】
合成例1
窒素導入管、温度計、還流冷却器、および撹拌装置を備えた5つ口反応器に、5,5’―カルボニルビス(2―フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)4.22g(0.01モル)、4,4’―ジフルオロベンゾフェノン2.18g(0.01モル)、2,2―ビス(3,5―ジメチル―4―ヒドロキシフェニル)プロパン5.69g(0.02モル)および炭酸カリウム3.46g(0.025モル)を秤取した。これにジメチルスルホキシド40mlとトルエン30mlを加え、窒素雰囲気下で撹拌し、130℃で2時間加熱し、生成する水を系外に除去した後、トルエンを留去した。引き続き、160℃で14時間反応を行い、粘稠なポリマー溶液を得た。得られた溶液にジメチルスルホキシド60mlを加えて希釈した後濾過した。この濾液(ポリマー溶液)をアセトン600mlに排出し、析出したポリマー粉を濾取し、160℃で4時間乾燥してポリマー粉10.39g(収率92%)。得られたポリマー粉は、スルホン酸Na含有架橋性ポリエーテルケトン粉であり、対数粘度が0.85dl/g、ガラス転移温度が230℃および5%重量減少温度が367℃であった。
【0113】
合成例2(電解質膜の調製)
(a)得られた粉末ポリマー10gをジメチルスルホキシド81.8mlに溶解し、このワニスをガラス基板上60mg/cmの割合でキャストし、200℃で4時間乾燥し、膜厚約40μmのスルホン酸Naを含有するポリエーテルケトン膜を得た。この膜はスルホン酸基ではなく、スルホン酸塩を含むものである。このスルホン酸Na含有ポリエーテルケトン膜の一部をジメチルスルホキシドに浸したところ完全に溶解し、水に浸したところ一部溶解した部分が見られた。
【0114】
(b)(a)で得られた膜をプロトン交換し、スルホン酸基含有ポリエーテルケトン膜を得た。得られた膜は約40μmであり、可とう性に富み、強靭であった。
【0115】
(c)(a)で得られたスルホン酸Naを含有するポリエーテルケトン膜を(ホ)の方法に従って架橋し、スルホン酸Na含有架橋ポリエーテルケトン膜を得た。この膜は、ジメチルスルホキシドと水に完全に不溶化し、架橋して耐薬品性および耐水性が向上していることが確認された。
【0116】
(d)(c)で得られた膜をプロトン交換し、スルホン酸基含有架橋ポリエーテルケトン膜を得た。得られた膜は約40μmであり、可とう性に富み、強靭であった。この膜は、水およびジメチルスルホキシドに対して溶解性を全く示さなかった。
【0117】
実施例1
1−1)電解質膜の作成
合成例2の(b)で得られたスルホン酸基含有ポリエーテルケトン膜を電解質膜として用いた。
【0118】
1−2)空気極電極層の作成
合成例1で得られたスルホン酸Na含有ポリエーテルケトン粉をプロトン交換した粉末0.5gを、蒸留水5.0gおよびテトラヒドロフラン4.5gの混合溶媒に溶解したワニス10gと、超強酸基含有フッ素系樹脂(商品名:Nafion27,470―4、Aldrich社製)の5重量%溶液10gとを混合した。この混合ワニス20gと30重量%Pt担持触媒(名称:TEC10V30E、田中貴金属(株)製)1.0gとを混合し、超音波印加ののち撹拌し、空気極触媒組成物を調製した。
【0119】
この空気極触媒組成物をカーボンペーパー(商品名:TGP―H―060、東レ(株)製)の上にアプリケータを用いて塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cmに切り出し空気極電極を作成した。触媒塗工量はPt量で2mg/cmとした。電極層の厚さはカーボンペーパーを含め約190μmであった。
【0120】
1−3)燃料極電極層の作成
上記1−2)と同様にして得られた混合ワニス20gと33重量%PtRu担持触媒(商品名:TEC61V33、田中貴金属(株)製)1.0gと混合し、超音波印加ののち撹拌し、燃料極触媒組成物を調製した。
【0121】
この燃料極触媒組成物をカーボンペーパー(TGP―H―060)の上に塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cmに切り出し、燃料極電極を作成した。触媒塗工量はPtRu量で2mg/cmとした。電極層の厚さはカーボンペーパーを含め約190μmであった。
【0122】
1−4)接合体の作成
上記で得られたスルホン酸基含有ポリエーテルケトン電解質膜、空気極電極層、および燃料極電極層のそれぞれ1枚ずつを、20重量%テトラヒドロフラン水溶液を噴霧しながら、所定の順番に積層し、あらかじめ80℃に加熱した熱プレスに導入し、0.4MPaの圧力を電極面にのみに加えた。その後、加圧した状態のまま、80℃から130℃まで15分を要して昇温させた。得られた電解質膜/電極接合体はほぼ乾燥状態であったが、電極の剥離はなかった。
【0123】
1−5)電子線照射
上記で得られた電解質膜/電極接合体を厚さ100μmのポリエチレン袋に真空封入し、2MeV、20mAの電子線を照射した。線量は25kGyとし、両電極層から交互に照射し、それぞれ4回、計200kGyとした。
【0124】
1−6)燃料電池の作成
上記1−5)で得られた電解質膜/電極接合体を、燃料電池試験セル(商品名:EFC―05―REF、エレクトロケム(Electrochem)社製)に組み込み、図1に示す本発明の燃料電池を製造した。
【0125】
図1に示す本発明の燃料電池1は、電解質膜2と、電解質膜2の両側に接合された空気極電極層3aおよび燃料極電極層3bと、電解質膜2の空気極電極層3aおよび燃料極電極層3bが接合していない面に接するように配置されるガスケット4a,4bと、空気極電極層3aおよびガスケット4aに接するように配置されるセパレータ5aと、燃料極電極層3bおよびガスケット4bに接するように配置されるセパレータ5bと、セバレータ5aの内部に、空気極電極層3aに接するように設けられる空気供給用流路6aと、セパレータ5bの内部に、燃料極電極層3bに接するように設けられる燃料供給用流路6bと、セパレータ5aの空気供給用流路6aの設けられていない面に接するように配置される加圧板7aと、セパレータ5bの燃料供給用流路6bの設けられていない面に接するように配置される加圧板7bとを含んで構成され、加圧板7a,7bのそれぞれ両端を、締め付けボルト8によって固定化されている。
【0126】
1−7)発電試験
燃料電池に1Mメタノール水溶液と空気とを供給し、電子負荷付与装置(商品名:PEL151−201、KENWOOD(株)製)によって電子負荷をかけて電流を増加させながら、燃料電池の電圧を測定し、その電池特性を評価した。
【0127】
電圧の測定には、図2に示す評価システムを用いた。この評価システムにおいては、本発明の燃料電池1には、燃料供給ライン9aと、燃料排出ライン9bと、空気供給ライン10aと、空気排出ライン10a,10bと、燃料電池セル1に電子負荷をかけるための電子負荷付与装置11とが接続される。燃料供給ライン9aには、流量コントローラー12と、送液ポンプ13とが設けられている。燃料排出ライン9bには、流量コントローラー12が設けられている。これら2つの流量コントローラー12を適宜調節することによって、燃料電池セル1内での燃料の流速を適宜変更することができる。空気供給ライン10aには、流量コントローラー12と、空気を加湿するための加湿バブリングタンク14とが設けられている。空気排出ライン10bには、流量コントローラー12が設けられている。これら2つの流量コントローラー12を適宜調節することによって、燃料電池セル1内での空気の流速を適宜変更することができる。
【0128】
燃料供給ライン9aを流過するメタノール水溶液は、流量コントローラー12による流量調節を受けながら、送液ポンプ13によって燃料電池1内に供給され、そこでメタノールが消費された残液は、燃料排出ライン9bから系外に排出される。
【0129】
一方、空気供給ライン10aを流過する空気は、流量コントローラー12による流量調節を受け、加湿バブリングタンク14に導入されて加湿され、その後燃料電池1内に供給され、そこで酸素が消費された空気は、空気排出ライン10bから系外に排出される。
【0130】
燃料電池の放電特性(電圧)を測定する条件は、次のとおりである。
燃料電池温度 :80℃
メタノール水溶液濃度 :1モル(3.2重量%)
メタノール水溶液流量 :2cc/分
メタノール水溶液温度 :30℃
空気圧力 :0.05MPa
空気流量 :100SCCM
空気バブリングタンク温度:50℃
【0131】
測定の結果、本発明の燃料電池の出力は、約8.3mW/cmであった。発電試験後のセルを分解し、電解質膜/電極接合体を観察したが、電解質膜と電極の剥離はなかった。
【0132】
実施例2
2−1)電解質膜の作成
合成例2(d)で得られたスルホン酸基含有架橋ポリエーテルケトン膜を電解質膜として用いた。
【0133】
2−2)空気極電極層の作成
超強酸基含有フッ素系樹脂(Nafion,27,470―4)5重量%溶液10gとの30重量%Pt担持触媒(TEC10V30E)0.5gとを混合し、超音波印加ののち撹拌し、空気極触媒組成物とした。
【0134】
この空気極電極組成物を、カーボンペーパー(TGP―H―060)上にアプリケータを用いて塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cmに切り出し空気極電極層を作成した。触媒塗工量はPt量で2mg/cmとした。電極層の厚さはカーボンペーパーを含め約190μmであった。
【0135】
2−3)結着剤層の作成
2−2)で得られた空気極電極層の電極面に、合成例1で得られたスルホン酸Na含有ポリエーテルケトン粉をプロトン交換した粉末0.5gを蒸留水5.0gとテトラヒドロフラン4.5gとの混合溶媒に溶解したワニス10gに、超強酸基含有フッ素系樹脂(Nafion,27,470―4)5重量%溶液10gを混合したワニスを噴霧塗工した。その後、常温下空気中で1晩乾燥させた。得られた結着剤層は乾燥重量で1mg/cmとした。乾燥膜厚は約10μmであった。
【0136】
2−4)燃料極電極層の作成
超強酸基含有フッ素系樹脂(Nafion,27,470―4)5重量%溶液10gと33重量%PtRu担持触媒(TEC61V33)0.5gとを混合し、超音波印加ののち撹拌し、燃料極触媒組成物を調製した。
【0137】
この燃料極触媒組成物を、カーボンペーパー(TGP―H―060)の上に塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cmに切り出し、燃料極電極層を作成した。触媒塗工量はPtRu量で2mg/cmとした。電極層の厚さはカーボンペーパーを含め約190μmであった。
【0138】
2−5)結着剤層の形成
2−4)で得られた燃料極電極層の電極面に、2−3)と同様にして、乾燥重量1mg/cm、乾燥膜厚約10μmの結着剤層を形成した。
【0139】
2−6)接合体の作成
2−1)のスルホン酸基含有架橋ポリエーテルケトン電解質膜、2−2〜3)で得られた空気極電極層および2−4〜5)で得られた燃料極電極層のそれぞれ1枚ずつを、20重量%テトラヒドロフラン水溶液を噴霧しながら、所定の順番に積層し、あらかじめ80℃に加熱した熱プレスに導入し、0.4MPaの圧力を電極面にのみに加えた。その後、加圧した状態のまま、80℃から110℃まで10分を要して昇温させた。このようにして、電解質膜/電極接合体を作成した。なお、空気極電極層の結着剤層および燃料極電極層の結着剤層がそれぞれ電解質膜に接するように配置し、接合した。
【0140】
2−7)電子線照射
2−6)で作成した電解質膜/電極接合体を厚さ100μmのポリエチレンシートに挟み、2MeV、20mAの電子線を照射した。線量は25kGyとし、両電極層から交互に照射し、それぞれ4回、計200kGyとした。
【0141】
2−8)燃料電池の作成
2−7)で得られた電解質膜/電極接合体を用いる以外は、実施例1、1−6)と同様にして、図1に示す燃料電池と同じ構造を有する燃料電池を製造した。
【0142】
2−9)発電試験
2−8)で得られた燃料電池を用いる以外は、実施例1、1−7)と同様にして、燃料電池を図2に示す評価システムに組み込み、電圧を測定し、電池特性を評価した。その結果、約10.7mW/cmの出力が得られた。また、発電試験後の燃料電池を分解し、電解質膜/電極接合体を観察したが、電解質膜と電極の剥離はなかった。
【0143】
比較例1
実施例2において、2−3)および2−5)の結着剤層を形成する際に、スルホン酸Na含有ポリエーテルケトン粉をプロトン交換した粉末のワニス10gと、超強酸基含有フッ素系樹脂(Nafion,27,470―4)5重量%溶液10gとの混合ワニスに代えて、超強酸基含有フッ素系樹脂(Nafion,27,470―4)5重量%溶液のみを20g用いる以外は、実施例2と同様に操作し、電解質膜/電極接合体を作成した。
【0144】
得られた接合体は接着強度が低く、これを2−7)と同様にして電子線照射してポリエチレンシートからの取り出したところ、電解質膜と電極層とが剥離し、燃料電池として出力を取り出すことができなかった。
【0145】
【発明の効果】
本発明によれば、電解質膜と電極層とが高い接着力によって接合され、たとえば、高温、水などに晒されてもその接着力が低下することなく、長期間にわたって接着力が高水準で維持され、しかも広い温度域にわたって優れたイオン伝導性を示す電解質膜/電極接合体が得られる。この電解質膜/電極接合体は、たとえば、アルコールなどを燃料として用いる燃料電池、二次電池などに好適に利用でき、さらに各種の電気分解反応にも好適に使用できる。
【0146】
本発明によれば、電解質膜および/または結着剤には、特定の繰り返し構造単位を含むプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンが含まれていることが好ましい。それによって、本発明の電解質膜/電極接合体は、イオン伝導性がさらに高くなり、また電解質膜と電極層との接合性がさらに向上し、熱および水への耐性が増加する。
【0147】
本発明によれば、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンにおけるプロトン酸基としては、スルホン酸基が好ましい。スルホン酸基を持つ架橋性ポリエーテルケトンは、さらに優れたイオン伝導性を示す。
【0148】
本発明によれば、電解質膜および/または結着剤を、熱、光などの一般的な架橋手段にて架橋することによって、それらが有する接着性が一層向上し、長期間にわたって高熱および水に晒されても、高い接着強度が発現される。
【0149】
本発明によれば、電解質膜および/または電極層に照射する放射線として電子線を用いることよって、電解質膜と電極層との接合強度がより一層高くなる。
【0150】
本発明によれば、電極層に特定の金属または合金である電極材料を含むことによって、本発明接合体のイオン伝導性をさらに向上できる。
【0151】
本発明によれば、電解質膜と電極層とを積層して接合するに際し、接合前および/または接合後に、電解質膜および/または電極層に放射線を照射することによって、電解質膜および電極層が強固に接合し、長期間にわたって高温および/または水に晒されても、電解質膜と電極層とが剥離することがない、信頼性の高い電解質膜/電極接合体を得ることができる。
【0152】
本発明によれば、本発明の電解質膜/電極接合体を用いて燃料電池を構成することによって、耐久性に優れ、内部抵抗が低く、高電流操作が可能であり、小型化が容易な信頼性の高い燃料電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である燃料電池の構造を模式的に示す断面図である。
【図2】燃料電池の電池特性を評価するための評価システムの系統図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2 電解質膜
3a 空気極電極層
3b 燃料極電極層
4a,4b ガスケット
5a,5b セパレータ
6a 空気供給用流路
6b 燃料供給用流路
7a,7b 加圧板
8 締め付けボルト
9a 燃料供給ライン
9b 燃料排出ライン
10a 空気供給ライン
10b 空気排出ライン
11 電子負荷付与装置
12 流量コントローラー
13 送液ポンプ
14 加湿バブリングタンク

Claims (10)

  1. 電解質膜と、電極材料および結着剤とを含む電極層とが結着剤層を介しまたは介さずに接合している電解質膜/電極接合体において、電解質膜および/または電極層に放射線が照射されたことを特徴とする電解質膜/電極接合体。
  2. 電解質膜および/または結着剤が、下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造単位10〜100モル%および下記一般式(2)で表される繰り返し構造単位0〜90モル%を含む架橋性ポリエーテルケトンから選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の電解質膜/電極接合体。
    Figure 2004311303
    〔式中、Arは、炭素数1〜20のアルキル基が1または2以上置換し、かつハロゲン原子またはハロゲン化炭化水素基が置換してもよい芳香環を含む基を示す。ただしArで示される基に含まれる芳香環の少なくとも1つは炭素数1〜20のアルキル基の1または2以上で置換されている。XおよびYは同一または異なって、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基およびスルホンイミド基から選ばれるプロトン酸基またはそれらの金属塩を示す。xおよびyは同一または異なって0〜4の整数を示し、x+yは1以上である。〕
    Figure 2004311303
    〔式中、Arは前記に同じ。〕
  3. 一般式(1)および(2)において、符号Arで示される基が、下記一般式(3)または(4)で表される基であることを特徴とする請求項2記載の記載の電解質膜/電極接合体。
    Figure 2004311303
    〔式中、R〜Rは同一または異なって水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン化炭化水素基またはハロゲン原子を示す。ただしR〜Rの少なくとも一つは炭素数1〜20のアルキル基を示すものとする。Aは単結合、―CH―、―C(CH―、―O―、―S―、―SO―または基
    Figure 2004311303
    を示す。〕
    Figure 2004311303
    〔式中、R〜R12は同一または異なって水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ハロゲン化炭化水素基またはハロゲン原子を示す。ただしR〜R12の少なくとも一つは炭素数1〜20のアルキル基を示すものとする。〕
  4. プロトン酸基がスルホン酸基であることを特徴とする請求項2または3記載の電解質膜/電極接合体。
  5. 電解質膜および/または結着剤が架橋されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかに記載の電解質膜/電極接合体。
  6. 放射線の加速電圧が0.1〜5.0MeVでありかつ照射線量が10〜1000kGyであることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかに記載の電解質膜/電極接合体。
  7. 放射線が電子線であることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれかに記載の電解質膜/電極接合体。
  8. 電極層がカーボンブラック、活性炭、黒鉛、鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウムおよびそれらの2種以上の合金から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれかに記載の電解質膜/電極接合体。
  9. 電解質膜と、電極材料および結着剤を含んで構成される電極層とを、結着剤層を介しまたは介さずに積層して接合するに際し、接合前および/または接合後に、電解質膜および/または電極層に放射線を照射することを特徴とする電解質膜/電極接合体の製造法。
  10. 請求項1〜8のうちのいずれかの電解質膜/電極接合体を含んで構成されることを特徴とする燃料電池。
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