JP3973503B2 - 燃料電池用イオン伝導性結着剤、電極形成用組成物およびワニス、並びに燃料電池 - Google Patents

燃料電池用イオン伝導性結着剤、電極形成用組成物およびワニス、並びに燃料電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水素、アルコールなどを燃料に用いる燃料電池などにおいて用いられる電極材料および/またはプロトン伝導膜のイオン伝導性結着剤、また、それを用いて得られる電極形成用組成物およびワニス、並びにそれにより構成される燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の点から新エネルギー蓄電あるいは発電素子が社会で強く求められてきている。燃料電池もその1つとして注目されており、低公害、高効率という特徴から最も期待される発電素子である。燃料電池とは、水素やメタノール等の燃料を酸素または空気を用いて電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出すものである。
【0003】
このような燃料電池は、用いる電解質の種類によってりん酸型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型および高分子電解質型に分類される。りん酸型燃料電池は、すでに電力用に実用化されている。しかし、りん酸型燃料電池は高温(200℃前後)で作用させる必要があり、そのため起動時間が長い、システムの小型化が困難であること、また、りん酸のプロトン伝導度が低いために大きな電流を取り出せないという欠点を有していた。
【0004】
これに対して、高分子型燃料電池は操作温度が最高で約80〜100℃程度である。また、用いる電解質膜を薄くすることによって燃料電池内の内部抵抗を低減できるため高電流で操作でき、そのため小型化が可能である。このような利点から高分子型燃料電池の研究が盛んになってきている。
【0005】
この高分子型燃料電池は、イオン伝導性を有する高分子電解質膜とこの両側に接触して配置される正極および負極から構成される。燃料の水素は負極において電気化学的に酸化されてプロトンと電子を生成する。このプロトンは高分子電解質膜内を、酸素が供給される正極に移動する。一方、負極で生成した電子は電池に接続された負荷を通り、正極に流れ、正極においてプロトンと電子が反応して水を生成する。
【0006】
この高分子型燃料電池に用いる正極、負極といった電極は、電気伝導性を有する導電材や、水素の酸化反応、酸素の還元反応を促進する触媒といった電極材料と、それを固定する結着剤により構成される。
【0007】
この高分子型燃料電池に用いる高分子電解質膜には、燃料電池の電極反応に関与するプロトンについて高いイオン伝導性が要求される。このようなイオン伝導性高分子電解質膜材料としては、商品名Nafion(デュポン社製)またはDow膜(ダウ社製)などの超強酸基含有フッ素系高分子が知られている。また、特表平8―504293号公報には、ポリマーにカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基から選ばれる、イオンに解離し得る残基を持たせた高分子電解質膜が記載され、様々なプロトン酸基含有芳香族ポリマー系高分子電解質膜が開発されている(Macromol.Chem.Phys.,199,1421-1426(1998)、Polymer,40,795-799(1999), Polymer,42,3293-3296(2001)等)。
【0008】
一方、高分子型燃料電池において、電極材料の固定や、電極と膜の接着に用いられる結着剤についてはほとんど報告例が無く、僅かに超強酸基含有フッ素系高分子が用いられているのみである。しかしながら、この超強酸基含有フッ素系高分子は、超強酸基含有フッ素系高分子からなる高分子電解質膜には接着するものの、プロトン酸基含有芳香族ポリマー系高分子電解質膜との接着力に乏しかった。
【0009】
そのため、イオン伝導性が高く、耐熱性、耐水性に優れ、さらにプロトン酸基含有芳香族ポリマー系高分子電解質膜や電極材料との接着力に優れた、燃料電池用イオン伝導性結着剤が求められていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、イオン伝導性が高く、耐熱性、耐水性に優れ、さらにプロトン酸基含有芳香族ポリマー系高分子電解質膜や電極材料との接着力に優れた、燃料電池用イオン伝導性結着剤、電極形成用組成物およびワニス、並びに燃料電池を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、燃料電池用イオン伝導性結着剤に、プロトン酸基と、アルキル基を有する芳香環を含む架橋性ポリエーテルケトンを用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[13]に記載した事項により特定される。
【0013】

プロトン酸基と、炭素原子数1〜20のアルキル基を有する芳香環を含む架橋性ポリエーテルケトンからなり、前記架橋性ポリエーテルケトンが、下記一般式(1)で表わされるプロトン酸基を含有する繰り返し構造単位と下記一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含み、両繰り返し構造単位を100モル%とするとき、該架橋性ポリエーテルケトンが、下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造単位を10〜100モル%、下記一般式(2)で表される繰り返し構造単位を0〜90モル%の割合で含むことを特徴とする燃料電池用イオン伝導性結着剤。
【0014】
【化7】
Figure 0003973503
【0015】
【化8】
Figure 0003973503
(一般式(1)および(2)中、Ar1は、直接結合した炭素原子数1〜20のアルキル基を有する芳香環を含む基を表し、その芳香環の水素は、アルキル基、ハロゲン化炭化水素基あるいはハロゲンで置換されていてもよく、XおよびYはそれぞれ、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、スルホンイミド基から選ばれるプロトン酸基、またはそれらの金属塩を表し、xおよびyは0以上の整数であり、少なくともx+yは1以上である。)
【0016】

前記一般式(1)および(2)におけるAr1が、下記一般式(I)または(II)で表される基であることを特徴とする前記に記載の燃料電池用イオン伝導性結着剤。
【0017】
【化9】
Figure 0003973503
(一般式(I)中、R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、そのうち少なくとも一つは炭素原子数1〜20のアルキル基である。Aは単結合、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−O−、−S−、−SO2−または
【化10】
Figure 0003973503
を表す。)
【0018】
【化11】
Figure 0003973503
(一般式(II)中、R9〜R12はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、そのうち少なくとも一つは炭素原子数1〜20のアルキル基である。)
【0019】

前記プロトン酸基がスルホン酸基であることを特徴とする前記[ ] 又は[2]に記載の燃料電池用イオン伝導性結着剤。
【0021】

下記一般式(3)で表される超強酸基含有フッ素系高分子が加えられていることを特徴とする前記[3]に記載の燃料電池用イオン伝導性結着剤。
【0022】
【化12】
Figure 0003973503
(一般式(3)中、x、yは互いに独立に1〜2000の整数、mは0〜6の整数、nは1〜6の整数である。)
【0023】

前記[1]〜[4]のいずれかに記載の結着剤と、電極材料とからなることを特徴とする電極形成用組成物。
【0024】

前記電極材料が、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウムおよびそれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記[5]に記載の電極形成用組成物。
【0025】

前記[1]〜[6]のいずれかに記載の結着剤または組成物と、溶媒からなることを特徴とするワニス。
【0026】

前記溶媒が水、メタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、炭酸ジメチルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする前記[7]に記載のワニス。
【0027】
[]
前記[1]〜[6]のいずれかに記載のイオン伝導性結着剤または電極形成用組成物を用いて得られることを特徴とする燃料電池用電極。
【0028】
[10]
前記[7]または[8]に記載のワニスを用いて得られる燃料電池用電極。
【0029】
[11]
前記[1]〜[6]のいずれかに記載のイオン伝導性結着剤または電極形成用組成物を用いて得られる燃料電池。
【0030】
12
前記[9]または[10]に記載の燃料電池用電極を用いて得られる燃料電池。
【0031】
13
前記燃料電池を構成するイオン伝導性結着剤が架橋反応されていることを特徴とする請求項[11]または[12]に記載の燃料電池。
【0032】
本発明に係る結着剤は、実用上問題ない高いイオン伝導性と耐熱性、耐水性を有し、さらに、電極材料やプロトン酸基含有芳香族ポリマー系高分子電解質膜との接着性に優れる。
【0033】
本発明に係るプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンは、従来開発されてきたスルホン酸基含有高分子と同様に高いイオン伝導性を示す。また、この樹脂は、従来結着剤として検討されてきた超強酸基含有フッ素系高分子と異なり、その構造中に、芳香環、エーテル結合等の極性基を有するため、他の物質との高い接着性を示す。さらに、この樹脂は、光および/または熱により架橋し、その結果、高い耐熱性と耐水性を示す。
【0034】
本発明に係る結着剤を用いて燃料電池を形成すると、耐久性に優れた、低抵抗で高電流操作可能な燃料電池を得ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る燃料電池用イオン伝導性結着剤について具体的に説明する。
本発明の燃料電池用イオン伝導性結着剤は、プロトン酸基と、炭素原子数1〜20のアルキル基を有する芳香環を含む架橋性ポリエーテルケトンからなることを特徴とする。本発明において、プロトン酸基とは狭義のプロトン酸基のほかにその金属塩も含めて指すことがある。
【0036】
好ましいイオン伝導性結着剤としては、下記一般式(1)で表わされるプロトン酸基を含有する繰り返し構造単位と下記一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含む架橋性ポリエーテルケトンであって、両繰り返し構造単位を100モル%とするとき、該架橋性ポリエーテルケトンが、下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造単位を10〜100モル%、下記一般式(2)で表される繰り返し構造単位を0〜90モル%の割合で含む結着剤である。
【0037】
【化13】
Figure 0003973503
【0038】
【化14】
Figure 0003973503
【0039】
一般式(1)および(2)中、Ar1は、直接結合した炭素原子数1〜20のアルキル基を有する芳香環を含む基を表し、その芳香環の水素は、アルキル基、ハロゲン化炭化水素基あるいはハロゲンで置換されていてもよく、XおよびYはそれぞれ、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、スルホンイミド基から選ばれるプロトン酸基、またはそれらの金属塩を表し、xおよびyは0以上の整数であり、少なくともx+yは1以上である。
【0040】
また、前記一般式(1)および(2)におけるAr1は、下記一般式(I)または(II)で表される基である。
【0041】
【化15】
Figure 0003973503
【0042】
一般式(I)中、R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、そのうち少なくとも一つは炭素原子数1〜20のアルキル基である。Aは単結合、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−O−、−S−、−SO2−または
【化16】
Figure 0003973503
を表す。
【0043】
【化17】
Figure 0003973503
【0044】
一般式(II)中、R9〜R12はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、そのうち少なくとも一つは炭素原子数1〜20のアルキル基である。
【0045】
本発明では前記式(1)中のXおよびYで表されるプロトン酸基がスルホン酸であることがより望ましい。また、Ar1の芳香環の水素は、アルキル基、ハロゲン化炭化水素基あるいはハロゲンで置換されていてもよい。
【0046】
本発明のプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンは、従来開発されてきたスルホン酸基含有高分子と同様に高いイオン伝導性を示す。また、この樹脂は、従来結着剤として検討されてきた超強酸基含有フッ素系高分子と異なり、その構造中に、芳香環、エーテル結合等の極性基を有するため、電極材料やプロトン酸基含有芳香族ポリマー系高分子電解質膜等、他の物質との高い接着性を示す。さらに、この樹脂は、光および/または熱により架橋し、その結果、高い耐熱性と耐水性を示す。
【0047】
本発明に係るプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンの分子量は、対数粘度により評価することができる。本発明に係るプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンの対数粘度ηinhは通常0.1〜5.0dl/g(ジメチルスルホキシド中、濃度0.5g/dl、35℃で測定)、好ましくは0.2〜4.0dl/g、さらに好ましくは0.3〜3.0dl/gの範囲である。対数粘度が低すぎると、結着剤として用いる樹脂の機械強度が低く、十分な接着力を得ることができなくなることがある。対数粘度が高すぎると、溶媒への溶解が困難となり、電極材料との混合や、ワニスとしての使用が困難になることがある。
【0048】
本発明に係る結着材は、前記のプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンからなるが、他の各種イオン伝導性高分子と組み合わせて用いることもできる。これらの例として、フッ素高分子、ポリエーテルケトン高分子、ポリエーテルサルホン高分子、ポリフェニレンサルファイド高分子、ポリイミド高分子、ポリアミド高分子、エポキシ高分子、ポリオレフィン高分子等にプロトン酸基を付与した高分子が挙げられる。プロトン酸基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、スルホンイミド基が挙げられる。これらのうち、超強酸基含有フッ素系高分子が、下記一般式(3)で表される超強酸基含有フッ素系高分子を用いることが好ましい。さらに、シリカなどの無機性のイオン伝導物質を用いても構わない。
【0049】
【化18】
Figure 0003973503
一般式(3)中、x、yは互いに独立に1〜2000の整数、mは0〜6の整数、nは1〜6の整数である。
【0050】
この場合、結着材中のプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンの組成比は、5wt%以上とすることが好ましく、それにより電極材料やプロトン酸基含有芳香族ポリマー系高分子電解質膜等、他の物質との高い接着性を示す。さらに、この結着剤は、光および/または熱により架橋し、その結果、高い耐熱性と耐水性を示す。
【0051】
本発明の結着剤を光により架橋する場合、用いる光源は特に限定されず、通常、紫外線光、可視光の範囲の光が照射できる光源を用いることができる。具体的には、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライド灯等が挙げられる。また、照射線量は用いる架橋性ポリエーテルケトンの構造およびその膜厚により異なるが、通常、100〜20000mJ/cm2、好ましくは500〜10000mJ/cm2である。
【0052】
本発明の結着剤を熱により架橋する場合、その熱供給方法は特に限定されず、通常のオーブン等による加熱で十分である。また、加熱時の温度、時間は、用いる架橋性ポリエーテルケトンの構造およびその膜厚により異なるが、通常、120〜300℃、好ましくは150〜250℃で、0.1〜180分間、好ましくは1〜60分間である。
【0053】
本発明のプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンの架橋に関する反応機構は、存在する前記Ar1のR1〜R8または、R9〜R12のうち、少なくとも一つのアルキル基が次のような形で架橋反応に関与していると考えられる。尚、下記反応式はR1がメチル基の場合について示す。
【0054】
【化19】
Figure 0003973503
【0055】
上記反応式に示すように、光あるいは熱により生じたベンゾフェノン上のラジカルが、メチル基から水素を引き抜く。引き続き、ベンジルラジカルの二量化、ベンジルラジカルとアルコール性炭素ラジカルカップリング反応、アルコール性炭素ラジカルの二量化のような架橋が起こっていると考えられる。
【0056】
本発明の電極は、本発明のプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンからなる結着剤および電極材料により構成される。ここで、電極材料としては、電気導電性を有する導電材料や、水素の酸化反応、酸素の還元反応を促進する触媒などが挙げられる。
【0057】
導電材としては、電気伝導性物質であればいずれのものでもよく、各種金属や炭素材料などが上げられる。例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭および黒鉛等が挙げられ、これらは単独あるいは混合して、粉末状あるいはシート状で使用される。
【0058】
触媒としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属であれば特に限定されないが、例えば鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウムまたはそれらの合金が挙げられる。
【0059】
本発明に係る電極形成用組成物は、前記のプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンまたは、プロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンと他の各種イオン伝導性高分子とからなる結着材と、前記の電極材料との混合物からなる。
【0060】
これらの電極材料と結着剤の比率は特に制限はないが、結着剤の比率が5wt%以上90wt%以下であると電極の強度と効率が両立でき好ましい。
【0061】
本発明に係るワニスは、前記の結着剤および/または組成物と溶媒からなり、溶液でも懸濁液でも良い。溶媒はこれらが液状化できれば、特に制限なく選択でき、例えば水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、塩化メチル、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジクロロエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどの脂肪酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類の他、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、炭酸ジメチルなどの非プロトン性極性溶剤類があげられる。これらは単独でも混合溶媒でも使用できる。
【0062】
中でも、低級アルコール類、テトラヒドロフラン、炭酸ジメチルなどは、沸点が低く溶媒の蒸発が早く、水溶性のため好ましく、更にこれらと水との混合溶媒を用いることが好ましい。結着剤および/または組成物の濃度は、使用方法により選択できるが、1wt%以上80wt%が好ましい。
【0063】
本発明に係る燃料電池は、本発明のプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンからなる結着剤、および/または、本発明のプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンからなる結着剤と電極材料により構成される電極を用いて得られることを特徴とする燃料電池である。本発明の燃料電池とは、例えば、高分子電解質膜と電極を本発明の結着剤により接着した燃料電池、本発明の結着剤と電極材料により構成される電極と高分子電解質膜から構成される燃料電池などが挙げられる。
【0064】
本発明の燃料電池おいて用いる高分子電解質膜とは、ポリマーに、イオンに解離し得るプロトン酸基を持たせた膜であり、例えば、フッ素高分子、ポリエーテルケトン高分子、ポリエーテルサルホン高分子、ポリフェニレンサルファイド高分子、ポリイミド高分子、ポリアミド高分子、エポキシ高分子、ポリオレフィン高分子等にプロトン酸基を付与した高分子からなる膜が挙げられる。中でも、本発明で結着剤として用いるプロトン酸基含有架橋性ポリエーテルケトンからなる膜が好ましい。また、前記式(3)で示される超強酸基含有フッ素系高分子からなる膜等も用いることができる。なお、超強酸基含有フッ素系高分子としては、例えば、デュポン社製「Nafion」、旭硝子社製「Flemion」、旭化成社製「Aciplex」、ダウ社製「Dow膜」等が挙げられる。
【0065】
本発明に係る結着剤および/または組成物、ワニスを用いて、燃料電池用電極並びに燃料電池用膜電極複合体を形成する。形成方法には特に制限はないが次の様な例示ができる。
1)本発明に係わる組成物および/または組成物を含むワニスを、カーボンペーパーなどの基材に噴霧・塗布し電極とした上、直接電解質膜に接合する方法。
2)本発明に係わる組成物および/または組成物を含むワニスを、カーボンペーパーなどの基材に噴霧・塗布の後、乾燥し、電極とした上、本発明に係わるワニスを用いて電解質膜に接合する方法。
3)本発明に係わる組成物および/または組成物を含むワニスを、直接電解質膜に噴霧・塗布の後、乾燥し接合する方法。
4)他の方法を用いて作成した電極を本発明に係わるワニスを用いて電解質膜に接合する方法。
【0066】
電解質膜と電極の接合方法としては、特に制限はないが、熱プレス、コールドプレス、超音波溶着等が例示できる。中でも熱プレスを用いることが好ましい。
【0067】
また、前記の各接合方法において、必要に応じて光および/または熱による架橋を施すこともできる。
こうして作成した燃料電池用電解質膜電極接合体を、燃料や酸素の流路の加工を施したセパレータで挟むことにより燃料電池を形成する。
【0068】
本発明により、イオン伝導性が高く、耐熱性、耐水性に優れ、さらにプロトン酸基含有芳香族ポリマー系高分子電解質膜や電極材料との接着力に優れた、燃料電池用イオン伝導性結着剤が提供される。
また、本発明により、該イオン伝導性結着剤を用いた、耐久性に優れた、低抵抗で高電流操作可能な燃料電池の提供が可能となる。
【0069】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
実施例中の各種試験の試験方法は次に示すとおりである。
(イ)プロトン酸基含有ポリエーテルケトンの対数粘度
ポリエーテルケトン粉0.50gをジメチルスルホキシド100mlに溶解した後、35℃において測定。
【0070】
(ロ)5%重量減少温度
空気中にてDTA−TG(マック・サイエンス社製TG−DTA2000)を用い、昇温速度10℃/minで測定。
(ハ)ガラス転移温度
示差走査熱量測定(DSC、マック・サイエンス社製DSC3100)により昇温速度10℃/minで測定。
【0071】
(ニ)プロトン交換
プロトン酸の金属塩等は以下の方法でフリーのプロトン酸に戻した。
1)プロトン酸基含有ポリエーテルケトン膜または粉を2N−硫酸に一晩浸す。
2)酸処理した膜または粉を蒸留水に一晩浸した。
3)酸処理および蒸留水で洗浄した膜または粉を150℃で4時間乾燥して、フリーのプロトン酸を含有する膜または粉を得た。
(ホ)架橋
メタルハライドランプを用いて6000mJ/cm2の光照射を行い、架橋させた。
【0072】
(ヘ)イオン伝導度
イオン伝導膜を幅5mm、長さ40mmに切り出した後、PTFEホルダー上に設置し、4本の電極を圧接し、4端子法の交流インピーダンス法で求まる円弧から抵抗率を測定した。電圧端子間は20mmとした。インピーダンスの測定はLCRメーター(日置電機社製3532)を使用した。温度変化は電極を接続したサンプルをアルミブロック製の恒温槽内に設置することにより行い、30℃から110℃の範囲の伝導度を測定した。加湿は常圧の恒温槽内への蒸気の導入により行い、水蒸気発生器にて測定温度が100℃未満では恒温槽温+5℃、100℃以上では120℃の一定温度に蒸留水を加熱し、生成する蒸気を使用した。また、膜厚は乾燥状態でマイクロメータを用いて測定した。
【0073】
(合成例1)
攪拌器、温度計および冷却管を装備した反応フラスコに、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(0.525mol)と、50%発煙硫酸210mlを装入した後、100℃で12時間反応した。これを、1000gの氷水に排出した後、NaOH210gで中和した。次に、NaClを210g加え、加熱溶解した後放冷し一夜放置した。析出した結晶を濾過した後、水400ml、エタノール400mlを加えて加熱溶解後放冷し、再結晶を行った。析出した結晶を濾過後、100℃で6時間乾燥して下記の5,5’−カルボニルビス(2−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)の白色結晶を得た。収量155.2g(0.386mol、収率70%)。
【0074】
【化20】
Figure 0003973503
1H−NMR(D2O,TMS)ppm
δ 7.46(2H,dd,a−H×2)
7.99(2H,ddd,b−H×2)
8.23(2H,dd,c−H×2)
元素分析(%) C H
計算値 36.98 1.43
分析値 36.65 1.40
【0075】
(合成例2)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた5つ口反応器に、5,5’−カルボニルビス(2−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)4.22g(0.01mol)、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン2.18g(0.01mol)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン5.69g(0.02mol)および炭酸カリウム3.46g(0.025mol)を秤取した。これにジメチルスルホキシド40mlとトルエン30mlを加え、窒素雰囲気下で撹拌し、130℃で2時間加熱し、生成する水を系外に除去した後、トルエンを留去した。
【0076】
引き続き、160℃で14時間反応を行い、粘稠なポリマー溶液を得た。得られた溶液にジメチルスルホキシド60mlを加えて希釈した後濾過した。このポリマー溶液をアセトン600mlに排出し、析出したポリマー粉を濾過後、160℃で4時間乾燥してポリマー粉10.39g(収率92%)。得られたポリエーテルケトン粉の対数粘度は0.85dl/g、ガラス転移温度は230℃、5%重量減少温度は367℃であった。
【0077】
(a)得られた粉末ポリマーをジメチルスルホキシドに溶解させガラス基板上にキャストし、200℃で4時間乾燥してスルホン酸Naを含有するポリエーテルケトン膜を得た。得られた膜は可とう性に富み、強靭であった。この膜について、前記(ヘ)に記載の方法でイオン伝導度を測定した結果を表1に示す。
(b)この膜を、前記(ニ)に記載の方法でプロトン交換を行い、スルホン酸を含有するポリエーテルケトン膜を得た。得られた膜は可とう性に富み、強靭であった。この膜について、前記(ヘ)に記載の方法でイオン伝導度を測定した結果を表1に示す。
(c)上記(a)で得られたスルホン酸Naを含有するポリエーテルケトン膜を、前記(ホ)に記載の方法で架橋し、スルホン酸Na含有架橋ポリエーテルケトン膜を得た。得られた膜は可とう性に富み、強靭であった。この膜について、前記(ヘ)に載の方法でイオン伝導度を測定した結果を表1に示す。
(d)上記(c)で得られたスルホン酸Na含有架橋ポリエーテルケトン膜を、前記(ニ)に記載の方法でプロトン交換を行い、スルホン酸含有架橋ポリエーテルケトン膜を得た。得られた膜は可とう性に富み、強靭であった。この膜について、前記(ヘ)に記載の方法でイオン伝導度を測定した結果を表1に示す。
【0078】
上記(a)で得られたスルホン酸Na含有ポリエーテルケトン膜の一部をジメチルスルホキシドに浸したところ完全に溶解し、水に浸したところ一部溶解した部分が見られた。一方、上記(c)で得られたスルホン酸Na含有架橋ポリエーテルケトン膜は、ジメチルスルホキシドと水に完全に不溶化し、架橋して耐薬品性および耐水性が向上していることが確認された。
【0079】
(合成例3)
2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン5.41g(0.019mol)を用いた他は合成例2と同様にしてポリマー粉10.30g(収率93%)を得た。得られたポリエーテルケトン粉の対数粘度は0.40dl/g、5%重量減少温度は360℃であった。
得られた粉末ポリマーを用い、合成例2(a)〜(d)と同等にしてポリエーテルケトン膜を得、イオン伝導度を測定した。結果を表1に示す。得られた膜はいずれも可とう性に富み、強靱であった。
【0080】
【表1】
Figure 0003973503
【0081】
(実施例1)
1-1)電解質膜の作成
合成例2のポリマーを用い、(d)で得られたスルホン酸含有架橋ポリエーテルケトン膜を電解質膜とした。
1-2)空気極電極の作成
合成例2で得られたプロトン酸基含有ポリエーテルケトン粉を前記(ニ)と同様にプロトン交換した粉末0.5gを結着剤として、蒸留水5.0g、テトラヒドロフラン4.5gの混合溶媒に溶解したワニス10gを田中貴金属製の30wt%Pt担持触媒(名称:TEC10V30E)0.5gと混合し、超音波印加ののち撹拌し、空気極触媒組成物とした。
東レ製カーボンペーパー(品番:TGP−H−060)の上にアプリケータを用いて、触媒組成物を塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cm2に切り出し電極2とした。触媒塗工量はPt量で2mg/cm2とした。
【0082】
1-3)燃料極電極の作成
合成例2で得られたプロトン酸基含有ポリエーテルケトン粉を前記(ニ)と同様にプロトン交換した粉末0.5gを結着剤として、蒸留水5.0g、テトラヒドロフラン4.5gの混合溶媒に溶解したワニス10gを田中貴金属製の33wt%PtRu担持触媒(名称:TEC61V33)0.5gと混合し、超音波印加ののち撹拌し、燃料極触媒組成物とした。
東レ製カーボンペーパー(品番:TGP−H−060)の上に触媒組成物を塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cm2に切り出し電極2’とした。触媒塗工量はPtRu量で2mg/cm2とした。
【0083】
1-4)接合体の作成
1-1で作成したスルホン酸含有架橋ポリエーテルケトン電解質膜と1-2で作成した電極2、1-3で作成した電極2’それぞれ1枚ずつを、20wt%テトラヒドロフラン水溶液を噴霧しながら、所定の順番に積層し、あらかじめ80℃に加熱した熱プレスに導入し、0.4MPaを電極面にのみ加圧した。その後、加圧した状態のまま、80℃から130℃まで昇温させた。使用した熱プレスでは15分を要した。接合後の電解質膜電極接合体はほぼ乾燥状態であったが、電極の剥離はなかった。
【0084】
1-5)発電試験
1-4で作成した電解質膜電極接合体を、Electrochem社製の燃料電池試験セル(品番:EFC−05−REF)に組み込み、図1の燃料電池を組み立てた。セル組み立て後、図2のような燃料電池評価装置を使用して、1Mメタノール水溶液を燃料として電池特性を測定した。約5.1mW/cm2の出力を得た。1-3で作成したPtRu電極2’をメタノール極に用いた。製作した燃料電池の電池特性を図3に示した。測定条件を表2に示した。
発電試験後のセルを分解し、電解質膜電極接合体を観察したが、電解質膜と電極の剥離はなかった。
【0085】
【表2】
Figure 0003973503
【0086】
(実施例2)
2-1)電解質膜の作成
合成例2のポリマーを用い、(d)で得られたスルホン酸含有架橋ポリエーテルケトン膜を電解質膜とした。
【0087】
2-2)空気極電極の作成
合成例2で得られたプロトン酸基含有ポリエーテルケトン粉を前記(ニ)と同様にプロトン交換した粉末0.25g、合成例3で得られたプロトン酸基含有ポリエーテルケトン粉を前記(ニ)と同様にプロトン交換した粉末0.25gを、蒸留水5.0g、テトラヒドロフラン4.5gの混合溶媒に溶解したワニス10gと、Aldrich社製超強酸基含有フッ素系高分子(Nafion)5wt%溶液(品番:27,470−4)10gを混合しワニスとした。この混合ワニス20gと田中貴金属製の30wt%Pt担持触媒(名称:TEC10V30E)1.0gと混合し、超音波印加ののち撹拌し、空気極触媒組成物とした。
東レ製カーボンペーパー(品番:TGP−H−060)の上にアプリケータを用いて、触媒組成物を塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cm2に切り出し電極2とした。触媒塗工量はPt量で2mg/cm2とした。
【0088】
2-3)燃料極電極の作成
合成例2で得られたプロトン酸基含有ポリエーテルケトン粉を前記(ニ)と同様にプロトン交換した粉末0.25g、合成例3で得られたプロトン酸基含有ポリエーテルケトン粉を前記(ニ)と同様にプロトン交換した粉末0.25gを、蒸留水5.0g、テトラヒドロフラン4.5gの混合溶媒に溶解したワニス10gとAldrich社製超強酸基含有フッ素系高分子(Nafion)5wt%溶液(品番:27,470−4)10gを混合しワニスとした。この混合ワニス20gと田中貴金属製の33wt%PtRu担持触媒(名称:TEC61V33)1.0gと混合し、超音波印加ののち撹拌し、燃料極触媒組成物とした。
東レ製カーボンペーパー(品番:TGP−H−060)の上に触媒組成物を塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cm2に切り出し電極2’とした。触媒塗工量はPtRu量で2mg/cm2とした。
【0089】
2-4)接合体の作成
2-1で作成したスルホン酸含有架橋ポリエーテルケトン電解質膜と2-2で作成した電極2、2-3で作成した電極2’それぞれ1枚ずつを使用した以外は、実施例1-4と同様に接合体を作成した。接合後の電解質膜電極接合体はほぼ乾燥状態であったが、電極の剥離はなかった。
【0090】
2-5)発電試験
2-4で作成した電解質膜電極接合体を用いて、実施例1の1-5と同様に燃料電池組み立て、電池特性を測定した。約7.3mW/cm2の出力を得た。2-3で作成したPtRu電極2’をメタノール極に用いた。製作した燃料電池の電池特性を図3に示した。測定条件を表2に示した。
発電試験後のセルを分解し、電解質膜電極接合体を観察したが、電解質膜と電極の剥離はなかった。
【0091】
(実施例3)
3-1)電解質膜の作成
合成例2のポリマーを用い、(d)で得られたスルホン酸基含有架橋ポリエーテルケトン膜を電解質膜とした。
【0092】
3-2)空気極電極の作成
Aldrich社製超強酸基含有フッ素系高分子(Nafion)5wt%溶液(品番:27,470−4)10gと田中貴金属製の30wt%Pt担持触媒(名称:TEC10V30E)0.5gと混合し、超音波印加ののち撹拌し、触媒組成物とした。
東レ製カーボンペーパー(品番:TGP−H−060)の上にアプリケータを用いて、触媒組成物を塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cm2に切り出し電極2とした。触媒塗工量はPt量で2mg/cm2とした。
更に電極2上に合成例3で得られたプロトン酸基含有ポリエーテルケトン粉を前記(ニ)と同様にプロトン交換した粉末0.5gを蒸留水5.0g、テトラヒドロフラン4.5gの混合溶媒に溶解したワニス10gとAldrich社製超強酸基含有フッ素系高分子(Nafion)5wt%溶液(品番:27,470−4)10gを混合したワニスを噴霧塗工した。その後常温空気中で1晩乾燥させた。プロトン酸基含有ポリエーテルケトン/超強酸基含有フッ素系高分子混合物塗工量は乾燥重量で1mg/cm2とした。
【0093】
3-3)燃料極電極の作成
Aldrich社製超強酸基含有フッ素系高分子(Nafion)5wt%溶液(品番:27,470−4)10gと田中貴金属製の33wt%PtRu担持触媒(名称:TEC61V33)0.5gと混合し、超音波印加ののち撹拌し、燃料極触媒組成物とした。
東レ製カーボンペーパー(品番:TGP−H−060)の上に触媒組成物を塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cm2に切り出し電極2’とした。触媒塗工量はPtRu量で2mg/cm2とした。
更に電極2’上に合成例3で得られたプロトン酸基含有ポリエーテルケトン粉を前記(ニ)と同様にプロトン交換した粉末0.5gを蒸留水5.0g、テトラヒドロフラン4.5gの混合溶媒に溶解したワニス10gとAldrich社製超強酸基含有フッ素系高分子(Nafion)5wt%溶液(品番:27,470−4)10gを混合したワニスを噴霧塗工した。その後常温空気中で1晩乾燥させた。プロトン酸基含有ポリエーテルケトン/超強酸基含有フッ素系高分子混合物塗工量は乾燥重量で1mg/cm2とした。
【0094】
3-4)接合体の作成
3-1で作成したスルホン酸含有架橋ポリエーテルケトン電解質膜と3-2で作成した電極2、3-3で作成した電極2’それぞれ1枚ずつを使用した以外は、実施例1-4と同様に接合体を作成した。接合後の電解質膜電極接合体はほぼ乾燥状態であったが、電極の剥離はなかった。
【0095】
3-5)発電試験
3-4で作成した電解質膜電極接合体を用いて、実施例1の1-5と同様に燃料電池を組み立て、電池特性を測定した。約10.8mW/cm2の出力を得た。3-3で作成したPtRu電極2’をメタノール極に用いた。製作した燃料電池の電池特性を図3に示した。測定条件を表2に示した。
発電試験後のセルを分解し、電解質膜電極接合体を観察したが、電解質膜と電極の剥離はなかった。
【0096】
(比較例)
実施例3のうち、3-2、3-3の電極の作成において、電極上に噴霧塗工するワニスにAldrich社製超強酸基含有フッ素系高分子(Nafion)5wt%溶液(品番:27,470−4)を用いた以外は、実施例3と同様に接合体の作成を行なった。作成された接合体は、接着強度が低く、熱プレスからの取り出し時に、電解質膜と電極が剥離し、燃料電池として出力を取り出せなかった。
【0097】
【発明の効果】
本発明により、イオン伝導性が高く、耐熱性、耐水性に優れ、さらにプロトン酸基含有芳香族ポリマー系高分子電解質膜や電極材料との接着力に優れた、燃料電池用イオン伝導性結着剤が提供される。
また、本発明により、該イオン伝導性結着剤を用いた、耐久性に優れた、低抵抗で高電流操作可能な燃料電池の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料電池の断面構造図を示す概略図である。
【図2】本発明において用いた燃料電池評価装置を示す図である。
【図3】本発明の実施例における燃料電池の電池特性を示す図である。
【符号の説明】
1 電解質膜
2、2’ 触媒付き電極
3 ガスケット
4 セパレーター
5 加圧板
6 ガス流路
7 締め付けボルト
8 燃料電池セル
9 加湿用バブリングタンク
10 電子負荷
11 マスフローコントローラー
12 送液ポンプ

Claims (13)

  1. プロトン酸基と、炭素原子数1〜20のアルキル基を有する芳香環を含む架橋性ポリエーテルケトンからなり、前記架橋性ポリエーテルケトンが、下記一般式(1)で表わされるプロトン酸基を含有する繰り返し構造単位と下記一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含み、両繰り返し構造単位を100モル%とするとき、該架橋性ポリエーテルケトンが、下記一般式(1)で表わされる繰り返し構造単位を10〜100モル%、下記一般式(2)で表される繰り返し構造単位を0〜90モル%の割合で含むことを特徴とする燃料電池用イオン伝導性結着剤。
    Figure 0003973503
    Figure 0003973503
    (一般式(1)および(2)中、Ar1は、直接結合した炭素原子数1〜20のアルキル基を有する芳香環を含む基を表し、その芳香環の水素は、アルキル基、ハロゲン化炭化水素基あるいはハロゲンで置換されていてもよく、XおよびYはそれぞれスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、スルホンイミド基から選ばれるプロトン酸基、またはそれらの金属塩を表し、xおよびyは0以上の整数であり、少なくともx+yは1以上である。)
  2. 前記一般式(1)および(2)におけるAr1が、下記一般式(I)または(II)で表される基であることを特徴とする請求項に記載の燃料電池用イオン伝導性結着剤。
    Figure 0003973503
    (一般式(I)中、R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、そのうち少なくとも一つは炭素原子数1〜20のアルキル基である。Aは単結合、−CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH3)2−、−O−、−S−、−SO2−または
    Figure 0003973503
    を表す。)
    Figure 0003973503
    (一般式(II)中、R9〜R12はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、そのうち少なくとも一つは炭素原子数1〜20のアルキル基である。)
  3. 前記プロトン酸基がスルホン酸基であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用イオン伝導性結着剤。
  4. 下記一般式(3)で表される超強酸基含有フッ素系高分子が加えられていることを特徴とする請求項に記載の燃料電池用イオン伝導性結着剤。
    Figure 0003973503
    (一般式(3)中、x、yは互いに独立に1〜2000の整数、mは0〜6の整数、nは1〜6の整数である。)
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の結着剤と、電極材料とからなることを特徴とする電極形成用組成物。
  6. 前記電極材料が、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウムおよびそれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項に記載の電極形成用組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の結着剤または組成物と、溶媒からなることを特徴とするワニス。
  8. 前記溶媒が水、メタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、炭酸ジメチルからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項に記載のワニス。
  9. 請求項1〜6のいずれかに記載のイオン伝導性結着剤または電極形成用組成物を用いて得られることを特徴とする燃料電池用電極。
  10. 請求項7または8に記載のワニスを用いて得られる燃料電池用電極。
  11. 請求項1〜6のいずれかに記載のイオン伝導性結着剤または電極形成用組成物を用いて得られる燃料電池。
  12. 請求項9または10に記載の燃料電池用電極を用いて得られる燃料電池。
  13. 前記燃料電池を構成するイオン伝導性結着剤が架橋反応されていることを特徴とする請求項11または12に記載の燃料電池。
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