次に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳しく説明する。図1は本実施形態の膜・電極構造体の構成を示す説明的断面図である。
本実施形態の膜・電極構造体は、図1に示すように、1対の電極触媒層1,1と、両電極触媒層1,1に挟持された高分子電解質膜2と、各電極触媒層1,1の上に積層されたガス拡散層3,3とからなる。
前記電極触媒層1は、触媒とイオン伝導性高分子電解質とからなる。
前記触媒としては細孔の発達したカーボン材料に白金または白金合金を担持させた担持触媒が好ましい。細孔の発達したカーボン材料としては、カーボンブラックや活性炭等を好ましく使用することができる。前記カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等を挙げることができ、また前記活性炭としては、種々の炭素原子を含む材料を炭化、賦活処理して得られたもの等を挙げることができる。また、これらのカーボン材料に黒鉛化処理を施したものを用いてもよい。
前記触媒は、カーボン担体に白金を担持させたものであってもよいが、白金合金を使用することにより、さらに電極触媒としての安定性や活性を付与することもできる。前記白金合金としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム等の白金以外の白金族金属、鉄、チタン、金、銀、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、レニウム、亜鉛、スズからなる群から選ばれる1種以上の金属と白金との合金が好ましい。前記白金合金には、白金と合金化される金属との金属間化合物が含有されていてよい。
白金または白金合金の担持率(担持触媒の全質量に対する白金または白金合金の質量の割合)は、高出力を得るために、20〜80質量%、特に30〜55質量%の範囲であることが好ましい。前記担持率が20質量%未満では、充分な出力を得られないおそれがあり、80質量%を超えると、白金または白金合金の粒子を分散性よく担体となるカーボン材料に担持できないおそれがある。
また、白金または白金合金の一次粒子径は、高活性なガス拡散電極を得るためには1〜20nmであることが好ましく、特に反応活性の点で白金または白金合金の表面積を大きく確保できる2〜5nmであることが好ましい。また、白金または白金合金は触媒粒子中に0.1〜1.0mg/cm2の範囲で含まれていることが好ましい。
電極触媒層1は、前記担持触媒に加え、スルホン酸基を有するイオン伝導性高分子電解質を含む。通常、担持触媒は前記高分子電解質により被覆されており、該高分子電解質の繋がっている経路を通ってプロトン(H+)が移動する。
スルホン酸基を有するイオン伝導性高分子電解質としては、特に、デュポン社製ナフィオン(商品名)、旭硝子株式会社製フレミオン(商品名)、旭化成株式会社製アシプレックス(商品名)等に代表されるパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物が好適に用いられる。なおパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物だけでなく、本明細書に記載のスルホン化ポリアリーレン系共重合体等の芳香族系炭化水素化合物を主とするイオン伝導性高分子電解質を用いてもよい。
前記高分子電解質膜2は、スルホン酸基導入ユニットである下記一般式(1)で表される構成単位と、疎水性ユニットである下記一般式(2)で表される構成単位とを含有するポリアリーレン系共重合体から形成されている。
一般式(1)において、Yが示す2価の電子吸引性基は、具体的には、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2)q−(qは1〜10の整数である)、−C(CF3)2−等を挙げることができる。なお、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基定数がフェニル基のm位の場合、0.06以上、p位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
一般式(1)において、Zが示す2価の電子供与性基は、具体的には、−CH2−、−C(CH3)2−、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、
等を挙げることができる。
一般式(1)において、Arが示す、−SO3Hで表される置換基を有する芳香族基として、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基等を挙げることができる。これら基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
前記一般式(1)で表される構成単位を含有することにより、ポリアリーレン系共重合体にスルホン酸基が導入されるため、高分子電解質となり、固体高分子電解質膜2として好適に用いることができる。
前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、一般式(1)で表される構成単位を99.5〜0モル%、好ましくは90〜0.001モル%の割合で含有し、一般式(2)で表される構成単位を0.5〜100モル%、好ましくは10〜99.999モル%の割合で含有している。
前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、例えば、前記一般式(1)においてスルホン酸基に代えてスルホン酸エステル基を有する構成単位となりうるモノマーと、前記一般式(2)で表される構成単位となりうるモノマーとを共重合させ、スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体を製造し、このスルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体を加水分解して、スルホン酸エステル基をスルホン酸基に変換することにより合成することができる。
また、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、例えば、前記一般式(1)においてスルホン酸基を有しない構成単位となりうるモノマーと、前記一般式(2)で表される構成単位となりうるモノマーとを共重合させ、スルホン酸基を有しないポリアリーレン系共重合体を予め合成し、該共重合体をスルホン化することにより合成することもできる。
前記一般式(1)においてスルホン酸基に代えてスルホン酸エステル基を有する構成単位となりうるモノマーとしては、例えば、下記一般式(7)で表されるスルホン酸エステル(以下「化合物(7)」ということがある)を挙げることができる。
Raは炭素原子数1〜20、好ましくは4〜20の炭化水素基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロへキシルメチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、2−エチルへキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メチルブチル基、3,3−ジメチル−2,4−ジオキソランメチル基、シクロヘキシルメチル基等の直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、脂環式炭化水素基、5員の複素環を有する炭化水素基等を挙げることができる。これらの中では、n−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、特にネオペンチル基が好ましい。
Arは−SO3Rbで表される置換基を有する芳香族基を示し、芳香族基として具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナンチル基等を挙げることができる。これらの基のうち、フェニル基、ナフチル基が好ましい。
置換基−SO3Rbは、前記芳香族基に1個または2個以上置換しており、置換基−SO3Rbが2個以上置換している場合には、これらの置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
ここで、Rbは炭素原子数1〜20、好ましくは4〜20の炭化水素基を示し、具体的には前記炭化水素原子数1〜20の炭化水素基等を挙げることができる。これらの中では、n−ブチル基、ネオペンチル基、テトラヒドロフルフリル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、アダマンチルメチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチル基が好ましく、特にネオペンチル基が好ましい。
一般式(7)で表されるスルホン酸エステルの具体例としては、以下のような化合物を挙げることができる。
また、一般式(7)で表されるスルホン酸エステルは、前記具体例の各化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わった化合物、−CO−が−SO2−に置き換わった化合物、塩素原子が臭素原子に置き換わり、かつ、−CO−が−SO2−に置き換わった化合物等も含む。
一般式(7)の中のRb基は1級アルコール由来であって、β炭素が3級または4級炭素であることが重合工程中の安定性に優れ、脱エステル化によるスルホン酸の生成に起因する重合阻害や架橋を引き起こさない点で好ましく、さらには、これらのエステル基は1級アルコール由来でβ位が4級炭素であることが好ましい。
また、前記一般式(1)において、スルホン酸基を有しない化合物の具体例としては、以下のような化合物を挙げることができる。
前記一般式(1)においてスルホン酸基を有しない化合物は、前記具体例の各化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わった化合物、−CO−が−SO2−に置き換わった化合物、塩素原子が臭素原子に置き換わり、かつ、−CO−が−SO2−に置き換わった化合物等も含む。
前記一般式(2)の構成単位となりうるモノマーとしては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物(以下「化合物(8)」ということがある。)を挙げることができる。この化合物(8)から導かれる構成単位を含有させることにより、前記ポリアリーレン系共重合体に疎水部を付与するとともに、屈曲性構造を有するため共重合体の靭性、その他の機械的強度等を向上させる作用を有する。
一般式(8)中、Xは、フッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3、−OSO2CF3から選ばれる原子または基を示す。
R1〜R12は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、フッ素原子またはアルキル基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基等を挙げることができ、メチル基、エチル基等が好ましい。
Aは独立に電子吸引性基または直接結合を示し、電子吸引性基としては、例えば、−CO−、−CONH−、−(CF2)q−(qは1〜10の整数)、−C(CF3)2−、−COO−、−SO−、−SO2−等を挙げることができる。
Bは独立に酸素原子または硫黄原子である。mは1以上の整数であり、上限は通常50、好ましくは20であり、nは2以上の整数であり、上限は通常100、好ましくは80である。
Qは下記一般式(3)〜(6)で表される少なくとも1種の構造を示す。
前記R9〜R20が示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基等を挙げることができ、メチル基、エチル基等が好ましい。また、前記R9〜R20が示す芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フェノキシジフェニル基、フェニルフェニル基、ナフトキシフェニル等を挙げることができる。
前記ポリアリーレン系共重合体は、化合物(8)が前記一般式(3)〜(6)で表される構造を含有することにより、優れた熱水耐性、機械的特性、プロトン伝導性等を得ることができる。
前記化合物(8)は、例えば、次のような反応により合成することができる。
まず、2価の原子もしくは有機基または直接結合で連結されたビスフェノール、ベンゼンジオールまたはナフタレンジオール等(以下、これらをまとめて「フェノール類」ということがある)をアルカリ金属塩とするために、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイド等の誘電率の高い極性溶媒中で、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩等を加える。アルカリ金属はフェノール類の水酸基に対し、過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量、好ましくは1.2〜1.5倍当量で使用する。このとき、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソール等の水と共沸する溶媒を共存させて、反応の進行を促進させることが好ましい。
次いで、前記フェノール類のアルカリ金属塩と、電子吸引性基等で活性化された、塩素等のハロゲン原子で置換された芳香族ジハライド化合物とを反応させる。前記電子吸引性基等で活性化された芳香族ジハライド化合物としては、例えば、1,4−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼン、1,2−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−クロロベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−クロロベンゾイル)ベンゼン、1,2−ビス(3−クロロベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(2−クロロベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(2−クロロベンゾイル)ベンゼン、1,2−ビス(2−クロロベンゾイル)ベンゼン、4,4’−ビス(4−クロロベンゾイル)ビフェニル、4,4’−ビス(3−クロロベンゾイル)ビフェニル、4,4’−ビス(2−クロロベンゾイル)ビフェニル、2,2’−ビス(4−クロロベンゾイル)ビフェニル、2,2’−ビス(2−クロロベンゾイル)ビフェニル、1,4−ビス(4−クロロスルホニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−クロロスルホニル)ベンゼン、1,2−ビス(4−クロロスルホニル)ベンゼン、4,4’−ビス(4−クロロスルホニル)ビフェニル、4,4’−ビス(2−クロロスルホニル)ビフェニル、1,4−ビス(4−クロロベンゾイル)―2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,3−ビス(4−クロロベンゾイル)―2,4,5,6−テトラフルオロベンゼン等を挙げることができる。
前記芳香族ジハライド化合物は、フェノール類に対し1.0001〜3倍モル、好ましくは1.001〜2倍モルの量で用いられる。また両末端が塩素原子となるように、反応後半または反応終了後に再度、例えば、1,4−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンを過剰に加えて反応させてもよい。分子量は、この段階での前記芳香族ジハライド化合物とフェノール類との反応モル比によって調整することができる。
これらの反応は、反応温度が60〜300℃、好ましくは80〜250℃の範囲、反応時間が15分〜100時間、好ましくは1〜24時間の範囲で行なわれる。
得られたオリゴマー乃至ポリマーは、ポリマーの一般的な精製方法、例えば、溶解−沈殿の操作によって精製することができる。化合物(8)の具体的な構造として、以下のような化合物を挙げることができる。
本実施形態において、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体(以下、単に「スルホン化ポリマー」ということがある)は、前記化合物(7)と化合物(8)とを触媒の存在下に反応させた後、スルホン酸エステル基を加水分解してスルホン酸基に変換することにより合成される。
前記化合物(7)と化合物(8)との反応に使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、このような触媒系としては、(i)遷移金属塩および配位子となる化合物(以下「配位子成分」という)、または、配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)と、(ii)還元剤とを必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために「塩」を添加してもよい。
ここで、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル等を挙げることができる。
また、配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2’−ビピリジン等を挙げることができる。前記配位子成分である化合物は、1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
さらに、配位子が配位された遷移金属錯体としては、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2’−ビピリジン)を挙げることができる。
前記触媒系に使用することができる還元剤としては、亜鉛、マグネシウム、マンガン等を挙げることができる。これらの還元剤は、有機酸等の酸に接触させることにより、より活性化して用いることができる。
また、前記触媒系に用いられる「塩」としては、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム等を挙げることができる。
各成分の使用割合は、遷移金属塩または遷移金属錯体が、前記モノマーの総計(化合物(7)と化合物(8)との合計)1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがあり、一方、10モルを超えると、得られたスルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体の分子量が低下することがある。
前記触媒系において、遷移金属塩と配位子成分とを用いる場合、この配位子成分の使用割合は、遷移金属塩1モルに対し、通常0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがあり、一方、100モルを超えると、得られたスルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体の分子量が低下することがある。
また、還元剤の使用割合は、前記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがあり、100モルを超えると、得られたスルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体の精製が困難になることがある。
さらに、「塩」を使用する場合、その使用割合は、前記モノマーの総計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分であることがあり、100モルを超えると、得られたスルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体の精製が困難となることがある。
化合物(7)と化合物(8)とを反応させる際に使用することのできる重合溶媒としては、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンが好ましい。これらの重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
重合溶媒中における前記モノマーの総計の濃度は、通常、1〜90重量%、好ましくは5〜40重量%である。重合する際の重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃である。また、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
化合物(7)を用いて得られたスルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体は、スルホン酸エステル基を加水分解して、スルホン酸基に変換することによりスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体とすることができる。
加水分解の方法としては、(i)少量の塩酸を含む過剰量の水またはアルコールに、前記スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体を投入し、5分間以上攪拌する方法、(ii)トリフルオロ酢酸中で前記スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体を80〜120℃程度の温度で5〜10時間程度反応させる方法、(iii)スルホン酸エステル基を有するポリアリーレン系共重合体中のスルホン酸エステル基(−SO3Raおよび−SO3Rb)1モルに対して1〜3倍モルのリチウムブロマイドを含む溶液、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の溶液中で前記ポリアリーレン系共重合体を80〜150℃程度の温度で3〜10時間程度反応させた後、塩酸を添加する方法
等を挙げることができる。
スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、前記化合物(8)と、前記一般式(7)で表される化合物(7)においてスルホン酸基を有しない化合物とを共重合させることにより、スルホン酸基を有しないポリアリーレン系共重合体(以下「非スルホン化ポリマー」ということがある)を予め合成し、この非スルホン化ポリマーをスルホン化することにより合成することもできる。この場合、前記合成方法に準じた方法により非スルホン化ポリマーを製造した後、スルホン化剤を用いてスルホン酸基を導入することにより、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体を得ることができる。
スルホン酸基の導入方法は、特に制限されず、一般的な方法で行うことができる。例えば、前記非スルホン化ポリマーを、無溶剤下または溶媒存在下で、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、硫酸、亜硫酸水素ナトリウム等の公知のスルホン化剤を用いて、公知の条件でスルホン化することにより、スルホン酸基を導入することができる(非特許文献1〜3参照)。
スルホン化の際に用いられる溶剤としては、例えば、n−ヘキサン等の炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン系極性溶剤、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。反応温度は、特に限定されないが、通常−50〜200℃、好ましくは−10〜100℃である。また、反応時間は、通常0.5〜1,000時間、好ましくは1〜200時間である。
前記のような方法により製造されるスルホン化ポリマー中のスルホン酸基量は、通常0.3〜5meq/g、好ましくは0.5〜3meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.3meq/g未満では、プロトン伝導度が低く実用的ではなく、5meq/gを超えると、耐水性が低下することがある。前記スルホン酸基量は、例えば、モノマーの種類、使用割合、組み合わせ等を変えることにより、調整することができる。
このようにして得られるスルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体は、分子量が前記範囲内であることにより、優れた塗膜性、強度的性質、溶解性、加工性等を得ることができる。
前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の構造は、赤外線吸収スペクトルによって、1,030〜1,045cm−1、1,160〜1,190cm−1のS=O吸収、1,130〜1,250cm−1のC−O−C吸収、1,640〜1,660cm−1のC=O吸収等により確認でき、これらの組成比は、スルホン酸の中和滴定や、元素分析により知ることができる。また、核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)により、6.8〜8.0ppmの芳香族プロトンのピークから、その構造を確認することができる。
固体高分子電解質膜2は、前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体からなる高分子電解質を用いて調製される。また、固体高分子電解質膜2を調整する際に、高分子電解質以外に、硫酸、リン酸等の無機酸、カルボン酸を含む有機酸、適量の水等を併用してもよい。また、プロトン伝導性を損なわない範囲で、フェノール系水酸基含有化合物、アミン系化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物等の酸化防止剤を含んでもよい。
固体高分子電解質膜2は、前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体を、溶剤に溶解して溶液とした後、基体上に流延してフィルム状に成形するキャスティング法等により、フィルム状に成形することにより製造することができる。
前記基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、例えばプラスチック製、金属製等の基体を用いることができ、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の熱可塑性樹脂からなる基体を用いることができる。
前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体を溶解する溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン等の非プロトン系極性溶剤を挙げることができ、特に溶解性、溶液粘度の面から、N−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」ということがある)が好ましい。前記非プロトン系極性溶剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体を溶解させる前記溶媒として、前記非プロトン系極性溶剤とアルコールとの混合物を用いることもできる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等を挙げることができ、特にメタノールが幅広い組成範囲で溶液粘度を下げる効果があり好ましい。前記アルコールは、1種を単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
前記溶媒として、非プロトン系極性溶剤とアルコールとの混合物を用いる場合には、非プロトン系極性溶剤が95〜25重量%、好ましくは90〜25重量%、アルコールが5〜75重量%、好ましくは10〜75重量%(合計100重量%)の範囲で用いる。アルコールの量が前記範囲内にあると、溶液粘度を下げる点で優れた効果を得ることができる。
前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体を溶解させた溶液のポリマー濃度は、該スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の分子量にもよるが、通常、5〜40重量%、好ましくは7〜25重量%である。5重量%未満では厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい。一方、40重量%を超えると、溶液粘度が高すぎてフィルム化し難く、また表面平滑性に欠けることがある。
溶液粘度は、スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体の分子量や、ポリマー濃度にもよるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sの範囲である。2,000mPa・s未満では、成膜中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがある。一方、100,000mPa・sを超えると、粘度が高すぎてダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
前記のようにして成膜した後、得られた未乾燥フィルムを水に浸漬すると、未乾燥フィルム中の有機溶剤を水と置換することができ、得られる固体高分子電解質膜2の残留溶媒量を低減することができる。なお、成膜後、未乾燥フィルムを水に浸漬する前に、未乾燥フィルムを予備乾燥してもよい。予備乾燥は、未乾燥フィルムを通常50〜150℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行われる。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際は、1枚ずつ水に浸漬するバッチ方式であってもよく、基板フィルム(例えば、PET)上に成膜された状態の積層フィルムのまま、または基板から分離した膜を水に浸漬させて、巻き取っていく連続方法でもよい。バッチ方式の場合は、処理フィルムを枠にはめる等の方式をとることにより処理されたフィルムの表面に皺が形成されることを抑制でき、好都合である。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際には、未乾燥フィルム1重量部に対し、水が10重量部以上、好ましくは30重量部以上の接触比となるようにすることが好ましい。得られる固体高分子電解質膜2の残存溶媒量をできるだけ少なくするためには、できるだけ大きな接触比を維持するのが好ましい。また、浸漬に使用する水を交換したり、オーバーフローさせたりして、常に水中の有機溶媒濃度を一定濃度以下に維持しておくことも、得られる固体高分子電解質膜2の残存溶媒量の低減に有効である。固体高分子電解質膜2中に残存する有機溶媒量の面内分布を小さく抑えるためには、水中の有機溶媒濃度を攪拌等によって均質化させることは効果がある。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際の水温は、好ましくは5〜80℃の範囲である。水温が高温であるほど、有機溶媒と水との置換速度は速くなるが、フィルムの吸水量も大きくなるので、乾燥後に得られる固体高分子電解質膜2の表面状態が荒れる懸念がある。通常、置換速度と取り扱いやすさとの点から10〜60℃の温度範囲が好都合である。浸漬時間は、初期の残存溶媒量や接触比、処理温度にもよるが、通常10分〜240時間、好ましくは30分〜100時間の範囲である。
前記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後乾燥すると、残存溶媒量が低減された固体高分子電解質膜2が得られるが、このようにして得られる固体高分子電解質膜2の残存溶媒量は、通常5重量%以下である。また、浸漬条件によっては、得られる固体高分子電解質膜2の残存溶媒量を1重量%以下とすることができる。このような条件としては、例えば、未乾燥フィルムと水との接触比を、未乾燥フィルム1重量部に対し、水が50重量部以上、浸漬する際の水の温度を10〜60℃、浸漬時間を10分〜10時間とする方法がある。
前記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分、好ましくは15〜60分乾燥し、次いで、50〜150℃で、好ましくは500mmHg〜0.1mmHgの減圧下、0.5〜24時間、真空乾燥することにより、固体高分子電解質膜2を得ることができる。
前記のような方法により得られる固体高分子電解質膜2は、その乾燥膜厚が、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
また、固体高分子電解質膜2は、前記スルホン酸エステル化されたポリアリーレン系共重合体を加水分解することなく、上述したような方法でフィルム状に成形した後、加水分解することにより製造することもできる。
固体高分子電解質膜2は、老化防止剤、好ましくは分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物を含有してもよく、前記老化防止剤を含有することで固体高分子電解質膜2としての耐久性をより向上させることができる。
本実施形態で使用することのできるヒンダードフェノール系化合物としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製IRGANOX 1010(商品名))、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製IRGANOX 1098(商品名))、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製IRGANOX 1330(商品名))等を挙げることができる。
分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物は、前記スルホン酸基を有するポリアリーレン系共重合体100重量部に対して、0.01〜10重量部の量で使用することが好ましい。
本実施形態において、膜・電極構造体は、アノード、カソードの電極触媒層1,1と、電極触媒層1,1に挟持される固体高分子電解質膜(プロトン伝導膜)2とのみからなっていてもよいが、アノード、カソードともに電極触媒層1の外側にカーボンペーパーやカーボンクロスのような導電性多孔質基材からなるガス拡散層3が配置されるとさらに好ましい。また、この導電性多孔質基材は撥水化加工処理を施してもよい。さらに、このガス拡散層3には、カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を混合したスラリーを塗布する等して、撥水性を付与した下地層を形成してもよい。ガス拡散層3は集電体としても機能するので、本明細書ではガス拡散層3を有する場合はガス拡散層3と電極触媒層1とを合わせて電極というものとする。
図1に示す膜・電極構造体を備える固体高分子型燃料電池では、カソードには酸素を含むガス、アノードには水素を含むガスが供給される。具体的には、例えばガスの流路となる溝が形成されたセパレータを膜・電極構造体の両方の電極(ガス拡散層3)の外側に配置し、該ガスの流路にガスを流すことにより膜・電極構造体に燃料となるガスを供給する。
図1に示す膜・電極構造体を製造する方法としては、固体高分子電解質膜2の上に電極触媒層1を直接形成し必要に応じガス拡散層3で挟み込む方法、カーボンペーパー等のガス拡散層3となる基材上に電極触媒層1を形成しこれを固体高分子電解質膜2と接合する方法、平板上に電極触媒層1を形成しこれを高分子電解質膜2に転写した後、平板を剥離し、さらに必要に応じガス拡散層3で挟み込む方法等の各種の方法を採用することができる。より好ましくは、高分子電解質膜2上に電極触媒層1を直接形成する方法を挙げることができる。
電極触媒層1の形成方法としては、担持触媒とスルホン酸基を有するパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物とを分散媒に分散させた分散液を用いて(必要に応じて撥水剤、造孔剤、増粘剤、希釈溶媒等を加え)、固体高分子電解質膜2、ガス拡散層3、または平板上に噴霧、塗布、濾過等により形成させる公知の方法が採用できる。電極触媒層1を高分子電解質膜2上に直接形成しない場合は、電極触媒層1と高分子電解質膜2とは、ホットプレス法、接着法等により接合することが好ましい(例えば特許文献2参照)。
本実施例では、初めに、以下のようにして疎水性ユニットを合成した。
まず、攪拌羽根、温度計、窒素導入管を取り付けた500mlの3口フラスコに、1,4−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼン19.0g(53.6ミリモル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン16.0g(47.6ミリモル)、炭酸カリウム8.6g(61.9ミリモル)、スルホラン100g、トルエン40gを入れ、窒素雰囲気下、130℃で攪拌した。トルエンとの共沸により水分を取り除いた後、トルエンを系外に取り除き、195℃で11時間攪拌した。反応溶液を100℃まで冷やしてから、1,4−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼン1.12g(3.2ミリモル)を加え、再度195℃で5時間攪拌した。テトラヒドロフランにより希釈し、セライト濾過により固形分を取り除いた。濾液をメタノール/濃塩酸溶液(メタノール2.7L/濃塩酸0.3L)に注ぎ、反応物を凝固させた。吸引濾過により固体を濾過し、得られた固体をメタノールで洗浄した後、風乾した。これをテトラヒドロフランに再溶解し、メタノール1.5Lに注ぎ、反応物を凝固させた。吸引濾過により固体を濾過し、得られた固体を風乾して、さらに真空乾燥することにより目的の疎水性ユニット24.6gを得た(収率79%)。溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、GPCによって求めた生成物の分子量は、ポリスチレン換算で数平均分子量8,600、重量平均分子量17,000であった。1H−NMRスペクトルより、得られた化合物は下記式(9)で表されるオリゴマーであることを確認した。
次に、以下のようにして、スルホン化ポリマーを合成した。
まず、攪拌羽根、温度計、窒素導入管を取り付けた500mlの3口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル27.6g(69ミリモル)、本実施例で得られた疎水性ユニット(9)11.8g(1.2ミリモル)、トリフェニルホスフィン7.34g(28ミリモル)、亜鉛11.0g(168ミリモル)をはかりとった。40℃に加熱したオイルバスにフラスコをつけ、2時間真空乾燥した。内部を数回乾燥窒素置換した後、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド(Nicat.)1.37g(2.1ミリモル)、ヨウ化ナトリウム0.32g(2.1ミリモル)、脱水したジメチルアセトアミド92mlを加え、重合を開始した。反応温度が90℃を超えないように制御しながら、3時間重合を続けた。反応終了後、ジメチルアセトアミドを530g加えて希釈し、セライト濾過により不溶分を取り除き、固形分含量が12%となるように濃縮した。
得られた濃縮液を攪拌羽根、温度計、窒素導入管を取り付けた1Lの3口フラスコに入れ、臭化リチウム13.2g(152ミリモル)を加え、120℃で7時間攪拌した。反応終了後、アセトン4Lに注ぎ、反応物を凝固させた。吸引濾過により固体を濾過し、得られた固体をメタノールで洗浄した後、風乾して、さらに真空乾燥することによりスルホン化ポリマー26.3gを得た(収率89%)。臭化リチウムとリン酸を添加したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶離液として用い、GPCで求めた生成物の分子量は、ポリスチレン換算で数平均分子量59,000、重量平均分子量237,000であった。得られたスルホン化ポリマーは、下記式(10)で表されるスルホン化ポリマーと推定される。このポリマーのイオン交換容量は2.2meq/gであった。
得られたスルホン化ポリマーのN−メチル−2−ピロリドン/メタノール溶液からキャスト法により膜厚40μmのフィルムを作製した。
次に、前記フィルムを用い、以下のようにして、図1に示す膜・電極構造体を作製した。
まず、平均径50nmのカーボンブラック(ファーネスブラック)に白金粒子を、カーボンブラック:白金=1:1の重量比で担持させ、触媒粒子を作製した。次に、イオン伝導性バインダーとしてのパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(デュポン社製ナフィオン(商品名))溶液に、前記触媒粒子を、イオン伝導性バインダー:触媒粒子=8:5の重量比で均一に分散させ、触媒ペーストを調製した。
次に、カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子とを、カーボンブラック:PTFE粒子=4:6の重量比で混合し、得られた混合物をエチレングリコールに均一に分散させたスラリーをカーボンペーパーの片面に塗布、乾燥させて下地層とし、該下地層とカーボンペーパーとからなるガス拡散層3を2つ作製した。
本実施例で得られた前記フィルム(固体高分子電解質膜2)両面に、前記触媒ペーストを、白金含有量が0.5mg/cm2となるようにバーコーター塗布し、乾燥させることにより電極塗布膜(CCM)を得た。前記乾燥は、100℃で15分間の乾燥を行なった後、140℃で10分間の二次乾燥を行なった。
次に、前記CCMを前記ガス拡散層3の下地層側で狭持し、ホットプレスを行なって図1に示す膜・電極構造体を得た。前記ホットプレスは、80℃、5MPaで2分間の一次ホットプレスの後、160℃、4MPaで1分間の二次ホットプレスを行なった。
また、本発明で得られた膜・電極構造体は、ガス拡散層の上にさらにガス通路を兼ねるセパレーターを積層することにより、固体高分子型燃料電池を構成することができる。
次に、本実施例で得られたスルホン化ポリマーと、固体高分子電解質膜2と、膜・電極構造体との物性を、以下のようにして評価した。結果を表1に示す。
スルホン化ポリマーのイオン交換容量は、該スルホン化ポリマーの水洗水がpH4〜6になるまで洗浄して、残存している遊離の酸を充分に除去して乾燥した後、所定量を秤量してTHF/水の混合溶剤に溶解した。次に、フェノールフタレインを指示薬としてNaOHの標準液にて滴定し、中和点からイオン交換容量を求めた。
固体高分子電解質膜2のプロトン伝導度は、まず、固体高分子電解質膜2を5mm幅の短冊状の試料とし、該試料の表面に、白金線(直径0.5mm)を押し当て、恒温恒湿装置中に試料を保持し、85℃、相対湿度90%の条件下、白金線間の交流インピーダンス測定することにより交流抵抗を求めた。抵抗測定装置として、Solartron社製SI1260インピーダンスアナライザ(商品名)を用い、恒温恒湿装置にはエスペック社製小型環境試験機SH−241(商品名)を使用した。白金線を5mm間隔に5本押し当てて、線間距離を5〜20mmに変化させて交流抵抗を測定した。次に、線間距離と抵抗の勾配とから次式により固体高分子電解質膜2の比抵抗を算出し、比抵抗の逆数から交流インピーダンスを算出し、このインピーダンスからプロトン伝導度を算出した。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
固体高分子電解質膜2の破断強度と、破断伸びとは、JIS K7127に準拠して、得られたフィルムの2号形試験片を用いて引張試験を行い、測定した。
固体高分子電解質膜2の弾性率は、前記引張試験で測定した応力−歪曲線の引張初期の傾きから算出した。
固体高分子電解質膜2の熱水耐性は、固体高分子電解質膜2を2.0cm×3.0cmにカットし、秤量して試験用のテストピースとした。このテストピースを、ポリカーボネート製の250ml瓶に入れ、そこに約100mlの蒸留水を加え、プレッシャークッカー試験機(HIRAYAMA MFS CORP製 PC−242HS(商品名))を用いて、120℃で24時間加温した。
前記加温終了後、前記テストピースを熱水中から取り出し、該テストピースを真空乾燥機で5時間乾燥して重量を秤量し、試験前の乾燥フィルムの重量に対する試験後の重量の割合(重量保持率)を求め、熱水耐性の指標とした。
固体高分子電解質膜2の熱分解開始温度は、TGA(窒素下、昇温速度:20℃/分)によりスルホン化ポリマーの分解温度として測定した。
本実施例で得られた膜・電極構造体の発電特性は、温度95℃、燃料極側の相対湿度を30%、酸素極側の相対湿度を50%とした発電条件下、燃料極側には純水素を、酸素極側には空気をそれぞれ供給し、電流密度1A/cm2で200時間発電した後、電流密度を1A/cm2としてセル電位の測定を行うことにより評価した。