JP2006179256A - 固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体及び固体高分子型燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体及び固体高分子型燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】スルホン酸基の導入量を増加しても優れた耐熱水性を有するスルホン化ポリマーからなり、プロトン伝導度、機械的特性、発電性能、発電耐久性に優れた固体高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体及び該膜−電極構造体を備え、発電性能と発電耐久性とに優れた固体高分子型燃料電池を提供する。
【解決手段】固体高分子電解質膜を、触媒を含む1対の電極で挟持した固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体である。固体高分子電解質膜は、下記一般式(1)で表される第1の繰り返し単位と下記一般式(2)で表される第2の繰り返し単位とを備えるポリアリーレン系共重合体のスルホン化物からなる。一般式(2)で表される第2の繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(2’)で表される繰り返し単位を挙げることができる。固体高分子型燃料電池は、前記固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体を備える。
Figure 2006179256


【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体と、該膜−電極構造体を備える固体高分子型燃料電池に関するものである。
石油資源が枯渇化する一方、化石燃料の消費による地球温暖化等の環境問題が深刻化しており、二酸化炭素の発生を伴わないクリーンな電動機用電力源として燃料電池が注目されて広範に開発されると共に、一部では実用化され始めている。前記燃料電池を自動車等に搭載する場合には、高電圧と大電流とが得やすいことから、固体高分子電解質膜を用いる固体高分子型燃料電池が好適に用いられる。
前記固体高分子型燃料電池に用いる電極構造体として、白金等の触媒がカーボンブラック等の触媒担体に担持されイオン伝導性高分子バインダーにより一体化されることにより形成されている1対の電極触媒層を備え、両電極触媒層の間にイオン伝導可能な固体高分子電解質膜を挟持すると共に、各電極触媒層の上に、拡散層を積層したものが知られている。前記電極構造体は、さらに各電極触媒層の上に、ガス通路を兼ねたセパレータを積層することにより、固体高分子型燃料電池を構成する。
前記固体高分子型燃料電池では、一方の電極触媒層を燃料極として前記拡散層を介して水素、メタノール等の還元性ガスを導入すると共に、他方の電極触媒層を酸素極として前記拡散層を介して空気、酸素等の酸化性ガスを導入する。このようにすると、燃料極側では、前記電極触媒層に含まれる触媒の作用により、前記還元性ガスからプロトン及び電子が生成し、前記プロトンは前記固体高分子電解質膜を介して、前記酸素極側の電極触媒層に移動する。そして、前記プロトンは、前記酸素極側の電極触媒層で、前記電極触媒層に含まれる触媒の作用により、該酸素極に導入される前記酸化性ガス及び電子と反応して水を生成する。従って、前記燃料極と酸素極とを導線により接続することにより、前記燃料極で生成した電子を前記酸素極に送る回路が形成され、電流を取り出すことができる。
前記電極構造体では、前記固体高分子電解質膜としていわゆる陽イオン交換樹脂に属するポリマー、例えばポリスチレンスルホン酸等のビニル系ポリマーのスルホン化物、ナフィオン(商品名、デュポン社製)を代表とするパーフルオロアルキルスルホン酸ポリマー、パーフルオロアルキルカルボン酸ポリマー、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン等の耐熱性高分子に、スルホン酸基またはリン酸基を導入したポリマー等の有機系ポリマーが好適に用いられる。
これら有機系ポリマーは、通常、フィルム状で用いられるが、溶媒に可溶性であること、または熱可塑性であることを利用し、電極上に伝導膜を接合加工できる。ところが、これら有機系ポリマーの多くは、プロトン伝導性がまだ十分でないことに加え、耐久性が低いこと、高温(100℃以上)でプロトン伝導性が低下してしまうこと、スルホン化により脆化し、機械的強度が低下すること、湿度条件下の依存性が大きいこと、あるいは電極との密着性が十分満足のいくものとはいえない等の問題がある。さらに、これら有機系ポリマーには、含水ポリマー構造に起因して、燃料電池の稼動中に過度の膨潤により強度が低下したり、形状の崩壊に至るという問題がある。
一方、スルホン化された剛直ポリフェニレンからなる固体高分子電解質が知られている(例えば、特許文献1参照)。前記剛直ポリフェニレンは、フェニレン連鎖からなる芳香族化合物を重合して得られるポリマーを主成分とし、これをスルホン化剤と反応させてスルホン酸基を導入しており、スルホン酸基の導入量の増加によって、プロトン伝導度が向上する。
しかしながら、前記剛直ポリフェニレンは、スルホン化すると耐熱水性や靭性等が著しく損なわれ、燃料電池の固体高分子電解質膜として用いたときに十分な発電性能が得られないという問題がある。
米国特許第5,403,675号明細書 特開平7−220741号公報 Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.3, p.730(1993) Polymer Preprints, Japan, Vol.43, No.3, p.736(1994) Polymer Preprints, Japan, Vol.42, No.7, p.2490〜2492(1993)
本発明は、かかる不都合を解消して、スルホン酸基の導入量を増加しても優れた耐熱水性を備えるポリアリーレン系共重合体のスルホン化物からなり、プロトン伝導度、機械的特性、発電性能、発電耐久性に優れた固体高分子電解質膜を備える固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体を提供することを目的とする。
また、本発明の目的は、前記膜−電極構造体を備え、発電性能と発電耐久性とに優れた固体高分子型燃料電池を提供することにもある。
かかる目的を達成するために、本発明は、固体高分子電解質膜を、触媒を含む1対の電極で挟持した固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体において、前記固体高分子電解質膜は、下記一般式(1)で表される第1の繰り返し単位と下記一般式(2)で表される第2の繰り返し単位とを備えるポリアリーレン系共重合体のスルホン化物からなることを特徴とする。
Figure 2006179256
前記ポリアリーレン系共重合体のスルホン化物は、機械的特性、特に耐熱性に優れているので、発電性能、発電耐久性に優れた固体高分子電解質膜を備える膜−電極構造体を得ることができる。
本発明の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体において、前記一般式(2)で表される第2の繰り返し単位としては、例えば、下記一般式(2’)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
Figure 2006179256
前記ポリアリーレン系共重合体のスルホン化物は、一般式(2’)で表される繰り返し単位を備えることにより、主鎖骨格にスルホニル基(−SO−)が導入されるので、さらに優れた耐熱性を得ることができる。
また、本発明の固体高分子型燃料電池は、前記固体高分子電解質膜を備える膜−電極構造体を用いるので、優れた発電性能と優れた発電耐久性とを得ることができる。
次に、図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳しく説明する。図1は本実施形態の膜−電極構造体の構成を示す説明的断面図である。
本実施形態の膜−電極構造体は、図1に示すように、固体高分子電解質膜1と、固体高分子電解質膜1を挟持する1対の電極触媒層2,2と、各電極触媒層2,2の上に積層されたガス拡散層3,3とからなる。
前記固体高分子電解質膜1は、次の一般式(1)で表される第1の繰り返し単位と、次の一般式(2)で表される第2の繰り返し単位とを備えるポリアリーレン系共重合体のスルホン化物からなる。ここで、前記第1の繰り返し単位はスルホン酸基導入ユニットであり、前記第2の繰り返し単位は疎水性ユニットである。
Figure 2006179256
一般式(1)において、Yで示される2価の有機基としては、例えば、−CO−、−CONH−、−(CF−(pは1〜10の整数である)、−C(CF−、−COO−、−SO−、−SO−等の電子吸引性基、または、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、
Figure 2006179256
等の電子供与性基を挙げることができる。尚、電子吸引性基とは、ハメット(Hammett)置換基定数がフェニル基のm位の場合、0.06以上、p位の場合、0.01以上の値となる基をいう。
Yで示される2価の有機基は、スルホン酸基を備えるポリアリーレン系共重合体としたときに、酸強度を上げることができること、スルホン酸の脱離温度を上げることができることから、電子吸引性基であることが好ましく、特に−CO−または−SO−であることが好ましい。
一般式(1)において、Arで示される芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、フェノキシフェニル基、フェニルフェニル基、ナフトキシフェニル基等を挙げることができる。前記芳香族基は置換基を有していてもよい。
一般式(2)において、Aで示される2価の有機基としては、例えば、−CONH−、−(CF−(pは1〜10の整数である)、−C(CF−、−COO−、−SO−、−SO−等の−CO−を除く電子吸引性基、または、−O−、−S−、−CH=CH−、−C≡C−、
Figure 2006179256
等の電子供与性基を挙げることができる。
一般式(2)において、R〜Rで示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、へキシル基等を挙げることができるが、メチル基、エチル基等が好ましい。
前記ポリアリーレン系共重合体は、一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物とを、遷移金属化合物を含む触媒の存在下で共重合させることにより合成することができる。
Figure 2006179256
一般式(3)において、Y、Arは一般式(1)と同義であり、X’はフッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3、−OSO2CF3からなる群から選ばれる原子または基を示す。
Figure 2006179256
一般式(4)において、A、B、R〜R、nは一般式(2)と同義であり、Xは、フッ素を除くハロゲン原子(塩素、臭素、ヨウ素)、−OSO2CH3、−OSO2CF3からなる群から選ばれる原子または基を示す。nの上限は、通常100、好ましくは80である。
本実施形態では、ポリアリーレン系共重合体のスルホン化物(以下、単に「スルホン化ポリアリーレン」ということがある)を得るために、スルホン化剤を用いて前記ポリアリーレン系共重合体をスルホン化してもよいが、一般式(3)において芳香族基がスルホン酸基を備える化合物を用いて一般式(4)で表される化合物と共重合させることが好ましく、一般式(3)において芳香族基がスルホン酸エステル基を備える化合物を用いて一般式(4)で表される化合物と共重合させることがさらに好ましい。一般式(3)で表される化合物の芳香族基がスルホン酸エステル基を備えるときには、得られた共重合体を加水分解することにより前記スルホン化ポリアリーレンを得ることができる。
前記一般式(3)において芳香族基がスルホン酸エステル基を備える化合物としては、例えば、以下のような芳香族スルホン酸エステル誘導体を挙げることができる。
Figure 2006179256
Figure 2006179256
また、前記芳香族スルホン酸エステル誘導体は、前記各化合物において塩素原子が臭素原子に置き換わった化合物、−CO−が−SO−に置き換わった化合物、塩素原子が臭素原子に置き換わり、かつ、−CO−が−SO−に置き換わった化合物等も含む。
前記スルホン酸エステル基は、1級アルコール由来であって、β炭素が3級または4級炭素であることが重合工程中の安定性に優れ、脱エステル化によるスルホン酸の生成に起因する重合阻害や架橋を引き起こさない点で好ましい。さらに、前記スルホン酸エステル基は、1級アルコール由来でβ位が4級炭素であることが好ましい。
前記芳香族スルホン酸エステル誘導体は、例えば、次のようにして合成することができる。
Figure 2006179256
前記芳香族スルホン酸エステル誘導体を合成する際には、まず、前記一般式(3)に従う芳香族誘導体(a)のスルホン化(スルホン酸ナトリウム塩化)を行う。前記スルホン化は、例えば、2,5−ジクロロベンゾフェノンの1,2−ジクロロメタン溶液と、5倍モルのアセチル硫酸の1,2−ジクロロメタン溶液とを60℃で3〜5時間反応させることにより行う。前記範囲の時間が経過した後、1−プロパノールで反応を終結させ、3倍モルのNaOH水溶液に注ぐ。得られた溶液を濃縮していくと微粉のスルホン酸ナトリウム塩(b)が得られる。
次に、スルホン酸ナトリウム塩(b)のスルホン酸クロライド化を行う。前記スルホン酸クロライド化は、例えば、スルホン酸ナトリウム塩(b)としての2,5−ジクロロベンゾフェノン−3'−スルホン酸ナトリウムに対し、約3〜4倍量(重量/容積)の溶媒(スルホラン/アセトニトリル=4/6(容積比)の混合溶媒)を用い、該溶媒に2,5−ジクロロベンゾフェノン−3'−スルホン酸ナトリウムを溶解させ、70℃に加温し、塩化ホスホリルを10℃付近で5時間程度反応させる。反応後、大過剰の冷水で希釈して生成物を沈殿させる。濾過後、トルエンで再結晶し、スルホン酸クロリド(c)の精製結晶を得る。
尚、前記アセチル硫酸の代わりに5〜10倍モル量のクロロスルホン酸を用いれば、化合物(a)を一挙にスルホン酸クロリド(c)に転換できる。
次に、スルホン酸クロリド(c)のスルホン酸エステル化を行う。前記スルホン酸エステル化は、例えば、スルホン酸クロリド(c)としての2,5−ジクロロベンゾフェノン−3'−スルホン酸クロライドに対し、等量以上(通常1〜3倍モル)のi−ブチルアルコールとピリジンとを混合して冷却した混合溶液を用い、該混合溶液に、2,5−ジクロロベンゾフェノン−3'−スルホン酸クロライドを滴下して反応させる。反応は20℃以下に抑える。反応時間は反応スケールにもよるが10分〜5時間程度である。反応混合液を希塩酸処理、水洗した後、酢酸エチルで目的物を抽出する。抽出液を濃縮して目的物を分離後、メタノールで再結晶することにより、芳香族スルホン酸エステル誘導体(d)を得ることができる。
一方、一般式(4)で表される化合物は、例えば、次のようにして合成することができる。
まず、2価の原子もしくは有機基または直接結合で連結されたビスフェノールを、N−メチル−2−ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、スルホラン、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホキサイド等の誘電率の高い極性溶媒に溶解し、対応するビスフェノールのアルカリ金属塩とするために、該極性溶媒中で、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルカリ金属炭酸塩等を加える。アルカリ金属はフェノールの水酸基に対し、過剰気味で反応させ、通常、1.1〜2倍当量、好ましくは1.2〜1.5倍当量で使用する。このとき、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソール等の水と共沸する溶媒を共存させて、反応の進行を促進させることが好ましい。
次いで、前記ビスフェノールのアルカリ金属塩と、電子吸引性基等で活性化されたフッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された芳香族ジハライド化合物とを反応させる。前記芳香族ジハライド化合物としては、例えば、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、4−フルオロフェニル−4’−クロロフェニルスルホン、ビス(3−メチル−4−クロロフェニル)スルホン、ヘキサフルオロベンゼン、デカフルオロビフェニル等を挙げることができる。
前記芳香族ジハライド化合物は、前記ビスフェノールのアルカリ金属塩に対して0.33〜0.999倍モル、好ましくは0.5〜0.999倍モルの量で用いる。このように、前記芳香族ジハライド化合物に対して前記ビスフェノールのアルカリ金属塩を過剰に加えることで、両末端にビスフェノールのアルカリ金属塩を備える前駆体が生成する。ここで、前記芳香族ジハライド化合物と前記ビスフェノールのアルカリ金属塩との反応モル比を変えることにより、生成する前記前駆体の分子量の調整を行うことができる。
一般式(4)においてXが塩素原子である場合には、最後に、両末端にクロロベンゾイル基を導入するために、ジクロロベンゾフェノン類を加えて、前記前駆体と反応させる。前記ジクロロベンゾフェノン類としては、例えば、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,4’−ジクロロベンゾフェノン、2,2’−ジクロロベンゾフェノン等を挙げることができるが、4,4’−ジクロロベンゾフェノンが好ましい。
前記ジクロロベンゾフェノン類は、前記前駆体に対して、2倍モル以上加えることが必要であり、好ましくは3〜10倍モルの量を加える。前記ジクロロベンゾフェノン類の添加量が前記前駆体に対して2倍モルを下回る場合には、前記前駆体の末端へのクロロベンゾイル基の導入が不完全となり、次工程のポリアリーレンの合成時に共重合性が低下して単独重合体の生成を招くことになる。
前記ジクロロベンゾフェノン類と、前記前駆体との反応は、反応温度が60℃〜300℃、好ましくは80℃〜250℃の範囲で、反応時間が15分〜100時間、好ましくは1時間〜24時間の範囲で行われる。
前記反応により得られたオリゴマー乃至ポリマーは、ポリマーの一般的な精製方法、例えば、溶解−沈殿の操作によって精製することができる。クロロベンゾイル基を分子末端に備えるオリゴマーまたはポリマーの具体的な化合物として、例えば、次の化合物を挙げることができる。
Figure 2006179256
一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物との共重合反応において、一般式(3)で表される化合物の使用量は、全量に対して99.999〜10モル%、好ましくは99.9〜20モル%の範囲であり、一般式(4)で表される化合物の使用量は、全量に対して0.001〜90モル%、好ましくは0.1〜80モル%の範囲である。
前記共重合反応に使用される触媒は、遷移金属化合物を含む触媒系であり、この触媒系は、遷移金属塩及び配位子となる化合物(以下、配位子成分という)、または配位子が配位された遷移金属錯体(銅塩を含む)と、還元剤とを必須成分とし、さらに、重合速度を上げるために、塩を添加してもよい。
ここで、遷移金属塩としては、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート等のニッケル化合物、塩化パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム等のパラジウム化合物、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄等の鉄化合物、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト等のコバルト化合物等を挙げることができる。前記遷移金属塩のうち、特に、塩化ニッケル、臭化ニッケル等が好ましい。
また、前記配位子成分としては、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジン、1,5−シクロオクタジエン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン等を挙げることができる。これらのうち、トリフェニルホスフィン、2,2'−ビピリジンが好ましい。前記配位子成分である化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
さらに、前記配位子が配位された遷移金属錯体としては、例えば、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、臭化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、ヨウ化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、硝酸ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、臭化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ヨウ化ニッケル(2,2'−ビピリジン)、硝酸ニッケル(2,2'−ビピリジン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスファイト)ニッケル、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等を挙げることができる。前記配位子が配位された遷移金属錯体のうち、塩化ニッケルビス(トリフェニルホスフィン)、塩化ニッケル(2,2'−ビピリジン)が好ましい。
前記触媒系に使用することができる還元剤としては、例えば、鉄、亜鉛、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウム等を挙げることができる。前記還元剤のうち、亜鉛、マグネシウム、マンガンが好ましい。前記還元剤は、有機酸等の酸に接触させることにより、さらに活性化して用いることができる。
また、前記触媒系において使用することのできる前記塩としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のナトリウム化合物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウム等のカリウム化合物、フッ化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、硫酸テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム化合物等を挙げることができる。前記塩のうち、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムが好ましい。
前記触媒系において、遷移金属塩または遷移金属錯体の使用割合は、一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物との合計1モルに対し、通常、0.0001〜10モル、好ましくは0.01〜0.5モルである。0.0001モル未満では、重合反応が十分に進行しないことがあり、一方、10モルを超えると、分子量が低下することがある。
前記触媒系において、遷移金属塩及び配位子成分を用いる場合、この配位子成分の使用割合は、前記遷移金属塩1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、触媒活性が不十分となることがあり、一方、100モルを超えると、分子量が低下することがある。
また、前記触媒系において、還元剤の使用割合は、一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物との合計1モルに対し、通常、0.1〜100モル、好ましくは1〜10モルである。0.1モル未満では、重合が十分進行しないことがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難になることがある。
さらに、前記触媒系において、前記塩を使用する場合、その使用割合は、一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物との合計1モルに対し、通常、0.001〜100モル、好ましくは0.01〜1モルである。0.001モル未満では、重合速度を上げる効果が不十分であることがあり、100モルを超えると、得られる重合体の精製が困難となることがある。
前記共重合反応に使用することのできる重合溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、スルホラン、γ−ブチロラクタム、ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等を挙げることができる。これらのうち、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。前記重合溶媒は、十分に乾燥してから用いることが好ましい。
重合溶媒中における前記一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物との合計の濃度は、通常、1〜90重量%、好ましくは5〜40重量%である。また、重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは50〜120℃であり、重合時間は、通常、0.5〜100時間、好ましくは1〜40時間である。
前記のようにして得られるポリアリーレン系共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCと略記する)により求められるポリスチレン換算重量平均分子量で、1万〜100万、好ましくは2万〜80万である。ポリスチレン換算重量平均分子量が1万未満では、成形フィルムにクラックが発生する等、塗膜性が不十分であり、また強度的性質にも問題がある。一方、ポリスチレン換算重量平均分子量が100万を超えると、溶解性が不十分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になる等の問題がある。
前記共重合反応において、前記一般式(3)で表される化合物がスルホン酸基またはスルホン酸エステル基を含んでいなかった場合には、得られたポリアリーレン系共重合体に、スルホン化剤を用いて常法によりスルホン酸基を導入することにより、該ポリアリーレン系共重合体のスルホン化物を得ることができる。
前記スルホン酸基を導入する方法としては、例えば、前記ポリアリーレン系共重合体を、無水硫酸、発煙硫酸、クロルスルホン酸、硫酸、亜硫酸水素ナトリウム等の公知のスルホン化剤を用いて、公知の条件でスルホン化する方法により行うことができる(例えば非特許文献1〜3参照)。
すなわち、このスルホン化の反応条件としては、前記ポリアリーレン系共重合体を、無溶剤下または溶剤存在下で、前記スルホン化剤と反応させる。前記溶剤としては、例えば、n-ヘキサン等の炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような非プロトン系極性溶剤のほか、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。反応温度は特に制限はないが、通常、−50〜200℃、好ましくは−10〜100℃である。また、反応時間は、通常、0.5〜1,000時間、好ましくは1〜200時間である。
一方、前記共重合反応において、前記一般式(3)で表される化合物がスルホン酸エステル基を含んでいる、前記芳香族スルホン酸エステル誘導体であった場合には、前記ポリアリーレン系共重合体のスルホン酸エステル化物が得られる。そこで、この場合には、得られたポリアリーレン系共重合体のスルホン酸エステル化物を加水分解することにより、該ポリアリーレン系共重合体のスルホン化物を得ることができる。
前記ポリアリーレン系共重合体のスルホン酸エステル化物の加水分解の方法としては、少量の塩酸を含む過剰量の水またはアルコールに、前記ポリアリーレン系共重合体のスルホン酸エステル化物を投入し、5分間以上撹拌する方法、トリフルオロ酢酸中で、前記ポリアリーレン系共重合体のスルホン酸エステル化物を80〜120℃程度の温度で5〜10時間程度反応させる方法、ポリアリーレン系共重合体中のスルホン酸エステル基(−SO3R)1モルに対して、1〜3倍モルのリチウムブロマイドを含む溶液、例えばN−メチル−2−ピロリドン等の溶液中で、該共重合体を80〜150℃程度の温度で3〜10時間程度反応させた後、塩酸を添加する方法等を挙げることができる。
前記加水分解によれば、前記ポリアリーレン系共重合体のスルホン酸エステル化物のスルホン酸エステル基(−SOR)をスルホン酸基(−SO3H)に転換することにより、対応するスルホン化ポリアリーレンを得ることができる。前記スルホン化ポリアリーレンにおいては、ポリアリーレン系共重合体のスルホン酸エステル化物中のスルホン酸エステル基(−SOR)の90%以上が、スルホン酸基(−SOH)に転換していることが好ましい。
このようにして得られるスルホン化ポリアリーレン中の、スルホン酸基量は、0.5〜3meq/g、好ましくは0.8〜2.8meq/gである。0.5meq/g未満では、十分なプロトン伝導性が得られないことがあり、一方、3meq/gを超えると、親水性が向上し、水溶性ポリマーとなってしまうか、水溶性でなくとも熱水に可溶となってしまうか、または水溶性に至らずとも耐久性が低下することがある。
前記のスルホン酸基量は、前記一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物との使用割合、さらに前記一般式(3)で表される化合物と、一般式(4)で表される化合物との種類、組合せを変えることにより、容易に調整することができる。
尚、前記スルホン化ポリアリーレンの構造は、赤外線吸収スペクトルによって、1,030〜1,045cm−1、1,160〜1,190cm−1のS=O吸収、1,130〜1,250cm−1のC−O−C吸収、1,640〜1,660cm−1のC=O吸収等により確認することができ、これらの組成比は、スルホン酸の中和滴定や、元素分析により知ることができる。また、前記ポリアリーレン系共重合体のスルホン化物の構造は、核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)により、6.8〜8.0ppmの芳香族プロトンのピークから確認することができる。
固体高分子電解質膜1は、前記スルホン化ポリアリーレンを溶剤に溶解して溶液とした後、基体上に流延してフィルム状に成形するキャスティング法等により、フィルム状に成形することにより製造することができる。固体高分子電解質膜1は、プロトン伝導性を損なわない範囲で、フェノール性水酸基含有化合物、アミン系化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物等の酸化防止剤等を含んでもよい。また、固体高分子電解質膜1は、前記フィルム状に成形する際に、前記スルホン化ポリアリーレン以外に、硫酸、リン酸等の無機酸、カルボン酸を含む有機酸、適量の水等を併用してもよい。
前記基体としては、通常の溶液キャスティング法に用いられる基体であれば特に限定されず、例えばプラスチック製、金属製等の基体を用いることができる。前記基体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の熱可塑性樹脂からなることが好ましい。
前記スルホン化ポリアリーレンを溶解する溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチル尿素、ジメチルイミダゾリジノン等の非プロトン系極性溶剤を挙げることができ、特に溶解性、溶液粘度の面から、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記する)が好ましい。前記非プロトン系極性溶剤は、1種単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
また、前記スルホン化ポリアリーレンを溶解させる溶媒として、前記非プロトン系極性溶剤とアルコールとの混合物も用いることができる。前記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等を挙げることができ、特にメタノールが幅広い組成範囲で溶液粘度を下げる効果があり好ましい。前記アルコールは、1種単独で用いることもでき、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前記溶媒として、非プロトン系極性溶剤とアルコールとの混合物を用いる場合には、非プロトン系極性溶剤が95〜25重量%、好ましくは90〜25重量%、アルコールが5〜75重量%、好ましくは10〜75重量%(但し、合計100重量%)からなることが好ましい。アルコールの量が前記範囲内にあることにより、溶液粘度を下げる点で優れた効果を得ることができる。
スルホン化ポリアリーレンを溶解させた溶液のポリマー濃度は、該スルホン化ポリアリーレンの分子量にもよるが、通常、5〜40重量%、好ましくは7〜25重量%である。前記溶液のポリマー濃度が5重量%未満では、厚膜化し難く、また、ピンホールが生成しやすい。一方、前記溶液のポリマー濃度が40重量%を超えると、溶液の粘度が高すぎてフィルム化し難く、また、得られたフィルムが表面平滑性に欠けることがある。
尚、前記溶液の粘度は、前記スルホン化ポリアリーレンの分子量や、ポリマー濃度にもよるが、通常、2,000〜100,000mPa・s、好ましくは3,000〜50,000mPa・sである。前記溶液の粘度が2,000mPa・s未満では、成膜中の溶液の滞留性が悪く、基体から流れてしまうことがある。一方、前記溶液の粘度が100,000mPa・sを超えると、粘度が高過ぎて、ダイからの押し出しができず、流延法によるフィルム化が困難となることがある。
前記のようにして成膜した後、得られた未乾燥フィルムを水に浸漬すると、未乾燥フィルム中の有機溶剤を水と置換することができ、得られる固体高分子電解質膜1の残留溶媒量を低減することができる。
尚、成膜後、未乾燥フィルムを水に浸漬する前に、未乾燥フィルムを予備乾燥してもよい。前記予備乾燥は、未乾燥フィルムを通常50〜150℃の温度で、0.1〜10時間保持することにより行うことができる。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際は、枚葉を水に浸漬するバッチ方式であってもよく、通常得られる基板フィルム(例えば、PET)上に成膜された状態の積層フィルムのまま、または基板から分離した膜を水に浸漬させて、巻き取っていく連続方式でもよい。バッチ方式の場合は、処理フィルムを枠にはめる等の方式を用いることにより、処理されたフィルムの表面の皺形成が抑制されるので好都合である。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際には、未乾燥フィルム1重量部に対し、水が10重量部以上、好ましくは30重量部以上の接触比となるようにすることが好ましい。得られる固体高分子電解質膜1の残存溶媒量をできるだけ少なくするためには、できるだけ大きな接触比を維持することが好ましい。また、浸漬に使用する水を交換したり、オーバーフローさせたりして、常に水中の有機溶媒濃度を一定濃度以下に維持しておくことも、得られる固体高分子電解質膜1の残存溶媒量を低減するために有効である。また、水中の有機溶媒濃度を撹拌等によって均質化させることは、固体高分子電解質膜1中に残存する有機溶媒量の面内分布を小さく抑えるために効果がある。
未乾燥フィルムを水に浸漬する際の水の温度は、好ましくは5〜80℃の範囲である。高温ほど、有機溶媒と水との置換速度は速くなるが、フィルムの吸水量も大きくなるので、乾燥後に得られる固体高分子電解質膜1の表面状態が荒れるおそれがある。通常、置換速度と取り扱いやすさとから10〜60℃の温度範囲が好都合である。浸漬時間は、初期の残存溶媒量や接触比、処理温度にもよるが、通常10分〜240時間の範囲であり、30分〜100時間の範囲であることが好ましい。
前記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後乾燥すると、残存溶媒量が低減された固体高分子電解質膜1が得られるが、このようにして得られる固体高分子電解質膜1の残存溶媒量は、通常5重量%以下である。
また、浸漬条件によっては、得られる固体高分子電解質膜1の残存溶媒量を1重量%以下とすることができる。このような条件としては、例えば、未乾燥フィルムと水との接触比を、未乾燥フィルム1重量部に対し、水が50重量部以上、浸漬する際の水の温度を10〜60℃、浸漬時間を10分〜10時間とする。
前記のように未乾燥フィルムを水に浸漬した後、フィルムを30〜100℃、好ましくは50〜80℃で、10〜180分、好ましくは15〜60分乾燥し、次いで、50〜150℃で、好ましくは500mmHg〜0.1mmHgの減圧下、0.5〜24時間、真空乾燥することにより、固体高分子電解質膜1を得ることができる。
本実施形態の方法により得られる固体高分子電解質膜1は、その乾燥膜厚が、通常10〜100μm、好ましくは20〜80μmである。
また、固体高分子電解質膜1は、前記ポリアリーレン系共重合体のスルホン酸エステル化物を加水分解することなく、上述したような方法でフィルム状に成形した後、前記と同様の方法で加水分解することにより製造することもできる。
固体高分子電解質膜1は、老化防止剤、好ましくは分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物を含有してもよい。固体高分子電解質膜1は、前記老化防止剤を含有することにより耐久性をさらに向上させることができる。
前記分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(商品名:IRGANOX 1076)、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチルー4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:IRGAONOX 1098)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト(商品名:IRGANOX 3114)、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA-80)等を挙げることができる。
前記分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物は、前記スルホン化ポリアリーレン100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲で使用することが好ましい。
次に、前記電極触媒層2は、触媒とイオン伝導性高分子電解質とからなる。
前記触媒としては細孔の発達したカーボン材料に白金または白金合金を担持させた担持触媒が好ましい。細孔の発達したカーボン材料としては、カーボンブラックや活性炭等を好ましく使用することができる。前記カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等を挙げることができ、また前記活性炭としては、種々の炭素原子を含む材料を炭化、賦活処理して得られたもの等を挙げることができる。また、これらのカーボン材料に黒鉛化処理を施したものを用いてもよい。
前記触媒は、カーボン担体に白金を担持させたものであってもよいが、白金合金を使用することにより、さらに電極触媒としての安定性や活性を付与することもできる。前記白金合金としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム等の白金以外の白金族金属、コバルト、鉄、チタン、金、銀、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ケイ素、レニウム、亜鉛、スズからなる群から選ばれる1種以上の金属と白金との合金が好ましい。前記白金合金には、白金と合金化される金属との金属間化合物が含有されていてよい。
白金または白金合金の担持率(担持触媒の全質量に対する白金または白金合金の質量の割合)は、高出力を得るために、20〜80質量%、特に30〜55質量%の範囲であることが好ましい。前記担持率が20質量%未満では、充分な出力を得られないおそれがあり、80質量%を超えると、白金または白金合金の粒子を分散性よく担体となるカーボン材料に担持できないおそれがある。
また、白金または白金合金の一次粒子径は、高活性なガス拡散電極を得るためには1〜20nmであることが好ましく、特に反応活性の点で白金または白金合金の表面積を大きく確保できる2〜5nmであることが好ましい。また、白金または白金合金は触媒粒子中に0.01〜1.0mg/cmの範囲で含まれていることが好ましい。
電極触媒層2は、前記担持触媒に加え、スルホン酸基を備えるイオン伝導性高分子電解質を含む。通常、前記担持触媒は前記高分子電解質により被覆されており、該高分子電解質の繋がっている経路を通ってプロトン(H)が移動する。
スルホン酸基を備えるイオン伝導性高分子電解質としては、固体高分子電解質膜1との間で優れた接着性を得ることができることから、パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物が好適に用いられる。前記パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物としては、例えば、デュポン社製ナフィオン(商品名)、旭硝子株式会社製フレミオン(商品名)、旭化成株式会社製アシプレックス(商品名)等を挙げることができる。尚、前記イオン伝導性高分子電解質として、前記パーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物に代えて、本明細書に記載のスルホン化ポリアリーレン等の芳香族系炭化水素化合物を主とするイオン伝導性高分子電解質を用いてもよい。
本実施形態において、膜−電極構造体は、アノード、カソードの電極触媒層2,2と、電極触媒層2,2に挟持される固体高分子電解質膜1とのみからなっていてもよいが、アノード、カソードともに電極触媒層2の外側にカーボンペーパーやカーボンクロスのような導電性多孔質基材からなるガス拡散層3が配置されるとさらに好ましい。また、この導電性多孔質基材は撥水化加工処理を施してもよい。さらに、このガス拡散層3には、カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子を混合したスラリーを塗布する等して、撥水性を付与した下地層を形成してもよい。ガス拡散層3は集電体としても機能するので、本明細書ではガス拡散層3を備える場合はガス拡散層3と電極触媒層2とを合わせて電極というものとする。
図1に示す膜−電極構造体を備える固体高分子型燃料電池では、カソードには酸素を含むガス、アノードには水素を含むガスが供給される。具体的には、例えばガスの流路となる溝が形成されたセパレータを膜−電極構造体の両方の電極(ガス拡散層3)の外側に配置し、該ガスの流路にガスを流すことにより膜−電極構造体に燃料となるガスを供給する。
図1に示す膜−電極構造体を製造する方法としては、固体高分子電解質膜1の上に電極触媒層2を直接形成し必要に応じガス拡散層3で挟み込む方法、カーボンペーパー等のガス拡散層3となる基材上に電極触媒層2を形成しこれを固体高分子電解質膜1と接合する方法、平板上に電極触媒層2を形成しこれを固体高分子電解質膜1に転写した後、平板を剥離し、さらに必要に応じガス拡散層3で挟み込む方法等の各種の方法を採用することができる。より好ましくは、固体高分子電解質膜1上に電極触媒層2を直接形成する方法を挙げることができる。
電極触媒層2の形成方法としては、担持触媒とスルホン酸基を備えるパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物とを分散媒に分散させた分散液を用いて(必要に応じて撥水剤、造孔剤、増粘剤、希釈溶媒等を加え)、固体高分子電解質膜1、ガス拡散層3、または平板上に噴霧、塗布、濾過等により形成させる公知の方法が採用できる。電極触媒層2を固体高分子電解質膜1上に直接形成しない場合は、電極触媒層2と固体高分子電解質膜1とは、ホットプレス法、接着法等により接合することが好ましい(例えば特許文献2参照)。
次に、本発明の実施例と比較例とを示す。
本実施例では、まず、攪拌機、温度計、Dean-stark管、窒素導入管、冷却管を取り付けた1リットルの三口フラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン29.8g(104ミリモル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン37.4g(111ミリモル)、炭酸カリウム20.0g(145ミリモル)を秤り取った。窒素置換後、スルホラン168ミリリットル、トルエン84ミリリットルを加えて撹拌した。その後、オイルバスを用い、150℃で反応液を加熱還流させた。反応によって生成する水はDean-stark管で系外に除去した。前記加熱還流を3時間続けた後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean-stark管で系外に除去した。その後、反応温度を徐々に上げて200℃とし、5時間撹拌を続けた後、4,4’−ジクロロベンゾフェノン7.5g(30ミリモル)を加え、さらに8時間反応させた。
反応液を放冷後、トルエン100ミリリットルを加えて稀釈した。反応液に不溶の無機塩を濾過し、濾液をメタノール2リットルに注いで生成物を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過、乾燥後、テトラヒドロフラン(THF)250ミリリットルに溶解し、これをメタノール2リットルに注いで再沈殿させた。沈殿した白色粉末を濾過、乾燥し、目的の化合物109gを得た。
次に、前記のようにして得られた化合物について、溶剤としてTHFを用い、GPCにより、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を求めた。得られた化合物のMnは10,500であった。得られた化合物は、H−NMRスペクトルから、末端にクロロベンゾイル基が導入された次式(I)で表されるオリゴマーであることを確認した。
Figure 2006179256
次に、攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた1リットルの三口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル135.5g(338ミリモル)、前記式(I)で表されるMn10,500のオリゴマー44.5g(4.2ミリモル)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド6.71g(10.3ミリモル)、ヨウ化ナトリウム1.54g(10.3ミリモル)、トリフェニルホスフィン35.9g(136ミリモル)、亜鉛53.7g(820ミリモル)を秤り取り、乾燥窒素置換した。これに、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)430ミリリットルを加え、反応温度を80℃に保持しながら3時間撹拌を続けた後、DMAc730ミリリットルを加えて稀釈し、不純物を濾過した。
得られた溶液を攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた2リットルの三口フラスコに入れた。これを115℃に加熱して撹拌し、臭化リチウム44g(506ミリモル)を加えた。7時間撹拌後、反応液をアセトン5リットルに注いで生成物を沈殿させた。次いで、1M塩酸、純水の順で洗浄後、乾燥して、目的の重合体122gを得た。
次に、前記のようにして得られた重合体について、溶剤として臭化リチウムとリン酸とを添加したNMPを溶離液として用い、GPCによって、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。得られた重合体のMwは170,000であった。得られた重合体は、H−NMRスペクトルから、次式(II)で表されるスルホン化ポリアリーレンであると推定された。
Figure 2006179256
次に、本実施例で得られたスルホン化ポリアリーレンの8重量%NMP溶液をガラス板上にキャストして、製膜した。風乾後、さらに真空乾燥し、乾燥膜厚40μmのフィルムを得た。
次に、前記フィルムを用いて、次の手順で膜−電極構造体を作成した。
まず、平均径50nmのカーボンブラック(ファーネスブラック)に白金粒子を、カーボンブラック:白金=1:1の重量比で担持させ、触媒粒子を作成した。次に、イオン伝導性バインダーとしてのパーフルオロアルキレンスルホン酸高分子化合物(デュポン社製ナフィオン(登録商標))溶液に、前記触媒粒子を、イオン伝導性バインダー:触媒粒子=8:5の重量比で均一に分散させ、触媒ペーストを調製した。
次に、カーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子とを、カーボンブラック:PTFE粒子=4:6の重量比で混合し、得られた混合物をエチレングリコールに均一に分散させたスラリーをカーボンペーパーの片面に塗布、乾燥させて下地層とし、該下地層とカーボンペーパーとからなるガス拡散層を2つ作製した。
次に、前記フィルムを固体高分子電解質膜として、該固体高分子電解質膜の両面に、前記触媒ペーストを、白金含量が0.5mg/cmとなるようにバーコーター塗布し、乾燥させることにより電極触媒層を形成して、電極塗布膜(CCM)を得た。前記乾燥は、100℃で15分間の乾燥を行った後、140℃で10分間の二次乾燥を行った。
次に、前記CCMを、前記ガス拡散層の下地層側で挟持し、ホットプレスを行って膜−電極構造体を得た。前記ホットプレスは、80℃、5MPaで2分間の一次ホットプレスの後、160℃、4MPaで1分間の二次ホットプレスを行った。
本実施例で得られた膜−電極構造体は、前記ガス拡散層上に、さらにガス通路を兼ねるセパレーターを積層することにより、固体高分子型燃料電池を構成することができる。
次に、本実施例で得られた前記スルホン化ポリアリーレン、固体高分子電解質膜、膜−電極構造体の物性と、該膜−電極構造体の発電特性とを、次のようにして評価した。結果を表1に示す。
〔スルホン化ポリアリーレンのイオン交換容量〕
得られたスルホン化ポリアリーレンを、水洗水がpH4〜6になるまで洗浄して、残存している遊離の酸を除去し、十分に水洗して乾燥した後、所定量を秤量してTHFと水との混合溶剤に溶解した。次に、フェノールフタレインを指示薬としてNaOHの標準液にて滴定し、中和点から前記スルホン化ポリアリーレンのイオン交換容量を求めた。
〔固体高分子電解質膜のプロトン伝導率〕
前記固体高分子電解質膜を5mm幅の短冊状としたものを試料として、85℃、相対湿度90%の恒温恒湿装置中に保持し、該試料の表面に白金線(直径0.5mm)を等間隔で5本押し当て、線間距離を5〜20mmに変化させて抵抗測定装置により交流抵抗を測定した。前記恒温恒湿装置には、エスペック社製小型環境試験機SH−241(商品名)を用い、前記抵抗測定装置には、ソーラートロン(Solartron)社製SI1260インピーダンスアナライザ(商品名)を用いた。
線間距離と抵抗の勾配とから次式により前記固体高分子電解質膜の比抵抗を算出し、比抵抗の逆数から交流インピーダンスを算出し、交流インピーダンスから該固体高分子電解質膜のプロトン伝導率を算出した。
比抵抗R(Ω・cm)=0.5(cm)×膜厚(cm)×抵抗線間勾配(Ω/cm)
〔固体高分子電解質膜の耐熱水性〕
前記固体高分子電解質膜を2.0cm×3.0cmに裁断し、秤量して試料とした。前記試料を、ポリカーボネート製の250ミリリットル瓶に入れ、約100ミリリットルの蒸留水を加えて、プレッシャークッカー試験機(HIRAYAMA MFS CORP社製PC242HS(商品名))を用いて、120℃で24時間加熱して熱水処理した。
次に、前記試料を熱水中から取り出し、該試料の寸法を測定して、前記熱水処理前の該試料の寸法に対する寸法変化率を求めた。また、前記熱水処理後の前記試料を真空乾燥機で5時間乾燥した後、秤量し、該熱水処理前の該試料の重量に対する重量保持率を求め、前記固体高分子電解質膜の耐熱水性の指標とした。
〔固体高分子電解質膜のフェントン試薬耐性〕
前記固体高分子電解質膜を3.0cm×4.0cmに裁断したものを秤量して試料とした。次に、3重量%の過酸化水素に、硫酸鉄・七水和物を鉄イオンの濃度が20ppmになるように混合して、フェントン試薬を調製した。250ミリリットルのポリエチレン製容器に200gのフェントン試薬を採取し、前記試料を投入した後、該容器を密栓し、45℃の恒温水槽に10時間浸漬させた。その後、前記試料を取り出し、イオン交換水にて洗浄し、25℃、相対湿度50%で12時間乾燥した後、秤量し、処理前の該試料の重量に対する重量保持率を求め、前記固体高分子電解質膜のフェントン試薬耐性の指標とした。
〔膜−電極構造体の発電特性〕
前記膜−電極構造体を用いて、温度70℃で、燃料極側の相対湿度を60%、酸素極側の相対湿度を40%とした発電条件により、燃料極側には純水素を、酸素極側には空気を供給して発電を行い、電流密度1A/cmとしたときのセル電位を求め、該膜−電極構造体の発電性能の指標とした。
また、前記膜−電極構造体を用いて、セル温度100℃で、燃料極側、酸素極側の相対湿度を共に30%とした発電条件により、前記と同一にして発電を行い、電流密度0.1A/cmとしたときに、クロスリークに至るまでの時間を計測して、該膜−電極構造体の発電耐久性の指標とした。
本実施例では、まず、攪拌機、温度計、Dean-stark管、窒素導入管、冷却管を取り付けた1リットルの三口フラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン28.8g(100ミリモル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン38.6g(115ミリモル)、炭酸カリウム20.6g(149ミリモル)を秤り取った。窒素置換後、スルホラン170ミリリットル、トルエン84ミリリットルを加えて撹拌した。その後、オイルバスを用い、150℃で反応液を加熱還流させた。反応によって生成する水はDean-stark管で系外に除去した。前記加熱還流を3時間続けた後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean-stark管で系外に除去した。その後、反応温度を徐々に上げて200℃とし、5時間撹拌を続けた後、4,4’−ジクロロベンゾフェノン14.4g(57ミリモル)を加え、さらに8時間反応させた。
反応液を放冷後、トルエン100ミリリットルを加えて稀釈した。反応液に不溶の無機塩を濾過し、濾液をメタノール2リットルに注いで生成物を沈殿させた。沈殿した生成物を濾過、乾燥後、THF250ミリリットルに溶解し、これをメタノール2リットルに注いで再沈殿させた。沈殿した白色粉末を濾過、乾燥し、目的の化合物53gを得た。
次に、前記のようにして得られた化合物について、溶剤としてTHFを用い、GPCにより、ポリスチレン換算のMnを求めた。得られた化合物のMnは8,100であった。得られた化合物は、H−NMRスペクトルから、末端にクロロベンゾイル基が導入された前記式(I)で表されるオリゴマーであることを確認した。
次に、攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた1リットルの三口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル135.2g(337ミリモル)、前記式(I)で表されるMn8,100のオリゴマー41.6g(5.1ミリモル)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド6.71g(10.3ミリモル)、ヨウ化ナトリウム1.54g(10.3ミリモル)、トリフェニルホスフィン35.9g(136ミリモル)、亜鉛53.7g(820ミリモル)を秤り取り、実施例1と同様に処理して、目的の重合体125gを得た。
次に、前記のようにして得られた重合体について、溶剤として臭化リチウムとリン酸とを添加したNMPを溶離液として用い、GPCによって、ポリスチレン換算のMwを求めた。得られた重合体のMwは164,000であった。得られた重合体は、H−NMRスペクトルから、前記式(II)で表されるスルホン化ポリアリーレンであると推定された。
次に、本実施例で得られたスルホン化ポリアリーレンを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、膜−電極構造体を得た。
次に、本実施例で得られた前記スルホン化ポリアリーレン、固体高分子電解質膜、膜−電極構造体の物性と、該膜−電極構造体の発電特性とを、実施例1と全く同一にして評価した。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
本比較例では、まず、攪拌機、温度計、Dean-stark管、窒素導入管、冷却管を取り付けた1リットルの三口フラスコに、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン31.8g(111ミリモル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン35.0g(104ミリモル)、炭酸カリウム18.7g(135ミリモル)を秤り取った。窒素置換後、スルホラン168ミリリットル、トルエン84ミリリットルを加えて撹拌した。その後、オイルバスを用い、150℃で反応液を加熱還流させた。反応によって生成する水はDean-stark管で系外に除去した。前記加熱還流を3時間続けた後、水の生成がほとんど認められなくなったところで、トルエンをDean-stark管で系外に除去した。その後、反応温度を徐々に上げて200℃とし、5時間撹拌を続けた後、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン8.0g(27.7ミリモル)を加え、さらに8時間反応させた。
反応液を放冷後、実施例1と同様に処理して、目的の化合物53gを得た。
次に、前記のようにして得られた化合物について、溶剤としてTHFを用い、GPCにより、ポリスチレン換算のMnを求めた。得られた化合物のMnは12,500であった。得られた化合物は、H−NMRスペクトルから、末端にクロロベンゼンスルホニル基が導入された次式(III)で表されるオリゴマーであることを確認した。
Figure 2006179256
次に、攪拌機、温度計、窒素導入管を取り付けた1リットルの三口フラスコに、3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル135.5g(338ミリモル)、前記式(III)で表されるMn12,500のオリゴマー47.9g(4.3ミリモル)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド6.71g(10.3ミリモル)、ヨウ化ナトリウム1.54g(10.3ミリモル)、トリフェニルホスフィン35.9g(136ミリモル)、亜鉛53.7g(820ミリモル)を秤り取り、実施例1と同様に処理して、重合体124gを得た。
次に、前記のようにして得られた重合体について、溶剤として臭化リチウムとリン酸とを添加したNMPを溶離液として用い、GPCによって、ポリスチレン換算のMwを求めた。得られた重合体のMwは135,000であった。このとき、溶出曲線は2峰性であり、前記重合体は3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチルの単独重合体からなるスルホン化ポリアリーレンであることと推定された。
次に、本比較例で得られたスルホン化ポリアリーレンを用いた以外は、実施例1と全く同一にして、膜−電極構造体を得た。
次に、本比較例で得られた前記スルホン化ポリアリーレン、固体高分子電解質膜、膜−電極構造体の物性と、該膜−電極構造体の発電特性とを、実施例1と全く同一にして評価した。結果を表1に示す。
Figure 2006179256
表1から、主鎖骨格にスルホニル基(−SO−)を備える疎水性ユニットと、スルホン酸基導入ユニットとを共重合させて得られたスルホン化ポリアリーレンからなる固体高分子電解質膜(実施例1,2)によれば、前記疎水性ユニットを備えていないスルホン化ポリアリーレンからなる固体高分子電解質膜(比較例1)に比較して、優れたイオン交換容量、プロトン伝導度を得ることができ、しかも優れた熱水耐性、フェントン試薬耐性を得ることができることが明らかである。
さらに、表1から、実施例1,2の固体高分子電解質膜を用いる膜−電極構造体によれば優れた発電性能、発電耐久性を得ることができることが明らかである。
本発明の膜−電極構造体の一実施形態を示す説明的断面図。
符号の説明
1…固体高分子電解質膜、 2…電極触媒層、 3…ガス拡散層。

Claims (3)

  1. 固体高分子電解質膜を、触媒を含む1対の電極で挟持した固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体において、
    前記固体高分子電解質膜は、下記一般式(1)で表される第1の繰り返し単位と下記一般式(2)で表される第2の繰り返し単位とを備えるポリアリーレン系共重合体のスルホン化物からなることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
    Figure 2006179256
  2. 前記一般式(2)で表される第2の繰り返し単位は、下記一般式(2’)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体。
    Figure 2006179256
  3. 下記一般式(1)で表される第1の繰り返し単位と下記一般式(2)で表される第2の繰り返し単位とを含有するポリアリーレン系共重合体のスルホン化物からなる固体高分子電解質膜を、触媒を含む1対の電極で挟持した固体高分子型燃料電池用膜−電極構造体を備えることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
    Figure 2006179256
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