JP4150408B2 - 燃料電池用結着剤、電極形成用組成物、電極およびそれを用いた燃料電池 - Google Patents
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Description
Methanol Fuel Cell)も開発されている。このDMFCは、水素を発生させるための改質器が不要なためシンプルでコンパクトなシステムを構成とすることができ、特に携帯機器用電源として注目されている。
高分子電解質型燃料電池は、高分子電解質膜とこの両側に接触して配置される正極および負極から構成される。燃料の水素あるいはメタノールは負極において電気化学的に酸化されてプロトンと電子を生成する。このプロトンは高分子電解質膜内を、酸素が供給される正極に移動する。一方、負極で生成した電子は電池に接続された負荷を通り、正極に流れ、正極においてプロトンと電子が反応して水を生成する。そのため、電解質膜、膜と電極をつなぐ結着剤、水素やメタノールの酸化および酸素の還元反応を促進する触媒を固定する結着剤等として用いられる高分子材料には高いプロトン伝導性が求められる。さらに、電解質膜には燃料の水素やメタノールの遮断性が求められるが、電極用の触媒を固定する結着剤には触媒に燃料を供給する必要があるため逆にメタノールの透過性が求められる。また、電解質膜と電極の界面や、触媒と結着剤の界面の接着が不十分な場合、剥離界面でプロトン伝導が阻害されるため、これらに用いられる高分子材料には高い接着性が求められる。
高いプロトン伝導性を有する高分子材料としては、商品名Nafion(登録商標、デュポン社製)またはDow Chemical社製の高分子膜などのプロトン酸基含有フッ素系高分子化合物が知られている。しかしながら、このプロトン酸基含有フッ素系高分子化合物は、非常に高価格である、廃棄時に焼却するとフッ酸ガスが発生する、膜のメタノール遮断性が低いためDMFC用高分子電解質膜に不向きである、高温低湿度下ではプロトン伝導性が急激に低下するといった問題を有していた。
そのため、主鎖に脂肪族鎖を有さない、すなわち芳香族炭化水素系のプロトン酸基含有高分子化合物が数多く開発されてきた(例えば、非特許文献1)。なかでも、スルホン化した芳香族ポリエーテルからなる膜は、耐熱性と化学的耐久性に優れ、高分子電解質膜として長時間の使用に耐えうることが報告されている。さらに分子鎖間を架橋させたスルホン化芳香族ポリエーテル架橋膜は耐水性、耐メタノール溶解性に優れ、メタノール遮断性とプロトン伝導性を両立しているためDMFC用の高分子電解質膜に適している(例えば、特許文献1)。
剥離を抑制する方法としては接着性が高い膜を使用することや接着性が高い結着剤を使用することが挙げられられる。接着性が高い膜としては、表面を改質した膜、例えば表面を粗化した膜(例えば、特許文献2)、放電処理により表面を親水化した膜(例えば、特許文献3)等が報告されているが接着性の向上効果は不十分であった。
本発明は、プロトン酸基を有する2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックと、プロトン酸基を有さない2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックを含み、かつガラス転移温度(Tg)が180℃以下であるブロック共重合体を含むことを特徴とする燃料電池用結着剤に関する。前記ブロック共重合体は、イオン交換基当量が200〜1000g/molであり、かつ、64重量%メタノール水溶液に25℃で24時間浸漬し
たときの重量維持率が90%以上であることが好ましく、一般式(1)および一般式(2)で表される繰り返し構造単位を含んでなることが好ましい。
また本発明は、前記燃料電池用結着剤と電極材料を含有する燃料電池電極形成用組成物、その燃料電池電極形成用組成物からなる燃料電池用電極、および該燃料電池用電極を用いた燃料電池に関する。
本発明に係わる燃料電池用結着剤に含まれるブロック共重合体は、プロトン酸基を有する2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックと、プロトン酸基を有さない2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックを含み、かつガラス転移温度(Tg)が180℃以下であるブロック共重合体である。
連結基としては、直接結合、−CO−、−SO2−、−S−、−CH2−、−CF2−、−C(CH3)2−、−C(CF3)2−、−O−、−NH−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、9,9−フルオレン基などを挙げることができる。
−CnH2n−SO3H(nは0〜10の整数)…(3)
−CnH2n−COOH(nは0〜10の整数)…(4)
−CnH2n−PO3H2(nは0〜10の整数)…(5)
ここで、イオン交換基当量とは、プロトン酸基1モル当たりの樹脂重量で定義され、樹脂単位重量当たりのプロトン酸基のモル数の逆数を意味する。すなわち、イオン交換基当量が小さいほどブロック共重合体中の、プロトン酸基を有する2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックの割合は高くなり、イオン交換基当量が大きいほどプロトン酸基を有する2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックの割合が低くなる。イオン交換基当量が小さすぎる場合には、プロトン酸基を有さない2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックの割合が少なすぎるため、該ブロック共重合体の耐水性が不十分となり、吸水性が高くなり、電極と高分子電解質とが剥離しやすくなる場合がある。イオン交換基当量が大きすぎる場合には、プロトン酸基を有する2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックの割合が少なすぎるため、十分なプロトン伝導性を得ることができない場合がある。
[式(1)および(2)中、X1〜X5はそれぞれ独立して水素原子またはプロトン酸基を表し、X1〜X5 の少なくとも一つはプロトン酸基であり、A1〜A4はそれぞれ独立して直接結合,−CH2−,−C(CH3)2−,−C(CF3)2−,−O−,−SO2−または−CO−を表し、g,h,i,j,k,lはそれぞれ独立して0または1を表し、芳香環
の水素原子は、−CmH2m+1(mは1〜10の整数を表す),−Cl,−F,−CF3または−CNに置換していてもよい。]
一般式(2)を繰り返し構造単位とするブロックは、吸水性が低く且つ加水分解を受けにくい構造であり、プロトン伝導性共重合体の水への溶解や吸水膨張を抑制することができ好ましい。ここで、一般式(2)を繰り返し構造単位とするブロックは、一般式(2)で表わされる2種類以上の繰り返し構造単位を使用してもよい。一般式(2)を繰り返し構造単位とするブロックに、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、イミド結合やプロトン酸基を含むと、加水分解や吸水による膨張を受けやすくなり、共重合体の水への溶解性、吸水性が高くなるため好ましくない傾向にある。
)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼンなどが挙げられ、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
1421 (1998))により得ることができる。
繰り返し構造単位の例としては以下のものが挙げられる。
本発明のブロック共重合体の製造方法に特に制限はないが、例えば、以下の公知の方法で合成することができる。
(A)プロトン酸基を有するモノマーと、プロトン酸基を有しないモノマーまたは有するモノマーとを縮重合して、一般式(1)を繰り返し構造単位とするオリゴマーとする。そのオリゴマーと、一般式(2)を繰り返し構造単位とするオリゴマーまたはその原料モノマーとを縮重合させてブロック共重合体を得る方法。
(B)プロトン酸を有しないモノマーを縮重合して、一般式(2)を繰り返し構造単位とするオリゴマーとする。そのオリゴマーと、一般式(1)を構造単位とするオリゴマーまたはその原料モノマーとを縮重合させてブロック共重合体を得る方法。
(C)プロトン酸基を有しないモノマーを縮重合して前駆体オリゴマーとし、次にスルホン化等の方法で前駆体オリゴマーにプロトン酸基を導入して、一般式(1)を繰り返し構造単位とするオリゴマーとする。そのオリゴマーと、プロトン酸基を有しないモノマーまたはそのオリゴマーとを縮重合させてブロック共重合体を得る方法。
(D)プロトン酸基が導入され易い構造単位からなるブロックと、プロトン酸基が導入され難い一般式(2)を繰り返し構造単位とするブロックとを有する前駆体ブロック共重合体を合成する。この前駆体ブロック共重合体中の、プロトン酸基が導入され易い構造単位からなるブロックにのみスルホン化等の方法でプロトン酸基を導入して一般式(1)を繰り返し構造単位とするブロックとし、ブロック共重合体を得る方法。
本発明の燃料電池用結着剤は、前記のガラス転移温度(Tg)が180℃以下のプロトン酸基を有するブロック共重合体を含む。
この場合、燃料電池用結着剤中の本発明に係わるブロック共重合体の混合割合は5〜95重量%とすることが好ましく、さらに好ましくは10〜90重量%である。ブロック共重合体の混合量が少ない場合には電極材料や高分子電解質との接着性が低下する恐れがある。
本発明の燃料電池電極形成用組成物は、前記燃料電池用結着剤および電極材料を含有する。燃料電池電極形成用組成物に前記燃料電池用結着剤を含ませることで剥離強度をあげることができ、必要に応じて更に他の各種イオン伝導性高分子化合物を混合しても良い。
前記電極材料としては、電気導電性を有する導電材料や、水素の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する触媒などが挙げられる。
前記導電材料としては、電気伝導性物質であればいずれのものでもよく、各種金属や炭素材料などが挙げられる。例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛、鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウムおよびそれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらが単独あるいは混合して、粉末状あるいはシート状で使用される。
前記触媒としては、水素の酸化反応および酸素の還元反応を促進する金属または金属酸化物であれば特に限定されないが、例えば鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウムまたはそれらの合金や酸化モリブデン等の金属酸化物が挙げられる。
これらの電極材料と燃料電池用結着剤の混合比率は特に制限はないが、燃料電池用結着剤の比率が5〜90重量%であると電極の強度と効率が両立でき好ましい。
本発明に係わる燃料電池用電極は、集電材と前記燃料電池電極形成用組成物の層を結合したものからなり、燃料電池電極形成用組成物の層が電解質膜と接してなる。集電材は種々のものが考えられるがカーボンペーパーを用いるのが好ましい。
本発明に係わる燃料電池用電極は、種々の方法で得ることができるが、通常は、集電材に前記電極形成用組成物の溶液を塗布し、乾燥するのが容易に電極を得られることから好ましい。
本発明の燃料電池は、水素型燃料電池(PEFC)であっても直接メタノール型燃料電池(DMFC)であっても良いが、好ましくは直接メタノール型燃料電池である。本発明の燃料電池は、電解質膜、前記の燃料電池用結着剤及び燃料電池用電極を用いてなり、電解質膜と正負の電極との間にそれぞれ燃料電池用結着剤を有する構造をとる。本発明に係わる燃料電池に用いる電解質膜は、種々公知のものを用いることができるが、高分子化合物からなる電解質膜であることが好ましく、フッ素原子を含まないプロトン酸基含有炭化水素系高分子化合物を含むことが電極との剥離強度が強いことから好ましい。本発明の燃料電池は、湿度や温度の変動により、プロトン伝導材料の膨張及び収縮が繰り返された場合においても、膜と電極の界面や触媒と結着剤の界面が剥離することがないため、出力低下が生じにくい。本発明の燃料電池は、ガラス転移温度が180℃以下の結着剤を用いるので、電解質膜と電極を接合する際にプロトン酸基が脱落しない。そのため、高効率で信頼性に優れる。
実施例中の各種試験の試験方法は次に示すとおりである。
(i)還元粘度(ηinh)
ブロック共重合体0.50gをN−メチルピロリドン100mlに加熱溶解したのち、35℃においてウベローデ粘度計で測定した。
(ii)イオン交換基当量
フィルム状にした燃料電池用結着剤を密閉できるガラス容器中に精秤し、そこに過剰量の塩化カルシウム水溶液を添加して一晩攪拌した。系内に発生した塩化水素を0.1N水酸化ナトリウム標準水溶液にてフェノールフタレイン指示薬を用いて滴定し、計算した。(iii)64重量%メタノール水溶液浸漬による重量維持率
フィルム状にした燃料電池用結着剤を、窒素通風下120℃12時間乾燥し、25℃で64重量%メタノール水溶液に24時間浸漬し、その乾燥時との重量変化より算出した。(iv)イオン伝導度(25℃、膜厚方向)
フィルム状にした燃料電池用結着剤を、1M硫酸で湿潤し、1cm2の空孔を有する100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に白金電極を貼った測定用セル2個で挟み、空孔を1M硫酸水で満たした。これを25℃の恒温室内に設置してその抵抗値を測定した。結着剤を挟まなかった場合の抵抗値との差から、結着剤単体の抵抗値を求め、イオン伝導度(25℃、膜厚方向)を算出した。なお、イオン伝導度の計算に必要な膜厚は乾燥状態でマイクロメータを用いて測定した。
室温にて蒸留水と、1mol/Lメタノール水溶液を、直径23mmφのフィルム状にした燃料電池用結着剤を介して接し、3時間までの蒸留水側のメタノール濃度変化をガスクロにて測定した。得られたメタノール濃度増加直線の傾きより、膜厚50μmでのメタノール透過性を計算した。
(vi)ガラス転移温度(Tg)
ブロック共重合体又はオリゴマーを、示差走査熱量測定(DSC、島津製作所社製DSC−60A)により、昇温速度10℃/minで測定した。
ブロック共重合体のプロトン酸基がスルホン酸ナトリウムの場合は、試料を250℃迄昇温後に室温まで急冷し、次に室温から300℃迄昇温してガラス転移温度を測定した。ブロック共重合体のプロトン酸基がフリーのスルホン酸基の場合は、試料を170℃迄昇温して170℃で10分間保持した後に室温まで急冷し、次に室温から200℃迄昇温してガラス転移温度を測定した。
(vii)接着性評価
ブロック共重合体を溶解したワニス状の燃料電池用結着剤を、プロトン酸基含有炭化水素系化合物からなる高分子電解質膜および電極シートの双方に塗布し乾燥後、1MPa、燃料電池用共重合体のガラス転移温度+20℃の設定温度にて8分熱プレスし、高分子電解質膜と電極の接合体を作製した。得られた高分子電解質膜と電極の接合体を蒸留水に10分間浸漬後、引張り試験装置を用いて剥離速度10mm/minにてT形剥離を行い、平均剥離力を測定した。
窒素導入管、温度計、分液器を備えた冷却器、及び撹拌装置を備えたフラスコに、3,3’−カルボニルビス(6−フルオロベンゼンスルホン酸ナトリウム)(以下、DSDFBPと略す)4.22g(0.01mol)、4,4‘−ジフルオロベンゾフェノン2.18g(以下、DFBPと略す)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン5.69g(0.02mol)および無水炭酸カリウム3.46g(0.025mol)を精秤した。これにジメチルスルホキシド40gとトルエン28gを加え、窒素ガスを通じ撹拌しながら、130℃まで昇温した後、2時間共沸脱水を行い、生成する水を除去した後、トルエンを留去した。
引き続き160℃で14時間反応を行い、粘稠なポリマー溶液を得た。得られた溶液にジメチルスルホキシド60gを加えて希釈した後、ろ過した。このポリマー溶液をアセトン600gに排出し、析出したポリマー粉をろ過後、160℃で4時間乾燥してポリマー粉10.39g(収率92%)を得た。得られたポリエーテルケトンの対数粘度は0.85dl/g、ガラス転移温度は230℃であった。
1.プロトン酸基を有する2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックのオリゴマーの合成
窒素導入管、温度計、分液器を備えた冷却器、及び撹拌装置を備えたフラスコに、DSDFBP14.36g(0.034mol)、4,4‘−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)(以下TMBPFと略す)10.25g(0.04mol)および無水炭酸ナトリウム5.30g(0.05mol)を精秤した。これにN−メチルピロリドン(以下NMPと略す)98gを加え、窒素ガスを通じ撹拌しながら、202℃まで昇温した後、8時間反応を行った。冷却後、反応物の一部をサンプリングし、NMPで希釈、その上澄みをアセトンに排出してオリゴマーを析出させ、アセトンで洗浄したのち、窒素通風下150℃4時間乾燥してオリゴマーを得た。得られたオリゴマーの還元粘度は0.27dl/g(NMP)であった。
前記オリゴマーに、DFBP13.78g(0.063mol)、レゾルシン6.29g(0.057mol)、無水炭酸ナトリウム7.57g(0.071mol)およびNMP80gを添加し、窒素ガスを通じ撹拌しながら、202℃まで昇温した後、6時間反応を行った。
得られた粘稠な反応物をNMP50gで希釈した後、アセトン2Lに排出し、析出したポリマーを濾集、アセトン、蒸留水で洗浄した後、50℃で8時間乾燥させた後更に110℃で4時間乾燥してプロトン酸基のアルカリ金属塩基(スルホン酸ナトリウム基)を有するブロック共重合体36.0g(収率85%)を得た。得られたブロック共重合体の還元粘度は1.29dl/g(NMP)、ガラス転移温度は122℃であった。
得られたブロック共重合体2gをNMP13.3gに加熱溶解し、ポリマー濃度15%のワニスを得た。得られたワニスを、スペーサーを有するブレードを用いてガラス基板上にキャストし、窒素通風下室温から200℃まで2時間かけて昇温した後、更に4時間乾燥し、厚さ50μmのフィルムを得た。
得られたフィルムを2N硫酸水溶液および純水に1日ずつ浸漬してスルホン酸ナトリウム基のプロトン交換を行い、フリーのスルホン酸基を有する燃料電池用結着剤のフィルムを得た。この燃料電池用プロトン伝導性結着剤のフィルムのイオン交換基当量は570g/mol、64重量%メタノール水溶液浸漬による重量維持率は98%、イオン伝導度は0.037S/cm、メタノール透過性は4.8μmol/cm2・minであった。
得られたブロック共重合体ポリマー粉を2N硫酸水溶液および純水中にて1日ずつ撹拌してスルホン酸ナトリウム基のプロトン交換を行い、フリーのスルホン酸基を有するポリマー粉を得た。得られたフリーのスルホン酸基を有するブロック共重合体のガラス転移温度は121℃であった。プロトン交換されたブロック共重合体2gを水:1,2−ジメトキシエタン=25:75(重量比)38gに加熱溶解し、ポリマー濃度5%の燃料電池用プロトン伝導性結着剤のワニスを得た。このワニスを用いて、前記高分子電解質膜と市販電極(エレクトロケム社製EC−20−10−7)とを接着し、その平均剥離強度を測定したところ、11.6N/mであった。
ブロック共重合体を構成する、「プロトン酸基を有する2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロック」及び「プロトン酸基を有さない2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロック」のガラス転移温度は、それぞれのブロックをオリゴマー又はポリマーに生成して求める。
上記1で得られた「プロトン酸基を有する2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロック」のオリゴマーのガラス転移温度は、測定範囲では観察されなかった。
窒素導入管、温度計、分液器を備えた冷却器、及び撹拌装置を備えたフラスコに、DFBP21.82g(0.10mol)、レゾルシン10.57g(0.096mol)および無水炭酸ナトリウム11.02g(0.104mol)を精秤した。これにN−メチルー2−ピロリドン86.5gおよび純水1.8gを加え、窒素ガスを通じ撹拌しながら、200℃まで2時間かけて昇温した後、6時間反応を行った。この際、留出する水は分液器より回収した。得られた粘稠な反応マスを冷却、N−メチルー2−ピロリドン80gで希釈した後、セライト濾過により副生する塩を除去した。このポリマー溶液を、水−メタノール(5/5、wt/wt)混合液500mlに排出し、析出したポリマーを濾集、5wt%塩酸水溶液、純水、メタノールで洗浄した後、100℃4時間乾燥して実施例1のスルホン酸基を有しないブロックと同じ繰り返し単位からなるポリアリールエーテルケトン粉25.8g(収率90%)を得た。
得られたポリアリールエーテルケトン粉の還元粘度は0.56dl/g(溶剤:p-クロロフェノール/フェノール(9/1,wt/wt)混合液)、ガラス転移温度は118℃であった。
以上より、実施例1で得られたブロック共重合体のガラス転移温度はスルホン酸基を有しない2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックに由来するものであることは明らかである。
レゾルシンの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン13.01gを用いた他は実施例1と同様にして還元粘度1.40dl/g(NMP)、ガラス転移温度155℃のスルホン酸ナトリウム塩基を有するブロック共重合体を得た。
得られたブロック共重合体を用い、実施例1と同様にしてフリーのスルホン酸基を有する燃料電池用結着剤のフィルムを得た。得られた燃料電池用結着剤のフィルムのイオン交換基当量は590g/mol、64重量%メタノール水溶液浸漬による重量維持率は96%、イオン伝導度は0.036S/cm、メタノール透過性は4.9μmol/cm2・minであった。
また、得られたブロック共重合体を用い、実施例1と同様にしてフリーのスルホン酸基を有するポリマー粉を得た。得られたフリーのスルホン酸基を有するブロック共重合体のガラス転移温度は155℃であった。このポリマーを実施例1と同様にして溶解したワニスを用いたスルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋膜と市販電極(エレクトロケム社製EC−20−10−7)とを接着し、その平均剥離強度は11.1N/mであった。
レゾルシンの代わりに2−メチルハイドロキノン7.09gを用いた他は実施例1と同様にして還元粘度1.34dl/g(NMP)、ガラス転移温度143℃のスルホン酸ナトリウム塩基を有するブロック共重合体を得た。
得られたブロック共重合体を用い、実施例1と同様にしてフリーのスルホン酸基を有するフィルムを得た。得られたフィルムのイオン交換基当量は585g/mol、64重量メタノール水溶液浸漬による重量維持率は95%、イオン伝導度は0.038S/cm、メタノール透過性は5.1μmol/cm2・minであった。
得られたブロック共重合体を用い、実施例1と同様にしてフリーのスルホン酸基を有するポリマー粉を得た。得られたフリーのスルホン酸基を有するブロック共重合体のガラス転移温度は143℃であった。このポリマーを実施例1と同様にして溶解したワニスを用いたスルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋膜と市販電極(エレクトロケム社製
EC−20−10−7)とを接着し、その平均剥離強度は11.6N/mであった。
市販のプロトン酸基含有フッ素系高分子「ナフィオン(Nafion デュポン社の登録商標、ガラス転移温度は143℃)」を含むワニスを用い、スルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋膜と市販電極(エレクトロケム社製
EC−20−10−7)とを接着し、ワニスその平均剥離強度を測定したところ、0.2N/mであった。またナフィオンをフィルム状にした際のイオン交換基当量は、 1100g/molであった。
レゾルシンの代わりにTMBPF14.61gを用いた他は実施例1と同様にして還元粘度1.01dl/g(NMP)、ガラス転移温度210℃のスルホン酸ナトリウム塩基を有するブロック共重合体を得た。
得られたブロック共重合体を用い、実施例1と同様にしてフリーのスルホン酸基を有するフィルムを得た。得られたフィルムのイオン交換基当量は722g/mol、64重量メタノール水溶液浸漬による重量維持率は99%、イオン伝導度は0.016S/cm、メタノール透過性は1.1μmol/cm2・minであった。
得られたブロック共重合体を用い、実施例1と同様にプロトン交換してフリーのスルホン酸基を有するポリマー粉を得た。このポリマー粉を実施例1と同様にして溶解したワニスを用いてスルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋膜と市販電極(エレクトロケム社製EC−20−10−7)の接着を試みた。熱プレス設定温度230℃では、接着後の架橋膜は黒色に変色していた。熱プレス設定温度140℃では膜の変色は見られなかったが、接着体の平均剥離強度は0.8N/mであった。
実施例1で得られた燃料電池用結着剤のワニスを接着剤として、図1の燃料電池を以下のように作成した。スルホン酸基含有ポリエーテルケトン架橋膜を電解質膜1、市販電極エレクトロケム社製
EC−20−10−7を電極2、エレクトロケム社製EC−20−C−7RUを電極2’に用いて、電極2/電解質膜1/電極2’の順番に積層し、あらかじめ80℃に加熱した熱プレスに導入し、0.8MPaで電極面にのみ加圧した。その後、加
圧した状態のまま、80℃から140℃まで8分かけて昇温させ140℃にて5分間保持した。接合後の電解質膜電極接合体はほぼ乾燥状態であったが、電極の剥離はなかった。
セル組み立て後、図2のような燃料電池評価装置を使用して、1Mメタノール水溶液を燃料として電池特性を測定した。発電条件は燃料電池温度80℃、メタノール水溶液流量2cc/min、空気圧力0.05MPa、空気流量100sccm。最大約7.4mW/cm 2 の出力を得た(電圧0.20V、電流36mA/cm 2 )。
図2において、燃料電池セル8の中には図1の燃料電池が組み込んである。図の上側のラインでは、メタノール水溶液を送液ポンプ12により燃料電池セル8を通して左側から右側に送液している。また、下側のラインでは、空気を加湿用バブリングタンク9により加湿した状態で8を通して左側から右側に通気している。燃料極側の流路6をメタノール水溶液が、空気極側の流路6を空気が流れる様になっている。それぞれの流量はマスフローコントローラー11で制御する。メタノール水溶液および空気を流すことにより生じる電圧および電流密度を電子負荷10で測定することにより燃料電池を評価する仕組みになっている。発電試験後のセルを分解し、電解質膜電極接合体を観察したが、電解質膜と電極の剥離はなかった。
5−1)空気極(正極)の作製
実施例1で得られたプロトン交換されたブロック共重合体粉末0.5gを結着剤として、蒸留水5.0g、テトラヒドロフラン4.5gの混合溶媒に溶解したワニス10gを石福金属興業社製の20wt%Pt担持触媒(名称:IFPC20)0.5gと混合し、超音波印加ののち撹拌し、空気極触媒用の電極形成用組成物とした。
東レ製カーボンペーパー(品番:TGP−H−060)の上にアプリケータを用いて、電極形成用触媒組成物を塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cm 2 に切り出し電極とした。触媒塗工量はPt量で2mg/cm 2 とした。
実施例1で得られたプロトン交換されたブロック共重合体粉末0.5gを結着剤として、蒸留水5.0g、テトラヒドロフラン4.5gの混合溶媒に溶解したワニス10gを石福貴金属製の30wt%PtRu担持触媒(名称:IFPC30A)0.5gと混合し、超音波印加ののち撹拌し、燃料極触媒用の電極形成用組成物とした。
東レ(株)製カーボンペーパー(品番:TGP−H−060)の上に電極形成用触媒組成物を塗工し、70℃で12時間真空乾燥した後、5cm 2 に切り出し電極とした。触媒塗工量はPtRu量で2mg/cm 2 とした。
5−1で作製した電極を電極2に、5−2で作製した電極を電極2’として用い、他は実施例4と同様にして電解質膜電極接合体を作製した。電極の剥離はなかった。実施例4と同様にして1Mメタノール水溶液を燃料として発電試験を実施したところ、電池特性を測定した。最大約6.1mW/cm 2 の出力を得た(電圧0.19V、電流32mA/cm 2 )。発電試験後のセルを分解し、電解質膜電極接合体を観察したが、電解質膜と電極の剥離はなかった。
2、2’ 触媒付き電極
3 ガスケット
4 セパレーター
5 加圧板
6 流路
7 締め付けボルト
8 燃料電池セル
9 加湿用バブリングタンク
10 電子負荷
11 マスフローコントローラー
12 送液ポンプ
Claims (10)
- 燃料電池の電極の形成又は燃料電池の電極と電解質膜との接合に用いる燃料電池用結着剤であって、プロトン酸基を有する2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックと、プロトン酸基を有さない2価の芳香族基を繰り返し構造単位とするブロックを含み、かつガラス転移温度(Tg)が180℃以下であるブロック共重合体を含むことを特徴とする燃料電池用結着剤。
- 前記ブロック共重合体が、イオン交換基当量が200〜1000g/molであり、かつ、64重量%メタノール水溶液に25℃で24時間浸漬したときの重量維持率が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用結着剤。
- プロトン酸基を有する2価の芳香族基が下記一般式(1)であり、プロトン酸基を有さない2価の芳香族基が下記一般式(2)であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用結着剤。
- X1およびX2がプロトン酸基、X3〜X5が水素原子、A1が−SO2−または−CO−、gが1である請求項3に記載の燃料電池用結着剤。
- プロトン酸基が、−CnH2n−SO3H(nは0〜10の整数)であることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用結着剤。
- jが1、kが0である請求項3に記載の燃料電池用結着剤。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池用結着剤と、電極材料を含有することを特徴とする燃料電池電極形成用組成物。
- 電極材料が、カーボンブラック、活性炭、黒鉛、鉛、鉄、マンガン、コバルト、クロム、ガリウム、バナジウム、タングステン、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウムおよびそれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項7に記載の燃料電池電極形成用組成物。
- 請求項7又は8に記載の燃料電池電極形成用組成物を用いた燃料電池用電極。
- 請求項9に記載の燃料電池用電極を用いて得られる燃料電池。
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