JP2007053034A - 膜−電極接合体および膜−電極接合体の製造方法、並びにそれを使用した固体高分子形燃料電池。 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】膜−電極接合体を、(A)プロトン伝導性基を導入可能な高分子及び/又はプロトン伝導性基を有する高分子を含む高分子膜と、(B)少なくとも触媒担持カーボンおよび結着剤樹脂を含む電極触媒層とを、前記(B)が、前記(A)を挟持するように熱融着させることによって得られうる膜−電極接合体の前駆体を形成した後、さらに、該膜−電極接合体の前駆体に、プロトン伝導性基を導入することによって形成することによって解決する。
Description
(燃料極) CH3OH+H2O→6H++6e-+CO2
(酸化剤極) 6H++6e-+3/2O2→3H2O
この直接メタノール形燃料電池において、高エネルギー密度の電池を得るには、例えばメタノールと水が1:1(モル比)の64重量%の高濃度のメタノール水溶液を燃料に使用し、メタノールの反応率を高くすること有効である。しかし、従来直接メタノール形燃料電池の高分子電解質膜として使用されてきたナフィオン(Nafion)(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸膜は、メタノールが透過し易いため、燃料極で消費されなかったメタノール水溶液が、膜を透過し、酸化剤極に到達し、酸化剤極で燃料極と同じ反応を起こし、逆起電力が生じる。メタノールのクロスオーバー現象と呼ばれ、直接メタノール形燃料電池において充分な発電特性を得られない原因となっている。
本発明に先立ち、鋭意検討した結果、本発明者の発明者は、下記のような新たな課題を見い出し、これを解決することで、本発明を完成するに至った。
1.触媒同士を接着するとともに形成した電解質膜と電極触媒層を熱によって機械的に接着する融着力があること。
2.電解質膜と電極触媒層のプロトンの受け渡しをする電気化学的な接触機能を有すること。
3.高温でメタノールや水に溶解すると燃料電池の耐久性を低下させる可能性が高いため、これらに対して難溶解性であること。
4.触媒と混合してスラリーを形成したのち電極にする場合が多いので、液体として使用できるようにメタノール以外の何らかの溶媒に可溶であること。
5.触媒活性を低下させないため、触媒担持カーボンを凝集させることなく均一に分散できる樹脂であること。
上記の、1.、2.、3.、4.、5.、の要件を少なくとも1以上望ましくは全て満たし、
かつ、上記の新たな課題6.、7.、8.、9.、10.を少なくとも1以上望ましくは全て解決することを課題として、下記、本発明を完成した。
(1)本発明の第1は、
(A)プロトン伝導性基を導入可能な高分子及び/又は
プロトン伝導性基を有する高分子
を含む高分子膜と、
(B)少なくとも触媒担持カーボンおよび結着剤樹脂を含む電極触媒層とを、
前記(B)が、前記(A)を挟持するように熱融着させることによって得られうる膜−電極接合体の前駆体を形成した後、
さらに、該膜−電極接合体の前駆体に、プロトン伝導性基を導入することによって形成されうる膜−電極接合体、
である。
前記(B)の結着剤樹脂が、プロトン伝導性基を導入可能であることを特徴とする、(1)に記載の膜−電極接合体、
である。
(1)に記載の熱融着させる温度が、
(C)プロトン伝導性基を導入可能な結着剤樹脂の、プロトン伝導性基を導入前の結着剤樹脂のガラス転移点及び/または軟化点よりも高く、かつ、
(D)プロトン伝導性基を導入可能な結着剤樹脂の、プロトン伝導性基を導入後の結着剤樹脂のガラス転移点及び/または軟化点よりも低い、
ことを特徴とする、(2)に記載の膜−電極接合体、
である。
前記(B)の電極触媒層が、架橋剤を含み、膜−電極接合体の前駆体を形成するための熱融着時に架橋反応が進行することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
前記の膜−電極接合体の前駆体に導入するプロトン伝導性基が、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、および、フェノール性水酸基の群からなる1以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
前記の結着剤樹脂が、炭化水素系樹脂を含むことを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
前記の炭化水素系樹脂が、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリ(アリルフェニルエーテル)、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(ジフェニルフォスファゼン)、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリビニルアルコール、ポリ(フェニルグリシジルエーテル)、ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ポリ(フェニルメチルフォスファゼン)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリスチレン、スチレン−(エチレン−ブチレン)スチレン共重合体、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体、スチレン−(ポリイソブチレン)−スチレン共重合体、ポリ1,4−ビフェニレンエーテルエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、シアン酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリエーテルニトリルからなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする、(6)に記載の膜−電極接合体、
である。
該膜−電極接合体の前駆体にプロトン伝導性基を導入する方法が、
該膜−電極接合体の前駆体を、
硫酸、発煙硫酸、硫酸水溶液、クロロスルホン酸、および、三酸化硫黄からなる群から選ばれる1以上を含む液体に浸漬することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
前記(B)の触媒担持カーボンが、白金担持カーボン、または、白金ルテニウム担持カーボンであることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
(A)(1)プロトン伝導性基を導入可能な高分子及び/又は(2)プロトン伝導性基を有する高分子、を含む高分子膜と、
(B)少なくとも触媒担持カーボンおよび結着剤樹脂を含む電極触媒層とを、
前記(B)が、前記(A)を挟持するように熱融着させることによって得られうる膜−電極接合体の前駆体を形成した後、
さらに、該膜−電極接合体の前駆体に、プロトン伝導性基を導入することによって形成することを特徴とする、膜−電極接合体の製造方法、
である。
(1)〜(10)のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いることを特徴とする固体高分子形燃料電池、
である。
(1)〜(10)のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いることを特徴とする直接液体形燃料電池、
である。
(1)〜(10)のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いることを特徴とする直接メタノール形燃料電池、
である。
(本発明においては、プロトン伝導性基を導入可能な結着剤樹脂とは、プロトン伝導性基を導入可能な化学構造を有している限りにおいて、そのものにはプロトン伝導性基が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。)
を用いることができる。プロトン伝導性官能基を含んでいる樹脂は親水性を示し、白金担持カーボンとの均一な分散が困難であるが、プロトン伝導性官能基を含まない結着剤樹脂を用いる本発明では、触媒の均一な分散が容易となりその活性を充分に利用することができるようになる。このため、従来と比べて高い発電性能を有する膜−電極接合体および燃料電池を実現できる。
特許文献3に記載されている内容から本発明者が認識する・特許文献3に記載されている上記のような新たな制約や問題点の発生もなく、極めて簡易な方法で目的を実現できる特徴を有している。
(A)プロトン伝導性基を導入可能な高分子及び/又は
プロトン伝導性基を有する高分子
を含む高分子膜と、
(B)少なくとも触媒担持カーボンおよび結着剤樹脂を含む電極触媒層とを、
前記(B)が、前記(A)を挟持するように熱融着させることによって得られうる膜−電極接合体の前駆体を形成した後、
さらに、該膜−電極接合体の前駆体に、プロトン伝導性基を導入することによって形成されうる膜−電極接合体、
である。
プロトン伝導性基を導入可能な高分子とは、プロトン伝導性基を導入可能な化学構造を有している限りにおいて、そのものにはプロトン伝導性基が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
プロトン伝導性基を有する高分子とは、プロトン伝導性基が化学結合されている高分子のことである。
挟持するとは、隙間が無い状態で挟み合わせることである。
本発明の固体高分子形燃料電池、直接液体形燃料電池、直接メタノール形燃料電池に用いる膜−電極接合体について説明する。図1は膜−電極接合体の模式図である。膜−電極接合体はプロトン伝導性高分子電解質膜1と、その両側にそれぞれ触媒電極触媒層2が配置され構成されている。さらに電極触媒層2の外側に拡散層3が配置されていてもかまわない。
ここでプロトン伝導度とは、プロトン伝導性高分子電解質膜中のプロトン(H+)の移動のし易さを示すものである。一般的には、公知の交流インピーダンス法により、プロトン伝導性高分子電解質膜の膜抵抗を測定して、算出することができる。
一方、メタノール遮断係数は、プロトン伝導性高分子電解質膜中のメタノール透過のし難さを示すものである。公知の方法で、プロトン伝導性高分子電解質膜のメタノール透過係数を測定し、その逆数により定義されるものである。なお、メタノール透過係数は、下記の式で表されるものである。
=メタノール透過量(μmol)×膜厚(cm)/(膜面積(cm2)×透過時間(日))
<高分子電解質膜>
本発明の燃料電池において、プロトン伝導性高分子電解質膜としてパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂を用いることも可能であるが、非フッ素系高分子電解質膜であることが好ましい。特に非フッ素系高分子電解質膜は、メタノール遮断性に優れる炭化水素系高分子電解質膜であると、高濃度の液体燃料を使用できる液体燃料電池に使用でき、高エネルギー密度が得られるため好ましい。前記炭化水素系高分子電解質膜に使用可能な炭化水素系高分子化合物は、例えばポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリ(アリルフェニルエーテル)、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(ジフェニルフォスファゼン)、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリビニルアルコール、ポリ(フェニルグリシジルエーテル)、ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ポリ(フェニルメチルフォスファゼン)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリスチレン、スチレン−(エチレン−ブチレン)スチレン共重合体、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体、スチレン−(ポリイソブチレン)−スチレン共重合体、ポリ1,4−ビフェニレンエーテルエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、シアン酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルニトリルなどの炭化水素系高分子化合物を主たる構成成分とし、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、フェノール性水酸基などのプロトン伝導性置換基を含有するものであり、これらの樹脂を多孔質膜に充填した細孔フィリング膜や、無機プロトン伝導度体(例えば、酸化タングステン水和物(WO3・nH2O)、酸化モリブデン水和物(MoO3・nH2O)、タングストリン酸、モリブドリン酸など)を炭化水素とケイ素からなる高分子ネットワークに保持した有機−無機複合膜なども、炭化水素系高分子電解質膜として列挙できる。
図1のプロトン伝導性高分子電解質膜1の両側に配置された電極触媒層2は、同一または異なっていてもよく、メタノールの酸化能を有する触媒が使用される。もう一方には、使用する酸化剤(酸素や空気など)の還元能を有する触媒が使用される。具体的には、カーボンブラック、ケッチェンブラック、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノチューブなどの高表面積の導電性材料に、白金などの貴金属が担持された貴金属担持触媒が使用される。燃料極側は一般的に、燃料酸化時の副生成物である一酸化炭素、アルデヒド類、カルボン酸類などによる触媒被毒を抑制するため、白金の代わりに、白金とルテニウムなどからなる複合あるいは合金触媒などが使用される。さらに安定化や長寿命化のために、鉄、錫、希土類元素等を用い3成分以上であってもよい。
拡散層は、同一または異なっていてもよく、結着剤で触媒と接合されていても、されていなくてもよい。一般に、カーボンペーパーやカーボンクロスなどの多孔質の導電性材料が使用される。拡散層は供給される水分や電気化学反応によって生成した水で、気孔が塞がれるのを抑制するため、必要に応じて、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系化合物で撥水処理を施したほうがよい。
次に本発明における膜−電極接合体の前駆体の製造方法について説明する。製造方法は種々の方法が選択可能であり、膜−電極接合体の製造方法の一例を以下に記述する。電極触媒層2は、前記結着作用のある高分子電解質と前記貴金属担持触媒(触媒担持カーボン等)で構成される。高分子電解質は溶媒に溶解あるいは分散した状態で使用し、高分子電解質は溶媒に対し、0.1重量%〜30重量%であると均一な電極触媒層を形成しやすく好ましい。樹脂を溶媒に溶解あるいは分散したもの(以下、結着剤)と、上記貴金属担持触媒を混合し、スラリーまたは混合溶液を得る。結着剤の樹脂成分は貴金属担持触媒に対し、重量比0.05〜1.5が好ましい。この範囲より大きい場合、貴金属が高分子電解質に覆われ、有効に活用されない恐れがある。一方、この範囲より小さい場合、十分な結着作用が得られず、触媒層を維持できない恐れがある。さらに、この結着剤には架橋剤が含まれていることが好ましい。これらの架橋剤は膜−電極接合体の前駆体を形成する際に反応して架橋が進む。架橋した結着剤はメタノールなどの溶剤に溶解することがなくなり耐久性が著しく向上する。特に、本発明では、架橋前の結着剤に含まれるプロトン伝導性官能基が少ないため架橋剤が有効に機能し良好な耐久性を示すようになる。さらに、この混合溶液には電極触媒層を形成するのに適度な粘度になるよう水が含まれていてもかまわない。この混合溶液をドクターナイフやロールコーター、スクリーン印刷、スプレーなどでポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルム等の剥離フィルム上に堆積させ、乾燥して溶媒と水を除去する。電極触媒層のひび割れを防ぐため、塗布、溶媒の除去作業は数回に繰り返して行うことも可能である。触媒が塗布された剥離フィルムをプロトン伝導性高分子電解質膜の両面に配置し、熱プレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して熱融着させる。上記熱プレスの条件は使用する電解質膜や結着剤に含まれる高分子電解質の種類によって設定する必要がある。設定温度は、一般的には80℃〜200℃であり、使用するプロトン伝導性高分子電解質膜あるいは高分子電解質のガラス転移点や軟化点以上の温度であって、さらには高分子電解質膜と高分子電解質のガラス転移点や軟化点以上の温度であることが好ましい。この範囲より大きい場合、高分子電解質中の末端基が離脱し、有効に活用されない恐れがある。一方、この範囲より小さい場合、十分な接着力がえられず、界面抵抗が増加する恐れがある。また、使用する電解質膜や結着剤に含まれる樹脂成分の熱劣化や熱分解温度以下が好ましい。本発明によれば、熱融着時の結着剤に用いる樹脂成分に含まれるプロトン伝導性官能基の量が少ないため、従来法と比較して低温での熱融着が可能となる。設定圧力は、最高圧力が0.1MPa以上20MPa以下であると、高分子電解質膜と電極触媒層が十分に接着するとともに、材料の特に大きな変形が無い場合、特性低下が起こらないため、好ましい。この範囲より大きい場合、電極触媒層が崩壊し、有効に活用されない恐れがある。一方、この範囲より小さい場合、十分な接着力がえられず、界面抵抗が増加する恐れがある。上記条件のもと、プレスで得られた接合体から剥離フィルムを取り外すことで、膜−電極接合体の前駆体を得ることができる。
このようにして製造した膜−電極接合体の前駆体は、本発明の製造法に従って膜−電極接合体として完成する。すなわち、膜−電極接合体の前駆体を硫酸、発煙硫酸、硫酸水溶液、クロロスルホン酸、三酸化硫黄等に浸漬したのち、水洗して中性にする。浸漬時間や、溶液濃度、温度は樹脂種や溶液種、電解質まくの種類によって異なるが、あまり強い反応条件を選ぶと電解質膜や結着剤の溶出を招き、膜−電極接合体の破損につながる恐れがあるので注意しなければならない。この溶液浸漬により、プロトン伝導性を持たなかった結着剤相にプロトン伝導性を有する官能基が導入され膜−電極接合体が機能するようになる。
次に本発明の燃料電池を説明する。図2は直接メタノール形燃料電池の要部断面図である。上記のような方法で得られた膜−電極接合体を、燃料、並びに酸化剤を送り込む流路5が形成された一対のセパレーター4などの間に挿入することにより、本発明の膜−電極接合体からなる直接メタノール形燃料電池が得られる。拡散層3は電極触媒層2の外側に結着作用のある高分子電解質で接着されていてもされていなくてもよい。高分子電解質で接着されていない場合、ネジ等でセパレーターを締め付けることで十分接触している状態する。セパレーター4の流路5に燃料として、メタノールを主たる成分とする液体を、酸化剤として、酸素を含むガス(酸素あるいは空気)を、それぞれ別個供給することにより、拡散層3を経由して電極触媒層2へと送られ、直接メタノール形燃料電池は発電する。
図2の前記セパレーター4としてはカーボングラファイトやステンレス鋼の導電性材料のものが使用できる。特にステンレス鋼などの金属製材料を使用する場合は、耐腐食性の処理を施していることが好ましい。
熱融着とは、熱プレス機やロールプレス機などのプレス機を使用して熱をかけて、被融着物同士を融着させることである。
前記(B)の結着剤樹脂が、プロトン伝導性基を導入可能であることを特徴とする、(1)に記載の膜−電極接合体、
である。
プロトン伝導性基を導入可能な結着剤樹脂とは、プロトン伝導性基を導入可能な化学構造を有している限りにおいて、そのものにはプロトン伝導性基が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
(1)に記載の熱融着させる温度が、
(C)プロトン伝導性基を導入可能な結着剤樹脂の、プロトン伝導性基を導入前の結着剤樹脂のガラス転移点及び/または軟化点よりも高く、かつ、
(D)プロトン伝導性基を導入可能な結着剤樹脂の、プロトン伝導性基を導入後の結着剤樹脂のガラス転移点及び/または軟化点よりも低い、
ことを特徴とする、(2)に記載の膜−電極接合体、
である。
本発明のガラス転移点は、引っ張り変形モードでのDMS(動的粘弾性)測定時のtanδのピークで表される温度である。
樹脂のガラス転移点及び/または軟化点とは、
ガラス転移点、ガラス転移点及び軟化点、軟化点のいずれかを表す。
前記(B)の電極触媒層が、架橋剤を含み、膜−電極接合体の前駆体を形成するための熱融着時に架橋反応が進行することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
本発明の架橋剤とは、炭素−炭素結合や、炭素−酸素結合を形成するような、2官能または多官能の架橋剤を含む公知の架橋剤であれば、特に限定を受けないが、例えば、パーオキサイド化合物、多価アルコール、などが、好適に用いうる。具体的には、架橋剤パーブチルP、パークミルP、パーヘキサ25B(いずれも日本油脂(株)製)、ペンタエリスリトールなどが、好適に用いうる。
上記の架橋剤を用いて、架橋を形成するような反応を言う。本発明では、熱をかけた場合に架橋反応が進むような架橋反応系が好ましい。
前記の膜−電極接合体の前駆体に導入するプロトン伝導性基が、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、および、フェノール性水酸基の群からなる1以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
本発明のプロトン伝導性基は、プロトン伝導性の基である限りにおいて、特に限定を受けないが、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、および、フェノール性水酸基の群からなる1以上であることが、好ましい。
前記の結着剤樹脂が、炭化水素系樹脂を含むことを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
前記の炭化水素系樹脂が、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリ(アリルフェニルエーテル)、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(ジフェニルフォスファゼン)、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリビニルアルコール、ポリ(フェニルグリシジルエーテル)、ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ポリ(フェニルメチルフォスファゼン)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリスチレン、スチレン−(エチレン−ブチレン)スチレン共重合体、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体、スチレン−(ポリイソブチレン)−スチレン共重合体、ポリ1,4−ビフェニレンエーテルエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、シアン酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリエーテルニトリルからなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする、(6)に記載の膜−電極接合体、
である。
該膜−電極接合体の前駆体にプロトン伝導性基を導入する方法が、
該膜−電極接合体の前駆体を、
硫酸、発煙硫酸、硫酸水溶液、クロロスルホン酸、および、三酸化硫黄からなる群から選ばれる1以上を含む液体に浸漬することを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
本発明の触媒担持カーボンは、触媒を担持する炭素を主成分とする微小体である限りにおいて、特に限定を受けない。
前記(B)の触媒担持カーボンが、白金担持カーボン、または、白金ルテニウム担持カーボンであることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の膜−電極接合体、
である。
(A)(1)プロトン伝導性基を導入可能な高分子及び/又は(2)プロトン伝導性基を有する高分子、を含む高分子膜と、
(B)少なくとも触媒担持カーボンおよび結着剤樹脂を含む電極触媒層とを、
前記(B)が、前記(A)を挟持するように熱融着させることによって得られうる膜−電極接合体の前駆体を形成した後、
さらに、該膜−電極接合体の前駆体に、プロトン伝導性基を導入することによって形成することを特徴とする、膜−電極接合体の製造方法、
である。
(1)〜(10)のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いることを特徴とする固体高分子形燃料電池、
である。
(1)〜(10)のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いることを特徴とする直接液体形燃料電池、
である。
(1)〜(10)のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いることを特徴とする直接メタノール形燃料電池、
である。
<プロトン伝導性高分子電解質膜の調製>
ポリフェニレンサルファイドフィルム(東レ株式会社製、商品名:トレリナ、厚み:25μm)をクロロスルホン酸と1−クロロブタンとの混合液に浸漬した。このとき、ポリフェニレンサルファイドフィルムに対し、クロロスルホン酸はモル比6倍で、混合液は、クロロスルホン酸が1−クロロブタンに対し1.5重量%である。浸漬後、室温で20時間放置し、ポリフェニレンサルファイドフィルムを回収し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した。
東レ製TGP−H−60カーボンペーパーをアセトンで洗浄し、さらにテフロン(登録商標)分散溶液(ダイキン工業製POLYFLON PTFE D−1E)を塗布し360℃で1時間焼成することで、撥水処理を施した拡散層を得た。
厚さ180μm、80角のテフロン(登録商標)シートの中心を5x5cm角に切り抜きガスケットとした。膜−電極接合体をガスケットで挟持し、電極面積25cm2の燃料電池用セル(JARI製EX−1)に装着した。
評価装置には東陽テクニカ製GFT−MWを用いた。1mol/lのメタノール水溶液をアノード極側に流量2.5ml/minで供給し、酸化剤として空気をカソード極側に流量800ml/min供給した。セル温度を60℃として、直接メタノール形燃料電池の発電特性を評価した。結果を図3に示す。最大出力密度は、47.7W/cm2であった。
実施例1と同じ構成の膜−電極接合体をあらかじめスルホン化したSEPSを結着剤として作製するために、SEPSのスルホン化を試みた。
300mlのリアクターに実施例1のSEPS3.7gを秤量した。さらに濃硫酸92gを加え、室温で3日間撹拌して、黒色の樹脂固体を得た。他の反応物の残液を濾過し水中で固形分を得ようとしたが何も得られなかった。黒色の樹脂固体は、THF、DMF、DMSO、NMPなどの有機溶剤や、水、メタノールにも不溶であり、液状結着剤としてスルホン化したSEPSを得ることはできなかった。
SEPSと架橋剤パーブチルP(日本油脂(株)製)を重量比95:5の割合でジクロロエタン(DCE)とシクロヘキサンの混合溶媒(3/5重量比)に溶解させて、総樹脂重量濃度5%の結着剤前駆体溶液を得た。結着剤溶液としてこれを用いた以外は、電解質膜、触媒、カーボンペーパー等すべて実施例と同じ物を用い、実施例1と同じ条件で膜−電極接合体の前駆体を得た。この膜−電極接合体の前駆体は、架橋構造をとると考えられる。得られた膜−電極接合体の前駆体を濃硫酸に浸漬し室温で3日間放置した。取り出した後、流水で中性になるまで洗浄して、最終の膜−電極接合体を得た。最後に実施例1と同じ方法で直接メタノール形燃料電池の発電特性を評価した。結果を図4に示す。最大出力密度は、43.0W/cm2であった。
実施例2と同じ構造の膜−電極接合体を以下の方法で作製した。300mlのリアクターにSEPSを5g秤量し、DCEとシクロヘキサンの混合溶媒(3/5重量比)40gを添加し、室温で3時間撹拌した。10gのDCEに溶解したクロロスルホン酸0.83gを滴下して室温で2時間撹拌した。反応混合物を1lのメタノールに滴下し濾液が中性になるまでメタノールと水で洗浄した。濾過後105℃で5時間真空乾燥した。
実施例2と比べて特性に差がみられる原因は、触媒の分散状態の差であると推定している。すなわち、スルホン化前とスルホン化後に結着剤樹脂と触媒を混錬したことの差が現れているものと考えられる。
反応容器にポリエーテルエーテルケトン(VICTREX社、450PF:以下PEEKと呼ぶ)を3.7gとり、濃硫酸を92g加え、室温で3日間撹拌した。その後、水で濾液が中性になるまで洗浄した後90℃真空で10時間乾燥し、黄色の固体スルホン化PEEKを得た。このスルホン化PEEKはメタノールに可溶であり、内径60mmのシャーレを用いてキャスト膜を得た。膜のイオン交換容量は2.27meq/gで、膜の導電率は7.0x10−2S/cmであった。シャーレにスルホン化PEEKを190mgとり、DMF5gに溶解させた。別の容器に架橋剤としてペンタエリスリトール10mgを10mgとり、5gのメタノールに溶解させた。これをスルホン化PEEKのDMF溶液に加え110℃で1時間真空乾燥を行なった後、150℃に昇温して放置した。得られたキャスト膜はメタノールに不溶となった。膜のイオン交換容量は0.19meq/gに低下し、導電率は測定不能であった。
2 電極触媒層
3 拡散層
4 セパレーター
5 流路
Claims (13)
- (A)プロトン伝導性基を導入可能な高分子及び/又は
プロトン伝導性基を有する高分子
を含む高分子膜と、
(B)少なくとも触媒担持カーボンおよび結着剤樹脂を含む電極触媒層とを、
前記(B)が、前記(A)を挟持するように熱融着させることによって得られうる膜−電極接合体の前駆体を形成した後、
さらに、該膜−電極接合体の前駆体に、プロトン伝導性基を導入することによって形成されうる膜−電極接合体。 - 前記(B)の結着剤樹脂が、プロトン伝導性基を導入可能であることを特徴とする、請求項1に記載の膜−電極接合体。
- 請求項1に記載の熱融着させる温度が、
(C)プロトン伝導性基を導入可能な結着剤樹脂の、プロトン伝導性基を導入前の結着剤樹脂のガラス転移点及び/または軟化点よりも高く、かつ、
(D)プロトン伝導性基を導入可能な結着剤樹脂の、プロトン伝導性基を導入後の結着剤樹脂のガラス転移点及び/または軟化点よりも低い、
ことを特徴とする、請求項2に記載の膜−電極接合体。 - 前記(B)の電極触媒層が、架橋剤を含み、膜−電極接合体の前駆体を形成するための熱融着時に架橋反応が進行することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の膜−電極接合体。
- 前記の膜−電極接合体の前駆体に導入するプロトン伝導性基が、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、および、フェノール性水酸基の群からなる1以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の膜−電極接合体。
- 前記の結着剤樹脂が、炭化水素系樹脂を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の膜−電極接合体。
- 前記の炭化水素系樹脂が、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリールエーテルスルホン、ポリ(アリルフェニルエーテル)、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(ジフェニルフォスファゼン)、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリビニルアルコール、ポリ(フェニルグリシジルエーテル)、ポリ(フェニルメチルシロキサン)、ポリ(フェニルメチルフォスファゼン)、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリスチレン、スチレン−(エチレン−ブチレン)スチレン共重合体、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体、スチレン−(ポリイソブチレン)−スチレン共重合体、ポリ1,4−ビフェニレンエーテルエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、シアン酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリエーテルニトリルからなる群から選ばれる1以上であることを特徴とする、請求項6に記載の膜−電極接合体。
- 該膜−電極接合体の前駆体にプロトン伝導性基を導入する方法が、
該膜−電極接合体の前駆体を、
硫酸、発煙硫酸、硫酸水溶液、クロロスルホン酸、および、三酸化硫黄からなる群から選ばれる1以上を含む液体に浸漬することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の膜−電極接合体。 - 前記(B)の触媒担持カーボンが、白金担持カーボン、または、白金ルテニウム担持カーボンであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の膜−電極接合体。
- (A)(1)プロトン伝導性基を導入可能な高分子及び/又は(2)プロトン伝導性基を有する高分子、を含む高分子膜と、
(B)少なくとも触媒担持カーボンおよび結着剤樹脂を含む電極触媒層とを、
前記(B)が、前記(A)を挟持するように熱融着させることによって得られうる膜−電極接合体の前駆体を形成した後、
さらに、該膜−電極接合体の前駆体に、プロトン伝導性基を導入することによって形成することを特徴とする、膜−電極接合体の製造方法。 - 請求項1〜10のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いることを特徴とする直接液体形燃料電池。
- 請求項1〜10のいずれかに記載の膜−電極接合体を用いることを特徴とする直接メタノール形燃料電池。
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