JP2008276982A - 燃料電池用触媒層 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた発電性能と実用的な耐久性を得るための、燃料電池用触媒層、燃料電池用触媒層転写シート、燃料電池用ガス拡散電極、燃料電池用膜電極接合体、および、それらを使用し燃料電池を提供することである。
【解決手段】少なくとも、芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入された高分子電解質と一般式−CHOR(1)で示される基を2つ以上有する少なくとも1種以上の化合物Xから得られる固体電解質、および、導電性触媒担体と該導電性触媒担体に担時された触媒活性物質からなる燃料電池用触媒、を含む燃料電池用触媒層であって、該導電性触媒担体に対する該固体電解質の比率y(y=固体電解質の重量/導電性触媒担体の重量)が0.1≦y<0.8を満足するように設定されていることを特徴とする燃料電池用触媒層であることに関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池用触媒層、燃料電池用触媒層転写シート、燃料電池用ガス拡散電極、燃料電池用膜電極接合体、および、それらを使用した燃料電池に関するものである。
プロトン伝導性置換基を含有する高分子電解質は、燃料電池、湿度センサー、ガスセンサー、エレクトロクロミック表示素子などの電気化学素子の原料として使用される。これらの中でも、燃料電池は、新エネルギー技術の柱の一つとして期待されている。プロトン伝導性置換基を有する高分子電解質を使用する固体高分子形燃料電池は、低温における作動、小型軽量化が可能などの特徴から、自動車などの移動体、家庭用コンジェネレーションシステム、および民間用小型携帯機器などへの適用が検討されている。特にメタノールを直接燃料に使用する直接メタノール型燃料電池は、単純な構造と燃料供給やメンテナンスの容易さ、さらには、あるいは、また、高エネルギー密度などの特徴を有し、リチウムイオン二次電池代替として、携帯電話やノート型パソコンなどの民間用小型携帯機器への応用が期待されている。固体高分子形燃料電池のガス拡散電極は、燃料(メタノールや水素など)が供給されるアノード触媒層、酸化剤(酸素や空気など)が供給されるカソード触媒層と燃料および酸化剤を拡散させる拡散層とから成り立っており、この触媒層の形成材料には、燃料電池用触媒や高分子電解質などが含まれている。
従来用いられている高分子電解質としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂が広く検討されている。パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂は、高いプロトン伝導性を有し、耐酸性、耐酸化性などの化学的安定性に優れているとされている。しかしながら、ナフィオン(登録商標)は、フッ素系高分子電解質であるため、使用原料が高く、また複雑な製造工程を経るため、非常に高価である。さらに、その樹脂はメタノールに可溶性であることに加え、メタノールおよび水に対して膨潤しやすいことから、常にメタノール雰囲気下にさらされる直接メタノール形燃料電池(以下、DMFC)のアノード触媒層用高分子電解質として不適であった。また、燃料電池用触媒層は、燃料や酸化剤の拡散性、触媒の活性、導電性触媒担体の電子伝導性、固体電解質のプロトン伝導性、を高い次元で兼ね備えないと十分な性能を発現しない。そこで、構成材料の使用部位、運転条件などに応じて、固体電解質や触媒活性物質などの種類、構成材料の配合比率や製造方法、などが広く検討されてきた。
例えば、特許文献1には、パーフルオロカーボン重合体を固体電解質に、導電性触媒担体にカーボン単体を使用した固体高分子形燃料電池用膜−電極接合体が開示されており、触媒層中の前記パーフルオロカーボン重合体の質量Wと前記カーボン担体の質量Wとの質量比W/Wが1〜2とすることで、長期に渡って安定した運転を可能としている。また、特許文献2には、固体高分子形燃料電池における、酸素極の電極触媒層が導電性触媒担体に対する固体電解質の比率x(x=固体電解質の重量/導電性触媒担体の重量)が0.8≦x<1.0を満足するように設定することで、初期特性と耐久性の両立を図っている。
しかしながら、これらの技術はパーフルオロカーボン重合体において最適化された技術であり、炭化水素系電解質を用いた場合の最適化条件を検討されたものではない。また、メタノールに溶解するパーフルオロカーボン重合体を使用しているため、DMFCのアノード触媒層への適用は、耐久性の面から問題があった。
特開2003−109615号公報 特開2003−115299号公報
固体高分子形燃料電池に使用される燃料電池用触媒層は、その構成成分として、プロトン伝導性を有する高分子電解質が必須である。このような高分子電解質には、プロトン伝導性を充分に確保しつつ、接触が想定される燃料、酸化剤、反応生成物(副生成物を含む)に対する充分な耐久性と触媒反応を効率よく進行させるための拡散性、工業材料として効率的な生産性などが、強く望まれている。
本発明は前記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は優れた発電特性と実用的な耐久性を有する燃料電池を得るための、燃料電池用触媒層、燃料電池用触媒転写シート、燃料電池用ガス拡散電極、燃料電池用膜電極接合体、および、それらを使用した燃料電池を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、少なくとも、芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入された高分子電解質と下記一般式(1)で示される基を2つ以上有する少なくとも1種以上の化合物Xから得られる固体電解質、および、導電性触媒担体と該導電性触媒担体に担時された触媒活性物質からなる燃料電池用触媒、を含む燃料電池用触媒層であって、
該導電性触媒担体に対する該固体電解質の比率y(y=固体電解質の重量/導電性触媒担体の重量)が0.1≦y<0.8を満足するように設定されていることを特徴とする燃料電池用触媒層によって、その触媒層を用いた燃料電池が優れた発電特性、耐久性を確保できることを見出し、本願発明を完成させるに至った。本発明は、かかる新知見に基づいて完成されたものであり、以下の発明を包含する。
−CHOR・・・(1)
(式中、Rは水素またはアルキル基またはアシル基を表し、1種類の化合物に含まれるRはそれぞれ同一であっても異なってもよい。)。
すなわち本発明にかかる燃料電池用触媒層は、少なくとも、芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入された高分子電解質と下記一般式(1)で示される基を2つ以上有する少なくとも1種以上の化合物Xから得られる固体電解質、および、導電性触媒担体と該導電性触媒担体に担時された触媒活性物質からなる燃料電池用触媒、を含む燃料電池用触媒層であって、
該導電性触媒担体に対する該固体電解質の比率y(y=固体電解質の重量/導電性触媒担体の重量)が0.1≦y<0.8を満足するように設定されていることを特徴とする燃料電池用触媒層である。
−CHOR・・・(1)
(式中、Rは水素またはアルキル基またはアシル基を表し、1種類の化合物に含まれるRはそれぞれ同一であっても異なってもよい。)。
また本発明の燃料電池用触媒層は、前記yが0.19≦y≦0.42でもよい。
また本発明にかかる芳香族単位を有する高分子化合物は、芳香族ポリエーテル系高分子化合物でもよい。
また本発明にかかる化合物Xは、下記式に記載の
Figure 2008276982
からなる群から選択される少なくとも1種類以上でもよい。
また本発明にかかるプロトン伝導性基は、スルホン酸基でもよい。
また本発明にかかる導電性触媒担体は、カーボン担体でもよい。
また本発明にかかる触媒活性物質は、白金、コバルトおよびルテニウム、からなる群から選択される、少なくとも1種および/または少なくとも1種を含む合金でもよい。
また本発明にかかる燃料電池用触媒層は、直接メタノール形燃料電池のアノード触媒層でもよい。
また本発明にかかる燃料電池用触媒層転写シートは、前記燃料電池用触媒層が高分子フィルム上に形成されていてもよい。
また本発明にかかる燃料電池用ガス拡散電極は、前記燃料電池用触媒層が導電性多孔質シート上に形成されていてもよい。
また本発明にかかる燃料電池用膜電極接合体は、前記燃料電池用触媒層がアノードおよび/またはカソードに使用され、プロトン伝導性をもつ高分子電解質膜を挟んで接合されてなってもよい。
また本発明にかかる燃料電池は、前記燃料電池用触媒層を備えてもよい。
本発明の一実施形態について説明すれば以下の通りである。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではないことを念のため付言しておく。
(1.本発明の燃料電池用触媒層)
本発明にかかる燃料電池用触媒層は、少なくとも、芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入された高分子電解質と下記一般式(1)で示される基を2つ以上有する少なくとも1種以上の化合物Xから得られる固体電解質、および、導電性触媒担体と該導電性触媒担体に担時された触媒活性物質からなる燃料電池用触媒、を含む燃料電池用触媒層であって、
該導電性触媒担体に対する該固体電解質の比率y(y=固体電解質の重量/導電性触媒担体の重量)が0.1≦y<0.8を満足するように設定されていることを特徴とする燃料電池用触媒層であればよく、その他の成分、材料、配合割合、および製造条件等の具体的な構成については、特に限定されるものではない。
−CHOR・・・(1)
(式中、Rは水素またはアルキル基またはアシル基を表し、1種類の化合物に含まれるRはそれぞれ同一であっても異なってもよい。)。
前記yがこの範囲よりも小さい場合、燃料電池用触媒に対する固体電解質の量が少なくなりすぎ、触媒層の形成が困難となり、使用中に触媒層の崩壊や触媒の流出が起こり、耐久性に問題が生じる恐れがある。また、触媒近傍でのプロトン伝導が不充分となり、所望の発電特性が発現しない恐れがある。一方、前記yがこの範囲よりも大きい場合、燃料電池用触媒に対する固体電解質の量が多くなりすぎ、燃料や酸化剤の拡散性がわるくなり、触媒上での反応が非効率となる恐れがある。また、生成水の排出性が不充分となり、発電特性の低下要因となる恐れがある。
本発明にかかる燃料電池用触媒層は、前記yが0.19≦y≦0.42がより好ましい範囲である。これは触媒層内でのプロトン伝導、電子伝導、燃料および酸化剤の拡散性、生成水の排出性、触媒層の形成能、のバランスがとれ、発電性能および耐久性ともに、優れた触媒層が形成可能となる。
また本発明の燃料電池用触媒層には、必要に応じて、非電解質バインダー、撥水剤、分散剤、増粘剤、造孔剤等の添加剤が含まれていても構わない。また、これらの添加剤は、当業者にとって従来公知のものが使用可能であり、その他の具体的な構成については、特に限定されない。以下、構成要素ごとに説明する。
(1−1.高分子電解質)
本発明に用いる高分子電解質は、芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入されていればよく、それ以外の具体的な構成については、特に限定されない。前記芳香族単位を有する高分子化合物としては、例えば、ポリアリールエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリスルホン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルホキシド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリエーテルスルホン、スチレン−(エチレン−ブチレン)スチレン共重合体、スチレン−(ポリイソブチレン)−スチレン共重合体、ポリ1,4−ビフェニレンエーテルエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、シアン酸エステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン−ポリスチレングラフト共重合体、ポリエチレン−ポリスチレンブロック共重合体、ポリプロピレン−ポリスチレングラフト共重合体、(エチレン−グリシジルメタクリレート)−ポリスチレングラフト共重合体、(エチレン−エチルアクリレート)−ポリスチレングラフト共重合体、ポリプロピレン−(アクリロニトリル−スチレン)グラフト共重合体、ポリカーボネート−ポリスチレングラフト共重合体、ポリカーボネート−(アクリロニトリル−スチレン)グラフト共重合体、酢酸ビニル樹脂−ポリスチレンブロック共重合体、アクリル樹脂−ポリスチレンブロック共重合体、モディパーシリーズ(日本油脂株式会社製、登録商標)、エポフレンドシリーズ(ダイセル化学株式会社製)などが例示される。特に、化学的安定性および熱的安定性や、プロトン伝導性置換基の導入のしやすさ、得られるプロトン伝導性高分子電解質のプロトン伝導性、さらに得られ高分子電解質の耐久性、などを考慮すると、前記芳香族単位を有する高分子化合物は、下記の(i)〜(iii)から選択される1種のポリマー、又はこれらポリマーの混合物であることが好ましい。
(i)ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテルおよび変性ポリフェニレンエーテルからなるポリマーの群より選択される、少なくとも1種のポリマー;
(ii)前記(i)に記載のポリマーを含む共重合体;
(iii)前記(i),(ii)に記載のポリマーの誘導体。
これらのなかで、入手の容易さや前記化合物Xとの反応性などを考慮すると、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテルなどの芳香族ポリエーテル系高分子化合物が好ましく、ポリエーテルエーテルケトンが特に好ましい。
また、本発明に使用する高分子電解質は、優れたプロトン伝導性および実用的な耐久性を実現するために、異なる材料を組み合わせて構成してもよい。
本発明の燃料電池用触媒層形成材料における、高分子電解質に導入される、プロトン伝導性基としては、例えばスルホン酸基(−SOH)、カルボキシル基(−COOH)、フェノール性水酸基(Ph(OH):Phはフェニル基を表す)、−PO(OH)、−POH(OH)、−SONHSO−等の陽イオン交換基が列挙できる。中でも、プロトン伝導性やその導入のしやすさなどから、スルホン酸基であることが好ましい。
(1−2.化合物X)
つぎに、本発明の燃料電池用触媒層における、下記一般式(1)で示される基を2つ以上有する少なくとも1種以上の化合物Xについて、具体的に説明する。
−CHOR・・・(1)
(式中、Rは水素またはアルキル基またはアシル基を表し、1種類の化合物に含まれるRはそれぞれ同一であっても異なってもよい。)。
本発明で使用される前記化合物Xは、前記官能基が1分子中に2つ以上存在することによって、化合物Xを介して「芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入されてなる高分子電解質」を分子間で結合させることができる。したがって、得られる反応生成物の耐熱性を向上することや、メタノールなどの水素含有液体に対する膨潤性・溶解性や透過性を抑制することが可能となる。
本発明で使用される前記化合物Xとしては、前記官能基が1分子中に2つ以上存在するものであれば特に限定はないが、前記「芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入されてなる高分子電解質」との反応性、前記「芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入されてなる高分子電解質」との反応生成物の耐熱性、メタノールなどの水素含有液体に対する膨潤性・溶解性や透過性の抑制効果などを考慮すると、芳香族化合物であることが好ましい。この化合物はベンゼン環、ナフタレン環などを有する炭化水素系芳香族化合物であっても、トリアジン環などの炭素以外の元素を有する複素芳香族化合物であってもかまわない。
また、前記化合物X1分子中に2つ以上存在する官能基のRとしては、水素、アルキル基またはアシル基のいずれかであれば特に限定はなく、前記官能基のRはそれぞれ独立で、互いに同一であっても異なっていてもよい。化合物の入手の容易さや前記「芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入されてなる高分子化合物」との反応で副生する化合物の除去の容易さなどを考慮すると、水素、メチル基あるいはアセチル基であることが好ましい。直接メタノール形燃料電池に使用する場合は、燃料電池内に含まれている水、あるいはメタノールしか副生しないことから、前記官能基Rは水素、あるいはメチル基であることが特に好ましい。
このような前記化合物Xとしては、例えば、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール、3,5−ビス(ヒドロキシメチル)フェノール、4,6−ビス(ヒドロキシメチル)−o−クレゾール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−t−ブチルフェノール、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、1,2,4−ベンゼントリメタノール、1,3,5−ベンゼントリメタノール、4,4’−メチレンビス[2,6−ジ(ヒドロキシメチル)]フェノール、オキシビス(3,4−ジヒドロキシメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、2,6−ビス(メトキシメチル)−p−クレゾール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェノール、2,4,6−トリス[ビス(メトキシメチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン、サイメル(登録商標、日本サイテックインダストリーズ株式会社製)、DML−PC(本州化学工業株式会社製)、TML−BPA−MF(本州化学工業株式会社製)、TML−BPAF−MF(本州化学工業株式会社製)、DML−OC(本州化学工業株式会社製)、Dimethoxymethyl p−CR(本州化学工業株式会社製)、DML−MBPC(本州化学工業株式会社製)、DML−BPC(本州化学工業株式会社製)、TML−BP(本州化学工業株式会社製)、TMOM−BP(本州化学工業株式会社製)、DML−PEP(本州化学工業株式会社製)、DML−34X(本州化学工業株式会社製)、DML−PSBP(本州化学工業株式会社製)、DML−PTBP(本州化学工業株式会社製)、DML−PCHP(本州化学工業株式会社製)、DML−POP(本州化学工業株式会社製)、DML−PFP(本州化学工業株式会社製)、DML−MBOC(本州化学工業株式会社製)、HML−TPPHBA(本州化学工業株式会社製)、HMOM−TPPHBA(本州化学工業株式会社製)、26DMPC(旭有機材工業株式会社製)、46DMOC(旭有機材工業株式会社製)、DM−BIPC−F(旭有機材工業株式会社製)、DM−BIOC−F(旭有機材工業株式会社製)、TM−BIP−A(旭有機材工業株式会社製)、ニカラック(株式会社三和ケミカル製)などを例示できるが、これらのみに限定されるものではない。また、さらに、前記と一部重複するが、化合物Xは、下記化学式に示す化合物も例示できる。すなわち下記の構造式(2)〜(45)で示される44種類の化合物(なお、構造式(41)式中、R〜Rはそれぞれ水素またはメチル基を表す。)を例示できるが、これらのみに限定されるものではない。
Figure 2008276982
Figure 2008276982
Figure 2008276982
Figure 2008276982
これらの化合物は1種類であっても複数であってもかまわない。これらのなかで、入手の容易さや前記「芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入されてなる高分子電解質」との反応性、前記「芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入されてなる高分子電解質」との反応生成物の耐熱性やメタノールなどの水素含有液体に対する膨潤性や溶解性などを考慮すると、下記構造式(2)〜(11)で示される10種類の化合物
Figure 2008276982
からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが特に好ましい。
(1−3.燃料電池用触媒)
つぎに、本発明の燃料電池用触媒層における、燃料電池用触媒について、具体的に説明する。本発明で使用される燃料電池用触媒とは、文字通り、当業者にとって従来公知の燃料電池用触媒であればよく、導電性触媒担体と該導電性触媒担体に担時された触媒活性物質を含むものであればよく、その他の具体的な構成については、特に限定されない。
本発明に用いる燃料電池用触媒とは、特に限定されず、燃料電池の電極反応に対して活性な触媒が使用される。アノード側では、燃料(メタノールや水素など)の酸化能を有する触媒が使用される。導電性触媒担体としては、具体的には、カーボンブラック、ケッチェンブラック、活性炭、カーボンナノホーン、カーボンナノチューブなどの高表面積のカーボン担体が例示でき、触媒担持能や電子伝導性、電気化学的安定性などから、これらの材料が好ましい。触媒活性物質とは、具体的には、白金、コバルト、ルテニウム、などが例示でき、これらを単独、あるいはこれらの少なくとも1種を含んだ合金、さらには任意の混合物として使用しても構わない。特に、燃料の酸化能、酸化剤の還元能、耐久性を考慮すると、白金あるいは白金を含む合金であることが好ましい。これらは必要に応じて、安定化や長寿命化のために、鉄、錫、希土類元素等を用い3成分以上で構成してもよい。
(2.燃料電池用触媒層の製造方法)
次に本発明にかかる燃料電池用触媒層の製造方法の一例について説明する。本発明の燃料電池用触媒層は、前記高分子電解質と、前記化合物Xと、前記燃料電池用触媒と、溶媒、を含む触媒インクを調製する。ここで前記溶媒は、前記高分子電解質と前記化合物Xと前記燃料電池用触媒を溶解あるいは分散できること、さらに後工程で実施する上記高分子電解質と前記化合物Xとの化学反応を阻害しないこと、を除いては特に限定がなく、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドンあるいはジメチルスルホキシドなどが例示できる。これらのなかで、後工程における溶媒の除去のしやすさや前記化学反応の起こりやすさなどを考慮すると、メタノールやエタノールなどのアルコール系溶媒が好ましく、特にメタノールが好ましい。また、使用する溶媒と水が混ざりあう場合には、前記溶媒が水を含むことが好ましい。これによって、可燃性の溶媒が触媒上で急激に反応して燃焼するなどの危険性を低減することができる。
前記触媒インクにおける前記高分子電解質と、前記化合物Xと、前記燃料電池用触媒と、前記溶媒の混合順序や方法は、限定されないが、最初に前記燃料電池用触媒に水を加えたのちに、前記高分子電解質と、前記化合物Xとを加えることが燃料電池用触媒上での溶媒の直接酸化などの危険性を低減でき、安全性の面から好ましい。混合方法は、構成材料を均一に混合、分散させるといった観点から、攪拌羽の回転や、構成材料同士の衝突、せん断や超音波の照射、などの外力を用いてもよい。具体的には、マグネットスターラーやメカニカルスターラーによる攪拌や、プラネタリミキサー、ボールミル、あるいはビーズミル等によるせん断、超音波照射機、ホモジナイザー等の使用が例示でき、必要に応じて複数の方法を組み合わせても構わない。あまり激しい条件で混合すると発熱により溶媒が蒸発したり、担持している触媒活性物質が担体から脱離したりするなど、触媒層の性能低下要因となる恐れがある。従って、構成材料に応じた条件を適宜設定する必要がある。
前記触媒インクは、必要に応じて、非電解質バインダー、撥水剤、分散剤、増粘剤、造孔剤等の添加剤を含んでいても構わない。また、これらの添加剤は、当業者にとって従来公知のものが使用可能であり、その他の具体的な構成については、特に限定されない。
前記組成および方法で調製された触媒インクは、粘度や基材の種類に応じて、下記に示すような塗布方法が利用できる。前記触媒インクの基材上への塗布方法としては、当業者にとって従来公知の塗布方法であればよく、その他の具体的な構成については、特に限定されない。例えば、ナイフコーター、バーコーター、スプレー、ディップコーター、スピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷などを利用する方法が列挙できるが、本発明に限定されるものではない。
本発明において、基材として、高分子フィルムを使用した場合には燃料電池用触媒層転写シートが、導電性多孔質シートを使用した場合には燃料電池用ガス拡散電極が、それぞれ製造できる。
次いで、本発明の燃料電池用触媒層は、前記高分子電解質と前記化合物Xを化学反応させて、その反応生成物である固体電解質を得ることが好ましい。前記高分子電解質として前記(1−1)で、前記化合物Xとして前記(1−2)で説明した通りのものを使用し、前記化合物Xは、下記一般式(1)で示される官能基が1分子中に2つ以上存在することにより、化合物Xを介して前記高分子電解質を分子間で結合させることができるため、耐熱性の向上や、化学的安定性の向上、メタノールなどの水素含有液体に対する溶解性の抑制、などの物性を付与することができる。
−CHOR・・・(1)
(式中、Rは水素またはアルキル基またはアシル基を表し、1種類の化合物に含まれるRはそれぞれ同一であっても異なってもよい。)。
本発明において、前記高分子電解質と前記化合物Xの配合比率は、使用する物質や触媒層の製造条件に応じて適宜設定する必要がある。基本的には、前記高分子電解質と前記化合物Xとの反応生成物のプロトン伝導性、耐熱性、化学的安定性、メタノールなどの水素含有液体に対する溶解性、などが所望値となるよう設定することとなる。具体的には、前記高分子電解質100重量部に対して、前記化合物X1〜50重量部が好ましく、5〜40重量部がさらに好ましい。前記化合物Xが1重量部未満であると、前記高分子電解質との反応生成物が所望の物性を示さない恐れがある。一方、前記化合物Xが50重量部を超えると、固体電解質のプロトン伝導性が低下したり、得られる燃料電池用触媒層が脆くなる恐れがある。
本発明において、前記高分子電解質と前記化合物Xから得られる固体電解質は、これらの混合物を加熱することによって得ることができる。また、この化学反応は、加熱さえすれば空気中でも十分起こりうる。加熱する温度は、通常、前記化学反応が進行する温度〜前記高分子電解質の分解温度および前記化合物Xの沸点および分解温度、の範囲である必要がある。これらの化学反応が速やかに進行し、優れた性能を発現しうる燃料電池用触媒層を得るには、前記化学反応が進行する温度以上、200℃以下の温度で加熱することが好ましい。ここで化学反応が進行する温度としては、示差走査熱量分析装置(DSC)などによる反応前後の発生熱量の変化や、熱機械分析計(TMA)などによる機械特性の変化などで確認することができる。加熱温度が前記温度範囲よりも低い場合は、反応が生じなかったり、反応が不充分となったり、反応時間が長くなったりする恐れがある。一方、加熱温度が前記温度範囲よりも高い場合は、性能低下の要因となるような副反応や分解反応が生じたり、前記高分子電解質のプロトン伝導性基が分解、脱離する恐れがある。前記加熱条件は、好ましくは130℃以上、200℃以下であり、時間は1分間以上、180分間以下、好ましくは5分間以上、60分間以下である。このような加熱条件を選択することにより、特性および生産性の両面から優れた製造方法となる。本発明において、前記化学反応時の加熱方法は特に限定されず、例えば、通常のオーブンなどによる加熱や真空オーブンによる加熱、プレス機による加熱などが列挙できるが、これらに限定されない。また、後述の燃料電池用膜電極接合体作製時の加熱圧接時に加熱しても良い。
(3.本発明の燃料電池用触媒層転写シート)
本発明の燃料電池用触媒層転写シートは、高分子フィルムあるいは無機物シートなどの支持体上に前述した燃料電池用触媒層が積層、形成されたものである。前記高分子フィルムは文字通り、当業者にとって従来公知の高分子フィルムであればよく、燃料電池用触媒層転写シートの加工条件や使用条件における熱的な劣化や化学的な劣化が引き起こされるものでなければ、その他の具体的な構成については、特に限定されない。かかる高分子フィルムとしては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、ことが製造工程でかかる加熱条件に耐え、工業的入手も容易であることから好ましい。前記無機物シートは文字通り、当業者にとって従来公知の無機物シートであればよく、その他の具体的な構成については、特に限定されない。かかる無機物のシートとしては、チタン、ステンレス、アルミ、銅からなる群から選択される少なくとも1種を含む、ことが製造工程でかかる加熱条件に耐え、工業的入手も容易であることから好ましい。本発明においては、ハンドリング性や工業的生産性などの点から、支持体として高分子フィルムを使用した燃料電池用触媒層転写シートであることが好ましい。
(4.本発明の燃料電池用ガス拡散電極)
本発明の燃料電池用ガス拡散電極は、導電性多孔質シート上に前述した燃料電池用触媒層が積層、形成されたものである。前記導電性多孔質シートは、文字通り、当業者にとって従来公知の導電性多孔質シートであればよく、その使用環境に応じて、熱的、化学的、電気化学的な劣化が引き起こされるものでなければ、その他の具体的な構成については、特に限定されない。燃料や酸化剤の拡散性や電気化学的な安定性、工業的入手の容易さなどから、本発明の燃料電池用電極の製造方法において、前記導電性多孔質シートは、カーボンペーパー、カーボンクロスおよびカーボンフエルトからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、前記導電性多孔質シートは、燃料や酸化剤含まれる加湿水や、液体燃料や生成水によるフラッディングを抑制できる点から、撥水処理が施されていることが好ましい。また、前記導電性多孔質シートは、触媒層と導電性多孔質シートとの電気的接触を向上させたり、水分管理を適切に実施できるといった点から、前記燃料電池用触媒層形成材料を塗布する面上に、撥水導電性材料からなる層を備えること、が好ましい。すなわち、撥水導電性材料からなる層は触媒層と導電性多孔質シートの間に設置されることになる。撥水導電性材料としては、カーボンブラックなどの導電性微粒子とテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系高分子化合物から構成されることが例示できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
(5.燃料電池用膜電極接合体)
本発明の燃料電池用触媒層、燃料電池用触媒層転写シートおよび燃料電池用ガス拡散電極と、高分子電解質膜から、燃料電池用膜電極接合体が製造できる。本発明の燃料電池用膜電極接合体は、燃料電池用触媒層、燃料電池用触媒層転写シートおよび燃料電池用ガス拡散電極の製造方法、により得られる燃料電池用触媒層、燃料電池用触媒層転写シートおよび燃料電池用ガス拡散電極を、高分子電解質膜の少なくとも一方の面に配置し、加熱圧接するものであればよく、その他の製造条件、成分、材料、配合割合等の具体的な構成については、特に限定されるものではない。
本発明の燃料電池用膜電極接合体において、高分子電解質膜は、文字通り、当業者にとって従来公知の高分子電解質膜であればよく、その他の具体的な構成については、特に限定されない。例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸系の高分子電解質膜として、デュポン社製のナフィオン、旭硝子(株)製のフレミオン、旭化成(株)製のアシプレックス、ゴア社製のゴアセレクト、などが例示できる。また、非フッ素系の高分子電解質膜として、当業者にとって従来公知のものが使用できる。例えば、(1−1)で示した高分子電解質を製膜したものや、特に直接メタノール形燃料電池用膜電極接合体に適した高分子電解質膜として、非電解質の多孔質支持体に高分子電解質を充填した細孔フィリング膜や高分子電解質と非電解質とを複合化した複合電解質膜などを使用するのが好ましい。
本発明の燃料電池用膜電極接合体の製造において、加熱圧接の条件は、文字通り、当業者にとって従来公知の加熱圧接条件であればよく、その他の具体的な構成については、特に限定されない。最適な条件については、前記電解質膜と、アノード側触媒層およびカソード側触媒層にそれぞれ含まれる高分子電解質の種類に応じて適宜設定する必要がある。一般的に加熱圧接の温度は、前記高分子電解質膜や前記触媒層に含まれる高分子電解質の熱劣化や熱分解温度以下であって、高分子電解質膜あるいは前記触媒層に含まれる高分子電解質のガラス転移点や軟化点以上の温度、さらには高分子電解質膜あるいは前記触媒層に含まれる高分子電解質のガラス転移点や軟化点以上の温度条件下で実施するのが好ましい。また、加熱圧接の加圧条件は、概ね0.1MPa以上20MPa以下の範囲であることが、高分子電解質膜と前記触媒層が充分に接触するとともに、使用材料の著しい変形にともなう特性低下がなく好ましい。
本発明の膜電極接合体は、前記高分子電解質膜の両面に、本発明の製造方法で得られる触媒層を配置し、前記高分子電解質膜と前記触媒層を接合した後、高分子フィルムを剥離することによって、高分子電解質膜とアノード側触媒層とカソード側触媒層とからなる3層膜電極接合体(3層MEA:Membrane Electrode Assembly、CCM:Catalyst Coating Membrane)を製造することができる。
また、前記触媒層の代わりに、本発明の製造方法で得られる燃料電池用ガス拡散電極を使用した場合、前記3層膜電極接合体の外側に拡散層が構成された5層膜電極接合体(5層MEA)を製造することができる。
さらに、拡散層と触媒層との間に、少なくとも、導電性カーボン粒子と撥水剤から構成される撥水導電性材料からなる層、を必要に応じて設けることや、拡散層周縁部の電解質膜上に1対のガスケットを配置して構成した7層膜電極接合体も本発明の範疇であることを付言しておく。
(6.固体高分子形燃料電池)
本発明の固体高分子形燃料電池は、前記燃料電池用触媒層を備えるもの、即ち前記燃料電池用触媒層から得られる膜電極接合体を、燃料、並びに酸化剤を送り込む流路が形成された一対のセパレーターなどの間に挿入することにより、得られるものである。前記セパレーターは、特に限定されず、例えばカーボングラファイトやステンレス鋼の導電性材料のものが使用できる。特にステンレス鋼などの金属製材料を使用する場合は、耐腐食性の処理を施していることが好ましい。これらセパレーターの代わりに、燃料、並びに酸化剤の供給経路を備える部材で代替しても構わない。
本発明の固体高分子形燃料電池は、アノードに燃料として、特に限定されないが水素などのガス、あるいはメタノールなどの液体を用いることができ、カソードに酸化剤として、特に限定されないが、酸素あるいは空気などを用いることができる。前記カソードに供給される酸化剤は、水で加湿されていても良いが、無加湿の酸化剤を用いた場合、カソードのフラッディング現象を抑制できることから好ましい。
なお、本実施の形態にかかる固体高分子形燃料電池を単独で、あるいは複数積層して、スタックを形成して使用することや、それらを組み込んだ燃料電池システムとすることもできる。
以下実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
(実施例1)
<高分子電解質の作製>
触媒層形成材料用高分子電解質として、スルホン酸基含有ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)を合成した。
まず、メカニカルスターラーと還流管、および塩化カルシウム管を取り付けた反応容器に硫酸552.0gを入れ、次いで撹拌しながらPEEK 450PF(ビクトレックス・エムシー社製ポリエーテルエーテルケトン)22.2gを加え、室温にて3日間撹拌した。反応溶液をイオン交換水中に滴下して反応生成物を沈殿させたあとろ過し、ろ液が中性になるまでイオン交換水にて洗浄した。得られた反応生成物を真空下、105℃にて8時間乾燥することにより、黄色固体(S−PEEK)26.94gを得た。このS−PEEKのイオン交換容量は、2.3ミリ当量/gであった。
<燃料電池用触媒層および燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)の作製>
触媒インクを次の手順にて作製した。まず、前記S−PEEK(0.057g)と化合物XとしてのTML−BPAF−MF(0.011g)(前記構造式(6))と、メタノール(0.619g)からなる電解質溶液(0.687g)を調製した。
次いで純水(4.17g)に白金−ルテニウム担時カーボン触媒粉末(田中貴金属工業株式会社製TEC61E54、カーボン/白金/ルテニウム=46.8/30.0/23.2(重量比)、0.833g)および前記電解質溶液(0.687g)、メタノール(4.17g)を加えた後に、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、触媒インクを得た。
燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を次の手順で作製した。上記方法で調製した触媒インクを、エアブラシを使用して、カーボンペーパー製拡散層(SGLカーボンジャパン株式会社製SGL24BA、50mm×50mm)に白金目付量1.0mg/cmになるまで、吹き付けた。それを80℃で乾燥させたのちに、22mm×22mmの大きさに裁断することによって、白金目付量1.0mg/cmの燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を得た。
<燃料電池用ガス拡散電極(カソード側)の作製>
燃料電池用ガス拡散電極(カソード側)を次の手順にて作製した。純水(10.9g)に白金担時カーボン触媒粉末(田中貴金属工業株式会社製TEC10E50E、カーボン/白金=55.0/45.0(重量比)、1.09g)および電解質溶液としてナフィオン溶液(5wt%、8.64g)を加えた後に、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、カソード用触媒インクを作製した。
燃料電池用ガス拡散電極(カソード側)を次の手順で作製した。上記方法で作製した触媒インクを、エアブラシを使用して、カーボンペーパー製拡散層(SGLカーボンジャパン株式会社製SGL24BA、50mm×50mm)に白金目付量1.0mg/cmになるまで、吹き付けた。それを80℃で乾燥させたのちに、22mm×22mmの大きさに裁断することによって、白金目付量1.0mg/cmの燃料電池用ガス拡散電極(カソード側)を得た。
<高分子電解質膜>
高分子電解質膜として、ナフィオン膜(デュポン社製NRE−212CS)を使用した。
<燃料電池用膜電極接合体の作製>
本発明の膜電極接合体は、加熱圧接機(テスター産業株式会社製)を用いて次の手順で作製した。まず、SUS板、ポリテトラフルオロエチレンシート(100mm×100mm×0.05mm)、前記アノード側燃料電池用ガス拡散電極(22mm×22mm)、前記高分子電解質膜、前記カソード側ガス拡散電極(22mm×22mm)、ポリテトラフルオロエチレンシート(100mm×100mm×0.05mm)およびSUS板の順に積層した。この積層物を150℃に加熱した加圧板に設置した後、9.8MPa、30分間保持の条件で加熱圧接することによって、燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)中のS−PEEKとTML−BPAF−MFとを反応させ、固体電解質とし、本発明の実施例1の燃料電池用膜電極接合体を得た。(燃料電池用触媒層(アノード側)における導電性触媒担体に対する固体電解質の比率y=0.18)
(実施例2)
以下の方法に従って、燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を作製した以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例2の燃料電池用膜電極接合体を得た。(燃料電池用触媒層(アノード側)における導電性触媒担体に対する固体電解質の比率y=0.25)
<燃料電池用触媒層および燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)の作製>
触媒インクを次の手順にて作製した。まず、前記S−PEEK(0.082g)と化合物XとしてのTML−BPAF−MF(0.016g)(前記構造式(6))と、メタノール(0.878g)からなる電解質溶液(0.976g)を調製した。
次いで純水(4.17g)に白金−ルテニウム担時カーボン触媒粉末(田中貴金属工業株式会社製TEC61E54、カーボン/白金/ルテニウム=46.8/30.0/23.2(重量比)、0.833g)および前記電解質溶液(0.976g)、メタノール(4.17g)を加えた後に、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、触媒インクを得た。
燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を次の手順で作製した。上記方法で調製した触媒インクを、エアブラシを使用して、カーボンペーパー製拡散層(SGLカーボンジャパン株式会社製SGL24BA、50mm×50mm)に白金目付量1.0mg/cmになるまで、吹き付けた。それを80℃で乾燥させたのちに、22mm×22mmの大きさに裁断することによって、白金目付量1.0mg/cmの燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を得た。
(実施例3)
以下の方法に従って、燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を作製した以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例3の燃料電池用膜電極接合体を得た。(燃料電池用触媒層(アノード側)における導電性触媒担体に対する固体電解質の比率y=0.43)
<燃料電池用触媒層および燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)の作製>
触媒インクを次の手順にて作製した。まず、前記S−PEEK(0.139g)と化合物XとしてのTML−BPAF−MF(0.028g)と、メタノール(1.504g)からなる電解質溶液(1.671g)を調製した。
次いで純水(4.17g)に白金−ルテニウム担時カーボン触媒粉末(田中貴金属工業株式会社製TEC61E54、カーボン/白金/ルテニウム=46.8/30.0/23.2(重量比)、0.833g)および前記電解質溶液(1.671g)、メタノール(4.17g)を加えた後に、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、触媒インクを得た。
燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を次の手順で作製した。上記方法で調製した触媒インクを、エアブラシを使用して、カーボンペーパー製拡散層(SGLカーボンジャパン株式会社製SGL24BA、50mm×50mm)に白金目付量1.0mg/cmになるまで、吹き付けた。それを80℃で乾燥させたのちに、22mm×22mmの大きさに裁断することによって、白金目付量1.0mg/cmの燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を得た。
(実施例4)
以下の方法に従って、燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を作製した以外は、実施例1と同様にして、本発明の実施例4の燃料電池用膜電極接合体を得た。(燃料電池用触媒層(アノード側)における導電性触媒担体に対する固体電解質の比率y=0.74)
<燃料電池用触媒層および燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)の作製>
触媒インクを次の手順にて作製した。まず、前記S−PEEK(0.241g)と化合物XとしてのTML−BPAF−MF(0.048g)と、メタノール(2.605g)からなる電解質溶液(2.894g)を調製した。
次いで純水(4.17g)に白金−ルテニウム担時カーボン触媒粉末(田中貴金属工業株式会社製TEC61E54、カーボン/白金/ルテニウム=46.8/30.0/23.2(重量比)、0.833g)および前記電解質溶液(2.894g)、メタノール(4.17g)を加えた後に、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、触媒インクを得た。
燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を次の手順で作製した。上記方法で調製した触媒インクを、エアブラシを使用して、カーボンペーパー製拡散層(SGLカーボンジャパン株式会社製SGL24BA、50mm×50mm)に白金目付量1.0mg/cmになるまで、吹き付けた。それを80℃で乾燥させたのちに、22mm×22mmの大きさに裁断することによって、白金目付量1.0mg/cmの燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を得た。
(比較例1)
以下の方法に従って、燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を作製した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の燃料電池用膜電極接合体を得た。(燃料電池用触媒層(アノード側)における導電性触媒担体に対する固体電解質の比率y=0.74)
<燃料電池用触媒層および燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)の作製>
触媒インクを次の手順にて作製した。まず、前記S−PEEK(0.289g)と、メタノール(2.605g)からなる電解質溶液(2.894g)を調製した。
次いで純水(4.17g)に白金−ルテニウム担時カーボン触媒粉末(田中貴金属工業株式会社製TEC61E54、カーボン/白金/ルテニウム=46.8/30.0/23.2(重量比)、0.833g)および前記電解質溶液(2.894g)、メタノール(4.17g)を加えた後に、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、触媒インクを得た。
燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を次の手順で作製した。上記方法で調製した触媒インクを、エアブラシを使用して、カーボンペーパー製拡散層(SGLカーボンジャパン株式会社製SGL24BA、50mm×50mm)に白金目付量1.0mg/cmになるまで、吹き付けた。それを80℃で乾燥させたのちに、22mm×22mmの大きさに裁断することによって、白金目付量1.0mg/cmの燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を得た。
(比較例2)
以下の方法に従って、燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を作製した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の燃料電池用膜電極接合体を得た。(燃料電池用触媒層(アノード側)における導電性触媒担体に対する固体電解質の比率y=0.74)
<燃料電池用触媒層および燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)の作製>
純水(8.33g)に白金−ルテニウム担時カーボン触媒粉末(田中貴金属工業株式会社製TEC61E54、カーボン/白金/ルテニウム=46.8/30.0/23.2(重量比)、0.833g)およびナフィオン溶液(5wt%、5.789g)を加えた後に、マグネチックスターラーを用いて30分撹拌し、触媒インクを得た。
燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を次の手順で作製した。上記方法で調製した触媒インクを、エアブラシを使用して、カーボンペーパー製拡散層(SGLカーボンジャパン株式会社製SGL24BA、50mm×50mm)に白金目付量1.0mg/cmになるまで、吹き付けた。それを80℃で乾燥させたのちに、22mm×22mmの大きさに裁断することによって、白金目付量1.0mg/cmの燃料電池用ガス拡散電極(アノード側)を得た。
<燃料電池用触媒層のメタノール耐久性試験>
本発明の燃料電池用膜電極接合体をメタノールに浸漬し、60℃で100時間保持したときの状態を目視観察した。結果を表1に示す。
<直接メタノール形燃料電池の発電試験>
本発明の固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)は、市販の燃料電池単セル(エレクトロケム社製)に、前記膜電極接合体を設置して組み立てた。まず、アノード側エンドプレート(集電体)、ガスフロープレート(カーボンセパレーター)、ポリテトラフルオロエチレンガスケット(0.15mm)、膜電極接合体、ポリテトラフルオロエチレンガスケット(0.15mm)、ガスフロープレート(カーボンセパレーター)、カソード側エンドプレート(集電体)の順に積層した。次いで、M3のボルトを用いて2N・mで締め付けることによって、本発明の固体高分子形燃料電池を得た。このようにして作製した燃料電池の発電特性は、セル温度60℃、アノード側に1mol/Lのメタノール水溶液、カソード側に無加湿の空気を供給することによって測定した。結果を表2に示す。
Figure 2008276982
Figure 2008276982
表1の実施例1〜4と比較例1、2との比較から、本発明の燃料電池用触媒層を用いた膜電極接合体は、メタノールに浸漬してもアノード触媒層自体の劣化は見られなかったが、比較例1、2は膜から電極が剥離するとともに、電極上の触媒層の大半が溶液中に流出していることが確認された。これは触媒層中の固体電解質がメタノールに溶解したためと考えられ、本発明の有効性が実証された。
表2の実施例1〜4から、本発明の燃料電池用触媒層を備えた固体高分子形燃料電池(直接メタノール形燃料電池)において、メタノールを燃料とする系での発電が確認された。さらに、導電性触媒担体に対する固体電解質の比率yが0.25である実施例2は、他のものと比較して、優れた発電特性を示し、本発明の有効性が実証された。
本発明の燃料電池用触媒層は、固体高分子形燃料電池をはじめとして、様々な産業上の利用可能性がある。

Claims (12)

  1. 少なくとも、芳香族単位を有する高分子化合物にプロトン伝導性基が導入された高分子電解質と下記一般式(1)で示される基を2つ以上有する少なくとも1種以上の化合物Xから得られる固体電解質、および、導電性触媒担体と該導電性触媒担体に担時された触媒活性物質からなる燃料電池用触媒、を含む燃料電池用触媒層であって、
    該導電性触媒担体に対する該固体電解質の比率y(y=固体電解質の重量/導電性触媒担体の重量)が0.1≦y<0.8を満足するように設定されていることを特徴とする燃料電池用触媒層。
    −CHOR・・・(1)
    (式中、Rは水素またはアルキル基またはアシル基を表し、1種類の化合物に含まれるRはそれぞれ同一であっても異なってもよい。)。
  2. 前記yが0.19≦y≦0.42であることを特徴とする、請求項1記載の燃料電池用触媒層。
  3. 前記芳香族単位を有する高分子化合物が芳香族ポリエーテル系高分子化合物であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層。
  4. 前記化合物Xが、下記式に記載の
    Figure 2008276982
    からなる群から選択される少なくとも1種類以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層。
  5. 前記プロトン伝導性基が、スルホン酸基である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層。
  6. 前記導電性触媒担体が、カーボン担体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層。
  7. 前記触媒活性物質が、白金、コバルトおよびルテニウム、からなる群から選択される、少なくとも1種および/または少なくとも1種を含む合金である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層。
  8. 前記燃料電池用触媒層が、直接メタノール形燃料電池のアノード触媒層である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層。
  9. 前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層が、高分子フィルム上に形成されていることを特徴とする、燃料電池用触媒層転写シート。
  10. 前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層が、導電性多孔質シート上に形成されていることを特徴とする、燃料電池用ガス拡散電極。
  11. 前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層が、アノードおよび/またはカソードに使用され、プロトン伝導性をもつ高分子電解質膜を挟んで接合されてなることを特徴とする、燃料電池用膜電極接合体。
  12. 前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の燃料電池用触媒層を備える固体高分子形燃料電池。
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