JP2004292631A - トーショナルダンパ用epdm組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】二次架橋を必要としないトーショナルダンパ用成形材料として用いられるEPDM組成物であって、約120〜140℃の高温雰囲気中において、安定した物性を有する架橋層を形成し得るものを提供する。
【解決手段】ビニルノルボルネンをジエン成分とするEPDM(VNBタイプEPDM)またはこのEPDMとエチリデンノルボルネンをジエン成分とするEPDM(ENBタイプEPDM)とのブレンド物および有機過酸化物を含有するトーショナルダンパ用EPDM組成物。EPDM成分70重量部に対するジクミルパーオキサイド量Pは、EPDM成分中のVNBタイプEPDMの重量%Xに対し、P=−aX+1.6(ただし、a=0.013)で求められる重量部以上の割合で用いられる。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トーショナルダンパ用EPDM組成物に関する。さらに詳しくは、約120〜140℃という高温雰囲気でもすぐれた耐熱性を示すトーショナルダンパ用EPDM組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
トーショナルダンパは、エンジン振動低減(クランクシャフトの捻り振動低減)を目的として、エンジン内から延びるクランクシャフト片端のエンジン最近傍に取り付けられており、クランクシャフトに固定されるハブ部と振動リング(マス部)との間に加硫ゴム層を介在させることにより、振動低減の機能を発揮する。このトーショナルダンパは、ダイナミックダンパとして機能していることから、ゴムへは定振幅(定伸長)の入力となる。また、高出力タイプのエンジン用トーショナルダンパには、耐久性(耐疲労性)に有利な破断伸びにすぐれたゴムが用いられている。
【0003】
ダンパ部に使用されるゴム材料としては、天然ゴム、クロロプレンゴム、NBR等が用いられていたが、最近は耐熱性の点で有利なEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム)が主流となってきている。特開2000−143905号公報には、油展EPDM、低粘度EPDMおよび特定割合のジクミルパーオキサイドまたはそれとイオウを含有するEPDM組成物が記載されており、これは耐熱性にすぐれかつ高温度(150℃)の減衰係数、強度、伸び等の低下を効果的に防止し、トーショナルダンパ成形用などに好適に用いられると述べられている。
【0004】
しかしながら、自動車のエンジンルーム内(エンジン近傍)は、高出力化、騒音低減、コンパクト化、環境問題による直噴化などにより、熱的環境がさらに厳しくなってきており、雰囲気温度は上昇の傾向にある。前記特許公開公報記載のEPDM組成物は、初期的には問題がみられないものの、約130〜140℃の高温雰囲気では熱老化による物性低下や固有振動数の変化が大きくなり、機能確保が難かしい面もみられる。
【0005】
耐熱性レベル向上の簡単な方法として、老化防止剤の増量が考えられるが、老化防止剤のみで耐熱性の向上を図った場合、老化防止剤の効果がみられなくなった時点で急激な物性変化を起すため、機能的に危険である。また、アクリルゴムやフッ素ゴム等を用いて耐熱性を向上させることもできるが、これらのゴムは二次加硫による物性の安定化が必要であるため、生産性やコストといった点から、金属部品が大きなウエイトを占め、また最低でも約150mm径を有するトーショナルダンパでの量産が難かしい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、二次架橋を必要としないトーショナルダンパ用成形材料として用いられるEPDM組成物であって、約120〜140℃の高温雰囲気中において、安定した物性を有する架橋層を形成し得るものを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、ビニルノルボルネンをジエン成分とするEPDMまたはこのEPDMとエチリデンノルボルネンをジエン成分とするEPDMとのブレンド物および有機過酸化物を含有するトーショナルダンパ用EPDM組成物によって達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
ビニルノルボルネン、一般には5−ビニル−2−ノルボルネン[VNB]をジエン成分とするEPDMとしては、市販品、例えば三井化学製品PX−52等をそのまま用いることができる。このVNBタイプEPDMは、それ単独でも用いられるが、エチリデンノルボルネン、一般には5−エチリデン−2−ノルボルネン[ENB]をジエン成分とするEPDMとブレンドして用いることができる。これら両者をブレンドして用いる場合には、VNBタイプEPDM 100〜30重量%、好ましくは75〜40重量%に対しENBタイプEPDMが0〜70重量%、好ましくは25〜60重量%の割合で用いられる。VNBタイプEPDMのブレンド割合が30重量%以下では、所望の高温雰囲気における耐熱性の改善効果が得られない。なお、ENBタイプEPDMとしては、市販品、例えば三井化学製品EPT3045等をそのまま用いることができる。
【0009】
これらのEPDMは、有機過酸化物、例えばジクミルパーオキサイド、1,3−ビス(第3ブチルパーオキシイソブチル)ベンゼン等によって架橋され、有機過酸化物架橋剤としては好ましくはジクミルパーオキサイドが用いられる。
【0010】
EPDM成分の架橋剤として用いられる有機過酸化物量の下限値は、VNBタイプEPDMのブレンド割合が多い程、換言すればENBタイプEPDMのブレンド割合が少ない程少なくすることができ、そのEPDM成分70重量部当りの有機過酸化物の下限量Pは、有機過酸化物がジクミルパーオキサイドの場合、EPDM成分中のVNBタイプEPDMの重量%Xに対し、
P=−aX+1.6 (ただし、a=0.013)
で求められる重量部であり、このP重量部以上であって一般には約5重量部以下の割合で有機過酸化物が用いられる。ジクミルパーオキサイド以外の有機過酸化物にあっては、同等の有効官能基数で用いられる。
【0011】
ここで規定された重量部以下の有機過酸化物が用いられると、後記比較例1の結果に示されるように、破断強度が低下するばかりではなく、製品機能(固有振動数の変化)に影響するゴム硬度が従来タイプのものと同程度の耐熱性しか示さない。すなわち、トーショナルダンパの耐久性の確保には、初期および熱老化後のいずれにおいても必要な破断伸びが確保され、また製品機能である固有振動数の変化低減のためにゴム硬度変化の抑制が重要であるが、有機過酸化物量が少なく、破断強度が10MPa以下の場合、破断伸びは増加するが耐熱老化性が著しく低下し、ゴム硬度の変化が増大するようになる。一方、有機過酸化物量が多すぎると、破断強度・ゴム硬度変化には十分であるが、初期破断伸びが低下し、耐久機能を満足させなくなる。
【0012】
前記EPDM成分に加えて、これの70重量部当り約40重量部以下、好ましくは約25重量部以下の油展EPDMおよび/または約30重量部以下、好ましくは約20重量部以下の低粘度EPDMを添加して用いることができる。
【0013】
油展EPDMとしては、EPDMに対しての油展量が約60〜80重量%、好ましくは約65〜75重量%のEPDMが用いられる。この油展量がこの範囲内にないと、高温度での減衰係数の低下を防止することが困難となる。油展には、石油系炭化水素(パラフィン系、ナフテン系、アロマ系等)およびその水添物、各種石油樹脂等が用いられ、特に石油系炭化水素の水添物が用いられた場合には、高温時の伸びの確保が有効に達成される。実際には、このような油展量の市販品EPDMをそのまま用いることができる。
【0014】
また、低粘度EPDMとしては、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10以下、好ましくは8以下のものが用いられる。これ以上のムーニー粘度のものを用いると、高温時の伸びなどは確保されるものの、減衰係数の確保などが困難となる。実際には、このようなムーニー粘度を有する市販品EPDMをそのまま用いることができる。
【0015】
以上の各成分を含有するEPDM組成物中には、補強剤としてのカーボンブラックまたは白色系充填剤に加えて、必要に応じて加硫助剤としての酸化亜鉛、軟化剤、老化防止剤等が配合されて用いられる。組成物の調製は、公知の混練手段であるロール、ニーダ等を用いて行われ、それの架橋成形は、約170〜200℃で約3〜15分間程度プレス成形することによって行われる。
【0016】
このようなEPDM組成物は、接着タイプトーショナルダンパ用として、トーショナルダンパ用金属板上にこの組成物を適用し、上記架橋条件下で架橋成形することにより、トーショナルダンパを構成する。
【0017】
【発明の効果】
一般に、トーショナルダンパは熱老化などにより破断伸びが350%以下となると耐久的に成立しなくなるが、本発明に係るトーショナルダンパ用EPDM組成物は、耐熱老化性の向上により伸びの低下が大幅に抑えられた結果、破断伸びによって支配される耐久性が向上し、製品適用温度範囲が増加する。具体的には、120℃ではENBタイプEPDMを用いた現行タイプと同等以上の物性を示し、熱負荷が増大された130〜140℃といった高温雰囲気中でも十分に耐久性を有するトーショナルダンパを与える。
【0018】
また、製品機能である固有振動数はゴム硬度(65〜80)によって支配され、固有振動数の変化低減のためにはゴム硬度変化の抑制が重要であるが、本発明のトーショナルダンパ用EPDM組成物にあっては、その硬度変化を有効に抑制することができ、しかも破断強度が10MPa以上、初期破断伸びが400%以上、好ましくは450%以上の架橋物層を、トーショナルダンパ製造工程上好ましくないとされる二次架橋工程を省略しても得ることができる。
【0019】
このような特性を有するこのEPDM組成物はまた、120〜140℃の高温度雰囲気中で使用される定伸長疲労性を有する防振ゴム材料としても用いられる。
【0020】
【実施例】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0021】
Figure 2004292631
以上の各成分をニーダを用いて混練し、混練物を180℃で6分間プレス架橋して、シート状のプレス架橋物を得た。
【0022】
実施例2
実施例1において、ENBタイプEPDM量が20重量部に、VNBタイプEPDM量が50重量部に、有機過酸化物量が1.2重量部にそれぞれ変更された。
【0023】
実施例3
実施例1において、ENBタイプEPDMが用いられず、VNBタイプEPDM量が70重量部に、有機過酸化物量が1.0重量部にそれぞれ変更された。
【0024】
比較例1
実施例1において、有機過酸化物量が1.0重量部に変更された。
【0025】
比較例2
実施例1において、VNBタイプEPDMが用いられず、ENBタイプEPDM量が70重量部に、有機過酸化物量が3.0重量部に変更され、さらにイオウ0.2重量部が用いられた。
【0026】
以上の各実施例および比較例で得られた接着タイプトーショナルダンパ材料について、常態値(JIS K−6250準拠)および120℃、130℃、140℃での250時間老化試験後の常態値変化を測定した。得られた結果は、次の表に示される。
Figure 2004292631
【0027】
以上の結果から、次のようなことがいえる。
(1)EPDMを従来のENBタイプからVNBタイプに、全面的または部分的に変えると、耐熱老化性の向上がもたらされる(実施例1〜3)。
(2)EPDMをENBタイプからVNBタイプを変更した場合でも、規定された割合以下の有機過酸化物架橋剤が用いられると、破断強度が低下するばかりではなく、製品機能(固有振動数の変化)に影響するゴム硬度が従来タイプのものと同程度の耐熱性しか示さない(比較例1)。
(3)比較例2は、従来の一般的な接着タイプトーショナルダンパ用材料であり、低粘度EPDMや油展EPDMの採用、充填剤や加硫剤の最適化で、高硬度でも高破断伸びを成立させることで耐久性を確保している。120℃では十分な耐老化性を示すものの、130℃、250時間の段階で限界である。

Claims (7)

  1. ビニルノルボルネン[VNB]をジエン成分とするEPDMおよび有機過酸化物を含有してなるトーショナルダンパ用EPDM組成物。
  2. VNBをジエン成分とするEPDM、エチリデンノルボルネン[ENB]をジエン成分とするEPDMおよび有機過酸化物を含有してなるトーショナルダンパ用EPDM組成物。
  3. VNBタイプEPDM30〜100重量%に対しENBタイプ70〜0重量%の割合で用いられた請求項1または2記載のトーショナルダンパ用EPDM組成物。
  4. EPDM成分70重量部に対するジクミルパーオキサイド量Pが、EPDM成分中のVNBタイプEPDMの重量%Xに対し、P=−aX+1.6(ただし、a=0.013)で求められる重量部以上の割合で用いられる請求項3記載のトーショナルダンパ用EPDM組成物。
  5. さらに油展EPDMが添加された請求項1または2記載のトーショナルダンパ用EPDM組成物。
  6. さらに低粘度EPDMが添加された請求項1または2記載のトーショナルダンパ用EPDM組成物。
  7. 請求項1または2記載のEPDM組成物を金属板に架橋接着させたトーショナルダンパ。
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