JP4556281B2 - 防振ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は防振ゴム組成物に係り、特に自動車のトーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の使用温度の高い防振ゴムに好適な耐熱性防振ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車や各種車両では、エンジン駆動時の振動を吸収して騒音を防止するために、トーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の構成材料に防振ゴムが用いられている。これらの防振ゴムには、その使用環境温度が高いことから、耐熱性に優れることが要求されており、従来、耐熱性を高めた防振ゴムとして次のようなものが提案されている。
(1) 天然ゴム(NR)にスチレン・ブタジエンゴム(SBR)を配合したNR/SBR系ゴム
(2) エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)
(3) エチレン・アクリレートゴム(EAM)
(4) EPDMとNRとをブレンドしたEPDM/NR系、又は、EPDMとSBRとをブレンドしたEPDM/SBR系のブレンドゴムをパーオキサイドで架橋したゴム
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の防振ゴムのうち、NR/SBR系ゴムでは耐熱性が不十分であり、実用に供し得なかった。耐熱ポリマーのEPDM系ゴムであれば、耐熱老化性、耐圧縮永久歪性、耐候性等において、NR/SBR系のものよりも優れるが、耐油性、減衰特性に劣るという欠点があった。また、EPDM系ゴムは高分子主鎖間及び高分子主鎖〜充填剤間の相互作用が弱いために、高温ないし大歪下における物性低下の問題があり、適用範囲が制限されるという欠点もあった。EPDM系ゴムにおいて、減衰特性を改良することも種々試みられているが、いずれも作業性及び耐圧縮永久歪性の低下を招くという問題点があった。
【0004】
また、耐熱ポリマーのEAM系防振ゴムでは、耐熱老化性、耐圧縮永久歪性、耐候性、耐油性、減衰性等においてNR/SBR系のものよりも優れるが、耐寒性が劣る。しかも、EPDMに比べてEAMはコストが高いという問題もあった。
【0005】
また、EPDM/NR,EPDM/SBR系のパーオキサイド架橋ゴムでは、ブレンドによる物性低下、減衰性不足の問題があった。即ち、NRやSBRは、EPDMよりもパーオキサイド架橋に対する架橋効率が大きいためブレンド物の硬度、強力、伸びといった物性が低下する。
【0006】
このようなことから、従来において、耐熱性に優れた防振ゴムであって、減衰性が良好で、硬度、強力、伸びなどのゴム物性、耐圧縮永久歪性、耐油性等の諸特性にも優れ、また、これらのバランスにも優れた防振ゴムが未だ提供されていないのが実状である。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決し、トーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の高温環境下で使用される耐熱性防振ゴム組成物であって、高い減衰性を示す上に、硬度、強力、伸びなどのゴム物性、耐圧縮永久歪性、耐油性等の諸特性に優れ、しかもこれらのバランスも良好な防振ゴム組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の防振ゴム組成物は、ゴム成分としてEPM或いはEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)及びEPM(エチレン・プロピレンゴム)とEAM(エチレン・アクリレートゴム)とを含み、EPM或いは(EPDM及びEPM)とEAMとの含有割合が(EPDM及び/又はEPM)/EAM(重量比)=95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90であることを特徴とする。
【0009】
本発明者らは減衰性、硬度、強力、伸びなどのゴム物性、耐圧縮永久歪性、耐油性等の諸特性を損なうことなく防振ゴム組成物の耐熱性を改善すべく鋭意検討を重ねた結果、EAM,EPDM及び/又はEPMはそれぞれ単独では利点と欠点とを併せ持つものであるが、これらをブレンドすることで、互いの欠点を相補い、著しく優れた特性を示すことを見出した。これは、EAM、特に2元系のEAMはEPDM及び/又はEPMとPO共架橋特性が同等であるために、両者をブレンドすることにより物性の低下を引き起こすことなく、ブレンドによる良好な相乗効果が発揮されることによるものと考えられる。また、EAMのエチレン成分がEPDM及び/又はEPMの主鎖に相容すると共に、アクリレート(アクリル酸メチル)成分が非極性のEPDM及び/又はEPM主鎖に極性を付与し、主鎖間及び主鎖〜充填剤間の相互作用が増大されるため、高温又は大歪における物性向上が図られる。更に、EAMはムーニー粘度が低いため、EAMのブレンドでEPDM及び/又はEPMの高粘度に起因する加工性の低さを補う効果をも得ることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
本発明の防振ゴム組成物は、ゴム成分として、EPM或いは(EPDM及びEPM)とEAMとをその含有割合がEPM或いは(EPDM及びEPM)/EAM(重量比)=95/5〜5/95、好ましくは90/10〜10/90となるように含むものである。EPM或いは(EPDM及び/又はEPM)とEAMの配合割合がこの範囲外であると両者をブレンドすることによる本発明の効果を十分に得ることができない。
【0012】
なお、EPDMのジエン成分としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCPD)、1,4−ヘキサジエン(HD)等が挙げられ、EPM或いは(EPDM及びEPM)のエチレン/プロピレン比率(重量比)が40/60〜90/10であり、好ましくは50/50〜70/30である。また、EPDMの沃素価は5〜30が好ましい。
【0013】
一方、EAMとしてはアクリル酸メチル含量が40〜90重量%、特に50〜80重量%のものが好ましい。EAMは2元系又は架橋サイトを有する3元系が用いられるが、3元系の加硫物性は2元系の物性より劣るため、好ましくは2元系が用いられる。
【0014】
本発明において、架橋剤としてはパーオキサイドを用いるのが好ましい。パーオキサイドとしては、例えば、1,1−ジt−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジt−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルペルパーオキシ−イソプロピル)−ベンゼンなどを用いることができる。
【0015】
なお、上記架橋剤と共に、架橋助剤を併用することもできる。このような架橋助剤としては、例えば、硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどの硫黄又は硫黄化合物、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、フェニレンジマレイミド、トルイレンジマレイミドなどの多官能性モノマー類、p−キノンオキシム、p,p’−ベンゾイルキノンオキシムなどのオキシム化合物を用いることができる。
【0016】
本発明の防振ゴム組成物には、必要に応じて、充填剤、軟化剤、発泡剤の他、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、老化防止剤、紫外線吸収剤などの他の各種の添加剤を配合することができる。
【0017】
充填剤としては、例えば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF、FT、MTなどのカーボンブラックや、ホワイトカーボン、微粒子ケイ酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルクなどの無機充填剤、ハイスチレン樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、石油樹脂などの有機充填剤が挙げられる。
【0018】
軟化剤としては、例えば、ゴムに通常用いられるアロマティック油、ナフテニック油、パラフィン油などのプロセスオイルや、やし油などの植物油、アルキルベンゼンオイルなどの合成油、エステル系などの可塑剤などが挙げられる。これらのうち、プロセスオイルと可塑剤の併用が好ましい。場合により、リン酸グリコールエステルも使用できる。
【0019】
発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、無水硝酸ナトリウムなどの無機発泡剤、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、3,3’−ジスルホンヒドラジドジフェニルスルホン、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスホルムアミドなどの有機発泡剤が挙げられる。
【0020】
また、本発明の防振ゴム組成物には、その特性を損なわない範囲において他のゴム及び/又は樹脂の1種以上を混合して使用することもできる。
【0021】
本発明の防振ゴム組成物は、通常の場合次のような配合で使用されるが、本発明の防振ゴム組成物では、後述の実施例に示されるように、EPM或いは(EPDM及びEPM)/EAM比を調節することにより、得られる防振ゴムの減衰性や耐油性を調整することができることから、下記配合において使用目的、要求特性に応じてEPM或いは(EPDM及びEPM)/EAM比を制御すれば良い。
〔配合(PHR)〕
EPM或いは(EPDM及びEPM)/EAMゴム:100
カーボンブラック :0〜200
オイル :0〜200
ステアリン酸 :0〜10
亜鉛華 :0〜20
パーオキサイド :0.1〜20
架橋助剤 :0〜20
【0022】
このような本発明の防振ゴム組成物を、トーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の防振ゴムに適用するには、圧入、或いはポストボンド又は加硫接着による方法を採用することができる。
【0023】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0024】
実施例1〜4、比較例1〜3
表1に示す配合のゴム組成物について、165℃、30分で加硫を行い、下記方法で各種物性を評価し、結果を表2に示した。なお、パーオキサイドとしてはペロキシモンF−40(ジ−t−ブチルパーオキシ−ジ−イソプロピルベンゼン)を用いた。またEPDMとしては、ジエン成分としてENBを含み、沃素価12でエチレン/プロピレン=60/40(重量比)のものを用い、EPMとしてはエチレン/プロピレン=60/40(重量比)のものを用い、EAMとしてはアクリル酸メチル含量55重量%の2元系EAMを用いた。
〔硬度〕
JIS K 6301に基いて測定した。
〔強力(MPa)〕
JIS K 6301に基いて測定した。
〔伸び(%)〕
JIS K 6301に基いて測定した。
〔耐圧縮永久歪性(圧縮永久歪(%))〕
JIS K 6301に基いて100℃の温度条件で70時間経過後の歪率を測定した。
〔減衰性(tanδ)〕
25℃の温度条件で15Hzの振動を与えたときの損失係数tanδを東洋精機社製レオログラフで測定した。
〔耐熱性〕
120℃の温度条件で75時間経過後の硬度、強力及び伸びをそれぞれ上記方法により測定し、その変化又は変化率を算出した。
〔耐油性〕
JIS No.1 Oil中に100℃で22時間浸潰した後の硬度、強力、伸びをそれぞれ上記方法により測定し、その変化又は変化率を算出した。
〔低温性(脆化温度(℃))〕
JIS K 6301に準拠して脆化に到る温度を測定した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
表1,2より次のことが明らかである。
【0028】
即ち、比較例4のNR/SBR配合のものは、圧縮永久歪の判定値30%を満たさず、また耐熱性の伸び変化率も判定値−30%を満たさない。比較例1〜3は耐熱ポリマーを用いた例であり、いずれも比較例4に対して圧縮永久歪、耐熱性は優れるものの、比較例1は減衰性が判定値の0.22を満足せず、耐油性の伸び変化率も基準値−20%を満たさない。また、比較例2では低温性が判定値−40℃を満たしておらず、比較例3では比較例1に比べ減衰性の改善が見られるが物性の低下が見られる。
【0029】
これに対して、EPM或いは(EPDM及びEPM)/EAM配合の実施例1〜4では、物性、減衰性、耐熱性、耐油性及び低温性のすべてにおいて基準値を満足しており良好である。
【0030】
なお、実施例1〜3より、EAMの割合が多くなると減衰性、耐油性が良好になることが認められ、必要に応じてブレンド比率を変えることにより、これらを調整することが可能であることがわかる。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、減衰性、硬度、強力、伸びなどのゴム物性、耐圧縮永久歪性、耐油性等の諸特性に優れた防振ゴム組成物が提供される。
Claims (6)
- ゴム成分としてEPMとEAMとを含み、EPMとEAMとの含有割合がEPM/EAM(重量比)=95/5〜5/95であり、EPMのエチレン/プロピレン比率が40/60〜90/10(重量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物。
- 請求項1において、ゴム成分として更にEPDMを含み、EPDM及びEPMとEAMとの含有割合が(EPDM及びEPM)/EAM(重量比)=95/5〜5/95であり、EPDM及びEPMのエチレン/プロピレン比率が40/60〜90/10(重量比)であることを特徴とする防振ゴム組成物。
- 請求項1又は2において、EPM又は(EPDM及びEPM)とEAMとの含有割合が重量比で90/10〜10/90であることを特徴とする防振ゴム組成物。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、EAMのアクリレート含量が40〜90重量%であることを特徴とする防振ゴム組成物。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、EAMが2元系又は架橋サイトを有する3元系ゴムであることを特徴とする防振ゴム組成物。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、架橋剤としてパーオキサイドを含有することを特徴とする防振ゴム組成物。
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