JP2004203022A - 帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム - Google Patents

帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、帯電性プラスチック基材と蒸着膜の密着を強化し、デラミネーションの発生しないガスバリア性フィルムとしての帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】帯電防止性を有するプラスチック材料からなる基材の少なくとも一方の面に、リアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマを利用した前処理を施し、その上に厚さ5〜100nmの金属もしくは無機化合物からなる蒸着層を設けることを特徴とする帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
【選択図】図1

Description

本発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野に用いられる帯電性を有するガスバリア材としての帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムに関するものである。
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これらを遮断するガスバリア性等を備えることが求められている。そのため従来から、温度・湿度などの影響が少ないアルミ等の金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。
ところが、アルミ等の金属箔を用いた包装材料は、温度・湿度の影響がなく高度なガスバリア性に優れるが、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならないなどの欠点を有し問題があった。
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段によりアルミニウムなどの金属、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成したフィルムが開発されている。これらの蒸着フィルムは、酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、包装材料として好適とされている。
一方、粉体やエレクトロニクス製品の包装材料は、内容物の特性上、帯電防止性を有することが必要である。この帯電防止性は、内容物と接する包材内面に必要であることは勿論、直接接しない部材においても必要であることが知られている。例えば鰹節の包材では、包材外面の帯電性が内容物充填時に影響し、帯電防止性が小さい外装材を用いると、その帯電性のために鰹節が引き寄せられ、包装材シール部に噛み込まれ、密閉不良を起こす。このため、外装材はガスバリア性があり尚かつ帯電防止性があることが望まれている。しかしながら、帯電防止性を有する基材に、従来の方式で無機酸化物を施すと、帯電防止剤の作用により、基材と蒸着層に十分な密着性が得られない。これは、帯電防止剤が基材最表面に偏析し、蒸着層との密着性を阻害するためと考えられている。
この問題を解決するために、従来からプラズマを用いることによって、インライン前処理によりプラスチック基材上の金属または金属酸化物蒸着の密着性を改善するという試みはなされていた。
しかしながら、従来はインラインでプラズマ処理を行おうとすると、プラズマ発生のための電圧を印加する電極を基材のあるドラム側でなく、反対側に設置されている。この装置の場合、基材はアノード側に設置されることになるため、高い自己バイアスは得られず、結果として高い処理効果を発揮できなかった。
高い自己バイアスを得るために、直流放電方式を用いることも出来るが、この方法で高いバイアスの電圧を得ようとすると、プラズマのモードがグローからアークへと変化するため、大面積に均一な処理を行うことは出来ない。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、帯電性プラスチック基材と
蒸着膜の密着を強化し、デラミネーションの発生しないガスバリア性フィルムとしての帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、すなわち
請求項1記載の発明は、帯電防止性を有するプラスチック材料からなる基材の少なくとも一方の面に、リアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマを利用した前処理を施し、その上に厚さ5〜100nmの金属もしくは無機化合物からなる蒸着層を設けることを特徴とする帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項2記載の発明は、前記プラスチック材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、セルロース、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリウレタン類の少なくとも一種類以上を成分に持つプラスチック材料、それらの少なくとも一種類以上を共重合成分に持つプラスチック材料、もしくはそれらの化学修飾体の少なくとも一種類以上を成分に持つプラスチック材料のいずれかの材料であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項3記載の発明は、前記プラスチック材料が、延伸ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項4記載の発明は、前記ポリエステル類が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ボリブチレンナフタレートの単体もしくはそれらの共重合体からなることを特徴とする請求項2記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項5記載の発明は、前記RIEモードのプラズマを利用した前処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガス、またはこれらの混合ガスを用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項6記載の発明は、前記RIEモードのプラズマを利用した前処理が、自己バイアス値を200V以上2000V以下とし、またEd=プラズマ密度×処理時間で定義されるEd値が、100V・s・m-2以上10000V・s・m-2以下である低温プラズマによる処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項7記載の発明は、前記金属が、アルミニウム、錫、チタン或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項8記載の発明は、前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項9記載の発明は、前記RIEモードのプラズマを利用した前処理と蒸着層が、同一の製膜機(インライン製膜機)にて施されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項10記載の発明は、前記蒸着層の上に、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキ
シドおよびまたはその加水分解物およびまたはその重合物の少なくとも1種類以上を成分に持つ複合被膜を設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項11記載の発明は、前記水酸基含有高分子化合物が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)、セルロース、デンプンの少なくとも1種類以上を成分に持つことを特徴とする請求項10記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
請求項12記載の発明は、前記金属アルコキシドが、シランアルコキシド、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項10記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムである。
本発明の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムは、プラスチック基材にRIEによる前処理を行うことで、プラスチック基材と金属または無機酸化物蒸着層との密着を強化して、ラミ浮き、デラミネーションなどの発生しないものである。
また、この帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムは、食品及び医薬品や電子部材等の非食品等の包装に用いられる実用範囲の広い包装材料を提供する事が可能である。
以下に、本発明の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムの一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムの一例を示す断面図である。プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施した帯電防止性を有するプラスチック基材1表面上に、無機酸化物層2、複合被膜層3が形成されている構成の例を示したものである。金属または無機酸化物層2、複合被膜層3は基材の両面に形成してもよく、また多層にしてもよい。また、無機酸化物層2は金属層であってもよい。
本発明で用いられる基材1は、プラスチック材料からなり、蒸着薄膜層の透明性を生かすために可能であれば透明なフィルム基材であることが好ましい。基材の例としては、 前記プラスチック材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、セルロース、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリウレタン類の少なくとも一種類以上を成分に持つプラスチック材料、それらの少なくとも一種類以上を共重合成分に持つプラスチック材料、もしくはそれらの化学修飾体の少なくとも一種類以上を成分に持つプラスチック材料が挙げられる。前記ポリエステル類としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ボリブチレンナフタレートの単体もしくはそれらの共重合体からなる材料が例示される。基材は、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。この中で、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルムが好ましく用いられる。またこの基材の蒸着層が設けられる面と反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。特に、本発明におけるプラスチック材料としては、延伸ポリプロピレンが望ましい。
基材1の厚さはとくに制限を受けるものではなく、また包装材料としての適性を考慮して単体フィルム以外に異なる性質のフィルムを積層したフィルムを使用できる。尚プライ
マー層、無機酸化物からなる蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。
基材1と金属または無機酸化物層との密着を強化するために、表面にプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施すことが有効である。このRIEによる処理を行うことで、発生したラジカルやイオンを利用してプラスチック基材の表面に官能基を持たせるなどの化学的効果と、表面をイオンエッチングして不純物等を飛ばしたり平滑化するといった物理的効果の2つの効果を同時に得ることが可能である。このような表面処理を行うことで、後に行う蒸着の際に無機酸化物の緻密な薄膜を形成させることができる。その結果、基材と金属または無機酸化物層との密着性を強化させることができ、ガスバリア性向上やクラック発生防止につながるだけでなく、デラミネーションが起こることがない。
RIEによる前処理を行うためのガス種としては、アルゴン、酸素、窒素、水素を使用することが出来る。これらのガスは単独で用いても、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。また、2基の処理器を用いて、連続して処理を行ってもよい。
加工速度、エネルギーレベルなどで示される処理条件は、基材種類、用途、放電装置特性などに応じ、適宜設定するべきである。ただし、プラズマの自己バイアス値は200V以上2000V以下、Ed=プラズマ密度×処理時間で定義されるEd値が100V・s・m-2以上10000V・s・m-2以下にすることが必要であり、これより若干低い値でも、ある程度の密着性を発現するが、未処理品に比べて優位性が低い。また、高い値であると、強い処理がかかりすぎて基材表面が劣化し、密着性が下がる原因になる。プラズマ用の気体及びその混合比などに関してはポンプ性能や取り付け位置などによって、導入分と実効分とでは流量が異なるので、用途、基材、装置特性に応じて適宜設定するべきである。
本発明で用いられる金属からなる蒸着層としては、アルミニウム、錫、チタン或いはそれらの混合物が挙げられる。
また、本発明で用いられる無機酸化物からなる蒸着層としては、酸化アルミニウム、酸化珪素或いはそれらの混合物が挙げられる。
金属もしくは無機酸化物からなる蒸着層の厚さは、用いられる金属または無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。より好ましくは、10〜150nmの範囲内にあることである。
金属または無機酸化物からなる蒸着薄膜層をプラスチック基材上に形成する方法としては種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また蒸着薄膜層と基材の密着性及び蒸着薄膜
層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。
次いで、複合被膜層3を説明する。複合被膜層はガスバリア性を持った被膜層であり、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものを溶液とする。この溶液を金属または無機化酸化物からなる蒸着薄膜層にコーティング後、加熱乾燥し形成される。コーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。
本発明でコーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができ、これ以外のものを用いても一向に構わない。
また、金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3,C25等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
この溶液中にガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。
複合被膜層3の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって最適条件異なり特に限定しない。但し乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一が塗膜が得られなく十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあることである。
複合被膜層3の上に印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させて、包装材料とすることが出来る。
介在フィルムは、袋状包装材料時の破袋強度や突き刺し強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である必要がある。厚さは、材質や要求品質に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。
さらに、シーラント層は袋状包装体などを形成する際に接着層として設けられるもので
ある。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。
基材1の反対面にも、必要に応じて印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させることも可能である。
以下に本発明の帯電防止性を有する蒸着フィルムの実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
基材として厚さ15μmの帯電防止性延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(表面固有抵抗5.0×1011)の片面に、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施した。この時、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用い、処理ガスにはアルゴンを用いた。この上に、電子線加熱方式を用いた反応蒸着により、酸化アルミニウムを20nmの厚みで成膜して、強密着蒸着フィルムを作成した。
<実施例2>
処理ガスにアルゴン/酸素混合ガスを用いた以外は、実施例1と同様の方法で強密着蒸着フィルムを作成した。
<実施例3>
処理ガスにアルゴン/窒素混合ガスを用いた以外は、実施例1と同様の方法で強密着蒸着フィルムを作成した。
<実施例4>
処理方法として2基のプラズマ処理器を用いてRIEによる前処理を行い、始めにアルゴンによる処理を施し、続いて酸素による処理を連続して行った以外は、実施例1と同様の方法で強密着蒸着フィルムを作成した。
以下に、本発明の比較例について説明する。
<比較例1>
基材へのRIEによる前処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で蒸着フィルムを作成した。
<比較例2>
処理方法として一般的なインラインプラズマ処理器(冷却ドラム、ガイドロールの対面側に処理器がある)を使用して、プラズマエッチングによる前処理を行い、処理ガスにアルゴンガスを用いた以外は、実施例1と同様の方法で蒸着フィルムを作成した。
<比較例3>
処理方法として一般的なインラインプラズマ処理器(冷却ドラム、ガイドロールの対面側に処理器がある)を使用して、プラズマエッチングによる前処理を行い、処理ガスにアルゴン/酸素混合ガスを用いた以外は、実施例1と同様の方法で蒸着フィルムを作成した。
上記の実施例1〜4、比較例1〜3で得られた蒸着フィルム上に、下記に示す(1)液と(2)液を配合比(wt%)で6/4に混合した溶液を作成した。
(1)液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2 換算)の加水分解溶液
(2)液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)
この溶液をグラビアコート法により塗布乾燥し、厚さ0.4μmの複合被膜層を形成した。
さらに、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネートにより、上記蒸着フィルム/延伸ナイロン(15μm)/未延伸ポリプロピレン(70μm)の積層フィルムを作成し、下記に示す評価方法による酸素透過率およびラミネート強度、さらに表面固有抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
<評価1>
酸素透過率…モダンコントロール社製(MOCON OXTRAN 10/50A)を用いて、30℃−70%RH雰囲気下で蒸着工程後のフィルムを測定した。
<評価2>
ラミネート強度…上記積層サンプルの蒸着フィルム/延伸ナイロン間のラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS Z1707準拠)。但し、測定の際に測定部位を水で湿潤させながら行った。
Figure 2004203022
表1からあきらかに、実施例1〜4で得られた本発明の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムは、比較例1〜3で得られた蒸着フィルムに比較して酸素ガスバリア性および蒸着フィルム/プラスチック基材間のラミネート強度に優れている。プラスチック基材にRIEによる前処理を行うことで、プラスチック基材と金属または無機酸化物蒸着層との密着を強化して、ラミ浮き、デラミネーションなどの発生しないものである。
本発明の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルムは、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野に用いられる帯電性を有するガスバリア材として用いられる。
本発明の帯電防止蒸着フィルムの一例を示す断面図である。
符号の説明
1…プラスチック基材
2…無機酸化物蒸着層
3…複合被膜層
4…RIEによる前処理面層

Claims (12)

  1. 帯電防止性を有するプラスチック材料からなる基材の少なくとも一方の面に、リアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマを利用した前処理を施し、その上に厚さ5〜100nmの金属もしくは無機化合物からなる蒸着層を設けることを特徴とする帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  2. 前記プラスチック材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、セルロース、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリウレタン類の少なくとも一種類以上を成分に持つプラスチック材料、それらの少なくとも一種類以上を共重合成分に持つプラスチック材料、もしくはそれらの化学修飾体の少なくとも一種類以上を成分に持つプラスチック材料のいずれかの材料であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  3. 前記プラスチック材料が、延伸ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  4. 前記ポリエステル類が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ボリブチレンナフタレートの単体もしくはそれらの共重合体からなることを特徴とする請求項2記載の帯電防止強密着蒸着フィルム。
  5. 前記RIEモードのプラズマを利用した前処理が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガス、またはこれらの混合ガスを用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  6. 前記RIEモードのプラズマを利用した前処理が、自己バイアス値を200V以上2000V以下とし、またEd=プラズマ密度×処理時間で定義されるEd値が、100V・s・m-2以上10000V・s・m-2以下である低温プラズマによる処理であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  7. 前記金属が、アルミニウム、錫、チタン或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  8. 前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  9. 前記RIEモードのプラズマを利用した前処理と蒸着層が、同一の製膜機(インライン製膜機)にて施されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  10. 前記蒸着層の上に、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシドおよびまたはその加水分解物およびまたはその重合物の少なくとも1種類以上を成分に持つ複合被膜を設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  11. 前記水酸基含有高分子化合物が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)、セルロース、デンプンの少なくとも1種類以上を成分に持つことを
    特徴とする請求項10記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
  12. 前記金属アルコキシドが、シランアルコキシド、シランカップリング剤であることを特徴とする請求項10記載の帯電防止性能を有する強密着蒸着フィルム。
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