JP2007230123A - 強密着ガスバリア性積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

強密着ガスバリア性積層フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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友和 村瀬
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Abstract

【課題】
RIEによる前処理を行った基材上に酸化アルミニウム蒸着層を形成し、その膜を保護する複合被膜層を設けることで、従来の蒸着方法では得られなかった基材/酸化アルミニウム蒸着層の密着性を飛躍的に向上させ強密着ガスバリア性積層フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
引裂性を有する高分子樹脂組成物からなるプラスチック基材上の少なくとも一方の面に、膜厚5〜100nmの金属、又は金属酸化物の蒸着層を設けることを特徴とする強密着ガスバリア性積層フィルムを提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は食品、医薬品等の包装分野に用いられる直線引裂性等の引裂性を有する強密着ガスバリア性積層フィルムおよびその製造方法に関するものである。
食品、非食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質、特に食品においては蛋白質や油脂等の酸化、変質を抑制し、味・鮮度を保持することが必要であり、また無菌状態での取扱いが必要とされる医薬品においては有効成分の変質を抑制し、効能を維持することが求められる。そこで近年、包装材料を透過する酸素・水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これらの気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備える包装材料が求められている。
従来から、通常のガスバリアレベルのものについては、高分子の中では比較的にガスバリア性に優れるポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)等の樹脂フィルムやあるいはこれらの樹脂をラミネートまたはコーティングしたプラスチックフィルム等の高分子ガスバリア性フィルムが主に用いられてきたが、これらのフィルムは、温湿度依存性が大きく、高温または高湿下においてガスバリア性の低下が見られ、包装の用途によってはボイル処理や高温高圧力下でのレトルト処理を行うとガスバリア性が著しく低下することがある。また、PVDC系の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層体は、湿度依存性は小さいが、温度依存性がある上に、酸素バリア性を1cm3/m2.day.atm以下とするハイガスバリア材を実現することは困難であり、特に高防湿性や高度なガスバリア性が要求されるものについては使用できなかった。
また、PVDCやPAN等は廃棄・焼却の際に有害物質発生の危惧があり、焼却処理やリサイクリングなど廃棄物処理の面で問題がある。そのため、高防湿性を有し、かつ高度のガスバリア性を要求されるものについては、アルミニウム等の金属からなる金属箔等をガスバリア層として用いた包装材料を用いざるを得なかった。しかしながら、金属箔や金属蒸着フィルムは、ガスバリア性に優れるが包装材料を透視して内容物の識別や、検査の際金属探知器が使用できない等の問題、また使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない等の問題がある。
そのため、高分子樹脂組成物からなるプラスチックフィルム上にアルミニウム(Al)などの金属または金属化合物を真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD法)などの真空プロセスにより被膜を設けたバリア材が開発された。蒸着させる金属としては、酸化アルミニウム(AlOx)、一酸化珪素(SiO)などの珪素酸化物(SiOx)、酸化マグネシウム(MgO)などが挙げられる。これらは高分子樹脂組成物からなるガスバリア材より優れたガスバリア特性を有しており、高湿度下での劣化も少なく、この包装材料を用いた包装フィルムが一般的に普及し始めている。
包装袋には、強度と開封するときの易引裂性の一見相反すると思われる二つの特性を兼備していることが要求される。二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた包装袋は、引裂開封性が悪いため、開封し難いという問題がある。この引裂開封性を向上する技術として、VノッチやUノッチを付けたり、ティアテープ、ミシン目、フィルム表面に微細な傷を付ける等の工夫がなされている。しかし、このよう従来の技術では、引き裂けたとしても必要以上に力を要したり、直線的に引裂けないというトラブルがしばしば発生し、開封の仕方によっては内容物が飛散したり、内容物が液体の場合には衣服を汚したり、柔らかい菓
子の場合には割れたりするなどの問題もある。
また従来の蒸着方法では、プラスチック基材とシーラントとの密着力が弱く(剥離面は基材とアルミナ蒸着層の間)、フィルムをラミネートした際に基材の直線カット力がシーラントへうまく伝播せず、直線カット性能を十分発揮することができなかった。
密着性問題を解決するために、従来からプラズマを用いることによって、インライン前処理によりプラスチック基材上の金属酸化物蒸着の密着性を改善するという試みはなされていたが、従来はインラインでプラズマ処理を行おうとすると、プラズマ発生のための電圧を印加する電極を基材のあるドラム側でなく、反対側に設置されている。この装置の場合、基材はアノード側に設置されることになるため、高い自己バイアスは得られず、結果として高い処理効果を発揮できなかった。
高い自己バイアスを得るために、直流放電方式を用いることも出来るが、この方法で高いバイアスの電圧を得ようとすると、プラズマのモードがグローからアークへと変化するため、大面積に均一な処理を行うことは出来ない。
特許文献は以下の通り。
国際公開2003/009998
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、従来の蒸着方法では不十分であった蒸着層の密着強度を改善するために、基材表面にRIEモードのプラズマによる表面処理技術を利用した前処理を施すことでプラスチック基材の界面を改良し、プラスチック基材と蒸着膜との密着を強化した引裂性を有するガスバリア性積層フィルムを提供することにある。
請求項1記載の発明における課題を解決するための手段は、引裂性を有する高分子樹脂組成物からなるプラスチック基材上の少なくとも一方の面に、膜厚5〜100nmの金属、又は金属酸化物の蒸着層を設けることを特徴とする強密着ガスバリア性積層フィルムである。
請求項2記載の発明における課題を解決するための手段は、引裂性が直線引裂性であることを特徴とする請求項1記載の強密着ガスバリア性積層フィルムである。
請求項3記載の発明における課題を解決するための手段は、プラスチック基材面がリアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマ処理面であることを特徴とする請求項1または2記載の強密着ガスバリア性積層フィルムである。
請求項4記載の発明における課題を解決するための手段は、リアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマ処理面が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガス、またはこれらの混合ガスによるリアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマ処理面であることを特徴とする請求項1から3何れか記載の強密着ガスバリア性積層フィルムである。
請求項5記載の発明における課題を解決するための手段は、プラスチック基材が、ポリテトラメチレングリコールを含有したポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート(PET)からなる、一方向に直線引裂性を有する一軸若しくは二軸延伸ポリエ
ステルフィルムであることを特徴とする請求項1から4何れか記載の強密着ガスバリア性積層フィルムである。
請求項6記載の発明における課題を解決するための手段は、プラスチック基材が、分子量600〜4,000のポリテトラメチレングリコールを5〜20wt%含有したポリブチレンテレフタレート(変性PBT)と、ポリエチレンテレフタレートとを、PET/変性PET=70/30〜95/5(重量比)の割合になっている二軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項5記載の強密着ガスバリア性積層フィルムである。
請求項7記載の発明における課題を解決するための手段は、請求項1から6何れか記載の強密着ガスバリア性積層フィルムの蒸着層上に1種以上の金属アルコキシド或いはその加水分解物と、水酸基を有する水性高分子との複合物からなる被膜を設けることを特徴とする強密着ガスバリア性積層フィルムである。
請求項8記載の発明における課題を解決するための手段は、請求項1から7何れか記載の強密着ガスバリア性積層フィルムの製造方法において、RIEによるプラスチック基材の処理の工程と、蒸着層を設ける工程が、蒸着機インラインにて行われることを特徴とする直線引裂性を有する強密着ガスバリア性積層フィルムの製造方法である。
上記発明に依れば、プラスチック基材と蒸着膜の密着を強化することで、ラミネートフィルムの直線カット性能等の引裂性を維持したガスバリア性積層フィルムを提供することが出来る。
密着性の劣化を抑える作用としては、RIEプラズマによる基材表面弱結合層(Weak Boundary Layer(WBL))やPETであれば加水分解層などの、密着強度が低下を招く層の除去による効果と考えられる。これによりフレッシュな基材表面が提供され、酸化アルミニウム蒸着との密着性が向上すると同時に、耐水劣化を起こさない界面を形成するものと考えられる。
本発明の強密着ガスバリア性積層フィルムは、RIEによる前処理を行った基材上に酸化アルミニウム蒸着層を形成し、その膜を保護する複合被膜層を設けることで、従来の蒸着方法では得られなかった基材/酸化アルミニウム蒸着層の密着性を飛躍的に向上させることが可能である。また、可撓性にも優れるので、乱雑な取扱いにもバリア性を損なうことなく、食品など内容物の長期保存を可能にするものである。またこの積層フィルムは、食品、非食品、医薬品等の包装に用いられる実用範囲の広い包装材料を提供する事が可能である。
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の強密着蒸着フィルムを説明する断面図である。プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施したプラスチック基材1表面上に、酸化アルミニウム層2、複合被膜層3が形成されている構造である。酸化アルミニウム層2、複合被膜層3は基材の両面に形成しても、多層にしてもよい。
本発明の直線引裂性を有するガスバリア性積層フィルムに用いる透明な高分子材料からなるプラスチック基材の例としては、分子量600〜4,000のポリテトラメチレングリコールを5〜20重量%含有したポリブチレンテレフタレート(変性PBT)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)とを、PET/変性PET=70/30〜95/5(
重量比)の割合で混合してなる高分子フィルムである。
本発明の基材1を構成するPETは、公知の製法、すなわち、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとからのエステル交換反応法、あるいは、テレフタル酸とエチレングリコールとからの直接エステル化法によりオリゴマーを得た後、溶融重合、あるいはさらに固相重合して得られるものをいうが、本発明の効果を損ねない範囲であれば他の成分を共重合することができる。
他の共重合成分としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などのジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸などのオキシカルボン酸、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコールや、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの多官能化合物が挙げられる。
ポリテトラメチレングリコールの分子量は、600〜4,000であることが必要であり、好ましくは1,000〜3,000、さらに好ましくは1,000〜2,000である。分子量が600未満の場合には、直線引裂性が得られず、また4,000を超える場合には、機械的強度、寸法安定性、ヘーズなどの性能が低下し、また、安定したフィルムの直線引裂性が発現しない。
本発明におけるプラスチック基材は、変性PBTは、ポリテトラメチレングリコールを5〜20質量%含有することが必要であり、その含有量は10〜20質量%が好ましく、10〜15質量%がさらに好ましい。ポリテトラメチレングリコールの含有量が5質量%未満の場合には、得られるフィルムの引裂直線性が発現せず、20質量%を超える場合には、得られるフィルムの機械的強度、寸法安定性、ヘーズなどの性能が低下し、また、安定したフィルムの引裂直線性を得ることが困難となる。また、ポリテトラメチレングリコールの含有量が20質量%を超える場合には、特に量産スケールで生産した場合に、押出時にフィルムが脈動する現象(いわゆるバラス現象)が発現することがありフィルムの厚み斑が大きくなるという問題が発生する。
変性PBTとPETとの質量比が、変性PBT/PET=30/70〜5/95、好ましくは20/80〜10/90、さらに好ましくは15/85〜10/90であることが必要である。変性PBTの比率が5質量%未満の場合には引裂直線性が得られず、30質量%を超える場合には、フィルムの厚み変動が大きくなったり、得られるフィルムの引裂直線性が低下するのみならず、機械的強度、寸法安定性、ヘーズなどの性能が低下して実用性能に問題が生じる。すなわち、フィルムの引裂直線性と実用性能を与えるためには、PETと変性PBTの比率を上記範囲内とすることが必要である。
プラスチック基材1の厚さは特に制限を受けるものではなく、無機酸化物からなる蒸着薄膜層、ガスバリア性複合被膜層を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には、3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。
引裂きに関して、上記プラスチック基材は混合後の溶融押出しの過程で、PETとポリテトラメチレングリコールの2成分の溶融粘度が異なる為、ポリテトラメチレングリコールは流れ方向(MD方向)に棒状に配列した構造を形成する。PETとポリテトラメチレングリコールは弾性率が異なる為、MD方向に引裂く際にPETとポリテトラメチレングリコールの界面にて応力と歪みのバランスが崩れる。ポリテトラメチレングリコールは分
散して断続的にMD方向に配列する為、MD方向に直線的に引き裂けていくというメカニズムを持つと考えられる。
このプラスチック基材1上に堆積させる蒸着薄膜層の厚さは、一般的には5〜30nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし、膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が30nmを越える場合は、薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じる恐れがある。より好ましくは、10〜15nmの範囲内にあることである。
酸化アルミニウム層をプラスチック基材上に形成する方法としては、種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD法)などを用いることも可能である。但し生産性を考慮すれば、、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては、電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると、電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また、蒸着薄膜層と基材の密着性及び蒸着薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。
このプラスチック基材1と金属または無機酸化物層との密着を強化するために、表面にプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施すことが有効である。このRIEによる処理を行うことで、発生したラジカルやイオンを利用してプラスチック基材の表面に官能基を持たせるなどの化学的効果と、表面をイオンエッチングして不純物等を飛ばしたり平滑化するといった物理的効果の2つの効果を同時に得ることが可能である。このような表面処理を行うことで、後に行う蒸着の際に無機酸化物の緻密な薄膜を形成させることができる。その結果、基材と金属または無機酸化物層との密着性を強化させることができ、ガスバリア性向上やクラック発生防止につながるだけでなく、デラミネーションが起こることがない。
RIEによる前処理を行うためのガス種としては、アルゴン、酸素、窒素、水素を使用することが出来る。これらのガスは単独で用いても、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。また、2基の処理器を用いて、連続して処理を行ってもよい。
加工速度、エネルギーレベルなどで示される処理条件は、基材種類、用途、放電装置特性などに応じ、適宜設定するべきである。ただし、プラズマの自己バイアス値は200V以上2,000V以下、Ed=プラズマ密度×処理時間で定義されるEd値が100W.s/m2以上10,000W.s/m2以下にすることが必要であり、これより若干低い値でも、ある程度の密着性を発現するが、未処理品に比べて優位性が低い。また、高い値であると、強い処理がかかりすぎて基材表面が劣化し、密着性が下がる原因になる。プラズマ用の気体及びその混合比などに関してはポンプ性能や取り付け位置などによって、導入分と実効分とでは流量が異なるので、用途、基材、装置特性に応じて適宜設定するべきである。
RIEによる前処理と蒸着が、同一成膜機(インライン成膜機)にて行っても良い。インライン成膜により、工程を短縮し、安価なフィルムを提供することが出来る。
次いで複合被膜層3を説明する。複合被膜層はガスバリア性を持った被膜層であり、水性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/ア
ルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものを溶液とする。この溶液を金属または無機化酸化物からなる蒸着薄膜層にコーティング後、加熱乾燥し形成される。コーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。
本発明でコーティング剤に用いられる水性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるので好ましい。
また本発明にて用いた金属アルコキシドは、一般的にM(OR)n(M:Si、Ti、Al、Zr等の金属、R:CH3、C25等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的には、テトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウムなどが挙げられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
なお、金属アルコキシドと水溶性高分子の混合からなる複合皮膜層は、水素結合からなるため、水に膨潤し溶解する恐れがある。これを防ぐために、金属アルコキシドにシランカップリング剤を添加することが好ましい。
上記溶液中にガスバリア性を損なわない範囲にて、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法など従来公知の方法を用いることが可能である。
複合被膜層の厚さは、目的とするレベルによって異なるが、通常0.01〜10μmである。0.01μm以下になると目的とするガスバリア性が得られず、50μm以上の場合、被膜へのクラックが入りやすいことや、十分な透明性が得られない場合がある。より好ましくは、0.1〜10μmの範囲にあることである。
以下に本発明の実施例を具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
厚さ12μmの直線引裂性を有する2軸延伸ポリエステルテレフタレート(PET)フィルムの片面に、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施した。この時、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用い、自己バイアス値は800V、Ed値は300W.s/m2とした。処理ガスにはアルゴン/酸素混合ガスを用いた。この上に、電子線加熱方式を利用した真空蒸着により、酸化アルミニウムを12nmの厚みで成膜して、蒸着フィルムを作製した。
この蒸着フィルム上に、下記に示す(1液)と(2液)を配合比(固形分比)で65/35に混合した溶液を作成し、グラビアコート法により塗布乾燥し、厚さ0.4μmの複合被膜層を形成した。
(1液):テトラエトキシシラン14.0gに塩酸(0.02N)とメタノールを4/
1の割合で混合した溶液を28.0gを加え、30分間撹拌し加水分解溶液を作製する。
(2液):ポリビニルアルコールの固形分5wt%溶液を作製する。
<比較例1>
プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施さず、それ以外は、実施例1と同様の方法でバリアフィルムを作製した。
<比較例2>
直線引裂性を持たない2軸延伸ポリエステルテレフタレート(PET)フィルムの片面に、実施例1と同様の方法で蒸着フィルムを作製した。
<比較例3>
直線引裂性を有する2軸延伸ポリエステルテレフタレート(PET)フィルム単体。
更にノンソルベントラミネートにより、上記蒸着フィルム/未延伸ポリプロピレン(25μm)の積層サンプルを作成した。
<評価1 ラミネート強度>
積層サンプルの蒸着フィルム/未延伸ポリプロピレン間のラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS Z1707準拠)。結果を表1に示す。
<評価2 ガスバリア性>
本発明品のガスバリア性を酸素透過度測定装置(モダンコントロール社製 MOCON
OXTRAN 2/21)、水蒸気透過度測定装置(モダンコントロール社製 MOCON PERMATRAN 3/21)を用い、40℃90%RH雰囲気の条件にて測定した。結果を表1に示す。
<評価3 各種フィルムの直線引裂性>
縦方向300m×横方向200mm(A4版大)のカットサンプルを採取する。端から40mm幅間隔でその中央に40mmの入れ目(ノッチ)を入れる(図2)。右方向へフィルムのMD方向を角度30°傾ける。上記サンプルについて、速度2.5mm/分で手前方向に100mm引き裂いた時のセンターからのズレ量(mm)を測定する。N=5測定し、平均のズレ量(mm)を直線引裂性とする。
<評価4 各種フィルムの引裂き強度>
実施例1のフィルム及び、以下に示す各種フィルムの引裂き強度を測定した(JIS K7128準拠)。
表1は以下の通り。
Figure 2007230123
表2は以下の通り。
Figure 2007230123
表3は以下の通り。
Figure 2007230123
本発明の直線引裂性を有する強密着透明ガスバリア性積層フィルムの断面図である。 直線引裂性の評価方法を示す平面図である。
符号の説明
1: プラスチック基材
2: 無機酸化物蒸着層
3: 複合被膜層
4: RIEによる前処理面

Claims (8)

  1. 引裂性を有する高分子樹脂組成物からなるプラスチック基材上の少なくとも一方の面に、膜厚5〜100nmの金属、又は金属酸化物の蒸着層を設けることを特徴とする強密着ガスバリア性積層フィルム。
  2. 引裂性が直線引裂性であることを特徴とする請求項1記載の強密着ガスバリア性積層フィルム。
  3. プラスチック基材面がリアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマ処理面であることを特徴とする請求項1または2記載の強密着ガスバリア性積層フィルム。
  4. リアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマ処理面が、アルゴン、窒素、酸素、水素のうちの1種類のガス、またはこれらの混合ガスによるリアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマ処理面であることを特徴とする請求項1から3何れか記載の強密着ガスバリア性積層フィルム。
  5. プラスチック基材が、ポリテトラメチレングリコールを含有したポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレート(PET)からなる、一方向に直線引裂性を有する一軸若しくは二軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1から4何れか記載の強密着ガスバリア性積層フィルム。
  6. プラスチック基材が、分子量600〜4,000のポリテトラメチレングリコールを5〜20wt%含有したポリブチレンテレフタレート(変性PBT)と、ポリエチレンテレフタレートとを、PET/変性PET=70/30〜95/5(重量比)の割合になっている二軸延伸ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項5記載の強密着ガスバリア性積層フィルム。
  7. 請求項1から6何れか記載の強密着ガスバリア性積層フィルムの蒸着層上に1種以上の金属アルコキシド或いはその加水分解物と、水酸基を有する水性高分子との複合物からなる被膜を設けることを特徴とする強密着ガスバリア性積層フィルム。
  8. 請求項1から7何れか記載の強密着ガスバリア性積層フィルムの製造方法において、RIEによるプラスチック基材の処理の工程と、蒸着層を設ける工程が、蒸着機インラインにて行われることを特徴とする直線引裂性を有する強密着ガスバリア性積層フィルムの製造方法。
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