JP4385835B2 - 強密着蒸着フィルムおよびそれを用いたレトルト用包装材料 - Google Patents

強密着蒸着フィルムおよびそれを用いたレトルト用包装材料 Download PDF

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Description

本発明は、透明性を有する蒸着フィルム、並びにそれを用いた包装材料に関する。更に詳しくは、食品及びレトルト食品分野や医薬品、電子部材等の非食品分野の包装に用いられる実用範囲の広い包装材料であって、特にレトルト殺菌等の加熱殺菌が必要な包装分野等に好適に使用される強密着蒸着フィルムおよびそれを用いたレトルト用包装材料に関するものである。
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これらを遮断するガスバリア性等を備えることが求められている。そのため従来から、温度・湿度などの影響が少ないアルミ等の金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。
ところが、アルミ等の金属箔を用いた包装材料は、温度・湿度の影響がなく高度なガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならない、検査の際金属探知器が使用できないなどの欠点を有し問題があった。
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、例えば特許文献1、2等に記載されているような高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段により酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を形成したフィルムが開発されている。これらの蒸着フィルムは、透明性及び酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、金属箔等では得ることのできない透明性、ガスバリア性を有する包装材料として好適とされている。
しかしながら、従来のように前処理を施さない基材に、無機酸化物を蒸着したフィルムでは、基材と蒸着膜の密着性が弱いために、ボイル、レトルト処理などの加熱殺菌処理を行うとデラミネーションを引き起こすという欠点があった。また、密着性の低下により、ガスバリア性も劣化するという問題も起こっていた。
この問題を解決するために、従来からプラズマを用いることによって、インライン前処理によりプラスチック基材上の金属酸化物蒸着の密着性を改善するという試みはなされていた。
しかし、特許文献3に示されているように従来はインラインでプラズマ処理を行おうとすると、プラズマ発生のための電圧を印加する電極を基材のあるドラム側でなく、反対側に設置されている。この装置の場合、基材はアノード側に設置されることになるため、高い自己バイアスは得られず、結果として高い処理効果を発揮できないという問題点があった。
高い自己バイアスを得るために、直流放電方式を用いることも出来るが、この方法で高いバイアスの電圧を得ようとすると、プラズマのモードがグローからアークへと変化するため、大面積に均一な処理を行うことは出来ない。
特許文献は以下の通り。
米国特許第3442686号明細書 特公昭63−28017号公報 特開平11−262970号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ポリエチレンテレフタレートフィルムと無機酸化物蒸着膜の密着を強化し、特にレトルトなどの加熱殺菌を行ってもデラミネーションが発生せず、ガスバリア性の劣化のない強密着蒸着フィルムおよびそれを用いたレトルト用包装材料を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、少なくとも一方の表面に厚さ5〜100nmの無機酸化物からなる蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる強密着蒸着フィルムにおいて、
前記強密着蒸着フィルムを構成するポリエチレンテレフタレートフィルムの蒸着層を設けた面が、リアクティブイオンエッチング(RIE)を利用したプラズマ前処理を施した面であり、
該プラズマ前処理が、印加電力が120Wであり、処理時間が0.1〜0.5secであり、処理ガスがアルゴンであり、処理ユニット圧力が2.0Paであり、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用いるものであり、
該蒸着層を取り除いた場合の該フィルム表面のX線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、出力100W)によるC1s波形分離から求めたC−C結合の半値幅が1.5〜1.7eVの範囲であることを特徴とする強密着蒸着フィルムである。
請求項2記載の発明は、少なくとも一方の表面に厚さ5〜100nmの無機酸化物からなる蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる強密着蒸着フィルムにおいて、
前記強密着蒸着フィルムを構成するポリエチレンテレフタレートフィルムの蒸着層を設けた面が、リアクティブイオンエッチング(RIE)を利用したプラズマ前処理を施した面であり、
該プラズマ前処理が、印加電力が3000〜8000Wであり、処理時間が0.025〜0.05secであり、処理ガスがアルゴンを含み、処理ユニット圧力が2.0Paであり、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用いるものであり、
該蒸着層を取り除いた場合の該フィルム表面のX線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、出力100W)によるC1s波形分離から求めたC−C結合の半値幅が1.5〜1.7eVの範囲であることを特徴とする強密着蒸着フィルムである。
請求項3記載の発明は、該X線光電子分光測定における該フィルム表面が、水に少なくとも1種類以上のアンモニア、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミンなどの弱アルカリ性のアミン類を、0.01%〜10%添加した処理水に浸漬により行って蒸着層を取り除いた表面であることを特徴とする請求項1または2記載の強密着蒸着フィルムである。
請求項4記載の発明は、前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムもしくはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の強密着蒸着フィルムである。
請求項5記載の発明は、前記無機酸化物からなる蒸着層の上に、さらに水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を塗布し加熱乾燥してなる複合膜層を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の強密着蒸着フィルムである。
請求項6記載の発明は、前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項5記載の強密着蒸着フィルムである。
請求項7記載の発明は、前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−CO−エチレン)、セルロース、デンプンの少なくとも1種類以上を成分に持つことを特徴とする請求項5または6記載の強密着蒸着フィルムである。
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の強密着蒸着フィルムを用
いて作製したことを特徴とするレトルト用包装材料である。
本発明によれば、無機酸化物層を蒸着したPETフィルムを、アミン系アルカリを添加した水溶液中に浸漬などして表面状態を維持しながら無機酸化物層のみを除去し、除去後のPETフィルム表面のXPS測定を行った時に、C1s波形分離から求めたC−C結合の半値幅が1.5〜1.7eVとなる様な構成のものとした場合、PETフィルムと無機酸化物層は極めて良好な密着性を示す強密着蒸着フィルムが得られる。更に、この積層フィルムを包装材料に用いると、レトルトなどの加熱殺菌を行った場合においても、デラミネーションなどが発生せず、ガスバリア性の劣化しない強密着蒸着フィルムおよびそれを用いたレトルト用包装材料を提供することができる。
以下に、本発明の1実施例としての最良のの実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の強密着蒸着フィルムを説明する断面図である。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム1の表面上に、無機酸化物層2、複合被膜層3が形成されている構造である。無機酸化物層2、複合被膜層3は基材の両面に形成してもよく、また多層にしてもよい。無機酸化物層を形成する側のPETフィルム表面上にリアクティブイオンエッチング(RIE)を利用したプラズマ処理を施すより、プラズマ前処理層4を設けることも出来る。このプラズマ前処理層4は基材の両面に形成してもよい。
PETフィルムは未延伸、延伸のどちらでもよく、延伸の場合にも延伸倍率には特に制限はない。また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。フィルムの厚さはとくに制限を受けるものではなく、また包装材料としての適性を考慮して単体フィルム以外に異なる性質のフィルムを積層したフィルムを使用できる。尚プライマー層、無機酸化物からなる蒸着薄膜層、ガスバリア性被膜層を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。このPETフィルムの蒸着層が設けられる面と反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。
X線光電子分光法による測定(XPS測定)では、被測定物質の表面から数nmの深さ領域での原子の種類と濃度やその原子と結合している原子の種類やそれら結合状態が分析でき、元素比率、官能基比率などを求めることができる。そのため本発明の強密着蒸着フィルムのように、厚さ5〜100nmの無機酸化物からなる蒸着層を設けたPETフィルムの場合には、この状態のままではPETフィルム表面の測定を行うことは不可能である。Arイオンエッチングで蒸着層を掘って測定する方法もあるが、PETが若干でもエッチング処理されてしまうため、測定結果が意味をなさないものになってしまう。そこで、まずPETフィルム上の無機酸化物蒸着層を取り除く必要がある。
この方法として、無機酸化物蒸着層を取り除くための処理水中にフィルムを浸漬する方法がある。処理に使用する水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水など特に制限されるものではない。また、水温は特に制限されないが、好ましくは50℃以上がよい。更にこの水中に少なくとも1種類以上のアンモニア、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミンなどの弱アルカリ性のアミン類を添加する必要がある。このようなアミン類を添加することで、短時間で完全に無機酸化物を除去することが可能である。添加量は0.01%〜10%の範囲にすることが好ましい。0.01%より少ないと、完全除去までに時間が長くかかったり、完全に除去することが出来ない。また、10%以上になるとPETフィルム自体にも影響を及ぼ
し、無機酸化物層除去後の表面が汚染されたり、PETの構造が破壊されるおそれがある。
図2はXPS測定で得られる未処理PETのC1s波形をピーク分離解析したスペクトルである。C1s波形はC−C結合5、C−O結合6、COO結合7に分離される。なお、それぞれの結合エネルギーの値は、285.0eV(C−C結合)、286.6〜286.7eV(C−O結合)、288.9〜289.0eV(COO結合)である。
上記のように無機酸化物層を除去した後のPETフィルム表面のXPS測定を行った時、C1s波形分離から求めたC−C結合の半値幅が1.5〜1.7eVとなる場合、このPETフィルムと無機酸化物層は極めて良好な密着性を示し、レトルトなどの加熱殺菌処理を行ってもデラミネーションが生じない。
それに対し、未処理のPETフィルムの場合には、無機酸化物層を除去した後のPETフィルム表面は、C−C結合の半値幅は1.45eV程度の値になる。このような場合はPETフィルムと無機酸化物層の密着性が悪く、レトルトなどの加熱殺菌処理を行うとデラミネーションが発生する。また、半値幅が1.5eV未満になる状態の時は、フィルム表面の処理が弱く、未処理のPETフィルムと同様に密着性が悪くなると共に、加熱殺菌処理後のガスバリア性も劣化する。また半値幅が1.7eVより大きい時は、フィルム表面が処理されすぎており、表面が劣化してしまうため密着性が悪くなる。
上記のような無機酸化物層と密着のよいPETフィルムを得るために、PETフィルム表面にリアクティブイオンエッチング(RIE)を利用したプラズマ前処理を施すことが有効である。RIEを利用したプラズマ前処理を行うことで、発生したラジカルやイオンを利用してPETフィルムの表面構造を化学的に変化させることが可能であり、C−C結合の半値幅を制御することができる。更にこの処理を行うことで、蒸着の際に無機酸化物の緻密な薄膜を形成させることができる。その結果、基材と無機酸化物層との密着性を強化させることができ、ガスバリア性向上やクラック発生防止につながるだけでなく、レトルトなどの加熱殺菌を行った場合においても、デラミネーションが起こることがない。
次に、無機酸化物層2について、詳しく説明する。無機酸化物からなる蒸着薄膜層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはそれらの混合物などの無機酸化物の蒸着膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等のを有する層であればよい。各種殺菌耐性を配慮するとこれらの中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素を用いることがより好ましい。ただし本発明の蒸着薄膜層は、上述した無機酸化物に限定されず、上記条件に適合する材料であれば用いることが可能である。
蒸着薄膜層の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。より好ましくは、10〜150nmの範囲内にあることである。
無機酸化物からなる蒸着薄膜層をプラスチック基材上に形成する方法としては種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれか
の方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また蒸着薄膜層と基材の密着性及び蒸着薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、蒸着膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素等の各種ガスなど吹き込む反応蒸着を用いても一向に構わない。
次いで、複合被膜層3を説明する。複合被膜層はガスバリア性を持った被膜層であり、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものを溶液とする。この溶液を無機化酸化物からなる蒸着薄膜層にコーティング後、加熱乾燥し形成される。コーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。
本発明でコーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができ、これ以外のものを用いても一向に構わない。
また、金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3,C25等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
この溶液中にガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。
複合被膜層の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって最適条件異なり特に限定しない。但し乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一が塗膜が得られなく十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあることである。
複合被膜層3の上に印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させて、包装材料とすることが出来る。
介在フィルムは、袋状包装材料時の破袋強度や突き刺し強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である必要がある。厚さは、材質や要求品質に応じて決められるが、一般的には10
〜30μmの範囲である。
更に、シーラント層は袋状包装体などを形成する際に接着層として設けられるものである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。
基材1の反対面にも、必要に応じて印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させることも可能である。
以下に本発明の強密着蒸着フィルムの実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[表面状態分析方法]
測定に用いたX線光電子分光装置は、日本電子株式会社製JPS−90MXVを用い、X線源としては非単色化MgKα(1253.6eV)を使用、出力は100W(10kV−10mA)で測定した。定量分析にはO1sで2.28、C1sで1.00の相対感度因子を用いて計算をした。C1s波形の波形分離解析にはガウシアン関数とローレンツ関数の混合関数を使用し、帯電補正はベンゼン環に由来するC−C結合ピークを285.0eVとして補正した。
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの未処理面に、以下の条件にてリアクティブイオンエッチング(RIE)を利用したプラズマ前処理を施した。この時、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用いた。
[プラズマ処理条件]
印加電力:120W
処理時間:0.1sec
処理ガス:アルゴン
処理ユニット圧力:2.0Pa
この上に、電子線加熱方式を用いた反応蒸着により、酸化アルミニウムを15nmの厚みで成膜して、強密着蒸着フィルムを作成した。
次にこのフィルムを1.0wt.%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化物アルミニウム蒸着層を取り除いた後、そのフィルム表面のXPS測定を行った。
プラズマ前処理時の処理時間を0.5secにした以外は、実施例1と同様の方法で強密着蒸着フィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt.%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に90℃で3分間浸漬し、酸化物アルミニウム蒸着層を取り除いた後、そのフィルム表面のXPS測定を行った。
プラズマ前処理時の印加電力を3000W、処理時間を0.05secにした以外は、実施例1と同様の方法で強密着蒸着フィルムを作成した。次にこのフィルムを2.0wt.%のトリエチルアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化物アルミニウ
ム蒸着層を取り除いた後、そのフィルム表面のXPS測定を行った。
プラズマ前処理時の印加電圧を8000W、処理時間を0.025sec、処理ガスをアルゴン/酸素混合ガスにした以外は、実施例1と同様の方法で強密着蒸着フィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt.%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化物アルミニウム蒸着層を取り除いた後、そのフィルム表面のXPS測定を行った。
基材へのRIEによる前処理を行わず、未処理のPETフィルムに対して実施例1と同様の方法で蒸着フィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt.%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化物アルミニウム蒸着層を取り除いた後、そのフィルム表面のXPS測定を行った。
PETフィルムにコロナ処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で蒸着フィルムを作成した。次にこのフィルムを2.0wt.%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化物アルミニウム蒸着層を取り除いた後、そのフィルム表面のXPS測定を行った。
印加電圧120W、処理時間10secにした以外は、実施例1と同様の方法で蒸着フィルムを作成した。次にこのフィルムを2.0wt.%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化物アルミニウム蒸着層を取り除いた後、そのフィルム表面のXPS測定を行った。
印加電圧1000W、処理時間を0.05sec、処理ガスをアルゴン/酸素混合ガスにした以外は実施例7と同様に行った。
実施例1〜4、比較のための実施例5〜8の蒸着フィルム上に、下記に示す(1)液と(2)液を配合比(wt%)で6/4に混合した溶液を作成した。
(1)液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2換算)の加水分解溶液
(2)液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)
この溶液をグラビアコート法により塗布乾燥し、厚さ0.4μmの複合被膜層を形成した。
更に、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネートにより、上記蒸着フィルム/延伸ナイロン(15μm)/未延伸ポリプロピレン(70μm)のレトルト用包装材料を作成した。
[評価1]
上記積層サンプルの蒸着フィルム/延伸ナイロン間のラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS Z1707準拠)。但し、測定の際に測定部位を水で湿潤させながら行った。結果を表1に示す。
[評価2]
上記積層サンプルを用いて4辺をシール部とするパウチを作製し、内容物としてを充填した。その後、121℃−30分間のレトルト殺菌を行った。評価としてレトルト後の酸素透過率(単位:cm3/m2/day、測定条件:30℃−70%RH)を評価した。また、目視によりレトルト後のパウチの状態を観察した。結果を表1に示す。
Figure 0004385835
表1より、実施例1〜4の本発明の強密着蒸着フィルムは、実施例5〜8の比較のための蒸着フィルムに比べて、ラミネート強度に優れ、かつレトルト処理後のデラミネーションの発生もなく、食品及びレトルト食品分野や医薬品、電子部材等の非食品分野の包装に用いられる実用範囲の広い包装材料を提供することが可能である。
食品及びレトルト食品分野や医薬品、電子部材等の非食品分野の包装に用いられる実用範囲の広い包装材料として利用される。
本発明の強密着蒸着フィルムの一例を示す断面図である。 未処理PETのXPSにより得られるC1s波形分離解析スペクトルである。
符号の説明
1…ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)基材層
2…無機酸化物蒸着層
3…複合被膜層
4…プラズマ処理層
5…C−C結合ピーク
6…C−O結合ピーク
7…COO結合ピーク

Claims (8)

  1. 少なくとも一方の表面に厚さ5〜100nmの無機酸化物からなる蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる強密着蒸着フィルムにおいて、
    前記強密着蒸着フィルムを構成するポリエチレンテレフタレートフィルムの蒸着層を設けた面が、リアクティブイオンエッチング(RIE)を利用したプラズマ前処理を施した面であり、
    該プラズマ前処理が、印加電力が120Wであり、処理時間が0.1〜0.5secであり、処理ガスがアルゴンであり、処理ユニット圧力が2.0Paであり、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用いるものであり、
    該蒸着層を取り除いた場合の該フィルム表面のX線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、出力100W)によるC1s波形分離から求めたC−C結合の半値幅が1.5〜1.7eVの範囲であることを特徴とする強密着蒸着フィルム。
  2. 少なくとも一方の表面に厚さ5〜100nmの無機酸化物からなる蒸着層を設けたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる強密着蒸着フィルムにおいて、
    前記強密着蒸着フィルムを構成するポリエチレンテレフタレートフィルムの蒸着層を設けた面が、リアクティブイオンエッチング(RIE)を利用したプラズマ前処理を施した面であり、
    該プラズマ前処理が、印加電力が3000〜8000Wであり、処理時間が0.025〜0.05secであり、処理ガスがアルゴンを含み、処理ユニット圧力が2.0Paであり、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用いるものであり、
    該蒸着層を取り除いた場合の該フィルム表面のX線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、出力100W)によるC1s波形分離から求めたC−C結合の半値幅が1.5〜1.7eVの範囲であることを特徴とする強密着蒸着フィルム
  3. 該X線光電子分光測定における該フィルム表面が、水に少なくとも1種類以上のアンモニア、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミンなどの弱アルカリ性のアミン類を、0.01%〜10%添加した処理水に浸漬により行って蒸着層を取り除いた表面であることを特徴とする請求項1または2記載の強密着蒸着フィルム。
  4. 前記無機酸化物が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムもしくはそれらの
    混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の強密着蒸着フィルム。
  5. 前記無機酸化物からなる蒸着層の上に、さらに水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を塗布し加熱乾燥してなる複合膜層を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の強密着蒸着フィルム。
  6. 前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項5記載の強密着蒸着フィルム。
  7. 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−CO−エチレン)、セルロース、デンプンの少なくとも1種類以上を成分に持つことを特徴とする請求項5または6記載の強密着蒸着フィルム。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の強密着蒸着フィルムを用いて作製したことを特徴とするレトルト用包装材料。
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