本発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野に用いられるガスバリア材やそれらに用いられるにレトルト用透明バリアフィルムおよびその製造方法関するものである。
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これらを遮断するガスバリア性等を備えることが求められている。そのため従来から、温度・湿度などの影響が少ないアルミ等の金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。
ところが、アルミ等の金属箔を用いた包装材料は、温度・湿度の影響がなく高度なガスバリア性に優れるが、使用後の廃棄の際は不燃物として処理しなければならないなどの欠点を有し問題があった。
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、高分子フィルム上に、真空蒸着法やスパッタリング法等の形成手段によりアルミニウムなどの金属、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着層を形成したフィルムが開発されている。これらの蒸着フィルムは、酸素、水蒸気等のガス遮断性を有していることが知られ、包装材料として好適とされている。
しかしながら、レトルト殺菌処理を必要とする包装材料に、従来の透明蒸着フィルムを用いて実現しようとすると、レトルト殺菌後の密着性、ガスバリア性を維持できない。この原因として、透明蒸着層と基材の密着性が乏しいこと、レトルト殺菌時の基材塑性変形に蒸着層が追従出来ず、バリア性を維持しきれないことなどが考えられている。
密着性の劣化は、基材最表面に偏在する表面弱結合層(Weak Boundary Layer(WBL))やPETであれば加水分解層などの上に、酸化アルミニウム蒸着がなされているため、この界面にて耐水性十分な化学的結合が得られていないことが考えられる。
密着性問題を解決するために、従来からプラズマを用いることによって、インライン前処理によりプラスチック基材上の金属酸化物蒸着の密着性を改善するという試みはなされていたが、従来はインラインでプラズマ処理を行おうとすると、プラズマ発生のための電圧を印加する電極を基材のあるドラム側でなく、反対側に設置されている。この装置の場合、基材はアノード側に設置されることになるため、高い自己バイアスは得られず、結果として高い処理効果を発揮できなかった。
高い自己バイアスを得るために、直流放電方式を用いることも出来るが、この方法で高いバイアスの電圧を得ようとすると、プラズマのモードがグローからアークへと変化するため、大面積に均一な処理を行うことは出来ない。
また、レトルト殺菌時には、高温の処理水に包材が浸されることになり、基材は塑性変形を起こす。しかしながら、無機質であるバリア層はこの変形に追従できず、クラックなどの欠陥を誘起する。このことが、バリア性を劣化させる一因となると考えられている。
特開2004−167976号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、酸化アルミ層と被蒸着基材との密着性/緩衝性を改善し、レトルト殺菌処理などの過酷条件中でもバリア性の劣化が無い、優れたガスバリア性フィルムを提供することにある。
請求項1記載の発明は、プラスチック材料からなる基材の少なくとも一方の面に、リアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマを利用したプラズマ化学的気相成長法(PECVD)を用いた厚さ0.5〜10nmのカーボン蒸着層を有し、その上に厚さ3〜500nmの酸化アルミ蒸着層を積層することを特徴としたレトルト用透明バリアフィルム。
請求項2記載の発明は、上記基材のカーボン蒸着面がリアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマを利用した処理済みの面であることを特徴とする請求項1記載のレトルト用透明バリアフィルム。
請求項3記載の発明は、上記カーボン蒸着層がダイアモンドライク・カーボンであること特徴とした請求項1または2記載のレトルト用透明バリアフィルム。
請求項4記載の発明は、該酸化アルミ蒸着層の上に水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシドおよびまたはその加水分解物およびまたはその重合物の少なくとも1種類以上を成分に持つ複合被膜からなる層を設けたことを特徴とする、請求項1から3何れか記載のレトルト用透明バリアフィルム。
請求項5記載の発明は、該水酸基含有高分子化合物が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−CO−エチレン)、セルロース、デンプンの少なくとも1種類以上を成分に持つことを特徴とする請求項1から4何れか記載のレトルト用透明バリアフィルム。
請求項6記載の発明は、該金属アルコキシドが、シランアルコキシド、シランカップリング剤であることを特徴とする、請求項1から5何れか記載のレトルト用透明バリアフィルム。
請求項7記載の発明は、RIE処理工程とダイアモンドライク・カーボン(以下DLC)層と酸化アルミ層の蒸着を同一成膜機上(インライン)で行われること特徴とした請求項3から6何れか記載の透明バリアフィルムを製造するレトルト用透明バリアフィルムの製造方法。
上記請求項1にかかる発明に依れば、バリア層と基材との間に緩衝層を設けることで、レトルト処理などの殺菌処理時によっても性能が劣化しない透明ガスバリア性フィルムを提供することが出来る。
ガスバリア性のレトルト処理による劣化を抑えるメカニズムとしては、カーボン蒸着層が、基材の塑性変形による応力を緩和する緩衝層となり、酸化アルミ蒸着層への応力伸展を阻止していることに起因すると考えられる。これにより酸化アルミ蒸着層にクラックなどの欠陥導入が抑えられ、バリア性を維持できるものと考えられる。
上記請求項2に掛かる発明に依れば、さらにプラスチック基材と酸化アルミ蒸着層の密着を強化し、レトルト処理などの殺菌処理時によっても性能が劣化しない透明バリアフィルムを提供することが出来る。
密着性の劣化を抑える作用としては、RIEプラズマによる基材表面弱結合層(Weak Boundary Layer (WBL))やPETであれば加水分解層などの、耐水劣化を起こしやすい層の除去による効果と考えられる。これによりフレッシュな基材表面が提供され、アルミ蒸着層との密着性が向上すると同時に、耐水劣化を起こさない界面を形成すると考えられる。
酸化アルミ単体の蒸着では基材との密着性が低く高温高圧処理であるレトルト処理などを施すとバリア阻害を起こすが、この透明バリアフィルムでは、基材にRIEモードのプラズマによる前処理を行った表面であるため、基材表面が改質され、基材/蒸着層間の密着性を向上させる。その後カーボン蒸着層を設け、この層によってレトルト時の基材塑性変形を緩衝させ、酸化アルミ層の劣化を防ぐ。
上記請求項3に掛かる発明に依れば、さらにプラスチック基材と酸化アルミ蒸着層の密着を強化し、レトルト処理などの殺菌処理時によっても性能が劣化しない透明ガスバリア性フィルムを提供することが出来る。
ダイアモンドライク・カーボンと呼ばれる高結晶性カーボン蒸着層である。通常のカーボン蒸着層では、カーボン蒸着層内部の凝集力が弱く、逆に密着力阻害を起こす。ダイアモンドライク・カーボンの持つ、基材より固く、酸化アルミ蒸着層よりも柔軟な構造が、緩衝層としての役割を果たす上で、重要である。
ダイアモンドライク・カーボンを包装材料に用いるアイデアは、特許文献1などに、バリア層として記載されている。しかしながら本特許では、ダイアモンドライク・カーボンをバリア層としてのみならず、緩衝層として用いて、レトルト処理に耐えうる構造を見出している。
上記請求項4〜6に掛かる発明に依れば、これらを用いたオーバーコート層を施すことで、さらに酸化アルミ蒸着層の劣化を防ぐ効果が期待できる。酸化アルミ蒸着層を暴露したまま、印刷,ラミネートなどの後工程を行うと、酸化アルミ蒸着層にクラックが導入されバリア性が阻害される。これにオーバーコート層を設けることで、バリア劣化を防ぐものである。
上記請求項7に掛かる発明に依れば、さらにプラスチック基材と酸化アルミ蒸着層の密着を強化し、レトルト処理などの殺菌処理時によっても性能が劣化しない透明ガスバリア性フィルムを提供することが出来る。
この工程を同一成膜機上で行うことで、安価で高品質な透明バリアフィルムを提供できる。
本発明は、プラスチックフィルム上にRIEモードのプラズマによる前処理を行い、その上に、緩衝層としてのカーボン蒸着層,バリア層としての酸化アルミ蒸着層を積層することで、高い酸素/水蒸気バリア性能を有し、且つ基材/酸化アルミ蒸着層間の密着性の高いフィルムを安価に提供することを可能にする。
酸化アルミ単体の蒸着では、基材との密着性が低く、高温高圧処理であるレトルト処理などを施すとバリア阻害を起こすが、本発明では、基材にRIEモードのプラズマによる前処理を行い、基材表面を改質して基材/蒸着層間の密着性を向上させる。その後カーボン蒸着層を設け、この層によってレトルト時の基材塑性変形を緩衝させ、酸化アルミ蒸着層の劣化を防ぐ。この工程を同一成膜機上で行うことで、安価で高品質な透明バリアフィルムを提供できる。
以下に、本発明の実施の形態について、説明する。図1は本発明のガスバリア性フィルムを説明する断面図である。プラスチック基材1表面上に、RIEモードの前処理を施しRIE前処理面2を設け、その上にダイアモンドライク・カーボン層(DLC蒸着層3)/AlOx層(酸化アルミ蒸着層4)が形成された構成である。このRIE前処理面2、DLC蒸着層3、酸化アルミ蒸着層4は基材の両面に形成してもよく、また多層にしてもよい。
上述した基材はプラスチック材料からなるプラスチック基材1であり、蒸着層の透明性を生かすために可能であれば透明なフィルム基材であることが好ましい。基材の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。基材は、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。この中で、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルムが好ましく用いられる。またこの基材の蒸着層が設けられる面と反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。
基材の厚さは特に制限を受けるものではなく、また包装材料としての適性を考慮して単体フィルム以外に異なる性質のフィルムを積層したフィルムを使用できる。尚プライマー層、無機酸化物からなる蒸着層、ガスバリア層を形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。
このプラスチック基材1と蒸着層との密着を強化するために、基材表面にプラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)によるRIE前処理を施しRIE前処理面2とすことが有効である。このRIEによる処理を行うことで、発生したラジカルやイオンを利用してプラスチック基材の表面に官能基を持たせるなどの化学的効果と、表面をイオンエッチングして不純物等を飛ばしたり平滑化するといった物理的効果の2つの効果を同時に得ることが可能である。このような表面処理を行うことで、後に行う蒸着の際に無機酸化物の緻密な薄膜の層を形成させることができる。その結果、基材と蒸着層との密着性を強化させることができ、ガスバリア性向上やクラック発生防止につながるだけでなく、デラミネーションが起こることを防止出来る。
RIEによる前処理を行うためのガス種としては、アルゴン、酸素、窒素、水素を使用することが出来る。これらのガスは単独で用いても、2種類以上のガスを混合して用いてもよい。
加工速度、エネルギーレベルなどで示される処理条件は、基材種類、用途、放電装置特性などに応じ、適宜設定するべきである。ただし、プラズマの自己バイアス値は200V以上2000V以下、Ed=プラズマ密度×処理時間で定義されるEd値が100V・s・m-2以上10000V・s・m-2以下にすることが必要であり、これより若干低い値でも、ある程度の密着性を発現するが、未処理品に比べて優位性が低い。また、高い値であると、強い処理がかかりすぎて基材表面が劣化し、密着性が下がる原因になる。プラズマ用の気体及びその混合比などに関してはポンプ性能や取り付け位置などによって、導入分と実効分とでは流量が異なるので、用途、基材、装置特性に応じて適宜設定するべきである。
DLC(ダイアモンドライク・カーボン)蒸着層3の膜厚は、一般的には0.5〜10nmの範囲内が望ましい。0.5nm以下では、膜としての連続性に欠け、また10nm
以上では成膜速度が遅すぎるために、酸化アルミ層とのインライン化が難しく、また経済的に不利である。
DLC(ダイアモンドライク・カーボン)蒸着層を形成する真空蒸着法としては、リアクティブイオンエッチング(RIE)モードのプラズマを利用したプラズマ化学的気相成長法(PECVD)を用いることがより好ましい。RIEモードプラズマによるイオン衝撃により、結合力の弱いカーボンは除去され、結合力の強いダイアモンドライク・カーボン層のみが成膜される。
また蒸着層と基材の密着性及び蒸着層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。
また、RIE前処理面2とDLC(ダイアモンドライク・カーボン)蒸着層3の成膜を同一RIEプラズマ中にて行うことも可能である。
酸化アルミ蒸着層4の厚さは、一般的には3〜500nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が3nm未満であると均一な層が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合はこの層にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、層に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。より好ましくは、10〜150nmの範囲内にあることである。
酸化アルミ蒸着層4をプラスチック基材上に形成する方法としては種々在り、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また蒸着層と基材の密着性及び蒸着層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。
次いで複合被膜からなる複合被膜層5を説明する。複合被膜層はガスバリア性を持った被膜層であり、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものを溶液とする。この溶液を金属または無機化酸化物からなる蒸着層にコーティング後、加熱乾燥し形成される。コーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。
本発明でコーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができ、これ以外のものを用いても一向に構わない。
また金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3,C2H5等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエト
キシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C3H7)3〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
この溶液中にガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。
複合被膜層の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって最適条件異なり特に限定しない。但し乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一が塗膜が得られなく十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は層にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあることである。
複合皮膜層5の上に印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させて、包装材料とすることが出来る。
介在フィルムは、袋状包装材料時の破袋強度や突き刺し強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である必要がある。厚さは、材質や要求品質に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。
更にシーラント層は袋状包装体などを形成する際に接着層として設けられるものである。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。
基材1の反対面にも、必要に応じて印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させることも可能である。
さらに、RIE処理工程とダイアモンドライク・カーボン層と酸化アルミ層の蒸着を同一成膜機上(インライン)で行われる透明バリアフィルムを製造するインライン蒸着装置の例として、図2の様な蒸着機が考えられるが、冷却ドラムを1つにする等の各種変形実施は可能である。
図2の装置の例で示せば、このインライン蒸着装置は、巻き取りチャンバー11とRIE処理チャンバー12、DLC蒸着チャンバー13、酸化アルミ蒸着チャンバー14に別れており、各々に巻き出しロール41と巻き取りロール42、RIE処理ユニット22、DLC蒸着ユニット23、酸化アルミ蒸着ユニット24が設けられている。さらに、巻き取りチャンバー11とRIE処理チャンバー12とDLC蒸着チャンバー13の境界には第1冷却ドラム31、巻き取りチャンバー11と酸化アルミ蒸着チャンバー14の境界には第2冷却ドラムが設けられており、巻き出しロール41から巻き出されたプラスチック
基材は第1冷却ドラム31、第2冷却ドラム32を経由して巻き取りロール42に巻き取られるが、そこを流れている間に順次RIE処理、DLC蒸着、酸化アルミ蒸着が順次行える構造になっている。
以下に本発明のガスバリア性フィルムの実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
基材として厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、プラズマを利用したリアクティブイオンエッチング(RIE)による前処理を施した。この時、電極には周波数13.56MHzの高周波電源を用い、処理ガスにはアルゴン/酸素混合ガスを用いた。
その後、アセチレンガスを原料とした、RIEプラズマによるDLC層を1nmの厚みで成膜し、その上に電子線加熱による反応性蒸着方式で、酸化アルミを、15nmの厚みで成膜して、蒸着フィルムを作成した。
<比較例1>
DLC層を成膜せず、AlOx層:15nmのみの構造とした以外は、実施例1と同様の方法でバリアフィルムを作製した。
<比較例2>
RIE前処理,DLC層を成膜せず、AlOx層:15nmのみの構造とした以外は、実施例1と同様の方法でバリアフィルムを作製した。
実施例1、比較例1,2の蒸着フィルム上に、下記に示す1液と2液を配合比(wt%)で6/4に混合した溶液を作成した。
1液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2換算)の加水分解溶液
2液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)
この溶液をグラビアコート法により塗布乾燥し、厚さ0.4μmの複合被膜層を形成した。
更に二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネートにより、上記蒸着フィルム/延伸ナイロン(15μm)/未延伸ポリプロピレン(70μm)の積層サンプルを作成した。
<評価1>
レトルト処理後の酸素透過率…
上記積層サンプルを用いて4方パウチを作製し、内容物として水道水を充填したサンプルを、熱水回収方式のレトルト処理を施した。
レトルト処理は、熱水タンクと殺菌釜からなるレトルト処理器の、熱水タンクより130℃,2.45×105Paの熱水を、サンプルを並べた棚を入れた殺菌釜を9.81×
104Paに保持した状態で殺菌釜の上方より注入し、圧力を1.96×105Pa,温度を121℃に調整し30分保持、保持後、圧力を保持したまま冷却水を、殺菌釜の下方から注入、熱水を上方より抜いて置換し冷却する。冷却水を排出後、減圧してサンプル取り出した。
この処理後、サンプルから水を抜き取り、積層サンプルのレトルト処理後の酸素透過度を、モダンコントロール社製(MOCON OXTRAN 10/50A)を用いて、30℃−70%RH雰囲気下で蒸着工程後のフィルムを、レトルト処理後24時間以内に測定した。結果を表1に示す。
<評価2>
レトルト処理後のラミネート強度…
上記レトルト処理後の積層サンプルの蒸着フィルム/延伸ナイロン間のラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS
Z1707準拠)。但し、測定の際に測定部位を水で湿潤させながら行った。結果を表1に示す。
本発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野に用いられるガスバリア材に関するものである。
本発明の透明バリアフルムの概念断面図である。
本発明の透明バリアフィルムに用いるインライン蒸着機の概念断面図である。