JP6907695B2 - ガスバリア性フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野に用いられるガスバリア性フィルムに関する。
食品、医薬品、及び精密電子部品等の包装に用いられる包装材料は、十分なガスバリア性を備えることが求められている。ガスバリア性包装材料は、内容物の変質、例えば食品においては蛋白質や油脂等の酸化、変質を抑制し、さらに、味及び鮮度を保持するために、また、医薬品においては、無菌状態を保持し、有効成分の変質を抑制し、効能を維持するために、さらに、精密電子部品においては、金属部分の腐食、絶縁不良等を防止するために、包装材料を透過する酸素及び水蒸気等を遮断し、内容物を変質させる気体による影響を防止し得る。
ガスバリア性包装材料として従来、塩化ビニリデン樹脂をコートしたポリプロピレン(KOP)、ポリエチレンテレフタレート(KPET)或いはエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)など一般にガスバリア性が比較的高いといわれる高分子樹脂組成物を用いた包装フィルム、Alなどの金属または金属化合物の箔、適当な高分子樹脂組成物(単独では、高いガスバリア性を有していない樹脂であってもよい)にAlなどの金属又は金属化合物を蒸着した金属蒸着フィルムが一般的に使用されてきた。上述の高分子樹脂組成物を用いた包装フィルムは、Alなどの金属または金属化合物を用いた箔や、これら金属または金属化合物の蒸着層を形成した金属蒸着フィルムに比べるとガスバリア性に劣る。また、温度及び湿度の影響を受けやすく、その変化によってはさらにガスバリア性が劣化することがある。一方、Alなどの金属又は金属化合物を用いた箔や蒸着層を形成した金属蒸着フィルムは、温度、湿度などの影響を受けることは少なく、ガスバリア性に優れる。しかしながら、包装体の内容物を透視して確認することができないことや検査の際に金属探知機を使用できない、電子レンジで使用するこができないなどの欠点を有していた。
そこで、ガスバリア性及び透明性を両立した包装用材料として、最近では金属酸化物及び珪素酸化物等のセラミック薄膜を、透明性を有する高分子材料から実質的になる基材上に、蒸着などの形成手段により形成された蒸着フィルムが上市されている。しかしこれらのフィルムは食品分野で行われるボイル、レトルト処理などの加熱殺菌処理を行うとデラミネーションを引き起こすという欠点があった。また、密着性の低下により、酸素透過度や水蒸気透過度などのガスバリア性も劣化するという問題も起こっていた。
そこでこれらの欠点を克服するために基材と蒸着層の間にウェットコーティングによるアンカーコート層やスパッタリングによる金属層を形成する方法が提案されている(特許文献1、2)。しかし、特許文献1の方法ではアンカーコートを形成する工程が増えるため生産性が高くない。また、特許文献2に記載の方法は蒸着層がアルミニウムであり、透明性が低く内容物の確認ができないなどの問題があった。一方でスパッタリングによる金属を形成することでボイルやレトルト処理後の密着性やガスバリア性の低下を改善する方法が提案されている(特許文献3、4、5)。しかし、特許文献3に記載の方法はレトルト処理後のガスバリア性が不十分であった。また特許文献4に記載の方法は蒸着層に酸化珪素を使用した場合、レトルト処理後のラミネート強度と酸素透過率が低下する問題があった。特許文献5に記載の方法は無機酸化物層と有機物層がそれぞれ2層ずつ形成されており、コストが高くなる問題があった。また、プラズマ処理によりボイルやレトルト処理後の密着性やガスバリア性の低下を改善する方法が提案されている(特許文献6)。しかし、特許文献6に記載の方法の場合、特殊プラズマ処理であるため装置が煩雑になる問題があった。
特開2007−69456号公報 特開平7−233462号公報 特許平8−267642号公報 特許第5145800号公報 特許第5040491号公報 特許第4385835号公報
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、基材と無機酸化物蒸着膜の密着を強化し、特にレトルトなどの加熱殺菌を行ってもデラミネーションが発生せず、酸素透過度と水蒸気透過度の劣化のないガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の一局面は、高分子材料からなる基材と、基材の少なくとも一方の面に積層された、金属またはその酸化物の層である前処理層と、前処理層に積層された、無機酸化物層または有機無機ハイブリッド層であるガスバリア層と、ガスバリア層に積層された、水溶性高分子と金属アルコキシドまたはその加水分解物の層である複合被膜層とを備え、前処理層はシリコン、銅、鉄、ニオブ、チタンから選択される1つもしくは複数の合金、またはその酸化物であり、平均膜厚が0.01nm以上10nm以下であることを特徴とする、ガスバリア性フィルムである。
また、高分子材料からなる基材はポリエチレンテレフタレートであってもよい。
また、前処理層の形成により、基材表面のX線光電子分光測定によるC1s波形分離から求めたC−C結合の波形の半値全幅が1.50eV以上1.70eV以下であってもよい。
また、ガスバリア層は、酸化アルミニウム、酸化珪素、もしくはこれらの混合物である無機酸化物、または、アルミニウム、酸素、炭素、水素または珪素、酸素、炭素、水素もしくはアルミニウム、珪素、酸素、炭素、水素からなる有機無機ハイブリッドであってもよい。
また、水溶性高分子がポリビニルアルコール、セルロース、デンプンのいずれか1つもしくは複数からなってもよい。
また、金属アルコキシドまたはその加水分解物はシランアルコキシドまたはシランカップリング剤のいずれかを含んでもよい。
また、121℃30分のレトルト処理後の酸素透過度が1.0cc/m*day以下、水蒸気透過度が1g/m*day以下であり、ラミネート強度が2.0N/15mm以上であってもよい。
本発明の他の局面は、高分子材料からなる基材上に、金属またはその酸化物の層である前処理層を形成することで基材表面のX線光電子分光測定によるC1s波形分離から求めたC−C結合の波形の半値全幅を1.50eV以上1.70eV以下とする工程と、前処理層の上に無機酸化物層または有機無機ハイブリッド層であるガスバリア層を形成する工程と、ガスバリア層の上に水溶性高分子と金属アルコキシドまたはその加水分解物の層である複合被膜層を形成する工程とを備える、ガスバリア性フィルムの製造方法である。
本発明によれば、基材と無機酸化物層とが極めて良好な密着性を示す強密着蒸着フィルムが得られる。更に、この積層フィルムを包装材料に用いると、レトルトなどの加熱殺菌を行った場合においても、デラミネーションなどが発生せず、酸素透過度や水蒸気透過度などの高いガスバリア性フィルムを提供することができる。
本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムの断面構成図 一般的なPETのXPSにより得られるC1s波形分離解析スペクトルの一例を示す図
以下に本発明の一実施形態の詳細を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムを説明する断面図である。ガスバリア性フィルムは、高分子材料からなる基材1の表面上に前処理層2、ガスバリア層3、複合被膜層4が形成されている構造である。前処理層2、ガスバリア層3、複合被膜層4は基材の両面に形成してもよく、また多層にしてもよい。
基材1の一例であるPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムは未延伸、延伸のどちらでもよく、延伸の場合にも延伸倍率は特に制限はない。また、一定以上の機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。フィルムの厚さは特に制限を受けるものではなく、また包装材料としての適性を考慮して単体フィルム以外に異なる性質のフィルムを積層したフィルムを使用できる。尚、プライマー層、ガスバリア層、複合皮膜層などを形成する場合の加工性を考慮すると、実用的には3μm〜200μmの範囲が好ましく、特に6μm〜30μmが好ましい。このPETフィルムの蒸着層が設けられる面と反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていてもよい。
前処理層2の金属またはその酸化物はアルミニウム、シリコン、銅、鉄、ニオブ、チタンの少なくとも1つもしくはこれらの合金または酸化物である。金属またはその酸化物の形成方法は特に制限されず、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法、プラズマ気相成長法(CVD)などが用いられる。金属またはその酸化物を形成することで、核付けによるアンカー効果やPETフィルムの表面構造の化学的な変化、基材と金属またはその酸化物の混合層(ミキシング層)が形成され、基材とバリア層の境界が曖昧になり付着エネルギーが増加する。基材PETフィルムの処理度の適性範囲については後述する。基材表面の金属またはその酸化物の平均膜厚は0.01nm〜10nmが好ましい。0.01nm未満では基材を十分に改質できない恐れがあり、10nmより大きいとは密着性が低下する恐れがある。
密着性を良好に得ることができる処理の程度を検証する方法として、X線光電子分光法による測定(XPS測定)が挙げられる。この方法では、被測定物質の表面から数nmの深さ領域での原子の種類と濃度やその原子と結合している原子の種類やそれら結合状態が分析でき、元素比率、官能基比率などを求めることができる。しかし、本発明のガスバリア性フィルムのように、XPS測定での分析可能な深さ以上の厚さの後述する無機酸化物等からなる蒸着層を設けたPETフィルムの場合には、この状態のままではPETフィルム表面の測定を行うことは不可能である。Arイオンエッチングで蒸着層を掘って測定する方法もあるが、PETが若干でもエッチング処理されてしまうため、測定結果が意味をなさないものになってしまう。そこで、まずPETフィルム上の無機酸化物蒸着層を取り除く必要がある。
この方法として、無機酸化物蒸着層を取り除くための処理水中にフィルムを浸漬する方法がある。処理に使用する水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水など特に制限されるものではない。また、水温は特に制限されないが、好ましくは50℃以上がよい。更にこの水中に少なくとも1種類以上のアンモニア、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミンなどの弱アルカリ性のアミン類を添加する必要がある。このようなアミン類を添加することで、短時間で完全に無機酸化物を除去することが可能である。添加量は0.01%〜10%の範囲にすることが好ましい。0.01%より少ないと、完全除去までに時間が長くかかり、完全に除去することが出来ない。また、10%を超えるとPETフィルム自体にも影響を及ぼし、無機酸化物層除去後の表面が汚染され、PETの構造が破壊される恐れがある。
図2はXPS測定で得られる未処理PETのC1s波形をピーク分離解析したスペクトルである。C1s波形はC−C結合5、C−O結合6、COO結合7に分離される。なお、それぞれの結合エネルギーの値は、285.0eV(C−C結合)、286.6eV〜286.7eV(C−O結合)、288.9eV〜289.0eV(COO結合)である。
上記のように無機酸化物層を除去した後のPETフィルム表面のXPS測定を行った時、C1s波形分離から求めたC−C結合のFWHM(半値幅)が1.50eV〜1.70eVとなる場合、このPETフィルムと無機酸化物層は極めて良好な密着性を示し、レトルトなどの加熱殺菌処理を行ってもデラミネーションが生じない。
それに対し、未処理のPETフィルムの場合には、無機酸化物層を除去した後のPETフィルム表面は、C−C結合の半値幅は1.45eV程度の値になる。このような場合はPETフィルムと無機酸化物層の密着性が悪く、レトルトなどの加熱殺菌処理を行うとデラミネーションが発生する。また、半値幅が1.50eV未満になる状態の時は、フィルム表面の処理が弱く、未処理のPETフィルムと同様に密着性が悪くなると共に、加熱殺菌処理後のガスバリア性も劣化する。また半値幅が1.70eVより大きい時は、フィルム表面が処理されすぎており、表面が劣化してしまうため密着性が悪くなる。
上記のような無機酸化物層と密着のよいPETフィルムを得るために、金属またはその酸化物を形成することで、PETフィルムとの機械的な結合の形成やPETフィルムの表面構造を化学的に変化させ、C−C結合の半値幅を制御することができる。更にこの処理を行うことで、無機酸化物の緻密な薄膜を形成させることができる。その結果、基材と無機酸化物層との密着性を強化させることができ、ガスバリア性向上やクラック発生防止につながるだけでなく、レトルトなどの加熱殺菌を行った場合においても、デラミネーションが起こることがない。
次に、ガスバリア層3について、詳しく説明する。ガスバリア層3は、酸化アルミニウム、酸化珪素、またはこれらの混合物からなる無機酸化物層でもよく、あるいは、シリコンやアルミニウムのアルコキシドまたはアルキル基からなり、透明性を有しかつ酸素や水蒸気などのガスバリア性を有する層である有機無機ハイブリッド層でもよい。各種殺菌耐性を配慮するとこれらの中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素を用いることがより好ましい。ただし本発明のガスバリア層は、上述した無機酸化物に限定されず、上記条件に適合する材料であれば用いることが可能である。
ガスバリア層3の厚さは、用いられる無機化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には3nm〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が3nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。より好ましくは、6nm〜150nmの範囲内にあることである。
ガスバリア層3の形成方法は特に制限されず、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法、プラズマ気相成長法(CVD)などが用いられる。また、形成するガスバリア層をさらに緻密にし、バリア性や密着性を向上させる手段としてプラズマアシスト法やイオンビームアシスト法などを組み合わせてもよい。
次いで、複合被膜層4を説明する。複合被膜層はガスバリア性を持った被膜層であり、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものを溶液とする。この溶液を無機化酸化物からなる蒸着薄膜層にコーティング後、加熱乾燥し形成される。コーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。金属アルコキシドまたはその加水分解物は、例えばシランアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤のいずれかを含む。
本発明でコーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができ、これ以外のものを用いても一向に構わない。
また、金属アルコキシドは、一般式、M(OR)(M:Si、Alの金属、R:CH,C等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリイソプロポキシアルミニウムAl[OCH(CHなどが挙げられ、シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するもの、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するもの、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するもの、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するもの、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられるが特に限定されない。
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。
複合被膜層4の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって最適条件が異なり特に限定しない。但し乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一な塗膜にならず十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01μm〜50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜10μmの範囲にあることである。
複合被膜層4の上に印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させて、包装材料とすることが出来る。
介在フィルムは、袋状包装材料時の破袋強度や突き刺し強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である必要がある。厚さは、材質や要求品質に応じて決められるが、一般的には10μm〜30μmの範囲である。
更に、シーラント層は袋状包装体などを形成する際に接着層として設けられるものである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15μm〜200μmの範囲である。
基材1の反対面にも、必要に応じて印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させることも可能である。
以下に本発明の強密着蒸着フィルム(ガスバリア性フィルム)の実施例と比較例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例と比較例の前処理層およびガスバリア層の材質、膜厚を表1に示す。
Figure 0006907695
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 P60)に、前処理はマグネトロンスパッタリング法によりAlを0.3nm形成し(前処理層2)、引き続き同一真空装置内で酸化アルミニウムを10nm電子ビーム蒸着法により形成した(ガスバリア層3)。
このフィルム上に、下記に示す(1)液と(2)液を配合比(wt%)で6/4に混合した溶液を作成し、複合被覆層4を形成した。
(1)液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO換算)の加水分解溶液。
(2)液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)。
この混合溶液をグラビアコート法により塗布乾燥し、厚さ0.4μmの複合被膜層4を形成した。
前処理層Alの膜厚を0.7nmとした以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
前処理層Alの膜厚を1.1nmとした以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
ガスバリア層をSiOxとして膜厚30nmとした以外は、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
前処理層をSiOxとして膜厚0.7nmとした以外は、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
ガスバリア層をSiOxとして膜厚30nmとした以外は、実施例5と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
前処理層を銅として膜厚0.4nmとした以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
ガスバリア層をSiOxとして膜厚30nmとした以外は、実施例7と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
前処理層を鉄として膜厚0.5nmとした以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
ガスバリア層をSiOxとして膜厚30nmとした以外は、実施例9と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
前処理層をNbOxとして膜厚0.7nmとした以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
ガスバリア層をSiOxとして膜厚30nmとした以外は、実施例11と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
前処理層をTiとして膜厚0.7nmとした以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
ガスバリア層をSiOxとして膜厚30nmとした以外は、実施例13と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
〔比較例1〕
前処理層を形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
〔比較例2〕
前処理層を形成しなかった以外は、実施例4と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
〔比較例3〕
前処理層Alの膜厚を0.001nmとした以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
〔比較例4〕
前処理層Alの膜厚を15.0nmとした以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
〔比較例5〕
前処理層Alの膜厚を0.001nmとした以外は、実施例4と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
〔比較例6〕
前処理層Alの膜厚を15.0nmとした以外は、実施例4と同様の方法でガスバリア性フィルムを作成した。
更に、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネートにより、上記ガスバリア性フィルム/延伸ナイロン(15μm)/未延伸ポリプロピレン(70μm)のレトルト用包装材料(積層フィルム)を作成した。
[評価1]
上記積層サンプルの蒸着フィルム(ガスバリア性フィルム)/延伸ナイロン間のラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS Z1707準拠)。測定は常態と測定部位を水で湿潤させながら行った。結果を表2に示す。
[評価2]
上記積層サンプルを用いて4辺をシール部とするパウチを作製し、内容物として水を充填した。その後、121℃−30分間のレトルト殺菌を行った。評価としてレトルト後の酸素透過度(単位:cm/m*day、測定条件:30℃−70%RH)、水蒸気透過度(単位:g/m*day、測定条件:40℃−90%RH)を評価した。結果を表2に示す。
[評価3]
実施例1〜12、比較例1〜6のガスバリア性フィルムのガスバリア層の形成まで行った中間生成物に対して、1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、ガスバリア層を取り除いた後、そのフィルム表面のXPS測定を行い表面状態を測定した。測定に用いたX線光電子分光装置は、日本電子株式会社製JPS−90MXVを用い、X線源としては非単色化MgKα線(1253.6eV)を使用、出力は100W(10kV−10mA)で測定した。定量分析にはO1sで2.28、C1sで1.00の相対感度因子を用いて計算をした。C1s波形の波形分離解析にはガウシアン関数とローレンツ関数の混合関数を使用し、帯電補正はベンゼン環に由来するC−C結合ピークを285.0eVとして補正した。結果を表2に示す。
Figure 0006907695
実施例は、レトルト前後のいずれにおいても、酸素および水蒸気のいずれにおいても高いバリア性が確認できた。また、十分なラミネート強度が維持できることが確認できた。また、実施例においてC−C結合の波形のFWHM(半値幅)が1.50eV〜1.70eVの範囲にあることが確認できた。
本発明は、食品及びレトルト食品分野や医薬品、電子部材等の非食品分野の包装に用いられる実用範囲の広い包装材料として利用可能である。
1 基材
2 前処理層
3 ガスバリア層
4 複合皮膜層
5 C−C結合ピーク
6 C−O結合ピーク
7 COO結合ピーク

Claims (8)

  1. 高分子材料からなる基材と、
    前記基材の少なくとも一方の面に積層された、金属またはその酸化物の層である前処理層と、
    前記前処理層に積層された、無機酸化物層または有機無機ハイブリッド層であるガスバリア層と、
    前記ガスバリア層に積層された、水溶性高分子と金属アルコキシドまたはその加水分解物の層である複合被膜層とを備え、
    前記前処理層はシリコン、銅、鉄、ニオブ、チタンから選択される1つもしくは複数の合金、またはその酸化物であり、平均膜厚が0.01nm以上10nm以下であることを特徴とする、ガスバリア性フィルム。
  2. 前記高分子材料からなる基材はポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. 前記前処理層の形成により、前記基材表面のX線光電子分光測定によるC1s波形分離から求めたC−C結合の波形の半値全幅が1.50eV以上1.70eV以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 前記ガスバリア層は、
    酸化アルミニウム、酸化珪素、もしくはこれらの混合物である無機酸化物、
    または、アルミニウム、酸素、炭素、水素または珪素、酸素、炭素、水素もしくはアルミニウム、珪素、酸素、炭素、水素からなる有機無機ハイブリッドであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  5. 前記水溶性高分子がポリビニルアルコール、セルロース、デンプンのいずれか1つもしくは複数からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  6. 前記金属アルコキシドまたはその加水分解物はシランアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、シランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤のいずれかを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  7. 121℃30分のレトルト処理後の酸素透過度が1.0cc/m*day以下、水蒸気透過度が1g/m*day以下であり、ラミネート強度が2.0N/15mm以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性フィルム。
  8. 高分子材料からなる基材上に、金属またはその酸化物の層である前処理層を形成することで前記基材表面のX線光電子分光測定によるC1s波形分離から求めたC−C結合の波形の半値全幅を1.50eV以上1.70eV以下とする工程と、
    前記前処理層の上に無機酸化物層または有機無機ハイブリッド層であるガスバリア層を形成する工程と、
    前記ガスバリア層の上に水溶性高分子と金属アルコキシドまたはその加水分解物の層である複合被膜層を形成する工程とを備える、ガスバリア性フィルムの製造方法。
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