JP2020111038A - ガスバリア性フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】高分子材料からなる基材とガスバリア層の密着を強化し、特にレトルトなどの加熱殺菌を行ってもバリア性の低下が少なく、デラミネーションの発生を抑制することが可能なガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。【解決手段】ガスバリア性フィルムは、高分子材料からなる基材と、基材の少なくとも一方の面に金属、当該金属の酸化物もしくは窒化物のいずれか一つまたはこれらの組合せからなる前処理層と、無機化合物または有機無機ハイブリッドのいずれか一つもしくは複数からなるガスバリア層と、被覆層と、がこの順序で積層され、ガスバリア層と、被覆層とを取り除いた後に、基材表面のX線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、出力100W)を行い、C1s波形を解析した場合、基材の炭素、酸素、水素のいずれか一つもしくは複数からなる元素と、前処理層の少なくとも金属元素とが化学的な結合を有する。【選択図】図1
Description
本発明は、食品、医薬品、精密電子部品等の包装分野に用いられるガスバリア性フィルムに関する。
食品、医薬品、及び精密電子部品等の包装に用いられる包装材料は、十分なガスバリア性を備えることが求められている。ガスバリア性包装材料は、内容物の変質、例えば食品においては蛋白質や油脂等の酸化、変質を抑制し、さらに、味及び鮮度を保持するために、また、医薬品においては、無菌状態を保持し、有効成分の変質を抑制し、効能を維持するために、さらに、精密電子部品においては、金属部分の腐食、絶縁不良等を防止するために、包装材料を透過する酸素及び水蒸気等を遮断し、内容物を変質させる気体による影響を防止し得る。ガスバリア性包装材料として従来、塩化ビニリデン樹脂をコートしたポリプロピレン(KOP)、ポリエチレンテレフタレート(KPET)或いはエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)など一般にガスバリア性が比較的高いといわれる高分子樹脂組成物を用いた包装フィルム、Alなどの金属または金属化合物の箔、適当な高分子樹脂組成物(単独では、高いガスバリア性を有していない樹脂であってもよい)にAlなどの金属又は金属化合物を蒸着した金属蒸着フィルムが一般的に使用されてきた。上述の高分子樹脂組成物を用いた包装フィルムは、Alなどの金属または金属化合物を用いた箔や、これら金属または金属化合物の蒸着層を形成した金属蒸着フィルムに比べるとガスバリア性に劣る。また、温度及び湿度の影響を受けやすく、その変化によってはさらにガスバリア性が劣化することがある。一方、Alなどの金属又は金属化合物を用いた箔や蒸着層を形成した金属蒸着フィルムは、温度、湿度などの影響を受けることは少なく、ガスバリア性に優れる。しかしながら、包装体の内容物を透視して確認することができないことや検査の際に金属探知機を使用できない、電子レンジで使用するこができないなどの欠点を有していた。そこで、ガスバリア性及び透明性を両立した包装用材料として、最近では金属酸化物及び珪素酸化物等のセラミック薄膜を、透明性を有する高分子材料から実質的になる基材上に、蒸着などの形成手段により形成された蒸着フィルムが上市されている。しかしこれらのフィルムは食品分野で行われるボイル、レトルト処理などの加熱殺菌処理を行うとデラミネーションを引き起こすという欠点があった。また、密着性の低下により、酸素透過度や水蒸気透過度などのガスバリア性も劣化するという問題も起こっていた。
そこでこれらの欠点を克服するために基材と蒸着層の間にウェットコーティングによるアンカーコート層やスパッタリングによる金属層を形成する方法が提案されている(特許文献1、2)。しかし、特許文献1の方法ではアンカーコート形成用塗液を調製し、塗布する工程が増えるため生産性が高くない。また、特許文献2に記載の方法は蒸着層がアルミニウムであり、透明性が低く内容物の確認ができないなどの問題があった。一方でスパッタリングによる金属層を形成することでボイルやレトルト処理後の密着性やガスバリア性の低下を改善する方法が提案されている(特許文献3、4、5、6)。しかし、特許文献3に記載の方法はレトルト処理後のガスバリア性が不十分であった。また特許文献4に記載の方法は蒸着層に酸化珪素を使用した場合、レトルト処理後のラミネート強度と酸素透過率が低下する問題があった。特許文献5に記載の方法は無機酸化物層と有機物層がそれぞれ2層ずつ形成されており、コストが高くなる問題があった。特許文献6には、レトルトなどの加熱殺菌後のバリア性や密着性に関する記載がない。また、プラズマ処理によりボイルやレトルト処理後の密着性やガスバリア性の低下を改善する方法が提案されている(特許文献7)。しかし、特許文献7に記載の方法の場合、特殊プラズマ処理であるため装置が煩雑になる問題があった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、高分子材料からなる基材とガスバリア層の密着を強化し、特にレトルトなどの加熱殺菌を行ってもバリア性の低下が少なく、デラミネーションの発生を抑制することが可能なガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、高分子材料からなる基材と、基材の少なくとも一方の面に金属、当該金属の酸化物もしくは窒化物のいずれか一つまたはこれらの組合せからなる前処理層と、無機化合物または有機無機ハイブリッドのいずれか一つもしくは複数からなるガスバリア層と、ガスバリア層を被覆するように形成される被覆層と、がこの順序で積層され、ガスバリア層と、被覆層とを取り除いた後に、基材表面のX線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、出力100W)を行い、C1s波形を解析した場合、基材の炭素、酸素、水素のいずれか一つもしくは複数からなる元素と、前処理層の少なくとも金属元素とが化学的な結合を有することを特徴とするガスバリア性フィルムである。
また、前処理層の金属がアルミニウム、珪素、銅、鉄、ニオブ、チタン、マグネシウム、亜鉛、錫のいずれか一つもしくは複数から選択され、前処理層の平均膜厚が0.01nm以上10nm以下であってもよい。
また、無機化合物が金属またはその酸化物もしくは窒化物のいずれか一つもしくは複数から選択され、当該金属がアルミニウム、珪素のいずれかもしくは両方からなり、有機無機ハイブリッドがアルミニウム、珪素のいずれかもしくは両方と、酸素、炭素、水素のいずれかもしくは複数とからなってもよい。
また、被覆層が1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物と水溶性高分子とからなってもよい。
また、本発明は、上記ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の面にヒートシール可能な熱可塑性樹脂を積層してなることを特徴とする積層体である。
また、本発明は、上記ガスバリア性フィルムの少なくとも一方の面に接着剤を介してヒートシール可能な熱可塑性樹脂を積層してなることを特徴とする積層体である。
本発明によれば、基材とガスバリア層とが極めて良好な密着性を示すガスバリア性フィルムが得られる。更に、このガスバリア性フィルムを含む積層フィルムを包装材料に用いることで、レトルトなどの加熱殺菌を行った場合において、デラミネーションなどの発生を抑制し、酸素や水蒸気などの透過が少ないガスバリア性フィルムを含む積層体を提供することができる。
以下に本発明の詳細を説明する。
図1は、実施形態のガスバリア性フィルムを含む積層体を説明する断面図である。積層体30は、基材1の表面上に前処理層2、ガスバリア層3、被覆層4が積層されたガスバリア性フィルム20上に、接着剤層5、シーラント層6が積層されている構造である。前処理層2、ガスバリア層3、被覆層4、接着剤層5、シーラント層6は基材1の両面に形成してもよく、また多層にしてもよい。
基材1は、高分子材料からなり、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリイミドのいずれかもしくは複数から選択することができる。また、未延伸、延伸のどちらでもよく、延伸の場合にも延伸倍率は特に制限はない。また、機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。基材1の厚さは特に制限を受けるものではなく、また包装材料としての適性を考慮して単体フィルム以外に異なる性質のフィルムを積層したフィルムを使用できる。尚、前処理層2、ガスバリア層3、被覆層4などを形成する場合の加工性を考慮すると、基材1の厚さは、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜100μmが好ましい。この高分子材料からなる基材1の前処理層2が設けられる面と反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていてもよい。
前処理層2は、基材1の少なくとも一方の面に積層され、金属、当該金属の酸化物もしくは窒化物のいずれか一つまたはこれらの組合せからなる。前処理層2の金属またはその酸化物もしくはその窒化物はアルミニウム、珪素、銅、鉄、ニオブ、チタン、マグネシウム、亜鉛、錫の少なくとも1つもしくは複数から選択することができる。前処理層2の形成方法は特に制限されず、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法、プラズマ気相成長法(CVD)などが用いられる。前処理層2として金属またはその酸化物もしくはその窒化物を形成することで、核付けによるアンカー効果や基材1(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の表面構造の化学的な変化により、基材1と金属またはその酸化物もしくはその窒化物の混合層(ミキシング層)が形成され、基材1とガスバリア層3の境界が曖昧になり付着エネルギーが増加する。基材1と金属またはその酸化物もしくはその窒化物が結合するようにあらかじめ基材1に表面処理などを施しても良い。金属またはその酸化物もしくはその窒化物からなる前処理層2の平均膜厚は0.01〜10nmが好ましい。0.01nm未満では基材1を十分に改質できない恐れがあり、10nmを超えると透明性や密着性が低下する恐れがある。
X線光電子分光法による測定(XPS測定)では、被測定物質の表面から数nmの深さ領域での原子の種類と濃度やその原子と結合している原子の種類やそれらの結合状態が分析でき、元素比率、官能基比率などを求めることができる。そのため本発明のガスバリア性フィルム20のように、後述する厚さ3〜300nmのガスバリア層3を設けた基材1の場合には、この状態のままでは基材1表面の測定を行うことは不可能である。Arイオンエッチングでガスバリア層3を掘って測定する方法もあるが、基材1が若干でもエッチング処理されてしまうため、測定結果が意味をなさないものになってしまう。そこで、まず基材1上のガスバリア層3を取り除く必要がある。
この方法として、ガスバリア層3を取り除くための処理水中にフィルムを浸漬する方法がある。処理に使用する水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水など特に制限されるものではない。また、水温は特に制限されないが、好ましくは50℃以上がよい。更にこの水中に少なくとも1種類以上のアンモニア、トリエタノールアミン、トリメタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミンなどの弱アルカリ性のアミン類を添加する必要がある。このようなアミン類を添加することで、短時間で無機化合物及び有機無機ハイブリッドを除去することが可能である。アミン類の添加量は0.01%〜10%の範囲にすることが好ましい。0.01%より少ないと、除去までに時間が長くかかる。また、10%を超えると基材1自体にも影響を及ぼし、ガスバリア層3除去後の表面が汚染され、基材1の構造が破壊される恐れがある。
図2はXPS測定で得られる、ガスバリア層3を取り除く処理を施した基材1(PET)のC1s波形をピーク分離解析したスペクトルの一例である。C1s波形はCOO結合7、C−O結合8、C−C結合9、C−O−Al結合10に分離される。なお、それぞれの結合エネルギーの値は、288.9〜289.0eV(COO結合)、286.6〜286.7eV(C−O結合)、285.0eV(C−C結合)、283.3〜284.5eV(C−O−Al結合)である。
前処理層2に金属アルミニウムを用いた場合、上記のように基材1に金属アルミニウム、無機化合物からなるガスバリア層3を形成し、ガスバリア層3を除去した後のPETフィルム表面のXPS測定を行った場合、C1s波形分離から求めた283.3〜284.5eVにC−O−Al結合を有する。この場合、PETフィルムとガスバリア層3は極めて良好な密着性を示し、レトルトなどの加熱殺菌処理を行ってもデラミネーションが生じない。
図3はXPS測定で得られる、ガスバリア層3を取り除く処理を施した基材1(PET)のC1s波形をピーク分離解析したスペクトルの他の例である。C1s波形はCOO結合7、C−O結合8、C−C結合9に分離される。なお、それぞれの結合エネルギーの値は、288.9〜289.0eV(COO結合)、286.6〜286.7eV(C−O結合)、285.0eV(C−C結合)である。
図2に示す基材1とは異なり、基材1に金属アルミニウムからなる前処理層2、無機化合物からなるガスバリア層3を形成した場合であっても、ガスバリア層3を除去した後のPETフィルム表面にC−O−Al結合がない場合がある。このような場合はPETフィルムとガスバリア層3の密着性が悪く、レトルトなどの加熱殺菌処理を行うとデラミネーションが発生する場合がある。
次に、無機化合物または有機無機ハイブリッドのいずれか一つもしくは複数からなるガスバリア層3について、詳しく説明する。無機化合物からなるガスバリア層3は、アルミニウムまたは珪素の単体、これらの酸化物、これらの窒化物のいずれかもしくは複数からなり、有機無機ハイブリッドからなるガスバリア層3はシリコンやアルミニウムのアルコキシドまたはアルキル基からなり、透明性を有しかつ酸素や水蒸気などのガスバリア性を有する層であればよい。各種殺菌耐性を配慮するとこれらの中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素を用いることがより好ましい。ただし本発明のガスバリア層3は、上述した無機化合物に限定されず、上記条件に適合する材料であれば用いることが可能である。
ガスバリア層3の厚さは、用いられる無機化合物及び有機無機ハイブリッドの種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には3〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし膜厚が3nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じるおそれがあるので問題がある。より好ましくは、6〜150nmの範囲内にあることである。
ガスバリア層3の形成方法は特に制限されず、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法、プラズマ気相成長法(CVD)などが用いられる。また、形成するガスバリア層3をさらに緻密にし、バリア性や密着性を向上させる手段としてプラズマアシスト法やイオンビームアシスト法などを組み合わせてもよい。
次いで、被覆層4を説明する。被覆層4はガスバリア性を持った被膜層であり、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたは/およびその加水分解物とを含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものを溶液とする。この溶液を無機化酸化物からなる蒸着薄膜層にコーティング後、加熱乾燥し形成される。コーティング剤に含まれる各成分について更に詳細に説明する。
本発明でコーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を本発明のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れるので好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができ、これ以外のものを用いても一向に構わない。
また、金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si、Alの金属、R:CH3,C2H5等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウムAl[OCH(CH3)2]3などがあげられ、シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するもの、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するもの、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基を有するもの、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基を有するもの、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられるが特に限定されない。
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。
被覆層4の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって最適条件が異なり特に限定しない。但し乾燥後の厚さが、0.01μm未満の場合は、均一な塗膜にならず十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあることである。
被覆層4の上に印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させて、包装材料とすることが出来る。
介在フィルムは、袋状包装材料時の破袋強度や突き刺し強度を高めるために設けられるもので、一般的に機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種である必要がある。厚さは、材質や要求品質に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。
シーラント層6は袋状包装体などを形成する際に接着層として設けられるものである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物等の樹脂が用いられる。厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。シーラント層6は、被覆層4上に公知の接着剤からなる接着剤層5を介して積層される。尚、シーラント層6は、被覆層4上に接着剤層5を介さずに積層されてもよい。
基材1の反対面にも、必要に応じて印刷層、介在フィルム、シーラント層等を積層させることも可能である。
実施形態に係るガスバリア性フィルム20は、基材1の少なくとも一方の面に、金属またはその酸化物もしくはその窒化物のいずれか一つまたはこれらの組合せからなる前処理層2と、無機化合物または有機無機ハイブリッドのいずれか一つもしくは複数からなるガスバリア層3と、被覆層4とを、この順で積層してなる。このガスバリア性フィルム20を、アミン系アルカリを添加した水溶液中に浸漬などして表面状態を維持しながらガスバリア層3及び被覆層4を除去し、除去後のフィルム表面のXPS測定を行い、C1s波形を解析した場合、基材1の炭素、酸素、水素のいずれか一つもしくは複数からなる元素と、前処理層2の少なくとも金属元素とが化学的な結合を有する。これにより、基材1とガスバリア層3とが極めて良好な密着性を示すガスバリア性フィルムを得ることができる。更に、このガスバリア性フィルム20を含む積層体30を包装材料に用いることで、レトルトなどの加熱殺菌を行った場合において、デラミネーションなどの発生を抑制し、酸素や水蒸気などの透過が少ないガスバリア性フィルムを含む積層体を提供することができる。
以下に本発明のガスバリア性フィルムの実施例と比較例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例と比較例に係る前処理層及びガスバリア層の構成並びに下記の表面状態分析方法から求めた化学結合を表1に示す。
[表面状態分析方法]
測定に用いたX線光電子分光装置は、日本電子株式会社製JPS−90MXVを用い、X線源としては非単色化MgKα(1253.6eV)を使用、出力は100W(10kV−10mA)で測定した。定量分析にはO1sで2.28、C1sで1.00の相対感度因子を用いて計算をした。C1s波形の波形分離解析にはガウシアン関数とローレンツ関数の混合関数を使用し、帯電補正はベンゼン環に由来するC−C結合ピークを285.0eVとして補正した。
測定に用いたX線光電子分光装置は、日本電子株式会社製JPS−90MXVを用い、X線源としては非単色化MgKα(1253.6eV)を使用、出力は100W(10kV−10mA)で測定した。定量分析にはO1sで2.28、C1sで1.00の相対感度因子を用いて計算をした。C1s波形の波形分離解析にはガウシアン関数とローレンツ関数の混合関数を使用し、帯電補正はベンゼン環に由来するC−C結合ピークを285.0eVとして補正した。
基材として厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 P60)に、前処理層としてマグネトロンスパッタリング法によりアルミニウムを膜厚0.3nmで形成し、引き続き同一真空装置内でガスバリア層として酸化珪素を膜厚30nmで電子ビーム蒸着法により形成した。
次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化珪素を取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
前処理層を珪素とし膜厚0.4nmで形成し、ガスバリア層を酸化アルミニウムとし膜厚10nmで形成した以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムの中間生産物を作成した。次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化アルミニウムを取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
前処理層をチタンとした以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムの中間生産物であるフィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化珪素を取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
前処理層を酸化アルミニウムとし膜厚0.5nmで形成した以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムの中間生産物であるフィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化珪素を取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
前処理層を酸化珪素とし膜厚0.6nmで形成した以外は、実施例2と同様の方法でガスバリア性フィルムの中間生産物であるフィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化アルミニウムを取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
前処理層を酸化チタンとし膜厚0.7nmで形成した以外は、実施例3と同様の方法でガスバリア性フィルムの中間生産物であるフィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化珪素を取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
前処理層をアルミニウムとし、膜厚1.0nmで形成した以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムの中間生産物であるフィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化珪素を取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
前処理層をアルミニウムとし、膜厚5.5nmで形成した以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムの中間生産物であるフィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化珪素を取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
[比較例1]
前処理層を形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムの中間生産物であるフィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化珪素を取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
前処理層を形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法でガスバリア性フィルムの中間生産物であるフィルムを作成した。次にこのフィルムを1.0wt%のトリエタノールアミンを添加した蒸留水中に80℃で5分間浸漬し、酸化珪素を取り除いた後、フィルム表面状態分析を行った。
実施例1〜8、比較例1のガスバリア性フィルムの中間生産物であるフィルム上に、下記に示す(1)液と(2)液を配合比(wt%)で6/4に混合した溶液を作成して塗布し、被覆層を形成した。
(1)液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2換算)の加水分解溶液
(2)液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)
この溶液をグラビアコート法により塗布した後、乾燥し、厚さ0.4μmの被覆層を形成した。以上により、実施例1〜8、比較例1のガスバリア性フィルムを得た。
(2)液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)
この溶液をグラビアコート法により塗布した後、乾燥し、厚さ0.4μmの被覆層を形成した。以上により、実施例1〜8、比較例1のガスバリア性フィルムを得た。
次に、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネートにより、上記ガスバリア性フィルム/延伸ナイロン(15μm)/未延伸ポリプロピレン(70μm)の積層体であるレトルト用包装材料を作成した。
[評価1]
上記積層体のガスバリア性フィルム/延伸ナイロン間のラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS Z1707準拠)。測定は常態と測定部位を水で湿潤させながら行った。結果を表2に示す。
上記積層体のガスバリア性フィルム/延伸ナイロン間のラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS Z1707準拠)。測定は常態と測定部位を水で湿潤させながら行った。結果を表2に示す。
[評価2]
上記積層体を用いて4辺をシール部とするパウチを作製し、内容物として水を充填した。その後、121℃−60分間のレトルト殺菌を行った。評価としてレトルト後の酸素透過度(単位:cm3/m2*day、測定条件:30℃−70%RH)、水蒸気透過度(単位:g/m2*day、測定条件:40℃−90%RH)を評価した。結果を表2に示す。
上記積層体を用いて4辺をシール部とするパウチを作製し、内容物として水を充填した。その後、121℃−60分間のレトルト殺菌を行った。評価としてレトルト後の酸素透過度(単位:cm3/m2*day、測定条件:30℃−70%RH)、水蒸気透過度(単位:g/m2*day、測定条件:40℃−90%RH)を評価した。結果を表2に示す。
実施例1〜8のガスバリア性フィルムは、ガスバリア層3を除去した後のフィルム表面状態分析により、C1s波形分離からC−O−Al結合、C−Si結合、C−O−Ti結合のいずれかを有することが分かった。そのため、実施例1〜8のガスバリア性フィルムによれば、酸素バリア性、水蒸気バリア性、及びラミネート強度が共に優れていた。一方、比較例1のガスバリア性フィルムは、前処理層2を設けていないため、上記C−O−Al結合などを有していなかった。そのため、比較例1のガスバリア性フィルムは、評価試験の後では高い酸素バリア性、水蒸気バリア性を確保することができず、また、ラミネート強度を確保することができなかった。
本発明は、食品及びレトルト食品分野や医薬品、電子部材等の非食品分野の包装に用いられる実用範囲の広い包装材料として利用される。
1…基材
2…前処理層
3…ガスバリア層
4…被覆層
5…接着剤層
6…シーラント層
7…COO結合ピーク
8…C−O結合ピーク
9…C−C結合ピーク
10…C−O−Al結合ピーク
20…ガスバリア性フィルム
30…積層体
2…前処理層
3…ガスバリア層
4…被覆層
5…接着剤層
6…シーラント層
7…COO結合ピーク
8…C−O結合ピーク
9…C−C結合ピーク
10…C−O−Al結合ピーク
20…ガスバリア性フィルム
30…積層体
Claims (6)
- 高分子材料からなる基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に金属、当該金属の酸化物もしくは窒化物のいずれか一つまたはこれらの組合せからなる前処理層と、
無機化合物または有機無機ハイブリッドのいずれか一つもしくは複数からなるガスバリア層と、
前記ガスバリア層を被覆するように形成される被覆層と、がこの順序で積層され、
前記ガスバリア層と、前記被覆層とを取り除いた後に、前記基材表面のX線光電子分光測定(測定条件:X線源MgKα、出力100W)を行い、C1s波形を解析した場合、前記基材の炭素、酸素、水素のいずれか一つもしくは複数からなる元素と、前記前処理層の少なくとも金属元素とが化学的な結合を有することを特徴とする、ガスバリア性フィルム。 - 前記前処理層の金属がアルミニウム、珪素、銅、鉄、ニオブ、チタン、マグネシウム、亜鉛、錫のいずれか一つもしくは複数から選択され、前記前処理層の平均膜厚が0.01nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
- 前記無機化合物が金属またはその酸化物もしくは窒化物のいずれか一つもしくは複数から選択され、当該金属がアルミニウム、珪素のいずれかもしくは両方からなり、有機無機ハイブリッドがアルミニウム、珪素のいずれかもしくは両方と、酸素、炭素、水素のいずれかもしくは複数とからなることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
- 請求項1から3のいずれかに記載の被覆層が1種以上のアルコキシドまたは/およびその加水分解物と水溶性高分子とからなることを特徴とするガスバリア性フィルム。
- 請求項1から4のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの少なくとも一方の面にヒートシール可能な熱可塑性樹脂を積層してなることを特徴とする積層体。
- 請求項1から4のいずれかに記載のガスバリア性フィルムの少なくとも一方の面に接着剤を介してヒートシール可能な熱可塑性樹脂を積層してなることを特徴とする積層体。
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JP2019005813A JP2020111038A (ja) | 2019-01-17 | 2019-01-17 | ガスバリア性フィルム |
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JP2003326636A (ja) * | 2002-05-16 | 2003-11-19 | Toppan Printing Co Ltd | 強密着性ガスバリア透明積層体 |
JP2018192693A (ja) * | 2017-05-17 | 2018-12-06 | 凸版印刷株式会社 | ガスバリア性フィルムおよびその製造方法 |
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