JP4349078B2 - 強密着蒸着フィルムの製造方法および強密着蒸着フィルム - Google Patents

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本発明は、フィルム基材上に少なくとも無機酸化物からなる蒸着層を設けてなる蒸着フィルム、特にフィルム基材と蒸着層との密着性に優れる強密着蒸着フィルムの製造方法とその製造方法によって作成される強密着蒸着フィルムに関する。
近年、食品や非食品及び医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質を抑制しそれらの機能や性質を保持するために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これらを遮断するガスバリア性などを備えることが求められている。そのため従来から、温度、湿度などの影響が少ないアルミニウムなどの金属からなる金属箔をガスバリア層として用いた包装材料が一般的に用いられてきた。
ところが、アルミニウムなどの金属箔を用いた包装材料は、温度、湿度などの影響が極めて少なく、ガスバリア性に優れるが、包装材料を透視して内容物を確認することができない、使用後の廃棄の際には不燃物として処理しなければならない、検査の際には金属探知器が使用できない、等々の欠点を有していて問題があった。
そこで、これらの欠点を克服した包装材料として、例えば特許文献1、2に記載されているような、高分子フィルムからなるフィルム基材上に真空蒸着法やスパッタリング法などの薄膜形成手段により酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物からなる蒸着薄膜を形成した蒸着フィルムが開発されている。これらの蒸着フィルムは、透明性及び酸素、水蒸気などに対するガス遮断性を有していることが知られ、金属箔や金属箔層を有する包装材料では得ることのできない透明性やガスバリア性を有する包装材料として好適とされている。
しかしながら、上記の包装材料においては、フィルム基材に前処理を施さないで無機酸化物からなる蒸着層が設けられていると、フィルム基材と蒸着層間の密着性が弱いために、例えばボイル・レトルト処理などの加熱殺菌処理が施されるとデラミネーションを引き起こすことがあった。
この問題点を解決するため、フィルム基材と無機酸化物からなる蒸着層の密着性を上げるためにウエットコーティングなどの塗布方法によりプライマー層を無機酸化物の薄膜形成前のフィルム基材上に予め塗布、形成しておくことが以前から行われてきた。しかし、この方法では真空プロセス以外の工程が増えることになり、作業効率が悪くなるという問題点がある。
また、密着性を向上させるための前処理を蒸着層の形成工程とインラインで一緒に行う方法として、フィルム基材にプラズマ前処理を施して密着性を改善するという試みもなされている。しかしこの方法では、プラズマ前処理が不完全であるために蒸着層との密着が悪い箇所が出来てしまった時でも、後から密着性向上のための処理をやり直すことは出来ず、製造時の収率が悪くなるという問題点がある。
米国特許第3442686号明細書 特公昭63−28017号公報
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、プラスチック材料からなるフィルム基材上に、少なくとも無機酸化物からなる蒸着層を設けてなる蒸着フィルム、特にフィルム基材と蒸着層との密着性が強化され、例えレトルト・ボイル処理などの加熱殺菌処理を行ってもデラミネーションを発生することがない、ガスバリア性を有する強密着蒸着フィルムとその製造方法を提供するものである。
上記目的を達成するためになされ、請求項1記載の発明は、プラスチック材料からなるフィルム基材の少なくとも一方の面に、無機酸化物からなる蒸着層を少なくとも設けてなる蒸着フィルムの製造方法であって、蒸着層形成後にその表面にマグネトロン放電を使用したプラズマ後処理を処理ユニット圧力8Pa〜100Paにて施すことを特徴とする強密着蒸着フィルムの製造方法である。
また、請求項2記載の発明は、請求項2記載の強密着蒸着フィルムの製造方法において、前記プラズマ後処理が、マグネトロン放電を利用したイオンボンバードによる処理、もしくはプラズマイオンシャワーによる処理であることを特徴とする。
さらにまた、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の強密着蒸着フィルムの製造方法において、前記フィルム基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、セルロース、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリウレタン類の少なくとも1種類以上を成分に持つ、あるいは共重合成分に持つ、あるいはそれらの化学修飾体を成分に持つプラスチック材料のいずれかからなることを特徴とする。
さらにまた、請求項4記載の発明は、請求項3記載の強密着蒸着フィルムの製造方法において、前記ポリエステル類が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ボリブチレンナフタレート及びそれらの混合物あるいは共重合体のいずれかからなることを特徴とする。
さらにまた、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の強密着蒸着フィルムの製造方法において、蒸着層が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物のいずれからなることを特徴とする。
さらにまた、請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の強密着蒸着フィルムの製造方法において、前記蒸着層の形成ととプラズマ後処理が、インラインにて行われることを特徴とする。
さらにまた、請求項7記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の強密着蒸着フィルムの製造方法において、プラズマ後処理を施した蒸着層の上に、水溶性高分子と1種類以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶性或いは水/アルコール混合溶液を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜層を設けることを特徴とする。
さらにまた、請求項8記載の発明は、請求項7記載の強密着蒸着フィルムの製造方法において、前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、或いはそれらの混合物のいずれかであることを特徴とする。
さらにまた、請求項9記載の発明は、請求項7記載の強密着蒸着フィルムの製造方法において、前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)、セルロース、デンプンの少なくとも1種類以上を成分に持つことを特徴とする。
さらにまた、請求項10記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の強密着蒸着フィルムの製造方法により作成されたことを特徴とする強密着蒸着フィルムである。
本発明の強密着蒸着フィルムは、プラスチック材料からなるフィルム基材と無機酸化物からなる蒸着層の密着性が極めて良好で、さらに、レトルト・ボトル処理などの加熱殺菌処理を行った場合においてもデラミネーションなどが発生せず、また本発明の強密着蒸着フィルムの製造方法によれば強密着蒸着フィルムが効率的にかつ収率よく製造することができる。
以下に、本発明の最良の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1と図2は本発明の強密着蒸着フィルムを説明するための断面構成図である。図1に示す強密着蒸着フィルム10は、プラスチック材料からなるフィルム基材1の表面に、無機酸化物からなる蒸着層2が積層されて設けられている。一方、図2に示す強密着蒸着フィルム20は、プラスチック材料からなるフィルム基材11の表面に、無機酸化物からなる蒸着層12とガスバリア性被膜層3が順次積層されて設けられている。
上述したフィルム基材1、11はプラスチック材料からなり、その上面に設ける蒸着層1、12の透明性を生かすために可能であれば透明であることが好ましい。このフィルム基材1、11の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)などからなるポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどからなるポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。フィルム基材1、11は、延伸、未延伸のどちらでも良いが、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。この中では、二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルムが好ましく用いられる。またこのフィルム基材1、11のそれぞれに対して蒸着層2、12が設けられる面とは反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などよりなる層が設けてあってもよい。
フィルム基材1、11の厚さは特に制限を受けるものではないが、プライマー層や、後述する無機酸化物からなる蒸着層2、12、さらにはガスバリア性被膜層13を積層して設ける場合の加工性を考慮すると、実用的には3〜200μmの範囲が好ましく、特に6〜30μmとすることが好ましい。またその構成は、包装材料としての適性を考慮し、異なる性質のフィルムを積層した複層構成のものであってもよい。
一方、無機酸化物からなる蒸着層2、12は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはそれらの混合物などの無機酸化物の蒸着薄膜からなり、透明性を有しかつ酸素や水蒸気などに対するガスバリア性を有する層であればよい。また、ボイル・レトルト処理などの加熱殺菌処理に対する耐性を配慮すると、これらの中では酸化アルミニウムや酸化珪素からなる蒸着層とすることがより好ましい。ただし本発明の強密着蒸着フィルムを構成する蒸着層2、12は、上述した無機酸化物で構成したものに限定されるものではなく、上記の各条件に適合する無機酸化物材料からなる蒸着薄膜であればよい。
また、蒸着層2、12の厚さは、用いられる無機酸化物の種類・構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。た
だし厚さが5nm未満であると均一な膜が得られないことや厚さが十分ではないことがあり、ガスバリア層としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また厚さが300nmを越える場合は薄膜にフレキシビリティを保持させることができず、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外力が加わることにより、薄膜に亀裂を生じる恐れがあるので問題がある。より好ましくは、10〜150nmの範囲内にあることである。
さらに、無機酸化物からなる蒸着層2、12をフィルム基材1、11の上に形成する方法としては種々在るが、一般的には通常の真空蒸着法により形成すればよい。その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。ただし生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかの方式を用いることが好ましいが、蒸発材料の選択性の幅広さを考慮すると電子線加熱方式を用いることがより好ましい。また蒸着層とフィルム基材の密着性及び蒸着層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。また、蒸着層の透明性を上げるため、蒸着の際に酸素などの各種ガスを吹き込んで行う反応蒸着を用いても一向に構わない。
本発明においては、この無機酸化物からなる蒸着層2、12を蒸着により設けた後、フィルム基材1、11と蒸着層1、12との密着性を向上させるため、その表面にマグネトロン放電を利用したプラズマ後処理を処理ユニット圧力を8〜100Paにして施す。このプラズマ後処理の方法としては、マグネトロン放電を利用したイオンボンバードによる処理、もしくはプラズマイオンシャワーによる処理を用いる。
プラズマ処理として一般的に普及している方法は装置の構成、操作手順などが簡単なプラズマイオンエッチング法である。しかしこの方法はプラズマイオン中に試料が露出されるため、5〜300nmという非常に薄い無機酸化物の蒸着層は、そのイオン衝撃によって損傷して当初のガスバリア性が低下するため、本発明におけるプラズマ後処理には適用できない。これに対して、マグネトロン放電を利用したイオンボンバードによる処理、もしくはプラズマイオンシャワーによる処理を処理ユニット圧力を8〜100Paにて希薄気体中で行えば、マイルドな環境下で試料表面にプラズマ処理を施すことができ、無機酸化物からなる蒸着層を損傷させることもなくなり、フィルム基材との密着性の向上と当初のガスバリア性の保持が可能となる。
無機酸化物からなる蒸着層を設けた後にこのようにプラズマ後処理を施すと、一旦蒸着された無機酸化物がプラズマの効果で再びイオン化することによって振動を開始する。この効果によって、蒸着直後はフィルム基材の表面に乗っているだけの状態であった無機酸化物のフィルム基材表面への浸透が起こること、また設けられていた蒸着層がより緻密な膜になることから、フィルム基材と無機酸化物からなる蒸着層との密着性は飛躍的に向上する。さらに、このプラズマ後処理は、装置の不具合で無機酸化物からなる蒸着層の蒸着処理が上手く行われなかったり、もしくは不充分であった場合でも、このプラズマ後処理を再度行うことが出来る点で前処理を行うよりも優れている。
図3と図4には、上記したプラズマ後処理を巻き取り式のインラインで行う処理装置の一例が示してある。
図3に示す処理装置は、マグネトロン放電を利用したイオンボンバードによる処理によるプラズマ後処理が行われるようになっており、その要部はマグネトロンスパッタ方式の成膜部のような構成をしている。この処理装置においては、ターゲット電極4とこのターゲット電極4に取り付けられたターゲット5とターゲット電極4が負電位になるように放電電圧を印加する電源6を具備し、ターゲット電極4には磁石7が取り付けられている。
このように配置された各ユニットによってターゲット5の表面に沿って磁界が形成されるため、放電によって生じた電子が磁界の中で螺旋運動を起こし、その飛距離が延ばせるようになっており、真空槽内の残留ガスとの衝突の機会が多くなり、残留ガスがプラズマ化されるようになって、低い処理圧力の中で陽イオンの密度が飛躍的に増大する。従って低電圧でも、密度の高い安定したプラズマ領域がターゲット付近に得られる。この時、ターゲット5はスパッタ率の低い金属とする。この状態ではターゲット表面にて陽イオンが反射して、フィルム基材上に無機酸化物からなる蒸着層が形成された状態で搬入されてくる巻き取り状のフィルム積層体の蒸着層表面にイオンが注入されるため、蒸着層が損傷することはない。
一方、図4に示す処理装置は、マグネトロン放電を利用したプラズマイオンシャワーによるプラズマ後処理が行われるようになっており、上記したマグネトロン放電を利用したイオンボンバード処理が行われる処理装置と似たような構成をしているが、電極に磁石は使用しない点で異なっている。この処理装置においては、フィルム基材上に無機酸化物からなる蒸着層が形成された状態で搬入されてくる巻き取り状のフィルム積層体の近傍に配置されたターゲット電極4に対して正の電圧を印加するための正電極8の一対を配置することによって、ターゲット電極4と正電極8との間でプラズマ放電を起こし、それによって発生した陽イオンをターゲット電極4に反射させ、前記巻き取り状のフィルム積層体の蒸着層上に陽イオンをシャワー状に照射するようになっている。このような構成の処理装置を使用したプラズマ後処理でも、処理面である蒸着層を損傷することなく所望のイオンをそこに注入することができる。
これらのプラズマ後処理は処理ユニット圧力が8〜100Paの希薄気体状態で行う。圧力が8Paより低いと無機酸化物からなる蒸着層に照射される陽イオンの量が少なくなるためフィルム基材との密着性の改善ができない。また、圧力が100Paより高くなると、無機酸化物からなる蒸着層がイオンによって損傷し、蒸着層由来の所期のガスバリア性を発現することができなくなるので好ましくない。さらに好ましくは処理ユニット圧力が9〜30Paの範囲にあることである。
前記した各処理装置におけるターゲット電極4およびターゲット5としては、イオン衝撃でスパッタされない金属、例えばFe、Cr、Ni、Ta、Mo、Al、或いはこれらの合金を使用する。
一方、プラズマ後処理の処理回数には制限がない。即ち、何らかの原因でプラズマ後処理が上手く蒸着層に対してなされなかったり、もしくは不完全な処理であった場合にでも、再度プラズマ後処理を行うことで密着性を改善することができる。1回の処理時間は処理時の熱による被処理対象物の変形が起こらない範囲であれば、特に制限されない。
本発明の強密着蒸着フィルムは以上のようにして得られるが、本発明の強密着蒸着フィルムは以上のような構成のものに限定されるものではなく、前述したように、無機酸化物からなる蒸着層に以下に説明するガスバリア性被膜層がさらに積層されて設けられていても、後述する印刷層、介在フィルム、シーラント層などが設けられていてもよい。
ガスバリア性被膜層13はガスバリア性を持った被膜層であり、例えば水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶液或いは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。さらに具体的には、水溶性高分子を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合したものをコーティング剤として用い、このコーティング剤を無機化酸化物からなる蒸着薄膜層上にコーティングした後、加熱乾燥して形成する。コーティング剤に含まれる各成分についてさらに詳細に説明
する。
上記したコーティング剤に用いられる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を上記した組成のコーティング剤に用いた場合にはガスバリア性が最も優れるようになるため好ましい。ここでいうPVAとは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVAなどを用いることができるが、これ以外のものを用いても一向に構わない。
また、金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si、Ti、Al、Zr等の金属、R:CH3、C25等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などが挙げられ、中でもテトラエトキシシランやトリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
この溶液中にガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の方法を用いることが可能である。
ガスバリア性被膜層13の厚さは、それを構成するコーティング剤の種類やコーティング加工機やその加工条件によって最適条件が異なり、特に限定はしない。ただし乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一な塗膜が得られず十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は塗膜にクラックが生じ易くなるため問題となる場合がある。好ましくは0.01〜50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1〜10μmの範囲にあることである。
また、このガスバリア性被膜層13の上には、上述したように印刷層、介在フィルム、シーラント層などを積層させて、さらに汎用性の高い包装材料とすることができる。
介在フィルムは、袋状包装材料時の破袋強度や突き刺し強度を高めるために設けられるもので、一般的には機械強度及び熱安定性の面から二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの内から選ばれる一種であることが好ましい。その厚さは、材質や要求品質に応じて決められるが、一般的には10〜30μmの範囲である。
さらに、シーラント層は袋状包装体などを形成する際に接着層として機能するように設けられるものである。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体及びそれらの金属架橋物などの樹脂により形成される。その厚さは目的に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲である。
一方、これらの印刷層、介在フィルム、シーラント層などは無機酸化物からなる蒸着層が積層されていないフィルム基材のもう一方の面にも必要に応じて設けられていてもよい
以下に本発明の強密着蒸着フィルムとその製造方法に係る実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面に、電子線加熱方式を用いた反応蒸着により、酸化アルミニウムを15nmの厚さで成膜し、蒸着層を設けた。続いて蒸着層を設けたこの積層フィルムの蒸着層上に、以下の条件にてマグネトロン放電を利用したイオンボンバードによる処理を図3に示すような処理装置を用いて施し、実施例1に係る本発明の強密着蒸着フィルムを作成した。
[処理条件]
処理ガス:空気
処理ユニット圧力:10Pa
処理時間:10sec
放電電圧:400V(DC電源)
処理ガスを窒素、処理ユニット圧力を15Pa、放電電圧を350Vとした以外は実施例1と同様にして実施例2に係る本発明の強密着蒸着フィルムを作成した。
実施例1と同様の条件にてプラズマイオンシャワーによる処理を図4に示すような処理装置を用いて施し、実施例3に係る強密着蒸着フィルムを作成した。
処理ガスを窒素とした以外は実施例3と同様にして、実施例4に係る本発明の強密着蒸着フィルムを作成した。
処理ユニット圧力を6Pa、放電電圧を450Vとした以外は実施例1と同様の方法で実施例5に係る比較のための蒸着フィルムを作成した。
処理ユニット圧力を6Pa、放電電圧を450Vとした以外は実施例3と同様の方法で実施例6に係る比較のための蒸着フィルムを作成した。
処理ユニット圧力を150Pa、放電電圧を50Vとした以外は実施例1と同様の方法で実施例7に係る比較のための蒸着フィルムを作成した。
酸化アルミニウムを成膜後、プラズマイオンエッチング装置を用いて、放電電圧を2KVにして前記酸化アルミニウムの蒸着層に対して後処理を施し(その他の条件は実施例1と同様)、実施例8に係る比較のための蒸着フィルムを作成した。
実施例1〜4に係る強密着蒸着フィルムと、実施例5〜8に係る蒸着フィルムのそれぞれの蒸着層の上に、下記に示すA液とB液を配合比(wt%)で6/4に混合した溶液をグラビアコート法により塗布し、加熱乾燥させ、厚さ0.4μmのガスバリア性被膜層を
形成し、8種の蒸着フィルムを得た。
A液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2換算)の加水分解溶液。
B液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)。
さらに、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用い、ドライラミネートにより、上記8種の蒸着フィルムのガスバリア性被膜層上に、延伸ナイロンフィルム(15μm)と未延伸ポリプロピレンフィルム(70μm)をこの順序で積層し、レトルト用包装材料(実施例1’〜4’に係る強密着蒸着フィルムと実施例5’〜8’に係る蒸着フィルム)を作成した。
[評価1]
上記実施例1’〜実施例8’に係る各蒸着フィルムにおける延伸ナイロンフィルムとのラミネート強度を、オリエンテック社テンシロン万能試験機RTC−1250を用いて測定した(JIS Z1707準拠)。但し、測定の際には測定部位を水で湿潤させながら行った。結果を表1に示す。
[評価2]
上記実施例1’〜実施例8’に係る各蒸着フィルムを用いて4辺をシール部とするパウチを8個作製し、内容物として水を充填した。その後、121℃−30分間のレトルト殺菌を行い、目視によりレトルト後の状態を観察した。結果を表1に示す。
Figure 0004349078
本発明の強密着蒸着フィルムの一例を示す断面構成説明図である。 本発明の強密着蒸着フィルムの他の一例を示す断面構成説明図である。 本発明の製造方法において使用される、マグネトロン放電を利用したイオンボンバードによる処理装置の一例を示す概略構成説明図である。 本発明の製造方法において使用される、マグネトロン放電を利用したプラズマイオンシャワーによる処理装置の一例を示す概略構成説明図である。
符号の説明
1、11・・・フィルム基材層
2、12・・・蒸着層
4 ・・・ターゲット電極
5 ・・・ターゲット
6 ・・・DC電源
7 ・・・磁石
8 ・・・正電極
9 ・・・冷却ドラム
13 ・・・ガスバリア性被膜層

Claims (10)

  1. プラスチック材料からなるフィルム基材の少なくとも一方の面に、無機酸化物からなる蒸着層を少なくとも設けてなる蒸着フィルムの製造方法であって、蒸着層形成後にその表面にマグネトロン放電を使用したプラズマ後処理を処理ユニット圧力8〜100Paにて施すことを特徴とする強密着蒸着フィルムの製造方法。
  2. 前記プラズマ後処理が、マグネトロン放電を利用したイオンボンバードによる処理、もしくはプラズマイオンシャワーによる処理であることを特徴とする請求項1記載の強密着蒸着フィルムの製造方法。
  3. 前記フィルム基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、セルロース、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリウレタン類の少なくとも1種類以上を成分に持つ、あるいは共重合成分に持つ、あるいはそれらの化学修飾体を成分に持つプラスチック材料のいずれかからなることを特徴とする請求項1または2に記載の強密着蒸着フィルムの製造方法。
  4. 前記ポリエステル類が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ボリブチレンナフタレート及びそれらの混合物あるいは共重合体のいずれかであることを特徴とする請求項3記載の強密着蒸着フィルムの製造方法。
  5. 前記蒸着層が、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム或いはそれらの混合物のいずれかからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の強密着蒸着フィルムの製造方法。
  6. 前記蒸着層の形成とプラズマ後処理が、インラインにて行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の強密着蒸着フィルムの製造方法。
  7. プラズマ後処理を施した蒸着層の上に、水溶性高分子と1種類以上の金属アルコキシドまたはその加水分解物を含む水溶性或いは水/アルコール混合溶液を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア被膜層を設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の強密着蒸着フィルムの製造方法。
  8. 前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、或いはそれらの混合物のいずれかであることを特徴とする請求項7記載の強密着蒸着フィルムの製造方法。
  9. 前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールまたはポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)、セルロース、デンプンの少なくとも1種類以上を成分に持つことを特徴とする請求項7記載の強密着蒸着フィルムの製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の強密着蒸着フィルムの製造方法により作成されたことを特徴とする強密着蒸着フィルム。
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