JP2004190179A - 極細繊維立毛シート - Google Patents

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Abstract

【課題】摩擦堅牢度、洗濯堅牢度、かつ高温での耐色移行性に優れ、立毛状態の良好な極細繊維立毛シートを提供する。
【解決手段】本発明は極細繊維絡合不織布に弾性重合体が含有され、少なくとも片面が起毛された極細繊維立毛シートの該立毛面に、低分子量ポリウレタン、シリコーン樹脂、および撥水剤からなる配合物が付与されていることを特徴とする堅牢度に優れた極細繊維立毛シートである。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦堅牢度、洗濯堅牢度に優れ、かつ高温条件での耐色移行性にも優れており、立毛状態の良好な極細繊維立毛シートに関するものであり、衣料、靴、手袋、インテリア等の用途向け素材に適した極細繊維立毛シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、極細繊維立毛シートの摩擦堅牢度、洗濯堅牢度、あるいは高温での耐色移行性を改良するために多くの提案がなされている。極細繊維立毛シートの摩擦堅牢度が悪い原因としては主に2種類があり、染色されている極細繊維立毛シートの場合、摩擦により擦れあった物質へ極細繊維立毛シートから染料が移行することによる汚染が、特に染料を多量に使用して濃色に染色されたものには顕著にみられ、また、染料使用量が少ないか、移行してもあまり目立たない色目の染料を使用して淡色に染色された極細繊維立毛シートや、あるいは染色されていない極細繊維立毛シートの場合であっても、摩擦により極細繊維立毛シート立毛面の立毛が切れたり抜けたりして極細繊維が脱落し、擦れあった物質へ極細繊維ピリングとなって付与することによる汚染がみられる。
【0003】
前者の原因、即ち染料移行による汚染の改良方法としては、例えばポリアミド系繊維構造物を酸性染料と分散染料で染色した後でタンニン酸及び吐酒石を用いて染料を固着し、更に、還元洗浄する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。あるいは、ポリアミド系繊維を使用したスエード調人工皮革を染色する場合に通常使用されるような、酸性染料あるいは含金錯塩染料などの水に可溶性の染料を使用せず、硫化染料や建染染料や硫化建染染料といった水に不溶性の染料を主体として使用し、一旦水に可溶化して染色した後、再度水に不溶化する染色方法がある(例えば、特許文献2参照。)。これらの方法を採用することにより、染料の移行による汚染が原因であった摩擦堅牢度や洗濯堅牢度などはある程度向上するものの、染料の移行を十分に抑えきるものではなく、また極細繊維脱落による摩擦堅牢度の悪化は防げないものであり、さらには染料種類を水に不溶性のものに限定することは、極細繊維立毛シートの色調や色のバリエーションを狭めてしまうといった難点があった。
【0004】
後者の原因、即ち極細繊維脱落による汚染の改良方法としては、一般的に採用されている方法として、極細繊維と弾性重合体からなる極細繊維シートの表面を起毛し、さらに染色して極細繊維立毛シートを製造する際、弾性重合体の溶剤を含むような処理液、もしくは弾性重合体溶液を、起毛前から染色後の何れかの段階で立毛面へ塗布して立毛を極細繊維シートへ固定する方法がある(例えば、特許文献3参照。)。あるいは、前述の水に不溶性の染料により染色した後でポリウレタンの水分散液を塗布することによって、染料移行の防止策と極細繊維脱落の防止策とを組み合わせた方法がある(例えば、特許文献4参照。)。これらの方法を採用することにより、極細繊維脱落による汚染に対する改善効果はみられるものの、特に湿潤状態での摩擦堅牢度といった、染料移行、及び極細繊維脱落の双方に対して厳しい条件における堅牢度が十分に改善されているとは言えないものであった。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−306780号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開平11−81157号公報(第3−5頁)
【特許文献3】
特開昭57−154468号公報(第2頁)
【特許文献4】
特開平11−217773号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は極細繊維絡合不織布に弾性重合体が含有され、少なくとも片面が起毛された極細繊維立毛シートにおいて、衣料用、靴用、手袋用、またはソファー等のインテリア用といった、使用者の肌や衣服等に直接接する製品用途、あるいは他の素材と組み合わせて使用されるような製品用途の素材としての使用に対して十分な摩擦堅牢度、洗濯堅牢度、高温での耐色移行性を有し、かつ立毛状態の良好な極細立毛繊維シートを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、極細繊維絡合不織布に弾性重合体が含有され、少なくとも片面が起毛された極細繊維立毛シートの該立毛面に、低分子量ポリウレタン、シリコーン樹脂、および撥水剤からなる配合物が付与されていることを特徴とする極細繊維立毛シートである。また、本発明における配合物を構成する各成分については、以下の条件を満たすことが好ましい。すなわち、低分子量ポリウレタンは数平均分子量が1000〜10000であること、シリコーン樹脂はアミノ変性シリコーンであること、あるいは撥水剤は脂肪酸アミド系化合物であることである。また、本発明のもう1つの形態は、染色されているそれらの極細繊維立毛シートである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明における極細繊維立毛シートは、極細繊維絡合不織布に弾性重合体が含有され、少なくとも片面が起毛されたものである。本発明の極細繊維としては通常の繊維形成性ポリマー、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリオレフィン等からなり、直接紡糸法、混合防止法、複合紡糸法等の、従来公知の方法により製造される、0.5dtex以下程度の平均単繊度を有するような極細繊維が極細繊維立毛シートの優れた外観を有するために好ましく使用される。そして風合いの点から、繊維形成性ポリマーとしてはポリアミド、あるいはポリエステルがより好ましく、中でもポリアミドが最も好ましい。また同様に風合いの点で、あるいは優美な立毛感といった外観の点で、平均単繊度としては0.3dtex以下、より好ましくは0.1dtex以下の極細繊維が使用される。
【0009】
極細繊維絡合不織布として、ポリアミド、あるいはポリエステルからなる極細繊維を主体とする絡合不織布を用いた場合、その不織布空間に含有した多孔質構造または非多孔質構造の弾性重合体からなる繊維質シートの少なくとも片面を起毛処理して繊維質シート構成繊維の極細繊維によって形成された繊維立毛を有する極細繊維立毛シート、例えばスエード調の人工皮革を作製し、それを必要に応じて含金錯塩染料、酸性染料、分散染料、硫化染料、建染染料及び硫化建染染料がらなる群から選ばれる少なくとも1種の染料を主体とした染料で染色することで所望の色調に着色し、ついで、少なくとも該立毛面に、低分子量ポリウレタン、アミノ変性シリコーン、および撥水剤からなる配合物を付与することにより本発明の堅牢度に優れた極細繊維立毛シートが得られる。
【0010】
極細繊維絡合不織布に含浸する弾性重合体としては、公知のもの、例えばスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が使用可能であるが、極細繊維立毛シートとしたときの感性面や強度面、あるいは素材として使用が想定される環境における特性面、さらには後述する立毛面に塗布する配合物との接着性、さらには樹脂としての価格面などの種々の要因のバランスにおいて、ポリウレタンが最も好ましく、なかでも平均分子量500〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどから選ばれた少なくとも1種のポリマージオール、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネートから選ばれた少なくとも1種の有機ジイソシアネートを主体に、必要に応じて他の有機ジイソシアネートあるいは有機トリイソシアネートを配合した有機ジイソシアネート、および低分子ジオール、低分子ジアミン、ヒドラジン、ヒドロキシアミンなど活性水素原子2個有する化合物とを溶液重合法、溶融重合法、塊状重合法などによって重合して得たポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステルエーテル系ポリウレタン、ポリラクトン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンなどである。これらのポリウレタンは溶剤に溶解、あるいは分散媒に分散して重合体液にしたのち、繊維絡合不織布に含浸し、非溶剤で処理して湿式凝固し、混合繊維の分散媒成分であるポリマーを溶解除去することにより繊維質シートを得る。またポリウレタン重合体液を繊維絡合不織布に含浸する前に、混合繊維の分散媒成分であるポリマーの溶解除去を行ってもよい。
【0011】
このようにして得られた繊維質シートを所定の厚さにスライスし、あるいはスライスせずに、少なくとも片面、特に製品において表面となる面にサンドペーパーによるバフィング処理、起毛機による起毛処理を行い、その後、洗浄処理などの工程を経て極細繊維立毛シートとする。極細繊維立毛シートの厚さとしては、目的とする用途の素材として使用するにあたって0.3〜2.0mm程度の厚さとするのが好ましいが、本発明の効果を発揮することにおいては特に限定されるものではない。
【0012】
またスエード調人工皮革を染色する染料は、含金錯塩染料、酸性染料、硫化染料、建染染料および硫化建染染料から選ばれた少なくとも一種の染料を主体として用いるか、併用しても良い。これらの染料のうち、硫化染料、建染染料および硫化建染染料は、染料自体は水に不溶性のため洗濯堅牢度に優れ、衣料用、靴用、手袋用、またはソファー等のインテリア用といった、使用者の日常生活等想定される使用環境において水に触れる可能性のある用途には使用するのが好ましい。
染色方法は、公知の染色機を用いて、公知の方法により染色することが可能である。染色方法としては、例えば、浸染法、塗布法等、特に限定されないが、衣料用、靴用、手袋用、またはソファー等のインテリア用といった用途の場合には、風合いや堅牢度の点で浸染法が好ましく、また染色機としてはウィンス染色機、サーキュラー染色機、ダッシュライン染色機、ジッガー染色機等が通常好ましく使用される染色機として挙げられるが、特に高温・高圧染色を必要とする場合や、酸化還元反応を含むような染色の場合には、密閉性のあるサーキュラー染色機が好ましく使用される。
【0013】
次いで、本発明の染色した、あるいは未染色の極細繊維立毛シートに、低分子量ポリウレタン、アミノ変性シリコーンおよび撥水剤からなる配合物を付与する。使用される低分子量ポリウレタンは、数平均分子量が1000〜10000のポリウレタンであり、好ましくはポリアルキレングリコール、脂肪族ジイソシアネート及びN−アルキルジエタノールアミンから得られる低分子量ポリウレタンである。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリアルキレンエーテルグリコール類などから選ばれた少なくとも一種のポリアルキレングリコールであって、特に数平均分子量が200〜3000のものが挙げられ、これをソフトソグメント成分とし、また、ハードセグメント成分である脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4、4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等から選ばれた少なくとも一種の脂肪族ジイソシアネートが挙げられ、これら成分の共重合反応における鎖伸長剤としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン等から選ばれた少なくとも一種のN−アルキルジエタノールアミンが挙げられる。また、低分子量ポリウレタンにおけるポリアルキレングリコールと脂肪族ジイソシアネートとN−アルキルジエタノールアミンとの重量比率は、1:1.5〜3:0.5〜2が好ましい。なお低分子量ポリウレタンの平均分子量は、上記重量比率とポリアルキレングリコールの平均分子量を適当に選択することにより容易に所定のものとすることができる。
【0014】
本発明の目的を達成する上で、上記3成分から得られる低分子量ポリウレタンが好適である。ポリアルキレングリコールの替わりにポリエステルグリコールを使用することも可能であるが、耐久性の点でポリアルキレンゴリコールが好ましい。もちろん本発明の目的や効果を損なわない範囲内で、上記3成分の一部を他の成分に置き換えてもよい。
こうして得られた低分子量ポリウレタンの数平均分子量が1000〜10000のときに、配合物を塗布した極細繊維立毛シートにおいて優れた摩擦堅牢度、洗濯堅牢度等が得られ、好ましくは数平均分子量が1500〜5000である。数平均分子量が1000未満の場合には、配合物が易動性を有してしまうためか、染料移動の担体となり、あるいは配合物の粘着性が強すぎるためかえって極細繊維立毛シート表面に接触する物質へ極細繊維が脱落し易くなってしまうなどの理由により、十分な摩擦堅牢度が得られない傾向にあり、また、数平均分子量が10000を越える場合には、配合物が付与された極細繊維立毛シートの風合いが硬化したり、バランスが崩れたり、あるいは極細繊維の立毛が収束、あるいは硬化したり、立毛自身がねてしまうなど、極細繊維立毛シートの感性面での商品価値が損なわれる傾向にある。
【0015】
本発明で用いられるシリコーン樹脂は、繊維製品の風合い加工剤、柔軟仕上剤等の各種処理剤として通常入手可能なものであればいずれでも使用可能であり、配合物としての相溶性や粘度等のマッチングや、極細繊維立毛シートとして所望の風合い、タッチ等の要因から適宜選択すれば良いが、極細繊維立毛シートの風合いやタッチの点でアミノ変性シリコーンが好ましい。また、撥水剤としては、脂肪酸アミド系化合物、アルキルメチロールアマイド、メチルハイドロジェンポリキシロキサン、フッ素系高分子重合体、例えば、パーフルオロアルキル、パーフルオロヘキサセニル等のフルロカーボン基を側鎖に有し、ポリアクリル酸エステル或いはメタクリル酸エステル系高分子等を主鎖にもつ含フッ素重合体等の 繊維製品の撥水剤、撥油剤、防汚加工剤として通常入手可能なものであれば何れでも使用可能であるが、特に極細繊維立毛シートとして所望の風合い、タッチ等の要因から脂肪酸アミド系化合物が好ましく、中でも脂肪酸アミドエピクロルヒドリン4級塩が最良である。本発明の低分子量ポリウレタンとアミノ変性シリコーンおよび撥水剤からなる配合物における各成分の重量比率は、50〜90/5〜40/5〜10の範囲が、摩擦堅牢度、洗濯堅牢度等の物性面と風合い、タッチ等の感性面とのバランスにおいて優れた比率であり、より好ましくは70〜80/10〜20/5〜10である。該配合物を水で分散希釈して20〜70重量%程度の分散液とし、使用時は処理液としての粘度、所望とする付与量、付与状態等の点から必要に応じて水でさらに希釈することで1〜50重量%程度に調節して、極細繊維立毛シートへ付与される。付与量は、目的とする摩擦堅牢度等の改良効果と、風合い、タッチ、立毛状態等の感性面でのバランスにおいて適宜選択されるが、通常であれば極細繊維立毛シートの重量に対して1〜20重量%程度であり、好ましくは5〜10重量%であって、本発明の目的とする効果を得るためには立毛面部分を主として付与させればよい。付与量が1重量%に満たない場合には摩擦堅牢度等の改良効果が殆ど期待できず、また20重量%を越える場合には摩擦堅牢度等の改良効果は十分以上にあるが、表面の立毛状態やタッチ、あるいは風合いが損なわれてしまう傾向にある。
【0016】
本発明の極細繊維立毛シートの立毛を構成する繊維の繊度が特に0.5dtex以下である場合特に前述の配合物を付与することにより乾湿摩擦堅牢度の改善に顕著な効果が認められる。即ち、繊度が小さくなることに伴なって表面に露出している立毛繊維の総面積が広くなりさらには単繊維の機械物性が低下するため立毛繊維の抜けが起こることによって汚染がひどくなるためである。
【0017】
該配合物を極細繊維立毛シートに、立毛面を主として付与する方法としては、公知の液状処理剤付与方法が何れも使用可能であり、例えば浸漬法、グラビアコーター法、リバースロールコーター法、スプレーコーター法、カーテンフローコーター法などが挙げられるが、中でも、塗布量の制御性、均一性、安定性に優れ、塗布状態としては表面にスポット状に塗布することのできるグラビアコーター法が得られる極細繊維立毛シートの風合いや、立毛状態の点で最良である。また、浸漬法も、極細繊維立毛シートの処理剤浸透性との兼ね合いにおいて、処理剤粘度、濃度、浸漬時間など適宜条件選択することにより、表面に多く付与した状態とすることが容易な場合には、付与方法として平易な方法なので好ましく使用される。尚、配合物分散液中には、極細繊維立毛シートの立毛状態、風合い、表面の各種性能を損なわない範囲であって、かつ表面の変退色等の変性をもたらさない種類の添加剤、例えばポリカーボネート系ポリウレタン、無黄変ポリウレタンなどを安定剤の接着剤として適量添加しておくことも本発明における好ましい態様の1つである。
【0018】
配合物を付与した極細繊維立毛シートは、必要に応じて風合い、外観の修正のため、揉み処理、立毛面のブラッシング処理等の各種処理を別途行うことも、目的とする用途における素材としての商品価値を更に付与する上で好ましい。
本発明で得られた極細繊維立毛シートは、摩擦堅牢度、洗濯堅牢度、高温での耐色移行性に優れ、かつ立毛状態の良好なものであり、衣料用、靴用、手袋用、またはソファー等のインテリア用といった、使用者の肌や衣服等に直接接する製品用途、あるいは他の素材と組み合わせて使用されるような製品用途の素材として好適なものである。
【0019】
以下実施例により、本発明を説明する。
なお、極細繊維の平均繊度は、極細繊維形成に使用したポリマーの密度と走査型電子顕微鏡を用いて数百倍〜数千倍程度の倍率にて観察される、繊維質シート、あるいは極細繊維立毛シートを構成する極細繊維の断面の面積とから計算されたものである。また、実施例中で記載される部および%は、特にことわりのない限り重量に関するものである。
また、摩擦堅牢度は、JIS K6547(クロックメーター使用)により、5級(良い)〜1級(悪い)で判定した。
洗濯堅牢度は、JIS L0844(A−1法)により、5級(良い)〜1級(悪い)で判定した。
高温での耐色移行性は、試験片と白仕上片の表同士重ね合わせ加圧重2kgかけ、70℃乾燥機24時間処理した後、標準状態(20℃、65%RH)で1時間冷却後、試験片を剥がし、白仕上片に生じた色移行をJIS L0805汚染用グレースケールで級判定により、5級(色移行なし)〜1級(色移行激しい)で判定した。
立毛状態に関しては、人工皮革の製造に係る者5名を任意に選び出し、官能検査で○(良い)〜△(並)〜×(悪い)を判定した。
【0020】
実施例1
高流動性ポリエチレン40部、6−ナイロン60部(島成分)からなる繊度4.5デニールの多成分繊維を用いて作った平均目付650g/mの繊維絡合不織布に、ポリエーテル系ポリウレタンを主体とするポリウレタン組成物13部、ジメチルホルムアミド87部の組成液を含浸し、湿式凝固してポリウレタン量として168g/mの量を含有した繊維シートを得た。この繊維シートを熱トルエン中で処理して繊維中のポリエチレン成分を溶解除去し、6−ナイロン極細繊維(平均繊度0.05dtex)絡合不織布にポリウレタンが含有した、厚さ約1.3mmの繊維質シートIを得た。
得られた繊維質シートIの片面をエメリーバフすることにより繊維立毛面とし、ブラッシングすることにより、繊維立毛面がスエード調の立毛状態であり平均厚さ1.0mmの極細繊維立毛シートIIを得た。この極細繊維立毛シートIIを、建染染料を用いて下記条件で赤色に染色した。
【0021】
[染着条件]
Indanthren Red FBB (BASF製) 4.0%owf
還元剤(ハイドロサルファイト) 15g/L
水酸化ナトリウム 2g/L
浴比 1:100
温度;時間 70℃−30分
染色機 サーキュラー染色機
[酸化]
過酸化水素(30%) 3g/L
酢酸 3g/L
温度;時間 60℃−30分
【0022】
染色処理後に洗浄することで固着されていない染料を除去し、乾燥して、赤色の極細繊維立毛シートを得た。
次いで、得られた極細繊維立毛シートの立毛面に、低分子量ポリウレタンの水分散液(ポリエチレングリコール:ヘキサメチレンジイソシアネート:N−メチルジエタノールアミン=1:2:1、数平均分子量5000、固形分濃度20%)50部、アミノ変性シリコーンエマルジョン(日華化学株式会社製「ニッカシリコーン AM−204」固形分濃度20%)30部、脂肪酸アミドエピクロルヒドリン4級塩撥水剤(吉村油化学株式会社製、「ニッテクスAP」固形分濃度20%)10部からなる配合物を、140メッシュのグラビアロールを使用したグラビアコータ−法により塗布(配合物の付与量20g/m、固形分付与量換算4g/m)し、乾燥して水分を蒸発させた後、ブラシ掛けで整毛し、極細繊維立毛シート製品を得た。得られた極細繊維立毛シート製品は乾湿摩擦堅牢度4−5級で極めて優れ、かつ洗濯堅牢度4−5級、高温での耐色移行性4級、毛羽感、外観、触感も良好であった。
【0023】
実施例2
実施例1で得た極細繊維立毛シートIIを、硫化染料を用いて下記条件で紺色に染色した。
[染着条件]
Asathiosol Pure Blue S-GL (旭化学工業製) 8.0%owf
還元剤(炭酸水素ナトリウム) 7g/L
浴比 1:100
温度;時間 70℃;30分
染色機 サーキュラー染色機
[酸化]
過酸化水素(30%) 3g/L
酢酸 3g/L
温度;時間 60℃;30分
染色後に実施例1と同様の処理を行い、極細繊維立毛シートを得た。次いで、実施例1と同様な配合物をさらに水50部で希釈した処理液中に、得られた極細繊維立毛シートを含浸して含浸倍率60%(固形分付与量18g/m)にて付与し、極細繊維立毛シート製品を得た。得られた極細繊維立毛シート製品は、乾湿摩擦堅牢度がそれぞれ4−5級で良好であり、また高温での耐色移行性、洗濯堅牢度ともに優れ、立毛状態も良好であった。
【0024】
実施例3
実施例1で得た極細繊維立毛シートIIを、含金錯塩染料を用いて下記条件で黒色に染色した。
[染着条件]
Irgalan Grey 2BL(チバガイギー製) 4.0%owf
Levelan NKD 1.0%owf
浴比 1:100
温度;時間 70℃;30分
染色機 サ−キュラー染色機
染色後に実施例1と同様の処理を行い、極細繊維立毛シートを得た。次いで極細繊維立毛シートに実施例1と同様な方法で配合物を付与し、極細繊維立毛シート製品を得た。得られた極細繊維立毛シート製品は乾湿摩擦堅牢度4〜5級と極めて優れ、また高温での耐色移行性、洗濯堅牢度共に優れ、毛羽感も良好であった。
【0025】
比較例1
実施例1で得た染色された極細繊維立毛シートを、配合物の撥水剤を除去した以外は実施例1と同一の方法により処理して極細繊維立毛シート製品を得た。得られた極細繊維立毛シート製品については洗濯堅牢度、高温での耐色移行性は良好であるが、乾湿摩擦堅牢度は共に2〜3級と悪かった。
【0026】
比較例2
実施例1において、実施例1の配合物の付与なしで極細立毛シートを得た。得られた極細繊維立毛シートについて乾湿摩擦堅牢度を測定した結果、共に2級と悪かった。
以上の実施例および比較例で得られた極細繊維立毛シートの評価結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 2004190179
【0028】
【発明の効果】
本発明の極細繊維立毛シートは、摩擦堅牢度、洗濯堅牢度に優れ、かつ高温での耐色移行性にも優れ、さらに立毛状態も良好であって、衣料用、靴用、手袋用、またはソファー等のインテリア用といった、使用者の肌や衣服等に直接する製品用途、あるいは他の素材と組み合わせて使用されるような製品用途の素材であって、特に水に濡れる可能性のある用途に非常に適している。

Claims (5)

  1. 極細繊維絡合不織布に弾性重合体が含有され、少なくとも片面が起毛された極細繊維立毛シートの該立毛面に、低分子量ポリウレタン、シリコーン樹脂、および撥水剤からなる配合物が付与されていることを特徴とする極細繊維立毛シート。
  2. 低分子量ポリウレタンの数平均分子量が1000〜10000である請求項1に記載の極細繊維立毛シート。
  3. シリコーン樹脂がアミノ変性シリコーンである請求項1または2に記載の極細繊維立毛シート。
  4. 撥水剤が脂肪酸アミド系化合物である請求項1〜3いずれか1項に記載の極細繊維立毛シート。
  5. 染色されている請求項1〜4いずれか1項に記載の極細繊維立毛シート。
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