JP2006183206A - スエード調人工皮革およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 極細繊維束からなる繊維絡合体および高分子弾性体から構成され、以下
(1)極細繊維束が、水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維を極細化して、単繊維繊度が0.0003〜0.4dtexの繊維から構成されていること、
(2)高分子弾性体を構成する樹脂が、水分散樹脂であること、
(3)パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーが、極細繊維束内部および該表面、並びに高分子弾性体に付着していること
を特徴とするスエード調人工皮革。
【選択図】 なし
Description
従来から、環境対応の観点から、高分子弾性体に水分散弾性体を用いた方法(例えば、特許文献1、2および3参照)が提案されているが、人工皮革で従来から用いられる溶剤系ポリウレタンに比べ、一般に吸水性が高く耐水性が劣るために、染色工程等の水処理工程で高分子弾性体の膨潤が起こって、高分子弾性体が脱落したり、極細繊維束内部の極細繊維を膠着させて、得られるスエード調人工皮革のスエード感や表面タッチ、風合い、引裂強力に劣る問題があったり、また、使用時、特に濡れた際の擦れによって、水分散樹脂が脱落して色移りが起こりやすい問題等がある。また、高分子弾性体には、従来から高級感や耐光性を高めるため等の目的で顔料を添加するが、これらの問題は、水分散樹脂に顔料を添加した場合に一層顕著となって、高級感のある耐光性に優れたスエード調人工皮革を得ることを、更に困難にしていた。
特に、水抽出方式と水分散樹脂を組合せた場合には、高分子弾性体の水膨潤性、高吸水性、低耐水性と、水溶性高分子成分残存に伴う高吸水性と合わさって、得られるスエード調人工皮革のスエード感、表面タッチ、風合い、引裂強力、湿潤下での色移りが一層劣る傾向がある。
また、抽出等の製造条件の微妙な変動によって、これらが影響され、安定的に一定品質の物が得られ難く、生産安定性にも問題を抱えている。
(1)極細繊維束が、水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維を極細化して、単繊維繊度が0.0003〜0.4dtexの繊維から構成されていること、
(2)高分子弾性体を構成する樹脂が、水分散樹脂であること、
(3)パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーが、極細繊維束内部および該表面、並びに高分子弾性体に付着していることを特徴とするスエード調人工皮革である。
また、パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーが、0.05〜5質量%付着していることが好ましく、スエード調人工皮革の吸水率が5〜80%であることが好ましい。
さらに、高分子弾性体を構成する樹脂が、ポリウレタン、アクリルおよびポリウレタン−アクリル複合樹脂の少なくとも1種から構成されてなる水分散樹脂で、かつ顔料を0.1〜10質量%有することが好ましく、顔料を含有する高分子弾性体の残存率が、水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維を極細化後、さらに染色処理した後で95%以上となる高分子弾性体からなることが好ましく、高分子弾性体が、130℃熱水での重量膨潤率が20%以下、脱落率が3%以下であることが好ましく、高分子弾性体が、50℃メチルエチルケトン処理での重量膨潤率が150%以下で、脱落率が5%以下であることが好ましい。
すなわち、本発明者らは、高分子弾性体が水分散樹脂であり、さらに水抽出方式による極細繊維発生型繊維の極細化による環境対応型のスエード調人工皮革の製造方法における課題であった、(1)水分散樹脂が熱水で膨潤しやすくかつ水溶性高分子成分が微量残存する結果、極細繊維が膠着することによって、得られるスエード調人工皮革のスエード感や表面タッチ、風合い、引裂強力に劣る問題。及び、(2)水分散樹脂および微量残存した水溶性高分子成分が高吸水性のために、使用時の湿潤下の擦れ等によって、色移りが起こりやすい問題。更にこれら(1)と(2)の問題が水分散樹脂に顔料を添加した場合に顕著に悪化する問題等について鋭意検討を行った。その結果、0.05〜4重量%のパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーを極細繊維束の内部および該表面並びに高分子弾性体に含有させ、耐水性の高い水分散樹脂を高分子弾性体に用い、更には水溶性高分子成分の残存量を低減することで、これらの問題点を解消でき、天然皮革に類似したスエード感、表面タッチ、緻密感、充実感を有し、耐湿摩擦堅牢性等の耐水性、引裂強力などの力学物性に優れたスエード調人工皮革を工業的に安定して提供できることを見出した。
またけん化度は90〜99.99モル%が好ましく、92〜99.98モル%がより好ましく、94〜99.96モル%がさらに好ましく、95〜99.95モル%が特に好ましい。けん化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって満足な複合溶融紡糸を行うことができない。一方、けん化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することが困難である。更に、PVAの一次構造や高次構造を調節し結晶性や水溶性を制御して、適当な熱水溶解性に調整する。
なお、極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分の質量比率としては、10/90〜60/40の範囲が、極細繊維発生型繊維の断面形成性が良好であり水溶性高分子成分が極細繊維を完全被覆しているために、繊維絡合体内部での均一な浸透性が得られ、水分散樹脂の均一含浸に有利である点、あるいは人工皮革基体とした場合、断面形成性が良好なため発生する極細繊維の絡合状態が均一であり、得られる人工皮革の風合いを損なわない点で好ましい。
また織編物と併用する場合の織編物の糸を構成する繊維は極細化後に0.0003〜1.6dtex、好ましくは0.0003〜1.0dtex、さらには短繊維を構成する極細繊維の繊度と同等レベルの0.0003〜0.4dtexにすることがスエード調人工皮革にしたときの風合および表面立毛外観の均一性の点から特に好ましい。
また、短繊維の場合には平均繊維長が18〜110mmであることが好ましい。繊維長が18mm以上のものでないと効果的な絡合ができず、また110mmを越えた場合では、カード処理などの工程通過性が低下する傾向となる。ただし、その後のスライスやバフィングなどの後加工を経ることにより、最終製品中には切断されてしまい18mm未満になった繊維が一部含まれていることがあるが、これは効果的絡合が達成されてから後に発生した繊維であるので、特別不都合もなく差し支えないものである。なお上記工程通過性の観点から平均繊維長は20〜80mmが好ましい。
そして本発明では、極細繊維発生型繊維として、水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分から構成されたものを用い、水溶性高分子成分を抽出する際に有機溶剤ではなく水溶液を用いることによって、特別な顔料を用いることなく、顔料の抽出での顔料脱落を起こさず、抽出での顔料減量による薄色化や色振れ、更には抽出浴の汚染を防ぐことができる。
また、顔料の添加方法としては、極細繊維を構成するポリマー中における顔料の分散性を良好にするため、極細繊維を構成するポリマーと顔料を押出機などのコンパウンド設備を用いて混練した後ペレット化したマスターバッチ方式を採用することが好ましい。また、極細繊維成分には本発明の目的や効果を損なわない範囲で、銅化合物などの安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはその後の工程で添加しても良い。微粒子の種類は特に限定されず、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの不活性微粒子を添加することができ、これらは単独で使用しても2種類以上併用しても良く、紡糸性、延伸性が向上する場合がある。
または、極細繊維発生型繊維を捲縮付与した後ステープル化し、カード、クロスラッパー、ランダムウエバー等によりウエブを形成し、該ウエブの表層、下層、あるいは中間層に上記繊維を用いた織編物を積層し、ニードルパンチまたは、高圧水流処理等の公知の絡合処理を行うことにより不織布と織編物を構成する繊維同士を絡ませる。そして、ニードルパンチ処理が水溶性高分子成分を溶解し難い点で好ましく用いられる。ニードルパンチ条件としては、織編物構成繊維が不織布表面を貫通してくるようなニードルパンチ条件が用いることが好ましい。補強用織編物構成繊維と短繊維からなる不織布を用いた場合には、絡合を進めるため、織編物構成繊維がある程度表面に露出するようにニードルパンチを行うことが好ましく、また不織布と織編物とを重ね合わせた積層物の両面から行うのが天然皮革用の外観を得る点で好ましい。すなわち、不織布の表面側に補強用織編物構成繊維を露出させるとともに補強用織編物の表面側にも不織布構成繊維を露出させるのが好ましい。短繊維からなる不織布と織編物の比率は0/100〜10/90が好ましく、20/80〜60/40がより好ましい。短繊維からなる不織布と織編物の比率が10/90未満になると、表面に織編物が露出しやすくなって、布帛ライクな表面感のスエードとなり高級感に欠けたものとなりやすい。
具体的なニードルパンチ条件としては、ニードル針のバーブが不織布表面まで貫通するような条件でかつニードルパンチ数が400〜5000パンチ/cm2の条件が好ましく、より好ましくは1000〜2000パンチ/cm2の条件である。
繊維絡合不織布の厚みは、得られる人工皮革の用途等によって任意に選択でき、特に制限されるものではないが、その厚みは0.2〜10mm程度であることが好ましく、0.4〜5mm程度であることがより好ましい。密度は0.20〜0.80g/cm3が好ましく、0.30〜0.70g/cm3が更に好ましい。0.20g/cm3未満であると繊維の立毛感が不足し、さらに機械物性も低下する傾向がある。0.80g/cm3を越えると得られる人工皮革の風合いが硬くなる傾向がある。
本発明の高分子弾性体を構成するポリウレタンに用いられるジイソシアネートとしては用途や必要性能に応じて公知のジイソシアネート成分を選択すれば良く、例えば、芳香環を有しない脂肪族系あるいは脂環族系の有機ジイソシアネートから構成された無黄変型ジイソシアネート(以下、無黄変タイプジイソシアネートと称することもある)、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどや、芳香族系ジイソシアネート、すなわちポリウレタン等のジイソシアネート成分として使用される芳香環を有するジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの公知の芳香族系ジイソシアネートを挙げることができる。芳香族系ジイソシアネートを用いた場合には、得られたスエード調人工皮革において、高分子弾性体の光や熱での黄変に基づく光変色や熱変色、および高分子弾性体の光劣化や熱劣化に起因した顔料や染料の光退色や熱退色が起こりやすくなって、耐光堅牢性や耐熱堅牢性が不良となる場合があったり、染色機内に熱劣化した高分子弾性体が蓄積して色汚染が起こり染色工程性に問題が生じやすい場合があり、注意して使用する必要がある。あるいは、非常に耐光性の優れた特定の顔料や赤外線等の蓄熱の少ない特定の顔料を用いることが必要となって、製造コストの問題が生じるばかりか、限られた顔料で着色することが必要となるためバラエティに富んだ色調を揃えることが困難となる場合がある。なお、高い耐光性や高い耐熱性を必要としない用途でなければ、本発明の効果を妨げない範囲で有機ジイソシアネートとして芳香族系の有機イソシアネートを用いることができる。
また、ポリウレタン系重合体の樹脂骨格中へ水分散樹脂の粒径や各種性能を付与するためにカルボキシル基等のイオン性基を導入しても構わない。その方法は、特に制限されないが、ウレタン樹脂の原料として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸などのカルボキシル基含有ジオールが好ましい例として挙げられる。特に、カルボキシル基含有2官能性化合物のカルボキシル基含有量がポリウレタン系重合体中に5〜30mmol/100gであると染色工程で脱落が少ない傾向がある。
アクリル−ウレタン複合タイプの樹脂は、公知の方法でウレタン樹脂水性分散液の存在下で(メタ)アクリル酸誘導体を主成分とするエチレン性不飽和モノマーを乳化重合する方法などで得られる。また、従来既知のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合と同様にして行うことができる。エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として用いることが好ましい。さらに、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸アリルなどの多官能性エチレン性不飽和モノマーを少量共重合し、樹脂を架橋構造とすることが好ましい。
高分子弾性体に含有する顔料と高分子弾性体の総和の残存率が95%以上とするためには、前述のポリウレタンやアクリルの好適要件を選択することにより可能となる。そして、高分子弾性体は、130℃の熱水中に浸漬した直後の熱水膨潤率が20%以下であり、かつ、130℃の熱水中に浸漬した後の脱落率が2.0%以下であることが好ましい。更には、通常の染色工程と同様に130℃高温染色処理した後、アルカリ洗浄処理および酸中和処理、水洗処理を行った後の脱落率が2.0%以下であることが好ましい。高分子弾性体の熱水膨潤率が20%を越える場合や脱落率が2%を越える場合には、水溶液で極細化処理や柔軟化処理する際や、染料で染色する際に、高分子弾性体が膨潤変形して、顔料や高分子弾性体の脱落が起こったり、高分子弾性体が繊維を把持できず、スエード感や表面タッチが悪化する傾向があるのに加えて、湿潤下での摩擦堅牢性に劣る傾向にある。特に水分散樹脂は、溶剤系の高分子弾性体と比べて130℃での熱水膨潤率が高い傾向があり、130℃での熱水膨潤率や脱落率を低減することが本発明において好ましい。
高分子弾性体と顔料の抽出・染色工程での残存率(%)=100−[(W0−Ws)/W0]×100
ここでいう高分子弾性体の130℃での熱水膨潤率とは、後述するが、水分散樹脂フィルムを120〜150℃で熱処理した後の質量をW0とし、130℃熱水に1時間浸漬した後の、質量をW1としたとき、下記の計算式に従って計算した膨潤率を言う。
高分子弾性体の130℃での熱水膨潤率(%)=[(W1−W0)/W0]×100
また、高分子弾性体の130℃での熱水脱落率とは、後述するが、高分子弾性体キャストフィルムを120〜150℃で熱処理した後の質量をW0とし、130℃熱水に1時間浸漬し乾燥した後の質量をW2としたとき、下記の計算式に従って計算した脱落率を言う。
高分子弾性体の130℃での熱水脱落率(%)=[(W0−W2)/W0]×100
染色処理後の顔料と高分子弾性体の総和の残存率(高温染色での残存率)(%)=100−[(W0−W3)/W0]×100
逆に高温染色での脱落率は、高温染色での脱落率(%)=[(W0−W3)/W0]×100となる。
溶剤処理における膨潤率や脱落率についても、所定の溶剤、温度にて同様の方法で、各溶剤に対する膨潤率や脱落率を測定する。
高分子弾性体に含有されている顔料の平均粒径が0.05μm未満である場合には、顔料自体の光隠蔽性、耐光堅牢性が低下することに起因すると思われるが、スエード調人工皮革の耐光堅牢性が劣る傾向があり、更に、高分子弾性体液中で顔料が凝集しやすくなって顔料を高分子弾性体液中に均一に分散させることが難しくなって、得られるスエード調人工皮革の発色斑や色斑が生じる傾向がある。逆に、高分子弾性体に含有されている顔料の平均粒径が0.6μmを越える場合には、顔料が高分子弾性体を構成するポリマーに埋包されにくくなって、得られる人工皮革用基体の摩擦堅牢性などの堅牢性が劣る傾向が有り、抽出工程や染色工程での顔料と高分子弾性体の脱落も多くなって、顔料を含有する高分子弾性体の残存率を95%以上とすることが難しくなる場合がある。更に高分子弾性体と顔料を配合した際に、顔料が沈降しやすくなって、顔料を含有する高分子弾性体の含浸が不十分になり、スエード調人工皮革の発色斑や色斑が生じる傾向がある。顔料の平均粒径は、0.1〜0.5μmが特に好ましい。なお、スエード調人工皮革の高分子弾性体中に含有する顔料の平均粒径や分散状態については、走査型あるいは透過型の電子顕微鏡等でスエード調人工皮革の断面および表面を観察する方法で確認できる。
また本発明では、高分子弾性体水分散液に感熱ゲル化性化合物や金属塩を添加する等の公知の方法で、繊維絡合体全体に均一に存在できるように高分子弾性体を凝固する方法を加えることがより好ましい。
水分散樹脂を繊維絡合体内部に含浸する方法については、繊維絡合体中に高分子弾性体の水性分散液を均一に含浸させ得る公知の方法を採用すれば良いが、水性分散液中に繊維絡合体を浸漬した後にプレスロールやドクターナイフなどを用いて水分散樹脂の含浸量を適量なものに調整する方法や、定量ポンプ付きのコート塗工方法による方法などが好ましい例として挙げられる。
また、粘度としては高分子弾性体水分散液の含浸性の点から、1〜200cpoiseが好ましく、2〜100cpoiseがより好ましい。
特に抽出除去する場合、環境問題の点および高分子弾性体などに含有する顔料の脱落を低減できる点から熱水等の水系溶媒で抽出除去成分を除去して極細繊維発生型繊維を極細化する方法が必要である。熱水抽出温度としては、残存するPVA量を1質量%以下にする点等の理由で、60〜100℃の温度が好ましく、80〜95℃がより好ましい。
また必要に応じて所望の厚みに加圧加熱処理や分割処理などで厚みあわせを行う。また、極細繊維発生型繊維を極細化する前あるいは後に、少なくとも一面をバフィング処理等の起毛処理を施し、極細繊維を主体とした極細繊維立毛面を形成させてスエード調人工皮革としてもよい。必要により、揉み柔軟化処理、逆シールのブラッシングなどの仕上げ処理を行うことができる。
CH2=CX−COO−Y−Rf (1)
(但し、式中、XはHまたはCH3基、Yは炭素数1以上のアルキレン基、―CH2CH2N(R)SO2−[Rはアルキル基]、または、CH2CH(OZ)CH2[Zは水素またはアセチル基]基を示す。Rfは炭素数3〜21のフルオロアルキル基[但し、アルキル基中に酸素を含んでいても良い]を示す。)で表されるフルオロアルキル基を含有するアクリル酸エステル、またはメタクリル酸エステルから誘導されたフッ素系単量体(a)から重合されたフッ素系化合物である。また、該フッ素系単量体と共重合可能な1種類以上のエチレン性不飽和単量体を共重合した化合物も好ましい例として挙げられる。ここでフッ素系単量体(a)と共重合可能な1種類以上のエチレン性不飽和単量体(b)としては、特に限定されないが、エチレン、塩化ビニル、フッ化ビニル、ハロゲン化ビニルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステル、ポリオキシアルキレン、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルキルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、ビニルアルキルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソシアタートエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、ポリシロキサン含有(メタ)アクリレート、N−ビニルカルバゾールなどが挙げられる。
一方、アクリレート基を含有しないパーフルオロアルキル系ポリマーの場合には、滑り効果が大きすぎ、また、繊維接着性や皮膜形成性が劣るため、本発明の目的を達することが難しい。
また、極細繊維束の内部および該表面並びに高分子弾性体の何れにもパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーが付着していること必要があり、何れかに付着していない場合には、本発明の効果を得ることが難しい。従って、水溶性高分子成分を抽出して極細繊維を発生した後、且つ、高分子弾性体を付与した後にパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーを付与する方法が好ましい例として挙げられる。具体的には、水分散樹脂を付与し、さらに極細繊維発生型繊維を極細化処理した後、あるいは、前述の処理後さらに染色処理した後などに、パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーを処理することが好ましい。また、極細繊維発生型繊維を極細化処理した後、あるいは、染色処理した後などで、基体を乾燥することなく湿潤状態でさらに、パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーの付与処理をしても構わない。なお、極細繊維束の内部および該表面並びに高分子弾性体に付着していれば、パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーの付与方法は、特に限定されない。そして、パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーは基体全体に付着していることが好ましい。付着方法は、特に限定されないが、ディップニップ法、コーティング法等公知の付与方法を用いることが可能であるまた、パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーを処理した後、基体へ固着させる点から、100〜180℃、より好ましくは120〜160℃で熱処理することが好ましい。また、スエード調人工皮革の表(立毛)層から表層側を重点的にグラビア法等の公知の方法にて付与させても構わない。
[水溶性高分子の残存率(%)]
以下の(1)から(3)の式で用いる繊維絡合体は全て同一組成および同一の手法により得られたサンプルを複数用意して測定する。
(1)抽出処理前の繊維絡合体の絶乾質量をAgとし、この繊維絡合体を液流染色機を用い、120℃の熱水浴中で2時間処理することを5回繰り返す。熱水処理後の繊維絡合体の絶乾質量をBgとする。AおよびBを用い、完全抽出した場合の抽出率を以下式で算出する。
完全抽出率X(%)=100×(A−B)/A
(2)(1)で用いたものと同じ別のサンプルの抽出処理前の絶乾質量をCgとし、任意の条件下で抽出処理を行い、抽出処理後の絶乾質量がDgであった場合、抽出率Yは以下の式で表される。
任意の抽出条件下での抽出率Y(%)=100×(C−D)/C
(3)上記の完全抽出率Xと、任意の抽出条件下でのサンプルの抽出率Yを用い、水溶性高分子成分の残存率Cは以下の式で算出する。
水溶性高分子成分の残存率Z(%)=X−Y
なおこの方式で、染色処理後の水溶性高分子成分の残存率の計算も可能である。
付与するパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーには、本発明の特徴を損なわない限り、浸透剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造膜助剤、高分子弾性体、柔軟剤、滑剤、防汚剤、蛍光剤、防黴剤、難燃剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料などを適宜含有していてもよい。
表面に付与する高分子弾性体は、本発明の特徴を損なわない限り、浸透剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造膜助剤、感熱ゲル化剤、柔軟剤、滑剤、防汚剤、蛍光剤、防黴剤、難燃剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料などを適宜含有していてもよい。
JIS L0801に準じて、ウエット状態で測定し級判定にて評価した。
たて10cm×よこ4cmの試験片を切り取り短編の中央によこの辺と直角に5cmの切れ目をいれ、各切片をチャックに挟み引張試験機で10cm/minの速度で引裂く。引裂き最大荷重を求め、あらかじめ求めた試験片の目付で除した値を引裂強力値とする。そして、試験片3個の平均値で表す。
大塚化学株式会社製「ELS−800」を使用して動的光散乱法により測定し、キュムラント法(東京化学同人社発行「コロイド化学第IV巻コロイド化学実験法に記載」により解析して、水分散顔料の平均粒子径を測定した。
酸化オスミニウム染色処理したスエード調人工皮革の断面を、走査型電子顕微鏡「S−2100日立走査型電子顕微鏡」(倍率2000〜1万倍)で10ケ所以上観察し、高分子弾性体中の顔料の平均粒径と分布状態を測定した。
高分子弾性体に含有する顔料の顔料残存率は、スエード調人工皮革を製造する場合と同様の高分子弾性体と顔料の質量比率で混合した顔料含有高分子弾性体水分散液を用いて、厚み50±5μmの1辺10cmの正方形のキャストフィルムを作成し、120〜150℃熱処理した後、質量(W0)を測定した。その後、スエード調人工皮革を製造する場合と同様に90℃熱水抽出処理および染色工程と同等の処理、すなわち、130℃高温染色処理を行い、引き続き、水酸化ナトリウム6g/l、テックライト(東海電化工業株式会社製)6g/lにて70℃×50分間アルカリ還元洗浄処理し、更に酢酸1g/lで60℃×10分間中和処理した後、水洗し、その後120〜150℃で乾燥した。2時間放置した後の質量(Ws)を測定し、下記の計算式に従い顔料と高分子弾性体の脱落率を計算した。
高分子弾性体と顔料の抽出・染色工程での残存率(%)=100−[(W0−Ws)/W0]×100
厚み50±5μmの1辺10cmの正方形の高分子弾性体キャストフィルムを120〜150℃で熱処理した後、質量(W0)を測定した。その後、130℃熱水に1時間浸漬した後、サンプルを取り出し、すぐに質量(W1)を測定し、下記の計算式に従い膨潤率を計算した。
高分子弾性体の130℃熱水膨潤率(%)=[(W1−W0)/W0]×100
脱落率に関しては、乾燥後の質量(W2)を測定し下記の計算式に従い脱落率を計算した。
高分子弾性体の130℃熱水脱落率(%)=[(W0−W2)/W0]×100
厚み50±5μmの1辺10cmの正方形の高分子弾性体キャストフィルムを120〜150℃で熱処理した後、質量(W0)を測定した。その後、50℃メチルエチルケトンに5時間浸漬した後、サンプルを取り出し、すぐに質量(Wm)を測定し、下記の計算式に従い膨潤率を計算した。
高分子弾性体の50℃メチルエチルケトン膨潤率(%)=[(Wm−W0)/W0]×100
脱落率に関しては、乾燥後の質量(Wn)を測定し下記の計算式に従い脱落率を計算した。
高分子弾性体の50℃メチルエチルケトン脱落率(%)=[(W0−Wn)/W0]×100
厚み50±5μmの1辺10cmの正方形の高分子弾性体(顔料含む)キャストフィルムを120〜150℃で熱処理した後、質量(W0)を測定した。その後、130℃で60分高温染色した後、引き続き、水酸化ナトリウム6g/L、テックライト(東海電化工業株式会社製)6g/Lにて70℃×50分間アルカリ還元洗浄処理し、更に酢酸1g/Lで60℃×10分間中和処理した後、水洗した。その後120〜150℃で乾燥し2時間放置した後の質量(W3)を測定し、下記の計算式に従い残存率を計算した。なお、染料濃度はフィルムに対して2質量%以下で行った。
高温染色での残存率(%)=100−[(W0−W3)/W0]×100
高温染色での脱落率(%)=[(W0−W3)/W0]×100
スエード調人工皮革をHFIP(ヘキサフルオロイソプロピルアルコール)に浸漬し、繊維構成成分や高分子弾性体成分などを溶解させた後、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)装置で、スエード調人工皮革中に占めるPVA量を質量比率で定量した。仮に、高分子弾性体がHFIPに溶解しない場合には、HFIPに溶解した高分子弾性体を除く成分中のPVA量の質量比率を測定し、別に、HFIPに溶解しない高分子弾性体成分の質量を測定してスエード調人工皮革中に占める高分子弾性体成分の質量比率を測定することで、スエード調人工皮革中に占めるPVA量を求めることができる。
DSC(TA3000、メトラー社)を使用し、試料10mg、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合に示す吸熱ピークを測定して求めた。
縦15cm、横15cmの試験片を準備し、水浸漬前の重量(W0)を測定する。23℃水中に試験片を24時間浸漬した後、表面に余分に付着した水滴を濾紙で軽くふき取った後、浸漬後の重量(W1)を測定し、下記の計算式に従い吸水率を計算した。
吸水率(%)=[(W1−W0)/W0]×100
実施例1のパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーを日華化学社製NDN−390Eに変更し、5.0質量%液で人工皮革用基体を処理して2.3質量%付着させた以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られた発色性に優れ、引裂強力1.2kg/100g、湿摩擦堅牢性4級と優れ、かつスエード感、ドレープ性などの風合いに優れたものであった。水中に浸漬した時の吸水率は11%で、残存ポリビニルアルコール共重合体率は、0.1質量%あった。
実施例1の短繊維のカーボンブラック添加量を0.4質量%、単糸繊度を3dtex、海/島=40/60とし、山陽色素製水分散顔料(平均粒径0.25μのカーボンブラック/平均粒径0.2μの有機系青顔料/平均粒径0.2μの有機系赤顔料=1/15/10;固形分比率)、分散染料としてSumikaron UL染料(住友化学製)のYellow 3RF 0.5owf%、Red GF 1.0owf%、Blue GF 3.5owf%、アンチフェードMC−500(明成化学製)、1owf%、ディスパーTL(明成化学製)1g/Lを用い130℃高圧染色を行い、その他は実施例1と同様の操作を行った。その結果、得られたネイビーブルー調の人工皮革は短繊維繊度0.031dtexであり、密度が0.62g/cm3で、発色性に優れ、引裂強力1.3kg/100g、湿摩擦堅牢性4級と優れ、かつスエード感、ドレープ性などの風合いに優れたものであった。水中に浸漬した時の吸水率は17%で、残存ポリビニルアルコール共重合体率は、0.1質量%あった。
実施例1で行ったパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーの20質量%溶液を染色後に含浸処理し8質量%付着した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたスエード調人工皮革は、引裂強力1.0kg/100g、湿摩擦堅牢性4−5級と良好であったが、若干風合いが堅いものであったが実用上全く問題は無かった。また、得られたスエード調人工皮革は静電気が発生し易く埃などの汚れが付着しやすかった。水中に浸漬した時の吸水率は4%であった。
実施例1で行ったパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーの処理を行わない以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたスエード調人工皮革は、ざらざらとした表面タッチでスエード感にやや劣り、引裂強力0.9kg/100g、湿摩擦堅牢性2−3級と劣ったものであった。水中に浸漬した時の吸水率は120%であった。
実施例1で行ったパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーの処理を水分散樹脂含浸前に行った以外は、実施例1と同様の操作を行った。パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーは、極細繊維束間に付着しているものの、極細繊維束内部や高分子弾性体には付着していなかった。得られたスエード調人工皮革は、ざらざらとした表面タッチでラフな表面感であって、引裂強力0.9kg/100g、湿摩擦堅牢性3級と劣ったものであった。水中に浸漬した時の吸水率は110%であった。
実施例1で行ったパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーを、液状のジメチルシロキサン系ポリマー[信越化学製POLON−MNS]に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたスエード調人工皮革は、ラフな表面感で毛抜けが起こり、また、引裂強力1.1kg/100g、湿摩擦堅牢性3級、水中に浸漬した時の吸水率は20%であった。
実施例1で行ったパーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーを、テフロン(登録商標)系フッ素ポリマー[デュポン社製テフロン(登録商標)レザープロテクター]に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られたスエード調人工皮革は、ラフな表面感で毛抜けが起こり、また、引裂強力1.2kg/100g、湿摩擦堅牢性3級、水中に浸漬した時の吸水率は6%であった。
Claims (7)
- 極細繊維束からなる繊維絡合体および高分子弾性体から構成され、以下
(1)極細繊維束が、水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維を極細化して、単繊維繊度が0.0003〜0.4dtexの繊維から構成されていること、
(2)高分子弾性体を構成する樹脂が、水分散樹脂であること、
(3)パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーが、極細繊維束内部および該表面、並びに高分子弾性体に付着していること
を特徴とするスエード調人工皮革。 - パーフルオロアルキルアクリレート系ポリマーが、0.05〜5質量%付着している請求項1に記載のスエード調人工皮革。
- 吸水率が5〜80%である請求項1または2に記載のスエード調人工皮革。
- 高分子弾性体を構成する樹脂が、ポリウレタン、アクリルおよびポリウレタン−アクリル複合樹脂の少なくとも1種から構成されてなる水分散樹脂で、かつ顔料を0.1〜10質量%有する請求項1〜3いずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
- 顔料を含有する高分子弾性体の残存率が、水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維を極細化後、さらに染色処理した後で95%以上となる請求項4に記載のスエード調人工皮革。
- 高分子弾性体が、130℃熱水での重量膨潤率が20%以下、脱落率が3%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
- 高分子弾性体が、50℃メチルエチルケトン処理での重量膨潤率が150%以下で、脱落率が5%以下である請求項1〜6いずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
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