JP2008280643A - スエード調人工皮革およびその製造方法 - Google Patents

スエード調人工皮革およびその製造方法 Download PDF

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康弘 吉田
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Abstract

【課題】風合いを硬化させることなく極細繊維の把持性に優れ、外観、風合いを損なうこと無く耐スナッギング性に優れ、均一な立毛外観が得られるスエード調人工皮革を提供すること。
【解決手段】極細繊維束から構成された繊維絡合体の内部に高分子弾性体を含有してなり、表面に極細繊維の立毛を有し、以下(1)〜(4)を満足することを特徴とするスエード調人工皮革。
(1)立毛を構成する繊維の平均単繊維繊度が0.0001〜0.5デシテックスであること
(2)立毛を構成する繊維がスエード調人工皮革の表面の70〜100%を占めていること
(3)平均立毛繊維長が200〜1000μmであること
(4)高分子弾性体の一部が繊維絡合体を構成する極細繊維束の外周部から極細繊維束の内部に面積比で1〜30%の範囲で浸透して存在していること
【選択図】 なし

Description

本発明は、繊維把持性を保ち表面品位を低下させることなく、耐スナッギング性に優れた風合いの良好なスエード調人工皮革およびその製造方法に関する。
従来から、不織布、織編物などの繊維絡合体およびこれらの各種加工品などのシート状物にポリウレタン等で代表される高分子弾性体溶液や分散液を含浸し、皮革様の風合いの付与、さらには機能性の優れたシート状物を作製することは良く知られており、工業的にも広く活用されている。
例えば、海島構造の極細繊維発生型繊維よりなる繊維基材にポリウレタンを含浸し、該ポリウレタンを凝固せしめた後、極細繊維発生型繊維の海成分を抽出除去することにより、柔軟な皮革様シートが得られる技術や、混合紡糸繊維の海成分ポリマーの溶剤による抽出性が良好で、抽出後の極細繊維間の膠着がなく、開繊性のよい極細繊維の製造方法に関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、上記技術では、高分子弾性体が極細繊維束との間に空隙を保有した状態で繊維束周囲へ存在しているため風合いは柔らかいものの、高分子弾性体が繊維へ直接接着し難いため繊維の把持性が低下し、表面物性に劣る傾向にあった。用途によってはより過酷な環境下で使用されるため、耐摩耗性のみならず、なんらかの引っかかりによって繊維が引き出されるスナッギング性を抑制するなど、これまで以上に表面物性の優れたものが望まれており、これまで様々な検討がなされている。
例えば、表面を構成する繊維に撚りが付与されている場合、耐スナッギング性が向上することから繊度に応じた適正な撚り条件を検討したもの(例えば、特許文献2参照)、あるいは摩耗防融性改善のために樹脂を付与し、その際の樹脂の付着状態をコントロールすることで繊維間の滑り具合いを調整し、滑りによって発生するピリングを抑えたもの(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。しかしこれらの改良はいずれも織編物に対するものであって、人工皮革には適用が困難であり、仮に適用できたとしても風合いと耐スナッギング性を兼ね備え、かつ幅広い用途への使用に耐えうるものを得ることは困難であった。
一方、近年では有機溶剤の使用に対して、人体や環境への悪影響の懸念から、人工皮革の製造においても無溶剤系での製造プロセスの確立が要望されており、例えば、繊維絡合体に用いる極細繊維発生型繊維としては水溶液で抽出成分を抽出除去して極細繊維とするタイプが、また繊維絡合体の内部に含浸する樹脂としては高分子弾性体水分散液が検討されている。しかし一般に高分子弾性体水分散液を用いて繊維を把持する場合、溶剤系高分子弾性体を用いて繊維を把持する場合に比較して連続層を形成しにくく、繊維把持性に劣ることから耐スナッギング性も大きく劣るものであった。この点を改善するために高分子弾性体水分散液の付与量を増加させると、得られる人工皮革が硬く風合いに劣ったものとなってしまうため、一度繊維絡合体へ高分子弾性体を付与し、繊維を極細化した後、再度高分子弾性体水分散液を繊維絡合体の内部に含浸付与し、再度含浸付与した高分子弾性体で極細繊維を直接把持する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながらこの方法では、過度に繊維を把持してしまうことで繊維把持性が向上し、それに伴い耐スナッギング性の向上も期待できるが、スエード調人工皮革の極細繊維状不織布の外観や風合いを損ないやすいものであった。
以上、高分子弾性体水分散液を用いて得られる人工皮革において、適度な繊維把持性を有し、また外観と風合いを十分に満足し、かつ耐スナッギング性などの表面物性を兼ね備えたものは未だ得られていない。
特公昭41−9315号公報(1−3頁) 特開2002−30548号公報(1−3頁) 特開平9−119074号公報(1−3頁) 特開2003−306878号公報(1−4頁)
本発明は、高分子弾性体水分散液を用いて得られるスエード調人工皮革において、柔軟な風合いと耐スナッギング性と耐摩耗性を十分に満足するスエード調人工皮革を提供することを課題とする。そして本発明は、繊維絡合体の内部へ高分子弾性体が含有してなるスエード調人工皮革の繊維絡合体内部において、高分子弾性体の極細繊維束内部で存在状態、表面の繊維の存在状態および平均立毛繊維長を調整することで、表面物性を保ち表面品位を低下させることなく、風合いの良好なスエード調人工皮革の製造方法を提供するものである。
すなわち、本発明は、極細繊維束から構成された繊維絡合体の内部に高分子弾性体を含有してなり、表面に極細繊維の立毛を有し、以下(1)〜(4)を満足することを特徴とするスエード調人工皮革である。
(1)立毛を構成する繊維の平均単繊維繊度が0.0001〜0.5デシテックスであること
(2)立毛を構成する繊維がスエード調人工皮革の表面の70〜100%を占めていること
(3)平均立毛繊維長が200〜1000μmであること
(4)高分子弾性体の一部が繊維絡合体を構成する極細繊維束の外周部から極細繊維束の内部に面積比で1〜30%の範囲で浸透して存在していること
そして、高分子弾性体と繊維絡合体の割合が質量比で5/95〜60/40であることが好ましい。
さらに、極細繊維束から構成された繊維絡合体と撚数10〜650T/mの糸から構成された織物が積層・絡合一体化されていることが好ましい。
また、本発明は、以下、(1)〜(4)の工程を順次行うことを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法である。
(1)水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維から構成された繊維絡合体の内部に高分子弾性体水分散液を付与する工程
(2)赤外線を照射し、繊維絡合体の表面温度を高分子弾性体水分散液のゲル化温度より10℃以上高い温度まで昇温した状態で繊維絡合体の水分率を50質量%以下とした後、残りの水分を乾燥除去して高分子弾性体水分散液を繊維絡合体の内部に固着する工程
(3)極細繊維発生型繊維から水溶性高分子成分を抽出除去し、極細繊維化する工程
(4)表面を不連続に被覆している高分子弾性体を脱落させ平滑化した後に立毛を構成する繊維が表面の70〜100%を占めるまで起毛処理し極細繊維立毛を形成する工程
本発明のスエード調人工皮革は風合いを硬化させることなく極細繊維の把持性に優れ、外観、風合いを損なうこと無く耐スナッギング性に優れ、均一な立毛外観が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の繊維絡合体を構成する極細繊維束は人工皮革の用途によって任意に選択でき特に制限されるものではないが、極細繊維発生型繊維から形成される極細繊維束が好ましく、また風合やスエード調人工皮革としたときの表面外観を向上させる点、及びスナッギング性測定時に繊維が切断されやすく表面側へ引き出されにくい点から0.0001〜0.5デシテックスの単繊維繊度を有することが必要であり、0.001〜0.45デシテックスがより好ましく、発色性や高分子弾性体の把持性の点で0.002〜0.3デシテックスが特に好ましい。また、極細繊維束を構成する極細繊維の本数は10〜100本/束が立毛外観の点で好ましく、30〜80本/束がより好ましい。
また、極細繊維発生型繊維は、溶剤を用いず極細繊維を発生させることが可能であり環境に配慮する点、また高分子弾性体水分散液を付与することと併用することによって本発明の高分子弾性体の極細繊維束への浸透効果が得られる点から水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分から構成されることが重要である。本発明において、「水溶性」とは、60℃の水100gに10g以上溶解することを意味し、「水難溶性」とは、60℃の水100gに0.1gまでしか溶解しないことを意味する。
そして、極細繊維発生型繊維の紡糸方法に関しては、少なくとも1種の水溶性高分子成分、および少なくとも1種の極細繊維となる水難溶性高分子成分から形成されている限り、海島型複合紡糸繊維、海島型混合紡糸繊維などで代表される海島型繊維や、花弁型や積層型繊維等の多成分系複合繊維のいずれを使用してもよい。即ち、極細繊維発生型繊維で、抽出除去される成分としては、水溶性高分子成分から構成され、かつ紡糸可能な成分であることが重要である。例えば、水溶性高分子成分としては、水または水溶液(以下、水系溶剤と称することもある。)で抽出処理できる高分子であれば、公知の高分子が使用できるが、水系溶剤で溶解可能なポリビニルアルコール共重合体類(以下、PVAと略することもある。)を用いることが好ましい。PVAは容易に熱水で溶解除去が可能であり、抽出処理する際に極細繊維成分や高分子弾性体成分の分解反応が実質的に起こらないため極細繊維成分に用いる熱可塑性樹脂および高分子弾性体成分の限定が無い点、更には環境に配慮した点等から好適に用いられる。
上記PVAはホモポリマーであっても共重合単位を導入した変性ポリビニルアルコールであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性および抽出処理時の収縮特性などの観点から、共重合単位を導入したPVAであることが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数4以下のα―オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類がより好ましい。また炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に1〜20モル%存在していることが好ましい。さらに、α−オレフィンがエチレンである場合において、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が4〜15モル%変成されたPVAを使用することがより好ましい。
またけん化度は90〜99.99モル%が好ましく、92〜99.98モル%がより好ましく、94〜99.96モル%がさらに好ましく、95〜99.95モル%が特に好ましい。けん化度が90モル%以上であると、熱安定性が良く、熱分解やゲル化することなく複合溶融紡糸を行うことができる。けん化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することが困難である。
本発明の水難溶性高分子成分としては極細繊維となりうる公知の成分、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系およびポリオレフィン系等の成分であれば特に限定するものではない。なかでもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレートあるいはイソフタル酸を共重合したポリブチレンテレフタレートなどで代表されるポリエステル系樹脂、あるいはナイロン6、ナイロン11、ナイロン12などで代表されるポリアミド系樹脂が好ましい。そして、PVAを高温で紡糸すると紡糸性の悪化を招きやすいことから、水難溶性高分子成分としては、水溶性高分子成分の融点から60℃上までの間の融点を有するものを選択することが極細繊維発生型繊維の紡糸安定性の点で好ましい。なお水溶性高分子成分の融点としては、紡糸性などの点から160〜230℃が好ましい。
また、極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分の質量比率としては、5/95〜60/40の範囲が、極細繊維発生型繊維の断面における水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分の分散安定性が良好であることから、発生する極細繊維および極細繊維束が均一となり、風合いに優れる点、スエード調人工皮革とした際に、均一な立毛感が得られる点で好ましい。
本発明の極細繊維束を構成する繊維は、顔料を添加していても良い。
また、顔料の添加方法としては、極細繊維を構成するポリマー中における顔料の分散性を良好にするため、極細繊維を構成するポリマーと顔料を押出機などのコンパウンド設備を用いて混練した後ペレット化したマスターバッチ方式を採用することが好ましい。また、極細繊維成分には本発明の目的や効果を損なわない範囲で、銅化合物などの安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはその後の工程で添加しても良い。微粒子の種類は特に限定されず、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの不活性微粒子を添加することができ、これらは単独で使用しても2種類以上併用しても良く、紡糸性、延伸性が向上する場合がある。
上記極細繊維発生型繊維は、通常、1.5〜4倍に延伸される。延伸は、紡糸ノズルから吐出した後、捲き取りその後行ってもよいし、捲き取る前に行ってもよい。延伸は
50〜110℃の加熱下で行うのが好ましく、熱風、熱板、熱ローラー、水浴などのいずれを用いて行ってもよい。水溶性高分子成分の水分含量の変化が少ない熱風で延伸することが好ましい。
極細繊維発生型繊維は、スパンボンド法等により長繊維ウェブ、または、ステープル化した後短繊維ウェブにする。例えば、極細繊維発生型繊維を捲縮した後ステープル化し、カード、クロスラッパー、ランダムウエバー等によりウェブにする。長繊維ウェブまたは短繊維ウェブはニードルパンチにより繊維絡合体にする。必要に応じて、ウェブの表層、下層、あるいは中間層に織編物を積層した後、ニードルパンチしてもよい。ニードルパンチは、ニードルのバーブがウェブ表面まで貫通するような条件で、かつ、好ましくは400〜5000パンチ/cm、より好ましくは1000〜2000パンチ/cmのニードルパンチ密度で行う。
また織編物を挿入する場合、用いる織編物は極細繊維発生型繊維と一体構造を形成させるため、撚数10〜650T/mが好ましく、15〜500T/mがより好ましい。
10T/m以上であると、織編物の単糸がばらけることなく極細繊維発生型繊維と絡合するので、損傷した糸が繊維絡合体表面に大きく露出することによる外観悪化を防ぐことができる。撚数が650T/m以下であると、極細繊維発生型繊維と強固に絡合し、ウェブと織編物が一体となった柔軟性に優れた人工皮革の構造が得られる。織編物の目付けは、目的に応じて適宜選択されるが、20〜200g/mであることが好ましく、30〜150g/mがより好ましい。目付けが20g/m以上であると、織編物の形態保持性が良好であり、目ずれなどが生じ難い。目付けが200g/m以下であると、織編物を構成する糸の間隔が適度であり、極細繊維発生型繊維が充分に織編物を貫通し、ウェブと織編物が高度に絡合化し、不離一体化したウェブ/織編物構造物が得られる。また、風合いのバランスに優れる。織物の好ましい織密度は20〜200本/mが極細繊維発生型繊維との絡合性または風合いの点で好ましく、50〜150本/mがより好ましい。また、織編物の種類としては、経編、トリコット編で代表される緯編、レース編およびそれらの編み方を基本とした各種の編物、あるいは平織、綾織、朱子織およびそれらの織り方を基本とした各種の織物など特に限定されるものではない。組織、密度などいずれを選ぶかは目的により適宜決定すればよい。
なお、得られた繊維絡合体へ高分子弾性体溶水分散液を含浸した後の乾燥において、温度上昇時に大きく収縮を生じる場合がある。この場合、繊維絡合体内部の空間減少を引き起し、内部の高分子弾性体が表層へ押出されてしまい、高分子弾性体の均一な分布を損ねてしまう恐れがあるため、ニードルパンチ後の繊維絡合体を熱収縮することが好ましい。また熱収縮処理は、繊維絡合体中の繊維密度を増加させ、緻密な立毛外観や風合いの良好なものを得るためにも好ましい処理であり、さらに熱収縮後は必要に応じ人工皮革表面の平滑性を向上するため熱プレスを行ってもよい。
得られた繊維絡合体の目付は得られるスエード調人工皮革の用途によって任意に選択でき特に制限されるものではないが、300〜1500g/mであることが好ましい。また見掛け密度は0.20〜0.80g/cmが好ましく、0.25〜0.70g/cmがより好ましい。
0.20g/cm以上であると、スエード調人工皮革の立毛感や機械物性が良好であり、0.80g/cm以下であると、風合いが硬くなるのを避けることができる。繊維絡合体の厚みは、該目付範囲および密度範囲を満たしていれば特に限定されない。
本発明において、繊維絡合体の内部に含有する高分子弾性体は人工皮革に用いられる公知の樹脂を用いることが可能である。例えば、少なくとも1種類の平均分子量500〜3000のポリマーポリオール、少なくとも1種のポリイソシアネートおよび2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種の低分子化合物を含む組成物を1段階、あるいは多段階で反応させて得た各種のポリウレタンが挙げられる。ポリマーポリオールはポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリカーボネートジオールなどから選ばれる。ポリイソシアネートは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの、芳香族系、脂環族系、脂肪族系のジイソシアネートなどから選ばれる。2個以上の活性水素原子を有する低分子化合物はエチレングリコール、エチレンジアミン等から選ばれる。異なる種類のポリウレタンの混合物を含有させてもよく、異なる種類のポリウレタンを複数回に分けて含有させてもよい。また、ポリウレタン以外にも、合成ゴム、ポリエステルエラストマー、アクリル系樹脂などの高分子弾性体を必要に応じて添加した高分子弾性体組成物を含有させてもよい。
本発明では、極細発生型繊維の一成分として前記PVAなどの水溶性高分子成分を用いるので、高分子弾性体水分散液を含浸させることが必要である。水分散液を用いると、繊維絡合体内部に含浸後、高分子弾性体をゲル化凝固し乾燥する際に、極細繊維発生型繊維を構成する水溶性高分子成分が水分散液中の水に一定量溶解し、極細繊維発生型繊維の外周からその内部に高分子弾性体が浸透する。これにより、後の工程で極細繊維発生型繊維を極細化すると、高分子弾性体の一部が極細繊維束内部に特定の範囲で固着存在する構造が得られる。
繊維絡合体の内部に高分子弾性体水分散液を含浸する場合、ディップニップ方式などの公知の技術を用いることができるが、ニップ処理による圧力のため複合繊維中の水溶性高分子成分が搾り出され、高分子弾性体水分散液が汚染される場合がある。このため、本発明においては、ディップニップ方式ではなく、水溶性高分子成分に対する高分子弾性体水分散液の浸透性を利用し、大きな加圧を必要とすることなく、高分子弾性体水分散液の供給量および濃度を制御するだけで所定量の含浸可能である方法、例えば、リップコーター等で含浸する方法を用いることが好ましい。
固着後に高分子弾性体が繊維絡合体の内部に実質的に非連続に存在することが、高分子弾性体による繊維の把持性と柔軟な風合を兼ね備える点で好ましいので、高分子弾性体水分散液は、高分子弾性体:繊維絡合体=5:95〜60:40の質量比となるように付与することが好ましい。人工皮革において、高分子弾性体は繊維を結束するバインダーとして作用する。高分子弾性体の比率が上記範囲内であると、バインダー効果を充分発揮することができ、また、引裂強力および引張強力などの物性が良好であり、風合いも柔軟となる。水分散液中の高分子弾性体濃度は5〜40質量%が好ましい。
本発明では、繊維絡合体へ高分子弾性体水分散液を含浸した後、マイグレーションを抑制し、実質的に高分子弾性体の一部が極細繊維束の外周部から束の内部に面積比で1〜30%の範囲で浸透して存在している構造を最終的に得る必要がある。この構造により、風合いを保持しつつ高分子弾性体による繊維把持性が改善され、スエード調人工皮革にした際にスナッキング性や表面物性の向上につながる。この構造を得るためには、水分が完全に蒸発する前に、極細発生型繊維の水溶性高分子成分の一部を水に溶解させつつ高分子弾性体水分散液を急激にゲル化させることが必要である。そこで本発明では、内部に高分子弾性体水分散液が付与された繊維絡合体を急激に加熱昇温し、同時に水溶性高分子成分を一部溶解するために、赤外線の照射処理を行う。繊維絡合体の表面と内部の昇温に有利である点、水の赤外線吸収波長が2.6μmであり高分子弾性体水分散液の昇温に非常に有利である点、および、高分子弾性体水分散液を付与した繊維絡合体の赤外線の吸収と透過のバランスが良い点で、最大エネルギー波長が2〜6μmの赤外線を用いることが好ましい。本発明のスエード調人工皮革を製造するには、赤外線を照射し、繊維絡合体の表面温度を高分子弾性体水分散液のゲル化温度より10℃以上高い温度まで昇温し繊維絡合体の水分率を50質量%以下とした後、残りの水分を乾燥除去して高分子弾性体水分散液を繊維絡合体の内部に固着する必要がある。そして、残りの水分を130〜160℃で乾燥除去して高分子弾性体を固着することが好ましい。
繊維絡合体の表面は、1分以内に高分子弾性体水分散液のゲル化温度より10℃以上高い温度、好ましくはゲル化温度+10℃〜ゲル化温度+50℃まで昇温させることが好ましい。繊維絡合体の表面温度が上記範囲内であれば、繊維絡合体内部の温度は高分子弾性体水分散液のゲル化温度以上に到達しており高分子弾性体の感熱ゲル化を促進する。繊維絡合体の表面温度を前記範囲内に昇温する時間を1分以内に抑えることが、高分子弾性体水分散液がマイグレーションを引き起す前に容易に感熱ゲル化しやすい点で好ましい。赤外線照射による昇温中に、高分子弾性体水分散液の水分により水溶性高分子成分が一部溶解し、水難溶性高分子成分が適度に露出する。そのため、高分子弾性体が水難溶性高分子成分に直接接触でき、極細化処理して得られる人工皮革の実質的に全体に渡り高分子弾性体の一部が極細繊維束の外周部から束の内部に面積比で1〜30%の範囲で浸透した構造が得られやすく好ましい。
赤外線照射によって繊維絡合体の表面温度を昇温した後、該表面温度を0.3〜1.5分間上記範囲内に保ち、この間に該繊維絡合体の水分率を50質量%以下にする。50質量%を越えたままであると、後の加熱乾燥時に水溶性高分子成分が必要以上に溶解し、高分子弾性体が直接水難溶性高分子成分に接触する割合が高くなり、また、マイグレーションを生じやすくなる。その結果、面積比で高分子弾性体が繊維束の30%を越えて浸透した構造が得られ、人工皮革の風合いが硬くなる。水分率の下限は特に限定しないが、乾燥効率の点で10%以上とすることが好ましい。繊維絡合体の両表面が均等に加熱されるので、両面から同一条件で赤外線照射することが好ましい。また、水分を両面から均一に揮発させるため、縦型装置によって赤外線を繊維絡合体の両面から照射することが好ましい。
上記水分率は、下記式によって求めることができる。
水分率(%)=(I−J)/J×100
I:高分子弾性体水分散液を含浸し、赤外線照射した後の繊維絡合体の目付(g/m
J:高分子弾性体水分散液を含浸し、凝固乾燥した後の繊維絡合体の目付(g/m
赤外線照射処理後、繊維絡合体中に残った水分を蒸発させるために、また固着させた高分子弾性体をより強固に固着させるために110〜170℃で1〜10分間加熱乾燥処理を行う。加熱乾燥処理を行わない場合、水溶性高分子成分を抽出除去する極細繊維化処理や染色処理時の熱水により高分子弾性体が膨潤、脱落し、表層の繊維が高分子弾性体で充分に把持されず、得られるスエード調人工皮革の外観品位が劣ったものとなってしまう。加熱乾燥処理方法は、熱風乾燥、湿熱乾燥など公知の方法でよい。
次に、水難溶性高分子成分および高分子弾性体の非溶剤であり、且つ、水溶性高分子成分(抽出除去成分)の溶剤である処理液、即ち水または酸性またはアルカリ性水溶液で代表される水溶液で水溶性高分子成分を抽出除去する。この操作により、極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変換し、人工皮革を得る。特に、環境負荷が少ないので熱水抽出が好ましい。熱水の温度は60〜100℃が好ましく、80〜95℃がより好ましい。60℃以上であると抽出時間を短縮することができる。したがって、熱水温度は高いほど好ましい。また、100℃以下とすることで、付与した高分子弾性体と極細繊維の固着状態がゆるみ難く、高分子弾性体の繊維把持性が維持される。
得られた人工皮革中の極細繊維束内部には高分子弾性体の一部が浸透して存在している。極細繊維束の長さ方向に垂直な任意の断面において、浸透した高分子弾性体の量は、面積比で1〜30%の範囲である。このような構造により、風合いが柔らかく、極細繊維が高分子弾性体により良好に把持され毛羽抜けなどによる品質低下がないスエード調人工皮革などの人工皮革を得ることができる。前記面積比は、1.5〜25%であることが極細繊維束が高分子弾性体によりしっかりと把持され、表面の極細繊維の素抜けがなく、表面の極細繊維がフィブリル化した良好な外観を有するスエード調人工皮革が得られる点で好ましく、2〜20%であることがより好ましい。そして、極細繊維束の中心部(中心〜表面の長さの中心から80%以内)には高分子弾性体が存在しないことが特に好ましい。風合いと毛羽抜け性を共に兼ね備える点で好ましい。
該面積比が1%未満の場合、極細繊維束に浸透し極細繊維に直接接触する高分子弾性体の量が少ないため、得られる人工皮革の風合いは柔らかく保てるものの、充実感(腰)が低下する傾向がある。さらに、高分子弾性体により把持される極細繊維の量が少ないので、得られるスエード調人工皮革において素抜けが生じやすく、外観品位が悪くなる。また30%を越える場合、素抜けを防止し、外観品位を向上させることができるが、極細繊維に直接接触する高分子弾性体の量が多すぎるため、風合いが硬くなる。高分子弾性体は極細繊維束の長さ方向に連続ではなく非連続に浸透していることが、風合を良好に保つ点で好ましい。極細繊維束の長さ方向に垂直な任意の断面においては、非連続な状態でも一部連続した状態で浸透しても良い。
上記面積比、即ち、高分子弾性体が極細繊維束に浸透した割合A(%)は下記式:
A=B/C×100
B:極細繊維束の長さ方向に垂直な任意の断面に存在している高分子弾性体の面積
C:極細繊維束の長さ方向に垂直な任意の断面の面積
により計算される。
面積BおよびCは、極細繊維束の長さ方向に垂直な任意断面の電子顕微鏡写真から求めた。前記断面は、極細繊維束の外周を構成する複数の極細繊維の中心を順次結んで得られる領域と定義する。
高分子弾性体は、極細繊維束の外周から内部方向に平均で0.2〜7μmの範囲に非連続に浸透していることが好ましい。このような繊維構造であると、毛羽落ちがなく、均等な毛羽長を有するスエード調人工皮革を得ることができる。非連続状とは有機溶剤系の高分子弾性体を付与したときのように連続的ではなく、水分散系の高分子弾性体に特徴的なドット状に付与されている状態をいう。
本発明では、必要に応じて加圧加熱処理や分割処理などで所望の厚みとする。また、繊維絡合体の少なくとも一面をバフィング処理等の起毛処理を施し、極細繊維を主体とした極細繊維立毛面を形成させてスエード調人工皮革とする。厚み調整を行う場合、極細繊維発生型繊維を極細化する前あるいは後にバフィング処理すればよい。その際、表層に高分子弾性体が残ると、製品表面に色斑や毛羽長の斑など外観を悪化させることから、表面を非連続に被覆している高分子弾性体を脱落させるまで、バフィングする。そして高分子弾性体が脱落し、表面が平滑化するまでバフィング処理を行う。バフィング処理は、人工皮革のバフ処理前の表面側から厚さ方向に0.1〜0.2mm程度研削することが、安定して高分子弾性体を脱落させ平滑化しやすい点で好ましい。また、得られるスエード調人工皮革は高分子弾性体の水分散液を付与することに由来して、高分子弾性体が繊維絡合体内部および表面に非連続状に存在している。そして、繊維絡合体の表面に高分子弾性体の非連続状の凹凸がそのまま大きい状態でその後の起毛処理を行うと、場所により起毛状態の差が大きく異なり、均一な立毛状態が得られず外観を悪化させてしまう。従って表面を非連続に被覆している高分子弾性体を脱落させ平滑化させるためのバフィング条件としては、例えば長さ約2〜5mのサンドペーパーの回転速度を800〜1500rpmの高回転で行うことが一度に行う研削量を高めて生産効率を向上させられる点から好ましく、320〜240番手のペーパーを用いることが表面を荒らさず平滑化することができる点で好ましい。
本発明では、立毛を構成する繊維(以下、立毛繊維と略す。)がスエード調人工皮革の表面の70〜100%を占め、平均立毛繊維長を200〜1000μmとすることにより、スナッギング性に優れた表面が得られることから、以下の特定の起毛処理を行う必要がある。その際、起毛処理時に表面が研削されると、前記した条件を満たす起毛状態を得ることは困難である。よって起毛処理方法として、表面を研削せず、荒らさず、かつ均一に起毛させるため、サンドペーパーでバフィングする方法、シール処理などの方法が用いられる。起毛条件としては、例えば長さ約2〜5mの番手320〜180番のサンドペーパーを回転数100〜600rpmで行うことが好ましく、番手240〜180番で回転数200〜400rpmがより好ましい。サンドペーパーが320番よりも目が大きくなることで充分な起毛効果が得られ、180番より細かいことで立毛繊維の長さが均一で表面外観が荒れ難いものとなる。また、回転数を100rpm以上とすることで平均立毛繊維長が1000μm以下となりやすく、外観品位の向上が達成可能となり、600rpmを以下とすることで立毛させた繊維が起毛され立毛繊維となった後に切れ難いため平均立毛繊維長が200μm以上とすることが可能となる。また必要により、揉み等の柔軟化処理、逆シールのブラッシングなどの表面仕上げ処理を行うことができる。
本発明では、上記起毛処理によって得られたスエード調人工皮革の立毛繊維の割合が、表面の面積の70〜100%を占めており、かつ平均立毛繊維長が200〜1000μmであることが必要である。70%未満では立毛されていない繊維が表面を覆い、外力により立毛していない繊維(立毛状態でない繊維、例えば絡合繊維の状態として表面に繊維の末端部分の無い状態)が引き出されることでスナッギングやピリングが発生する。好ましくは75〜100%である。また立毛繊維長が200μm未満では、いかに立毛繊維が多くとも、立毛状態でない繊維に覆われた下層が外力により露出しやすく、該繊維が表層へ露出した際にピリングやスナッギングが発生しやすい。さらに、1000μmを越える場合では、外力により表層の立毛繊維同士が絡み合いやすく、その結果ピリングやスナッギングを発生しやすい。
なお、本発明で言う立毛繊維がスエード調人工皮革の表面の占める割合は、立毛繊維がスエード調人工皮革の表面の占める面積の割合であり、表面に占める面積の割合は、スエード調人工皮革をサンプリング後に該スエード調人工皮革の任意の表面を電子顕微鏡で立毛繊維の存在がわかる程度に50〜100倍に拡大し、画像処理した後の合計面積1cmあたりの立毛繊維の総面積を言う。
本発明のスエード調人工皮革は、必要に応じて、本発明のスエード調人工皮革を上層に使用し、織編物を下層となるよう貼り合わせたり、あるいは、本発明のスエード調人工皮革を上層に使用し、該スエード調人工皮革を構成する繊維とは異種の繊維からなる層を下層となるよう貼り合わせたりしても構わない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、平均立毛繊維長は、サンプリング後断面を電子顕微鏡で50倍に拡大し、任意の20点の立毛繊維を測定した後、最も長い立毛繊維と最も短い繊維を除いた18点の平均値を言う。
また、極細繊維の平均単繊維繊度は、サンプリング後断面を電子顕微鏡で2000倍に拡大して任意の20点の直径を測定し、極細繊維を構成する成分の密度を考慮し算出した繊度の平均値とした。
イソフタル酸8モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(融点234℃)を島成分とし、エチレン単位10モル%含有し、けん化度98.4モル%、融点210℃のポリビニルアルコール共重合体(株式会社クラレ製 エクセバール)を海成分とし、質量比を海/島=30/70とした64島の海島繊維を複合紡糸した後、延伸することで単糸繊度5.5dtex、島繊維0.026dex、密度1.27g/cmの繊維を得た。この繊維を捲縮処理した後51mmへカットし、カード処理することで短繊維ウェブを作成した。
次に、56dtex/24fの仮撚り加工を施したポリエステル製の糸に、600T/mの追加撚糸加工をした後、織り密度125本×95本/inchで織り加工を行い、目付55g/mの平織物を得た。
上記ウェブと平織物を積層した後1265パンチ/cmの条件でニードル処理し、205℃の乾熱収縮により面積収縮し、目付け480g/m、見掛け密度0.340g/cm、厚み1.41mmの繊維絡合体を得た。
次にエーテル系ポリウレタン水分散エマルジョン (日華化学株式会社製 エバファノール APC−28 )に増粘剤(日華化学株式会社製 ネオステッカーS)、耐光剤(日華化学株式会社製 NKアシストHAL)を添加して水で希釈し、濃度10質量%、密度1.02g/cmである高分子弾性体水分散液を得た。この高分子弾性体水分散液のゲル化温度は60℃であった。
次に含浸設備としてリップコーター設備(株式会社ヒラノテクシード製 リップダイレクト方式)を用い、高分子弾性体水分散液を高分子弾性体/(極細繊維化された繊維絡合体+織編物繊維)=20/80の質量比となるように含浸した。高分子弾性体水分散液含浸後、最大エネルギー波長2.6μmの赤外線を97Vで60秒間照射し、繊維絡合体表面温度を1分以内に100℃まで上昇させた。また赤外線照射60秒後の水分率は30%であった。その後、155℃の熱風乾燥機で7分30秒間加熱乾燥し、水分を完全に蒸発させると共に高分子弾性体をキュアリングし繊維絡合体に固着した。その後、90℃の熱水でポリビニルアルコール共重合体成分を抽出することで人工皮革を得た。得られた人工皮革はシワ、伸びの発生が無く良好な外観であり、皮革様の均一な風合いや優れた物性を有するものであった。
次に、サンドペーパー番手320番、回転数1500rpmで表面を研削しつつ平滑化し、表面側を被覆している高分子弾性体を脱落させた後、バフペーパー240番、回転数300rpmで表面を起毛処理した。
次に分散染料としてSumikaron UL染料(住友化学株式会社製)のYellow 3RF 0.24owf%、Red GF 0.34owf%、Blue GF 0.70owf%、アンチフェードMC−500(明成化学株式会社製)、2owf%、ディスパーTL(明成化学株式会社製)1g/Lを用い130℃で高圧染色を行った。得られた染色品をシール処理によって表層の繊維を整毛させ、スエード調人工皮革を得た。得られた人工皮革を電子顕微鏡観察したところ、立毛繊維がスエード調人工皮革の表面の96%を占めており、平均立毛繊維長が281μmであった。また高分子弾性体が繊維絡合体を構成する極細繊維束の外周部分から繊維束の内部に面積比で平均3%浸透していた。
得られたスエード調人工皮革は、折れ、シワなどがなく風合いが柔らかく非常に良好であり、かつ毛羽長が揃い、良好な外観を有しており、耐摩耗性、スナッギング性に優れたものであった。
織物を挿入しない点以外は、実施例1と同様の処理を行った。その結果、立毛繊維がスエード調人工皮革の表面の95%を占めており、平均立毛繊維長が250μmであった。また高分子弾性体が繊維絡合体を構成する極細繊維束の外周部分から繊維束の内部に面積比で平均3%浸透していた。
得られたスエード調人工皮革は、折れ、シワなどがなく風合いが柔らかく非常に良好であり、かつ毛羽長が揃い、良好な外観を有しており、耐摩耗性、スナッギング性に優れたものであった。
実施例1の島繊維繊度を0.22dtexとした以外は、実施例1と同様の処理を行った。その結果、得られた人工皮革の表層繊維が表面の厚さ方向へ配向している割合が、90%、平均立毛繊維長が300μmであり、スナッギング性に優れたものであった。
比較例1(バフ条件変更)
染色前の起毛処理としてペーパー番手320番、回転数1500rpmで表面を研削しつつ平滑化した以外は、実施例1と同様の処理を行った。その結果、立毛繊維がスエード調人工皮革の表面の65%を占めており、平均立毛繊維長が180μmでありスナッギング性に劣るものであった。

Claims (4)

  1. 極細繊維束から構成された繊維絡合体の内部に高分子弾性体を含有してなり、表面に極細繊維の立毛を有し、以下(1)〜(4)を満足することを特徴とするスエード調人工皮革。
    (1)立毛を構成する繊維の平均単繊維繊度が0.0001〜0.5デシテックスであること
    (2)立毛を構成する繊維がスエード調人工皮革の表面の70〜100%を占めていること
    (3)平均立毛繊維長が200〜1000μmであること
    (4)高分子弾性体の一部が繊維絡合体を構成する極細繊維束の外周部から極細繊維束の内部に面積比で1〜30%の範囲で浸透して存在していること
  2. 高分子弾性体と繊維絡合体の割合が質量比で5/95〜60/40である請求項1に記載のスエード調人工皮革。
  3. 極細繊維束から構成された繊維絡合体と撚数10〜650T/mの糸から構成された織物が積層・絡合一体化されてなる請求項1または2に記載のスエード調人工皮革。
  4. 以下、(1)〜(4)の工程を順次行うことを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法。
    (1)水溶性高分子成分と水難溶性高分子成分からなる極細繊維発生型繊維から構成された繊維絡合体の内部に高分子弾性体水分散液を付与する工程
    (2)赤外線を照射し、繊維絡合体の表面温度を高分子弾性体水分散液のゲル化温度より10℃以上高い温度まで昇温した状態で繊維絡合体の水分率を50質量%以下とした後、残りの水分を乾燥除去して高分子弾性体水分散液を繊維絡合体の内部に固着する工程
    (3)極細繊維発生型繊維から水溶性高分子成分を抽出除去し、極細繊維化する工程
    (4)表面を不連続に被覆している高分子弾性体を脱落させ平滑化した後に立毛を構成する繊維が表面の70〜100%を占めるまで起毛処理し極細繊維立毛を形成する工程
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