JP2011214207A - 長繊維不織布および人工皮革基体の製造方法 - Google Patents

長繊維不織布および人工皮革基体の製造方法 Download PDF

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将司 目黒
Michinori Fujisawa
道憲 藤澤
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靖典 村手
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Abstract

【課題】特別なニードルパンチ条件、強いニードルパンチ条件を用いなくても、従来広く採用されている一般的な条件のニードルパンチにより長繊維が厚さ方向に充分に絡合し、トラバーススジのない高品位の長繊維不織布を製造する方法を提供する。
【解決手段】下記の連続工程(1)〜(4):
(1)紡出した極細繊維発生型長繊維をエアジェットで牽引細化して、縦方向に移動する捕集面上へ捕集して長繊維ウェブを形成する工程、
(2)該長繊維ウェブを加熱加圧処理して極細繊維発生型長繊維を融着し、下記条件(a)と(b):
(a)200mm/minの速度で縦方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が0.5〜5.0kg(4.9〜49N)であり、かつ、伸度100%の強力が0.5kg(4.9N)以上である、および
(b)200mm/minの速度で横方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が0.5〜2.0kg(4.9〜19.6N)であり、かつ、伸度100%の強力が0.7kg(6.9N)以上である
を満足する融着ウェブを形成する工程、
(3)該融着ウェブを少なくとも2層に積重して積重ウェブを形成する工程、および
(4)該積重ウェブをニードルパンチ処理して極細繊維発生型長繊維を絡合させ、長繊維不織布を得る工程を含む長繊維不織布の製造方法
【選択図】なし

Description

本発明は、特殊なニードルパンチ条件、強いニードルパンチ条件を採用しなくても、従来広く採用されている一般的な条件のニードルパンチにより長繊維を厚さ方向に充分に絡合させることができ、絡合不良によるスジ状欠陥のない高品位の長繊維不織布を製造する方法に関する。
人工皮革は、軽さ、取り扱い易さなどが天然皮革より優れていることが消費者に認められてきており、衣料、一般資材、スポーツ製品、バッグ材料などに幅広く利用されるようになっている。
従来の一般的な人工皮革は、概略、溶剤溶解性を異にする2種の重合体からなる極細繊維発生型繊維をステープル化し、カード、クロスラッパー、ランダムウェバー等を用いてウェブ化し、ニードルパンチ等により繊維を互いに絡ませて不織布化した後、溶剤に溶解させたポリウレタンなどの高分子弾性体を付与し、そして該複合繊維中の一成分を除去することにより繊維を極細化させる方法によって得ている。
しかしながら、不織布構造体を構成するステープル繊維は、繊維長が短いので不織布構造体から比較的容易に引き抜かれ、あるいは脱落してしまう傾向は避けられない。この傾向により、スエード調人工皮革の立毛面の摩擦耐久性や、銀面調人工皮革の接着剥離強力などの重要な表面物性が不十分になる。更には、製造工程で大きく伸びたり、表面繊維の毛羽抜けが起こって、充実感や表面感が劣ったり、品質安定性に劣るといった問題を抱えている。
長繊維不織布は、短繊維不織布に比べて、原料繊維供給装置、開繊装置、カード機などの一連の大型設備を必要としないのでその製造方法が簡略であり、また強度や形態安定性も短繊維不織布に比べて優れているといった利点がある。しかし、長繊維不織布を人工皮革の基体として利用しようとするためには、安定した目付の長繊維絡合不織布を得ることが困難であること、複合長繊維の繊度ムラやひずみに起因する製品ムラが生じやすいこと、長繊維は捲縮を有する短繊維とは異なって絡合させることが難しく、嵩高性に乏しく、充実感に劣り布帛に似た風合いとなりやすいこと等の問題を解決する必要があった。
特に、長繊維ウェブをクロスラッパーなどによりトラバースしながら2層以上に積重し、これをニードルパンチした場合、長繊維ウェブの長繊維が充分に絡合せず、両端部分がスジ状に残り(トラバーススジ)、最終製品の外観を大きく損なう不都合があった。両端部分の長繊維を充分に絡合させるためにニードルパンチ条件を強くすると、ニードルマークと呼ばれる不良(ニードルパンチ時のムラ)が顕著になり、最終製品の外観が大きく損なわれていた。
長繊維をニードルパンチにより充分に絡合させるために、特許文献1では、繊維/繊維間静摩擦係数を0.35〜0.45、繊維/金属間動摩擦係数を0.20〜0.30に制御することができる油剤を付与し、その後、ニードルパンチ処理を施すことを提案している。
特許文献2は、バーブ数3〜9/本、バーブ深さが繊維径の3〜10倍であるニードルを用いてニードルパンチした後、さらに、バーブ数1/本、バーブ深さが繊維径の1〜6倍であるニードルを用いてニードルパンチすることを提案している。
特許文献3では、剥離分割型複合繊維を紡出、高速牽引してネット上に捕集して得られた長繊維ウェブをエンボスカレンダーで熱処理し、2枚以上積層した後、ニードルパンチ処理して長繊維不織布を得ている。特許文献3は、エンボスカレンダー処理した長繊維ウェブの目付を20〜45g/m2、剛軟度を3〜6cmにすることによりニードルパンチ工程での繊維の交絡性を制御することができ、安定した高目付、高密度が得られると記載している。
特開2002−069821号公報 特開2005−171430号公報 特開2009−197375号公報
しかし、特許文献1の方法は、繊維を動きやすくし、また、繊維の損傷を防止するためには有効であるが、ニードルパンチにより厚さ方向に移動した繊維が元の位置に戻る傾向があり長繊維の充分な3次元絡合を得ることはできなかった。
特許文献2の方法では、ニードルが経時的に摩耗するので、理想とする長繊維3次元絡合状態を得ることが経時的に困難となっていた。
特許文献3には、エンボスカレンダー処理した長繊維ウェブの目付を20〜45g/m2、剛軟度を3〜6cmにすることにより安定した高目付、高密度が得られると記載されている。しかし、長繊維が高度に3次元絡合した状態を得るためには、エンボスカレンダー処理した長繊維ウェブの目付と剛軟度を特定範囲にするだけでは不十分であった。
また、特許文献1〜3は、上記した長繊維ウェブの両端部分の長繊維が充分に絡合せず、両端部分がスジ状に残る問題を検討しておらず、従って、トラバーススジの発生を防止する手段についても何も検討していなかった。
本発明は、ニードルパンチ条件を強くしなくても、また、特殊なニードルパンチ条件を採用しなくても、従来広く採用されている一般的な条件のニードルパンチにより長繊維が厚さ方向に充分に絡合し、トラバーススジのない高品位の長繊維不織布を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、下記本発明に想到し上記目的を達成した。
すなわち、本発明は、下記の連続工程(1)〜(4):
(1)紡出した極細繊維発生型長繊維をエアジェットで牽引細化して、縦方向に移動する捕集面上へ捕集して長繊維ウェブを形成する工程、
(2)該長繊維ウェブを加熱加圧処理して極細繊維発生型長繊維を融着し、下記条件(a)と(b):
(a)200mm/minの速度で縦方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が0.5〜5.0kg(4.9〜49N)であり、かつ、伸度100%の強力が0.5kg(4.9N)以上である、および
(b)200mm/minの速度で横方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が0.5〜2.0kg(4.9〜19.6N)であり、かつ、伸度100%の強力が0.7kg(6.9N)以上である
を満足する融着ウェブを形成する工程、
(3)該融着ウェブを少なくとも2層に積重して積重ウェブを形成する工程、および
(4)該積重ウェブをニードルパンチ処理して極細繊維発生型長繊維を絡合させ、長繊維不織布を得る工程
を含む長繊維不織布の製造方法に関する。
さらに、本発明は、上記の製造方法により得られた長繊維不織布に高分子弾性体を付与する工程および極細繊維発生型繊維を極細化する工程を含む、または、上記の製造方法により得られた長繊維不織布の極細繊維発生型繊維を極細化する工程および得られた極細化不織布に高分子弾性体を付与する工程を含む人工皮革基体の製造方法に関する。
本発明によれば、特別なニードルパンチ条件、強いニードルパンチ条件を用いなくても、従来広く採用されている一般的な条件のニードルパンチにより長繊維が厚さ方向に充分に絡合し、トラバーススジのない高品位の長繊維不織布を製造することができる。
本発明の長繊維不織布を製造する工程の一例を示す模式図である。 融着ウェブをトラバースしながら積重して2層の積重ウェブにする方法の一例を示す模式図である。 実施例1の融着ウェブの縦方向のSS曲線である。 実施例1の融着ウェブの横方向のSS曲線である。 比較例1の融着ウェブの縦方向のSS曲線である。 比較例1の融着ウェブの横方向のSS曲線である。
本発明の長繊維不織布は、下記の連続工程(1)〜(4)により製造することができる。
(1)紡出した極細繊維発生型長繊維をエアジェットで牽引細化して、縦方向に移動する捕集面上へ捕集して長繊維ウェブを形成する工程、
(2)該長繊維ウェブを加熱加圧処理して極細繊維発生型長繊維を融着して下記条件(a)と(b):
(a)200mm/minの速度で縦方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が0.5〜5.0kg(4.9〜49N)であり、かつ、伸度100%の強力が0.5kg(4.9N)以上である、および
(b)200mm/minの速度で横方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が0.5〜2.0kg(4.9〜19.6N)であり、かつ、伸度100%の強力が0.7kg(6.9N)以上である
を満足する融着ウェブを形成する工程、
(3)該融着ウェブを少なくとも2層に積重して積重ウェブを形成する工程、および
(4)該積重ウェブをニードルパンチ処理して極細繊維発生型長繊維を絡合させ、長繊維不織布を得る工程。
工程(1)
工程(1)では、極細繊維発生型長繊維からなる長繊維ウェブを製造する。極細繊維発生型長繊維としては、剥離分割型複合繊維、海島型長繊維などの極細化可能な公知の複合繊維を用いることができるが、本発明では海島型長繊維が特に好ましく用いられる。以下、海島型長繊維を用いた場合を例として本発明の製造方法を説明するが、本発明は他の極細化可能な複合繊維にも同様に適用することができる。
海島型長繊維は少なくとも2種類のポリマーからなる多成分系複合繊維であって、海成分ポリマー中にこれとは異なる種類の島成分ポリマーが分散した断面を有する。海島型長繊維は、長繊維不織布に、高分子弾性体を含浸させる前または含浸した後に海成分ポリマーを抽出または分解して除去することで、残った島成分ポリマーからなる極細長繊維の繊維束に変換される。
島成分ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステルエラストマー等のポリエステル系樹脂またはそれらの変性物;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリアミドエラストマー等のポリアミド系樹脂またはそれらの変性物;ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系ポリウレタンなどのポリウレタン系樹脂など、公知の繊維形成性の水不溶性熱可塑性ポリマーが挙げられる。これらの中でも、PET、PTT、PBT、これらの変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂は、熱処理により収縮しやすく、充実感のある風合いを有し、耐磨耗性、耐光性、形態安定性などの実用的性能が優れた人工皮革製品が得られる点で特に好ましい。また、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂はポリエステル系樹脂に比べて吸湿性があってしなやかな極細長繊維が得られるので、膨らみ感のある柔らかな風合いを有し、帯電防止性などの実用的性能が良好な人工皮革製品が得られる点で特に好ましい。
島成分ポリマーの融点は160℃以上であるのが好ましく、融点が180〜330℃であり結晶性であるのがより好ましい。融点は後述する方法で求めた。島成分ポリマーには、着色剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、消臭剤、防かび剤、抗菌剤、各種安定剤などが添加されていてもよい。
海島型長繊維を極細長繊維の繊維束に変換する際に、海成分ポリマーは溶剤または分解剤により抽出または分解除去される。従って、海成分ポリマーは溶剤に対する溶解性または分解剤による分解性が島成分ポリマーよりも大きいことが必要である。海島型長繊維の紡糸安定性の点から島成分ポリマーとの親和性が小さく、かつ、紡糸条件において溶融粘度及び/又は表面張力が島成分ポリマーより小さいことが好ましい。このような条件を満たす限り海成分ポリマーは特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−アクリル共重合体、ポリビニルアルコール系樹脂などが好ましく用いられる。有機溶剤を用いることなく人工皮革を製造することができるので、海成分ポリマーに水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(水溶性PVA)を用いるのが特に好ましい。
水溶性PVAの粘度平均重合度(以下、単に「重合度」と略記する)は200〜500が好ましく、230〜470がより好ましく、250〜450がさらに好ましい。重合度が200以上であると、溶融粘度が適度で島成分ポリマーとの複合化が容易である。重合度が500以下であると、溶融粘度が高すぎて紡糸ノズルから樹脂を吐出することが困難となる問題を避けることができる。重合度500以下のいわゆる低重合度PVAを用いることにより、熱水で溶解するときに溶解速度が速くなるという利点も有る。水溶性PVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、水溶性PVAを再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められる。
P=([η]103/8.29)(1/0.62)
水溶性PVAのケン化度は90〜99.99モル%が好ましく、93〜99.98モル%がより好ましく、94〜99.97モル%がさらに好ましく、96〜99.96モル%が特に好ましい。ケン化度が90モル%以上であると、熱安定性が良く、熱分解やゲル化することなく満足な溶融紡糸を行うことができ、生分解性も良好である。更に後述する共重合モノマーによって水溶性が低下することがなく、極細化が容易になる。ケン化度が99.99モル%よりも大きい水溶性PVAは安定に製造することが難しい。
水溶性PVAの融点(Tm)は、160〜230℃が好ましく、170〜227℃がより好ましく、175〜224℃がさらに好ましく、180〜220℃が特に好ましい。融点が160℃以上であると、結晶性が低下して繊維強度が低くなることがなく、熱安定性が悪くなり繊維化が困難になることも避けることができる。融点が230℃以下であると、PVAの分解温度より低い温度で溶融紡糸することができ、海島型長繊維を安定に製造することができる。
水溶性PVAは、ビニルエステル単位を主体として有する樹脂をケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でも水溶性PVAを容易に得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
水溶性PVAは、ホモPVAであっても共重合単位を導入した変性PVAであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、変性PVAを用いることが好ましい。共重合単量体としては、共重合性、溶融紡糸性および繊維の水溶性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類が好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位の量は、変性PVA構成単位の1〜20モル%が好ましく、4〜15モル%がより好ましく、6〜13モル%がさらに好ましい。さらに、共重合単量体がエチレンであると繊維物性が高くなるので、エチレン単位を好ましくは4〜15モル%、より好ましくは6〜13モル%含む変性PVAが好ましい。
水溶性PVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法で製造される。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が好ましい。溶液重合の溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、a、a’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0〜150℃の範囲が適当である。
従来の人工皮革の製造においては、極細繊維発生型長繊維を任意の繊維長にカットして得たステープルにより繊維ウェブを製造していたが、本発明では、スパンボンド法などにより紡糸した海島型長繊維(極細繊維発生型長繊維)をカットすることなく長繊維ウェブにする。海島型長繊維は前記の海成分ポリマーと島成分ポリマーを複合紡糸用口金から押出すことにより溶融紡糸する。紡糸温度(口金温度)は180〜350℃が好ましい。
口金から吐出した溶融状態の海島型長繊維を冷却装置により冷却した後、エアジェットノズルなどの吸引装置を用いて、目的の繊度となるように高速気流(エアジェット)により牽引細化し、縦方向(MD)に移動するネットなどの捕集面上に堆積させて長繊維ウェブを形成する。
上記した条件(a)と(b)を満足する融着ウェブを形成するためには、エアジェットノズル〜捕集面間距離は40〜100cmであるのが好ましく、41〜80cmであるのがより好ましい。捕集面への吸引速度は5〜35m/secであるのが好ましく、10〜25m/secであるのがより好ましい。また、捕集面の移動速度は20〜150m/分であるのが好ましく、50〜120m/分であるのがより好ましい。特に、エアジェットノズル〜捕集面間距離と捕集面への吸引速度が上記範囲内であると、捕集面上に捕集される極細繊維発生型長繊維がランダムに配向し、極細繊維発生型長繊維同士が交差した点が増大する。本発明の製造方法においては、長繊維ウェブ形成時に、極細繊維発生型長繊維同士が交差した点を多く発生させることで、後の工程において特殊なニードルパンチ条件(例えば、異なるニードルを用いて複数のニードルパンチ処理を行う)、強いニードルパンチ条件(例えば、ニードルのスロートデプスを深くする、バーブ数を増やす、パンチング密度を大きくするなど)を採用しない場合であっても極細繊維発生型長繊維がニードルパンチ時に適度に動き易いことから充分な3次元絡合が可能となる。
上記のような長繊維ウェブ製造方法は、従来の短繊維を用いる繊維ウェブ製造方法では必須の原綿供給装置、開繊装置、カード機などの一連の大型設備を必要としないので生産上有利である。また、長繊維ウェブおよびそれを用いて得られる人工皮革は連続性の高い長繊維からなるので、従来一般的であった短繊維ウェブおよびそれを用いて製造した人工皮革に比べて、整毛処理時の繊維のす抜けがなく、強度などの物性においても優れている。
海島型長繊維(極細繊維発生型長繊維)の平均繊度は1.0〜5.0dtexであるのが好ましい。海島型長繊維の断面において、海成分ポリマーと島成分ポリマーの平均面積比(ポリマー体積比に相当)は5/95〜70/30が好ましく、60/40がより好ましい。また、島数は8〜70個であるのが好ましい。得られた長繊維ウェブの目付は10〜1000g/m2が好ましい。
本発明において、長繊維とは、繊維長が通常3〜80mm程度である短繊維よりも長い繊維長を有する繊維であり、短繊維のように意図的に切断されていない繊維をいう。例えば、極細化する前の長繊維の繊維長は100mm以上が好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、物理的に切れない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。
工程(2)
工程(2)では、長繊維ウェブを加熱加圧処理して極細繊維発生型長繊維同士を融着して下記条件(a)と(b):
(a)200mm/minの速度で縦方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が0.5〜5.0kg(4.9〜49N)であり、かつ、伸度100%の強力が0.5kg(4.9N)以上、好ましくは0.5〜3.0kg(4.9〜29.4N)である、および
(b)200mm/minの速度で横方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が0.5〜2.0kg(4.9〜19.6N)であり、かつ、伸度100%の強力が0.7kg(6.9N)以上、好ましくは0.7〜3.0kg(6.9〜29.4N)である
を満足するSS曲線(応力−歪み曲線)を示す融着ウェブを形成する。融着ウェブの目付は20〜60g/m2であるのが好ましい。
縦方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力は1.0〜3.0kg(9.8〜29.4N)であるのが好ましく、伸度100%の強力は0.5〜3.0kg(4.9〜29.4N)であるのが好ましい。横方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力は0.6〜1.5kg(5.9〜14.7N)であるのが好ましく、伸度100%の強力は0.7〜3.0kg(6.9〜29.4N)であるのが好ましい。
加熱加圧処理として、公知の方法が用いられるがエンボス処理が好ましく用いられる。エンボス処理は、繊維を構成するポリマーに応じて適宜用いることが可能であるが、表面温度が好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜80℃のエンボスロール、例えばカレンダーロールを用いて、好ましくは20〜55kg/cm、より好ましくは25〜40kg/cmの線圧で、さらには接触面積が5〜30%のエンボスロールで行えばよい。上記範囲であると、後工程へ搬送するために必要な形態安定性を付与でき、極細繊維発生型長繊維の断面形状を大きく損なうことがなく、さらには極細繊維発生型長繊維が必要以上に強く融着することが避けられ、後のニードルパンチ工程で固定点が適度にほぐれ、交差点の多いことで極細繊維発生型長繊維が動き易く、充分に3次元絡合した状態を得ることができる。
実施例1で得られた融着ウェブのSS曲線を図3(縦方向に変形)と図4(横方向に変形)に示す。図3から分かるように、本発明の融着ウェブを16cm×16cmのサイズに切り出し横方向へ四つ折りにし、縦方向に200mm/minの速度で変形させたとき、2.6kg(25.5N)の降伏応力を示し、降伏点を超えてさらに変形しても応力は急激に低下せずにある程度高い応力を保ちながら徐々に低下する。また図4から分かるように、融着ウェブを16cm×16cmのサイズに切り出し縦方向へ四つ折りにし横方向に200mm/minの速度で変形させたとき、0.85kg(8.3N)の降伏応力を示す。降伏点を超えてさらに変形すると、従来の予想に反して、降伏後であっても応力が増大する。この理由は、上記したように長繊維ウェブ形成時に、極細繊維発生型長繊維同士が交差した点が多く発生しているため、長繊維が引張り方向へ配向する際繊維同士が素抜けず、再び応力がかかることにある。本発明では、上記条件(a)と(b)を満足するSS曲線を示す融着ウェブを積重し、ニードルパンチするので極細繊維発生型長繊維がニードルパンチング時に動き易く、また充分に3次元絡合し、積重された融着ウェブ両端部の絡合不良に起因するスジ状欠陥の発生を防止することができる。
工程(3)
工程(3)では目付け斑の低減と良好な生産性を考慮して融着ウェブを少なくとも2層、好ましくは2〜100層に積重して積重ウェブを得る。図2に融着ウェブを2層にトラバースしながら積重する場合を模式的に示した。積重は積重ウェブの形態を均一にするために、公知のクロスラッパーを採用することが好ましい。
工程(4)
工程(4)では積重ウェブにニードルパンチ処理を施して長繊維不織布を得る。本発明の製造方法では、極細繊維発生型長繊維の高絡合を達成するために従来提案されている特殊なニードルパンチ条件、強いニードルパンチ条件を採用することもできるが、一般的に採用されているニードルパンチ条件を用いても極細繊維発生型長繊維の3次元的な高絡合が得られる。
ニードルの種類は、従来の短繊維を用いた人工皮革製造において用いられるものと同様のものを適宜用いることが可能である。例えば、ニードルの番手はブレード部(ニードル先端のバーブが形成されている部分)のサイズが30番(断面形状が正三角形であれば高さが、また円形であれば直径が0.73〜0.75mm程度)より小さいことが好ましく、より好ましくは32番(0.68〜0.70mm程度)から46番(0.33〜0.35mm程度)の範囲であり、さらに好ましくは36番(高さ0.58〜0.60mm)から43番(高さ0.38〜0.40mm程度)の範囲である。ブレード部のサイズが30番より大きいニードルは、バーブの形状や深さの自由度が高く、ニードルの強度や耐久性においても好ましい反面、長繊維不織布の表面に大きな孔径のニードルパンチ跡が残り品位が低下する。
バーブ深さ(バーブ最深部からバーブ先端までの高さ)は、少なくとも極細繊維発生型長繊維の半径未満だと極細繊維発生型長繊維がバーブに極めて引っ掛かり難くなるので好ましくないので、極細繊維発生型長繊維の半径以上が好ましく、120μmを超えると繊維は極めて引っ掛かり易い反面、長繊維不織布の表面に大きな孔径のニードルパンチ跡が残り易く品位が低下する。また、バーブ深さは極細繊維発生型長繊維の直径に対して1.7〜10.2倍の範囲であるのが好ましく、より好ましくは2.0〜7.0倍の範囲である。バーブ深さが1.7倍未満だと、極細繊維発生型長繊維がバーブに引っ掛かり難いためか、後述するパンチ数を増やしても、それに見合った絡合効果が得られない場合がある。一方、10.2倍を超えた場合、極細繊維発生型長繊維の引っ掛かり易さが向上するよりは、むしろ極細繊維発生型長繊維の切断や割れなどの損傷が増大する傾向が強くなるので好ましくない。
バーブ数は、1〜9個までの範囲で所望の絡合効果が得られるように適宜選択すればよいが、後述するパンチ数の少なくとも50%以上のパンチングに用いられるニードルは、バーブ数が6個であることが好ましい。なお、ニードルパンチに用いるニードルのバーブ数は1種類である必要はなく、例えば1個と6個、3個と6個、6個と9個、1個と6個と9個などの異なるバーブ数のニードルを適宜組み合わせ、任意の順序で使用してもよい。
ニードルの合計パンチ数は、800〜4000パンチ/cm2の範囲が好ましく、より好ましくは1000〜3500パンチ/cm2の範囲である。800パンチ/cm2未満では緻密化が不充分なばかりか、特に積重ウェブの異層間での繊維同士の絡合による長繊維不織布の一体化が不充分な傾向が強くなり、一方、4000パンチ/cm2を超えると、ニードル形状にもよるが、繊維のニードルによる切断や割れなどの損傷が目立ち、繊維の損傷が特にひどい場合には、長繊維不織布の形態安定性が大幅に低下すると共にむしろ緻密さが低下してしまうこともある。
本発明の製造方法では、ニードルパンチにより極細繊維発生型長繊維が高度に絡合するので、積重ウェブは特に幅方向(横方向)に収縮する。ニードルパンチによる面積収縮率:
[(収縮処理前の面積−収縮処理後の面積)/収縮処理前の面積]×100
は8〜30%であることが好ましい。
上記のようにして得られた長繊維不織布には、積重されたウェブの両端部の絡合不良に由来するトラバーススジがなく、極細繊維発生型長繊維が極めて均一、かつ、高度に絡合している。また、長繊維不織布の厚さ方向に平行な断面において断面とほぼ直行する長繊維の断面が平均1500〜3000個/mm2の密度で存在する極めて緻密な絡合状態が得られる。
長繊維ウェブの製造からニードルパンチ処理までのいずれかの段階のウェブに油剤を付与してもよい。また、必要に応じて、熱風、温水、スチームなどを1種類または複数組み合わせることで、緻密な構造を得ることができ、中でも長繊維の1成分として水溶性PVAを用いている場合、溶出させずに充分な高収縮率を得られることから湿熱処理が好ましい。湿熱処理による熱収縮を行う場合、例えば飽和水蒸気を連続的に供給することで温度65〜100℃、相対湿度70〜100%の範囲の温湿度に制御した雰囲気中へ導入する方法、あるいは長繊維不織布中の水溶性PVAを膨潤・可塑化させるため水を付与した後熱処理する方法がある。後者の方法の場合、水溶性PVAに対して5質量%以上の水を付与して、相対湿度75%以上の雰囲気下で熱処理、好ましくは水溶性PVAに対して10質量%以上の水を付与し、相対湿度90%以上の雰囲気下で熱処理することが好適である。その際雰囲気温度60℃以上で収縮させることが、設備上の管理が容易であり、高収縮率が得られる点において好ましい。長繊維不織布への水分付与量が5質量%未満である場合には、水溶性PVAの可塑化が不充分となり、収縮を妨げる傾向となり、また相対湿度が75%未満の場合には、付与した水分が速やかに乾燥するために水溶性PVAが硬化し、これも充分な収縮が得られない。また付与する水の上限値に関しては特に限定はないが、溶け出したPVAが工程を汚染することを防止し、乾燥効率をよくするため、一般的には該PVA成分の50質量%以下である。なお水の付与量は、不織布を標準状態(23℃、65%RH)の状態に放置した後の不織布重量を基準とした値である。
収縮処理による面積収縮率が15%以上であることが人工皮革基体として使用する上で好ましい。より好ましくは30%以上である。面積収縮率が15%未満である場合には、得られる人工皮革の見かけ密度が充分に高くならず、該人工皮革の形態保持が困難となるため、人工皮革基体の製造工程の取り扱い上または工程通過性の点で不都合を生じる。また、人工皮革基体として充分な強度が得られず、形態保持性改良のために後工程で多量のバインダー樹脂が必要となり天然皮革様の腰の有るやわらかさを得ることが困難となる。緻密化した長繊維不織布の目付は100〜2000g/m2、見掛け密度は0.3〜0.8g/m3であるのが好ましい。また、熱プレス処理を行なうことで表面を平滑化し、より効果的に長繊維同士をさらに緻密な集合状態とすることも可能である。
上記のようにして得られた長繊維不織布(緻密化した長繊維不織布を含む)を、下記の工程(5)次いで工程(6)、または、工程(6)次いで工程(5)で処理することにより本発明の人工皮革基体が得られる。
工程(5)
工程(5)では、長繊維不織布に高分子弾性体の水分散体または水溶液を付与し、熱を加えながら高分子弾性体を凝固させる。高分子弾性体としては、人工皮革の製造に従来用いられているポリウレタンエラストマー、アクリロニトリルエラストマー、オレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、アクリルエラストマーなどから選ばれる少なくとも1種の弾性体を用いることができるが、ポリウレタンエラストマー及び/又はアクリルエラストマーが特に好ましい。
ポリウレタンエラストマーとしては、高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート、及び、必要に応じて鎖伸長剤を所望の割合で、溶融重合法、塊状重合法、溶液重合法などにより重合して得られる公知の熱可塑性ポリウレタンが好ましい。
高分子ポリオールは用途や必要性能に応じて公知の高分子ポリオールから選択される。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテル系ポリオール及びその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオール及びその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオール及びその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオールなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
高分子ポリオールの平均分子量は500〜3000であるのが好ましい。得られる人工皮革の耐光堅牢性、耐熱堅牢性、耐NOx黄変性、耐汗性、耐加水分解性などの耐久性をより良好にする場合には、2種以上の高分子ポリオールを使用することが好ましい。
有機ジイソシアネートは用途や必要性能に応じて公知のジイソシアネート化合物から選択すればよい。例えば、芳香環を有しない脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート(無黄変型ジイソシアネート)、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどや、芳香環ジイソシアネート、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなど挙げることができる。特に、光や熱での黄変が起こりにくいことから、無黄変型ジイソシアネートを使用することが好ましい。
鎖伸長剤は、用途や必要性能に応じて公知のウレタン樹脂の製造に鎖伸長剤として用いられている活性水素原子を2個有する低分子化合物から選択すれば良い。例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミン等のトリアミン類;トリエチレンテトラミン等のテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。中でも、ヒドラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンおよびその誘導体、エチレントリアミンなどのトリアミンの中から2〜4種類を併用することが好ましい。特に、ヒドラジン及びその誘導体は酸化防止効果を有するので、耐久性が向上する。
また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
熱可塑性ポリウレタンのソフトセグメント(ポリマージオール)の含有量は90〜15質量%であることが好ましい。
アクリルエラストマーとしては、例えば、軟質成分、架橋形成性成分、硬質成分とこれらいずれの成分にも属さないその他の成分からなる水分散性または水溶性のエチレン性不飽和モノマーの重合体が挙げられる。
軟質成分とは、その単独重合体のガラス転移温度(Tg)が−5℃未満、好ましくは−90℃以上で−5℃未満である成分であり、非架橋性(架橋を形成しない)であることが好ましい。軟質成分を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸誘導体などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
硬質成分とは、その単独重合体のガラス転移温度(Tg)が50℃を越え、好ましくは50℃を越えて250℃以下である成分であり、非架橋性(架橋を形成しない)であることが好ましい。硬質成分を形成するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの誘導体;ビニルピロリドンなどの複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミドなどのビニル化合物;エチレン、プロピレンなどで代表されるα−オレフィンなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
架橋形成性成分とは、架橋構造を形成し得る単官能または多官能エチレン性不飽和モノマー単位、または、ポリマー鎖に導入されたエチレン性不飽和モノマー単位と反応して架橋構造を形成し得る化合物(架橋剤)である。単官能または多官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等などのテトラ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの多官能芳香族ビニル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸不飽和エステル類;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの2:1付加反応物、ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの2:1付加反応物、グリセリンジメタクリレートとトリレンジイソシアネートの2:1付加反応物などの分子量が1500以下のウレタンアクリレート;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類およびそれらの誘導体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有するビニル化合物;ビニルアミドなどのアミド基を有するビニル化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
架橋剤としては、例えば、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、エポキシ基含有化合物、ヒドラジン誘導体、ヒドラジド誘導体、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
アクリルエラストマーのその他の成分を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
高分子弾性体の融点は130〜240℃であるのが好ましく、130℃での熱水膨潤率は10%以上、好ましくは10〜100%である。一般に、熱水膨潤率が大きい程高分子弾性体は柔軟であるが、分子内の凝集力が弱い為、後の工程や製品の使用時に剥落することが多く、バインダーとしての作用が不十分になる。上記範囲内であるとこのような不都合を避けることができる。熱水膨潤率は後述する方法により求めた。
高分子弾性体の損失弾性率のピーク温度は10℃以下、好ましくは−80℃〜10℃である。損失弾性率のピーク温度が10℃を超えると、人工皮革の風合いが堅くなり、また、耐屈曲性等の力学的耐久性が悪化する。損失弾性率は後述する方法で求めた。
高分子弾性体は水溶液または水分散体として長繊維不織布に含浸させる。水溶液または水分散体中の高分子弾性体含量は0.1〜60質量%が好ましい。本発明で含浸する高分子弾性体は、風合い調節、形態保持性、毛羽落ち防止を容易にする目的で付与するものであり、極細繊維束を拘束するような形態、量で付与するのは好ましくない。この観点から、凝固後の高分子弾性体の含有量は、極細長繊維に対して0.5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、1〜15質量%がさらに好ましい。高分子弾性体の水溶液または水分散体には、得られる人工皮革の性質を損なわない範囲で、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、発泡剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料などを添加してもよい。
高分子弾性体の水溶液または水分散体を長繊維不織布に含浸させる方法は特に制限されないが、例えば、浸漬などにより長繊維不織布内部に均一に含浸する方法、表面と裏面に塗布する方法などが挙げられる。感熱ゲル化剤などを使用して、含浸した高分子弾性体が長繊維不織布の表面と裏面に移行(マイグレーション)するのを防止し、高分子弾性体を長繊維不織布中で均一に凝固させてもよい。また、含浸した高分子弾性体を絡合不織布の表面と裏面に移行(マイグレーション)させ、その後凝固させて、高分子弾性体の存在量を厚み方向に略連続的に勾配させてもよい。すなわち、高分子弾性体の存在量を、厚み方向中央部よりも、両表層部近傍で多くしてもよい。このような分布勾配を得るためには、高分子弾性体の水溶液または水分散体を含浸させた後、マイグレーション防止手段を講じることなく、長繊維不織布の表面と裏面を好ましくは110〜150℃で、好ましくは0.5〜30分間加熱する。このような加熱により水分が表面と裏面から蒸散し、それに伴って高分子弾性体を含む水分が両表層部に移行し、高分子弾性体が表面と裏面近傍で凝固する。マイグレーションのための加熱は、乾燥装置中などにおいて熱風を表面および裏面に吹き付けることにより行うのが好ましい。
工程(6)
工程(6)では、海成分ポリマーを除去することにより極細繊維発生型長繊維(海島型長繊維)を極細長繊維の繊維束に変換し、人工皮革基体(極細化不織布)をうる。海成分ポリマーを除去する方法としては、島成分ポリマーの非溶剤または非分解剤であり、かつ、海成分ポリマーの溶剤または分解剤で長繊維不織布を処理する方法が本発明においては好ましく採用される。島成分ポリマーがポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂である場合、海成分ポリマーがポリエチレンであればトルエン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの有機溶剤が、海成分ポリマーが水溶性PVAであれば温水、また、海成分ポリマーが易アルカリ分解性の変性ポリエステルであれば水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性分解剤が使用される。海成分ポリマーの除去は人工皮革分野において従来採用されている方法により行えばよく、特に制限されない。本発明においては、環境負荷が少なく、また、労働衛生上好ましいので、海成分ポリマーとして水溶性PVAを使用し、これを、有機溶媒を使用することなく85〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理し、除去率が95質量%以上(100%を含む)になるまで抽出除去し、極細繊維発生型長繊維を島成分ポリマーからなる極細長繊維の繊維束に変換するのが好ましい。
必要に応じて、極細繊維発生型長繊維を極細化する前または極細化と同時に、面積収縮率が好ましくは30%以上、より好ましくは30〜75%になるように収縮処理を行って高密度化してもよい。収縮処理により形態保持性がより良好になり、起毛時または整毛時の繊維の素抜けも防止される。
極細化前に行う場合、水蒸気雰囲気下で長繊維不織布を収縮処理するのが好ましい。水蒸気による収縮処理は、例えば、絡合ウェブに海成分に対して30〜200質量%の水分を付与し、次いで、相対湿度が70%以上、より好ましくは90%以上、温度が60〜130℃の加熱水蒸気雰囲気下で60〜600秒間加熱処理することが好ましい。上記条件で収縮処理すると、水蒸気で可塑化された海成分ポリマーが島成分ポリマーにより構成される長繊維の収縮力で圧搾・変形するので緻密化が容易になる。次いで、収縮処理した長繊維不織布を85〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理して海成分ポリマーを溶解除去する。また、海成分ポリマーの除去率が95質量%以上になるように、水流抽出処理してもよい。水流の温度は80〜98℃が好ましく、水流速度は2〜100m/分が好ましく、処理時間は1〜20分が好ましい。
収縮処理と極細化を同時に行う方法としては、例えば、長繊維不織布を65〜90℃の熱水中に3〜300秒間浸漬した後、引き続き、85〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理する方法が挙げられる。前段階で、極細繊維発生型長繊維が収縮すると同時に海成分ポリマーが圧搾される。圧搾された海成分ポリマーの一部は繊維から溶出する。そのため、海成分ポリマーの除去により形成される空隙がより小さくなるので、より緻密化した人工皮革基体が得られる。
人工皮革基体中の繊維束の平均繊度は0.5〜10dtex、好ましくは0.7〜5dtexである。極細長繊維の平均繊度は0.001〜2dtex、好ましくは0.005〜0.2dtexである。この範囲内であると、得られる人工皮革の緻密性が向上する。
人工皮革基体の湿潤時の剥離強力は4kg/25mm以上であることが好ましく、4〜15kg/25mmであることがより好ましい。剥離強力は極細長繊維の繊維束の三次元絡合の度合いの目安である。上記範囲内であると、人工皮革基体および得られる人工皮革の表面摩耗が少なく、形態保持性が良好である。また、充実感に優れた人工皮革が得られる。後述するように、極細繊維を分散染料で染色してもよい。湿潤時の剥離強力が上記範囲内であると、染色時の繊維の素抜けやほつれを防止することができる。
必要に応じて、極細繊維を分散染料あるいは含金染料等の公知の染料により染色しても良い。
使用する分散染料としては、分子量が200〜800の、モノアゾ系、ジスアゾ系、アントラキノン系、ニトロ系、ナフトキノン系、ジフェニルアミン系、複素環系等のポリエステル染色に通常使用される分散染料が好ましく、用途や色相に応じて単独あるいは配合して使用する。染色濃度は要求される色相に応じて異なるが、30%owfを超える高濃度で染色した場合には湿潤時の摩擦堅牢度が悪化するので、30%owf以下が好ましい。浴比は特に制限はないが、1:30以下の低浴比が、コスト、環境への影響の観点で好ましい。染色温度は、70〜130℃が好ましく、95〜120℃がより好ましい。また、染色時間は30〜90分が好ましく、淡色では30〜60分、濃色では45〜90分がより好ましい。染色後の還元洗浄は染色濃度が10%owf以上の場合は3g/L以下の低濃度の還元剤を使用しても良いが、中性洗剤を使用して40〜60℃の温水で洗浄するのが好ましい。
本発明の人工皮革基体は、公知の方法により所望の条件にて、表面被覆層用の樹脂を塗布し、更にエンボス加工、柔軟化処理、染色などの処理を行うことにより、また、表面を加熱溶融させて表面を平滑化することにより、銀付き調または半銀付き調の人工皮革を得ることができる。また、表面を起毛処理し、毛羽立てることによって、さらに必要により柔軟化処理、染色処理することによりスエード調やヌバック調の人工皮革を得ることもできる。毛羽立てる方法としては、公知の方法を用いることが可能であるが、サンドペーパーや針布等を用いたバフがけをすることが好ましい。本発明の長繊維不織布および人工皮革基体では、積重された融着ウェブの両端部の絡合不良によるトラバーススジの発生がない。そのため染色ムラを生じることがないので、衣料、インテリア、カーシート用などのスエード調人工皮革の製造に特に好ましく使用される。本発明の長繊維不織布および人工皮革基体を用いることにより毛羽感が緻密で均一な高品質のスエード調人工皮革が得られる。
以下、実施例により、本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中で記載される部および%は、特にことわりのない限り質量基準である。なお各特性は以下の方法で測定した。
(1)極細長繊維の平均繊度
人工皮革を形成している極細長繊維(20個)の断面積を走査型電子顕微鏡(倍率:数百倍〜数千倍程度)により測定し平均断面積を求めた。この平均断面積と繊維を形成するポリマーの密度から平均繊度を計算した。
(2)繊維束の平均繊度
絡合不織布を形成している繊維束の中から選び出した平均的な繊維束(20個)を走査型電子顕微鏡(倍率:数百倍〜数千倍程度)で観察し、その外接円の半径を測定して平均断面積を求めた。この平均断面積が繊維を形成するポリマーで充填されているとし、該ポリマーの密度から繊維束の平均繊度を計算した。
(3)SS曲線
16cm×16cmに切り出した後、縦方向の測定の場合は横方向に四つ折り(最初に2分の1の面積になるように重ねて折り、さらに4分の1の面積になるように重ねて折る)にし、また横方向の測定の場合は縦方向に四つ折(最初に2分の1の面積になるように重ねて折り、さらに4分の1の面積になるように重ねて折る)にして、JIS L1096 8.12.1 (1999年)に準じて、試験片の幅を4cmとし、つかみ間隔10cmで、定速伸長型引張試験器により200mm/minの引張速度で伸長させ測定した。
(4)吸引速度
エアジェットで牽引細化された極細繊維発生型長繊維を捕集する面上に、風速計(ASONE(株)製 TA−361 THERMO ANEMOMETER)の測定部を置き、捕集面内部へ吸引しているエアの風速を測定した。
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂の製造
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に、酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9kgf/cm2となるようにエチレンを導入した。2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(開始剤)をメタノールに溶解して濃度2.8g/Lの開始剤溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mLを注入し重合を開始した。重合中、エチレンを導入して反応槽圧力を5.9kgf/cm2に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を610mL/hrで連続添加した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。
次いで、減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しエチレン変性ポリ酢酸ビニル(変性PVAc)のメタノール溶液を得た。該溶液にメタノールを加えて調製した変性PVAcの50%メタノール溶液200gに、NaOHの10%メタノール溶液46.5gを添加してケン化を行った(NaOH/酢酸ビニル単位=0.10/1(モル比))。NaOH添加後約2分で系がゲル化した。ゲル化物を粉砕器にて粉砕し、60℃で1時間放置してケン化を更に進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するNaOHを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和したことを確認後、濾別して白色固体を得た。
白色固体にメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液し、乾燥機中70℃で2日間放置乾燥してエチレン変性ポリビニルアルコール(変性PVA)を得た。得られた変性PVAのケン化度は98.4モル%であった。また該変性PVAを灰化した後、酸に溶解して得た試料を原子吸光光度計により分析した。ナトリウムの含有量は、変性PVA100質量部に対して0.03質量部であった。
また、上記変性PVAcのメタノール溶液に、n−ヘキサンを加え、次いで、アセトンを加える沈殿−溶解操作を3回繰り返した後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製変性PVAcを得た。該変性PVAcをd6−DMSO(重水素化ジメチルスルホオキサイド)に溶解し、80℃で500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて分析したところ、エチレン単位の含有量は10モル%であった。上記の変性PVAcをケン化した後(NaOH/酢酸ビニル単位=0.5(モル比))、粉砕し、60℃で5時間放置して更にケン化を進行させた。ケン化物を3日間メタノールソックスレー抽出し、抽出物を80℃で3日間減圧乾燥を行って精製変性PVAを得た。該変性PVAの平均重合度をJIS K6726に準じて測定したところ330であった。該精製変性PVAを5000MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)により分析したところ、1,2−グリコール結合量は1.50モル%および3連鎖水酸基の含有量は83%であった。さらに該精製変性PVAの5%水溶液から厚み10μmのキャストフィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥した後に、定法により融点を測定したところ206℃であった。
実施例1
上記水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(融点240℃)を溶融複合紡糸口金(島数:25島/繊維)より吐出した。

海成分/島成分の質量比:30/70
口金温度:250℃
口金からの単孔吐出量:1.0g/分
紡糸速度3700m/分

溶融状態の海島型長繊維(極細繊維発生型長繊維)をエアジェットノズルで牽引細化しながら、かつ、吸引速度24m/secで吸引しながら90m/分で移動するネット上に平均繊度2.50dtexの海島型長繊維を捕集し長繊維ウェブを形成した。エアジェットノズル〜ネット間距離は52cmであった。
得られた長繊維ウェブを下記条件でカレンダーロールでエンボス処理(長繊維ウェブとの接触面積14%)して長繊維を融着し、目付け33g/m2の融着ウェブを得た。

エンボスロール:カレンダーロール
ロール表面温度:70℃
線圧:26.7kg/cm

得られた融着ウェブのSS曲線を図3(縦方向)と図4(横方向)に示した。図3と4のSS曲線については既に上記した。

縦方向
降伏強力:2.6kg(25.5N)
伸度100%の強力:0.63kg(6.2N)
横方向
降伏強力:0.85kg(8.3N)
伸度100%の強力:1.2kg(11.8N)

得られた融着ウェブを25℃、相対湿度84%の雰囲気下でクロスラッパーにより積み重ねて幅2.8m、12層の積重ウェブを作製し、これに針折れ防止油剤をスプレー付与した。ニードルボードを有するニードルマシンを用いて、下記条件にて積重ウェブの両面から交互に2297パンチ/cm2のパンチ密度でニードルパンチ処理し、海島型長繊維を絡合させて長繊維不織布を得た。ニードルパンチ処理による面積収縮率は10.2%であった。

バーブ数:6
針先端からバーブまでの距離:3mm
スロートデプス:0.04mm
針深度:9mm

得られた長繊維不織布は、積重した融着ウェブ両端部の長繊維も充分に絡合し、トラバーススジのない高品位のものであった。
上記長繊維不織布に水(長繊維不織布中のPVAに対し30質量%の量)を付与し、張力がかからない状態で下記条件にて熱処理を行った。

相対湿度:95%
温度:70℃
時間:3分間

この熱処理により長繊維不織布は収縮をし、見かけ密度を増大させて、緻密化された長繊維不織布を得た。この緻密化処理による面積収縮率は45%であった。次いで、緻密化された長繊維不織布を熱プレスロールでプレスし、目付け1366g/m2、見かけ密度0.70g/m2の平滑面を有する緻密化長繊維不織布を得た。
該緻密化長繊維不織布に水系ポリウレタンエマルジョン(HA−10C、日華化学株式会社製)を含浸付与し、150℃で乾燥およびキュアリングし、高分子弾性体/海島型長繊維=11/89の弾性体含有長繊維不織布を得た。
ついで、95℃の熱水中でPVAを溶解除去して海島型繊維を極細繊維の繊維束に変換し、厚み1.80mmの人工皮革基体を得た。人工皮革基体中の極細繊維の単繊度は0.1dtexであった。
得られた人工皮革基体の片面をサンドペーパーでバフィングして0.05mm研削し、スエード調人工皮革を作製した。毛羽感が緻密で均一であり品位の高いものであった。
比較例1
エアジェットノズル〜ネット間距離を38cmに変更した以外は実施例1と同様にして平均繊度2.50dtexの海島型長繊維からなる長繊維ウェブを形成した。
実施例1と同じ条件で得られた長繊維ウェブをカレンダーロールでエンボス処理して目付け33g/m2の融着ウェブを得た。得られた融着ウェブのSS曲線を図5(縦方向)と図6(横方向)に示した。

縦方向
降伏強力:2.0kg(19.6N)
伸度100%の強力:0.27kg(2.6N)
横方向
降伏強力:0.49kg(4.8N)
伸度100%の強力:0.49kg(4.8N)

図3と図5の比較から明らかなように、比較例1の融着ウェブを縦方向に変形すると、降伏点を超えた後、応力が急激に低下している。また、図4と図6の比較から明らかなように比較例1の融着ウェブを横方向に変形した場合、降伏応力が低く、また、降伏点を超えて変形しても、図4に見られるような応力の増加はみられない。図5と図6のSS曲線は、比較例1の融着ウェブにおいて長繊維の交差箇所が少ないことを示している。
得られた融着ウェブを実施例1と同様にして積み重ねて幅2.6m、12層の積重ウェブを作製し、これに針折れ防止油剤をスプレー付与し、次いで、実施例1と同様の条件でニードルパンチ処理し、海島型長繊維を絡合させて長繊維不織布を得た。
海島型長繊維の交差箇所が少ないために充分絡合せず、その結果、面積収縮率も7.0%と低かった。また、積重した融着ウェブ両端部の長繊維が充分に絡合せず、得られた長繊維不織布はトラバーススジが目立つものであった。
以下、実施例1と同様にして緻密化処理、熱プレス、高分子弾性体付与、極細化処理を行い厚み1.80mmの人工皮革基体を得た。人工皮革基体中の極細繊維の単繊度は0.1dtexであった。得られた人工皮革基体を実施例1と同様に処理してスエード調人工皮革を作製した。得られたスエード調人工皮革は毛羽感に斑があり、緻密性に欠け、トラバーススジが目立つ品位の低いものであった。

Claims (6)

  1. 下記の連続工程(1)〜(4):
    (1)紡出した極細繊維発生型長繊維をエアジェットで牽引細化して、縦方向に移動する捕集面上へ捕集して長繊維ウェブを形成する工程、
    (2)該長繊維ウェブを加熱加圧処理して極細繊維発生型長繊維を融着し、下記条件(a)と(b):
    (a)200mm/minの速度で縦方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が4.9〜49Nであり、かつ、伸度100%の強力が4.9N以上である、および
    (b)200mm/minの速度で横方向に変形させたときの融着ウェブの降伏強力が4.9〜19.6Nであり、かつ、伸度100%の強力が6.9N以上である
    を満足する融着ウェブを形成する工程、
    (3)該融着ウェブを少なくとも2層に積重して積重ウェブを形成する工程、および
    (4)該積重ウェブをニードルパンチ処理して極細繊維発生型長繊維を絡合させ、長繊維不織布を得る工程
    を含む長繊維不織布の製造方法。
  2. エアジェットノズル〜捕集面間距離40〜100cmで前記極細繊維発生型長繊維を捕集面上に捕集する請求項1に記載の製造方法。
  3. 吸引速度5〜35m/secで前記極細繊維発生型長繊維を捕集面上に捕集する請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 捕集面の移動速度が20〜150m/分である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られる長繊維不織布。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られた長繊維不織布に高分子弾性体を付与する工程および極細繊維発生型繊維を極細化する工程を含む、または、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られた長繊維不織布の極細繊維発生型繊維を極細化する工程および得られた極細化不織布に高分子弾性体を付与する工程を含む人工皮革基体の製造方法。
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