JP7359536B2 - 絡合不織布及び人工皮革 - Google Patents

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本発明は、厚み方向の絡合痕の発生が抑制された絡合不織布及び人工皮革に関する。
繊維を絡合させて形成される絡合不織布は、例えば、繊維を集合させてウェブ化し、ニードルパンチや水流絡合処理等の絡合処理を経て製造される。また、絡合不織布を含む人工皮革である場合は、絡合不織布にポリウレタンを含浸させる等の、人工皮革の製造に特有の工程がさらに付与されて製造される。絡合不織布は、工業的には、繊維原料を供給する上流から絡合不織布を回収する下流までの多数の工程を経て、数十m、数百mのような長さで連続生産されてロール状に巻かれて回収される。
絡合不織布の連続生産において、繊維を集合させてウェブ化した繊維ウェブを、例えばニードルパンチにより絡合処理する場合、多数のニードルが配列されたニードルボードを備えたニードルパンチ装置を複数台直列し、各ニードルパンチ装置で、繊維ウェブの表から裏、また裏から表にニードルを突刺することにより、繊維を厚み方向に引き連れて絡ませる。例えば、図5に示すように、絡合不織布50を形成する繊維51は、生産ラインの進行方向(y方向)や進行方向に水平方向に直交する幅方向(x方向)に多く配向するが、絡合させた部分の繊維は箇所Pに示すように、繊維51が厚み方向(z方向)に配向する。その結果、絡合不織布、または絡合不織布を用いた人工皮革の表面には、ニードルマーク等の絡合痕Mが現れることがある。絡合不織布に外観の美観が求められる用途に用いられる場合には、絡合痕は好ましくない欠点になる。そのために、連続生産ラインにおいては、検査員が下流側で絡合痕の発生の程度を目視で検査し、絡合痕の発生が著しくなった場合には、生産ライン内の各工程の生産条件を変更して改善することを試みている。しかし、絡合痕は目視では識別しにくく、常に安定して絡合痕の発生を抑制することは困難であった。
ところで、絡合不織布の絡合痕の低減を目的とするものではないが、繊維集合体の繊維の配向方向を検査したり、調整したりする技術は知られている。例えば、下記特許文献1は、含まれている繊維が密着状態にあり、第1の方向における引張強度をF1、第1の方向に直交する第2の方向における引張強度をF2とした場合に、(1)F2>F1である,(2)F1が1MPa以上である,(3)F2/F1が2以上である、の条件を全て満足する繊維配向シートを開示する。また、下記特許文献2は、不連続な炭素繊維からなるシー卜状基材にマトリックス樹脂を含浸してなる炭素繊維強化プラスチックであって、基材に含まれる長さ10mm以上の炭素繊維の割合が炭素繊維全体の60重量%以上であり、かつ、基材に含まれる炭素繊維の配向度の平均値が2~10の範囲内にある炭素繊維強化プラスチックを開示する。
また、絡合不織布を含む人工皮革の繊維の配向に関して、例えば、下記特許文献3は、平均単繊度0.5デシテックス以下の極細繊維の繊維束からなる不織布、および、その内部に含有される高分子弾性体からなる人工皮革用基材であり、(1)該不織布の厚み方向と平行な任意の断面において、厚み方向に配向した繊維束が、厚み方向に直交する線分1cmあたり75~300本の範囲で存在する、(2)該不織布の厚み方向と直交する任意の断面において、厚み方向に配向した繊維束の断面が1mm2 あたり30~800個の範囲で存在する、の条件を満足する人工皮革用基材を開示する。
特開2017-166092号公報 WO/2012/165076号パンフレット 再表2006/134966号公報
例えばニードルパンチを経て絡合不織布を製造する場合、パンチング密度を調整して絡合強度を弱めることにより、絡合痕が減少する傾向があった。しかし絡合強度を弱めた場合、絡合不織布の剥離強力も低下して機械的強度が低下するという問題があった。このように、パンチング密度を調整するだけでは、絡合痕の発生の抑制と高い剥離強力とを両立させることが難しかった。
本発明は上述した問題、具体的には、絡合不織布またはそれを用いた人工皮革において、絡合痕の発生の抑制と高い剥離強力とを両立させることを目的とする。
本発明の一局面は、スパンボンド法により得られた長繊維である繊維のウェブをニードルパンチにより絡合させた絡合不織布であって、絡合不織布をCTスキャンすることにより得られたCT画像から抽出された繊維の3Dデータから計測された、繊維の、絡合不織布の厚み方向の配向度であるz軸配向度の平均値が-0.3~-0.1であり、絡合不織布の平面方向の最も繊維が一方向に配向している方向の配向度であるy軸配向度の平均値が0.2~0.3であり、繊維同士が交絡する繊維交絡点密度が1800~2500個/mm 3 ある絡合不織布である。このような絡合不織布によれば、絡合痕の発生の抑制と高い剥離強力とを兼ね備える絡合不織布またはそれを用いた人工皮革が得られる。
また、繊維は、極細繊維化処理により極細繊維に変換される極細繊維発生型繊維であることが、絡合不織布中の極細繊維発生型繊維を極細繊維に変換することにより、風合いや充実感に優れた絡合不織布が得られる点から好ましい。
また、繊維は、極細繊維発生型繊維を極細繊維化して形成された平均繊度0.0001~0.5dtexの極細繊維であることが、風合いや充実感に優れた絡合不織布が得られる点から好ましい。
また、本発明の他の一局面は、上記何れかの絡合不織布中の空隙に高分子弾性体を含浸させてなる人工皮革である。人工皮革としては、少なくとも一面の繊維が起毛処理された立毛面を有する立毛人工皮革であることが好ましい。
本発明によれば、絡合不織布またはそれを用いた人工皮革において、絡合痕の発生の抑制と高い剥離強力とを両立させることができる。
図1は、絡合不織布の連続生産方法の一連の工程のフローを示す。 図2は、スパンボンド法を説明する説明図である 図3は、繊維の配向角と各方向(x,y、z)の座標との関係を示す図である。 図4は、CTスキャンにより得られたCT画像から抽出された繊維交絡点を示す図である。 絡合不織布の繊維の配向と絡合痕を説明する模式図である。
以下、絡合不織布またはそれを用いた人工皮革の一実施形態について詳しく説明する。本実施形態の絡合不織布は、スパンボンド法により得られた長繊維である繊維のウェブをニードルパンチにより絡合させた絡合不織布であって、絡合不織布をCTスキャンすることにより得られたCT画像から抽出された繊維の3Dデータから計測された、繊維の、絡合不織布の厚み方向の配向度である、z軸配向度の平均値が-0.3~-0.1であり、絡合不織布の平面方向の最も繊維が一方向に配向している方向(進行方向)の配向度である、y軸配向度の平均値が0.2~0.3であり、繊維同士が交絡する繊維交絡点密度が1800~2500個/mm 3 ある絡合不織布である。
はじめに、絡合不織布またはそれを用いた人工皮革の連続生産方法の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、絡合不織布またはそれを用いた人工皮革の連続生産方法の一連の工程のフローを示す。図1(a)は絡合不織布の連続生産方法の一実施形態を示す。また、図1(b)は図1(a)の絡合不織布の連続生産方法の後に、皮革様仕上工程をさらに追加した、人工皮革の連続生産方法の一実施形態を示す。図1(a)及び図1(b)中、同様の工程は同じ符号を付している。
図1(a)を参照すれば、絡合不織布の連続生産方法は、繊維を集合させて繊維ウェブを製造する第1工程(ステップ(S)201)と、繊維ウェブを絡合処理して繊維絡合体を製造する第2工程(ステップ202a,202b,202c)と、を少なくとも有する一連の工程を備える。本実施形態における、繊維ウェブを絡合処理する第2工程は、第1絡合工程(ステップ202a)と第2絡合工程(ステップ202b)と第3絡合工程(ステップ202c)の異なるタイミングで繊維ウェブを絡合処理する3つの絡合工程からなる。繊維ウェブを絡合処理する絡合工程の工程数は3つに限られず、適宜調整される。
繊維ウェブを製造する第1工程としては、例えば、図2に示すような、溶融樹脂を押出、紡糸及び延伸して形成される長繊維を、捕集ネット上に積み重ねるスパンボンド法が採用される。スパンボンド法を採用した場合、フィラメントとも呼ばれる長繊維(連続繊維)を含む絡合不織布が得られる
また、絡合不織布を形成する繊維の形態は特に限定されないが、極細繊維発生型繊維や、極細繊維発生型繊維を極細繊維化処理することにより形成される極細繊維が挙げられる。極細繊維の場合、その繊度は、具体的には、例えば、平均繊度0.5dtex以下、さらには、0.0001~0.5dtex、とくには0.001~0.2dtexであることが風合いに優れた絡合不織布やそれを用いた人工皮革が得られる点から好ましい。極細繊維発生型繊維としては、海島型複合繊維の他、剥離分割型複合繊維等を用いてもよい。また、極細繊維を直接紡糸して極細繊維の絡合体である不織布を製造してもよい。本実施形態では、代表例として極細繊維発生型繊維として海島型複合繊維を用いる場合について詳しく説明する。
例えば、絡合不織布を形成する繊維として、海島型複合繊維を極細繊維化処理することにより形成される長繊維の極細繊維を製造する場合、スパンボンド法を用い、海成分ポリマーと島成分ポリマーとを複合紡糸用口金から押出すことにより吐出された溶融状態の海島型複合繊維を冷却した後、エアジェットノズルなどの吸引装置を用いて、目的の繊度となるように高速気流(エアジェット)により牽引細化し、移動するネットなどの捕集面上にカットすることなく堆積させて長繊維ウェブを形成する。紡糸温度(口金温度)は、繊維を形成する樹脂に応じて適宜選択されるが、例えば、180~350℃が好ましい。
絡合不織布の繊維を形成するための樹脂の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,スルホイソフタル酸変性PET,ポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート樹脂等の脂肪族ポリエステル;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン10,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン6-12等のナイロン;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン等の繊維が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、島成分ポリマーとしては上述した絡合不織布の繊維を形成するための樹脂が用いられる。また、海成分ポリマーは、海島型複合繊維の紡糸後に島成分を残して除去される樹脂である。海成分ポリマーは、例えば、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等により溶解除去または分解除去される熱可塑性樹脂であって、溶融紡糸が可能な樹脂が好ましく用いられる。このような海成分を形成する樹脂の具体例としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(PVA);ポリエチレングリコール及び/又はスルホン酸アルカリ金属塩を共重合成分として含有する変性ポリエステル;ポリエチレンオキシド等が挙げられる。
スパンボンド法を用いる場合においては、エアジェットノズルと捕集面との距離や、エアジェットノズルなどの吸引装置の吸引速度、捕集面の移動速度等を調整することにより、絡合不織布を形成する繊維の配向方向を変化させることができる。エアジェットノズルと捕集面との間の距離としては、40~100cm、さらには、41~80cmであることが好ましい。また、吸引装置の吸引速度としては、5~35m/秒、さらには、10~25m/秒であることが好ましい。また、捕集面の移動速度としては20~150m/分、さらには、50~120m/分であることが好ましい。
とくに、エアジェットノズルと捕集面との間の距離及び吸引速度を上記範囲内で調整することにより、捕集面上に捕集される繊維がランダムに配向し、繊維同士が交差する点を多く発生させることができる。
本実施形態の絡合不織布の連続生産方法の例においては、第2工程として、繊維ウェブを仮絡合させる第1絡合工程(ステップ202a)、本絡合を行う第2絡合工程(ステップ202b)、表面の平滑化処理を行う第3絡合工程(ステップ202c)の3つの絡合工程により繊維ウェブの絡合処理を行う。絡合処理としては、第1工程で得られた繊維ウェブに、バーブと呼ばれる突起のついた針を突刺すことにより繊維ウェブの繊維を厚さ方向に絡ませるニードルパンチが採用される。また、第2工程中や絡合工程の前後においては、必要に応じて、平滑化したり形態安定性を付与したりするために、繊維ウェブまたは絡合不織布を加熱加圧してもよい。
例えば、ニードルパンチの場合、太さやバーブの形状等の針形状、パンチング密度、針深度により絡合不織布を形成する繊維の配向が変化する。
第1絡合工程、第2絡合工程、及び、第3絡合工程で用いられる、各ニードルパンチ機は、それぞれパンチング密度や針深度等のパンチング条件を広い範囲で設定することができる。各ニードルパンチ機の設定条件を変更した場合、最終的に得られる絡合不織布の繊維配向度が変化する。従って、第1絡合工程、第2絡合工程、及び、第3絡合工程のパンチング条件を変更することにより、最終的に得られる絡合不織布の繊維配向度を調整できる。
このようにして得られる絡合不織布の目付けは、特に限定されないが、100~1200g/m2、さらには300~1000g/m2であることがニードル工程の安定した生産性の点から好ましい。
また、絡合不織布の見かけ密度も特に限定されないが、0.05~0.5g/cm3、さらには0.10~0.4g/cm3であることが風合や剥離強力等の物性に優れる点から好ましい。
図1(b)の人工皮革の連続生産方法においては、図1(a)の絡合不織布の連続生産方法に、さらに皮革様仕上工程(ステップ203)を備える。皮革様仕上工程とは、絡合不織布を含む人工皮革等の皮革様シートを製造する場合に設けられる、絡合不織布の空隙にポリウレタン等の高分子弾性体を付与したり、表面の繊維を起毛処理したり、表面に銀面層を積層したりする工程である。
絡合不織布の空隙に付与される高分子弾性体の具体例としては、例えば、ポリウレタン,アクリロニトリルエラストマー,オレフィンエラストマー,ポリエステルエラストマー,ポリアミドエラストマー,アクリルエラストマー等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが好ましい。絡合不織布の空隙に付与される高分子弾性体は、エマルジョンに調製されていても、溶液に調製されていてもよい。また、高分子弾性体には、カーボンブラック等の顔料や染料などの着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、発泡剤、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、無機微粒子、導電剤などが配合されてもよい。
絡合不織布の空隙に付与された人工皮革中に含有される高分子弾性体の含有率は特に限定されないが、1~50質量%、さらには、10~45質量%であることが好ましい。絡合不織布の空隙に付与された高分子弾性体の含有率がこのような範囲である場合には、しなやかな風合いが得られやすくなる。
本実施形態の絡合不織布または人工皮革は、例えば、上述のようにして製造される絡合不織布または人工皮革であって、CTスキャンにより得られたCT画像から抽出された繊維の3Dデータから計測された、繊維の、絡合不織布の厚み方向の配向度の平均値zが-0.3~-0.1であり、絡合不織布の平面方向の最も繊維が一方向に配向している方向(進行方向)の配向度の平均値yが0.2~0.3であり、繊維同士が交絡する繊維交絡点密度が1800~2500個/mm 3 ある絡合不織布である。
CT(computed tomography)スキャンにより得られたCT画像は、絡合不織布に対して、多方向からX線を投射し、X線の透過データから絡合不織布の横断面を再構成して表示するCT装置を用いて得ることができる。また、CT画像から抽出された繊維の3Dデータは、再構成された絡合不織布の横断面画像を元に、汎用のコンピュータにインストールされたCT解析ソフトを用いて繊維部分の画像を2値化処理等して抽出することにより得られる。繊維の配向度は、CT解析ソフト中の繊維解析ツールを用いて実行される。CT解析ソフトとしては、例えば、CT画像に含まれる繊維等の線状の構造物の長さ、巾、配向、分散性などを3D計測できるラトックシステムエンジニアリング社製X線CT解析用ソフトウェアアプリケーションプログラム等が挙げられる。
上述のように、繊維の配向度の測定においては、はじめに測定対象となる絡合不織布をCTスキャンして、CT画像を得る。そして、CTスキャンにより得られたCT画像から繊維を抽出し、CT解析ソフトで解析し、絡合不織布を形成する繊維の配向度を測定する。
図3を参照すれば、絡合不織布に含まれる一本の繊維fの配向方向は、単位ベクトルp(P1,P2,P3)で表現される。水平方向はP1(x方向)及びP2(y方向),厚さ方向はP3(z方向)で特定される。
そして、繊維配向度は次のように定義される。絡合不織布の厚み方向をz軸、絡合不織布の平面方向の最も繊維が一方向に配向している方向(連続生産の進行方向)をy軸、z軸及びy軸に垂直な方向をx軸とする。そして、y軸、z軸またはx軸を基準軸とし、何れかの基準軸(x軸、y軸、z軸)と繊維とが3次元的になす角をαとした場合、各方向(x方向、y方向、z方向)における配向度は、(3<cos2α>-1)/2、で定義される。不織布全体の配向度は解析範囲(ROI)に含まれる繊維すべての配向度の平均値から算出され、各繊維の繊維長をLとすると <cos2α>=Σ(cos2α×L)/ (ΣL) から算出される(長さで重み付け)。
例えば、絡合不織布の平面方向の最も繊維が一方向に配向している方向の配向度であるy軸を基準とするy軸配向度を例示して説明すれば次の通りである。繊維が完全にy軸方向に配向している場合(完全配向)、y軸配向度は1.0である。また、繊維がy軸に対し90度の方向に配向している場合、y軸配向度は-0.5である。また、繊維がy軸に対し35度の方向に配向している場合、y軸配向度は0.5である。また、繊維がy軸に対し45度の方向に配向している場合、y軸配向度は0.25である。また、繊維がy軸に対し54.7度の方向に配向している場合、y軸配向度は0である。x軸及z軸についても同様である。
そして、絡合不織布における厚み方向の繊維の配向度であるz軸配向度の平均値は、-0.3~-0.1であり、好ましくは-0.3~-0.2である。z軸配向度の平均値がが-0.3より小さい場合には、厚み方向の繊維が少なくなることにより剥離強力が低下する。また、z軸配向度の平均値が、-0.1を超える場合には剥離強力は高くなるが水平方向に配向する繊維の割合が少なくなることにより、引裂強力等の機械的特性が低下する。
また、絡合不織布の平面方向の最も繊維が一方向に配向している方向(進行方向)の配向度であるy軸配向度の平均値は、0.2~0.3である。y軸配向度の平均値が0.2以上である場合には、ニードルが打たれた部分のような絡合部分が隠れやすくなり、表面に絡合痕が現れにくくなる。y軸配向度の平均値が0.2未満の場合には、表面に絡合痕が現れやすくなる。
また、絡合不織布は、CTスキャンにより得られたCT画像から抽出された繊維の3Dデータから計測された、繊維同士が交絡する繊維交絡点密度が1800~2500個/mm 3 ある。繊維交絡点は、例えば、図4に示すように3Dデータから繊維同士が接触している点(図4中、光っているように見える点)を抽出し、単位体積当たりの接触している点の密度を算出することにより得られる。繊維交絡点密度は、1800~2500個/mm3である。繊維交絡点密度は絡合が多いほど高くなる。繊維交絡点密度が1800個/mm3未満である場合には、繊維同士の摩擦抵抗が低下することにより、剥離強力が低下する。
次に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
はじめに、本実施例で用いた評価方法について、まとめて説明する。
[繊維配向度,繊維交絡点]
Bruker社製X線CT「skyscan1172」を用い、5mm四方の絡合不織布サンプルを水平面や不織布の進行方向が一定となるようにセットし、解像度1.4μm、撮影間隔0.4°、撮影電位28kvで透過像を撮像し、3次元画像を得た。そして、3次元画像を8ビットでBMP画像に変換した後、再構築した。そして、再構築された3次元データを用いて、繊維配向度を計算するソフトウエアとして、ラトックシステムエンジニアリング社製X線CT解析用ソフトウェア「TRI/3D-BON-FCS64」を用い、3Dメディアン画像処理を実施し、繊維抽出の閾値を11に設定して繊維を2値化して抽出した。そして、抽出された繊維の画像から、繊維解析ツールを用いてx軸配向度、y軸配向度、及びz軸配向度の各平均値を求めた。また、抽出された繊維の画像から、繊維解析ツールを用いて繊維交絡点密度を計測した。図4に、実施例1で得られた絡合不織布の繊維交絡点密度を測定したときの画像を示す。図4の画像中、光っているように見える点が繊維交絡点である。
[絡合不織布または人工皮革のニードルマークの評価]
絡合不織布または人工皮革の30cm×30cmのサンプルを作成し、以下の判定基準に基づいて、目視によりニードルマークの発生状態を判定した。また、各級の中間を0.5級の単位で判定した。
5級:鮮明な規則的縞模様状外観欠点が多数見える
4級:鮮明な規則的縞模様状外観欠点が所々見える
3級:やや鮮明な規則的縞模様状外観欠点が所々見える
2級:弱い規則的縞模様状外観欠点が所々見える
1級:規則的縞模様状外観欠点は見られない
[剥離強力]
絡合不織布または人工皮革から、たて15cm×よこ2.5cmの試験片を2枚切りだした。そして、2枚の試験片を、100μmのポリウレタンフィルム(NASA-600、たて10cm×よこ2.5cm)を介在させて重ね合わせた積重体を得た。なお、各試験片の両端の2.5cmの部分にはポリウレタンフィルムを重ねていない。そして、平板熱プレス機を使用して、温度130℃、面圧5kg/cm2の条件で60秒間プレスして積重体を接着させて評価用サンプルを作成した。得られた評価用サンプルを、常温で引張試験機を用い、接着されていない2.5cmの部分をそれぞれ上下のチャックに把持させ、10cm/minの引張速度でs-s曲線を測定した。s-s曲線がほぼ一定状態になった部分の中央値を平均値として、サンプル幅2.5cmで除した値を剥離強力とした。値は、試験片3個の平均値である。
[実施例1]
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂(PVA;海成分)と変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ-ト(島成分)とを、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃で溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)より単孔吐出量1.0g/minで吐出した。紡糸速度が3700m/minとなるようにエジェクター圧力を調整し、また、エアジェットノズルと捕集面との間の距離を55cmに設定し、吸引速度を20m/secに設定し、さらに、捕集面の移動速度を50m/minに設定して、平均繊度3.0デシテックスの海島型複合繊維の長繊維をネット上に捕集して繊維ウェブ(スパンボンドシート)を得た。
得られた繊維ウェブを総目付が400g/mになるようにクロスラッピングにより重ねて積重体を得、針折れ防止油剤をスプレーした。次に、バーブ数1個でニードル番手42番のニードル針、及びバーブ数6個でニードル番手42番のニードル針を用いて積重体を4189パンチ/cmでニードルパンチ処理して絡合させることにより絡合不織布を得た。なお、ニードルパンチ処理による面積収縮率は23.5%であった。また、得られた絡合不織布の目付量は520g/mであった。
そして、得られた絡合不織布について、上述の評価方法により各特性を評価した。剥離強力は9.4kg/2.5cmで、ニードルマークの評価級数は3.5級であった。
結果を表1に示す。
Figure 0007359536000001
次に、絡合不織布に7w%の水を付与し、110℃、23.5%RHの条件でスチーム処理した。そして、90~110℃のオーブン中で乾燥させた後、さらに、115℃で熱プレスすることにより、目付742g/m、比重0.43g/cm、厚み1.73mmの収縮させた絡合不織布を得た。
次に、絡合不織布に、ポリウレタン弾性体のエマルジョン(固形分18.5%)を含浸させ、湿熱加熱することにより絡合不織布の内部の空隙にポリウレタン弾性体を凝固させた。次に、ポリウレタン弾性体が付与された絡合不織布を、ニップ処理、及び高圧水流処理しながら95℃の熱水中に10分間浸漬することにより、海島型複合繊維中のPVAを溶解除去し、さらに、乾燥した。このようにして、単繊維繊度0.1dtex、目付821g/m、比重0.51g/cm、厚み1.61mmである、ポリウレタン弾性体と極細繊維の長繊維の繊維束の絡合体である絡合不織布との複合体シートを得た。
そして、複合体シートをスライスすることにより半裁した後、主面を♯240、♯320、♯600サンドペーパーを用い、裏面を♯120サンドペーパーを用い、速度3.0m/min、回転数650rpmの条件で両面を研削することにより、人工皮革の生機を得た。そして、人工皮革の生機を分散染料を用い120℃で高圧染色を行った後、乾燥した。このようにして、目付320g/m、見掛け密度0.50g/cm、厚さ0.64mmであるスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革の剥離強力は3.2kg/cmであった。また、ニードルマークの評価は3.5級であった。
[実施例2~3,比較例1~3]
実施例1において、エアジェットノズルと捕集面との間の距離、及び捕集面の移動速度を実施例1のように変更した以外は、同様にして絡合不織布及び人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
表1を参照すれば、z軸配向度の平均値が-0.3~-0.1であり、y軸配向度の平均値が0.2以上であり、繊維同士が交絡する繊維交絡点密度が1800個/mm3以上である実施例1~3で得られた絡合不織布は、何れもニードルマークの評価が3.5級以下であり、剥離強力も9.4kg/2.5cm以上であった。一方、z軸配向度の平均値が-0.3未満であり、y軸配向度の平均値が0.2未満であり、繊維交絡点密度が1800個/mm3未満である比較例1で得られた絡合不織布は、ニードルマークの評価が5級であり、剥離強力も7.8kg/2.5cm以上であった。また、z軸配向度の平均値が-0.3未満であり、繊維交絡点密度が1800個/mm3未満である比較例2で得られた絡合不織布は、ニードルマークの評価が4級であり、剥離強力も7.7kg/2.5cm以上であった。また、y軸配向度の平均値が0.2未満である比較例3で得られた絡合不織布は、ニードルマークの評価が5級であり、剥離強力も9.1kg/2.5cm以上であった。これらの結果から、z軸配向度の平均値が-0.3~-0.1であり、y軸配向度の平均値が0.2以上であり、繊維同士が交絡する繊維交絡点密度が1800個/mm3以上である絡合不織布によれば、絡合痕の発生の抑制と高い剥離強力とを両立させることができることがわかる。
50 絡合不織布
51 繊維
P 繊維51が厚み方向(z方向)に配向する箇所
M 絡合痕

Claims (5)

  1. スパンボンド法により得られた長繊維である繊維のウェブをニードルパンチにより絡合させた絡合不織布であって
    前記絡合不織布をCTスキャンすることにより得られたCT画像から抽出された前記繊維の3Dデータから計測された、
    前記繊維の、前記絡合不織布の厚み方向の配向度である、z軸配向度の平均値が-0.3~-0.1であり
    前記絡合不織布の平面方向の最も繊維が一方向に配向している方向の配向度である、y軸配向度の平均値が0.2~0.3であり、
    前記繊維同士が交絡する繊維交絡点密度が1800~2500個/mm 3 あることを特徴とする絡合不織布。
  2. 前記繊維は、極細繊維化処理により極細繊維に変換される極細繊維発生型繊維である請求項1に記載の絡合不織布。
  3. 前記繊維は、前記極細繊維発生型繊維を前記極細繊維化処理して形成された平均繊度0.0001~0.5dtexの極細繊維である請求項2に記載の絡合不織布。
  4. 請求項1~3の何れか1項に記載の絡合不織布中の空隙に高分子弾性体を含浸させてなることを特徴とする人工皮革。
  5. 少なくとも一面の繊維が起毛処理された立毛面を有する立毛人工皮革である請求項4に記載の人工皮革。
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