JP5941675B2 - 皮革様シート - Google Patents

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Description

本発明は、天然皮革調の柔軟性を有しながら、熱エンボス処理などの型押し処理をしても厚み方向に潰れにくく、かつ、良好なエンボスパターンを形成することができる皮革様シートに関する。
従来、皮革様シートに意匠性に優れた外観を与えるために熱エンボス処理(型押し処理)が行われている。樹脂の有機溶剤溶液又は有機溶剤分散液を絡合不織布に含浸し、湿式凝固により樹脂のスポンジ状ネットワーク構造を形成した皮革様シート、例えば、特許文献1に記載のようにポリウレタン樹脂のジメチルホルムアミド溶液を含浸し、湿式凝固させる工程及びエラストマーと油状物のトルエン溶液を塗布し乾燥する工程を経て得られた皮革様シートでは、熱エンボス処理しても樹脂のスポンジ状ネットワーク構造により皮革様シートが厚み方向に潰れることは少なかった。
有機溶剤を用いることは、労働環境上及び自然環境保全上好ましくなく、樹脂の水性分散液を用いることが検討されている。しかし、樹脂の水性分散液を用いた場合には、樹脂の有機溶剤溶液又は有機溶剤分散液を用いた場合と異なり、樹脂のスポンジ状ネットワーク構造が形成されにくく、得られた皮革様シートを熱エンボス処理すると厚み方向の潰れが著しかった。含浸する樹脂の量を多くすると、厚み方向の潰れは少なくなるが、皮革様シートの柔軟性、風合いが損なわれる。このため、樹脂の水性分散液を用いても、皮革様シートの柔軟性、風合いを損なうことなく、熱エンボス処理時の厚み方向への潰れを少なくする技術が求められていた。
皮革様シートに熱エンボス処理により意匠性に優れた外観を与えるためには、エンボスロールのパターンが精確に皮革様シート表面に転写されること(良好なエンボス性)が必要である。特許文献2の実施例1には、ポリウレタン樹脂のジメチルホルムアミド溶液を海島型繊維の絡合ウェブに含浸し、湿式凝固させる工程、海島型繊維の海成分をパークロロエチレンで抽出して極細繊維束に変換する工程、及びエラストマーと油状物質を含む水分散液を得られた絡合不織布に含浸し乾燥する工程を経て得られる皮革様シートが記載されている。しかし、このようにして得られた皮革様シートのエンボス性は不十分であり、より改善されたエンボス性を有する皮革様シートが求められていた。
特開2001−131880号公報 特開2004−44068号
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、天然皮革調の柔軟性を有すると共に、熱エンボス処理などの型押し処理をしても厚み方向に潰れにくく、かつ、エンボスロールのパターンが精確に転写される皮革様シートを提供することを目的とする。さらに、本発明は、従来の有機溶剤溶液及び有機溶剤溶液分散液を用いることなく、水性分散液を用いた皮革様シートの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、アクリル系樹脂及び合成ゴムを含む水性分散液を絡合不織布に含浸し、該水性分散液を固化して得られた皮革様シートが、有機溶剤溶液及び有機溶剤分散液の代わりに水性分散液を用いたにも関わらず、上記目的を達成することを見出した。
すなわち本発明は、極細繊維束からなる絡合不織布、及び、その内部に含有されたアクリル系樹脂及び合成ゴムからなり、該アクリル系樹脂及び該合成ゴムがこれらを含む水性分散液の固化物である皮革様シートに関する。
さらに本発明は
(1)海成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂である海島型繊維から長繊維ウェブを製造する工程、
(2)前記長繊維ウェブを絡合処理して絡合ウェブを製造する工程、
(3)前記水溶性ポリビニルアルコール系樹脂を水により抽出して海島型繊維を極細長繊維束に変換し、絡合不織布を製造する工程、及び
(4)前記絡合不織布にアクリル系樹脂及び合成ゴムを含有する水性分散液を含浸し、乾燥し、固化させる工程
を含む皮革様シートの製造方法に関する。
本発明の皮革様シートはアクリル系樹脂及び合成ゴムを含むので、厚さ方向に加えられる外力に対する反発性が良好である。従って、アクリル系樹脂及び合成ゴムがこれらを含む水性分散液の固化物であるにもかかわらず、熱エンボス処理時の厚み方向への潰れが少なく、また、良好なエンボス性を示す。さらに、本発明の皮革様シートの製造方法は有機溶剤溶液及び有機溶剤溶液分散液を用いないので労働環境上及び環境保護上好ましい。
本発明の皮革様シートは絡合不織布、及び、その内部に含有された、アクリル系樹脂及び合成ゴムを含む水性分散液の固化物からなる。
アクリル系樹脂としては、例えば、軟質成分、架橋形成性成分、硬質成分と前記いずれの成分にも属さないその他の成分からなる水分散性または水溶性の重合体が挙げられる。
軟質成分とは、その単独重合体のガラス転移温度(Tg)が−5℃未満、好ましくは−90℃以上で−5℃未満である成分であり、非架橋性(架橋を形成しない)であることが好ましい。軟質成分を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸誘導体などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
硬質成分とは、その単独重合体のガラス転移温度(Tg)が50℃を越え、好ましくは50℃を越えて250℃以下である成分であり、非架橋性(架橋を形成しない)であることが好ましい。硬質成分を形成するモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの誘導体;ビニルピロリドンなどの複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミドなどのビニル化合物;エチレン、プロピレンなどで代表されるα−オレフィンなどが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
架橋形成性成分とは、架橋構造を形成し得る単官能または多官能エチレン性不飽和モノマー単位、または、ポリマー鎖に導入されたエチレン性不飽和モノマー単位と反応して架橋構造を形成し得る化合物(架橋剤)である。単官能または多官能エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等などのテトラ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの多官能芳香族ビニル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸不飽和エステル類;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの2:1付加反応物、ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの2:1付加反応物、グリセリンジメタクリレートとトリレンジイソシアネートの2:1付加反応物などの分子量が1500以下のウレタンアクリレート;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類およびそれらの誘導体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸誘導体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基を有するビニル化合物;ビニルアミドなどのアミド基を有するビニル化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
架橋剤としては、例えば、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、エポキシ基含有化合物、ヒドラジン誘導体、ヒドラジド誘導体、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
アクリル系樹脂のその他の成分を形成するモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
前記アクリル系樹脂の融点は130〜240℃であるのが好ましく、130℃での熱水膨潤率は10%以上、好ましくは10〜100%である。一般に、熱水膨潤率が大きい程アクリル系樹脂は柔軟であるが、分子内の凝集力が弱い為、後の工程や製品の使用時に剥落することが多く、バインダーとしての作用が不十分になる。上記範囲内であるとこのような不都合を避けることができる。
前記アクリル系樹脂の融点は次のようにして求めた。示差走査熱量計(TA3000、メトラー社製)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で室温からポリマー種類に応じて300〜350℃まで昇温後、直ちに室温まで冷却し、再度直ちに昇温速度10℃/分で300〜350℃まで昇温したときに得られた吸熱ピーク(融点ピーク)のピークトップ温度を融点とした。
前記アクリル系樹脂の130℃での熱水膨潤率は次のようにして求めた。厚さ200μmのアクリル系樹脂フィルムを加圧下130℃で60分間熱水処理し、50℃に冷却後、ピンセットで取り出した。過剰な水をろ紙でふき取り、重量を測定した。浸漬前の重量に対する増加した重量の割合を熱水膨潤率とした。
本発明で使用する合成ゴムは、厚さ0.5mmのシートにした場合に室温で破断伸度300%以上を示し、外力を与えると容易に変形するが、除くと直ちにほぼ原形に回復する高分子物質である。合成ゴムは前記アクリル系樹脂及び任意成分である加脂剤の保持体として作用する。
合成ゴムの具体例としては、オレフィンゴム及びアクリルニトリル−ブタジエンゴムが好ましい。
オレフィンゴムとは、炭化水素鎖を主とする樹脂であり、0℃以下のガラス転移点を有するセグメントを有する。そのような例としては、例えばEPR(エチレン−プロピレンゴム)、EBR(エチレン−ブチレンゴム)、HBR(水添ブタジエンゴム)、ポリイソプレンなどが挙げられる。これら重合体の製造法は公知であり、その主要原料モノマーとして、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、オクテン等のオレフィン、イソブチレン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、ブタジエン、イソプレン、ノルボルネンなどの環状炭化水素化合物やジエン系炭化水素化合物を挙げることができる。これらのモノマーを適宜混合し、既存の重合法、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合によって重合される。最終物性、特に耐候性を高めるために水素添加を施すことも好ましく行われる。
特に、エチレンとα−オレフィンとの共重合体がオレフィンゴムとして好ましい。α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンなどが挙げられる。エチレンとα−オレフィンとの共重合は、通常Zieglar−Natta触媒やメタロセン触媒の存在下において行われる。この場合、炭素数1〜8の炭化水素基側鎖を有するユニットの含有量が主鎖を構成するエチレンユニットに対して5〜60モル%である共重合体が、アクリル系樹脂と加脂剤の保持に特に優れる点で好ましい。また、α−オレフィン以外の他のモノマーを少量共重合していてもよい。そのようなモノマーとしては、スチレン、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アクリロニトリルなどが挙げられる。オレフィンゴムの数平均分子量は特に限定されないが、10,000〜900,000が好ましい。
アクリロニトリル−ブタジエンゴムは通常アクリロニトリルとブタジエンとを乳化重合して得られる。アクリロニトリル含有量(結合アクリロニトリル)に応じて、極高ニトリル(43%以上)、高ニトリル(36〜42%)、中高ニトリル(31〜35%)、中ニトリル(25〜30%)、低ニトリル(24%以下)に分類されている。結合アクリロニトリル量の増加によって耐油性、耐磨耗性、機械的強度が向上する。アクリロニトリル−ブタジエンゴムの数平均分子量は特に限定されないが、50000〜700000が好ましい。
アクリロニトリル−ブタジエンゴムは、アクリル系樹脂と加脂剤との親和性が良く、アクリル系樹脂と後述する加脂剤の保持性に特に優れているので、特に好ましく用いられる。
本発明の皮革様シートにおいて、アクリル系樹脂の含有量は絡合不織布に対して3〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましく、3.5〜7質量%がさらに好ましい。合成ゴムの含有量は絡合不織布に対して0.3〜3質量%が好ましく、0.5〜2.5質量%がより好ましく、0.8〜2質量%がさらに好ましい。また、アクリル系樹脂と合成ゴムの質量比は2/1〜8/1が好ましく、2.5/1〜6/1がより好ましく、3/1〜5/1がさらに好ましい。アクリル系樹脂と合成ゴムの合計含有量は絡合不織布に対して1〜9質量%が好ましく、1.5〜8質量%がより好ましく、2〜7質量%にするのが特に好ましい。上記範囲内であると、熱エンボス(型押し)時に皮革様シートが厚さ方向に潰れにくく、エンボス性も良好である。特に、アクリル樹脂含量が上記範囲より少ないと、皮革様シートの比重が低くなり過ぎ、熱エンボス時に厚さ方向に潰れる。アクリル樹脂含量が上記範囲より多いと、皮革様シートの比重は十分高くなり、熱エンボス時に厚さ方向に潰れにくくなるが、皮革様シートの風合いが硬くなる。
次に、本発明の皮革様シートの製造方法の一例について詳しく説明する。
はじめに、海島型繊維を紡糸し、海島型繊維を意図的に切断することなく長繊維ウェブを製造する(工程(1))。海島型繊維は少なくとも2種類のポリマーからなる複合繊維であり、海成分ポリマーからなるマトリクス中に島成分ポリマーが分散した断面を有する。海島型繊維は、海成分ポリマーを溶剤または分解剤により抽出除去または分解除去することにより、島成分ポリマーからなる極細長繊維が複数本集まった繊維束に変換される。島成分ポリマーは海成分ポリマーとは非相溶であり、また、抽出用溶媒に対する溶解性または分解剤による分解性が異なる。
島成分ポリマーの具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂およびポリウレタン系樹脂、またはこれらの変性樹脂等が好ましく用いられる。なお、これらの中では、表面物性、風合い、および極細長繊維の融着性に優れる点から、変性ポリエステル系樹脂が、とくに、イソフタル酸変性ポリエステル系樹脂が好ましい。
島成分ポリマーは、160℃以上、特に、180〜330℃の範囲に融点ピークを有する結晶性ポリマーであることが好ましい。なお、融点ピークは、示差走査熱量計(DSC)でポリマーを融解及び固化させた後、再度定速で昇温させて融解させたときに測定される吸熱ピークのトップ温度である。
また、島成分ポリマーは、DSCではじめに定速で昇温させてポリマーを融解させたときに現れる融点ピークよりも低い吸熱ピーク(以下、副吸熱ピークとも称する)を有することがさらに好ましい。副吸熱ピークを有する場合には、島成分ポリマーの融点ピーク温度よりも低い副吸熱ピーク温度以上に昇温することにより、極細長繊維が軟化する。従って、後述する皮革様シートの表面を熱エンボスすることにより、表面を構成する極細長繊維同士のみを部分的に融着することにより繊維銀面を形成させることができる。このような島成分ポリマーから形成される極細長繊維としては、変性ポリエステル系樹脂からなる部分配向糸(Partially oriented yarn, POY)であることが副吸熱ピークの消失を防ぐ点からとくに好ましい。
島成分ポリマーの副吸熱ピーク温度は、融点ピーク温度よりも30℃以上、さらには50℃以上低いことが、風合いを損なうことなく極細長繊維同士を融着処理しやすい点から好ましい。副吸熱ピーク温度の下限は特に限定されず、例えば、融点よりも160℃以上低くてもよい。
海成分ポリマーとしては、溶剤に対する溶解性または分解剤による分解性が島成分ポリマーよりも大きいポリマーが選ばれる。また、島成分ポリマーとの親和性が小さく、かつ、紡糸条件において溶融粘度及び/又は表面張力が島成分ポリマーより小さいポリマーが海島型繊維の紡糸安定性に優れている点から好ましい。このような条件を満たす海成分ポリマーの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−プロピレン系共重合体、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−エチレン系共重合体、スチレン−アクリル系共重合体、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。これらの中では、水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(水溶性PVA)が有機溶剤を用いることなく水系媒体により溶解除去が可能であるために環境負荷が低い点から好ましい。以下、水溶性PVAを用いた場合について詳しく説明する。
水溶性PVAのケン化度は90〜99.99モル%が好ましく、93〜99.98モル%がより好ましく、94〜99.97モル%がさらに好ましく、96〜99.96モル%が特に好ましい。ケン化度が90モル%以上である場合には、熱分解やゲル化を抑制した溶融紡糸が可能であり、また、水溶性や生分解性にも優れている。また、ケン化度が99.99モル%よりも大きい水溶性PVAは工業的な生産性に劣る傾向がある。
海島型繊維の平均断面積はとくに限定されないが、30〜800μm2の範囲であることが好ましい。また、海島型繊維の断面における、海成分ポリマーと島成分ポリマーとの平均面積比は5/95〜70/30が好ましく、10/90〜30/70がより好ましい。
海島型繊維は海成分ポリマーと島成分ポリマーとを複合紡糸用口金から溶融押出する溶融紡糸により製造することができる。複合紡糸用口金の口金温度は海島型繊維を構成するポリマーのそれぞれの融点よりも高い溶融紡糸可能な温度であれば特に限定されないが、通常、180〜350℃の範囲が選ばれる。
口金から吐出された溶融状態の海島型繊維は、冷却装置により冷却され、さらに、エアジェットノズルなどの吸引装置により目的の繊度となるように1000〜6000m/分の引取速度に相当する速度の高速気流により牽引細化される。牽引細化された長繊維を移動式ネットなどの捕集面上に堆積させることにより実質的に無延伸の長繊維ウェブが得られる。なお、形態を安定化させるために、長繊維ウェブを必要に応じてプレス等により部分的に圧着してもよい。このようにして得られる長繊維ウェブの目付はとくに限定されないが、10〜1000g/m2の範囲であることが好ましい。
本発明において、長繊維とは、繊維長が通常3〜80mm程度である短繊維よりも長い繊維長を有する繊維であり、短繊維のように意図的に切断されていない繊維をいう。例えば、極細化する前の長繊維の繊維長は100mm以上が好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、物理的に切れない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。
工程(1)で得られた長繊維ウェブに絡合処理を施すことにより絡合ウェブを製造する(工程(2))。
例えば、工程(1)で得られた長繊維ウェブをクロスラッパー等を用いて複数層重ね合わせた後、その両面から同時または交互に少なくとも1つ以上のバーブが貫通する条件でニードルパンチする。
パンチング密度は、300〜5000パンチ/cm2が好ましく、500〜3500パンチ/cm2がより好ましい。パンチング密度がこの範囲であると、充分な絡合が得られ、また、ニードルによる海島型繊維の損傷を抑制することができる。
また、海島型繊維の紡糸工程から長繊維ウェブの絡合処理までのいずれかの段階において、海島型繊維に油剤や帯電防止剤を付与してもよい。さらに、必要に応じて、長繊維ウェブを70〜150℃程度の温水に浸漬する収縮処理を行うことにより、長繊維ウェブの絡合状態を予め緻密にしておいてもよい。また、ニードルパンチの後、熱プレス処理することによりさらに海島型繊維の存在密度を緻密にして絡合ウェブの形態を安定にしてもよい。ただし、後述するように、本発明においては、極細長繊維を形成する島成分ポリマーの副吸熱ピーク以上の温度で且つ融点ピーク未満の温度で熱プレスすることにより繊維銀面を形成させることが好ましいために、副吸熱ピークが消失しないような低温(例えば、130〜200℃)で熱プレスすることが好ましい。
上記の絡合処理により、海島型長繊維が三次元的に絡合した絡合ウェブが得られる。絡合ウェブの目付は、100〜2000g/m2程度であることが好ましい。また、絡合ウェブの厚さ方向に平行な断面において、海島型繊維の横断面が平均600〜4000個/mm2程度存在することが好ましい。
次に、工程(2)で得られた絡合ウェブ中の海島型繊維を極細長繊維に変換することにより、極細長繊維からなる絡合不織布を製造する(工程(3))。例えば、絡合ウェブ中の海島型繊維から海成分ポリマーを除去することにより、極細長繊維の繊維束からなる絡合不織布を製造する。
海島型繊維から海成分ポリマーを除去する方法としては、海成分ポリマーのみを選択的に溶解する溶剤または選択的に分解する分解剤で絡合ウェブを処理する従来の極細繊維形成方法が限定なく用いられる。例えば、海成分ポリマーとして水溶性PVAを用いる場合には溶剤として熱水が用いられ、海成分ポリマーとして易アルカリ分解性の変性ポリエステルを用いる場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性分解剤が用いられる。
海成分ポリマーとして水溶性PVAを用いる場合においては、水溶性PVAの除去率が95〜100質量%程度になるまで、絡合ウェブを85〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理することが好ましい。なお、ディップニップ処理を繰り返すことにより、海成分ポリマーを効率的に抽出除去できる。水溶性PVAを用いた場合には、有機溶媒を用いずに海成分ポリマーを選択的に除去することができるために、環境負荷が低く、また、揮発性有機化合物(VOC)の発生を抑制できる点から好ましい。
海島型繊維を極細長繊維に変換する前後、または極細長繊維に変換する際には、繊維の存在密度を高めるために湿熱収縮処理を行ってもよい。このような湿熱収縮処理により得られる絡合不織布の形態保持性及び機械的特性が向上する。
湿熱収縮処理は次のような条件で行うことが好ましい。例えば、絡合ウェブに海成分ポリマーの量に対して30〜200質量%程度の水分を付与した後、相対湿度が70%以上、好ましくは90%以上で、60〜130℃の加熱水蒸気雰囲気下で60〜600秒間加熱処理する。このような条件で湿熱収縮処理することにより、島成分ポリマー(長繊維形成成分)が収縮し、水蒸気で可塑化された海成分ポリマーが圧搾されるために容易に緻密化する。そして、引き続き、収縮処理された絡合ウェブを85〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理することにより海成分ポリマーが溶解除去される。海成分ポリマーの除去率を上げるために、必要に応じて、さらに80〜98℃の温水を用いて、水流速度2〜100m/分で1〜20分間水流抽出処理してもよい。
極細長繊維への変換と同時に湿熱収縮処理を行う場合は、絡合ウェブを次のような条件で処理することが好ましい。例えば、絡合ウェブを65〜90℃の熱水中に3〜300秒間浸漬する。このような処理により、海島型繊維が収縮して海成分ポリマーが圧搾される。引き続き、85〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理する。このような処理により、圧搾された海成分ポリマーが海島型繊維からさらに抽出される。海成分ポリマーの除去及び収縮により、より緻密化された絡合不織布が得られる。
上述した湿熱収縮処理により、面積収縮率が25%以上、好ましくは30〜75%になり、高密度化された絡合不織布が得られる。なお、面積収縮率は、下記式:
[(湿熱収縮処理前の面積−湿熱収縮処理後の面積)/湿熱収縮処理前の面積]×100
により計算される。
上記の処理により得られた極細長繊維の繊維束の繊度は0.5〜10dtexであることが好ましく、繊維束中の極細長繊維の本数は5〜1000本であるのが好ましく、極細長繊維の単繊維繊度は0.3dtex以下であるのが好ましく、0.001〜0.3dtexであるのがより好ましい。
絡合不織布の目付は、140〜3000g/m2が好ましく、200〜2000g/m2がより好ましい。絡合不織布の湿潤時の剥離強力は、4kg/25mm以上が好ましく、4〜15kg/25mmがより好ましい。剥離強力がこのような範囲である場合には、得られる皮革様シートの耐摩耗性、形態保持性及び充実感が良好である。
絡合不織布の湿潤時の剥離強力は下記のようにして測定した。たて15cm、幅2.7cm、厚さ4mmのゴム板の表面を240番のサンドペーパーでバフ掛けし、表面を十分に粗くした。溶剤系の接着剤(US−44)と架橋剤(ディスモジュールRE)の100:5の混合液を該ゴム板の粗面とたて(シート長さ方向)25cm、幅2.5cmの試験片の片面に12cmの長さにガラス棒で塗布し、100℃の乾燥機中で4分間乾燥した。その後、ゴム板と試験片の接着剤塗布部分同士を貼り合わせ、プレスローラーで圧着し、20℃で24時間キュアリングした。蒸留水に10分浸漬した後に、ゴム板と試験片の端をそれぞれチャックで挟み、引張試験機で引張速度50mm/分で剥離した。得られた応力−ひずみ曲線(SS曲線)の平坦部分から湿潤時の平均剥離強力を求めた。結果は、試験片3個の平均値で表した。
次いで、得られた絡合不織布に前記アクリル系樹脂及び前記合成ゴムを含有する水性分散液、好ましくは水性エマルジョンを含浸し、乾燥し、固化させる(工程(4))。水性分散液は前記アクリル系樹脂及び前記合成ゴムを水に分散させることにより調製することが出来るが、市販されているアクリル系樹脂の水性エマルジョン、合成ゴム水性のエマルジョンを用いてもよい。アクリル系樹脂を含有する水性分散液と合成ゴムを含有する水性分散液を別々に含浸してもよいが、双方を含む水性分散液を含浸させるのが、アクリル系樹脂が合成ゴムに担持された構造が得られ易く、熱エンボス時に厚み方向に潰れにくくなる。また、工程数が少なくなり生産性が向上する。
水性分散液の固形分濃度(アクリル系樹脂及び合成ゴムの合計濃度)は、10〜40質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。
水性分散液は、ディップ・ニップ、コーティング、スプレーなどの方法により絡合不織布に含浸させることが出来るが、ディップ・ニップにより含浸させるのが好ましい。水性分散液を含浸した絡合不織布を110〜150℃で0.5〜30分間加熱乾燥して水性分散液を固化させることによりアクリル系樹脂を担持した合成ゴムが絡合不織布中に分布している皮革様シートが得られる。絡合不織布の両面を加熱してもよいし、一方の面のみを加熱してもよい。両面を加熱した場合には、固化したアクリル系樹脂と合成ゴムは厚み方向に均一に分布する。一方の面のみを加熱した場合は、含浸した水性分散液が加熱される面に移行する。表面に移行したアクリル系樹脂の延展性により良好なエンボスパターンが得られるので、エンボス性が特に良好な皮革様シートを得る場合には一方の面のみを加熱するのが好ましい。
水性分散液には加脂剤を添加してもよい。加脂剤を使用することにより天然皮革に似た柔軟性としっとりしたオイル感を有する皮革様シートが得られる。加脂剤としては、例えば、牛脚油などの動物油、ヒマワリ油、ひまし油などの植物油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ソルビタンモノオレエートなどの動物油、植物油の半合成品が挙げられる。
加脂剤を使用する場合、加脂剤の含有量は絡合不織布の1〜4質量%が好ましい。加脂剤と合成ゴムの質量比(加脂剤/合成ゴム)は1/1〜20/1であるのが好ましく、1/1〜10/1であるのがより好ましく、1/1〜2/1であるのがさらに好ましい。この範囲内であると、天然皮革様の柔軟性としっとりしたオイル感が得られ、また、加脂剤が皮革様シートの表面にブリードすることもない。
本発明の効果を損なわない範囲で、水性分散液に、染料、顔料などの着色剤、抗菌剤、防臭剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥油剤、増粘剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物を配合してもよい。
本発明の皮革様シートは、必要に応じて、水分散性ポリウレタン系樹脂を含有していてもよい。しかし、過剰量の水分散性ポリウレタン系樹脂は皮革様シートの風合いを硬くし、エンボス性を低下させるので、その含有量は絡合不織布の10質量%以下にするのが好ましく、5質量%以下にするのがより好ましい。
水分散性ポリウレタン系樹脂としては、平均分子量200〜6000の高分子ポリオール、有機ポリイソシアネ−ト、及び鎖伸長剤を、所定のモル比で反応させることにより得られる各種のポリウレタン系樹脂が挙げられる。
高分子ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテル系ポリオールおよびその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオールおよびその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオールおよびその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオール等が挙げられる。また、必要に応じて、3官能アルコールや4官能アルコールなどの多官能アルコール、又は、エチレングリコール等の短鎖アルコールを併用してもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、非晶性のポリカーボネート系ポリオール、脂環式ポリカーボネート系ポリオール、直鎖状ポリカーボネート系ポリオール共重合体、及び、ポリエーテル系ポリオール等が、柔軟性と充実感のバランスにより優れた皮革様シートが得られる点から好ましい。
有機ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート等の無黄変型ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートポリウレタン等の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。また、必要に応じて、3官能イソシアネートや4官能イソシアネートなどの多官能イソシアネートを併用してもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが、機械的特性に優れることから好ましい。
鎖伸長剤としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ヒドラジン、ピペラジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンおよびその誘導体、ジエチレントリアミンなどのトリアミンの中から2種以上組み合わせて用いることが、力学性能の点から好ましい。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
水分散性ポリウレタン系樹脂は絡合ウェブの製造工程後からアクリル系樹脂と合成ゴムを含有する水性分散液を含浸し固化する工程後のいずれの段階で付与してもよい。水分散性ポリウレタン系樹脂の水分散体(固形分濃度は通常10〜40質量%)をナイフコーター、バーコーター、ロールコーター、ディッピングなどの方法により絡合ウェブ、絡合不織布に含浸させ、例えば、100〜150℃で0.5〜30分間加熱して、水分散体を固化させればよい。
本発明の皮革様シートの厚さはその用途に応じて異なるが、通常、0.8〜1.5mmが好ましく、目付は400〜1000g/m2であることが好ましい。また、絡合不織布の表面にポリウレタン等で代表される樹脂で表層を形成してもよい。
皮革様シート表面に意匠性を付与するための熱エンボスは、2〜4m/分のライン速度、エンボスロールの表面温度160〜180℃、エンボス圧2〜4kg/cm2で行うのが好ましい。このような条件で熱エンボス処理を行うと、樹脂で表層を形成した場合は、皮革様シートの厚みを潰すことなくエンボスの意匠が忠実に形成され、樹脂と繊維で表層を形成した場合は、皮革様シートの厚みを潰すことなく皮革様シート表層部の極細長繊維が軟化し密着して繊維銀面が形成される。
本発明を実施例によりより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
水溶性変性PVAを海成分、6モル%イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−ト(変性ポリエステル)を島成分として用い、海成分/島成分が25/75(質量比)となるように260℃の溶融複合紡糸用口金(島数:25島/繊維)から吐出した。紡糸速度が3700m/分となるようにエジェクター圧力(引き取り風圧)を調整し、平均繊度2.1デシテックスの海島型繊維をネット上に堆積し、スパンボンドシートを得た。
表面温度42℃の金属ロールでネット上のスパンボンドシートを軽く押さえることにより表面の毛羽立ちを抑えた。スパンボンドシートをネットから剥離し、表面温度55℃の格子柄の金属ロールとバックロールとの間で200N/mmの線圧でスパンボンドシートを熱プレスし、表層の海島型繊維が格子状に仮融着された目付31g/m2の長繊維ウェブを得た。
得られた長繊維ウェブに油剤および帯電防止剤を付与した後、クロスラッピングにより12枚重ねて総目付が372g/m2の重ね合わせウェブを作製した。針折れ防止油剤をスプレーした後、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmの6バーブ針を用い、重ね合わせウェブを針深度8.3mmで両面から交互に3300パンチ/cm2でニードルパンチすることにより絡合ウェブを得た。ニードルパンチ処理による面積収縮率は68%であった。得られた絡合ウェブの目付は530g/m2であった。
絡合ウェブを70℃の熱水中に28秒間浸漬する収縮処理を行った。次いで、95℃の熱水中でディップニップ処理を繰り返すことにより海成分ポリマー(水溶性変性PVA)を溶解除去し、平均繊度0.2デシテックスの25本の極細繊維からなる繊維束が3次元的に交絡した絡合不織布を得た。
収縮処理による面積収縮率は52%であった。また、絡合不織布の目付は760g/m2、見掛け密度は0.602g/cm3、剥離強力は13.3kg/25mmであった。
バフィングにより絡合不織布の厚みを1.25mmに調整した後、得られた絡合不織布を下記水性分散液中でパッターを用いてライン速度6m/分で2回ディップニップ処理した(ピックアップ率:60%)。
水性分散液
(a)100質量部の固形分濃度60質量%の水系アクリルエマルジョン(日華化学製カセゾールARS−2)
(b)50質量部の固形分濃度30質量%の水系ゴムエマルジョン(豊島化学製ゴムエマルジョン#1562)
(c)50質量部の固形分濃度50質量%加脂剤(豊島化学製オイルGR−50)
(d)90質量部の顔料(御国色素製SAブラック14780)
水性分散液中のアクリル系樹脂、合成ゴム、加脂剤の固形分比は60:15:25であった。
水性分散液を含浸させた絡合不織布の一方の表面に120℃の熱風を吹き付けて、水性分散液を凝固させて黒色の表層を形成し、皮革様シートを得た。アクリル系樹脂、合成ゴム、及び加脂剤の合計付着量は絡合不織布に対して8質量%であった。
得られた皮革様シートの表面をライン速度2m/分、172℃、4kg/cm2の条件で表面に凹凸を有するエンボスロールを用いて熱プレス処理した。
実施例2
アクリル系樹脂、合成ゴム、及び加脂剤の合計付着量を絡合不織布に対して6質量%に変更した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、得られた皮革様シートを実施例1と同様に熱プレス処理した。
実施例3
アクリル系樹脂、合成ゴム、及び加脂剤の合計付着量を絡合不織布に対して2質量%に変更した以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、得られた皮革様シートを実施例1と同様に熱プレス処理した。
比較例1
水性分散液中のアクリル系樹脂、合成ゴム、加脂剤の固形分比を0:80:20に変更し、合成ゴム及び加脂剤を合計で絡合不織布に対して6質量%に付着させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、得られた皮革様シートを実施例1と同様に熱プレス処理した。
比較例2
水性分散液中のアクリル系樹脂、合成ゴム、加脂剤の固形分比を0:100:0に変更し、合成ゴムのみを絡合不織布に対して6質量%付着させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、得られた皮革様シートを実施例1と同様に熱プレス処理した。
比較例3
水性分散液中のアクリル系樹脂、合成ゴム、加脂剤の固形分比を100:0:0に変更し、アクリル系樹脂のみを絡合不織布に対して6質量%付着させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、得られた皮革様シートを実施例1と同様に熱プレス処理した。
比較例4
水性分散液中のアクリル系樹脂、合成ゴム、加脂剤の固形分比を60:0:40に変更し、アクリル系樹脂と加脂剤を合計で絡合不織布に対して6質量%付着させた以外は実施例1と同様にして皮革様シートを得、得られた皮革様シートを実施例1と同様に熱プレス処理した。
皮革様シートの評価
熱プレス処理(エンボス処理)した後の皮革様シートについて下記の評価をした。各評価結果を第1表に示す。
(1)風合い
皮革様シートを用いた製品の製造に従事する者、皮革様シート製品の販売に従事する者から任意に選んだ5人により、エンボス処理後の皮革様シートの風合いを評価し、5人の評価に基づき下記のように判定した。
A:天然皮革より特に柔らかい
B:天然皮革より柔らかい
C:天然皮革並み
D:天然皮革より硬い
(2)エンボス処理による厚みの変化
上記のように、皮革様シートの表面をライン速度2m/分、172℃、4Kg/cm2の条件で表面に凹凸を有するエンボスロールを用いてエンボス処理した後の厚みの変化を測定した。エンボス処理後の厚みがエンボス処理前の厚みの60%未満である場合を「不良」、60〜80%である場合を「良好」、80%を超える場合を「極めて良好」と判定した。
(3)エンボス性
エンボス性とは、皮革様シート上に形成されたエンボスパターンの良好性の基準であり、エンボスロールのパターンが皮革様シートに転写される精度の指標である。
測定には 菱化システム社製のバートスキャンを用いた。バートスキャンは光干渉方式で表面の凹凸をナノオーダーで測定する装置である。エンボス処理した皮革様シート表面の凹凸の深さを測定し、エンボスロール表面の凹凸の深さに対する割合を求め、45%未満の場合を「不良」、45〜60%の場合を「良好」、60%を超える場合を「特に良好」と判定した。
Figure 0005941675
Figure 0005941675
本発明の皮革様シートは天然皮革調の柔軟性を有すると共に、熱エンボス処理などの型押し処理をしても厚み方向に潰れにくく、かつ、エンボスロールのパターンが精確に転写される。従って、該皮革様シートはカーインテリア・インテリア・靴・ファッション・アクセサリーなどの人工皮革製品の製造に好適である。

Claims (8)

  1. 極細繊維束からなる絡合不織布、及び、その内部に含有されたアクリル系樹脂、加脂剤及び合成ゴムからなり、該アクリル系樹脂、該加脂剤及び該合成ゴムがこれらを含む水性分散液の固化物であり、前記合成ゴムが、オレフィンゴム又はアクリロニトリル−ブタジエンゴムである、皮革様シート。
  2. 前記アクリル系樹脂の含有量が絡合不織布の3〜10質量%であり、前記合成ゴムの含有量が絡合不織布の0.3〜3質量%であり、該アクリル系樹脂と該合成ゴムの質量比が2/1〜8/1である請求項1に記載の皮革様シート。
  3. 前記加脂剤の含有量が絡合不織布の1〜4質量%であり、該加脂剤と合成ゴムの質量比が1:1〜20:1である請求項1又は2に記載の皮革様シート。
  4. 前記加脂剤が動物油、植物油、及び動物油、植物油の半合成品から選ばれる請求項1〜のいずれか1項に記載の皮革様シート。
  5. 絡合不織布の内部に水分散性ポリウレタンをさらに含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の皮革様シート。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の皮革様シートからなる銀付調皮革様シート。
  7. (1)海成分が水溶性ポリビニルアルコール系樹脂である海島型繊維から長繊維ウェブを製造する工程、
    (2)前記長繊維ウェブを絡合処理して絡合ウェブを製造する工程、
    (3)前記水溶性ポリビニルアルコール系樹脂を水により抽出して海島型繊維を極細長繊維束に変換し、絡合不織布を製造する工程、及び
    (4)前記絡合不織布にアクリル系樹脂、加脂剤、及びオレフィンゴム又はアクリロニトリル−ブタジエンゴムである合成ゴムを含有する水性分散液を含浸し、乾燥し、固化させる工程
    を含む皮革様シートの製造方法。
  8. 前記水性分散液が水性エマルジョンである請求項に記載の製造方法。
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