JP2022075626A - 立毛人工皮革及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境に配慮した水系ポリウレタンを用いた工程によって製造される立毛人工皮革であって、立毛面の色ムラの少ない外観及び高級感と、ソフトな風合いと、高い抗ピリング性とを兼ね備えた立毛人工皮革を提供する。【解決手段】厚み方向に切断された断面において、表層領域の繊維束の総数(T1)に対する、極細繊維の半数以上が水系ポリウレタンで集束されている第1の繊維束の数(A1)の割合が20~60%であり、非表層領域の繊維束の総数(T2)に対する、内部に水系ポリウレタンが浸入せずに、繊維束外周の1/4以上の長さで第2の連続領域と接着または接触している第2の繊維束の数(B2)の割合が10~40%である立毛人工皮革。【選択図】図3

Description

本発明は、スエード皮革のように繊維を立毛させた立毛面を有する立毛人工皮革に関する。
スエード皮革のような立毛面を有する立毛人工皮革は、鞄,靴,衣料,家具,カーシート,雑貨製品等の表面素材として好ましく用いられている。立毛人工皮革は、不織布等の繊維絡合体と繊維絡合体に含浸付与されたポリウレタンとを含み、少なくとも一面に繊維を立毛させた立毛面を有する。
立毛人工皮革の製造には、近年の環境負荷の低減の要望から、水系ポリウレタンが用いられることがある。しかしながら、水系ポリウレタンを用いて製造された立毛人工皮革は、従来広く用いられてきたポリウレタン有機溶剤溶液から凝固させた溶剤系ポリウレタンを用いて製造された立毛人工皮革に比べて、外観の高級感,風合いのソフト性,抗ピリング性に劣るという問題があった。
水系ポリウレタンを用いて製造される立毛人工皮革の改良については、例えば、次のような技術が知られている。
下記特許文献1は、極細繊維束から形成された絡合体および絡合体の内部に含浸付与されたポリウレタンを含む人工皮革において、ポリウレタンの一部が繊維束の内部に浸透して存在しており、ポリウレタンの浸透割合が、繊維束の長さ方向に垂直な任意の断面において、面積比で1~30%の範囲である人工皮革を開示する。特許文献1は、繊維束を形成するために除去される海島型複合繊維の海成分である水溶性ポリマー成分の溶解性を制御して、海島型複合繊維の絡合体にポリウレタン水分散液を含浸させた後の乾燥過程で、水系ポリウレタンを繊維束の内部に一部、浸透させるように製造することにより、ソフトな風合いが維持されて、かつ、繊維の素抜けが抑制される人工皮革が得られることを開示する。
また、下記特許文献2は、極細長繊維の繊維束からなる不織布、および、不織布に任意に含有されたポリウレタンからなり、少なくとも一方の表面に極細長繊維の立毛を有する立毛人工皮革であって、極細長繊維の繊維束が水溶性樹脂を含む複合長繊維から水溶性樹脂を除去することにより形成され、立毛の根元およびその近傍にはポリウレタン水分散液から得られた水系ポリウレタンが存在する、抗ピリング性に優れた立毛人工皮革を開示する。
また、下記特許文献3は、極細繊維および/または極細繊維束からなる繊維基材に、多孔構造を有するポリウレタンがバインダーとして付与されてなるシート状物であって、シート状物の厚み方向に切断された断面において、切断面内に観察されるポリウレタンのうち、独立して50μm以上の断面積を有する部分の占有比率が観察視野内の人工皮革断面の面積に対し0.1%以上5.0%以下であるシート状物を開示する。また、そのようなシート状物においては、厚み方向に切断された断面において、極細繊維および/または極細繊維束断面の外周の1%以上35%以下がポリウレタン被膜で覆われていることが開示されている。特許文献3は、このようなシート状物は、環境に配慮した製造工程によって得られ、溶剤系ポリウレタンを用いて製造された人工皮革と比べて遜色ない均一感があり、立毛面の優美な品位と良好な風合いを有することを開示する。
また、下記特許文献4は、繊維基材と多孔質の水系ポリウレタンからなるシート状物であって、水系ポリウレタンの内部に多糖類を含有し、かつ1~200μmの空孔を有するシート状物が開示されている。特許文献4は、このようなシート状物は、環境に配慮した製造工程によって得られ、水系ポリウレタンの種類によらず、優美な外観と良好な風合いを有することを開示する。
国際公開2007/099951号 特開2011-074541号公報 国際公開2015/129602号 特開2019-112742号公報
特許文献1に開示された人工皮革の製造方法によれば、海成分を除去する前の海島型複合繊維の絡合体にポリウレタン水分散液を浸透させるために、水系ポリウレタンの繊維束の内部への浸透は限定的であり、それだけで繊維の素抜けを充分に低減できる人工皮革は得られにくかった。また、厚み方向全体において、繊維束の内部に水分散ポリウレタンを浸透させるために、風合いが硬くなりやすかった。また、海成分として水溶性ポリビニルアルコールを用い、水系ポリウレタンがエーテル系ポリウレタンを含む場合には、ポリウレタン水分散液の含浸後の乾燥過程において、水系ポリウレタンが膨潤して水溶性ポリビニルアルコールと混在する。そのために、海成分を抽出除去する工程や極細繊維を染色する工程においてエーテル系ポリウレタンが脱落しやすくなり、エーテル系ポリウレタンの脱落量が変化することにより、得られる人工皮革の品質が安定しにくかった。
また、特許文献2に開示された人工皮革の製造方法によれば、不織布の表面部に連続又は不連続のポリウレタン層を形成するために、ポリウレタンが立毛面に露出しやすくなって、色ムラや毛羽立ち不足等、外観の高級感が劣りやすくなる傾向があった。
また、特許文献3に開示されたシート状物の製造方法によれば、水系ポリウレタンの粒子が凝集した小さい塊を含む、繊維束の外周と水系ポリウレタンとの接着力が低いシート状物が得られる。このようなシート状物は、繊維束に対する水系ポリウレタンの把持力が低いためにソフトな風合いを有するが、極細繊維が素抜けしやすくなるために、立毛面の品位や物性が低かった。また、凝集した水系ポリウレタンの粒子間に、例えば、直径0.5~10μm程度の空孔が多数残された不連続な凝集体になるために、ポリウレタンの含有割合が低い場合には風合いに腰が出にくかった。また、風合いに腰を出させるために、水系ポリウレタンの含有割合を高くした場合には、水系ポリウレタンが立毛面に露出しやすくなって色ムラが目立って立毛面の高級感が低くなる傾向があった。
また、特許文献4に開示されたシート状物の製造方法によれば、1~200μmの空孔を有する多孔質の水系ポリウレタンを含むために、風合いはソフトになる。しかし、繊維束に対する水系ポリウレタンの把持力が低いために、極細繊維が素抜けやすくなり、立毛面の品位や物性の低いシート状物が得られる。また、水系ポリウレタンが1~200μmの空孔を有するために、水系ポリウレタンの含有割合が低い場合には風合いの腰が出にくかった。また、風合いに腰を出させるために、水系ポリウレタンの含有割合を高くした場合には、水系ポリウレタンが立毛面に露出しやすくなって色ムラが目立って立毛面の高級感が低くなる傾向があった。
本発明は、環境に配慮した水系ポリウレタンを用いて製造される立毛人工皮革であって、立毛面の色ムラの少ない外観及び高級感と、ソフトな風合いと、高い抗ピリング性とを兼ね備えた立毛人工皮革を提供することを目的とする。
本発明の一局面は、5~75本の極細繊維からなる繊維束を含む繊維束絡合体と、繊維束絡合体に含浸付与された5~20質量%の水系ポリウレタンとを含み、少なくともその一面に、極細繊維を立毛させた立毛面を有し、厚み方向に切断された断面において、50μm以上の直線長さを有する、水系ポリウレタンの連続領域を0.04mmあたり平均1個以上含み、立毛面から厚み方向の100μmの距離にある仮想線までの領域を表層領域、表層領域を除いた裏面までの領域を非表層領域とした場合、表層領域において、表層領域の総繊維束数(T1)に対する、極細繊維の半数以上が水系ポリウレタンで集束されている第1の繊維束の数(A1)の割合(A1/T1×100)が20~60%であり、非表層領域において、非表層領域の総繊維束数(T2)に対する、極細繊維の半数以上が水系ポリウレタンで集束されている第1の繊維束の数(A2)の割合(A2/T2×100)が0~10%である、立毛人工皮革である。このような立毛人工皮革は、表層領域においては、繊維束の内部に水系ポリウレタンを多く存在させていることにより、表面に水系ポリウレタンを露出させることによる極細繊維の色との違いによる色ムラの発生を抑制しながら、表層領域の極細繊維を適度に拘束することができる。その結果、立毛面において、高い抗ピリング性と色ムラの発生の抑制とを両立させることができる。また、非表層領域においては、内部に水系ポリウレタンが極細繊維を拘束するように浸入している繊維束の割合が低いために、極細繊維が拘束されすぎない。そのために、立毛人工皮革のソフトな風合いを維持させることができる。また、50μm以上の直線長さを有する、水系ポリウレタンの連続領域を含むことにより、複数の繊維束が1つの連続領域を介して互いに拘束されやすくなるために、少ない水系ポリウレタンで適度な拘束力を維持させて極細繊維の素抜けを抑制することができる。その結果、色ムラの少ない表面外観と、ソフトな風合いと、高い抗ピリング性とを兼ね備えた立毛人工皮革が得られる。
また、立毛人工皮革は、総繊維束数(T2)に対する、内部に水系ポリウレタンが浸入せずに、繊維束外周の1/4以上の長さで連続領域と接着または接触している第2の繊維束の数(B2)の割合(B2/T2×100)が10~40%であることが好ましい。
また、連続領域は、繊維束を2個以上接着していることが、複数の繊維束が連続領域を介してより強く拘束され、極細繊維を素抜けさせにくくする点から好ましい。
また、連続領域は、水系ポリウレタンの水分散液の分散粒子の輪郭に由来する粒子界面を有さないことが、水系ポリウレタンが連続性の高い強い連続膜になるために、水系ポリウレタンが脱落したり変形したりしにくくなり、立毛面の品位や物性により優れた立毛人工皮革が得られる点から好ましい。
また、連続領域を形成する水系ポリウレタンは、熱軟化温度が170℃以上であり、90℃の熱水に対する重量膨潤率が1~8%であることが、加熱乾燥によって、上述のような連続領域を形成させやすい点から好ましい。
また、水系ポリウレタンは、高分子ジオール単位と有機ジイソシアネート単位と鎖伸長剤単位とを含み、且つ、酸基を導入されたウレタン骨格を含む、アニオン性の親水性基を有する自己乳化型ポリウレタンを含み、高分子ジオール単位は60~100モル%の、メチル分岐を有するジオール単位を50~100モル%含むポリカーボネートジオール単位を含み、有機ジイソシアネート単位は、70~100モル%の、脂環構造にメチル分岐を有さない脂環族ジイソシアネート単位及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート単位から選ばれる少なくとも1種を含む有機ジイソシアネート単位を含むことが、造膜性に優れるために連続領域を形成しやすく、海成分を抽出除去する工程や極細繊維を染色する工程等の製造工程において、脱落が起こりにくいために品質安定性に優れ、且つ、繊維束の内部に浸透して極細繊維を適度に集束しやすい点から好ましい。
また、本発明の他の一局面は、上述した立毛人工皮革の製造方法であって、海成分である水溶性PVA樹脂と島成分である非水溶性樹脂とを含む海島型複合繊維であって、島数が5~75個の海島型複合繊維の絡合体を準備する工程と、海島型複合繊維の絡合体に第1のポリウレタン水分散液を含浸させたのち、第1のポリウレタン水分散液を分散粒子が融着する温度で加熱乾燥することにより第1の水系ポリウレタンを含浸付与された繊維基材を製造する工程と、繊維基材の海島型複合繊維から水溶性PVA樹脂を除去することにより人工皮革生機を形成する工程と、人工皮革生機の少なくとも一面をバフィング処理することにより、その表層の極細繊維を起毛させて、立毛面を形成する工程と、人工皮革生機の少なくとも一面に第2のポリウレタン水分散液を付与した後、分散粒子を融着させる温度で加熱乾燥することにより第2の水系ポリウレタンを表層の繊維束の内部に付与する工程とを含み、第1のポリウレタン水分散液及び第2のポリウレタン水分散液が、分散粒子の平均分散粒子径が30~200mである第1の水系ポリウレタンのエマルジョンであって、第1の水系ポリウレタン及び第2の水系ポリウレタンは、高分子ジオール単位と有機ジイソシアネート単位と鎖伸長剤単位とを含み、且つ、酸基を導入されたウレタン骨格を含む、アニオン性の親水性基を有する自己乳化型ポリウレタンを含み、高分子ジオール単位は、60~100モル%の、メチル分岐を有するジオール単位を50~100モル%含むポリカーボネートジオール単位を含み、有機ジイソシアネート単位は、70~100モル%の、脂環構造にメチル分岐を有さない脂環族ジイソシアネート単位及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート単位から選ばれる少なくとも1種を含む有機ジイソシアネート単位を含み、熱軟化温度が170℃以上、熱水での重量膨潤率が1~8%である立毛人工皮革の製造方法であることが好ましい。このような高分子ジオールによれば、造膜性に優れ、分散粒子の輪郭による粒子界面を生じにくいために連続領域を形成しやすく、染色工程における熱水膨潤に対する耐性にも優れ、また、極細繊維への接着性にも優れることにより、連続領域を形成しやすい水系ポリウレタンが得られやすいから好ましい。
また、第2のポリウレタン水分散液に対して、ポリアクリル酸系高分子型増粘剤及びポリウレタン系会合型増粘剤から選ばれる少なくとも1種の増粘剤を0.1~8質量%添加されていることが、繊維束の内部への浸透性に優れることにより、表層の繊維束を形成する極細繊維を適度に集束しやすい点から好ましい。
また、第2のポリウレタン水分散液を付与する前の工程で、人工皮革生機に界面活性剤及び親水性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を付与する工程を含むことが、浸透性を制御して、第2のポリウレタン水分散液が適度に表層領域の繊維束の内部に適度に浸透して、色ムラの少ない外観及び高級感と、高い抗ピリング性を兼ね備えた立毛人工皮革が得られやすい点から好ましい。
また、第2のポリウレタン水分散液を立毛人工皮革生機の立毛面に0.05ml滴下したときの浸透時間が1~60秒であることが、表層領域の繊維束の内部に第2のポリウレタンが適度に浸透して、高い抗ピリング性と柔軟な風合いが両立しやすい点から好ましい。
本発明によれば、環境に配慮した水系ポリウレタンを用いた工程によって製造される立毛人工皮革において、立毛面の色ムラの少ない外観及び高級感と、ソフトな風合いと、優れた抗ピリング性とを兼ね備えた立毛人工皮革が得られる。
図1は、実施例1の立毛人工皮革を厚み方向に切断した断面の一領域の、倍率70倍の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。 図2は、実施例1の立毛人工皮革を厚み方向に切断した断面の表層付近の、倍率200倍のSEM画像である。 図3は、表層領域付近の連続領域を説明するための、実施例1の立毛人工皮革を厚み方向に切断した断面の、倍率500倍のSEM画像である。 図4は、表層領域付近の繊維束を説明するための、実施例1の立毛人工皮革を厚み方向に切断した断面の、倍率500倍のSEM画像である。 図5は、非表層領域の連続領域を説明するための、実施例1の立毛人工皮革を厚み方向に切断した断面の、倍率500倍のSEM画像である。 図6は、非表層領域の繊維束を説明するための、実施例1の立毛人工皮革を厚み方向に切断した断面の、倍率500倍のSEM画像である。 図7は、比較例1の立毛人工皮革の厚み方向に切断された断面における表層領域付近の、倍率500倍のSEM画像である。 図8は、比較例6の立毛人工皮革の厚み方向に切断された断面における非表層領域の、倍率500倍のSEM画像である。
本実施形態の立毛人工皮革は、5~75本の極細繊維からなる繊維束を含む繊維束絡合体と、繊維束絡合体に含浸付与された5~20質量%の水系ポリウレタンとを含む。そして、少なくともその一面に、極細繊維を立毛させた立毛面を有する。
繊維束絡合体は、極細繊維発生型繊維である、海成分と島成分とを含む断面を有する海島型複合繊維の絡合体から、島成分を除去することにより形成される。絡合体としては、不織布、織布、編布、またはこれらを組み合わせた絡合体が挙げられる。これらの中では、表面外観の高級感に優れる立毛人工皮革が得られる点から、不織布が好ましい。
海島型複合繊維の島に由来する繊維束を形成する極細繊維の本数は5~75本であり、7~70本、さらには9~50本であることが好ましい。繊維束を形成する極細繊維の本数が5本未満の場合には、立毛した繊維による優美な毛羽感を有する高級感のある表面外観が得られにくくなり、また、他の物品との摩擦により毛玉状のピリングができやすくなる。一方、繊維束を形成する極細繊維の本数が75本を超える場合には、染色による発色性が低下して濃色が得られにくくなり、また、極細繊維の機械的特性が低下して他の物品との摩擦により毛羽落ちしやすくなる。
極細繊維の平均繊維径としては、1~8μm、さらには1.5~6μmであることが、立毛した繊維による優美な毛羽感を有する高級感のある立毛面が得られやすく、また、ピリングも発生しにくくなり、発色性にも優れ、毛羽落ちしにくくなる点から好ましい。
なお、繊維束を形成する極細繊維の本数、極細繊維の平均繊維径及び繊維束の平均繊維束径は、立毛人工皮革の厚み方向に平行に切断された断面から万遍なく選択された15箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した500倍のSEM画像から判定できる。具体的には、各SEM画像において、繊維軸方向に対して垂直方向に切断された極細繊維の平均繊維径を計測し、万遍なく選択された15箇所の平均値として求められる。なお、繊維径及び繊維束径は同じ面積を有する円に換算したときの直径とする。
立毛人工皮革は、繊維束絡合体に含浸付与された5~20質量%の水系ポリウレタンを含む。立毛人工皮革は、水系ポリウレタンを比較的低い割合で含有することにより、立毛面に水系ポリウレタンと極細繊維との色の違いによる色ムラを現れにくくし、また、ソフトな風合いを保持させる。水系ポリウレタンの含有割合が20質量%を超える場合には、立毛面に色ムラが現れやすくなり、また、ソフトな風合いを保持しにくくなる。また、水系ポリウレタンの含有割合が5質量%未満の場合には、後述する連続領域が形成されにくくなり、極細繊維が素抜けしやすくなって抗ピリング性が低下する。
そして、立毛人工皮革は、厚み方向に切断された断面において、ポリウレタン水分散液から造膜された、50μm以上の直線長さを有する、水系ポリウレタンの連続領域を含む。水系ポリウレタンの連続領域は、水分散液中の水系ポリウレタンの分散粒子を凝集させて融着させることにより形成される。そして、後述するように、立毛人工皮革の厚み方向に切断された断面において、連続領域を0.04mmあたり平均1個以上含む。図3を参照すれば、連続領域は、同等矢印の長さで示すように、50μm以上の連続する直線長さを有する。このような連続領域には、SEMで撮影した断面の500倍のSEM画像において、分散粒子が不完全に融着したときに残される平均直径0.5~10μmの多数の空孔や分散粒子の輪郭による界面が表面に実質的に観察されないことが好ましい。具体的には、例えば、平均直径0.5~10μmの空孔が10個以上、さらには5個以上、とくには3個以上観察されないことが好ましい。また、連続領域は、水系ポリウレタンが分散粒子の輪郭による界面を有さないように充分に熱融着し、造膜していることにより、水系ポリウレタンが脱落したり変形したりしにくくなり、それにより、立毛面の品位や物性が向上する。
そして、厚み方向に切断された断面において、立毛面から厚み方向の100μmの距離にある仮想線までの領域を表層領域、表層領域を除いた裏面までの領域を非表層領域とした場合、繊維束及び水系ポリウレタンの連続領域が次のような特定の形態で存在する。
表層領域において、表層領域の総繊維束数(T1)に対する、水系ポリウレタンが繊維束の内部に浸入して繊維束を形成する極細繊維の半数以上が集束されている、第1の繊維束の数(A1)の割合が20~60%である。ここで、極細繊維が集束されているとは、繊維束を形成する複数の極細繊維が水系ポリウレタンで接着されて束になっている状態を意味する。なお、0.04mmの面積はSEMによる500倍の観察視野とほぼ一致する。
また、非表層領域において、非表層領域の総繊維束数(T2)に対する、水系ポリウレタンが繊維束の内部に浸入して繊維束を形成する極細繊維の半数以上が集束されている、第1の繊維束の数(A2)の割合が0~10%である。
本実施形態の立毛人工皮革の、後述する実施例1で得られた立毛人工皮革10を厚み方向に切断した断面を撮影したSEM画像を参照して、表層領域及び非表層領域にそれぞれ存在する、繊維束及び水系ポリウレタンの形態についてさらに詳しく説明する。
図1は、実施例1で得られた立毛人工皮革である、立毛人工皮革10を厚み方向に切断した断面の一領域の、倍率70倍のSEM画像である。また、図2は、立毛人工皮革10を厚み方向に切断した断面の表層領域付近の、倍率200倍のSEM画像である。また、図3は、表層領域付近の連続領域を説明するための、立毛人工皮革10を厚み方向に切断した断面の、倍率500倍のSEM画像である。また、図4は、表層領域付近の繊維束を説明するための、実施例1の立毛人工皮革を厚み方向に切断した断面の、倍率500倍のSEM画像である。同様に、図5は、非表層領域の連続領域を説明するための、実施例1の立毛人工皮革を厚み方向に切断した断面の、倍率500倍のSEM画像である。また、図6は、非表層領域の繊維束を説明するための、実施例1の立毛人工皮革を厚み方向に切断した断面の、倍率500倍のSEM画像である。
図1及び図2を参照すれば、立毛人工皮革10は、5~75本の極細繊維1aからなる繊維束1の繊維束絡合体と、繊維束1の繊維絡合体に付与された、連続領域を形成した水系ポリウレタン2を含む。また、図1を参照すれば、立毛人工皮革10は、表層の極細繊維を起毛させて形成された立毛面Nを有する。
立毛人工皮革10の表層付近の倍率200倍のSEM画像である図2を参照して、立毛面から厚み方向の100μmの距離にある仮想線Lまでの領域を表層領域Sと定義し、表層領域を除いた裏面までの領域を非表層領域Mと定義する。また、表層領域Sは、立毛面の立毛した極細繊維の根元に存在する繊維束の上面を結んだ曲線から100μm離れた仮想線Lまでの領域と定義される。なお、立毛面は立毛人工皮革の表面として使用される面である。また、仮想線Lは、立毛面を形成する繊維束の上面を結んだ曲線から100μmの距離を隔てた仮想の曲線である。
表層領域付近の倍率500倍のSEM画像である図3及び図4を参照して、本実施形態の立毛人工皮革の断面に観察される繊維束及び水系ポリウレタンの形態を説明する。
(A)第1の繊維束
水系ポリウレタンが繊維束の内部に浸入して、繊維束に含まれる極細繊維の半数以上が水系ポリウレタンで集束されている繊維束を第1の繊維束と定義する。図4においては、「A1」を示す円で囲まれている。
(B)第2の繊維束
繊維束に含まれる極細繊維の半数以上を集束するようには水系ポリウレタンが繊維束の内部に浸入していないが、繊維束の外周の1/4以上の長さで極細繊維が連続領域と接着または接触している繊維束を第2の繊維束と定義する。図4においては、「B1」を示す円で囲まれている。なお、繊維束が連続領域に接着または接触しているか否かは、500~1000倍で撮影したSEM画像に基づいて繊維束の外周を形成する極細繊維の表面を結んで外周を特定し、外周を形成する極細繊維が連続領域に接着または接触しているか否かによって判定される。
(C)第3の繊維束
第1の繊維束及び第2の繊維束以外の繊維束を第3の繊維束と定義する。すなわち、繊維束に含まれる極細繊維の半数以上を集束するように水系ポリウレタンが繊維束の内部に浸入しておらず、極細繊維が連続領域とそれらの外周の長さの1/4以上で接着または接触していない繊維束を第3の繊維束と定義する。図4においては、「C1」を示す円で囲まれている。
(D)水系ポリウレタンの連続領域
50μm以上の直線長さを有する、水系ポリウレタンの連続した膜の断面を水系ポリウレタンの連続領域と定義する。なお、50μm以上の直線長さを有する連続領域とは、水系ポリウレタンが途切れずに造膜して形成された連続膜の、端と端とを結んだ距離の最大直線距離が50μm以上であることを意味する。図3においては、R1、R2、R3とラベリングされている。
図3の表層領域のSEM画像においては、50μm以上の直線長さを有する、連続領域R1、R2、R3が示されている。具体的には、195μmの直線長さを有する連続領域R1と、125μmの直線長さを有する連続領域R2と、70μmの直線長さを有する連続領域R3とが観察される。この画像における連続領域の最大長さは195μmである。
連続領域は、2個以上の繊維束に接着または接触して繊維束を拘束しやすいことにより、水系ポリウレタンが繊維束に支持されて脱落しにくくなる。また、立毛人工皮革が、連続領域を含有することにより、立毛面の高級感のある品位や抗ピリング性を向上させ、腰のある風合いを保持させる。なお、連続領域は、500倍の240μm×180μm(0.04mm)のSEM画像の視野範囲に平均1個以上含まれる。
連続領域は、50μm以上、好ましくは75μm以上、さらに好ましくは100μm以上である直線長さを有する。また、上限は特に限定されないが、観察視野の範囲においては、600μm程度、さらには300μm程度であることが好ましい。水系ポリウレタンが連続領域を形成していない場合には、繊維束に対する拘束力が弱くなり、抗ピリング性の向上効果が低くなる。
また、連続領域は、空孔をほとんど残さないように分散粒子が熱融着されて造膜している。このような連続領域は、SEMで500倍の倍率で断面を観察したときに、分散粒子が不完全に融着したときに残される平均直径0.5~10μmの多数の空孔をほとんど含まず、10個以下、さらには5個以下、とくには3個以下、ことには0個の空孔を含むことが好ましい。
また、連続領域においては、分散粒子の輪郭による界面を有さないことが好ましい。このように、連続領域を形成する水系ポリウレタンが充分に熱融着されて造膜されていることにより、水系ポリウレタンが脱落したり変形したりしにくくなり、立毛面の品位や物性が向上しやすい点から好ましい。
(表層領域の形態)
図4を参照すれば、表層領域Sにおいては、第1の繊維束A1と、第2の繊維束B1と、第3の繊維束C1とが存在する。なお、繊維束とは、1本の極細繊維発生型繊維に由来する極細繊維の束と定義される。また、繊維束を構成する極細繊維が開かれて、すでにまとまった繊維束を形成していない繊維束も上述のような定義に沿って何れかの繊維束に分類される。
上述した各繊維束の分類は、図4を参照すれば、各繊維束を形成する極細繊維の本数から、繊維束の境界を確定して判定される。繊維束の境界は、500~1000倍で撮影したSEM画像に基づいて確定できる。繊維束の境界を確定しにくい場合には、繊維束を形成する極細繊維の平均本数に基づいて境界を確定できる。
そして、本実施形態の立毛人工皮革は、表層領域の繊維束の総数(T1)のうち、繊維束を形成する極細繊維の半数以上が繊維束の内部に浸入した水系ポリウレタンで集束されている第1の繊維束A1の数(A1)の割合が20~60%である。
ここで、表層領域の繊維束の総数(T1)は、表層領域に存在する第1の繊維束A1の数(A1)と第2の繊維束B1の数(B1)と第3の繊維束C1の数(C1)との合計である、(A1)+(B1)+(C1)から算出される。従って、表層領域の繊維束の総数(T1)に対する、第1の繊維束の数(A1)の割合は、(A1)/{((A1)+(B1)+(C1))}×100(%)の式から算出される。また、表層領域の繊維束の総数(T1)に対する、第2の繊維束の数(B1)の割合は、(B1)/{(A1)+(B1)+(C1))}×100(%)の式から算出される。
各繊維束の数の割合は、立毛人工皮革の厚み方向に切断された断面において、500倍の240μm×180μmの視野のSEM画像から特定された、第1の繊維束、第2の繊維束、または第3の繊維束、の数から算出される。各割合の値は、15枚のSEM画像から算出した平均値である。
具体的には、例えば、表層領域の断面のSEM画像である図4においては、表層領域Sにおける第1の繊維束A1の数(A1)は19個であり、第2の繊維束B1の数(B1)は2個であり、第3の繊維束C1の数(C1)は15個である。従って、図4から求められる、表層領域の繊維束の総数(T1)に対する、第1の繊維束A1の数(A1)の割合は、{19/(19+2+15)}×100=53%と算出される。また、表層領域の繊維束の総数(T1)に対する、第2の繊維束B1の数(B1)の割合は、{2/(19+2+15)}×100=6%と算出される。
本実施形態の立毛人工皮革は、表層領域の繊維束の総数(T1)に対する、第1の繊維束の数(A1)の割合が20~60%である。表層領域における第1の繊維束の数(A1)の割合が20%未満の場合には、極細繊維が素抜けやすくなるために抗ピリング性が低下し、60%を超える場合には、立毛面において集束された極細繊維が露出しやすくなって、ガサガサした表面タッチになりやすくなる。
そして、図3の表層領域付近のSEM画像においては、50μm以上の直線長さを有する、連続領域R1、R2、R3が現れている。そして、連続領域R1、R2、R3はそれぞれ多数の繊維束と接着、接触、または近接している。
(非表層領域の形態)
図5及び図6を参照すれば、本実施形態の立毛人工皮革は、非表層領域Mにおいては、繊維束の内部に水系ポリウレタンがほとんど浸入しておらず、繊維束を形成する極細繊維の多くが分繊している。
図6を参照すれば、非表層領域においても、極細繊維の半数以上が集束されている第1の繊維束A2と、極細繊維が分繊しているが、繊維束の外周の長さの1/4以上が連続領域と接着または接触している第2の繊維束B2と、第1の繊維束A2及び第2の繊維束B2以外の、第3の繊維束C2と、が存在する。
そして、本実施形態の立毛人工皮革は、非表層領域の繊維束の総数(T2)に対する、極細繊維の半数以上を集束するように水系ポリウレタンが繊維束の内部に浸入している第1の繊維束A2の数(A2)の割合が0~10%である。
非表層領域の繊維束の総数(T2)は、非表層領域に存在する第1の繊維束A2の数(A2)と第2の繊維束B2の数(B2)と第3の繊維束C2の数(C2)との合計である、(A2)+(B2)+(C2)から算出される。従って、非表層領域の繊維束の総数(T2)に対する、第2の繊維束の数(A2)の割合は、(A2)/{(A2)+(B2)+(C2)}×100(%)の式から算出される。また、非表層領域の繊維束の総数(T2)に対する、第2の繊維束の数(B2)の割合は、(B2)/{(A2)+(B2)+(C2))}×100(%)の式から算出される。
具体的には、例えば、非表層領域の断面のSEM画像である図6においては、第1の繊維束A2の数(A2)は3個であり、第2の繊維束B2の数(B2)は14個であり、第3の繊維束C2の数(C2)は30個である。従って、図6から求められる、非表層領域の繊維束の総数(T2)に対する、第1の繊維束A2の数(A2)の割合は、{3/(3+14+30)}×100=6%と算出される。また、非表層領域の繊維束の総数(T2)に対する、第2の繊維束B2の数(B2)の割合は、{14/(3+14+30)}×100=30%と算出される。
本実施形態の立毛人工皮革においては、非表層領域の繊維束の総数(T2)に対する、第1の繊維束の数(A2)の割合は0~10%であり、好ましくは0~8%である。非表層領域における第1の繊維束の数(A2)の割合が10%を超える場合には、風合いが固くなる。
また、非表層領域の繊維束の総数(T2)に対する、第2の繊維束の数(B2)の割合は10~40%、さらには15~35%であることが、抗ピリング性と柔軟な風合いとのバランスに優れる点からとくに好ましい。
そして、非表層領域においても、240μm×180μmに相当する0.04mmの面積の視野に、50μm以上の直線長さを有する、連続領域が平均1個以上観察される。図5のSEM画像においては、140μmの直線長さを有する連続領域R4と、70μmの直線長さを有する連続領域R5と、が確認できる。この画像における連続領域の最大長さは連続領域R4の140μmである。
そして、連続領域R4、R5はそれぞれ多数の繊維束と接着、接触、または近接している。
次に、上述した本実施形態の立毛人工皮革の製造方法について、以下に詳しく説明する。本実施形態の立毛人工皮革は、例えば、次のような工程によって製造される。
はじめに、海成分として水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(水溶性PVA)、島成分として極細繊維となる非水溶性樹脂、を含む海島型複合繊維の絡合体を製造する。そして、海島型複合繊維の絡合体に、造膜性の高い第1のポリウレタン水分散液を含浸させる。そして、第1のポリウレタン水分散液中の第1の水系ポリウレタンの分散粒子が融着する温度で加熱乾燥して造膜させることにより、第1の水系ポリウレタンが付与された繊維基材を製造する。そして、繊維基材を形成する海島型複合繊維から海成分である水溶性PVAを除去された人工皮革生機を得る。そして、人工皮革生機の少なくとも一面にバフィングにより表層の極細繊維を起毛させて、立毛面を有する立毛人工皮革生機を製造する。
そして、立毛人工皮革生機の立毛面に造膜性の高い第2のポリウレタン水分散液を付与して表層の繊維束に含浸させ、第2のポリウレタン水分散液中の第2の水系ポリウレタンの分散粒子が融着する温度で加熱乾燥することにより、第2の水系ポリウレタンを表層の繊維束に浸入させた立毛人工皮革生機を製造する。そして、必要に応じて立毛人工皮革生機を染色する等の後処理を行う。上述した工程においては、造膜性の高い第1のポリウレタン水分散液及び第2のポリウレタン水分散液として、例えば、熱軟化温度が高く、熱水膨潤性が低く、後述するような、酸基を導入されたウレタン骨格を含むようなアニオン性の親水性基を有する自己乳化型ポリウレタンが、分散粒子の輪郭による粒子界面を有さない連続領域を形成しやすい点から、好ましく用いられる。このような工程を経て、本実施形態の立毛人工皮革が得られる。以下、各工程について、詳しく説明する。
[海島型複合繊維の絡合体の製造]
海島型複合繊維の絡合体の製造について説明する。海島型複合繊維の絡合体は、極細繊維になる島成分を形成するための非水溶性樹脂と海成分を形成するための水溶性PVAとを横断面が海島構造を有するようにスパンボンド法などにより溶融紡糸する。そして、溶融紡糸された繊維をネット上に捕集してウェブを形成し、ウェブをニードルパンチ法や水流交絡法で絡合処理する。このようにして、海島型複合繊維の絡合体が製造される。
海島型複合繊維のウェブを製造する方法としては、海島型複合繊維をカットせずにネット上に捕集して長繊維のウェブを形成させる方法の他、長繊維をステープルにカットして短繊維のウェブを形成させてもよい。また、形成されたウェブには、形態安定性を付与するために融着処理が施されてもよい。また、海島型複合繊維の海成分を除去して極細繊維を形成するまでの何れかの工程において、水蒸気あるいは熱水あるいは乾熱による熱収縮処理等の繊維収縮処理を施して海島型複合繊維を緻密化させてもよい。なお、長繊維とは、紡糸後に意図的にカットされた短繊維ではない、連続的な繊維であることを意味する。極細繊維化する前の海島型複合繊維の繊維長は100mm以上であることが好ましく、技術的に製造可能であり、かつ、製造工程において不可避的に切断されない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。
極細繊維を形成するための島成分の樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),イソフタル酸変性PET,カチオン染料可染性を有するスルホイソフタル酸変性PET,ポリブチレンテレフタレート,ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル;ポリ乳酸,ポリエチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネート,ポリブチレンサクシネートアジペート,ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体等の脂肪族ポリエステル;ナイロン6,ナイロン66,ナイロン10,ナイロン11,ナイロン12,ナイロン6-12等のナイロン;ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリブテン,ポリメチルペンテン,塩素系ポリオレフィンなどのポリオレフィン;エチレン単位を25~70モル%含有する変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール;およびポリウレタン系エラストマ,ポリアミドエラストマ,ポリエステルエラストマなどのエラストマ等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ポリエステルが、染色しやすく、吸水変化が小さく、耐久性に優れる点から好ましい。また、極細繊維を形成するための樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、着色顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、熱安定剤等の各種安定剤、消臭剤、防かび剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増量剤、無機微粒子、導電剤等を含有させてもよい。
また、海成分を形成するためには水溶性PVAが用いられる。水溶性PVAは、有機溶剤を用いることなく熱水等の水系媒体により溶解除去されるために、環境負荷が低い点から好ましい。
海島型複合繊維の島数は5~75島であり、7~70島であることが好ましい。また、島成分の平均繊維径は特に限定されないが、最終的に得られる繊維束の平均繊維径を考慮して1~10μmであることが好ましい。また、極細繊維からなる繊維束を形成するための海島型複合繊維の平均繊維径は、最終的に得られる繊維束の平均繊維束径を考慮して、1~8μm、さらには、1.5~6μmであることが好ましい。
[第1の水系ポリウレタンが含浸付与された繊維基材の製造]
上述のように製造された海島型複合繊維の絡合体に造膜性、接着性、及び浸透性の高い第1のポリウレタン水分散液を含浸させ、第1のポリウレタン水分散液中の第1の水系ポリウレタンの分散粒子が融着する温度で加熱乾燥することにより、第1の水系ポリウレタンが付与された繊維基材が製造される。
水系ポリウレタンとは、水等の水系媒体に水系ポリウレタンまたはそのプレポリマーが分散された、エマルジョンやディスパージョン等のポリウレタン水分散液に由来するポリウレタンである。ポリウレタン水分散液としては、例えば、ウレタン骨格にカルボシキル基等の酸基を導入したアニオン性の親水性基、ウレタン骨格にアンモニウム基等のイオン性基を導入したカチオン性の親水性基、ウレタン骨格に非イオン性の親水性基を導入した自己乳化型ポリウレタンを含むエマルジョンまたはディスパージョン;親水性基を有しないポリウレタンを乳化剤で強制乳化した強制乳化型ポリウレタンのエマルジョン;自己乳化型ポリウレタンと強制乳化型ポリウレタンとを併用したエマルジョンまたはディスパージョンが挙げられる。これらの中では、ウレタン骨格に酸基を導入したアニオン性の親水性基を有する自己乳化型ポリウレタンのエマルジョン、親水性基を有しない強制乳化型ポリウレタンのエマルジョン、またはこれらを併用したものが分散安定性に優れる点から好ましい。また、造膜性が良好で、繊維束との接着性も高い点から、ウレタン骨格に酸基を導入したアニオン性の親水性基を有する自己乳化型ポリウレタンのエマルジョンがとくに好ましい。
また、ポリウレタン水分散液における水系ポリウレタンの分散粒子の平均分散粒子径としては、造膜性が良好で、繊維束との接着性も高く、上述したような繊維束を含む断面の構造を形成しやすい点から、10~250nm、さらには、30~200nmであることが好ましい。平均分散粒子径が大きすぎる場合には、造膜性が低下して、連続領域が形成されにくくなる傾向がある。
本実施形態の連続領域を有する水系ポリウレタンは、造膜性、接着性、染色工程における熱水膨潤に対する耐性に優れた水系ポリウレタンの水分散液を用いることが好ましい。造膜性が低かったり、接着性が低かったり、熱水膨潤しやすかったりする水系ポリウレタンの水分散液を用いた場合には、平均直径0.5~10μmの空孔が多数存在した、連続領域を有さない水系ポリウレタンが形成される。連続領域を形成しない水系ポリウレタンは、造膜性、接着性、染色工程における熱水膨潤に対する耐性が低くなる。
水系ポリウレタンは、例えば、イソシアネート基を2個有する有機ジイソシアネート化合物、高分子ジオール、鎖伸長剤及び、必要に応じて用いられる多官能性化合物や酸基含有化合物等を含むウレタン原料を反応させることにより得られる。
有機ジイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個有する化合物である。その具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート:イソホロンジイソシアネート,ノルボルネンジイソシアネート,4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン,1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;2,4-トリレンジイソシアネート,2,6-トリレンジイソシアネート,4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;イソシアヌレート型,ビウレット型,アダクト型等の3官能や4官能のイソシアネート等の分岐構造を与える多官能性化合物である、多官能イソシアネートやそのイソシアネートブロック体、等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中では、ハードセグメントの凝集による強い疑似結晶構造が形成されやすい点から、有機ジイソシアネート化合物の70~100モル%が、脂環構造にメチル分岐を有さない脂環族ジイソシアネート及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種の有機ジイソシアネート化合物を含むことが好ましい。これらの有機ジイソシアネート化合物は、熱水膨潤を抑制しやすいために連続領域を形成させやすい点から好ましい。
上述した有機ジイソシアネート化合物の中でも、とくに、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン,1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン,4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種を含む有機ジイソシアネート化合物を全ジイソシアネート成分に対して70~100モル%、さらには、80~100モル%含むことが好ましい。
また、高分子ジオールはヒドロキシ基を2個有する高分子ジオールである。その具体例としては、例えば、ポリプロピレンカーボネートジオール,ポリ(2-メチル-1,3-プロピレンカーボネート)ジオール,ポリテトラメチレンカーボネートジオール,ポリペンタメチレンカーボネートジオール,ポリヘキサメチレンカーボネートジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンカーボネート)ジオール,ポリペンタメチレンカーボネートジオール,ポリテトラメチレンカーボネートジオール,ポリオクタメチレンカーボネートジオール,ポリ(2-メチル-1,8-オクチレンカーボネート)ジオール,ポリノナメチレンカーボネートジオール,ポリデカメチレンポリカーボネートジオール,ポリドデカメチレンポリカーボネートジオール,等のポリカーボネート系ジオールまたはそれらの共重合体;ポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコール,ポリ(メチルテトラメチレングリコール)等のポリエーテル系ジオールまたはそれらの共重合体;ポリブチレンアジペートジオール,ポリブチレンセバケートジオール,ポリヘキサメチレンアジペートジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンアジペート)ジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンセバケート)ジオール,ポリカプロラクトンジオール等のポリエステル系ジオールまたはそれらの共重合体;ポリエステルカーボネートジオール等の高分子ジオールが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、例えば、極細繊維がポリエステル繊維である場合、ポリプロピレンカーボネートジオール,ポリテトラメチレンカーボネートジオール,ポリペンタメチレンカーボネートジオール,ポリヘキサメチレンカーボネートジオール,ポリ(2-メチル-1,3-プロピレンカーボネート)ジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンカーボネート)ジオール,ポリペンタメチレンカーボネートジオール,ポリテトラメチレンカーボネートジオール,ポリオクタメチレンカーボネートジオール,ポリ(2-メチル-1,8-オクチレンカーボネート)ジオール,ポリノナンメチレンカーボネートジオール,ポリノナメチレンポリカーボネートジオール,ポリデカメチレンポリカーボネートジオール,から選ばれる少なくとも1種を含む高分子ジオールであることが好ましい。
とくに、高分子ジオールの60~100モル%、さらには、70~100モル%がポリカーボネートジオールであることが好ましい。また、そのポリカーボネートジオールの50~100モル%が、メチル分岐を有するポリカーボネートジオールを含むことが好ましい。メチル分岐を有するポリカーボネートジオールとしては、ポリ(2-メチル-1,3-プロピレンカーボネート)ジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレンカーボネート)ジオール,ポリ(2-メチル-1,8-オクチレンカーボネート)ジオールが挙げられる。このような高分子ジオールによれば、造膜性に優れ、染色工程における熱水膨潤に対する耐性にも優れ、また、極細繊維への接着性にも優れることにより、連続領域を形成しやすい水系ポリウレタンが得られやすいから好ましい。
また、高分子ジオールには、ポリウレタンに自己乳化性を付与するとともに、架橋剤と反応させて自己架橋構造を形成させるための酸基含有化合物として、ポリウレタンの骨格にアニオン性の親水性基を導入するための酸基を有する低分子ジオールを併用させることが好ましい。さらに、高分子ジオールには、ポリウレタンに内部架橋構造を形成させるための分岐構造を与えるための多官能性化合物として、トリメチロールプロパン等のトリオールや、ペンタエリスリトール等のペンタオール等の多官能低分子ジオールを併用させてもよい。内部架橋構造を形成させた場合には、熱水膨潤率を低下させやすく、また、熱軟化温度を向上させやすくなる。
酸基を有する低分子ジオールの具体例としては、例えば、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸,2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸,2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン酸,2,2-ビス(ヒドロキシメチル)オクタン酸等のカルボキシル基含有ジオール;2-(2,3-ヒドロキシプロポキシ)-1-プロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有ジオール;N,N-ビス(2-ヒドロキシアルキル)スルファミン酸及びそのアルキルエーテル付加物等のスルファミン酸基含有ジオールまたはこれらの化合物の塩が挙げられる。各化合物の塩としては、例えば、アンモニウム塩,アミン塩,アルカリ金属塩等が特に限定なく用いられる。アミン塩としては、メチルアミン,エチルアミン,プロピルアミン及びオクチルアミン等の1級モノアミンの塩;ジメチルアミン,ジエチルアミン,ジブチルアミン等の2級モノアミンの塩;トリメチルアミン,トリエチルアミン,トリエタノールアミン,N-メチルジエタノールアミン,N,N-ジメチルエタノールアミン,N-メチルピペリジン,N-メチルモルホリン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン及びN-ジメチルアニリン等の3級モノアミンの塩が挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩,カリウム塩,リチウム塩が挙げられる。酸基を有する低分子ジオール化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、カルボキシル基含有ジオールが、自己乳化性や造膜性に優れ、架橋剤との反応性に優れ、とくに極細繊維がポリエステル繊維である場合には、ポリエステルを染色する高温高圧熱水条件やその後のアルカリ洗浄条件においても物性低下や形状変化が少ないために上述したような繊維束に対する接着状態や、分散粒子の輪郭に由来する粒子界面を有さない連続領域が、形成されやすくなる点から好ましい。
また、鎖伸長剤は、水酸基やアミノ基等の活性水素を有する官能基を2個有する低分子化合物である。鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン,エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,キシリレンジアミン,イソホロンジアミン,ピペラジンおよびそれらの誘導体;アジピン酸ジヒドラジド,イソフタル酸ジヒドラジド等のジアミン;ジエチレントリアミン等のトリアミン;トリエチレンテトラミン等のテトラミン;エチレングリコール,プロピレングリコール,1,4-ブタンジオール,1,6-ヘキサンジオール,1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン,1,4-シクロヘキサンジオール等のジオール;アミノエチルアルコール,アミノプロピルアルコール等のアミノアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ヒドラジン,エチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ピペラジン,イソホロンジアミン及びそれらの誘導体;ジエチレントリアミン等のトリアミンが、耐光性や機械的特性に優れ、とくに極細繊維がポリエステル繊維である場合には、ポリエステルを染色する高温高圧熱水条件やその後のアルカリ洗浄条件においても物性低下や形状変化が少ないために、上述したような繊維束に対する接着状態や連続領域が形成されやすい点から好ましい。
また、鎖伸長剤には、水系ポリウレタンに内部架橋構造を形成させるための分岐構造を与えるための多官能性化合物として、トリメチロールプロパン等のトリオール;ペンタエリスリトール等のペンタオール;ジエチレントリアミン等のトリアミン;トリエチレンテトラミン等のテトラミン等の多官能低分子ジオールを併用してもよい。内部架橋構造を形成させた場合には、熱水膨潤率を低下させやすく、また、熱軟化温度を向上させやすくなる。
また、鎖伸長剤には、分子量を調整したり、官能基の量を調整したりするために、エチルアミン,プロピルアミン,ブチルアミン等のモノアミン;4-アミノブタン酸、6-アミノヘキサン酸等のカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール,エタノール,プロパノール,ブタノール等のモノオールを併用してもよい。
また、ポリウレタンにアニオン性の親水性基を導入して自己乳化性を付与するとともに、架橋剤と反応させて自己架橋構造を形成させるために、ポリウレタン水分散液には、酸基と反応する架橋剤を配合してもよい。酸基と反応させる架橋剤としては、酸基と反応する官能基を分子内に2個有する架橋剤を用いることが好適である。このような架橋剤の具体例としては、例えば、カルボジイミド系架橋剤,エポキシ系架橋剤,オキサゾリン系架橋剤,アジリジン系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン水分散液の分散粒子の造膜性に優れ、分散粒子の輪郭に由来する粒子界面を有さない連続領域が形成されやすく、また、水系ポリウレタンと極細繊維との接着性に優れ、また、染色での脱落や変形が抑制されやすい点から、カルボジイミド系架橋剤、エポキシ系架橋剤が特に好ましい。
水系ポリウレタンの100%モジュラスとしては、1~8MPa、さらには、2~7MPaであることが連続領域を形成させやすい点から好ましい。
また、水系ポリウレタンは、熱軟化温度が170℃以上、さらには、175℃以上であることが連続領域を形成させやすい点から好ましい。水系ポリウレタンの熱軟化温度が低すぎる場合には、製造工程中の乾燥工程、水溶性PVAを除去する工程、染色工程等において受ける熱により、水系ポリウレタンが、脱落したり変形したりしやすくなる。
なお、水系ポリウレタンの熱軟化温度は、水系ポリウレタンの100~400μmの乾式フィルムを作成し、動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が1×10MPaとなる温度を測定することにより得られる。このような熱軟化温度を有する水系ポリウレタンは、上述のような好ましいモノマー組成を選択することにより得られる。
また、水系ポリウレタンは、90℃の熱水に対する重量膨潤率が、1~8%、さらには1~7%であることが、上述した熱を受ける各工程において、水系ポリウレタンが変形しにくいために、連続領域を形成させやすい点から好ましい。
本実施形態の立毛人工皮革に含まれる水系ポリウレタンは、50μm以上の直線長さを有する、連続領域を有する。このような連続領域を有する水系ポリウレタンは、多数の空孔を含む多孔質または短い非連続の水系ポリウレタンに比べて、繊維束の外周を形成する極細繊維との接着性に優れる。このような連続領域を有する水系ポリウレタンは、造膜性の高いポリウレタン水分散液を用いて形成される。
造膜性の高い、分散粒子の輪郭に由来する粒子界面を有さない連続構造を形成させやすいポリウレタン水分散液の一例としては、例えば、水系ポリウレタンの平均分散粒子径が30~200nm程度であり、水系ポリウレタンが、酸基を導入されたウレタン骨格を含むようなアニオン性の親水性基を有する自己乳化型ポリウレタンであり、ポリウレタンの高分子ジオール単位が、60~100モル%の、メチル分岐を有するジオール単位を50~100モル%含むポリカーボネートジオール単位を含み、ポリウレタンの有機ジイソシアネート単位が、70~100モル%の、脂環構造にメチル分岐を有さない脂環族ジイソシアネート単位及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート単位から選ばれる少なくとも1種の有機ジイソシアネート単位を含むような、水系ポリウレタンが挙げられる。さらには、熱軟化温度が170℃以上であり、90℃の熱水に対する重量膨潤率が1~8%である、水系ポリウレタンが挙げられる。また、例えば、最低造膜温度(MFT)が0~50℃、さらには、0~30℃程度であるような水系ポリウレタンの水分散分散液が挙げられる。MFTはASTM D2354やISO2115の方法により測定される。
ポリウレタン水分散液には、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック等の顔料や染料等の着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、防黴剤、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、発泡剤、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子化合物、無機微粒子、導電剤等を配合してもよい。
第1のポリウレタン水分散液の溶液粘度は特に限定されないが、海島型複合繊維の絡合体に浸透させやすい点から、1~10cps、さらには、2~6cpsであることが好ましい。なお、溶液粘度は、B型粘度計により20℃の条件で測定された溶液粘度である。
海島型複合繊維の絡合体に水系ポリウレタンを付与する方法としては、ディップニップ処理,ナイフコーター,バーコーター,ロールコーター等の手段により、海島型複合繊維の絡合体の内部空隙にポリウレタン水分散液を付与し、分散粒子が融着する温度で加熱乾燥させる方法が挙げられる。乾燥方法としては、50~200℃の乾燥機中で熱処理する方法、赤外線加熱の後に乾燥機で熱処理する方法、加湿雰囲気やスチームで処理した後に乾燥機で熱処理する方法、超音波加熱の後に乾燥機で熱処理する方法、またはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。
なお、海島型複合繊維の絡合体の内部空隙にポリウレタン水分散液を含浸させた後、乾燥する場合、ポリウレタン水分散液が海島型複合繊維の絡合体の表層にマイグレーションすることにより、水系ポリウレタンが不均一に付与されることがある。マイグレーションを抑制する方法としては、次のような方法が挙げられる。例えば、ポリウレタン水分散液の水系ポリウレタンの分散粒子径を調整すること;水系ポリウレタンのイオン性基の種類や量を調整すること;40~100℃程度の温度によってpHが変わるアンモニウム塩を利用し分散安定性を低下させること;1価または2価のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、ノニオン系乳化剤、会合型水溶性増粘剤、水溶性シリコーン系化合物等の会合型感熱ゲル化剤、または、水溶性ポリウレタン系化合物を併用することにより、40~100℃程度における分散安定性を低下させること、等の方法が挙げられる。また、ポリウレタン水分散液を含浸させた後の、ゲル化後、固化後、または乾燥後に、120~170℃程度で熱処理するキュア処理を行うことにより、染色工程等において、水系ポリウレタンが膨潤して脱落することを抑制できる。
これらの中では、連続領域を形成しやすい点から、カルボキシル基による自己乳化性によって、水系ポリウレタンのポリウレタン水分散液中の分散粒子径を調整し、さらに、40~100℃程度の温度によってpHが変わるアンモニウム塩を利用して分散安定性を低下させることによる方法が、繊維束に対する水系ポリウレタンの上述したような分散粒子の輪郭による粒子界面を有さない接着状態を形成させやすい点から好ましい。なお、ポリウレタン水分散液を付与した後、水、酸性水中、アルカリ性水中、または温水中に浸漬してゲル化させる方法は、連続領域が形成されにくくなる点から好ましくない。
[繊維基材中の海島型複合繊維から海成分である水溶性PVAを除去して人工皮革生機を製造する工程]
海島型複合繊維の絡合体に含まれる海成分である水溶性PVAを溶解除去することにより、極細繊維からなる繊維束の絡合体が形成される。海成分を除去する方法としては、例えば、85~100℃の熱水中で水溶性PVAが実質的に全て溶解除去されるまで、ディップニップ処理を繰り返すような方法が挙げられる。
このようにして、5~75本の極細繊維からなる繊維束を含む繊維束絡合体と、繊維束絡合体に含浸付与された5~20質量%の連続領域を有する水系ポリウレタンとを含む人工皮革生機を得る。このような人工皮革生機の見かけ密度としては、0.50~0.95g/cmであることが好ましい。また、厚さとしては、0.1~3mmであることが好ましい。
[人工皮革生機の少なくとも一面をバフィングして表層の極細繊維を立毛させて立毛面を形成する工程]
本実施形態の立毛人工皮革は、少なくともその一面に、極細繊維を立毛させたスエード調やヌバック調の立毛面を有する。このような立毛面は、人工皮革生機の表面をコンタクトバフやエメリーバフなどでバフィングすることにより形成される。バフィングは、例えば、120~600番手程度のサンドペーパーやエメリーペーパーを用いて行うことが好ましい。
[立毛人工皮革生機の立毛面の表層に第2の水系ポリウレタンを付与された立毛人工皮革生機を製造する工程]
立毛人工皮革生機の立毛面に造膜性の高い第2のポリウレタン水分散液を塗布して表層の繊維束に浸透させ、第2のポリウレタン水分散液中の第2の水系ポリウレタンの分散粒子が融着する温度で加熱乾燥することにより、第2の水系ポリウレタンを表層に付与された立毛人工皮革生機を製造する。
立毛人工皮革生機の立毛面の表層に、立毛された繊維の素抜けを抑制し、立毛面の外観品位や表面物性を向上させることを目的として、表層の極細繊維束の内部へ浸透させて、立毛の根元を拘束するように第2の水系ポリウレタンを付与することが好ましい。立毛の根元を拘束するように第2の水系ポリウレタンを付与する方法としては、例えば、立毛面側から第2のポリウレタン水分散液を塗布する方法、立毛面側から第2のポリウレタン水分散液を含浸する方法、立毛人工皮革生機の全層に第2のポリウレタン水分散液を含浸させた後、立毛面側から強く乾燥することによって、第2のポリウレタン水分散液を表層付近にマイグレーションさせる方法、等が挙げられる。
第2の水系ポリウレタンの種類は、第1の水系ポリウレタンと同じものであっても異なっていてもよい。
立毛人工皮革生機の立毛面の表層にポリウレタン水分散液を付与する場合、その付与量としては、固形分として、0.2~4.0g/m、さらには0.5~3.0g/mになるように付与することが、立毛面の外観の高級感と抗ピリング性とのバランスに優れる点から好ましい。立毛面の表層の第2の水系ポリウレタンの含有割合としては、0.1~1.0質量%、さらには0.15~0.8質量%が立毛面の外観の高級感と抗ピリング性とのバランスに優れる点から好ましい。なお、第2の水系ポリウレタンは、立毛人工皮革の厚さ方向において層を形成させることなく、繊維束の内部に浸透させて多く存在させることにより、立毛面の外観の高級感にとくに優れる立毛人工皮革が得られる。
第2の水系ポリウレタンを立毛面の表層の繊維束の内部に多く存在させるために、第2のポリウレタン水分散液に増粘剤を添加して液粘度を調整して浸透性を制御することが好ましい。
増粘剤としては、例えば、疎水性基と親水性基とを有するアクリル系,ウレタン変性ポリエーテル系,シリコーン系等の会合型増粘剤;ポリアクリル酸系,カルボキシビニルポリマー系,ポリウレタン系,アクリル系,ポリビニルアルコール系,ポリアマイド系,ポリビニルピロリドン系等の水溶性高分子化合物である高分子型増粘剤;セルロース系増粘剤;多糖類系増粘剤等が挙げられる。
増粘剤の添加量は特に限定されないが、第2のポリウレタン水分散液に対して、0.1~5質量%程度含有させることが、チキソトロピー性を発現することにより、表層に留まって繊維束の内部により浸透しやすくなる点から好ましい。
第2のポリウレタン水分散液の溶液粘度としては、5~300cps、さらには、10~200cpsであることが繊維束の内部により浸透しやすくなる点から好ましい。
また、第2の水系ポリウレタンを繊維束の内部に多く存在させるために、海島型複合繊維から水溶性PVAを除去した後に、極細繊維の表面に微量の水溶性PVAを残存させて、極細繊維の表面を親水化させることが好ましい。極細繊維の表面が親水化していることにより、第2のポリウレタン水分散液が毛細管現象によって繊維束の内部に浸透しやすくなる。立毛人工皮革生機の水溶性PVAの含有割合としては、0.05~1質量%、さらには0.1~0.4質量%であることが好ましい。
さらに、第2のポリウレタン水分散液を付与する前に、立毛人工皮革生機に界面活性剤や親水性化合物等を付与することにより浸透性を制御してもよい。このように界面活性剤や親水性化合物等を付与することにより、第2のポリウレタン水分散液が適度に表層領域の繊維束の内部に浸透して、色ムラの少ない外観及び高級感と、高い抗ピリング性を兼ね備えた立毛人工皮革が得られやすくなる。
このような親水性化合物の具体例としては、シリコーン系親水性化合物,ポリウレタン系親水性化合物,アクリル系親水性化合物,フッ素系親水性化合物,水溶性高分子化合物等が挙げられる。
アニオン性の界面活性剤としては、オクタン酸塩,デカン酸塩,ラウリル酸塩,オレイン酸塩などのカルボン酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルカンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩などのスルホン酸塩;ラウリルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアリルリン酸エステルなどのリン酸エステル;ラウリル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルフェノールスルホン酸塩などの硫酸エステル等が挙げられる。
カチオン性の界面活性剤の具体例としては、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム,塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム,水酸化テトラメチルアンモニウム,塩化テトラメチルアンモニウム,塩化テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩;モノメチルアミン塩酸塩,ジメチルアミン酢酸塩,トリメチルアミン塩酸塩などのアルキルアミン塩等が挙げられる。
ノニオン性の界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピルブロックポリマー,ポリオキシエチレンポリシロキサンブロックポリマー,ポリエチレングリコール脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
また、水系ポリウレタンを繊維束の内部に多く浸透させるために、ポリウレタン水分散液中の水系ポリウレタンの分散粒子径を調整することも好ましい。ポリウレタン水分散液の平均分散粒子径としては、10~250nm、さらには、30~200nmであることが好ましい。
第2のポリウレタン水分散液の浸透性としては、例えば、立毛人工皮革生機の立毛面に、1cmの高さから第2のポリウレタン水分散液を0.05ml滴下したときの浸透時間が、1~60秒、さらには3~60秒、とくには、5~60秒、ことには10~30秒であることが、表層領域の繊維束の内部に第2のポリウレタンが適度に浸透することにより、高い抗ピリング性と柔軟な風合いが両立しやすくなる点から好ましい。また、そのときに広がる液の直径としては、5~50mm、さらには10~20mmであることが好ましい。
以上のようにして、立毛人工皮革生機の表層の繊維束に第2のポリウレタン水分散液を浸透させて、第1の繊維束を形成させる。
[立毛人工皮革生機を染色する工程]
立毛人工皮革は、必要に応じて染色されてもよい。染色に用いられる染料の種類はとくに限定されず、その具体例としては、例えば、分散染料,酸性染料,カチオン染料,硫化染料,含金染料,またはスレン染料等が挙げられる。また、染色に用いられる染色方法は、繊維の種類や染料の種類に応じて適宜選択されるが、その具体例としては、例えば、高圧液流染色法,ジッガー染色法,サーモゾル連続染色法,ウインス染色法等が挙げられる。
[後処理する工程]
立毛人工皮革には、さらに風合いを調整するために柔軟性を付与する収縮加工処理や揉み柔軟化処理が施されたり、逆シールのブラッシング処理,防汚処理,親水化処理,滑剤処理,柔軟剤処理,酸化防止剤処理,紫外線吸収剤処理,蛍光剤処理,難燃処理等の仕上げ処理が施されたりしてもよい。
このようにして本実施形態の立毛人工皮革が得られる。本実施形態の立毛人工皮革は、環境に配慮した工程によって製造される立毛人工皮革であって、立毛面の色ムラの少ない外観及び高級感、ソフトな風合いと、高い抗ピリング性とを兼ね備えた立毛人工皮革になる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
はじめに、本実施例で用いた立毛人工皮革の評価方法を以下にまとめて説明する。
(平均繊維径、平均繊維束径、各繊維束の分類、水系ポリウレタンの連続領域の特定、及び各繊維束の割合の算出)
立毛人工皮革の厚み方向に平行に切断された断面において、走査型電子顕微鏡(SEM)で全体が含まれる200倍で撮影した。また、立毛面から厚み方向の100μmの距離にある仮想線Lまでの表層領域を含む付近において、万遍なく選択された15箇所を、SEMで、500倍で撮影した。さらに、その仮想線から裏面までの領域である非表層領域において、万遍なく選択された15箇所を、SEMで、500倍で拡大撮影した。
そして、表層領域の500倍の各SEM画像、及び、非表層領域の500倍の各SEM画像において、繊維束を形成する極細繊維の本数に基づいて、繊維束の境界を確定した。そして、繊維軸方向に対して垂直方向に切断された極細繊維の繊維径を計測した。また、繊維軸方向に対して垂直方向に切断された繊維束の繊維束径を計測した。そして、15箇所の平均値として、極細繊維の平均繊維径または繊維束の平均繊維束径を算出した。なお、繊維径及び繊維束径は同じ面積を有する円に換算したときの直径とした。
また、500倍の240μm×180μm(0.043mm)の視野の各SEM画像において、繊維束を形成する極細繊維の半数以上の本数を集束するように水系ポリウレタンが繊維束の内部に浸入している繊維束を第1の繊維束Aと判定した。また、繊維束に含まれる極細繊維の半数以上を集束するように水系ポリウレタンが繊維束の内部に浸入していないが、繊維束の外周の1/4以上の長さで連続領域と接着または接触している繊維束を第2の繊維束Bと判定した。また、極細繊維が水系ポリウレタンと接着及び接触していない繊維束を第3の繊維束Cと判定した。なお、繊維束内で極細繊維同士が接着されているときは、水系ポリウレタンが繊維束内に侵入して接着されていると判定した。また、500倍のSEM画像で判定できない場合には、さらに600~1000倍に拡大して確認した。
また、連続領域の有無は、240μm×180μmの視野の500倍の各SEM画像において、直径0.5~10μmの範囲の空孔を5個以上含まないで造膜している領域を識別し、各領域のうち、50μm以上の直線長さを有する領域を連続領域と判定した。さらに、連続領域に分散粒子の輪郭による粒子界面が認識できるか否かを確認した。また、連続領域が繊維束を2個以上接着または接触させているか否かを判定した。
図1は、実施例1で得られた立毛人工皮革の200倍のSEM画像の一例である。また、図4は、実施例1で得られた立毛人工皮革の表層領域Sを含む範囲のSEM画像に観察される繊維束の種類を判定したときの画像である。また、図6は、実施例1で得られた立毛人工皮革の非表層領域Mを含む範囲のSEM画像に観察される繊維束の種類を判定したときの画像である。図4においては、第1の繊維束はA1、第2の繊維束はB1、第3の繊維束はC1、とラベリングされている。図6においては、第1の繊維束はA2、第2の繊維束はB2、第3の繊維束はC2、とラベリングされている。
そして、500倍の各SEM画像について、第1の繊維束、第2の繊維束、第3の繊維束の数を計数した。そして、計数された、表層領域Sの第1の繊維束A1の数の平均を(A1)、第2の繊維束B1の数の平均を(B1)、第3の繊維束C1の数の平均を(C1)としたとき、以下の式により、割合を求めた。
・表層領域Sにおける繊維束の数の総数(T1)に対する、第1の繊維束の数(A1)の割合=(A1)/{(A1)+(B1)+(C1)}×100(%)
また、計数された、非表層領域Mの第1の繊維束A2の数の平均を(A2)、第2の繊維束B2の数の平均を(B2)、第3の繊維束C2の数の平均を(C2)としたとき、以下の式により、割合を求めた。
・非表層領域Mにおける繊維束の数の総数(T2)に対する、第1の繊維束の数(A2)の割合(%)=(A2)/{(A2)+(B2)+(C2)}×100(%)
・非表層領域Mにおける繊維束の数の総数(T2)に対する、第2の繊維束の数(B2)の割合(%)=(B2)/{(A2)+(B2)+(C2)}×100(%)
そして、15枚の画像から求めた、表層領域Sにおける繊維束の数の総数(T1)に対する、第1の繊維束の数(A1)の割合、非表層領域Mにおける繊維束の数の総数(T2)に対する、第1の繊維束の数(A2)の割合、非表層領域Mにおける繊維束の数の総数(T2)に対する、第2の繊維束の数(B2)の各割合を平均した。
(水系ポリウレタンの含有割合)
立毛人工皮革の製造時に、水系ポリウレタンを含浸付与された海島型複合繊維の絡合体が、海島型複合繊維中のPVAの除去工程以降の各工程を経る際の、水系ポリウレタンの脱落による重量変化をトレースすることにより、脱落した水系ポリウレタンの総重量を算出した。そして、製造時に海島型複合繊維の絡合体に付与された水系ポリウレタンの重量から脱落した水系ポリウレタンの総重量を減じることにより、立毛人工皮革中に残留した水系ポリウレタンの重量を求めた。そして、残留した水系ポリウレタンの重量に基づいて、得られた立毛人工皮革中の水系ポリウレタンの含有割合を算出した。なお、脱落する水系ポリウレタンの重量に比べて、除去せずに残留させたPVAの重量、及び各工程において脱落する極細繊維の重量ははるかに小さいために、それらは無視して計算した。
なお、立毛人工皮革の水系ポリウレタンの含有割合を求める方法としては、次のような方法から求めてもよい。立毛人工皮革の厚さ方向に平行な断面の部分を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、倍率500倍で平均的な箇所を3枚撮影し、それぞれの画像をA4サイズの用紙に印刷する。そして、印刷された用紙をOHP(Overhead projector)シート等の透明シートに重ね、透明シートに水系ポリウレタン部位を黒塗りして転写する。極細繊維部位についても、水系ポリウレタンを転写した方法と同様に転写する。そして、水系ポリウレタン部位を黒塗りした透明シート、及び極細繊維部位を黒塗りした透明シートの模様を別々にスキャナーで取り込んで画像を形成する。そして画像処理装置で、得られた画像から面積10ドット以下のノイズを除去した後、水系ポリウレタンの総面積、並びに、極細繊維の総面積を求める。そして、水系ポリウレタンの総面積から水系ポリウレタンのポリマー密度を除した値(α)、並びに、極細繊維の総面積から極細繊維を構成するポリマー密度を除した値(β)を求め、(α)/((α)+(β))×100、により、水系ポリウレタンの含有割合を算出する。画像処理装置は、コンピュータに画像処理ソフトをインストールして構成されるものが用いられる。画像処理ソフトの具体例としては、例えば、Media Cybernetics社のimage-pro plusが挙げられる。
(水系ポリウレタンの熱軟化温度)
水系ポリウレタンの水分散液を風乾して厚み250μmのフィルムを作成した。そして、フィルムを120℃で30分間熱処理した。そして、冷却後、フィルムから4×0.5cmの試験片を切り出した。そして、動的粘弾性測定装置(レオロジー社製DVE-V4FTレオスペクトラー)に試験片をセットし、測定開始温度:-120℃、測定モード:引張、昇温速度:3℃/分、周波数:11Hzの条件で貯蔵弾性率を測定した。そして、貯蔵弾性率が1×10MPaとなる温度を熱軟化温度(℃)とした。
(水系ポリウレタンの熱水膨潤率)
水系ポリウレタンの水分散液を風乾して厚み250μmのフィルムを作成した。そして、フィルムを120℃で30分間熱処理した。そして、冷却後、5×10cmの試験片を切り出し、23℃50%RHの雰囲気に24時間放置して状態調整した。そして、試験片の重量を測定した。そして、90℃の熱水に試験片を浸漬し、60分間保持した後、熱水を60℃まで降温させた。そして、水中から試験片を取り出した。そして、試験片の表面に付いた水を拭き取った直後に試験片の重量を測定した。そして、下記式により、水系ポリウレタンの熱水膨潤率(%)を算出した。
・水系ポリウレタンの熱水膨潤率(%)=((熱水浸漬後重量-熱水浸漬前重量))/(熱水浸漬前重量)×100
(立毛人工皮革生機の立毛面における、第2のポリウレタン水分散液の浸透時間)
立毛人工皮革生機の立毛面に、1cmの高さから第2のポリウレタン水分散液を0.05ml滴下したときの浸透時間(秒)を測定した。5回繰り返して測定し、その平均値を浸透時間(秒)とした。
(人工皮革生機の水溶性PVAの含有割合)
人工皮革生機から、20×20cmの試験片を切りだした。そして、25℃、60%RHに12時間放置した後の重量(a)を測定した。そして、試験片を95℃の熱水中に60分間浸漬した後、100℃で30分間乾燥し、25℃、60%RHに12時間放置した後の重量(b)を測定した。処理前後の重量から、水溶性PVAの含有割合(%)=((a)-(b))/(a)×100を算出した。
(立毛面の触感及び外観)
立毛人工皮革から20cm×20cmの試験片を切りだした。そして、試験片の立毛面の触感及び外観を以下の基準で判定した。
A:さらっとした触感であり、高級感のある優美な外観であった。また、色ムラがなかった。
B:極細繊維が集束してザラザラとした触感であるか、または、外観に色ムラが有った。
C:発色性が低かった
(風合い)
立毛人工皮革から20cm×20cmの試験片を切りだした。そして、試験片の風合いを以下の基準で判定した。
A:ソフトな風合いであった。
B:硬い風合いであった。
C:腰が無くボキボキした折れが生じた。
(抗ピリング性)
ISO12947-2法に準拠し、押圧荷重:12kPa、摩擦布:毛摩擦布、立毛人工皮革:直径38mm、回数2000回の条件で、マーチンデール試験機を用いて、抗ピリング性を測定した。そして、ISO12945-2法の以下のピリング判定基準に基づいて判定した。
5級:変化無し。
4級:綺麗な毛羽立ちであるが、極一部に小さなピリングがあった。
3級:小さなピリングが部分的にあった。
2級:大部分に明らかなピリングがあった。
1級:全体がピリングになりピリングが密集していた。
[実施例1]
海成分として水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(PVA)、島成分として変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート(IPA変性PET)を準備した。そして、海成分及び島成分を、口金温度260℃に設定された、海成分樹脂中に均一な断面積の島成分が25個分布した断面を形成するノズル孔が並列状に配置された複合紡糸用口金に供給し、溶融ストランドをノズル孔から吐出させた。このとき、海成分と島成分との質量比率が海成分/島成分=25/75となるように圧力調整しながら供給した。
そして、溶融ストランドを平均紡糸速度が3700m/分となるように吸引装置で吸引することにより延伸させて、繊度が2.9dtexの海島型複合繊維を紡糸した。海島型複合繊維は、可動型のネット上に連続的に堆積され、表面の毛羽立ちを抑えるために42℃の金属ロールで軽く圧さえられた。そして、海島型複合繊維をネットから剥離し、表面温度55℃、線圧200N/mmで格子柄の金属ロールとバックロールとの間を通過させた。このようにして、目付32g/mのウェブを製造した。
次に、ウェブをクロスラッパー装置で総目付380g/mになるように12層に重ねた積重ウェブを作成し、針折れ防止油剤をスプレーした。そして、針先端から第1バーブまでの距離が3.2mmである6バーブ針を用いて、積重ウェブを針深度8.3mmで両面から交互に3300パンチ/cmでニードルパンチすることにより、目付500g/mの海島型複合繊維の絡合体を製造した。そして、温度70℃、湿度50%RH、30秒間の条件で海島型複合繊維の絡合体に湿熱収縮処理をした。
そして、湿熱収縮処理された海島型複合繊維の絡合体に分散粒子の平均分散粒子径が150nmである自己乳化型の第1の水系ポリウレタンを固形分15質量%含む液粘度2cpsのエマルジョンである第1のポリウレタン水分散液を含浸付与した後、150℃で乾燥させることにより凝集させて造膜させた。なお、エマルジョンの平均分散粒子径は、マイクロトラック粒度分析計を用いてレーザー回折式粒度分布法により測定された分散粒子の粒度分布の中心粒子径(D50)である。
なお、水系ポリウレタンは、脂環構造にメチル分岐を有さない脂環族ジイソシアネート単位を100モル%含むジイソシアネート単位と、ポリカーボネート基を除く平均炭素数が6でありメチル分岐を有するジオールを75モル%含有するポリカーボネートジオール単位を100モル%含む高分子ジオール単位と、鎖伸長剤である短鎖ジアミンに由来する単位を含むウレタン骨格を含み、カルボキシル基を有する自己乳化型ポリウレタンであった。また、エマルジョンは、水系ポリウレタン15質量%と、感熱ゲル化剤である硫酸アンモニウム2.5質量%と、カルボジイミド系架橋剤2.5質量%を含んでいた。また、水系ポリウレタンは、100%モジュラスが5.0MPaであった。
そして、水系ポリウレタンを含浸付与された海島型複合繊維の絡合体を95℃の熱水中に浸漬して繰り返しディップニップ処理を行うことにより、海成分であるPVAを溶解除去し、その後、乾燥した。このようにして、長繊維のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレートの極細繊維25本からなる繊維束が三次元的に交絡した繊維束絡合体である不織布を含む人工皮革生機を作成した。人工皮革生機に含まれるポリウレタンの割合は10質量%、水溶性PVAの含有割合は0.12質量%であった。
そして、人工皮革生機をスライスして半裁し、その両面をバフィングして表層の極細繊維を起毛させて立毛面を形成することにより、厚さ0.6mmに調整された立毛人工皮革生機を得た。
そして、平均分散粒子径が150nmである自己乳化型の水系ポリウレタンを含むエマルジョン(固形分40質量%)にポリアクリル酸系高分子型増粘剤を1.0質量%含有させた液粘度100cpsの第2のポリウレタン水分散液を調製した。なお、第2のポリウレタン水分散液は、第1の水系ポリウレタンと第2の水系ポリウレタンは同じ種類であるが、増粘剤を含む点、及び、固形分濃度が異なる点で第1のポリウレタン水分散液と異なる。そして、立毛人工皮革生機の立毛面に第2のポリウレタン水分散液をグラビアコートし、135℃で乾燥させた。なお、立毛面における、第2のポリウレタン水分散液の浸透時間は20秒であった。第2のポリウレタン水分散液の塗布量は固形分で1.5g/mであり、立毛人工皮革に対する付与割合は0.3質量%であった。
そして、第2の水系ポリウレタンを付与された立毛人工皮革生機を液流染色機で温度120℃×60分間熱処理して染色し、乾燥した後、柔軟剤を含浸処理し、さらに乾燥した。そして、染色後の立毛人工皮革生機をドラム温度120℃、搬送速度10m/分で収縮加工処理してタテ方向(長さ方向)に5.0%収縮させた後、立毛面にシール処理を施すことによりスエード調の立毛面を有する立毛人工皮革を得た。このようにして、厚さ0.66mm、目付310g/mの立毛人工皮革を得た。
そして、得られた立毛人工皮革を上記評価方法に従って評価した。結果を下記表1に示す。
Figure 2022075626000002
[実施例2~6、比較例2~3]
極細繊維の島成分の島数、水系ポリウレタンの含有割合、ポリウレタン水分散液中の水系ポリウレタンの平均分散粒子径、第2のポリウレタン水分散液に含有させた高分子型増粘剤の種類及び配合割合、第2のポリウレタン水分散液の液粘度、第2の水系ポリウレタンの付与割合、水系ポリウレタンの種類等を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして立毛人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[実施例7]
実施例1と同様にして立毛人工皮革生機を作成した後、立毛人工皮革生機表面に固形分4質量%のポリウレタン系親水性化合物を含む水溶液を付与した。そして、表1に示した第2の水系ポリウレタン水分散液を付与した以外は、実施例1と同様にして立毛人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例1]
第1の水系ポリウレタンの付与割合を10質量%から30質量%に変更し、第1のポリウレタン水分散液の含浸後に、熱水浴中に浸漬してゲル化させた後に150℃で乾燥し、また、第2のポリウレタン水分散液を付与しなかった以外は、実施例1と同様にして立毛人工皮革を製造し、評価した。得られた人工皮革の構造を図7に示す。ポリウレタンは連続膜を形成していなかった。結果を表1に示す。
[比較例4]
第2のポリウレタン水分散液のポリアクリル酸系高分子型増粘剤の含有割合を10質量%に変更して液粘度500cps、浸透時間が60秒間以上としてホモミキサーで攪拌を行って機械発泡させた後に第2のポリウレタン水分散液を付与した以外は、実施例1と同様にして立毛人工皮革を製造し、評価した。なお、第2のポリウレタン水分散液は、立毛人工皮革生機に充分に浸透しなかった。結果を表1に示す。
[比較例5]
極細繊維の島数を25島から100島に変更し、第1のポリウレタン水分散液及び第2のポリウレタン水分散液を平均分散粒子径150nmのアニオン系自己乳化型ポリウレタンから、平均分散粒子径25nmの組成の異なるアニオン系自己乳化型ポリウレタンエマルジョンに変更した以外は、実施例1と同様にして立毛人工皮革を製造し、評価した。結果を表1に示す。
なお、水系ポリウレタンは、100モル%の脂環構造にメチル基を有する脂環族ジイソシアネートであるイソホロンジイソシアネートのジイソシアネート単位と、100モル%のポリエーテル単位を含む高分子ジオール単位と、鎖伸長剤単位とを含むウレタン骨格を含み、カルボキシル基を有する、自己乳化型のポリエーテルウレタンであった。また、第1のポリウレタン水分散液は、水系ポリウレタン15質量%と、感熱ゲル化剤である硫酸アンモニウム2.5質量%と、カルボジイミド系架橋剤2.5質量%を含んでおり、第2のポリウレタン水分散液は、1.0質量%のポリアクリル酸系高分子型増粘剤を含んでいた。
[比較例6]
第1のポリウレタン水分散液及び第2のポリウレタン水分散液を150nmのアニオン系自己乳化型ポリウレタンから、平均分散粒子径400nmの組成が異なるノニオン系強制乳化型ポリウレタンエマルジョンに変更した以外は、実施例1と同様にして立毛人工皮革を製造した。
なお、水系ポリウレタンは、100モル%の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)単位と、100モル%の平均炭素数6のポリカーボネート単位を含む高分子ジオール単位と、鎖伸長剤単位とを含むウレタン骨格を含み、カルボキシル基を有さず、強制乳化型のポリカーボネートウレタンであった。また、第1のポリウレタン水分散液は、水系ポリウレタン15質量%と、感熱ゲル化剤である硫酸ナトリウム2.5質量%とを含んでいた。結果を表1に示す。得られた人工皮革の構造を図8に示す。ポリウレタンは、1~5μmの空孔を多数有していた。
500倍のSEM画像から、実施例1~7で得られた立毛人工皮革に含まれる水系ポリウレタンは連続領域を有し、一つの連続領域が複数個の繊維束に接着していた。そして、表1の結果を参照すれば、次のことが分かる。
表1の結果を参照すれば、5~75本の極細繊維からなる繊維束を含む繊維束絡合体と、繊維束絡合体に含浸付与された5~20質量%の水系ポリウレタンとを含み、50μm以上の直線長さを有する、水系ポリウレタンの連続領域を含み、表層領域において、A1/T1×100が20~60%であり、非表層領域において、A2/T2×100が0~10%である、実施例1~7で得られた立毛人工皮革は、立毛面の高級感に優れ、ソフトな風合いであり、且つ、立毛面の抗ピリング性にも優れていた。
一方、第1の水系ポリウレタンが粒子状に連結し、連続領域を形成していない水系ポリウレタンの含有割合が30質量%あって、第2の水系ポリウレタンを付与していない比較例1で得られた立毛人工皮革は、外観斑が目立って風合いの腰が無く、また、繊維束の内部の水系ポリウレタンの含有割合が低すぎるために、抗ピリング性に劣っていた。
第1の水系ポリウレタンの含有割合が21質量%、第2の水系ポリウレタンにポリアクリル酸系高分子型増粘剤を添加せず付与量が3g/mの比較例2で得られた立毛人工皮革は、繊維束の内部の水系ポリウレタンの含有割合が高すぎるために、表面がザラザラした触感で色ムラも目立ち、硬い風合いであった。
繊維束の島数が4島で、第1の水系ポリウレタンの含有割合が3質量%、第2の水系ポリウレタンの付与量が5g/mの比較例3で得られた立毛人工皮革は、表面がザラザラした触感であり、色ムラも目立っていた。
第2の水系ポリウレタンが連続領域を形成しない、多数の空孔を有する多孔構造である比較例4で得られた立毛人工皮革は、繊維束の内部の水系ポリウレタンの量が不足して抗ピリング性に劣っていた。
繊維束の島数が100島で、第1のポリウレタン水分散液及び第2のポリウレタン水分散液が平均分散粒子径25nmの組成の異なる自己乳化型ポリウレタンのエマルジョンである比較例5で得られた立毛人工皮革は、水系ポリウレタンが軟化して繊維束の内部にポリウレタンが浸入して、外観のムラが大きく、また、風合いが硬くボキボキとした折れがあった。
第1のポリウレタン水分散液と第2のポリウレタン水分散液が平均分散粒子径400nmの強制乳化型のノニオン系ポリウレタンエマルジョンであり、第1の水系ポリウレタンが空孔を有し、連続領域を形成していない比較例6で得られた立毛人工皮革は、発色性が不足し、また、抗ピリング性にも劣っていた。

Claims (10)

  1. 5~75本の極細繊維からなる繊維束を含む繊維束絡合体と、前記繊維束絡合体に含浸付与された5~20質量%の水系ポリウレタンと、を含み、少なくともその一面に、前記極細繊維を立毛させた立毛面を有し、
    厚み方向に切断された断面において、
    50μm以上の直線長さを有する、前記水系ポリウレタンの連続領域を0.04mmあたり平均1個以上含み、
    前記立毛面から厚み方向の100μmの距離にある仮想線までの領域を表層領域、前記表層領域を除いた裏面までの領域を非表層領域とした場合、
    前記表層領域において、
    前記表層領域の総繊維束数(T1)に対する、前記極細繊維の半数以上が前記水系ポリウレタンで集束されている第1の繊維束の数(A1)の割合(A1/T1×100)が20~60%であり、
    前記非表層領域において、
    前記非表層領域の総繊維束数(T2)に対する、前記極細繊維の半数以上が前記水系ポリウレタンで集束されている第1の繊維束の数(A2)の割合(A2/T2×100)が0~10%である、ことを特徴とする立毛人工皮革。
  2. 前記非表層領域において、前記総繊維束数(T2)に対する、内部に前記水系ポリウレタンが浸入せずに、前記繊維束の外周の1/4以上の長さで前記連続領域と接着または接触している第2の繊維束の数(B2)の割合(B2/T2×100)が10~40%である請求項1に記載の立毛人工皮革。
  3. 前記連続領域は、前記繊維束を2個以上接着している、請求項1または2に記載の立毛人工皮革。
  4. 前記連続領域は、前記水系ポリウレタンの水分散液の分散粒子の輪郭に由来する粒子界面を有さない請求項1~3の何れか1項に記載の立毛人工皮革。
  5. 前記水系ポリウレタンは、熱軟化温度が170℃以上であり、90℃の熱水に対する重量膨潤率が1~8%である請求項1~4の何れか1項に記載の立毛人工皮革。
  6. 前記水系ポリウレタンは、高分子ジオール単位と有機ジイソシアネート単位と鎖伸長剤単位とを含み、且つ、酸基を導入されたウレタン骨格を含む、アニオン性の親水性基を有する自己乳化型ポリウレタンを含み、
    前記高分子ジオール単位は、60~100モル%の、メチル分岐を有するジオール単位を50~100モル%含むポリカーボネートジオール単位を含み、
    前記有機ジイソシアネート単位は、70~100モル%の、脂環構造にメチル分岐を有さない脂環族ジイソシアネート単位及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート単位から選ばれる少なくとも1種を含む有機ジイソシアネート単位を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の立毛人工皮革。
  7. 請求項1に記載の立毛人工皮革の製造方法であって、
    海成分である水溶性PVA樹脂と島成分である非水溶性樹脂とを含む海島型複合繊維であって、島数が5~75個の海島型複合繊維の絡合体を準備する工程と、
    前記海島型複合繊維の絡合体に第1のポリウレタン水分散液を含浸させたのち、前記第1のポリウレタン水分散液を分散粒子が融着する温度で加熱乾燥することにより第1の水系ポリウレタンを含浸付与された繊維基材を製造する工程と、
    前記繊維基材の前記海島型複合繊維から前記水溶性PVA樹脂を除去することにより人工皮革生機を形成する工程と、
    前記人工皮革生機の少なくとも一面をバフィング処理することにより、その表層の前記極細繊維を起毛させて、前記立毛面を形成する工程と、
    前記人工皮革生機の少なくとも一面に第2のポリウレタン水分散液を付与した後、分散粒子を融着させる温度で加熱乾燥することにより第2の水系ポリウレタンを前記表層の前記繊維束の内部に付与する工程とを含み、
    前記第1のポリウレタン水分散液及び第2のポリウレタン水分散液が、分散粒子の平均分散粒子径が30~200nmである前記第1の水系ポリウレタンのエマルジョンであって、
    前記第1の水系ポリウレタン及び前記第2の水系ポリウレタンは、高分子ジオール単位と有機ジイソシアネート単位と鎖伸長剤単位とを含み、且つ、酸基を導入されたウレタン骨格を含む、アニオン性の親水性基を有する自己乳化型ポリウレタンを含み、
    前記高分子ジオール単位は、60~100モル%の、メチル分岐を有するジオール単位を50~100モル%含むポリカーボネートジオール単位を含み、前記有機ジイソシアネート単位は、70~100モル%の、脂環構造にメチル分岐を有さない脂環族ジイソシアネート単位及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート単位から選ばれる少なくとも1種を含む有機ジイソシアネート単位を含み、熱軟化温度が170℃以上、熱水での重量膨潤率が1~8%であることを特徴とする立毛人工皮革の製造方法。
  8. 前記第2のポリウレタン水分散液に対して、ポリアクリル酸系高分子型増粘剤及びポリウレタン系会合型増粘剤から選ばれる少なくとも1種の増粘剤を0.1~8質量%添加されている請求項7に記載の立毛人工皮革の製造方法。
  9. 前記第2のポリウレタン水分散液を付与する前に、前記人工皮革生機に界面活性剤及び親水性化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を付与する工程を含む請求項7または8に記載の立毛人工皮革の製造方法。
  10. 前記第2のポリウレタン水分散液を立毛人工皮革生機の立毛面に0.05ml滴下したときの浸透時間が1~60秒である請求項7~9の何れか1項に記載の立毛人工皮革の製造方法。
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