JP2008208510A - 皮革様シート状物、その製造方法、並びに該皮革様シート状物を用いた内装材、衣料用資材および工業用資材および研磨布 - Google Patents

皮革様シート状物、その製造方法、並びに該皮革様シート状物を用いた内装材、衣料用資材および工業用資材および研磨布 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、外観、風合い、物性に優れ、かつ環境に配慮した皮革様シート状物、その製造方法、並びにそれを用いてなる内装材及び衣料用資材及び工業用資材及び研磨布を提供する。
【解決手段】平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布に自己乳化型ポリウレタンを含有した皮革様シート状物であって、かつ該極細繊維表面にな凹凸を有し、該凹凸の繊維円周方向における凹部の平均幅が0.05μm以上1.0μm以下であることを特徴とする皮革様シート状物。
【選択図】なし

Description

本発明は、高級な外観、物性に優れ、ソフトでしなやかな風合い、さらには表面のドライタッチ、キシミ感をあわせもつ環境に配慮した皮革様シート状物、その製造方法、並びにそれを用いてなる内装材及び衣料用資材及び工業用資材及び研磨布に関するものである。
主として極細繊維とポリウレタンからなる皮革様シート状物は優れた特徴を有しており、種々の用途に広く利用されている。とりわけポリエステル系極細繊維を用いた皮革様シート状物は耐光性に優れるため、衣料や椅子張り、自動車内装材用途等にその使用が年々広がってきた。
皮革様シート状物の分野では、高品質化が要求され、外観(スエード感、ピリング)、風合い(柔軟な手触り)、発色性(色の鮮明さ、濃度感)等の感性面での要求をすべて高いレベルで満足するような高品質のものが求められており、これを解決すべく種々の提案がなされてきた。
例えば、高級な外観や柔軟でしなやかな風合いの皮革様シート状物を得るために、皮革様シート状物を構成している繊維を極細化する方法が一般に用いられているが、繊維を単に極細化していくと、細くなるにつれてよりくすんだ白っぽい色にしか染色できないので、外観や風合いがいくら優れていても発色性の点で劣るという欠点を有している。
このような皮革様シート状物の発色性改良については、特許文献1でスエード調人工皮革の立毛表面に易染性樹脂を付与して染色することが提案されており、また特許文献2ではアルカリの存在下で還元されて水溶性となる染料で染色し、酸化して染料を固着する染色法も提案されている。しかしながら、上記の特許文献に記載されているような発色性の改良方法は、発色性自体は改良できるものの、外観や触感、風合いを低下させるものであった。
特許文献3では、風合いが柔軟で、抗ピル性を有するスエード調人工皮革について提案がされている。該特許ではピリング性向上のために極細繊維にシリカを添加している。しかしながら、ポリエステル繊維の表面には凹凸がほとんどないため、高品質なドライタッチ、天然繊維、特に絹においてみられるキシミ感に代表される蝕感等を得ることができなかった。さらには、上品な光沢感に関する言及も全くなかった。
また、ポリプロピレンテレフタレート繊維やポリブチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維を極細繊維として使用することで、耐候性に優れたソフトでかつしなやかな風合いの皮革様シート状物が得られるが、いずれも単に繊維化するだけではキシミ感をえることはできなかった。
その他、微細な凹凸を繊維表面に形成される技術が、特許文献4、特許文献5等で多数提案されているが、いずれも発色性は向上するものの高質感のドライタッチ感、光沢感はほとんど認められなかった。
上記のように、表面のドライタッチ、柔軟でしなやかな風合い、キシミ感をあわせもち、かつ上品な光沢感を有する皮革様シート状物はこれまでに提供できていなかった。
さらに、皮革様シート状物を製造するにあたっては、極細繊維発生型繊維からなる不織布を有機溶剤で処理して極細繊維を発生させる工程と、不織布にポリウレタンの有機溶剤溶液を含浸せしめた後、該繊維シート状物をポリウレタンの非溶媒である水または有機溶剤水溶液中に浸漬してポリウレタンを湿式凝固せしめる工程の組み合わせが一般的に採用されている。かかる有機溶剤としては、繊維極細化工程ではトルエン、トリクロロエチレン等が用いられ、ポリウレタンの有機溶剤としてはN,N’−ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶剤が用いられる。しかし、有機溶剤は人体や環境への有害性が高いことから、皮革様シート状物の製造に際しては、有機溶剤を使用しない手法が強く求められている。
具体的な解決手段として例えば、繊維極細化工程に関しては、極細繊維発生型繊維にアルカリ水溶液可溶成分や熱水可溶成分等を用いることで、アルカリ水溶液、熱水等を用いて繊維の極細化を行い、ポリウレタンの有機溶剤使用に関しては、従来の有機溶剤タイプのポリウレタンに代えて水中にポリウレタンを分散させたポリウレタン水分散液を用いる方法が検討されている。
例えば、特許文献5では、アルカリ脱海可能な繊維からなる不織布に感熱ゲル化性を有するポリウレタン水分散液を含浸し、次いでアルカリ水溶液で脱海する皮革様シートの製造方法を提供している。感熱ゲル化性を有するポリウレタン水分散液を用いることで、ポリウレタン含浸後の乾燥におけるポリウレタンのマイグレーションを抑制し、皮革様シートの風合いを柔軟化しているが、ポリウレタンに感熱ゲル化性を付与するために界面活性剤を使用していることから、界面活性剤のブリードによるベトツキが発生しやすく、そのためポリウレタン含浸後に洗浄工程を必要とする課題がある。また、界面活性剤が存在することで、製膜時のポリウレタンエマルジョン同士の融着を阻害しやすく、ポリウレタン膜の膜強度は低下してシート状物の耐摩耗性を低下させる可能性がある。
さらに該特許では、ポリウレタンを含浸した後にアルカリ水溶液で処理して繊維の極細化を行っているが、ポリウレタンは一般的にアルカリ水溶液に対して加水分解されやすいことが知られている。ポリオールをポリエーテルやポリカーボネートとすることでアルカリ水溶液に対する耐加水分解性の向上を試みているが、ポリウレタンのウレタン結合やウレア結合は加水分解されやすい結合であることを考えると、アルカリ水溶液処理でのポリウレタンの脱落は抑制しきれず、シート状物の強力や耐摩耗性等が著しく低下して実用上不十分である。
特許文献6では、ポリウレタン水分散液に予め架橋剤を添加してから、不織布に含浸する製造方法を提供している。架橋剤を併用することで、ポリウレタン含浸不織布の耐久性は向上するが、生産を考えた場合、ポリウレタン水分散液に架橋剤を添加して保存すると経時変化でゲル化しやすく、ポットライフは短いものとなる。
また、ポリウレタン含浸不織布の柔軟化を目的として、特許文献7では、アルカリ脱海可能な繊維からなる不織布にポリビニルアルコールを付与し、その後ポリウレタン水分散液を含浸する製造方法を提供している。ポリビニルアルコールを付与することで、加工時の不織布物性の補強と、ポリウレタン水分散液付与後の脱のりによるポリウレタン含浸不織布の柔軟化を達成しているものである。ただ、ポリビニルアルコールを付与する工程と脱のりする工程を経る必要があり、皮革様シート状物の製造工程が非常に長くなり、製造コストも高くなるという課題がある。
さらに、皮革様シート状物にはより高いレベルの耐久性が必要とされるようになってきている。単に耐摩耗性を高くするだけであれば、高分子弾性体を大量に付与すればよいが、大量に付与しすぎると風合いが硬くなるために製品本来の特徴である柔軟性、外観品位が失われてしまう。そのため、高分子弾性体を改質して高耐久性の皮革様シート状物を得る方法も検討されているが、有機溶剤を用いないポリウレタン水分散液を用いて、柔軟な風合い、良好な外観、耐久性を満たすものはまだ得られていない。
一方、研磨布の分野では、特に磁気記録ディスクに用いるアルミニウム合金基板およびガラス基板を超高精度の仕上げでテクスチャー加工を施す際に好適に用いられるが、ハードディスクの電磁変換特性を向上させるためには、ディスク基板の表面粗さを極小化し、且つスクラッチを抑制し、さらにシャープなテクスチャー痕を線密度が高い状態で形成させる必要がある。基板の線密度は基板表面のラインデンシティという指標で評価できる。
この課題に対し、研磨布の砥粒の把持性を向上させることが有効であると考えられている。砥粒の把持性を向上させることにより、砥粒が基板表面に強く押し付けられることができ、基板表面に鋭利な溝が形成され、それにより高いラインデンシティを得ることができるからである。そして、砥粒の把持性を向上させるためには、繊維表面に凹凸を付与し、該溝部分で砥粒を把持する方法が考えられる。
例えば特許文献9では織物の繊維表面に溝を有する研磨用テープが開示されている。しかし該繊維は1dtex程度の太繊度品であり、また該溝部分は開口幅が0.6〜3μm、深さが0.6〜2μm程度と非常に大きい為、砥粒が凹部分に数個凝集することによるスクラッチの増加が懸念される。加えて、近年の研磨布に求められる0.5dtex以下の極細繊維を得ることは凸部の合流などが発生するため、困難であった。
特開昭50−135331号公報 特開平7−173778号公報 特開平2004−339617号公報 特開昭55−107512号公報 特開昭55−107544号公報 特開2001−55670号公報 特開2005−248415号公報 特開2002−317386号公報 特開2003−225856号公報
本発明は、外観、風合い、物性に優れ、かつ環境に配慮した皮革様シート状物、その製造方法、並びにそれを用いてなる内装材及び衣料用資材及び工業用資材及び研磨布に関するものである。
すなわち、本発明の皮革様シート状物は、「平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布に自己乳化型ポリウレタンを含有した皮革様シート状物であって、かつ該極細繊維表面に凹凸を有し、該凹凸の繊維円周方向における凹部の平均幅が0.05μm以上1.0μm以下であることを特徴とする皮革様シート状物」である。
また、本発明の皮革様シート状物は、「前記の皮革様シート状物の製造方法であって、次の(1)〜(3)の工程をこの順番で経ることを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
(1)アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2成分以上の高分子物質であり、その1成分はシリカを添加した高分子物質である組み合わせからなる極細繊維発生型繊維を用いてシートを作成する工程。
(2)自己乳化型ポリウレタン水分散液をシートに含浸して、該自己乳化型ポリウレタンを付与する工程。
(3)該自己乳化型ポリウレタンを付与したシートをアルカリ水溶液で処理して極細繊維および凹凸を発現せしめる工程」である。
本発明によれば、外観、風合い、物性に優れ、かつ環境に配慮した皮革様シート状物、その製造方法、並びにそれを用いてなる内装材、衣料用資材、工業用資材及び研磨布を得ることができる。
本発明の皮革様シート状物は、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布に自己乳化型ポリウレタンを含有した皮革様シート状物である。
ここでいう皮革様シート状物とは、天然皮革のようなスエード、ヌバック、銀面等の優れた表面外観を有してなるものであり、好ましくはスエードやヌバックといった立毛調の外観において、滑らかなタッチと優れたライティングエフェクトを有するものである。
本発明の皮革様シート状物を構成する不織布を構成する極細繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリエステルなどの各種合成繊維を用いることができる。中でも、強度、寸法安定性、耐光性、染色性の観点からポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維を用いることが好ましい。
また、不織布は異なる素材の極細繊維が混合されて構成されていてもよく、また不織布の内部に、強度を向上させるなどの目的で、織物や編物を挿入してもよい。なお、織物や編物を構成する繊維の平均単繊維繊度は特に限定はなく、0.001dtex以上1dtex以下の極細繊維であってもよい。
不織布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度としては、シートの柔軟性や立毛品位の観点から0.001dtex以上0.5dtex以下であることが重要である。好ましくは0.3dtex以下、より好ましくは0.2dtex以下である。一方、染色後の発色性やサンドペーパーなどによる研削など起毛処理時の繊維の分散性、さばけ易さの観点からは、0.005dtex以上であることが好ましい。
なお、不織布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は、極細繊維の断面が円形または円形に近い楕円形の場合は、皮革様シート状物(もしくは不織布)表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、極細繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらにその100本の平均値を計算することで算出される。
一方、不織布を構成する極細繊維が異形断面の場合は、同様にして、異形断面の外周円直径を繊維径として算出する。さらに、円形断面と異形断面が混合している場合、繊度が大きく異なるものが混合している場合等は、それぞれが同数程度となるように100本を選び、算出する。
不織布を構成する極細繊維の繊度の均一性に関しては、繊維束内の繊度CVが10%以下であることが好ましい。ここで繊度CVとは、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)表示したものであり、値が小さいほど均一であることを示すものである。繊度CVを10%以下とすることで、本発明の皮革様シート状物表面の立毛の外観は優美となり、また染色も均質で良好なものとすることができる。極細繊維の断面が円形または円形に近い楕円形でない場合の繊度CVは、平均単繊維繊度の算出と同様の方法による。
極細繊維の断面形状としては、丸断面でよいが、楕円、扁平、三角などの多角形、扇形、十字型などの異形断面のものを採用してもよい。
本発明において、極細繊維に含有されているシリカは、乾式シリカ、湿式シリカなどが挙げられるが、中でもコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカとは、ケイ素酸化物を主成分とし、単粒子状で存在する微粒子が水または単価のアルコール類またはジオール類またはこれらの混合物を分散媒としてコロイドとして存在するものをいう。
シリカを極細繊維中に添加する方法としては、例えば極細繊維がポリエステル極細繊維の場合は、ポリエステルのエステル化あるいはエステル交換反応時、重縮合反応時、重縮合反応後、溶融成形前の何れかの段階において混合させればよい。
極細繊維に含有されているシリカ微粒子は、平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであることが必要である。平均一次粒子径が0.1μm より大きくなると、アルカリ減量処理後に形成される極細繊維表面のボイド径が大きくなりすぎて、繊維表面反射光を十分に抑制することができず、マイルドな光沢が得られない、また発色性も劣ってしまう。逆に、平均一次粒子径が0.02μm 未満では、コロイダルシリカ粒子が凝集を起こしやすく、これにより紡糸時の背圧上昇が引き起こされ、安定した工業生産を行うのに支障を来す。光沢感および発色性の点から0.04〜0.08μm であることが好ましい。
シリカ粒子の一次粒径の測定は、乾固した粒子を透過型電子顕微鏡で写真撮影し、任意の100点について選び出し、球相当径を求め、平均粒子径とした。
また、本発明の目的である優れた発色性を発現させるためには、シリカ微粒子の添加量は、0.3〜5重量%であることが必要である。シリカ粒子の添加量が5重量%を超えると、シリカ粒子が繊維表面に露出している場合、前記したガイド類の摩耗が引き起こされ、製糸性が低下するとともに得られた繊維の品位が悪化し、さらに粒子凝集によりパック内圧が上昇し工業生産的な問題が発生する。逆に、添加量が0.3重量%未満になると、糸道ガイド類の摩耗、生産性は改善されるものの、ドライタッチ、キシミ感に代表される風合いおよび製品の光沢感で劣ってしまう。製糸性、風合いおよび外観を考慮するとシリカ粒子の添加量は0.7〜4重量%であることがさらに好ましい。
本発明の極細繊維は、その表面に繊維円周方向の平均の幅が0.05μm以上1.0μm以下の凹部を有する。凹部の平均幅が0.05μm以上であると、表面のドライタッチ感に優れ、染色した際の光沢感と深色性および鮮明性の効果が十分となるため好ましい。凹部の幅が1.0μm以下であると、細やかなキシミ感が考えられ、かつ可視光線の表面反射率が高くならず、色がくすんだり、白っぽくなることがなく、上品な光沢感を十分に発現することができるので好ましい。
また、本発明の極細繊維を研磨布として使用する場合にも、不織布を形成する極細繊維がその表面に繊維軸方向に沿った凹部を有することが重要である。該凹部によって砥粒を適切に把持し、ディスク基板表面に鋭利な溝を形成できるからである。
研磨布として用いる場合は、凹部の幅はより好ましくは0.1〜0.5μmである。幅が0.05μm以上であると砥粒を把持する効果がより向上するため好ましい。また凹部の幅が1μm以下であれば砥粒に対して凹部が大きすぎることがなく、砥粒が溝部分に凝集して表面粗さの上昇や、スクラッチの増加が起こることがなく好ましい。幅が1μmを超える凹部が存在した場合、砥粒が該溝部分に凝集するだけでなく、極細繊維の強度、ヤング率が大幅に低下し、結果として研磨性能が著しく悪化するため、該範囲を超える凹部は存在しないことが好ましい。一方、幅が0.05μm未満である凹部については、砥粒の把持性の向上には寄与できないものの、表面粗さの上昇や、スクラッチの増加には直接は寄与しないため存在していてもよい。
凹部の平均幅の測定は、表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率7000倍で撮影し、凹部をランダムに100箇所選び、繊維長手方向に垂直に凹部幅を測定して、さらにその100箇所の平均値を計算することで算出される。
ただし、本発明の要件を満足する範囲で、凹部幅が0.05μm以下、1.0μm以上の凹部を含んでも良いが、ドライタッチ、キシミ感等の風合いの観点から、全体の5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下である。
また、本発明の目的である絹のようなキシミ感を得るためには、極細繊維のスティックスリップ曲線の応力変化Δfが10g以上、80g以下であることが好ましい。ここで、いうスティックスリップ現象とは滑り面の運動が間欠的になる現象であり、繊維(布帛)のスティックスリップの一例は文献(繊維機械学会誌、vol.39,No.10(1986))に記載されている。本発明では後述するような方法で測定しているが、スティックスリップはポリエステル繊維と金属鏡面または梨地面、または繊維−繊維間で認められるものである。本発明の極細繊維はスティックスリップ特性を有する必要がある。この値が適正な範囲となるようにならしめることにより絹のようなキシミ感を得ることが可能にある。
その値としては後述するような図2のようなスティックスリップ曲線においてΔfが10g以上であることが好ましい。これ以下であると十分なキシミ感を得ることができない。また、80gを超えると、良好なキシミ感が得られなくなるばかりか、不快な感触を与えてしまう。絹のようなキシミを得るためのΔfのより好ましい範囲は、15g以上70g以下であり、さらに好ましくは20g以上60g以下であり、繊維の表面状態が荒れている、つまりは凹凸の凹部幅が大きいほど、Δfは大きくなり、表面が平坦であるほど、つまりは凹凸が小さいほど、Δfは小さくなる。
また、1インチ(2.54cm)あたりのスティックスリップの個数が25個/インチ(2.54cm)以上、50個/インチ(2.54cm)以下であることが好ましい。さらには30個/inch以上、45個/インチ(2.54cm)以下がより好ましく、30個/インチ(2.54cm)以上、40個/インチ(2.54cm)以下がいっそう好ましい。い。25個/インチ(2.54cm)以下であると、十分なキシミ感を得ることができない。また50個/インチ(2.54cm)を超えると良好なキシミ感が得られなくなるばかりか、不快な感触を与えてしまう。スティックスリップの個数については、繊維の表面状態が荒れている、つまりは凹凸が大きいほど、個数は少なくなり、表面が平坦であるほど、つまりは凹凸が小さいほど、多くなる。ただし、本発明の規定範囲以下まで凹凸が小さくなると、スティックスリップ自体が発生しなくなる。
一方、研磨布においても、スティックスリップ特性は表面粗さやスクラッチの増加に影響を及ぼしており、1インチあたりのスティックスリップの個数が少ないと、研磨時の砥粒を把持できなくなり、また1インチあたりのスティックスリップの個数が多いと、表面粗さは上昇し、スクラッチが増加してしまう。したがって、上記範囲とすることが好ましい。
このように、スティックスリップ特性は、繊維の表面状態と大きく関係しており、本発明では極細繊維表面に形成された凹凸の幅を制御することで、応力変化Δfと個数を両立させ、均一なスティックスリップ特性を得ることができる。なお、本発明におけるスティックスリップ特性は、後述する測定方法のように、インストロン試験機を用いた動摩擦係数の測定で得られるチャートから同様に評価できる。本発明の皮革様シート状物を構成する不織布は、短繊維不織布、長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位を重視する場合には、短繊維不織布が好ましい。同様に風合いや品位を重視する場合は、短繊維の繊維長は絡合による耐摩耗性を考慮して、25mm以上90mm以下であることが好ましい。
本発明においては、このような不織布に、弾性樹脂バインダーとして自己乳化型ポリウレタン水分散液を含浸して当該自己乳化型ポリウレタンが当該不織布の内部空間に存在する構成としたものである。
当該不織布の内部空間に存在する自己乳化型ポリウレタンは、当該不織布を構成する極細繊維と実質的に密着せず、また、自己乳化型ポリウレタンは無孔構造である。
極細繊維と自己乳化型ポリウレタンが実質的に密着していないことにより、自己乳化型ポリウレタンが極細繊維の動きを阻害しないため、シート状物は非常に柔軟となる。
ここでいう実質的に密着していないとは、皮革様シート状物の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率300倍で観察した際に、自己乳化型ポリウレタンが極細繊維に接着しておらず、自己乳化型ポリウレタンと極細繊維の間に空隙が存在することを確認できることをいう。部分的には接している場合もあるが、基本的には空隙があるものである。
また、自己乳化型ポリウレタンが無孔構造であることにより、多孔構造に比べ、揉み等の物理力に強くなることから、皮革様シート状物の耐ピリング性、耐摩耗性等は良好となる。ここでいう無孔構造とは、皮革様シート状物の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率300倍で観察した際に、自己乳化型ポリウレタン部分において、5μm以上の孔が見えないことをいう。
当該不織布の内部空間に存在する自己乳化型ポリウレタンは、自己乳化型ポリウレタン水分散液を不織布に含浸することで得られるものであるが、自己乳化型ポリウレタン水分散液とは、界面活性剤等の乳化剤を用いなくても安定に水分散しているポリウレタン水分散液のことであり、自己乳化型ポリウレタン分子構造内に親水性の、いわゆる内部乳化剤を有するものである。
なお、自己乳化型ポリウレタンは、通常、水に分散した状態で取り扱われ、メーカーからもこの状態で入手できるが、これは一旦乾燥すると再度水に分散させることが不可能となるためである。
内部乳化剤は、4級アミン塩等のカチオン系、スルホン酸塩、カルボン酸塩等のアニオン系、ポリエチレングリコール等のノニオン系、およびカチオン系とノニオン系の組み合わせ、アニオン系とノニオン系の組み合わせのいずれでもよいが、カチオン系内部乳化剤は、黄変等の耐光性に劣り、アニオン系内部乳化剤は、中和剤による弊害が発生する可能性があるため、ノニオン系内部乳化剤であることが好ましい。
ここで、アニオン系内部乳化剤の中和剤によって発生する可能性のある弊害とは、中和剤の種類によって異なる。例えば、中和剤がアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンである場合は、製膜・乾燥時の熱によってアミンが発生・揮発し、系外へ放出される。そのため、大気放出や作業環境の悪化を抑制するために揮発するアミンを回収する装置の導入が必須となる。また、アミンは加熱によって揮発せずに最終製品であるシート状物中に残留した場合、製品の焼却時等に環境へ排出されることも考えられる。また、中和剤が水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の水酸化物等である場合、自己乳化型ポリウレタン部分が水に濡れるとアルカリ性を示すこととなり、自己乳化型ポリウレタンの加水分解による劣化を促進する可能性が考えられる。本発明に使用する自己乳化型ポリウレタンは、内部乳化剤以外にポリオール、ポリイソシアネート、鎖伸長剤、内部架橋剤を適宜反応させた構造を有するものを用いることができる。
ポリオールとしては、ポリカーボネート系ジオール、ポリエステル系ジオール、ポリエーテル系ジオール、シリコーン系ジオール、フッ素系ジオールや、これらを組み合わせた共重合体を用いてもよい。中でも耐加水分解性の観点から、ポリカーボネート系ジオール、ポリエーテル系ジオールを用いることが好ましく、さらに耐光性、耐熱性といった観点から、ポリカーボネート系ジオールがより好ましい。
ポリカーボネート系ジオールは、アルキレングリコールと炭酸エステルのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造することができる。アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、などの直鎖アルキレングリコールや、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオールなどの分岐アルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール、ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。それぞれ単独のアルキレングリコールから得られるポリカーボネートジオールでも2種類以上のアルキレングリコールから得られる共重合ポリカーボネートジオールのいずれでも良い。
ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の脂肪族系、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族系が挙げられ、またこれらを組み合わせて用いてもよい。中でも、耐光性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等の脂肪族系が好ましい。
鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、メチレンビスアニリン等のアミン系、エチレングリコール等のジオール系、さらにはポリイソシアネートと水を反応させて得られるポリアミンを用いることができる。
内部架橋剤とは、自己乳化型ポリウレタン分子の一部として自己乳化型ポリウレタンを合成する際にあらかじめ分子構造内に導入しておく架橋反応可能な官能基を有する化合物のことであり、本発明では、シラノール基を自己乳化型ポリウレタン分子構造内に導入するために用いる化合物のことである。シラノール基を自己乳化型ポリウレタン分子構造内に導入することで、不織布の内部空間に存在する自己乳化型ポリウレタンはシロキサン結合による架橋構造を有することになり、自己乳化型ポリウレタンの耐加水分解性等の耐久性を飛躍的に向上することができる。
シラノール基を自己乳化型ポリウレタン分子構造内に導入するために用いる化合物とは、1分子内に少なくとも1個のイソシアネート基と反応可能な活性水素基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物のことである。
加水分解性ケイ素基とは、水分により加水分解を受ける加水分解性基がケイ素原子に結合している基のことをいい、加水分解性基の具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等の一般に使用されている基が挙げられる。中でも、加水分解性が低く、比較的取扱が容易なアルコキシ基が好ましい。加水分解性基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合しているが、加水分解性シリル基の反応性、耐水性等から、2〜3個結合しているものが好ましい。
イソシアネート基と反応可能な活性水素基とは、メルカプト基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
活性水素基としてメルカプト基を有し、加水分解性基としてアルコキシ基を有する加水分解性ケイ素基含有化合物は、例えばγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ―メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、活性水素基としてアミノ基を有し、加水分解性基としてアルコキシ基を有する加水分解性ケイ素基含有化合物は、例えばγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン等が挙げられる。中でも耐候性、耐加水分解性の観点から、自己乳化型ポリウレタン分子の中間部分に加水分解性ケイ素基を導入することが好ましく、さらに2個以上の活性水素基を有する加水分解性ケイ素基含有化合物が好ましい。
前記加水分解性ケイ素基含有化合物が導入された自己乳化型ポリウレタンは、不織布の内部空間に存在した状態でシロキサン結合による架橋構造を含有する。この架橋構造により、皮革様シート状物からのポリウレタンの脱落を抑制することができる。
ここで、シロキサン結合となるためにはポリマーに直接結合しているシラノール基同士が縮合する必要がある。従って、シロキサン結合が存在するということは、シラノール基同士が縮合したものであり、ポリマー間を結合する架橋構造であることがわかる。
シロキサン結合の存在有無は、ポリウレタンのNMRによる測定において、シロキサン結合に起因するピークにより、確認できる。
シリコン原子の含有量はポリウレタン重量に対して0重量%よりも多く、1重量%以下であることが好ましい。シロキサン結合による架橋構造は多いほど自己乳化型ポリウレタンの耐加水分解性等の耐久性は向上するが、多すぎると自己乳化型ポリウレタンの柔軟性は低下する。
なお、シリコン原子の含有量は、シート状物、またはシート状物から抽出したポリウレタンの元素分析を行うことで、定量できる。
また、自己乳化型ポリウレタンは後述する製造方法において、感熱ゲル化性を有することが好ましいため、ポリウレタン全重量に対して3重量%以上30重量%以下のポリエチレングリコールを有してもよい。特に、ノニオン系内部乳化剤によって自己乳化している自己乳化型ポリウレタンの場合、少なすぎると自己乳化しにくくなり、多すぎると耐水性の低下やポリウレタン膜の強力等の物性の低下が発生しやすいことから、ポリウレタン全重量に対するポリエチレングリコールの含有量はより好ましくは5重量%以上20重量%以下である。
本発明において、自己乳化型ポリウレタンは単独で用いても複数種を併用してもよく、また、他のポリマー等を併用してもよい。
他のポリマーとしては、例えば、アクリル系やシリコーン系等の水分散性や水溶性のポリマーが挙げられる。
また、自己乳化型ポリウレタンは、濃度15g/L水酸化ナトリウム水溶液中浸漬90℃30分処理後の重量減少率が0重量%以上5重量%以下であることが好ましい。本発明の皮革様シート状物は、後述する製造方法により得られるため、アルカリ水溶液への溶解、脱落による自己乳化型ポリウレタンの重量減少は少ない方が好ましいため、重量減少率はより好ましくは0重量%以上4重量%以下である。
なお、アルカリ水溶液処理での重量減少率(耐加水分解性)は、次のようにして算出した。ポリウレタン水分散液をタテ10cm×ヨコ10cmのポリエチレン製不織布(タテ糸15本/cm、ヨコ糸20本/cmの密度)に含浸し、120℃30分乾燥することで、不織布重量に対して75重量%のポリウレタンを付与したシートを得る。次に、得られたシートを濃度15g/L水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して90℃30分処理後の重量を測定し、浸漬処理前の重量と比較して重量減少率を算出した。
自己乳化型ポリウレタンは、カーボンブラック等の顔料、染料、防カビ剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、帯電防止剤等の界面活性剤、シリコーン等の消泡剤、セルロース等の充填剤、凝固調整剤等を含有していてもよい。
本発明の皮革様シート状物においては、極細繊維からなる不織布全重量に対する自己乳化型ポリウレタンの含有量は20重量%以上200重量%以下であることが好ましい。20重量%以上とすることで、シート強度を得て、かつ繊維の脱落を防ぐことができ、200重量%以下とすることで、風合いが必要以上に硬くなるのを防ぎ、目的とする良好な立毛品位を得ることができる。より好ましくは30重量%以上180重量%以下である。
本発明の皮革様シート状物は、例えば染料、顔料、柔軟剤、風合い調整剤、ピリング防止剤、抗菌剤、消臭剤、撥水剤、耐光剤、耐候剤等の機能性薬剤を含んでいてもよい。
次に、本発明の皮革様シート状物の製造方法について説明する。
本発明の皮革様シート状物の製造方法は、(1)〜(3)を順に経るものである。
(1)アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2成分以上の高分子物質であり、その1成分はシリカを添加した高分子物質である組み合わせからなる極細繊維発生型繊維を用いてシートを作成する工程。
(2)自己乳化型ポリウレタン水分散液をシートに含浸して、該自己乳化型ポリウレタンを付与する工程。
(3)該自己乳化型ポリウレタンを付与したシートをアルカリ水溶液で処理して極細繊維を発現せしめる工程。
(1)〜(3)の順に実施することで、自己乳化型ポリウレタンと極細繊維は実質的に密着していない構造を形成し、非常に柔軟な皮革様シート状物を得ることができる。
先ず(1)の工程について説明する。
不織布を構成する極細繊維を得る手段としては極細繊維発生型繊維を用いる。極細繊維発生型繊維をあらかじめ絡合した後に繊維の極細化を行うことによって、極細繊維が絡合してなる不織布を得ることができる。アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2成分以上の高分子物質であり、その1成分はシリカを添加した高分子物質である組み合わせからなる極細繊維発生型繊維を用いてシートを作成する工程。
極細繊維発生型繊維としては、アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2成分以上の高分子物質で、その1成分はシリカを添加した高分子物質を海成分・島成分とし、海成分をアルカリ水溶液を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、2成分の高分子成分を繊維断面を放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも、海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、不織布の柔軟性や風合いの観点からも好ましい。さらにアルカリ水溶液で、海成分の除去と同時に、島成分のシリカを脱落させ、凹凸を付与することができる、つまりは極細繊維化と凹凸発現工程を1工程で行うことにより処理工程数を減らし、コストを引き下げることができるので好ましい。
シリカを極細繊維中に添加する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法で添加すればよいが、例えば極細繊維がポリエステル極細繊維の場合は、ポリエステルのエステル化あるいはエステル交換反応時、重縮合反応時、重縮合反応後、溶融成形前の何れかの段階において混合させればよい。
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海・島の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子配列体方式による海島型複合繊維がより好ましい。
本発明におけるアルカリ水溶液に対する溶解性の異なるとは、極細繊維を発現せしめる条件下で溶解速度が20倍以上、より好ましくは40倍以上異なることをいう。20倍未満であれば、極細繊維を発現せしめる際に溶解性の低い熱可塑性高分子成分の繊度を制御することが困難になるので好ましくない。
なお、アルカリ水溶液に対する溶解速度は、JIS K6911法(1995)の耐薬品性試験(試験液:水酸化ナトリウム10%)に準じて処理時間を1時間として得た重量比より算出できる。
アルカリ水溶液に対する溶解性の高い海島型複合繊維の海成分としては、アルカリ水溶液に対する溶解速度と紡糸安定性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルに5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸等を5〜12mol%共重合した共重合ポリエステルや、ポリ乳酸などを用いることができる。特に耐熱性、弱アルカリ水溶液への溶解性から、5−スルホイソフタル酸ナトリウムを5〜12mol%共重合したポリエチレンテレフタレート共重合体やポリ乳酸を用いることが好ましい。また、これらの共重合体は2元のみならず、3元以上の多元共重合体であってもよい。
得られた極細繊維発生型繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカットして不織布の原綿を得る。捲縮加工やカット加工は通常の方法を用いることができる。得られた原綿を、クロスラッパー等によりウエブとし、次いで繊維を絡合して不織布とする。
繊維を絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチ等の通常の方法を用いることができる。
得られた前記不織布には、繊維の緻密感向上のために、温水やスチーム処理によって収縮処理を施してもよい。
また、前記不織布は、自己乳化型ポリウレタン水分散液を付与する前に、不織布厚み方向に半裁(2枚に分割すること)、ないしは数枚に分割されて得られるものでもよい。
次に(2)の工程について説明する。
本発明の皮革様シート状物は、自己乳化型ポリウレタン水分散液をシートに含浸して、該自己乳化型ポリウレタンを付与する。
自己乳化型ポリウレタン水分散液を前記不織布に付与するにあたっては、不織布に当該ポリウレタン水分散液を含浸、または付与し乾熱凝固する方法、不織布に当該ポリウレタン水分散液を含浸後、湿熱凝固して加熱乾燥する方法、熱水中で湿式凝固して加熱乾燥する方法、およびその組み合わせがあるが、特に限定することはない。
なお、乾燥温度は低すぎると乾燥時間が長時間となり、高すぎると自己乳化型ポリウレタンの熱劣化の原因となる可能性があることから、80℃以上180℃以下が好ましい。より好ましくは90℃以上160℃以下である。
本発明の製造に使用するポリウレタン水分散液は水中に分散してエマルジョンとしてあるポリウレタン水分散液であり、界面活性剤等の乳化剤を含有しない自己乳化型のポリウレタン水分散液である。
界面活性剤等の乳化剤を含有する強制乳化型のポリウレタン水分散液を用いた場合、得られた皮革様シート状物の表面は乳化剤に起因するベトツキ等が発生するため、洗浄工程が必要となり、加工工程が増加してコストアップに繋がる。さらには、強制乳化型のポリウレタン水分散液では、乳化剤の存在により、皮膜化したポリウレタン膜の耐水性が低下するため、ポリウレタンを含有するシート状物の染色において、ポリウレタンの染色液への脱落が発生するため、好ましくない。
本発明に使用するポリウレタン水分散液は自己乳化型ポリウレタン水分散液であるが、自己乳化型ポリウレタン水分散液とは、界面活性剤等の乳化剤を用いなくても安定に水分散しているポリウレタン水分散液のことであり、自己乳化型ポリウレタン分子構造内に親水性の、いわゆる内部乳化剤を有するものである。
なお、自己乳化型ポリウレタンは、通常、水に分散した状態で取り扱われ、メーカーからもこの状態で入手できるが、これは一旦乾燥すると再度水に分散させることが不可能となるためである。
本発明に使用する自己乳化型ポリウレタン水分散液には、貯蔵安定性や製膜性向上のために水溶性有機溶剤を水分散液に対して0重量%以上40重量%以下含有していてもよいが、製膜時の加熱による大気中への有機溶剤の放出や最終製品への有機溶剤の残留等の懸念から、有機溶剤は0重量%以上1重量%以下含有していることが好ましい。
自己乳化型ポリウレタンとしては水に分散している水分散液であれば特に限定されないが、耐加水分解性から、ポリカーボネート系の自己乳化型ポリウレタン水分散液が好ましい。
また、自己乳化型ポリウレタン水分散液は、自己乳化型ポリウレタン分子構造内に少なくとも1個のシラノール基を含有する自己乳化型ポリウレタン水分散液(以下、シラノール基含有自己乳化型ポリウレタンと記す)である。シラノール基を含有することで、製膜時にシラノール基同士が縮合してシロキサン結合による架橋構造を形成し、ポリウレタンの耐アルカリ加水分解性が飛躍的に向上する。
シラノール基含有自己乳化型ポリウレタン中のシラノール基は、反応に用いられた1分子内に少なくとも1個のイソシアネート基と反応可能な活性水素基と加水分解性ケイ素基とを含有する化合物中の加水分解性ケイ素基が水中で加水分解されて生成したものである。このシラノール基含有自己乳化型ポリウレタン中のシラノール基は、周囲に十分な水が存在するので、シラノール基同士が反応してシロキサン結合を形成する段階には到らず、水中で安定に存在する。
シラノール基含有自己乳化型ポリウレタン中に含まれるシラノール基は、シラノール基含有自己乳化型ポリウレタン分子の両端の少なくとも一方、または中間部分のいずれか、または両方に結合していてもよいが、架橋構造が製膜後の自己乳化型ポリウレタンの耐水性、物性等に影響を与えることから、シラノール基含有自己乳化型ポリウレタン分子の中間部分にシラノール基を含有することが好ましい。
自己乳化型ポリウレタン水分散液の濃度(自己乳化型ポリウレタン水分散液に対する自己乳化型ポリウレタンの含有量)は、自己乳化型ポリウレタン水分散液の貯蔵安定性の観点から、10重量%以上50重量%以下が好ましい。
また、自己乳化型ポリウレタン水分散液は感熱ゲル化温度を有することが好ましい。感熱ゲル化温度を有することで、シートに含浸し、乾燥する際のポリウレタンのマイグレーション現象を抑制することができる。ただ、感熱ゲル化温度は低すぎるとポリウレタン水分散液の貯蔵においてゲル化する可能性が高く、高すぎるとマイグレーション現象を抑制することができなくなることから、55℃以上90℃以下であることが好ましい。
自己乳化型ポリウレタン水分散液は、単独で感熱ゲル化性を有することが好ましいが、自己乳化型ポリウレタン水分散液に感熱ゲル化性を付与する、または感熱ゲル化温度を低下させる目的で、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の無機塩を添加してもよい。
また、自己乳化型ポリウレタン水分散液を付与するにあたっては、必要に応じてカーボンブラック等の顔料、染料、防カビ剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、帯電防止剤、シリコーン等の消泡剤、セルロース等の充填剤、ポリウレタン凝固調整剤等を添加して用いることができる。
続いて(3)の工程について説明する。
本発明の皮革様シート状物は、極細繊維発生型繊維からなるシートに自己乳化型ポリウレタンを付与した後、アルカリ水溶液で処理することで極細繊維化し、さらに極細繊維表面からシリカ粒子を脱落させることで凹凸を発現せしめる。
アルカリ水溶液は、特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液、アンモニア塩等を用いることができる。アルカリ水溶液の濃度は凹凸が発現できれば特に限定はないが、0.25mol/L以上10mol/L以下が好ましい。
極細繊維の減量率は凹部のサイズや繊維強度、布帛の風合いのバランスを鑑み、適宜調整することができるが、減量率は5重量%以上25重量%以下が好ましく、さらには10重量%以上20重量%以下がより好ましい。減量率5重量%以上では、繊維両面の凹部を十分に発現させることができるので好ましく、減量率25重量%以下では、コストの点および島成分の溶出や繊維強度の低下が起こりにくい点から好ましい。この範囲内では、極細繊維の繊維円周方向に凹部の平均幅が0.05μm以上1.0μm以下の凹部を得ることができる。
アルカリ水溶液での処理は、自己乳化型ポリウレタン付与後の極細繊維発生型繊維からなるシートを浸漬し、窄液を行うものであり、剥離型複合繊維の場合は、アルカリ水溶液処理と揉み作用等の物理力で分割し、海島型複合繊維の場合は、アルカリ水に溶解する海成分を溶出して極細繊維を発生させるものであることから、方法に特に限定はないが、例えば液流染色機や精錬装置等、さらにはそれらの組み合わせを用いての処理が挙げられる。
液流染色機を用いた処理での温度、時間はそれぞれ50℃以上140℃以下、5分以上90分以下であることが好ましい。
なお、極細繊維の発生を効率化する目的で、適宜加熱処理やスチーム処理、界面活性剤等の浸透剤を添加しての処理を行ってもよく、さらにはpH3以下の酸性水溶液による処理をあらかじめ行った後にアルカリ水溶液で処理してもよい。本発明の皮革様シート状物は、少なくとも片面に極細繊維の立毛を有している立毛調の皮革様シート状物としてもよい。
皮革様シート状物表面に立毛を形成するための起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を付与してもよい。
また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によって皮革様シート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる傾向にあり好ましい。
また、皮革様シート状物は、起毛処理を行う前に、シート厚み方向に半裁、ないしは数枚に分割されて得られるものでもよい。
本発明の皮革様シート状物は、染色されたものでもよい。染色方法は、皮革様シート状物を染色すると同時に揉み効果を与えてシート状物を柔軟化することができることから、液流染色機を用いることが好ましい。液流染色機は、通常の液流染色機を使用することができる。
染色温度は高すぎると自己乳化型ポリウレタンが劣化する場合があり、逆に低すぎると繊維への染着が不十分となるため、繊維の種類により変更するのがよく、一般に80℃以上150℃以下が好ましく、110℃以上130℃以下がより好ましい。
染料は特に限定はなく不織布を構成する極細繊維にあわせて選択すればよいが、例えばポリエステル系極細繊維であれば分散染料を用いることができる。分散染料で染色した場合は、染色後に還元洗浄を行ってもよい。
また、染色の均一性や再現性をアップする目的で染色時に染色助剤を使用することは好ましい。さらにシリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤、耐光剤等の仕上げ剤処理を施してもよく、仕上げ処理は染色後でも、染色と同浴でもよい。
本発明の皮革様シート状物は、家具、椅子、壁材や、自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席、天井、内装などの表皮材として非常に優美な外観を有する内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴、婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、及びそれらの一部に使用した衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布等の工業用資材として好適に用いることができる。
本発明の皮革様シート状物を研磨布として用いる場合、テクスチャー加工を行う方法としては、かかる研磨布を、加工効率と安定性の観点から、30〜50mm幅のテープ状にカットして、テクスチャー加工用テープとして用いる。
該研磨テープと遊離砥粒を含むスラリーとを用いて、アルミニウム合金磁気記録ディスクやガラス磁気記録ディスクのテクスチャー加工を行うのが好適な方法である。研磨条件としては、スラリーはダイヤモンド微粒子などの高硬度砥粒を水系分散媒に分散したものが好ましく用いられる。
砥粒の保持性と分散性の観点から、本発明の研磨布を構成する極細繊維の繊維径に適合した砥粒径としては0.2μm以下が好ましいものである。
本発明で得られた研磨布は、表面上の立毛繊維が極めて均一に分散し、且つ極細繊維表面に繊維軸方向に沿ったある程度連続した微細な凹部を有している為、繊維が砥粒を適切に把持することが可能となり、アルミニウム合金基板及びガラス基板のテクスチャー加工において、スクラッチ欠点が少なく、基板表面上に表面粗さ0.3nm以下という高精度なテクスチャー加工を施すことができる。さらにラインデンシティの高いテクスチャー痕を形成することができ、電磁変換特性に優れ、記録ディスクの高記録密度化に対応可能な加工面として仕上げることができるものである。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[評価方法]
(1)平均単繊維繊度
不織布、または皮革様シート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して繊維の素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらに100本の平均値を計算することで算出した。
(2)繊度CV
不織布、または皮革様シート状物の内部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2000倍で観察し、その写真から、束状繊維の1つの束内を構成する極細繊維の繊維径を測定し、繊維径から各単繊維の繊度に換算して、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)で表した。5つの束状繊維について、同様の測定を行い、平均値を繊度CVとした。
(3)シリカ含有量
不織布、または皮革様シート状物から、極細繊維のみを分解し、60℃に加熱した0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で1分間洗浄した後、熱分解させ、その残渣からICP(プラズマ)発光分析装置を用いて、シリカ含有量を測定した。
(4)凹部の測定
走査型電子顕微鏡(SEM)により、5本の極細単糸表面写真を撮影し(×7000倍)、それぞれからランダムに30カ所選定し、繊維円周方向の凹部の幅を測定、この平均値で評価した。
(5)スティックスリップ特性
本発明ではインストロン試験器にて摩擦特性を評価している。
サンプルサイズA:15×5cm、B:4.5×13cmとして、皮革様シート状物を各1枚採取する。なお、サンプルはその布帛組織、例えば、織組織、編組織、シート組織、また表面加工、染色有無等に限定されるものではない。
次に、図1のように起毛面を上にサンプルAを台に固定する。サンプルBの起毛面と反対に荷重(185gの鉄板、9×4cmのサイズ)を固定する。サンプルAの上にサンプルBを乗せて、5mm/分で荷重とサンプルBを引っ張る。この際、スティックスリップ特性を有する場合、図2のような均一な応力変化曲線が得られ、その波形から平均の応力変化量(g)を求めることができる。また、1インチ(2.54cm)あたりのスティックスリップ個数も同波形から求めることができる。
(6)皮革様シート状物構造
皮革様シート状物の内部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率300倍で観察し、その写真からポリウレタンと極細繊維の密着状態、ポリウレタン部分の構造を判断した。
(7)シロキサン結合の確認とシリコン原子含有量の定量
ポリウレタンのNMRによる測定において、シロキサン結合に起因するピークにより、シロキサン結合の存在有無を確認した。また、シート状物、またはシート状物から抽出したポリウレタンの元素分析を行うことで、シリコン原子の含有量を定量した。
(8)ポリエチレングリコールの確認
ポリウレタンのNMRによる測定において、基準物質に起因するピークとポリエチレングリコールに起因するピーク(例えば、酸素原子隣のエチレン鎖部分のプロトン)の面積を比較することで、算出した。
(9)ポリウレタン水分散液の感熱ゲル化温度
試験管に固形分濃度10重量%のポリウレタン水分散液を10g入れ、95℃の恒温熱水浴中で昇温し、ポリウレタン水分散液が流動性を失ってゲル化・凝固するときの温度を感熱ゲル化温度とした。
(10)ポリウレタン水分散液の含有有機溶剤量
含浸に使用する固形分濃度のポリウレタン水分散液において、分散媒のガスクロマトグラフィー分析(HITACHI製263−50、カラム:有機溶剤の種類によって異なるが、N,N−ジメチルホルムアミドの場合はPEG20Mを使用。)にて含有有機溶剤量を定量した。
(11)ポリウレタンの耐加水分解性(重量減少率)
ポリウレタン水分散液をタテ10cm×ヨコ10cmのポリエチレン製不織布(タテ糸15本/cm、ヨコ糸20本/cmの密度)に含浸し、120℃30分乾燥することで、不織布重量に対して75重量%のポリウレタンを付与したシートを得た。
次に、得られたシートを濃度15g/L水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して90℃30分処理後の重量を測定し、浸漬処理前の重量と比較して重量減少率を算出した。
(12)外観品位
皮革様シート状物の表面品位は目視と官能評価にて下記のように評価した。本発明の良好なレベルは「○」とした。
○:ギラギラしない上品な光沢感があり
△:マイルドな光沢感があり
×:光沢感はほとんどなく、ややくすんで白っぽい
(13)発色性
皮革様シート状物の発色性は目視評価にて下記のように評価した。
○:発色性良好
△:発色性普通
×:発色性劣
(14)風合い
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、下記の評価を触感で判別を行い、最も多かった評価を風合いとした。本発明の良好なレベルは「○」とした。
○:非常に柔軟であり、かつ適度な反発感がある。
△:柔軟であるが、反発感がない。または、反発感はあるが、硬い。
×:硬い。
(15)ピリング評価
皮革様シート状物のピリング評価は、マーチンデール摩耗試験機として、James H.Heal&Co.製のModel 406を、標準摩擦布として同社のABRASTIVE CLOTH SM25を用い、12kPa相当の荷重をかけ、摩耗回数20,000回の条件で摩擦させた後の試料の外観を目視で観察し、評価した。評価基準は試料の外観が摩擦前と全く変化が無かったものを5級、毛玉が多数発生したものを1級とし、その間を0.5級ずつ区切った。また、本発明における合格レベルは4級以上とした。
(16)基板表面粗さ
JIS B0601(2001年度版)に準拠して、Schmitt Measurement Systems, Inc製TMS−2000表面粗さ測定器を用いて、テクスチャー加工後のディスク基板サンプル表面の任意の10カ所について平均粗さを測定し、10カ所の測定値を平均することにより基板表面粗さを算出した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(17)スクラッチ点数
テクスチャー加工後の基板5枚の両面すなわち計10表面を測定対象として、Candela5100光学表面分析計を用いて、深さ3nm以上の溝をスクラッチとし、スクラッチ点数を測定し、10表面の測定値の平均値で評価した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(18)ラインデンシティ
原子間力顕微鏡AFMを用いて、テクスチャー加工後の基板サンプル表面の任意の10カ所について、半径方向長さ1μmあたりに形成されているテクスチャー痕の本数を測定し、その平均値をラインデンシティとした。数値が大きいほど高性能であることを示す。
[化学物質の表記]
各実施例・比較例で用いた化学物質の略号の意味は以下の通りである。
C5C6PC:ペンタメチレンカーボネートジオールとヘキサメチレンカーボネートジオールの共重合ポリカーボネートポリオール
3MPC:ポリ(3−メチルペンタンカーボネート)ポリオール
PHC:ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール
IPDI:イソフォロンジイソシアネート
H12MDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
PET:ポリエチレンテレフタレート
Ny6:6−ナイロン
PEG:ポリエチレングリコール。
[ポリウレタン種]
実施例、比較例で用いたポリウレタン水分散液の組成は下記の通りである。また、各溶液の固形分濃度は30重量%とした。さらに、各ポリウレタンの特性を表1に示した。
(1)自己乳化型ポリウレタン水分散液I(PU−I)
ポリイソシアネート:IPDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.05重量%
(2)自己乳化型ポリウレタン水分散液II(PU−II)
ポリイソシアネート:IPDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.06重量%
(3)自己乳化型ポリウレタン水分散液III(PU−III)
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.05重量%
(4)自己乳化型ポリウレタン水分散液IV(PU−IV)
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.04重量%
(5)自己乳化型ポリウレタン水分散液V(PU−V)
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :ジメチロールプロピオン酸トリエチルアミン塩
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.05重量%
(6)自己乳化型ポリウレタン水分散液VI及びVIII(PU−VI及びPU−VIII)
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :3MPC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.06重量%
(7)自己乳化型ポリウレタン水分散液VII及びIX(PU−VII及びPU−IX)
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :3MPC
内部乳化剤 :ジメチロールプロピオン酸トリエチルアミン塩
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン
含有有機溶剤 :0.08重量%
(8)溶剤系ポリウレタンX(PU−X)
ポリイソシアネート:MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :なし
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :なし
含有有機溶剤 :100重量%(溶媒N,N−ジメチルホルムアミド)
(9)強制乳化型ポリウレタンXI(PU−XI)
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :なし
外部乳化剤 :ノニオン系界面活性剤
内部架橋剤 :なし
含有有機溶剤 :0.09重量%
Figure 2008208510
[実施例1]
A.ポリエステルの製造方法
ジメチルテレフタル酸100重量部と、平均一次粒子径0.06μmのコロイダルシリカを濃度で10重量%含有し十分に攪拌したエチレングリコールスラリー75重量部、反応触媒として酢酸マグネシウム0.05重量部および酸化アンチモン0.04部をエステル交換缶に仕込み、チッソ雰囲気下で150℃から250℃に徐々に加熱し、生成するメタノールを抽出しつつエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチルを0.05重量部添加し、ついで徐々に減圧しつつ280℃まで昇温して2時間重合し、コロイダルシリカ含有ポリエステルチップを得た。シリカ含有量は生成ポリエステルに対して1.0重量%であった。
B.皮革様シートの製造方法
5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として45部、島成分として上記コロイダルシリカ含有ポリエステルを55部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が36島含まれる形態であり、平均繊度が2.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。
この不織布を90℃の湯中で2分処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、自己乳化型ポリウレタン水分散液I(PU−I)を含浸し、乾燥温度125℃で10分熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対するポリウレタン重量が80重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。
次にこのシートを90℃に加熱した濃度20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した、かつ極細繊維に凹凸を発現せしめた脱海シートを得た。脱海シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.04dtex、繊度CVは7.8%であることを確認した。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面を240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機にて分散染料により染色を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。
得られた皮革様シート状物の外観品位、ピリング評価、風合いは良好であった。
[実施例2〜6]
コロイダルシリカ粒子の含有率、粒子径をそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物はいずれも外観品位、発色性、風合いは良好であった。
[実施例7]
島成分としてコロイダルシリカ含有ポリブチレンテレフタレートに変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物はいずれも外観品位、発色性、風合いは良好であった。
[実施例8〜15]
自己乳化型ポリウレタン水分散液をそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物はいずれも外観品位、ピリング評価、風合いすべて良好であった。
[実施例16]
5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として20部、島成分として上記コロイダルシリカ含有PETが80部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が16島含まれる形態であり、平均繊度が3.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。
この不織布を90℃の湯中で2分処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、自己乳化型ポリウレタン水分散液VII(PU−VII)を含浸し、乾燥温度125℃で10分熱風乾燥することで、不織布重量に対するポリウレタン重量が85重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。
次にこのシートを90℃に加熱した濃度20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した、かつ極細繊維に凹凸を発現せしめた脱海シートを得た。脱海シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.19dtex、繊度CVは7.4%であることを確認した。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面を240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機にて分散染料により染色を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。
得られた皮革様シート状物の外観品位、ピリング評価、風合いすべて良好であった。
[実施例17]
ポリ乳酸を海成分として20部、島成分としてが80部からなる割合で、1フィラメント中に島成分として上記コロイダルシリカ含有PETが16島含まれる形態であり、平均繊度が3.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。
この不織布を90℃の湯中で2分処理して収縮させ、100℃5分で乾燥した。次いで、自己乳化型ポリウレタン水分散液VIII(PU−VIII)を含浸し、乾燥温度125℃で10分熱風乾燥することで、不織布重量に対するポリウレタン重量が85重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。
次にこのシートを90℃に加熱した濃度40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した、かつ極細繊維に凹凸を発現せしめた脱海シートを得た。脱海シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.18dtex、繊度CVは7.6%であることを確認した。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面を240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機にて分散染料により染色を行い、本発明のシート状物を得た。
得られたシート状物の外観品位、ピリング評価、風合いずべて良好であった。
[実施例18]
島成分にコロイダルシリカ含有PBTを用い、かつ自己乳化型ポリウレタン水分散液IX(PU−IX)を用いた以外は実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。平均単繊維繊度は0.04dtex、繊度CVは7.8%であった。
得られた皮革様シート状物の外観品位、ピリング評価、風合いともに良好であった。
[比較例1〜4]
シリカ粒子の含有量、粒子径をそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物はいずれもピリング評価は良好であったが、外観品位、発色性、風合いに劣るものであった。
[比較例5]
脱海シートにアルカリ処理を行わず、凹凸を発現させなかったこと以外は実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物はピリング評価は4.5級であったが、外観品位、発色性、風合いともに劣るものであった。
[比較例6]
添加粒子を酸化チタンに変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られたスティックスリップの応力変化曲線は不均一で評価不能あった。さらに皮革様シート状物はピリング評価は4.5級であったが、外観品位、発色性、風合いに劣るものであった。
[比較例7]
添加粒子を酸化チタンに変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物はピリング評価は4.5級であったが、外観品位、発色性、風合いに劣るものであった。
[比較例8]
実施例1において、ポリウレタンを付与する前の不織布を濃度20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海不織布を作製し、次にこのシートを90℃に加熱した濃度20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い極細繊維を減量処理して凹凸を付与した脱海シートを得た。
その後、溶剤系ポリウレタンX(PU−X)を含浸し、40℃の水中に浸漬して60分間湿式凝固することで、不織布の島成分重量に対するポリウレタン重量が80重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た以外は実施例1と同様に処理を行い、皮革様シート状物を得た。
得られた皮革様シート状物はピリング評価は3.5級と低く、非常に堅い風合いで、立毛がほとんどない外観品位不良であった。
[比較例9]
強制乳化型ポリウレタン水分散液XI(PU−XI)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行い、皮革様シート状物を得た。
得られた皮革様シート状物は風合いは良好であったが、外観品位は繊維の分散が不良であり、ピリング評価は2級であった。
Figure 2008208510
Figure 2008208510
[実施例19]
染色しない以外は実施例1と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、以下の条件でテクスチャー加工を行った。
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工したディスクを用い、研磨布表面に平均粒径0.1μmのダイヤモンド結晶からなる遊離砥粒スラリーを滴下し、テープ走行速度を5cm/分の条件で10秒間研磨を実施した。 テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.17nm、0.16nm、0.17nm、0.15nm、0.16nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は160点、ラインデンシティは15本/μm幅であった。
[実施例20〜22]
コロイダルシリカ粒子の含有率、粒子径をそれぞれ変更した以外は、実施例19と同様の処理を行い、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さ、スクラッチ点数、ラインデンシティすべてにおいて良好な結果が得られた。
[実施例23〜31]
自己乳化型ポリウレタン水分散液をそれぞれ変更した以外は、実施例19と同様の処理を行い、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さ、スクラッチ点数、ラインデンシティすべてにおいて良好な結果が得られた。
[実施例32]
染色しない以外は実施例16と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.15nm、0.16nm、0.17nm、0.16nm、0.18nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は140点、ラインデンシティは12本/μm幅であった。
[比較例10]
染色しない以外は比較例1と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.16nm、0.16nm、0.17nm、0.16nm、0.18nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は150点、ラインデンシティは7本/μm幅であった。
[比較例11]
染色しない以外は比較例2と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.20nm、0.21nm、0.18nm、0.19nm、0.19nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は170点、ラインデンシティは9本/μm幅であった。
[比較例12]
染色しない以外は比較例4と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.21nm、0.19nm、0.22nm、0.20nm、0.21nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は160点、ラインデンシティは9本/μm幅であった。
[比較例13]
染色しない以外は比較例8と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.20nm、0.16nm、0.18nm、0.19nm、0.20nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は160点、ラインデンシティは7本/μm幅であった。
[比較例14]
染色しない以外は比較例9と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.18nm、0.16nm、0.17nm、0.20nm、0.16nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は170点、ラインデンシティは8本/μm幅であった。
Figure 2008208510
本発明のスティックスリップ特性の測定法の概略図である。 本発明のスティックスリップの応力変化曲線の一例。
符号の説明
1:サンプルA
2:サンプルB
3:荷重
4:ロードセル

Claims (17)

  1. 平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布に自己乳化型ポリウレタンを含有した皮革様シート状物であって、該極細繊維表面に凹凸を有し、該凹凸の繊維円周方向における凹部の平均幅が0.05μm以上1.0μm以下であることを特徴とする皮革様シート状物。
  2. 該極細繊維が0.020μm以上0.100μm以下の平均一次粒子径を有するシリカを該極細繊維に対して0.3〜5.0重量%含有していることを特徴とする請求項1に記載の皮革様シート状物。
  3. スティックスリップ曲線の応力変化Δfが10g以上、80g以下であり、かつ1インチ(2.54cm)あたりのスティックスリップ回数が25〜50個/インチ(2.54cm)であることを特徴とする請求項1記載の皮革様シート状物。
  4. 該自己乳化型ポリウレタンと該極細繊維は実質的に密着しておらず、かつ該自己乳化型ポリウレタン部分は無孔構造であり、該自己乳化型ポリウレタン分子構造内にシロキサン結合による架橋構造を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の皮革様シート状物。
  5. 前記自己乳化型ポリウレタンの分子構造内のシリコン原子の含有量はポリウレタン重量に対して0重量%よりも多く、1重量%以下であることを特徴とする請求項3に記載の皮革様シート状物。
  6. 前記自己乳化型ポリウレタンがポリウレタン全重量に対して3重量%以上30重量%以下のポリエチレングリコールを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシート状物。
  7. 前記自己乳化型ポリウレタンの内部乳化剤がノニオン系であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の皮革様シート状物。
  8. 請求項1〜6に記載のシート状物の製造方法であって、次の(1)〜(3)の工程をこの順番で経ることを特徴とするシート状物の製造方法。
    (1)アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2成分以上の高分子物質であり、その1成分はシリカを添加した高分子物質である組み合わせからなる極細繊維発生型繊維を用いてシートを作成する工程。
    (2)自己乳化型ポリウレタン水分散液をシートに含浸して、該自己乳化型ポリウレタンを付与する工程。
    (3)該自己乳化型ポリウレタンを付与したシートをアルカリ水溶液で処理して極細繊維および凹凸を発現せしめる工程。
  9. 前記極細繊維発生型繊維が海島型複合紡糸繊維であることを特徴とする請求項7に記載のシート状物の製造方法。
  10. 前記海島型複合紡糸繊維の海成分がテレフタル酸とエチレングリコールを主たる構成成分とし、全酸成分に対し、5〜12mol%の5−ナトリウムスルホイソフタル酸を含有する共重合ポリエステルからなることを特徴とする請求項8に記載のシート状物の製造方法。
  11. 前記自己乳化型ポリウレタン水分散液が有機溶剤を0重量%以上1重量%以下含有することを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の皮革様シート状物の製造方法。
  12. 前記自己乳化型ポリウレタン水分散液をシートに含浸する工程において、自己乳化型ポリウレタン水分散液の濃度が10重量%以上50重量%以下であることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の皮革様シート状物の製造方法。
  13. 前記自己乳化型ポリウレタンの感熱ゲル化温度が55℃以上90℃以下であることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載のシート状物の製造方法。
  14. 請求項1〜6のいずれかに記載の皮革様シート状物を表皮材とすることを特徴とする内装材。
  15. 請求項1〜6のいずれかに記載の皮革様シート状物を用いることを特徴とする衣料用資材。
  16. 請求項1〜6のいずれかに記載の皮革様シート状物を用いることを特徴とする工業用資材。
  17. 請求項1〜3 のいずれかに記載の皮革様シート状物を含むこと特徴とする研磨布。
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