JP2008202206A - 皮革様シート状物、その製造方法、並びに該皮革様シート状物を用いた内装材、衣料用資材、工業用資材、及び研磨布 - Google Patents

皮革様シート状物、その製造方法、並びに該皮革様シート状物を用いた内装材、衣料用資材、工業用資材、及び研磨布 Download PDF

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【課題】本発明は、高級な外観、物性に優れ、ソフトでしなやかな風合い、さらには表面のドライタッチ、キシミ感をあわせもつ皮革様シート状物、その製造方法、並びにそれを用いてなる内装材、衣料用資材、工業用資材及び研磨布を提供する。
【解決手段】平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布に弾性重合体を含有した皮革様シート状物であって、該極細繊維表面に凹凸を有し、該凹凸の繊維円周方向における凹部の平均幅が0.05μm以上1.0μm以下であることを特徴とする皮革様シート状物。
【選択図】なし

Description

本発明は、高級な外観、物性に優れ、ソフトでしなやかな風合い、さらには表面のドライタッチ、キシミ感をあわせもつ皮革様シート状物、その製造方法、並びにそれを用いてなる内装材、衣料用資材、工業用資材及び研磨布に関するものである。
主として極細繊維とポリウレタンからなる皮革様シート状物は優れた特徴を有しており、種々の用途に広く利用されている。とりわけポリエステル系極細繊維を用いた皮革様シート状物は耐光性に優れるため、衣料や椅子張り、自動車内装材用途等にその使用が年々広がってきた。
皮革様シート状物の分野では、高品質化が要求され、外観(スエード感、ピリング)、風合い(柔軟な手触り)、発色性(色の鮮明さ、濃度感)等の感性面での要求をすべて高いレベルで満足するような高品質のものが求められており、これを解決すべく種々の提案がなされてきた。
例えば、高級な外観や柔軟でしなやかな風合いの皮革様シート状物を得るために、皮革様シート状物を構成している繊維を極細化する方法が一般に用いられているが、繊維を単に極細化していくと、細くなるにつれてよりくすんだ白っぽい色にしか染色できないので、外観や風合いがいくら優れていても発色性の点で劣るという欠点を有している。
このような皮革様シート状物の発色性改良については、特許文献1でスエード調人工皮革の立毛表面に易染性樹脂を付与して染色することが提案されており、また特許文献2ではアルカリの存在下で還元されて水溶性となる染料で染色し、酸化して染料を固着する染色法も提案されている。しかしながら、上記の特許文献に記載されているような発色性の改良方法は、発色性自体は改良できるものの、外観や触感、風合いを低下させるものであった。
特許文献3では、風合いが柔軟で、抗ピル性を有するスエード調人工皮革について提案がされている。該文献ではピリング性向上のために極細繊維にシリカを添加している。しかしながら、ポリエステル繊維の表面には凹凸がほとんどないため、高品質なドライタッチ、天然繊維、特に絹においてみられるキシミ感に代表される蝕感等を得ることができなかった。さらには、上品な光沢感に関する言及も全くなかった。
また、ポリプロピレンテレフタレート繊維やポリブチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維を極細繊維として使用することで、耐候性に優れたソフトでかつしなやかな風合いの皮革様シート状物が得られるが、いずれも単に繊維化するだけではキシミ感をえることはできなかった。
その他、微細な凹凸を繊維表面に形成される技術が、特許文献4、特許文献5等で多数提案されているが、いずれも発色性は向上するものの高質感のドライタッチ感、光沢感はほとんど認められなかった。
上記のように、表面のドライタッチ、柔軟でしなやかな風合い、キシミ感をあわせもち、かつ上品な光沢感を有する皮革様シート状物はこれまでに提供できていなかった。
一方、研磨布の分野では、特に磁気記録ディスクに用いるアルミニウム合金基板およびガラス基板を超高精度の仕上げでテクスチャー加工を施す際に好適に用いられるが、ハードディスクの電磁変換特性を向上させるためには、ディスク基板の表面粗さを極小化し、且つスクラッチを抑制し、さらにシャープなテクスチャー痕を線密度が高い状態で形成させる必要がある。基板の線密度は基板表面のラインデンシティという指標で評価できる。
この課題に対し、研磨布の砥粒の把持性を向上させることが有効であると考えられている。砥粒の把持性を向上させることにより、砥粒が基板表面に強く押し付けられることができ、基板表面に鋭利な溝が形成され、それにより高いラインデンシティを得ることができるからである。そして、砥粒の把持性を向上させるためには、繊維表面に凹凸を付与し、該溝部分で砥粒を把持する方法が考えられる。
例えば特許文献6では織物の繊維表面に溝を有する研磨用テープが開示されている。しかし該繊維は1dtex程度の太繊度品であり、また該溝部分は開口幅が0.6〜3μm、深さが0.6〜2μm程度と非常に大きい為、砥粒が凹部分に数個凝集することによるスクラッチの増加が懸念される。加えて、近年の研磨布に求められる0.5dtex以下の極細繊維を得ることは凸部の合流などが発生するため、困難であった。
特開昭50−135331号公報 特開平7−173778号公報 特開2004−339617号公報 特開昭55−107512号公報 特開昭55−107544号公報 特開2003−225856号公報
本発明は、高級な外観、物性に優れ、さらには表面のドライタッチ、ソフトでしなやかな風合い、キシミ感をあわせもつ皮革様シート状物、その製造方法、並びにそれを用いてなる内装材、衣料用資材、工業用資材及び研磨布に関するものである。
すなわち、本発明の皮革様シート状物は、「平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布に弾性重合体を含有した皮革様シート状物であって、該極細繊維表面に凹凸を有し、該凹凸の繊維円周方向における凹部の平均幅が0.05μm以上1.0μm以下であることを特徴とする皮革様シート状物」である。
また、本発明の皮革様シート状物は、「前記の皮革様シート状物の製造方法であって、次の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする皮革様シート状物の製造方法。
(1)シリカを添加した高分子物質と該高分子物質とアルカリ水溶液に対する相溶性の異なる少なくとも1種類以上の高分子物質の組み合わせからなる極細発生型繊維の不織布からシートを作成する工程。
(2)シートを溶解剤若しくは分解剤で処理して極細繊維を発現せしめる工程。
(3)シートをアルカリ水溶液で処理して、微細凹凸を発現せしめる工程。
(4)シートに弾性重合体を付与し、凝固する工程。」である。
本発明によれば、外観、風合い、物性に優れた皮革様シート状物、並びにそれを用いてなる内装材、衣料用資材、工業用資材及び研磨布を得ることができる。
本発明の皮革様シート状物は、平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布に弾性重合体を含有した皮革様シート状物である。
ここでいう皮革様シート状物とは、天然皮革のようなスエード、ヌバック、銀面等の優れた表面外観を有してなるものであり、好ましくはスエードやヌバックといった立毛調の外観において、滑らかなタッチと優れたライティングエフェクトを有するものである。
本発明の皮革様シート状物を構成する不織布を構成する極細繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどのポリエステルなどの各種合成繊維を用いることができる。中でも、強度、寸法安定性、耐光性、染色性の観点からポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維を用いることが好ましい。
また、不織布は異なる素材の極細繊維が混合されて構成されていてもよく、また不織布の内部に、強度を向上させるなどの目的で、織物や編物を挿入してもよい。なお、織物や編物を構成する繊維の平均単繊維繊度は特に限定はなく、0.001dtex以上1dtex以下の極細繊維であってもよい。
不織布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度としては、シートの柔軟性や立毛品位の観点から0.001dtex以上0.5dtex以下であることが重要である。好ましくは0.3dtex以下、より好ましくは0.2dtex以下である。一方、染色後の発色性やサンドペーパーなどによる研削など起毛処理時の繊維の分散性、さばけ易さの観点からは、0.005dtex以上であることが好ましい。
なお、不織布を構成する極細繊維の平均単繊維繊度は、極細繊維の断面が円形または円形に近い楕円形の場合は、皮革様シート状物(もしくは不織布)表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、極細繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらにその100本の平均値を計算することで算出される。
一方、不織布を構成する極細繊維が異形断面の場合は、同様にして、異形断面の外周円直径を繊維径として算出する。さらに、円形断面と異形断面が混合している場合、繊度が大きく異なるものが混合している場合等は、それぞれが同数程度となるように100本を選び、算出する。
不織布を構成する極細繊維の繊度の均一性に関しては、繊維束内の繊度CVが10%以下であることが好ましい。ここで繊度CVとは、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)表示したものであり、値が小さいほど均一であることを示すものである。繊度CVを10%以下とすることで、本発明の皮革様シート状物表面の立毛の外観は優美となり、また染色も均質で良好なものとすることができる。極細繊維の断面が円形または円形に近い楕円形でない場合の繊度CVは、平均単繊維繊度の算出と同様の方法による。
極細繊維の断面形状としては、丸断面でよいが、楕円、扁平、三角などの多角形、扇形、十字型などの異形断面のものを採用してもよい。
本発明において、極細繊維に含有されているシリカは、乾式シリカ、湿式シリカなどが挙げられるが、中でもコロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカとは、ケイ素酸化物を主成分とし、単粒子状で存在する微粒子が水または単価のアルコール類またはジオール類またはこれらの混合物を分散媒としてコロイドとして存在するものをいう。
シリカを極細繊維中に添加する方法としては、例えば極細繊維がポリエステル極細繊維の場合は、ポリエステルのエステル化あるいはエステル交換反応時、重縮合反応時、重縮合反応後、溶融成形前の何れかの段階において混合させればよい。
極細繊維に含有されているシリカ微粒子は、平均一次粒子径が0.02〜0.1μmであることが必要である。平均一次粒子径が0.1μm より大きくなると、アルカリ減量処理後に形成される極細繊維表面のボイド径が大きくなりすぎて、繊維表面反射光を十分に抑制することができず、マイルドな光沢が得られない、また発色性も劣ってしまう。逆に、平均一次粒子径が0.02μm 未満では、シリカ粒子が凝集を起こしやすく、これにより紡糸時の背圧上昇が引き起こされ、安定した工業生産を行うのに支障を来す。光沢感および発色性の点から0.04〜0.08μm であることが好ましい。
シリカ粒子の一次粒径の測定は、乾固した粒子を透過型電子顕微鏡で写真撮影し、任意の100点について選び出し、球相当径を求め、平均粒子径とした。
また、本発明の目的である優れた光沢感および発色性を発現させるためには、シリカ粒子の添加量は、極細繊維の重量に対して0.3〜5重量%であることが必要である。シリカ粒子の添加量が5重量%を超えると、粒子凝集によりパック内圧が上昇し工業生産的な問題が発生し、さらにシリカ粒子が繊維表面に露出している場合、ガイド類の摩耗が引き起こされ、製糸性が低下するとともに得られた繊維の品位が悪化する。逆に、添加量が0.3重量%未満になると、糸道ガイド類の摩耗、生産性は改善されるものの、ドライタッチ、キシミ感に代表される風合いおよび製品の光沢感で劣ってしまう。製糸性、風合いおよび外観を考慮するとコロイダルシリカ粒子の添加量は0.7〜4重量%であることがさらに好ましい。
本発明における極細繊維は、その表面に繊維円周方向の平均幅が0.05μm以上1.0μm以下の凹部を有する。凹部の平均幅が0.05μm以上であると、表面のドライタッチ感に優れ、染色した際の光沢感と深色性および鮮明性の効果が十分となるため好ましい。凹部の平均幅が1.0μm以下であると、細やかなキシミ感が考えられ、かつ可視光線の表面反射率が高くならず、色がくすんだり、白っぽくなることがなく、上品な光沢感を十分に発現することができるので好ましい。
また、本発明の極細繊維を研磨布として使用する場合にも、不織布を形成する極細繊維がその表面に繊維軸方向に沿った凹部を有することが重要である。該凹部によって砥粒を適切に把持し、ディスク基板表面に鋭利な溝を形成できるからである。
研磨布として用いる場合は、凹部の幅はより好ましくは0.1〜0.5μmである。幅が0.05μm以上であると砥粒を把持する効果がより向上するため好ましい。また凹部の幅が1μm以下であれば砥粒に対して凹部が大きすぎることがなく、砥粒が溝部分に凝集して表面粗さの上昇や、スクラッチの増加が起こることがなく好ましい。幅が1μmを超える凹部が存在した場合、砥粒が該溝部分に凝集するだけでなく、極細繊維の強度、ヤング率が大幅に低下し、結果として研磨性能が著しく悪化するため、該範囲を超える凹部は存在しないことが好ましい。一方、幅が0.05μm未満である凹部については、砥粒の把持性の向上には寄与できないものの、表面粗さの上昇や、スクラッチの増加には直接は寄与しないため存在していてもよい。
凹部の平均幅の測定は、極細繊維表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率7000倍で撮影し、凹部をランダムに100箇所選び、繊維長手方向に垂直に凹部幅を測定して、さらにその100箇所の平均値を計算することで算出される。
ただし、本発明の要件を満足する範囲で、凹部幅が0.05μm以下、1.0μm以上の凹部を含んでも良いが、ドライタッチ、キシミ感等の風合いの観点から、数にして全体の5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下である。
また、本発明の目的である絹のようなキシミ感を得るためには、極細繊維のスティックスリップ曲線の応力変化Δfが10g以上、80g以下であることが好ましい。ここで、いうスティックスリップ現象とは滑り面の運動が間欠的になる現象であり、繊維(布帛)のスティックスリップの一例は文献(例えば、繊維機械学会誌、vol.39,No.10(1986))に記載されている。本発明では後述するような方法で測定したものをいうが、スティックスリップはポリエステル繊維と金属鏡面または梨地面、または繊維−繊維間で認められるものである。本発明の極細繊維はスティックスリップ特性を有する必要がある。この値が適正な範囲となるようにならしめることにより絹のようなキシミ感を得ることが可能にある。
その値としては後述する図2のようなスティックスリップ曲線においてΔfが10g以上であることが好ましい。これ以下であると十分なキシミ感を得ることができない。また、80gを超えると、良好なキシミ感が得られなくなるばかりか、不快な感触を与えてしまう。絹のようなキシミを得るためのΔfのより好ましい範囲は、15g以上70g以下であり、さらに好ましくは20g以上60g以下であり、繊維の表面状態が荒れている、つまりは凹凸の凹部幅が大きいほど、Δfは大きくなり、表面が平坦であるほど、つまりは凹凸が小さいほど、Δfは小さくなる。
また1インチあたりのスティックスリップの個数が25個/インチ(2.54cm)以上、50個/インチ(2.54cm)以下であることが好ましい。さらには30個/インチ(2.54cm)以上、45個/インチ(2.54cm)以下がより好ましく、30個/インチ(2.54cm)以上、40個/インチ(2.54cm)以下がいっそう好ましい。25個/インチ(2.54cm)以下であると、十分なキシミ感を得ることができない。また50個/インチ(2.54cm)を超えると良好なキシミ感が得られなくなるばかりか、不快な感触を与えてしまう。スティックスリップの個数については、繊維の表面状態が荒れている、つまりは凹凸が大きいほど、個数は少なくなり、表面が平坦であるほど、つまりは凹凸が小さいほど、多くなる。ただし、本発明の規定範囲以下まで凹凸が小さくなると、スティックスリップ自体が発生しなくなる。
一方、研磨布においても、スティックスリップ特性は表面粗さやスクラッチの増加に影響を及ぼしており、1インチあたりのスティックスリップの個数が少ないと、研磨時の砥粒を把持できなくなり、また1インチあたりのスティックスリップの個数が多いと、表面粗さは上昇し、スクラッチが増加してしまう。したがって、上記範囲とすることが好ましい。
このように、スティックスリップ特性は、繊維の表面状態と大きく関係しており、本発明では極細繊維表面に形成された凹凸の幅を制御することで、応力変化Δfと個数を両立させ、均一なスティックスリップ特性を得ることができる。なお、本発明におけるスティックスリップ特性は、後述するインストロン試験機を用いた測定方法のように、インストロン試験機を用いた動摩擦係数の測定で得られるチャートから同様に評価できる。
本発明の皮革様シート状物を構成する不織布は、短繊維不織布、長繊維不織布のいずれでもよいが、風合いや品位を重視する場合には、短繊維不織布が好ましい。同様に風合いや品位を重視する場合は、短繊維の繊維長は絡合による耐摩耗性を考慮して、25mm以上90mm以下であることが好ましい。
本発明においては、このような不織布に含浸する弾性重合体は、従来から皮革様シートの製造に用いられているポリウレタン、合成ゴム、アクリル酸エステル系重合体または共重合体、可塑剤の使用によって弾性化した樹脂、例えばポリ塩化ビニル、ポリアミド等の弾性重合体およびそれらから選ばれた少なくとも1種類の弾性重合体を主体とした重合体が選択できるが、弾性回復性、スポンジ形成性等が良好なことよりポリウレタンがもっとも好ましく用いられる。不織布に弾性重合体の付与方法としては特に制約は無く、弾性重合体溶液中に浸漬しニップする方法や、不織布上に弾性重合体溶液を付与し高速回転するロールで摺り込む方法等が挙げられる。不織布に弾性重合体を付与した後に弾性重合体の凝固させるが、その凝固方法としては、弾性重合体の非溶剤を含む液に浸漬して湿式凝固する方法、ゲル化させた後加熱乾燥する方法などが挙げられる。ここで含浸する弾性重合体は、柔軟性、弾性回復性、スポンジ形成性等よりポリウレタンがもっとも好ましく用いられる。ポリウレタンとしては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールあるいはポリエステルポリエーテルジオール等のポリマージオール等から選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、4、4’ージフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系のジイソシアネートなどから選ばれた少なくとも1種類のジイソシアネートと、エチレングリコール、ブタンジオール、エチレンジアミン、4、4’−ジアミノジフェニルメタン等の2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種類の低分子化合物とを所定のモル比で反応させて得たポリウレタンおよびその変性物が挙げられる。
本発明のポリウレタンは、カーボンブラック等の顔料、染料、防カビ剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、帯電防止剤等の界面活性剤、シリコーン等の消泡剤、セルロース等の充填剤、凝固調整剤等を含有していてもよい。
本発明の皮革様シート状物においては、極細繊維からなる不織布全重量に対するポリウレタンの含有量は20重量%以上200重量%以下であることが好ましい。20重量%以上とすることで、シート強度を得て、かつ繊維の脱落を防ぐことができ、200重量%以下とすることで、風合いが必要以上に硬くなるのを防ぎ、目的とする良好な立毛品位を得ることができる。より好ましくは30重量%以上180重量%以下である。
本発明の皮革様シート状物は、例えば染料、顔料、柔軟剤、風合い調整剤、ピリング防止剤、抗菌剤、消臭剤、撥水剤、耐光剤、耐候剤等の機能性薬剤を含んでいてもよい。
次に、本発明の皮革様シート状物の製造方法について説明する。
本発明の皮革様シート状物の製造方法は、(1)〜(4)の工程を含むものである。
(1)シリカを添加した高分子物質と該高分子物質とアルカリ水溶液に対する相溶性の異なる少なくとも1種類以上の高分子物質の組み合わせからなる極細発生型繊維の不織布からシートを作成する工程。
(2)シートを溶解剤若しくは分解剤で処理して極細繊維を発現せしめる工程。
(3)シートをアルカリ水溶液で処理して、微細凹凸を発現せしめる工程。
(4)シートに弾性重合体を付与し、凝固する工程。
(1)〜(4)を実施することで、極細繊維表面に微細凹凸を有する、表面がドライタッチで、しなやかさとキシミ感をあわせもつ皮革様シート状物を得ることができる。
なお、順序については、(1)が最初であればよく、(1)(2)(3)(4)の順、(1)(4)(2)(3)の順、または(1)(2)(4)(3)の順のいずれでも可能であり、特に制限するものではない。
先ず(1)の工程について説明する。
不織布を構成する極細繊維を得る手段としては極細繊維発生型繊維を用いる。極細繊維発生型繊維をあらかじめ絡合した後に繊維の極細化を行うことによって、極細繊維が絡合してなる不織布を得ることができる。
シリカを添加した高分子物質と、該高分子物質とアルカリ水溶液に対する相溶性の異なる少なくとも1種類以上の高分子物質とを海成分・島成分とし、海成分をアルカリ水溶液を用いて溶解除去することによって島成分を極細繊維とする海島型複合繊維や、該2種の高分子物質を繊維断面を放射状または多層状に交互に配置し、各成分を剥離分割することによって極細繊維に割繊する剥離型複合繊維などを採用することができる。中でも、海島型複合繊維は、海成分を除去することによって島成分間、すなわち繊維束内部の極細繊維間に適度な空隙を付与することができるので、基材の柔軟性や風合いの観点からも好ましい。
シリカを極細繊維中に添加する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法で添加すればよいが、例えば極細繊維がポリエステル極細繊維の場合は、ポリエステルのエステル化あるいはエステル交換反応時、重縮合反応時、重縮合反応後、溶融成形前の何れかの段階において混合させればよい。
海島型複合繊維には、海島型複合用口金を用い、海・島の2成分を相互配列して紡糸する高分子相互配列体方式と、海・島の2成分を混合して紡糸する混合紡糸方式などを用いることができるが、均一な繊度の極細繊維が得られる点で高分子配列体方式による海島型複合繊維がより好ましい。
極細繊維発生型繊維中で溶解または分解除去される成分としては、極細繊維成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、極細繊維成分との相溶性の低いポリマーであり、かつ紡糸性の観点から、極細繊維成分がポリエステルであれば、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリエチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート共重合体やポリ乳酸などのポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーである。
得られた極細繊維発生型繊維に、好ましくは捲縮加工を施し、所定長にカットして不織布の原綿を得る。捲縮加工やカット加工は通常の方法を用いることができる。得られた原綿を、クロスラッパー等によりウエブとし、次いで極細繊維発生型繊維を絡合して不織布とする。
極細繊維発生型繊維を絡合させ不織布を得る方法としては、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチ等の通常の方法を用いることができる。得られた前記不織布には、繊維の緻密感向上のために、温水やスチーム処理によって収縮処理を施してもよい。
また、前記不織布は、弾性重合体を付与する前に、不織布厚み方向に半裁(2枚に分割すること)、ないしは数枚に分割されて得られるものでもよい。
次に(2)の工程について説明する。本発明の皮革様シート状物は、極細繊維発生型繊維からなるシートを溶解剤若しくは分解剤で処理して極細繊維を発現せしめる。
極細繊維発生型繊維を、繊維構成ポリマーのうちの少なくとも1成分(好ましくは海成分構成ポリマー)を溶解剤若しくは分解剤で処理して、または機械的若しくは化学的処理により2成分の界面で剥離して極細繊維を発現せしめる。極細繊維発生型繊維の発現処理は弾性重合体の付与前後のどちらでもよい。弾性重合体付与前に変性処理を行う場合には、極細繊維と弾性重合体が接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を不織布に付与した後に弾性重合を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが好ましい。
続いて(3)の工程について説明する。
本発明の皮革様シート状物の製造方法においては、極細繊維を発現せしめた後、シートをアルカリ水溶液で処理して、凹凸を発現せしめる。該凹凸の発現については、シートをアルカリ水溶液で処理し、極細繊維表面からシリカ粒子を脱落させることで繊維表面に凹凸を付与するものである。
アルカリ水溶液は、特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液、アンモニア塩等を用いることができる。アルカリ水溶液の濃度は凹凸が発現できれば特に限定はないが、0.25mol/L以上10mol/L以下が好ましい。
極細繊維の減量率は凹部のサイズや繊維強度、布帛の風合いのバランスを鑑み、適宜調整することができるが、減量率は5重量%以上25重量%以下が好ましく、さらには10重量%以上20重量%以下がより好ましい。減量率5重量%以上では、繊維両面の凹部を十分に発現させることができるので好ましく、減量率25重量%以下では、コストの点および島成分の溶出や繊維強度の低下が起こりにくい点から好ましい。この範囲内では、極細繊維の繊維円周方向に凹部の平均幅が0.05μm以上1.0μm以下の凹部を得ることができる。
なお、アルカリ水溶液処理での重量減少率は、次のようにして算出できる。極細繊維発生型繊維から構成されるシートをトリクロロエチレン中で海成分を完全に溶解除去し、極細繊維が絡合してなる不織布を得た後、該シートを水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して処理後の重量を測定し、浸漬処理前の重量と比較して重量減少率を算出した。
ここで、極細繊維発生型繊維が海島型複合繊維で、その海成分がアルカリ水溶液に対する溶解性の高い熱可塑性高分子成分である場合、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルに5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ビスフェノールA化合物、イソフタル酸、アジピン酸、ドデカジオン酸、シクロヘキシルカルボン酸等を5〜12mol%共重合した共重合ポリエステルや、ポリ乳酸の場合には、(2)極細繊維化と共に(3)極細繊維への凹凸付与を同時に行えるため、より好ましい。
(4)の工程について説明する。
本発明の皮革様シート状物は、シートに弾性重合体を付与し、凝固させる。本発明の皮革様シート状物においては、極細繊維からなる不織布全重量に対する弾性重合体の含有量は20重量%以上200重量%以下であることが好ましい。20重量%以上とすることで、シート強度を得て、かつ繊維の脱落を防ぐことができ、200重量%以下とすることで、風合いが必要以上に硬くなるのを防ぎ、目的とする良好な立毛品位を得ることができる。より好ましくは30重量%以上180重量%以下である。
本発明の皮革様シート状物は、少なくとも片面に極細繊維の立毛を有している立毛調の皮革様シート状物としてもよい。皮革様シート状物表面に立毛を形成するための起毛処理は、サンドペーパーやロールサンダーなどを用いて、研削する方法などにより施すことができる。起毛処理の前にシリコーンエマルジョンなどの滑剤を付与してもよい。
また、起毛処理の前に帯電防止剤を付与することは、研削によって皮革様シート状物から発生した研削粉がサンドペーパー上に堆積しにくくなる傾向にあり好ましい。
また、皮革様シート状物は、起毛処理を行う前に、シート厚み方向に半裁、ないしは数枚に分割されて得られるものでもよい。
本発明の皮革様シート状物は、染色されたものでもよい。染色は、分散染料、カチオン染料やその他反応性染料を用い、必要に応じ分散剤、pH調整剤および金属イオン封鎖剤等を用い、高温高圧染色機により行う。染色温度は100〜150℃が好ましく、110〜140℃がより好ましい。100℃未満の場合、ポリエステル中に分散染料が充分に拡散し得えない。150℃を越える場合、該基材中の主に弾性重合体の加水分解により基材の強度低下、毛羽脱落等が懸念される。なお、染色後に還元洗浄を行ってもよい。
また、染色の均一性や再現性をアップする目的で染色時に染色助剤を使用することは好ましい。さらにシリコーン等の柔軟剤、帯電防止剤、撥水剤、難燃剤、耐光剤等の仕上げ剤処理を施してもよく、仕上げ処理は染色後でも、染色と同浴でもよい。
本発明の皮革様シート状物は、各種材料の表皮材として使用でき、家具、椅子、壁材や、自動車、電車、航空機などの車輛室内における座席、天井、内装などの内装材、シャツ、ジャケット、カジュアルシューズ、スポーツシューズ、紳士靴、婦人靴等の靴のアッパー、トリム等、鞄、ベルト、財布等、及びそれらの一部に使用する衣料用資材、ワイピングクロス、研磨布等の工業用資材として好適に用いることができる。
本発明の皮革様シート状物を研磨布として用いる場合、テクスチャー加工を行う方法としては、かかる研磨布を、加工効率と安定性の観点から、30〜50mm幅のテープ状にカットして、テクスチャー加工用テープとして用いる。
該研磨テープと遊離砥粒を含むスラリーとを用いて、アルミニウム合金磁気記録ディスクやガラス磁気記録ディスクのテクスチャー加工を行うのが好適な方法である。研磨条件としては、スラリーはダイヤモンド微粒子などの高硬度砥粒を水系分散媒に分散したものが好ましく用いられる。
砥粒の保持性と分散性の観点から、本発明の研磨布を構成する極細繊維の繊維径に適合した砥粒径としては0.2μm以下が好ましいものである。
本発明で得られた研磨布は、表面上の立毛繊維が極めて均一に分散し、且つ極細繊維表面に繊維軸方向に沿ったある程度連続した微細な凹部を有している為、繊維が砥粒を適切に把持することが可能となり、アルミニウム合金基板及びガラス基板のテクスチャー加工において、スクラッチ欠点が少なく、基板表面上に表面粗さ0.3nm以下という高精度なテクスチャー加工を施すことができる。さらにラインデンシティの高いテクスチャー痕を形成することができ、電磁変換特性に優れ、記録ディスクの高記録密度化に対応可能な加工面として仕上げることができるものである。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[評価方法]
(1)平均単繊維繊度
不織布、または皮革様シート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して繊維の素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらに100本の平均値を計算することで算出した。
(2)繊度CV
不織布、または皮革様シート状物の内部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2000倍で観察し、その写真から、束状繊維の1つの束内を構成する極細繊維の繊維径を測定し、繊維径から各単繊維の繊度に換算して、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)で表した。5つの束状繊維について、同様の測定を行い、平均値を繊度CVとした。
(3)シリカ含有量
不織布、または皮革様シート状物から、極細繊維のみを分解し、60℃に加熱した0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で1分間洗浄した後、熱分解させ、その残渣からICP(プラズマ)発光分析装置を用いて、シリカ含有量を測定した。
(4)微細凹部の測定
走査型電子顕微鏡(SEM)により、5本の極細単糸表面写真を撮影し(×7000倍)、それぞれからランダムに30カ所選定し、繊維円周方向の凹部の幅を測定、この平均値で評価した。
(5)スティックスリップ特性
本発明ではインストロン試験器にてスティックスリップ特性を評価している。
サンプルサイズA:15×5cm、B:4.5×13cmとして、皮革様シート状物を各1枚採取する。なお、サンプルはその布帛組織、例えば織組織、編組織、シート組織、また表面加工、染色有無等に限定されるものではない。
次に、図1のように起毛面を上にサンプルAを台に固定する。サンプルBの起毛面と反対に荷重(185gの鉄板、9×4cmのサイズ)を固定する。サンプルAの上にサンプルBを乗せて、5mm/分で荷重とサンプルBを引っ張る。この際、スティックスリップ特性を有する場合、図2のような均一な応力変化曲線が得られ、その波形から平均の応力変化量(g)を求めることができる。また、1インチ(2.54cm)あたりのスティックスリップ個数も同波形から求めることができる。
(6)外観品位
皮革様シート状物の表面品位は目視と官能評価にて下記のように評価した。本発明の良好なレベルは「○」とした。
○:ギラギラしない上品な光沢感があり。
△:マイルドな光沢感があり。
×:光沢感はほとんどなく、ややくすんで白っぽい。
(7)発色性
皮革様シート状物の発色性は目視評価にて下記のように評価した。
○:発色性良好。
△:発色性普通。
×:発色性劣。
(8)風合い
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、下記の評価を触感で判別を行い、最も多かった評価を風合いとした。本発明の良好なレベルは「○」とした。
○:非常に柔軟であり、かつ適度な反発感がある。
△:柔軟であるが、反発感がない。または、反発感はあるが、硬い。
×:硬い。
(9)基板表面粗さ
JIS B0601(2001年度版)に準拠して、Schmitt Measurement Systems, Inc製TMS−2000表面粗さ測定器を用いて、テクスチャー加工後のディスク基板サンプル表面の任意の10カ所について平均粗さを測定し、10カ所の測定値を平均することにより基板表面粗さを算出した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(10)スクラッチ点数
テクスチャー加工後の基板5枚の両面すなわち計10表面を測定対象として、Candela5100光学表面分析計を用いて、深さ3nm以上の溝をスクラッチとし、スクラッチ点数を測定し、10表面の測定値の平均値で評価した。数値が低いほど高性能であることを示す。
(11)ラインデンシティ
原子間力顕微鏡AFMを用いて、テクスチャー加工後の基板サンプル表面の任意の10カ所について、半径方向長さ1μmあたりに形成されているテクスチャー痕の本数を測定し、その平均値をラインデンシティとした。数値が大きいほど高性能であることを示す。
[化学物質の表記]
各実施例・比較例で用いた化学物質の略号の意味は以下の通りである。
PHC:ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
PET:ポリエチレンテレフタレート
[ポリウレタン種]
実施例、比較例で用いたポリウレタン水分散液の組成は下記の通りである。また、各溶液の固形分濃度は30重量%とした。
(1)溶剤系ポリウレタンI(PU−I)
ポリイソシアネート:MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :なし
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :なし
含有有機溶剤 :100重量%(溶媒N,N−ジメチルホルムアミド)
[実施例1]
ジメチルテレフタル酸100重量部と、平均一次粒子径0.06μmのコロイダルシリカを濃度で10重量%含有し十分に攪拌したエチレングリコールスラリー75重量部、反応触媒として酢酸マグネシウム0.05重量部および酸化アンチモン0.04部をエステル交換缶に仕込み、チッソ雰囲気下で150℃から250℃に徐々に加熱し、生成するメタノールを抽出しつつエステル交換反応を行った後、リン酸トリメチルを0.05重量部添加し、ついで徐々に減圧しつつ280℃まで昇温して2時間重合し、コロイダルシリカ含有ポリエステルチップを得た。シリカ含有量は生成ポリエステルに対して1.0重量%であった。
海成分として共重合ポリスチレンを45部、島成分として上記コロイダルシリカ含有ポリエステルを55部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が36島含まれる形態であり、平均繊度が2.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。
この不織布を熱水収縮させた後、ポリビニルアルコール水溶液を含浸し、乾燥温度125℃で10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対するポリビニルアルコール重量が45重量%となるようにポリビニルアルコールを付与したシートを得た。このシートをトリクロロエチレン中で海成分を溶解除去し、極細繊維が絡合してなる脱海シートを得た。
次にこのシートを90℃に加熱した濃度20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して20分処理を行い極細繊維を減量処理して微細凹凸を付与した脱海シートを得た。
脱海シート断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.04dtex、繊度CVは7.4%、平均凹部幅は0.25μmであることを確認した。
この極細繊維からなる脱海シートを固形分濃度12%に調整した有機溶剤系ポリウレタン液(PU−I)を含浸し、DMF濃度30%の水溶液中でポリウレタンを凝固せしめた。その後、ポリビニルアルコールおよびDMFを熱水で除去し、120℃10分間熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対するポリウレタン重量が30重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面を240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機にて分散染料により染色を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物の外観品位、発色性、風合いは良好であった。
[実施例2〜6]
コロイダルシリカ粒子の含有率、粒子径をそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物はいずれも外観品位、発色性、風合いは良好であった。
[実施例7]
島成分としてコロイダルシリカ含有ポリブチレンテレフタレートに変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物はいずれも外観品位、発色性、風合いは良好であった。
[実施例8]
海成分を5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートとして、島成分として上記コロイダルシリカ含有ポリエステルを55部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が36島含まれる形態であり、平均繊度が2.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。
この不織布に、実施例1と同様の処理を行い、脱海シートを得た。脱海シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.04dtex、繊度CVは7.4%、平均凹部幅は0.25μmであることを確認した。さらに該脱海シートに、実施例1と同様に有機溶剤系ポリウレタン液を含浸、凝固し、ポリウレタンを付与したシートを得た。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面を240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機にて分散染料により染色を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。
得られた皮革様シート状物の外観品位、発色性、風合いは良好であった。
[実施例9]
ポリ乳酸を海成分として20部、島成分として上記コロイダルシリカ含有ポリエステルを80部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が16島含まれる形態であり、平均繊度が3.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。
次にこの不織布を90℃に加熱した濃度40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した、かつ極細繊維に凹凸を発現せしめた脱海シートを得た。
脱海シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.18dtex、繊度CVは7.5%、平均凹部幅は0.27μmであることを確認した。さらに該脱海シートに、実施例1と同様に有機溶剤系ポリウレタン液を含浸、凝固し、ポリウレタンを付与したシートを得た。 そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面を240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機にて分散染料により染色を行い、本発明のシート状物を得た。
得られたシート状物の外観品位、風合い、発色性は良好であった。
[実施例10]
5−スルホイソフタル酸ナトリウムを8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として20部、島成分として上記コロイダルシリカ含有ポリエステルを80部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が16島含まれる形態であり、平均繊度が3.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ニードルパンチ処理により、不織布とした。
得られた不織布に実施例1と同様の処理を行い、脱海シートを得た。脱海シート表面の走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、平均単繊維繊度は0.19dtex、繊度CVは7.8%、平均凹部幅は0.29μmであることを確認した。さらに該脱海シートに、実施例1と同様に有機溶剤系ポリウレタン液を含浸、凝固し、ポリウレタンを付与したシートを得た。
そして、脱海シートを厚さ方向に半裁し、半裁面と反対となる面を240メッシュのエンドレスサンドペーパーを用いた研削によって起毛処理した後、サーキュラー染色機にて分散染料により染色を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。
得られた皮革様シート状物の外観品位、風合い、発色性は良好であった。
[比較例1〜3]
シリカ粒子の含有量、粒子径をそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物はいずれも外観品位、発色性、風合いに劣るものであった。
なお、比較例1は微細凹凸が明確に観察されず、スティックスリップの応力変化曲線は不均一で評価不能であった。
[比較例4]
脱海シートにアルカリ処理を行わず、微細凹凸を発現させなかったこと以外は実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物は外観品位、発色性、風合いともに劣るものであった。
比較例4も微細凹凸が明確に観察されず、スティックスリップの応力変化曲線は不均一で評価不能であった。
[比較例5]
添加粒子を酸化チタンに変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られたスティックスリップの応力変化曲線は不均一で評価不能あった。さらに皮革様シート状物は外観品位、発色性、風合いに劣るものであった。
[比較例6]
添加粒子を酸化チタンに変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明の皮革様シート状物を得た。得られた皮革様シート状物は外観品位、発色性、風合いに劣るものであった。
Figure 2008202206
[実施例11]
染色しない以外は実施例1と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
アルミニウム基板にNi−Pメッキ処理した後、ポリッシング加工したディスクを用い、研磨布表面に平均粒径0.1μmのダイヤモンド結晶からなる遊離砥粒スラリーを滴下し、テープ走行速度を5cm/分の条件で10秒間研磨を実施した。 テクスチャー加工後のディスクから任意に5枚を抽出し表面粗さを測定したところ、それぞれ0.16nm、0.15nm、0.16nm、0.15nm、0.16nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は160点、ラインデンシティは15本/μm幅であった。
[実施例12]
染色しない以外は実施例7と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.19nm、0.18nm、0.18nm、0.17nm、0.17nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は150点、ラインデンシティは12本/μm幅であった。
[実施例13]
染色しない以外は実施例8と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.16nm、0.16nm、0.17nm、0.17nm、0.18nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は130点、ラインデンシティは14本/μm幅であった。
[実施例14]
染色しない以外は実施例10と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.19nm、0.17nm、0.17nm、0.18nm、0.19nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は150点、ラインデンシティは12本/μm幅であった。
[比較例7]
染色しない以外は比較例1と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.17nm、0.16nm、0.18nm、0.16nm、0.17nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は140点、ラインデンシティは7本/μm幅であった。
[比較例8]
染色しない以外は比較例2と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.19nm、0.20nm、0.18nm、0.19nm、0.20nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は170点、ラインデンシティは8本/μm幅であった。
[比較例9]
染色しない以外は比較例3と同様の処理をし、皮革様シート状物を得て研磨布とした。該研磨布を40mm幅のテープとし、テクスチャー加工を行った。
加工後のディスク表面粗さは0.20nm、0.22nm、0.12nm、0.19nm、0.21nmであり、0.3nm以下を安定して達成していることを確認できた。スクラッチ点数は160点、ラインデンシティは7本/μm幅であった。
Figure 2008202206
本発明のスティックスリップ特性の測定法の概略図である。 本発明のスティックスリップの応力変化曲線の一例。
符号の説明
1:サンプルA
2:サンプルB
3:荷重
4:ロードセル

Claims (8)

  1. 平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下の極細繊維からなる不織布に弾性重合体を含有した皮革様シート状物であって、該極細繊維表面に凹凸を有し、該凹凸の繊維円周方向における凹部の平均幅が0.05μm以上1.0μm以下であることを特徴とする皮革様シート状物。
  2. 該極細繊維が0.020μm以上0.100μm以下の平均一次粒子径を有するシリカを該極細繊維に対して0.3〜5.0重量%含有していることを特徴とする請求項1に記載の皮革様シート状物。
  3. スティックスリップ曲線の応力変化Δfが10g以上、80g以下であり、かつ1インチ(2.54cm)あたりのスティックスリップ回数が25〜50個/インチ(2.54cm)であることを特徴とする請求項1または2記載の皮革様シート状物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のシート状物の製造方法であって、次の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とするシート状物の製造方法。
    (1)シリカを添加した高分子物質と、該高分子物質とアルカリ水溶液に対する相溶性の異なる少なくとも1種類以上の高分子物質の組み合わせとからなる極細発生型繊維の不織布からシートを作成する工程。
    (2)シートを溶解剤若しくは分解剤で処理して極細繊維を発現せしめる工程。
    (3)シートをアルカリ水溶液で処理して、凹凸を発現せしめる工程。
    (4)シートに弾性重合体を付与し、凝固する工程。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の皮革様シート状物を表皮材とすることを特徴とする内装用資材。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の皮革様シート状物を表皮材とすることを特徴とする衣料用資材。
  7. 請求項1〜3のいずれかに記載の皮革様シート状物を表皮材とすることを特徴とする工業用資材。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載の皮革様シート状物を含むこと特徴とする研磨布。
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