JP4983470B2 - シート状物、その製造方法、並びにそれを用いてなる内装材、衣料用資材及び工業用資材 - Google Patents
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(1)アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2成分以上の高分子物質の組み合わせからなる極細繊維発生型繊維の不織布に織物および/または編物を絡合一体化してシートを作成する工程。
(2)自己乳化型ポリウレタン分子構造内に少なくとも1個のシラノール基を含有する自己乳化型ポリウレタン水分散液をシートに含浸して、該自己乳化型ポリウレタンを付与する工程。
(3)該自己乳化型ポリウレタンを付与したシートをアルカリ水溶液で処理して極細繊維を発現せしめる工程」によって得られるものである。
(1)アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2成分以上の高分子物質の組み合わせからなる極細繊維発生型繊維の不織布に織物および/または編物を絡合一体化してシートを作成する工程。
(2)自己乳化型ポリウレタン水分散液をシートに含浸して、該自己乳化型ポリウレタンを付与する工程。
(3)該自己乳化型ポリウレタンを付与したシートをアルカリ水溶液で処理して極細繊維を発現せしめる工程。
本発明に使用する自己乳化型ポリウレタン水分散液には、貯蔵安定性や製膜性向上のために水溶性有機溶剤を水分散液に対して0重量%以上40重量%以下含有していてもよいが、製膜時の加熱による大気中への有機溶剤の放出や最終製品への有機溶剤の残留等の懸念から、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは有機溶剤を含有しないことである。
自己乳化型ポリウレタン水分散液を付与するにあたっては、必要に応じてカーボンブラック等の顔料、染料、防カビ剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの耐光剤、難燃剤、浸透剤や滑剤、シリカや酸化チタン等のアンチブロッキング剤、帯電防止剤等の界面活性剤、シリコーン等の消泡剤、セルロース等の充填剤、凝固調整剤等を添加して用いることができる。
アルカリ水溶液は、特に限定はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水溶液、アンモニア塩等を用いることができる。
(1)平均単繊維繊度
不織布、またはシート状物表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を倍率2000倍で撮影し、円形または円形に近い楕円形の繊維をランダムに100本選び、繊維径を測定して繊維の素材ポリマーの比重から繊度に換算し、さらに100本の平均値を計算することで算出した。
不織布、またはシート状物の内部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2000倍で観察し、その写真から、束状繊維の1つの束内を構成する極細繊維の繊維径を測定し、繊維径から各単繊維の繊度に換算して、繊維束を構成する繊維の繊度標準偏差を束内平均繊度で割った値を百分率(%)で表した。5つの束状繊維について、同様の測定を行い、平均値を繊度CVとした。
シート状物の内部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率300倍で観察し、その写真からポリウレタン部分の構造を判断した。
JIS−L1096(改正1990年、確認2004年)の8.12.1の引張強さ及び伸び率の測定方法に基づき、伸長率10%における強力(N/cm)を測定した。
ポリウレタンの1HやSiのNMRによる測定において、シロキサン結合に起因するピークにより、シロキサン結合の存在有無を確認した。また、シート状物、またはシート状物から抽出したポリウレタンの元素分析を行うことで、シリコン原子の含有量を定量した。
試験管に濃度30重量%のポリウレタン水分散液を10g入れ、95℃の恒温熱水浴中で昇温し、ポリウレタン水分散液が流動性を失ってゲル化・凝固するときの温度を感熱ゲル化温度とした。
ポリウレタン水分散液をタテ10cm×ヨコ10cmのポリエチレン製不織布(タテ糸15本/cm、ヨコ糸20本/cmの密度)に含浸し、120℃30分乾燥することで、不織布重量に対して75重量%のポリウレタンを付与したシートを得た。
次に、得られたシートを濃度15g/L水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して90℃30分処理後の重量を測定し、浸漬処理前の重量と比較して重量減少率を算出した。
シート状物の表面品位は目視と官能評価にて下記のように評価した。本発明の良好なレベルは「○」とした。
○:立毛長・繊維の分散状態共に良好である。
△:立毛長は良好であるが、繊維の分散は不良である。
×:立毛がほとんど無く不良である。
シート状物のピリング評価は、マーチンデール摩耗試験機として、James H.Heal&Co.製のModel 406を、標準摩擦布として同社のABRASTIVE CLOTH SM25を用い、12kPa相当の荷重をかけ、摩耗回数20,000回の条件で摩擦させた後の試料の外観を目視で観察し、評価した。評価基準は試料の外観が摩擦前と全く変化が無かったものを5級、毛玉が多数発生したものを1級とし、その間を0.5級ずつ区切った。また、本発明における合格レベルは4級以上とした。
健康な成人男性と成人女性各10名ずつ、計20名を評価者として、下記の評価を触感で判別を行い、最も多かった評価を風合いとした。本発明の良好なレベルは「○」とした。
○:非常に柔軟であり、かつ適度な反発感がある。
△:柔軟であるが、反発感がない。
×:硬い。
各実施例・比較例で用いた化学物質の略号の意味は以下の通りである。
C5C6PC:ペンタメチレンカーボネートジオールとヘキサメチレンカーボネートジオールの共重合ポリカーボネート
3MPC:ポリ(3−メチルペンタンカーボネート)
PHC:ポリヘキサメチレンカーボネート
H12MDI:ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
PET:ポリエチレンテレフタレート
Ny6:6−ナイロン
PBT:ポリブチレンテレフタレート。
実施例、比較例で用いたポリウレタン水分散液の組成は下記の通りである。また、各溶液の固形分濃度は30重量%とした。さらに、各ポリウレタンの特性を表1に示した。
ポリイソシアネート:H12MDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン。
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン。
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :C5C6PC
内部乳化剤 :ジメチロールプロピオン酸トリエチルアミン塩
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン。
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :3MPC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン。
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :3MPC
内部乳化剤 :ジメチロールプロピオン酸トリエチルアミン塩
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン。
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :3MPC
内部乳化剤 :側鎖にポリエチレングリコールを有するジオール化合物
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :なし。
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :3MPC
内部乳化剤 :ジメチロールプロピオン酸トリエチルアミン塩
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :なし。
ポリイソシアネート:MDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :なし
鎖伸長剤 :水(イソシアネートと水の反応により得られるジアミン)
内部架橋剤 :なし
溶媒 :N,N−ジメチルホルムアミド。
ポリイソシアネート:HDI
ポリオール :PHC
内部乳化剤 :なし
内部架橋剤 :なし。
5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として45部、島成分としてPETが55部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が36島含まれる形態であり、平均繊度が2.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ウェブの両面に、PETの84dtex−72フィラメント、撚り数2000T/mの強撚糸使いの平織物を積層し、ニードルパンチ処理により絡合処理して不織布とした。
自己乳化型ポリウレタン水分散液をそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。得られたシート状物はいずれも外観品位、ピリング評価、風合いは良好であった。
5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として20部、島成分としてPETが80部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が16島含まれる形態であり、平均繊度が3.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ウェブの両面に、PETの84dtex−72フィラメント、撚り数2000T/mの強撚糸使いの平織物を積層し、ニードルパンチ処理により絡合処理して不織布とした。
島成分にNy6を用い、かつ自己乳化型ポリウレタン水分散液VI(PU−VI)を用いた以外は実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。平均単繊維繊度は0.05dtex、繊度CVは7.5%であった。また、NMRにてシロキサン結合が存在することを確認した。
得られたシート状物の外観品位、ピリング評価、風合いは良好であった。
島成分にPBTを用い、かつ自己乳化型ポリウレタン水分散液VII(PU−VII)を用いた以外は実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。平均単繊維繊度は0.04dtex、繊度CVは7.9%であった。また、NMRにてシロキサン結合が存在することを確認した。
ウェブの両面に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として20部、島成分としてPETが80部からなる割合の、島数8からなる84dtex−72フィラメント、撚り数1200T/mの強撚糸使いの平織物を積層し、ニードルパンチ処理により絡合処理して不織布とした以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。得られたシート状物の外観品位、ピリング評価、風合いは良好であった。
5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として45部、島成分としてPETが55部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が36島含まれる形態であり、平均繊度が2.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ウェブの両面に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として20部、島繊度分としてPETが80部からなる割合の、島数8からなる66dtex−36フィラメント、撚り数2000T/mの強撚糸使いの平織物を積層し、ニードルパンチ処理により絡合処理して不織布とした以外は実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。平均単繊維繊度は0.04dtex、繊度CVは7.5%であることを確認した。また、NMRにてシロキサン結合が存在することを確認した。
5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として45部、島成分としてPETが55部からなる割合で、1フィラメント中に島成分が36島含まれる形態であり、平均繊度が2.8dtexの海島型繊維のステープル(繊維長51mm)を用いて、カード、クロスラッパーを通してウェブを形成し、ウェブの両面に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を8mol%共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として20部、島繊度分としてPETが80部からなる割合の、島数8からなる135dtex−72フィラメント、撚り数1200T/mの強撚糸使いのトリコット編物を積層し、ニードルパンチ処理により絡合処理して不織布とした以外は実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。NMRにてシロキサン結合が存在することを確認した。また、得られたシート状物の外観品位、ピリング評価、風合い良好であった。
ウェブの両面に、PETの84dtex−72フィラメント、撚り数2000T/mの強撚糸使いのトリコット編物を積層し、ニードルパンチ処理により絡合処理して不織布とした以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。得られたシート状物の外観品位、ピリング評価、風合いは良好であった。
ウェブの両面に、PETの120dtex−300フィラメント、撚り数2000T/mの強撚糸使いの平織物を積層し、ニードルパンチ処理により絡合処理して不織布とした以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。得られたシート状物の外観品位、ピリング評価、風合いは良好であった。
それぞれ自己乳化型ポリウレタン水分散液VIII(PU−VIII)、IX(PU−IX)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行い、シート状物を得た。また、NMRにてシロキサン結合が存在することを確認した。
実施例1において、ポリウレタンを付与する前の不織布を濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海不織布を作製し、その後、自己乳化型ポリウレタン水分散液I(PU−I)を含浸し、乾燥温度125℃で10分熱風乾燥することで、不織布の島成分重量に対するポリウレタン重量が80重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た以外は実施例1と同様に処理を行い、シート状物を得た。
得られたシート状物はピリング評価は4.5級であったが、非常に堅い風合いとなり、立毛がほとんどない外観品位不良であった。
実施例1において、ポリウレタンを付与する前の不織布を濃度15g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して30分処理を行い、海島型繊維の海成分を除去した脱海不織布を作製し、その後、溶剤系ポリウレタンX(PU−X)を含浸し、40℃の水中に浸漬して60分間湿式凝固することで、不織布の島成分重量に対するポリウレタン重量が80重量%となるようにポリウレタンを付与したシートを得た以外は実施例1と同様に処理を行い、シート状物を得た。NMRにてシロキサン結合が存在することを確認した。
強制乳化型ポリウレタンXI(PU−XI)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行い、シート状物を得た。NMRにてシロキサン結合が存在することを確認した。
ウェブの両面に平織物を積層しなかった以外は、実施例1と同様に処理を行い、シート状物を得た。得られたシート状物は、風合い良好であったが、強力特性が大きく劣っていた。また、外観品位もやや劣るものであった。
ウェブの両面に、PETの84dtex−72フィラメント、撚り数5000T/mの撚糸使いの平織物を積層し、ニードルパンチ処理により絡合処理して不織布とした以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。得られたシート状物の外観品位、ピリング評価は良好であったが、風合い硬いものであった。
ウェブの両面に、PETの84dtex−72フィラメントの生糸使いの平織物を積層し、ニードルパンチ処理により絡合処理して不織布とした以外は、実施例1と同様の処理を行い、本発明のシート状物を得た。得られたシート状物は表面に織物が混在しており、品位に劣るものであった。
2:繊維束
3:自己乳化型ポリウレタンと繊維束との間の空隙
4:ポリウレタンと繊維束が密着している状態
Claims (5)
- 平均単繊維繊度が0.001dtex以上0.5dtex以下である極細繊維からなる不織布と、織物および/または編物とが絡合一体化したシート状物において、織物および/または編物の構成糸の少なくとも一部が、500T/m以上、4500T/m以下の撚糸であり、該シート状物は自己乳化型ポリウレタンを含有し、該自己乳化型ポリウレタンと該極細繊維は実質的に密着しておらず、かつ該自己乳化型ポリウレタン部分は無孔構造であって、該自己乳化型ポリウレタン分子構造内にシロキサン結合による架橋構造を有し、該自己乳化型ポリウレタンの分子構造内にポリウレタン重量に対して0重量%よりも多く、1重量%以下のシリコン原子を含有することを特徴とするシート状物。
- 請求項1または2に記載のシート状物の製造方法であって、次の(1)〜(3)の工程をこの順番で経ることを特徴とするシート状物の製造方法。
(1)アルカリ水溶液に対する溶解性の異なる2成分以上の高分子物質の組み合わせからなる極細繊維発生型繊維の不織布に織物および/または編物を絡合一体化してシートを作成する工程。
(2)自己乳化型ポリウレタン分子構造内に少なくとも1個のシラノール基を含有する自己乳化型ポリウレタン水分散液をシートに含浸して、該自己乳化型ポリウレタンを付与する工程。
(3)該自己乳化型ポリウレタンを付与したシートをアルカリ水溶液で処理して極細繊維を発現せしめる工程。 - 請求項1に記載のシート状物を表皮材とすることを特徴とする内装材。
- 請求項1に記載のシート状物を用いることを特徴とする衣料用資材。
- 請求項1に記載のシート状物を用いることを特徴とする工業用資材。
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