JP4233965B2 - スエード調人工皮革およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、幅広い色調での耐光堅牢性と発色性に優れ、スエード感、表面タッチ、風合いの良好な高級感を有するスエード調人工皮革、および該スエード調人工皮革を用いて得られる半銀付調人工皮革ならびに銀付調人工皮革に関するものである。
従来から、極細繊維と高分子弾性体からなるスエード調人工皮革が知られている。このような極細繊維からなるスエード調人工皮革は、スエード感や表面タッチ感に優れており、天然皮革に類似した素材として高く評価されている。このようなスエード調人工皮革を着色する方法としては、従来から染料を用いた着色法が広く用いられている。
しかしながら、極細繊維は通常繊度の繊維に比べてその細さゆえに、発色性が大きく劣るため、極細繊維を発色させるには通常繊度の繊維に比べて数倍から20倍程度の染料が必要となって、摩擦堅牢性や耐光堅牢性が大きく劣る問題を抱えている。更に、スエード調人工皮革は繊維に比べて耐光堅牢性が劣る高分子弾性体を含有しており、スエード調人工皮革自身の耐光堅牢性を悪化させる大きな原因となっている。また、染料自身の耐光堅牢性を改良する検討も以前から行われているが、その改良には限界があって、カーシートなどの厳しい条件下での長期安定性が求められている用途では、ユーザーの要求する厳しいスペックをクリアするスエード素材がほとんど無いのが現状であり、有ったとしても非常に色調が限られている。
つまり、幅広い色調において、発色性、耐光堅牢性、摩擦堅牢性に優れた人工皮革素材が強く求められているものの、それら種々の問題を、従来から行われている染料で発色させるアプローチで克服することは、既に限界の域に達している。
これらの問題を改良する試みとして、染料に比べて耐光堅牢性に優れている顔料を用いて着色する方法が幾つか開示されている。例えば、顔料を繊維構成ポリマー中に混合添加して着色した極細繊維を得る方法(例えば、特許文献1を参照。)、あるいは顔料をポリマー中に混合添加して着色した極細繊維を、更に、染料で染色する方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献2および特許文献3を参照。)。該方法では繊維の耐光性は改良されるものの、高分子弾性体の光劣化については何ら対策が採られておらず、高分子弾性体の耐光劣化が起こることから耐光性の改良には限界がある。また、高分子弾性体には顔料が添加されていないことから高分子弾性体が白け、繊維と高分子弾性体の色斑が目立って高級感のあるスエード調人工皮革が得られ難い。また、顔料としては、有機系顔料やカーボンブラック、あるいは無機系顔料などが知られている。また、該方法では、従来から人工皮革を得る方法として行われている、有機溶剤で極細繊維発生型繊維の一成分を除去する手法、あるいは溶剤に溶解した高分子弾性体を、有機溶剤を含む液中で湿式凝固する手法が実施されている。本発明者らも実際に試験したところ、極細繊維中の有機系顔料の一部が極細繊維化工程や湿式凝固工程で有機溶剤中に溶け出す問題があって、工業的には実質的に顔料としてカーボンブラックや無機系顔料を主体に使用せざるを得ないため、色範囲が狭く、また、発色性、鮮明性に劣る問題を有していることが判明した。
加えて、特許文献1の方法のように、繊維に顔料を添加することのみでバラエティーに富む色調を揃えることは、紡糸製造設備での切替えロスが大きく工業的に困難であるばかりでなく、極細繊維では充分な発色性は得られず、また発色性を上げるために多量の顔料を混合添加すると、紡糸中にフィルター詰まりや昇圧が生じて紡糸そのものが困難になり、また、得られる繊維の物性が大きく低下するなどの問題も抱えている。
カーボンブラックなどの顔料を繊維構成ポリマー中に混合添加して着色した極細繊維を染料で染色して発色させる方法、あるいはカーボンブラックなどの顔料を高分子弾性体に混合添加して着色した高分子弾性体を染料で染色して発色させる方法も公知である(例えば、特許文献4および特許文献5を参照。)。該方法は、染料で色だしを行った際に、カーボンブラックで黒味を付けて基体を濃色化することを目的としたものであり、耐光堅牢性の改良には限界がある。
極細繊維を発生する不織布に、顔料を含む高分子弾性体を付与し、染料で着色する方法も提案されている(例えば、特許文献6、および特許文献7を参照。)。該方法では高分子弾性体の耐光性が向上するものの、極細繊維は染料のみで着色しているため、耐光性の改良には限界がある。加えて、従来から人工皮革を得る方法として行われている、有機溶剤で極細繊維発生型繊維の一成分を除去する手法、および溶剤に溶解した高分子弾性体を有機溶剤を含む液中で湿式凝固する手法が実施されている。本発明者らも実際に試験したところ、高分子弾性体中の有機系顔料の一部が極細繊維化工程や湿式凝固工程で有機溶剤中に溶け出す問題があって、工業的にはカーボンブラックや無機系顔料を主体に使用せざるを得ないため、色範囲が狭く、また、発色性、鮮明性に劣る問題を有していることが判明した。加えて該方法は、繊維と高分子弾性体に色差を付けて玉虫色調あるいは凹凸模様調の立毛シートを得ることを主目的としており、本発明が目的とする一般的なスエード調人工皮革とは異なる。
繊維シートに、赤外線吸収率の低い顔料を配合した高分子弾性体を含浸処理して、染料で染色する方法もいくつか提案されている(例えば、特許文献10、特許文献11、特許文献12および特許文献13を参照。)。該方法は、赤外線で蓄熱しやすいカーボンブラックに変えて、赤外線吸収率の低いペリレン系あるいはアゾメチンアゾ系等の有機系黒色顔料で高分子弾性体を黒色に着色する、あるいは3種類の有機系顔料を混合して彩度の低い黒系の色に高分子弾性体を着色して、高分子弾性体に黒味を付け染料で色だしを行った際に基体を濃色化することを目的としたものであり、極細繊維は染料のみで着色しているため、耐光堅牢性の改良には限界がある。また、何れの提案においても、顔料を配合した溶剤系ポリウレタンを湿式凝固する方式で行っているが、前述したように、該方法では高分子弾性体中の有機系顔料が有機溶剤に一部溶解するために凝固工程などで有機顔料の一部が脱落して色ぶれの問題や切り替えロスが大きくなる問題があり工業的な安定生産性に問題がある。また、赤外線吸収率の低い顔料は非常に高価であって製造コストの点で不利となるのに加えて、使用する顔料が限定されてバラエティーに富んだ色調を揃えることが困難である問題も有している。
顔料を水浴中で吸着処理して顔料で着色する方法、いわゆる顔料吸尽着色法も提案されている(例えば、特許文献8および特許文献9を参照。)。該方法では比較的耐光性能の良いものが得られるが、顔料は繊維や高分子弾性体の表面に固着した状態であって、繊維や高分子弾性体に埋包されていないために、顔料が脱落しやすく摩擦堅牢性などの堅牢性に劣る傾向がある。特に、0.2デシテックス以下の極細繊維では、染料で染色する場合と同様に顔料が多量に必要となって、摩擦堅牢性などの堅牢性に劣る問題が顕著となる。
つまり、これまで開示されている顔料を用いた方法においては、(1)従来から人工皮革を得る方法として行われている、有機溶剤で極細繊維発生型繊維の一成分を除去する手法、及び/又は、溶剤に溶解した高分子弾性体を有機溶剤を含む液中で湿式凝固する手法が行われており、工業的には実質的に顔料としてカーボンブラックや無機系顔料を主体に使用せざるを得ないため、色調が限定され、また発色性、鮮明性に劣る問題を有しており、仮に有機顔料を用いたとしても、有機溶剤を使用した工程において有機顔料が脱落して工業的な安定生産性に問題がある。更に、(2)繊維あるいは高分子弾性体の一方のみにしか顔料を含有させていないため、耐光堅牢性の改良に限界があるばかりか、摩擦堅牢性、色範囲などに問題を抱えている。また。(3)顔料で着色する場合の課題である、顔料添加に伴う力学物性や摩擦堅牢性等の各種堅牢性の低下を改良することに関しては、殆ど触れられておらず、力学物性や堅牢性についても満足できるものとは言い難い。
すなわち、幅広い色調において発色性、耐光堅牢性に優れ、スエード感、表面タッチ、風合い、および力学物性や各種堅牢性の良好なスエード調人工皮革を工業的に生み出すことが出来ていない。
特公昭62−37252号公報(第1−4頁) 特開平5−331782号公報(第2−4頁) 特開平2000−45186号公報(第1−7頁) 特開2002−146624号公報(第2−7頁) 特開2001−279532号公報(第2−7頁) 特開昭63−315683号公報(第1−6頁) 特開昭58−197389号公報(第1−4頁) 特開2001−248080号公報(第2−6頁) 特開平10−259579号公報(第2−5頁) 特開平5−321159号公報(第2頁) 特開平7−42084号公報(第2頁) 特開2002−242079号公報(第2頁) 特開2002−327377号公報(第2頁)
本発明は、上記諸問題を解決し、幅広い色調において、発色性および耐光堅牢性などの堅牢性が良好で、スエード感、表面タッチ、風合い、および力学物性や各種堅牢性が良好な高級感のあるスエード調人工皮革、および該スエード調人工皮革を用いた、半銀付調人工皮革、銀付調人工皮革に関するものである。
上記課題を達成すべく本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ついに本発明に至った。すなわち、本発明は、0.2デシテックス以下の極細繊維からなる3次元絡合体と高分子弾性体Aからなるスエード調人工皮革であって、下記(1)〜(4)
(1)3次元絡合体が平均粒径0.01〜0.3μmの有機系顔料及び平均粒径0.01〜0.3μmのカーボンブラックから選ばれた少なくとも一の顔料Aを0.1〜8質量%含有していること、
(2)高分子弾性体Aが平均粒径0.05〜0.6μmの有機系顔料及び平均粒径0.05〜0.6μmのカーボンブラックから選ばれた少なくとも一の顔料、もしくは、有機系顔料を含む平均粒径0.05〜0.6μmの顔料粒子を顔料Bとして1〜20質量%含有していること、
(3)高分子弾性体Aと3次元絡合体の質量比が15:85〜60:40であること、
(4)表面に存在する極細繊維の平均立毛長が10〜200μmであること、
を満足することを特徴とするスエード調人工皮革を提供する。
また、本発明は、0.2デシテックス以下の極細繊維からなる3次元絡合体と高分子弾性体からなるスエード調人工皮革を製造するに際し、下記のI〜IIIの工程、
I.平均粒径0.01〜0.3μmの有機系顔料及び平均粒径0.01〜0.3μmのカーボンブラックから選ばれた少なくとも一の顔料Aを0.1〜8質量%含有し、極細繊維となる水難溶性の熱可塑性成分、および水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体成分からなる極細繊維発生型繊維から構成された繊維絡合不織布を製造する工程、
II.水分散高分子弾性体、および、顔料Bとして、平均粒径0.05〜0.6μmの水分散有機系顔料及び平均粒径0.05〜0.6μmの水分散カーボンブラックから選ばれた少なくとも一の水分散顔料、もしくは有機系顔料を含む平均粒径0.05〜0.6μmの水分散顔料粒子を水分散高分子弾性体に対して1〜20質量%含有する高分子弾性体分散液を、該水分散高分子弾性体に由来する高分子弾性体と3次元絡合体の質量比が15:85〜60:40となるよう繊維絡合不織布の内部に付与する工程、
III.水溶液で水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体成分を抽出除去することにより、極細繊維発生型繊維を0.2デシテックス以下の極細繊維にする工程、
を行うことを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法を提供する。
発明者らは、(1)発色性と耐光堅牢性に優れ、且つ鮮明色から無彩色、淡色から濃色までの幅広い色調を揃えるには、極細繊維と高分子弾性体の双方に顔料を含有させること、および、表面の極細繊維の平均立毛長を10〜200μmと短毛気味にして高分子弾性体の発色性を確保し発色性を高めると同時に繊維と高分子弾性体の色調を混色させて幅広い色調を色出しすること、および、顔料としては一般に用いられる無機系顔料ではなく鮮明性、発色性、色範囲等に優れた有機系顔料及び/又はカーボンブラックを主体に用いること、が必須であること、(2)有機顔料を用いて繊維と高分子弾性体を着色するには、有機顔料は有機溶剤で一部溶解するので、有機溶剤を使用しない水溶液で極細繊維発生型繊維を極細化し、且つ水分散高分子弾性体を付与する方法が工業的に有効であること、(3)従来から顔料を添加する際の課題であった、顔料添加に伴う力学性能や摩擦堅牢性の低下を改良するには、顔料として有機系顔料及び/又はカーボンブラックを使用し、且つ、極細繊維および高分子弾性体に添加する顔料の平均粒径を特定の範囲とすることが必要であること、(4)顔料で着色した極細繊維,高分子弾性体の色斑が少なく高級感のあるスエード調人工皮革を製造するには、繊維および高分子弾性体の双方に顔料を含有させ且つ顔料を特定範囲の質量比率とすること、および極細繊維の繊度を細くすることが必要であること、更に、(5)顔料で着色した極細繊維発生型繊維の抽出成分としては、発色性や柔軟性などの点から水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体を用いることが好ましいこと、(6)顔料で着色した高分子弾性体としては、顔料の脱落を抑制して発色性を高める点から高分子弾性体の熱水膨潤率が特定範囲以下の高分子弾性体を用いること、水分散高分子弾性体を用いる場合には発色性の点から特定範囲の粒径を持った透明な高分子弾性体を用いること、更に、高耐光性の必要な用途においては、耐光堅牢性が、キセノンアークランプ耐光堅牢性評価で3級以上である高分子弾性体を用いることなどが好ましいこと、を見出し本発明に至った。以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の極細繊維は、平均粒径が0.01〜0.3μmの有機系顔料及び/又はカーボンブラック(以下、顔料Aということがある)を0〜8質量%含有していることが必要である。そして、顔料Aが極細繊維を構成するポリマー中に混在一体化して存在し、主として極細繊維を構成するポリマー中に埋包されていることが好ましい。ここでいう顔料Aが極細繊維を構成するポリマー中に混在一体化して存在し、主として極細繊維を構成するポリマー中に埋包されているとは、顔料Aと極細繊維を構成するポリマーが別々に偏って存在すること無く、実質的に顔料Aが極細繊維を構成するポリマー中に均一に分散している状態をいう。ここでいう平均粒径とは、顔料Aが極細繊維中に存在した状態における顔料Aの平均粒径であって、一次粒子径のことを指すものではない。つまり、顔料は一次粒子径の状態で存在することは稀であり、一般に、一次粒子径の顔料が多数凝集したストラクチャー、一次凝集体、二次凝集体、あるいは二次粒子などと呼ばれる凝集状態で存在する。その凝集状態は顔料、ポリマー、紡糸条件等に影響され、この凝集状態にある顔料の粒径が各種性能を支配するものと考えられる。本発明における平均粒径とは、このストラクチャー、一次凝集体、二次凝集体、あるいは二次粒子などと呼ばれるポリマー中に存在している凝集状態の平均粒径を言う。
極細繊維に含まれる顔料Aの平均粒径としては0.01〜0.3μmであることが必要である。顔料Aの平均粒径が0.3μmを超える場合には、紡糸工程でのフィルター詰まりが起こり易く紡糸性が低下する傾向があるのに加えて、顔料Aが極細繊維を構成するポリマー中に混在一体化して存在しにくく、得られるスエード調人工皮革の引裂強力や引張強力などの力学性能、および摩擦堅牢性が劣る傾向がある。逆に、0.01μ未満の場合には、得られるスエード調人工皮革の発色性が劣る傾向がある。顔料Aの平均粒径としては、0.02〜0.2μmが更に好ましい。また、顔料Aの平均粒径としては、極細繊維の直径の1/10以下、更には1/20以下であることが、スエード調人工皮革の引裂強力や引張強力などの力学性能、および摩擦堅牢性の点で好ましい。また、粒径が0.5μmを超える、更には1μmを超える粒子が殆ど存在しないことが、スエード調人工皮革の引裂強力や引張強力などの力学性能、および摩擦堅牢性の点で好ましく、具体的には、1μmを超える粒子が面積換算で顔料A全量の10%以下、より好ましくは5%以下であり、また、0.5μmを超える粒子が面積換算で顔料A全量の20%以下、より好ましくは10%以下である。なお、顔料Aの分散状態および平均粒径については、必要に応じてエポキシ樹脂埋包処理や染色処理、電子染色処理等を行った後、ミクロトームや超ミクロトーム等で極細繊維の断面を薄膜状に切断した後、透過型電子顕微鏡等を用いて観察し、必要応じて市販の画像解析ソフト等を用いて画像解析処理する方法などで確認できる。
極細繊維を着色する顔料Aは、鮮明性や発色性に優れる点および紡糸性に優れ繊維物性への悪影響が小さい点で、有機系顔料及び/又はカーボンブラックであることが必須である。無機系顔料では、紡糸性および繊維物性へ悪影響が大きく、得られるスエード調人工皮革の力学物性や摩擦堅牢性が悪化するのに加え、鮮明性や発色性が不足してバラエティーに富んだ色調を揃えることが困難となる。顔料を有機系顔料やカーボンブラックとし、且つ平均粒径としては、0.01〜0.3μmとすることによって、顔料添加に伴う力学性能や摩擦堅牢性の低下を最小限とすることが可能となる、あるいは顔料添加量を増大して極細繊維の発色性を高めることが可能となる。
顔料Aの3次元絡合体を構成する極細繊維に対する含有量は、得ようとするスエード調人工皮革の色調、および繊維の繊度などによって0〜8質量%の範囲内で便宜選択すれば良い。白色の場合は0〜0.5質量%が好ましく、スエード調人工皮革が淡色以上の色調に着色される場合には、0.1〜8質量部であることが好ましい。淡色の場合は0〜3質量%、特に0.1〜2質量%が好ましく、濃色の際は0.5〜8質量%、特に1〜5質量%が好ましく、淡色と濃色の中間色の場合は、0.2〜5質量%、特に0.5〜4質量%が好ましい。また、繊維の繊度が細くなるにつれて発色性が低下するため、顔料の添加量を増やす必要があるが、顔料として有機系顔料及び/又はカーボンブラックとし、且つ平均粒径を上記した特定範囲とすることで、力学性能や摩擦堅牢性の低下を最小限にすることができる。ここで言う淡色、濃色、とは、K/S値で表すと、例えば、淡色であれば10あるいは15以下、濃色であれば15あるいは20以上、淡色と濃色の中間色であれば10あるいは20程度のK/S値の色濃度のことを言う。色濃度K/S値とはいわゆるKubelka-Munkの関数による反射率(R)から求められる色濃度を表す数値であり、下記式から計算される。
K/S=(1−R)2/2R
但し、Rは最大吸収波長での反射率を表す。
しかし、顔料Aの含有量が8質量%を超える場合には、極細繊維を構成するポリマー中に顔料Aが埋包されていない割合が増加して、得られるスエード調人工皮革の引裂強力や引張強力などの力学性能や摩擦堅牢性が低下する傾向があり、更に紡糸性に劣る傾向がある。
極細繊維中の顔料Aの含有量は、顔料Aを実質的に溶解あるいは分解せず極細繊維を構成するポリマーのみを溶解除去あるいは分解除去する処理を行って顔料Aのみを分取する方法、極細繊維を溶解あるいは分解させた極細繊維成分と顔料Aの混合液を充填剤入りのカラムや液体クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどを用いて顔料Aと極細繊維成分を分離、分取する方法、あるいは極細繊維を電子顕微鏡を用いて観察する方法などによって求められる。なお、極細繊維が一部染料を含有する場合には、繰り返し熱水処理して染料を抽出する等の方法で染料を除去したり、あるいは染料を含有したまま上記した充填剤入りのカラムや液体クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどを用いて顔料Aと極細繊維および染料をそれぞれ分離、分取することでそれぞれの含有率を求めることもできる。また、極細繊維中の顔料A含有率の分析に当たっては、必要に応じて、高分子弾性体と極細繊維を何れか一方のみを溶解除去あるいは分解除去して極細繊維のみを分取する方法等で高分子弾性体と極細繊維を分離しても良い。例えば、極細繊維がポリエステルの場合には、アルカリ水溶液でポリエステル成分を分解させ、その分解液を充填材入り水系カラムなどを用いてポリエステル成分と顔料Aを分離、分取する方法、あるいはアルカリ処理した分解液を乾燥し有機溶剤で希釈した後、溶剤系カラムなどを用いてポリエステル成分と顔料Aを分離、分取する方法、などで分析できる。あるいは、上記した方法にて極細繊維や顔料の比重を測定し、更に、極細繊維を電子顕微鏡を用いて観察し市販の画像解析ソフト等を用いて画像解析処理して面積換算値を求め、質量比率を算出する方法などでも分析できる。
仮に、極細繊維に顔料を含有させず、高分子弾性体のみを顔料で着色した場合には、白色や淡色の場合は重大な問題とはなりにくいが、それ以外の色の場合には白けた表面繊維が目立って外観に劣ったものとなり易い。加えて、顔料で着色した高分子弾性体の上に、顔料を含有しない極細繊維が覆い被さった表面状態となって、高分子弾性体の発色が妨げられて発色性が劣ったものとなる。また、それを染料で着色する場合には、多量の染料を用いて繊維を着色せざるを得ず、耐光堅牢性の改良に限界がある。
逆に、高分子弾性体に顔料を含有させずに、繊維のみを顔料で着色することも考えられるが、高分子弾性体に顔料を含有させていないため、高分子弾性体の光劣化が起こって耐光堅牢性の改良に限界があるばかりか、白けた高分子弾性体が目立って外観に劣ったものとなる。また、多様な色調を繊維の着色のみで得ることは紡糸製造設備での切り替えロスが大きく工業的に困難であるばかりでなく、0.2デシテックス以下の極細繊維になると、繊維自体の発色性が大きく劣るため、極細繊維のみを顔料で着色しても、ぼやけた発色しか得られず発色性や色範囲が実質的に不足する。また発色性を上げるために多量の顔料を混合添加すると、紡糸中にフィルター詰まりや昇圧が生じて紡糸性に問題が生じるばかりか、また、得られる繊維の物性や摩擦堅牢性が大きく劣る問題が生じる。
従って、顔料を用いて、幅広い色調において発色性と耐光堅牢性に優れたスエード調人工皮革を得るためには、極細繊維を顔料A(有機系顔料及び/又はカーボンブラック)で赤、青、黄、黒色等の2〜5種類程度の色に着色し、高分子弾性体を各種色に顔料で着色して、顔料で着色された繊維と顔料で着色された高分子弾性体の2色を混色させる手法が工業的にも最も優れている。また、極細繊維と高分子弾性体の色調を近似した色調としても良いし、極細繊維と高分子弾性体の色調を異なる色調にしても良い。特に、極細繊維と高分子弾性体の色調を近似する色調とした場合は、非常に均質な高級感のあるスエード調人工皮革となる。
本発明の極細繊維に含有させる顔料Aとしては、平均粒径が0.01〜0.3μmであって、極細繊維を構成するポリマー中に混在一体化して存在し、主として極細繊維を構成するポリマー中に埋包され得る有機系顔料およびカーボンブラックであれば特に限定されない。有機系顔料としては例えば、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、インジゴ系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系、ペリノン系等の縮合多環系有機顔料およびベンズイミダゾロン系、縮合アゾ系、アゾメチンアゾ系等の不溶性アゾ系顔料などが挙げられる。カーボンブラックには、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サマールブラックなどがあるが、本発明で使用するカーボンブラックはそれ自体の種類を何ら限定するものではない。これら有機系顔料やカーボンブラックを繊維に1種以上含有させる。
また、平均粒径が0.01〜0.3μmであって、極細繊維を構成するポリマー中に混在一体化して存在し、主として極細繊維を構成するポリマー中に埋包可能であれば、本発明の効果を妨げない範囲で、無機系顔料などを微量併用して使用しても構わず、例えば、酸化チタン、べんがら、クロムレッド、モリブデンレッド、リサージ、群青、酸化鉄、シリカ等が例として挙げられる。また、カーシートなど高耐光性が必要な用途においては、光劣化の大きい顔料を避けることが望ましい。
特に、鮮明性、発色性、耐光性、摩擦堅牢性、力学性能、紡糸性等の点で、顔料Aとしては、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、インジゴ系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系、ペリノン系等の縮合多環系有機顔料およびベンズイミダゾロン系、縮合アゾ系、アゾメチンアゾ系等の不溶性アゾ系およびカーボンブラックの少なくとも1種からなる顔料から選ばれる1種以上の顔料のみを使用することが特に好ましい例として挙げられる。
顔料Aの添加法としては、特に限定されず公知の方法を用いれば良いが、極細繊維を構成するポリマーと顔料Aを押出機などのコンパウンド設備を用いて混練した後ペレット化したマスターバッチ方式を採用する方法が、極細繊維を構成するポリマー中における顔料Aの分散性が良好となる点やコストの点で好ましい例として挙げられる。なお、極細繊維を構成するポリマー中における顔料Aの分散性については、予めマスターバッチ等の顔料分散性を確認し、更には、紡糸試験を予め行って極細繊維を構成するポリマー中に顔料Aが均一に分散していることを確認しておくことが好ましい。
本発明者らは、有機系顔料は無機系顔料と比べて発色性や鮮明性、更には摩擦堅牢性や力学物性等への悪影響が少ない点で優れているものの、有機溶剤に一部溶解するので、有機系顔料を用いて繊維を着色する場合は、有機溶剤を使用しない水溶液で繊維を極細化する方法が工業的に有効であることを見出した。ここでいう水溶液とは、有機溶剤を実質的に含まない水あるいは水溶液のことを示す。つまり、従来から一般的に人工皮革を製造するために用いられている有機溶剤抽出を行って繊維を極細化する方法では、有機溶剤抽出工程で有機系顔料の溶解脱落が起こって発色性が劣ったものとなりやすく、また色ぶれが起こって工業的な安定生産性に課題がある。一方、無機系顔料は、有機溶剤に溶解し難いため、有機溶剤抽出を行って繊維を極細化することは可能であるが、前述した通り、鮮明性、発色性、摩擦堅牢性、更には紡糸性、繊維物性等の低下を招くため、無機系顔料(カーボンブラックは除く)を主体として極細繊維を着色しても本発明の効果は得られない。
本発明の極細繊維の平均繊度は0.2デシテックス以下であることが必須である。極細繊維の繊度が0.2デシテックスを超える場合には、得られるスエード調人工皮革において、顔料で着色した繊維と顔料で着色した高分子弾性体の色調の差や発色性の差が目立って外観に劣ったものとなる傾向がある。加えて、繊度が大きいと、スエード感や表面タッチに劣る傾向がある。極細繊維の繊度は、0.0001〜0.2デシテックス、特に0.001〜0.1デシテックスであることが、顔料で着色した繊維と顔料で着色した高分子弾性体との色バランスが良好で、色調や発色性、更にはスエード感、表面タッチに優れた高級感のあるスエード調人工皮革が得られることから好ましい。なお、スエード調人工皮革を構成する極細繊維の平均繊度は、走査型電子顕微鏡などでスエード調人工皮革の断面および表面を観察する方法などで確認できる。
極細繊維は本質的に発色性が低い問題点を有するが、極細繊維と高分子弾性体の双方を顔料で着色することで、得られるスエード調人工皮革の発色性を高めることができる。更に、本発明では、繊維中の顔料と高分子弾性体中の顔料で幅広い色調に着色できるため、スエード調人工皮革の表面部分を顔料のみで着色、または本発明の効果を損なわない程度の少量の染料で染色する方法を併用することで、更に発色性を向上することが可能となる。そのため、0.05デシテックス以下の超極細繊維を用いた最高級スエード調人工皮革の発色性、色調、耐光堅牢性、摩擦堅牢性の改良に特に有効である。
本発明のスエード調人工皮革は、表面に存在する極細繊維の平均立毛長を10〜200μmにすることが必要である。極細繊維の平均立毛長が200μmを超える場合には、得られるスエード調人工皮革において、繊維の下地にあたる高分子弾性体を完全に覆い隠してしまい高分子弾性体中の顔料の発色性が妨げられ、繊維の色調が強調され過ぎてバラエティーに富んだ色調を揃えることが困難となる。逆に、極細繊維の平均立毛長が10μm未満である場合には、繊維と高分子弾性体の色斑が目立ち、またスエード感や表面タッチに劣ったものとなる傾向がある。また、極細繊維の平均立毛繊維長を調節することで、スエード感や表面タッチ等、更には色調を調節することが可能であり、例えば、スエード調とするには50〜200μm、短毛のヌバック調とするには10〜100μmが好ましい。また、平均立毛繊維長を長くすると、繊維の色調に近くなり、逆に、平均立毛繊維長を短くすると、高分子弾性体の色調が強くなる傾向となる。なお、スエード調人工皮革の表面に存在する極細繊維の平均立毛長は、走査型等の電子顕微鏡でスエード調人工皮革の断面および表面を観察する方法などで確認できる。
本発明の極細繊維を構成するポリマーは、抽出処理などで抽出されることなく極細繊維を発生させうるポリマーであれば、用途や必要性能に応じて便宜選択すれば良いが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、スルホイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル類およびその共重合体;ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体等の脂肪族ポリエステルおよびその共重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12など、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の脱水重縮合あるいは脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の脱水重縮合により得られるポリアミド類およびその共重合体;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、塩素系ポリオレフィン等のポリオレフィン類およびその共重合体;エチレン単位を25モル%から70モル%含有する変性ポリビニルアルコール;およびポリウレタン系、ナイロン系、ポリエステル系などのエラストマー等の中から少なくとも一種類を選んで用いることができる。もしくは、それらの複数ポリマーからなる剥離分割可能なポリマーの組み合わせなども例示される。
中でも、ポリエステル類ではポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリアミド類ではナイロン6やナイロン12、ナイロン6−12、ポリオレフィン類ではポリプロピレンが、紡糸性などの工程性に優れ、得られるスエード調人工皮革の力学物性などが優れる点から好適である。高い耐光堅牢性を必要とする用途の場合には、ポリエステル類が最も好ましい。
本発明の極細繊維を構成するポリマーには、本発明の目的・効果を損なわない範囲内で必要に応じて各種添加剤を配合して使用することができる。例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、滑剤、防汚剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子などが含まれてもよい。
本発明の極細繊維発生型繊維から極細繊維を形成する過程において抽出除去されるポリマーとしては、海島型複合繊維、混合紡糸型複合繊維を構成し、水溶液や有機溶剤の抽出処理で除去されるポリマーであれば、公知のポリマーを使用できるが、特に、水溶液で抽出可能なポリビニルアルコール系共重合体で代表される水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体類(以下PVAと略すこともある)を用いることが好ましい例として挙げられる。すなわち、PVAは、(1)容易に熱水で抽出除去が可能であるので、抽出処理において顔料が流出しにくく有機系顔料を含め多様な顔料が使用できる点、及び、(2)PVAを被抽出成分として用いた極細繊維発生型繊維は、水溶液でPVAを抽出除去処理する際の収縮挙動によって極細繊維間に構造捲縮が発現して不織布が嵩高く緻密なものとなって鮮明に発色し易く且つ非常に柔軟な天然皮革のような優れた風合いのスエード調人工皮革が得られる点、及び、(3)抽出除去処理する際に極細繊維成分や高分子弾性体成分の分解反応が実質的に起こらないために極細繊維成分に用いる熱可塑性樹脂および高分子弾性体の物性低下が起こりにくい点、更には、(4)環境に配慮可能な点、などから好適に用いられる。
また、PVA類を用いる場合には、あまり高温で紡糸すると紡糸性の悪化を招くため、極細繊維を構成するポリマーの融点を適宜選択することが好ましく、極細繊維を構成するポリマーとしては、極細繊維を形成する過程において抽出除去されるポリマーの融点プラス60℃以下の融点を有する熱可塑性ポリマーを選択することが好ましい。また、PVAの融点(Tm)としては紡糸性などの点から160〜230℃が好ましい。
水溶解性熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体成分のポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコールのホモポリマーは勿論のこと、例えば、共重合、末端変性、および後反応により官能基を導入した変性ポリビニルアルコールも包含するものである。
また、有機溶剤の抽出処理で除去されるポリマーとしては、低密度ポリエチレンやポリスチレンなども一例として例示できるが、顔料の溶出などに充分注意する必要がある。水溶液で除去されるポリマーとしては、易アルカリ分解性の共重合ポリエステルなども一例として例示できるが、顔料の溶出や繊維および高分子弾性体への物性等に対する悪影響に充分注意する必要がある。また、抽出処理で除去されるポリマーとしてPVAを使用しない場合には、得られるスエード調人工皮革の嵩高性や緻密性が劣って、発色性、柔軟性、充実感およびスエード感が劣る傾向がある。
PVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変成PVAであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性および抽出処理の際の収縮特性などから、共重合単位を導入した変性ポリビニルアルコールを用いることが好ましく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類に由来する共重合単位を含むことがより好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、変成PVA中に1〜20モル%存在していることが好ましい。さらに、共重合単位がエチレン単位であると、繊維物性が高くなるので、エチレン単位を4〜15モル%含む変性PVAを使用することがより好ましい。
本発明で好ましくに用いられるPVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度と称することもある)は200〜500が好ましい。重合度が200未満の場合には紡糸時に十分な曳糸性が得られず、繊維化できない場合がある。重合度が500を超えると溶融粘度が高すぎて、紡糸ノズルからポリマーを吐出することができない場合がある。また重合度500以下のいわゆる低重合度のPVAを用いることにより、抽出除去するときに水溶液への溶解速度が速くなるという利点が有る。なお、ここで言うPVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。
また、PVAのケン化度は90〜99.99モル%が好ましい。ケン化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって満足な溶融紡糸を行うことができないのみならず、前述した共重合モノマーの種類によってはPVAの水溶性が低下し、本発明の極細繊維を得ることができない場合がある。一方、ケン化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することができず、また、安定した繊維化も難しい場合がある。
また、PVAの融点(以下、Tmと称することもある)は160〜230℃が好ましい。融点が160℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し繊維強度が低くなると同時に、PVAの熱安定性が悪くなり、繊維化できない場合がある。一方、融点が230℃を超えると溶融紡糸温度が高くなり紡糸温度とPVAの分解温度が近づくためにPVA繊維を安定に製造することができない場合がある。なお、PVAの融点は、示差走査熱量計(以下、DSCと称することもある)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味する。
また、PVAのアルカリ金属イオンの含有割合は、PVA100質量部に対してナトリウムイオン換算で0.0003〜1質量部が好ましい。アルカリ金属イオンの含有割合が0.0003質量部未満の場合には、十分な水溶性を示さず未溶解物が残る場合がある。またアルカリ金属イオンの含有量が1質量部より多い場合には溶融紡糸時の分解及びゲル化が著しく繊維化することができない場合がある。アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等があげられる。なお、アルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めることができる。
本発明で好ましく用いられるPVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量は70〜99.9モル%が好ましい。PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が70モル%未満である場合には、PVAの結晶性が低下し、繊維強度が低くなると同時に、溶融紡糸時に繊維が膠着して巻取り後に巻き出しできない場合がある。また本発明で目的とする水溶性の熱可塑性PVA繊維が得られない場合がある。PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が99.9モル%を超える場合には、PVAの融点が高いため溶融紡糸温度を高くする必要があり、その結果、溶融紡糸時のPVAの熱安定性が悪く、分解、ゲル化、PVA着色が起こる場合がある。ここでいうトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基とは、PVAのd6−DMSO溶液を65℃で500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500装置)分析したときの、水酸基プロトンのトライアッドのタクティシティを反映するピーク(I)を意味する。ピーク(I)はPVAの水酸基のトライアッド表示のアイソタクティシティ連鎖(4.54ppm)、ヘテロタクティシティ連鎖(4.36ppm)およびシンジオタクティシティ連鎖(4.13ppm)の和で表わされ、全てのビニルアルコールユニットにおける水酸基のピーク(II)はケミカルシフト4.05ppm〜4.70ppmの領域に現れることから、本発明のビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率は、[(I)/(II)]×100%で表されるものである。
次に、本発明は、スエード調人工皮革を構成する高分子弾性体Aが平均粒径0.05〜0.6μmの有機系顔料及び/又は平均粒径0.05〜0.6μmのカーボンブラック、もしくは有機系顔料を含む平均粒径0.05〜0.6μmの顔料粒子(以下、これらを顔料Bということがある)を1〜20質量%含有し着色されていることが必須である。すなわち、本発明者らは、(1)高分子弾性体を着色する顔料としては、一般的に用いられている無機顔料ではなく、鮮明性と発色性等に優れ、且つ顔料添加に伴う力学性能や摩擦堅牢性の低下を最小限とする点から、顔料Bを使用することが必須であり、且つ、顔料Bの平均粒径を0.05〜0.6μmとすることが必要であること、(2)顔料Bを含有させることによって、高分子弾性体Aの耐光堅牢性が向上する点(理由は定かでないが顔料Bの光遮蔽効果や紫外線吸収効果などによるものと思われる)、(3)0.2デシテックス以下まで繊維が細くなると繊維の発色性が大きく低下して繊維のみの発色では発色性が不足することから、下地にある高分子弾性体Aに顔料Bを含有させてスエード調人工皮革の発色性を高める点、(4)極細繊維の色と高分子弾性体Aの色を混色させることで幅広い色調が可能となる点、および、(5)極細繊維と高分子弾性体Aの色調を近似させて高級感を高める点などから、高分子弾性体Aに平均粒径0.05〜0.6μmの顔料Bを1〜20質量%含有させることが必須であることを見出した。
また、高分子弾性体A中に該顔料Bが混在一体化して存在し、主として顔料Bが高分子弾性体Aを構成するポリマーに埋包されていることが好ましい。ここでいう高分子弾性体A中に顔料Bが混在一体化して存在し、主として顔料Bが高分子弾性体Aを構成するポリマーに埋包されているとは、顔料Bと高分子弾性体Aが別々に偏って単独で存在すること無く、実質的に顔料Bが高分子弾性体A中に均一分散している状態をいう。顔料Bが1質量%未満の場合には、得られるスエード調人工皮革において耐光堅牢性や発色性が不足し、色範囲も狭くなる傾向がある。逆に、顔料Bが20質量%を超える場合には、高分子弾性体Aに埋包されていない顔料の割合が増加して、得られるスエード調人工皮革の摩擦堅牢性などの堅牢性が低下する傾向があり、また、高分子弾性体Aの持つ繊維把持性能が低下して、得られるスエード調人工皮革の引張強力、表面磨耗性などが低下する傾向がある。また、高分子弾性体Aの発色性を高めるには、顔料Bの添加量を増量すると共に、前述したように、表面の極細繊維の平均立毛長を10〜200μmと短毛気味にすることが有効である。また、淡色や白色に着色する場合にも、色の深みを増して高級感を高める点や耐光性の点で、高分子弾性体Aに顔料Bを1重量%以上含有させることが好ましい。
なお、顔料Bと高分子弾性体Aの比率は、高分子弾性体を溶解あるいは分解させた高分子弾性体Aと顔料Bの混合液を充填剤入りのカラムや液体クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどを用いて顔料Bと高分子弾性体A成分を分離、分取する方法、あるいは高分子弾性体Aを電子顕微鏡を用いて観察する方法などによって求められる。なお、高分子弾性体Aが一部染料を含有する場合には、繰り返し熱水処理して染料を抽出する等の方法で染料を除去したり、あるいは染料を含有したまま上記した充填剤入りのカラムや液体クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーなどを用いて顔料Bと高分子弾性体Aおよび染料をそれぞれ分離、分取することでそれぞれの含有率を求めることもできる。また、高分子弾性体A中の顔料B含有率の分析に当たっては、必要に応じて、高分子弾性体Aと極細繊維の何れか一方のみを溶解除去あるいは分解除去して高分子弾性体Aを極細繊維から分離しても良い。例えば、高分子弾性体Aが熱ジメチルホルムアミドあるいは熱アセトンや熱メチルエチルメトン等の高分子弾性体製造の際に用いられる有機溶剤に溶解する場合には、溶解溶剤で溶解させた顔料Bと高分子弾性体Aの混合液を、溶剤系カラムなどを用いて高分子弾性体A成分と顔料Bを分離、分取する方法、などで分析できる。また、高分子弾性体Aが熱有機溶剤に溶解しない場合には、高分子弾性体Aを熱アルカリ処理にて加水分解するあるいは熱処理や酸化促進剤等を添加して酸化劣化させ、熱有機溶剤に溶解させた後、高分子弾性体Aと顔料Bの混合液を、溶剤系カラムや水系カラムなどを用いて高分子弾性体A成分と顔料Bを分離、分取する方法にて分析できる。あるいは、上記した方法にて高分子弾性体Aや顔料Bの比重を測定し、更に、高分子弾性体を電子顕微鏡を用いて観察し市販の画像解析ソフト等を用いて画像解析処理して面積換算値を求め、質量比率を算出する方法などでも分析できる。
また、高分子弾性体Aを着色する顔料Bとしては、一般的に用いられている無機顔料ではなく、鮮明性、発色性、更には顔料添加に伴う力学性能や摩擦堅牢性の低下を最小限とする点から、有機系顔料及び/又はカーボンブラック、もしくは有機系顔料を含む顔料粒子を使用することが必須であり、更に、有機系顔料は有機溶剤に一部溶解するので、有機系顔料または有機系顔料を含む顔料粒子で高分子弾性体Aを着色するには、有機溶剤を使用しない水分散高分子弾性体Aを用いることが工業的に有利である。ここでいう水分散高分子弾性体Aとは、有機溶剤を実質的に含まない水あるいは水溶液に分散した高分子弾性体Aのことを示す。
従来から一般に用いられている、有機溶剤に溶解させた高分子弾性体Aを含浸、湿式凝固させる方法では凝固工程および有機溶剤洗浄工程で有機系顔料が一部溶解脱落するため、得られるスエード調人工皮革の発色性が低下したり、色ぶれが発生する問題が生じ、更には切り替えロスが大きくなって、工業的に有機系顔料を使用することが困難となる傾向がある。一方、無機系顔料は有機溶剤に殆ど或いは全く溶解しないため、有機溶剤に溶解させた高分子弾性体Aに配合することも考えられるが、鮮明性、発色性が劣って色範囲が非常に狭くなる点、および、高分子弾性体Aとの配合性が悪く含浸が不十分となり顔料の付着斑が起こりやすい点、更には、スエード調人工皮革の引張物性、表面耐磨耗性、摩擦堅牢性などへ悪影響を及ぼす傾向があるため、無機系顔料のみで高分子弾性体Aを着色しても、本発明の効果は得られない。
本発明の高分子弾性体Aに含有させる顔料Bそれぞれの平均粒径は0.05〜0.6μmであることが必要である。ここでいう平均粒径とは、顔料Bが高分子弾性体A中に存在した状態における顔料Bの平均粒径であって、一次粒子径を指すものではない。つまり、顔料は一次粒子径の状態で存在することは稀であり、一般に、一次粒子径の顔料が多数凝集したストラクチャー、一次凝集体、二次凝集体、あるいは二次粒子などと呼ばれる凝集状態で存在する。また、高分子弾性体Aの種類等によってその凝集状態は影響され、凝集状態にある顔料の粒径が各種性能を支配するものと考えられる。本発明における平均粒径とは、高分子弾性体Aを構成するポリマー中における、ストラクチャー、一次凝集体、二次凝集体、あるいは二次粒子などと呼ばれる凝集状態の平均粒径を言う。
高分子弾性体Aに含有されている顔料Bの平均粒径が0.05μm未満である場合には、顔料自体の光隠蔽性、耐光堅牢性が低下することに起因すると思われるが、スエード調人工皮革の耐光堅牢性が劣る傾向があり、更に、高分子弾性体A液中で顔料が凝集しやすくなって顔料を高分子弾性体A液中に均一に分散させることが難しくなって、得られるスエード調人工皮革の発色斑や色斑が生じる傾向がある。逆に、高分子弾性体Aに含有されている顔料Bの平均粒径が0.6μmを超える場合には、顔料が高分子弾性体Aを構成するポリマーに埋包されにくくなって、得られる人工皮革用基体の摩擦堅牢性などの堅牢性が劣る傾向が有る。また、高分子弾性体Aと顔料を配合した際に、顔料が沈降しやすくなって、顔料を含有する高分子弾性体Aの含浸が不十分になり、スエード調人工皮革の発色斑や色斑が生じる傾向がある。顔料Bの平均粒径は、0.1〜0.5μmが特に好ましい。なお、スエード調人工皮革の高分子弾性体A中に含有する顔料Bの平均粒径や分散状態については、走査型あるいは透過型の電子顕微鏡等でスエード調人工皮革の断面および表面を観察する方法で確認できる。
本発明の高分子弾性体Aに含有させる顔料Bは、平均粒径が0.05〜0.6μmであって、高分子弾性体Aを構成するポリマー中に混在一体化して存在し、主として高分子弾性体Aを構成するポリマーで埋包されうる顔料であれば特に限定されない。有機系顔料としては例えば、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、インジゴ系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系、ペリレン系、ペリノン系等の縮合多環系有機顔料およびベンズイミダゾロン系、縮合アゾ系、アゾメチンアゾ系等の不溶性アゾ系などが挙げられる。カーボンブラックには、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サマールブラックなどがあるが、本発明で使用するカーボンブラックはそれ自体の種類を何ら限定するものではない。これら有機系顔料やカーボンブラックを繊維に1種以上含有させる。
本発明の有機系顔料を含む顔料粒子とは、有機系顔料に、カーボンブラックあるいは酸化チタン、べんがら等の無機顔料から選ばれた少なくとも一つの顔料を混合した顔料のことを指す。そして該混合物中の無機系顔料の含量は50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。無機系顔料が50質量%を超える場合、鮮明性と発色性が低下したり、力学性能や摩擦堅牢性が低下する傾向がある。
また、平均粒径が0.05〜0.6μmであって、高分子弾性体Aを構成するポリマー中に混在一体化して存在し、主として高分子弾性体Aを構成するポリマーで埋包されうる顔料であれば、本発明の効果を妨げない範囲で、無機系顔料を併用しても構わず、例えば、酸化チタン、べんがら、クロムレッド、モリブデンレッド、リサージ、群青、酸化鉄等が挙げられる。特に、得られるスエード調人工皮革の鮮明性、発色性、色調の広さ、耐光堅牢性、摩擦堅牢性および表面耐磨耗性などが優れる点で、高分子弾性体Aに含有する顔料としては縮合多環系有機顔料および不溶性アゾ系顔料が特に好ましく、縮合多環系有機顔料や不溶性アゾ系顔料のみの顔料からなる、縮合多環系有機顔料や不溶性アゾ系顔料を主体とし、色調等の必要に応じてカーボンブラックや酸化チタン等を併用した顔料が特に好ましい例として挙げられる。また、カーシートなど高耐光性が必要な用途においては、耐光劣化の大きい顔料は使用を避けることが望ましい。
本発明においては、高分子弾性体Aに対して非溶剤である水などの液体を使用して希釈した水分散高分子弾性体A、および、顔料Bに対して非溶剤である水などの液体を使用して希釈した水分散顔料を使用することが、高分子弾性体A中における顔料Bの分散性が良好となる点で好ましい。また、水分散高分子弾性体、水分散顔料双方共に、ノニオン系、アニオン系あるいはその併用系に分散されているものを用いることが、高分子弾性体A中の顔料Bの分散性、および高分子弾性体と顔料Bの配合液の安定性が良好で、高分子弾性体A中に顔料Bが均一に分散して、顔料Bが高分子弾性体Aに埋包されやすい点で好ましい。なお、高分子弾性体A中の顔料Bの分散性、および高分子弾性体Aと顔料Bの配合液の安定性は、高分子弾性体A中に顔料Bが均一に分散し、顔料Bが主として高分子弾性体Aに埋包されることを事前に確認することが好ましい。
本発明の高分子弾性体Aとしては、平均粒径が0.1〜0.7μmの透明皮膜を形成しうる水分散高分子弾性体を用いることが好ましい。高分子弾性体Aの皮膜が不透明の場合には、含有する顔料Bの発色性を妨げて得られるスエード調人工皮革の発色性、鮮明性に劣る傾向がある。平均粒径が0.7μmを超える場合には、皮膜が不透明となるために、顔料Bの発色性が妨げられて、得られるスエード調人工皮革の発色性、鮮明性が劣る傾向がある。逆に、水分散高分子弾性体の平均粒子径が0.1μm未満の場合には、得られるスエード調人工皮革の風合いが堅くなる傾向がある。水分散高分子弾性体の平均粒径は、0.15〜0.6μmが特に好ましい。なお、使用する水分散高分子弾性体液の平均粒子径は動的散乱法などの公知の方法で測定できる。スエード調人工皮革における水分散高分子弾性体に由来する高分子弾性体Aの平均粒径も、必要に応じて着色処理や架橋性樹脂処理を行った後、透過型電子顕微鏡等を用いて測定できる。
上記要件を満足する高分子弾性体Aとしては、ジイソシアネート成分として脂肪族系ジイソシアネートや脂環族系ジイソシアネートを含むポリウレタン(以下、無黄変タイプポリウレタンと称することもある)が、工業的に水分散高分子重合体の平均粒子径を0.8μm以下にすることが容易であり、また、芳香族系ジイソシアネートを用いたポリウレタンに比べて同一の平均粒径であっても皮膜の透明性が高い傾向があるので特に好ましい例として挙げられる。
また、カーシートなどの高い耐光性が必要な用途においては、高分子弾性体フィルムをキセノンアークランプ耐光堅牢性評価(ブラックパネル温度=83℃、積算照射照度=20MJ)を行った場合(JIS L0804)、耐光堅牢性が、3級以上、特に好ましくは4級以上である高分子弾性体Aを用いることが好ましい。具体的には、芳香族系ジイソシアネートの割合が10質量%未満のポリウレタンであることが好ましい。ここでいう芳香族系ジイソシアネートとは、ポリウレタン等のジイソシアネート成分として使用される芳香環を有するジイソシアネートのことを指し、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの公知の芳香族系ジイソシアネートを挙げることができる。高分子弾性体Aに含有する芳香族系ジイソシアネートの割合が10質量%以上の場合には、得られたスエード調人工皮革において、高分子弾性体A自身の光黄変に基づく光変色、および高分子弾性体Aの光劣化に起因した顔料の光退色が起こりやすくなって、耐光性の改良に限界が生じる場合がある。あるいは、非常に耐光性の優れた特定の顔料や赤外線等の蓄熱の少ない特定の顔料を用いることが必要となって、製造コストの問題が生じるばかりか、限られた顔料で着色することが必要となるためバラエティに富んだ色調を揃えることが困難となる場合がある。特に、ポリウレタンを構成する有機ジイソシアネートとしては、カーシートなどの高い耐光性が必要な用途においては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどの芳香環を有しない脂肪族系あるいは脂環族系の有機ジイソシアネートが好ましい例として挙げられる。
高い耐光性が必要とされる用途でなければ、本発明の効果を妨げない範囲で有機ジイソシアネートとして芳香族系の有機イソシアネートを用いても構わない。
また、スエード調人工皮革を構成する高分子弾性体Aは、130℃の熱水中に浸漬した直後の熱水膨潤率が20%以下であることが好ましい。130℃の熱水中に浸漬した直後の高分子弾性体Aの熱水膨潤率が20%を超える場合には、水溶液で極細化処理や柔軟化処理する際や、場合により本発明の効果を損なわない範囲で染料を用いて染色する際などに、高分子弾性体Aが膨潤変形して、顔料の脱落が起こったり、あるいは高分子弾性体A中に埋包されていた顔料Bが露出しやすくなって、得られるスエード調人工皮革の発色性、鮮明性、摩擦堅牢性が低下する傾向がある。加えて、高分子弾性体Aが繊維を把持できず、表面繊維の平均立毛長を10〜200μmの短毛気味にすることが困難となる傾向がある。特に水分散高分子弾性体は、従来から人工皮革を製造する際に用いられている溶剤系の高分子弾性体Aと比べて130℃での熱水膨潤率が高い傾向があるため、3官能化合物などを用いて架橋するなどして130℃での熱水膨潤率を低減することが好ましい。
ここでいう130℃の熱水中に浸漬した直後の高分子弾性体Aの熱水膨潤率とは、後述するが、高分子弾性体Aキャストフィルムを120〜150℃で熱処理した後の質量をW0とし、130℃熱水に1時間浸漬した後の、質量をWとしたとき、下記の計算式に従って計算した膨潤率を言う。
高分子弾性体Aの130℃での熱水膨潤率(wt%)=[(W−W0)/W0]×100
本発明のポリウレタンに用いられる高分子ポリオールとしては用途や必要性能に応じて公知の高分子ポリオールを選択すれば良く、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテル系ポリオール;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン アジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン セバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン カーボネート)ジオールなどのポリカーボネート系ポリオール;ポリエステルカーボネートポリオールなどが使用でき、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。特に、得られるスエード調人工皮革の耐光堅牢性や耐NOx黄変性、耐汗性、耐加水分解性などの耐久性が良好なものとする等の観点から、ポリエーテル系、ポリエステル系或いはポリカーボネート系などの2種以上を併用した高分子ポリオールを使用することが特に好ましい例として挙げられる。
本発明のポリウレタンに用いられる鎖伸長剤成分としては、用途や必要性能に応じて公知のウレタン樹脂の製造に用いられている鎖伸長剤を選択すれば良く、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミン等のトリアミン類;トリエチレンテトラミン等のテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
また、ポリウレタン樹脂の樹脂骨格中へ水分散高分子弾性体の粒径や各種性能を付与するためにカルボキシル基を導入しても良い。その方法は、特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂の原料として2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸などのカルボキシル基含有ジオールを併用することなどにより達成される。
また、耐光性が優れているアクリル成分をポリウレタンに複合したアクリル−ポリウレタン複合タイプの高分子弾性体Aを用いることも、得られるスエード調人工皮革の耐光堅牢性などの耐久性が優れる等の点で好適な例として挙げられる。すなわち、高分子弾性体Aがポリウレタン成分とアクリル成分から構成されており、ポリウレタン成分とアクリル成分の質量比率が10:90〜90:10であって、ポリウレタン成分が海島構造の海を構成し、アクリル成分が海島構造の島成分を構成し、ポリウレタン成分が連続相、アクリル成分が非連続相を形成しているアクリル−ウレタン複合タイプの高分子弾性体Aを用いることも好適である。また、高分子弾性体Aがポリウレタン成分とアクリル成分から構成されている場合には、顔料Bがポリウレタン中に混在一体化して存在することが、顔料Bの脱落を抑制して摩擦堅牢性などの堅牢性を確保する点で好ましい。
アクリル−ウレタン複合タイプの樹脂は、公知の方法でウレタン樹脂水性分散液の存在下で(メタ)アクリル酸誘導体を主成分とするエチレン性不飽和モノマーを乳化重合する方法などで得られる。また、従来既知のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合と同様にして行うことができる。エチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として用いることが好ましい。さらに、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、(メタ)アクリル酸アリルなどの多官能性エチレン性不飽和モノマーを少量共重合し、樹脂を架橋構造とすることが好ましい。
なお、高分子弾性体Aは、主剤樹脂用の架橋剤を含有していても良い。架橋剤としては、主剤樹脂の官能基と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する化合物であって、主剤樹脂の官能基と架橋剤の官能基の組み合わせは、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とシクロカーボネート基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボニル基とヒドラジド基などが挙げられる。これらの中でも、液安定性が優れ、しかも製造が容易であることから、カルボキシル基を有する主剤樹脂と、オキサゾリン基またはカルボジイミド基を有する架橋剤の組み合わせが好ましい例として挙げられる。
本発明の高分子弾性体Aは、本発明の特徴を損なわない限り、浸透剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造膜助剤、感熱ゲル化剤、柔軟剤、滑剤、防汚剤、蛍光剤、防黴剤、難燃剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料などを適宜含有していてもよい。
本発明のスエード調人工皮革において、高分子弾性体Aと3次元絡合体の質量比は、15:85〜60:40であることが必要である。ここでいう高分子弾性体Aと3次元絡合体の質量比とは、高分子弾性体A中および3次元絡合体に顔料が含まれた状態での質量比と定義する。高分子弾性体Aが15質量%未満の場合には、高分子弾性体Aの発色が繊維に比べて相対的に不足し、また、繊維の把持力が不足して表面繊維の平均立毛長を10〜200μmの短毛気味にすることが困難となるために、高分子弾性体Aの発色が妨げられて多様な色調を揃えることが困難となり、摩擦堅牢性や表面磨耗性も劣る傾向がある。逆に、高分子弾性体Aが60質量%を超える場合には、繊維と高分子弾性体Aの色斑が目立ったりスエード感が不足して高級感に劣る傾向があり、また、引張強力や引裂強力などの力学物性が劣る傾向がある。高分子弾性体Aと3次元絡合体の比率は、20:80〜50:50の範囲であることが特に好ましい。なお、高分子弾性体Aと3次元絡合体の比率は、構成する極細繊維あるいは高分子弾性体Aの何れか一方のみを溶解除去あるいは分解除去して分取する方法等で求めることができる。
本発明では、極細繊維および高分子弾性体Aに顔料を含有させて、目標とする色調に着色し、染料を用いずにスエード調人工皮革とすることが特に好ましい。また、目標とする色調にある程度近い色調にスエード調人工皮革を着色した後、色合わせや色調の調整などを行うために、顔料Cを0.5〜25質量%含有する高分子弾性体Bからなる層を立毛繊維の根元付近の表面に連続又は非連続の状態で付与しても良く、また、本発明の効果を損なわない範囲で少量の染料で着色しても良い。ただし、極細繊維および高分子弾性体Aに顔料を含有させて着色した色調とは大きく異なる色調に染料を用いて染色する場合には、多量の染料が必要となって耐光堅牢性が劣る傾向がある。従って、目的とする色調或いは目的とする色調にある程度近い色調になるよう、極細繊維および高分子弾性体Aに顔料を含有させて着色した後に、淡色の色調であればスエード調人工皮革を構成する極細繊維、あるいは極細繊維および高分子弾性体に対して0〜2質量%程度、濃色の色調であればスエード調人工皮革を構成する極細繊維、あるいは極細繊維および高分子弾性体に対して0〜5質量%程度の付着量となるよう必要最小量の染料を用いて染色してもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、吸尽着色用顔料を用いて着色しても構わない。
本発明では、極細繊維と高分子弾性体Aの双方に顔料を含有させて着色していること、顔料として有機顔料を主体に用いること、および、表面の極細繊維の平均立毛長を10〜200μmと短毛気味にして高分子弾性体Aの発色性を確保しているので、染料を用いずとも、幅広い色調に着色することが可能である。
以上より、本発明者らは、幅広い色調において発色性、耐光堅牢性に優れ、スエード感、表面タッチおよび風合いに優れたスエード調人工皮革を得る手法を見出し、本発明に至った。
次に、本発明のスエード調人工皮革の製造方法について詳細に説明する。
本発明の極細繊維発生型繊維としては、水溶液や有機溶剤で除去成分を除去して極細繊維を得る海島型複合繊維や混合紡糸型複合繊維、および、分割処理により極細繊維を得る剥離分割型複合繊維などの多成分系複合繊維を挙げることができる。中でも、0.2デシテックス以下の極細繊維を得ることが容易な点から、海島型複合繊維や混合紡糸型複合繊維が好ましい。
極細繊維発生型繊維は紡糸ノズルから吐出された後、通常延伸処理される。延伸はノズルから吐出された繊維を一旦巻き取ってから延伸する場合と、捲き取る前に延伸する場合が有るがいずれでもよく、また、延伸は、熱風、熱板、熱ローラー、水浴等のいずれを用いて行ってもよい。ただし、変性PVAなどの水溶解性の高いポリマーを用いる場合には、水浴中で延伸するよりも、水分の影響の少ない熱風などの乾式法で延伸することが好ましい。その後必要に応じて捲縮などの処理工程を経て、繊度1〜15デニール、繊維長2〜80mmの繊維からなる短繊維ウエブ(繊維絡合不織布)を作成する。該短繊維ウエブは、カードで解繊し、ウェバーを通してランダムウェブまたはクロスラップウェブを形成した後、ニードルパンチ処理を行う方法、あるいは、抄紙方法でウエブを作成した後、水流絡合処理を行う方法などの公知の方法により作成される。あるいは、スパンボンド法などの公知の方法で長繊維ウエブを作成し、必要に応じてニードルパンチ処理や水流絡合処理を行う方法で製造しても構わない。
必要に応じて、本発明の目的効果を損なわない範囲において、他の繊維を混合あるいは積層させても良く、また、本発明の3次元絡合体の内部または裏面側(立毛表面と反対側)に形態安定化または支持などの目的で、編物または織物を積層することも好ましい例として挙げられる。
本発明では極細繊維と高分子弾性体Aの両方を顔料を用いて発色させているため、従来の染色方法が適用困難であった染色性の異なる複数種の繊維、例えば繊度が異なる複数種の繊維あるいはポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン等のように染色性が異なる異種ポリマーからなる複数種の繊維の着色にも適用可能であるので、本発明は多方面の人工皮革用途に用いることができる。中でも、力学物性、風合いや各種機能などを容易に調節することができる点で、表面層に不織布が存在し、且つ繊維を顔料で着色した編物または織物が該不織布の裏面側に存在する3次元絡合体を有するスエード調人工皮革、あるいは、表面層部分と裏面側部分とを構成する繊維が同系色の顔料で着色され、表面層部分と裏面側部分とが互いに異種の繊維からなる3次元絡合体を有するスエード調人工皮革も、好適な例として挙げられる。なお、ここでいう異種の繊維とは、ポリマー種類や繊維の繊度などが異なる繊維のことを示す。
また、裏面側に用いる異種の繊維や該編物または織物には、本発明の目的・効果を損なわない範囲内で必要に応じて、例えば、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、滑剤、防汚剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子などの添加剤が含まれてもよい。また、編物または織物は、必要に応じて、本発明の極細繊維発生型繊維からなるものであっても良い。
また、必要に応じて繊維絡合不織布を50〜200℃の範囲の温度で加熱処理、あるいは50〜95℃の範囲の熱水槽で熱水加熱処理し、繊維絡合不織布を収縮させてもよい。収縮率は、極細繊維発生型繊維の種類、質量比率、紡糸条件、延伸条件などにより決まるが、スエード調人工皮革の外観などを良好にする点およびスエード調人工皮革の表面平滑性や充実感に優れている点などから、面積収縮率として5〜60%、特に10〜50%の範囲にあることが好ましい。
必要に応じて、不織布に、溶解除去可能な樹脂たとえばポリビニルアルコール系樹脂などの水溶性糊剤を付与して、不織布を仮固定してもよし、表面平滑化や比重調整などのために、熱プレスなどの熱処理を行っても良い。
繊維絡合不織布の厚みは、得られる人工皮革の用途等によって任意に選択でき、特に制限されるものではないが、その厚みは0.2〜10mm程度であることが好ましく、0.4〜5mm程度であることがより好ましい。密度は0.20〜0.80g/cm3が好ましく、0.30〜0.70g/cm3が更に好ましい。0.20g/cm3未満であると繊維の立毛感が不足し、さらに機械物性も低下する傾向がある。0.80g/cm3を超えると得られる人工皮革の風合いが硬くなる傾向がある。
そして、ウレタン系重合体、アクリル系重合体、あるいはアクリル−ウレタン複合タイプなどの高分子弾性体Aと顔料Bの分散液を、繊維絡合不織布の内部に含浸する。その後、熱処理して乾式凝固するか、熱処理、赤外線加熱処理、熱水処理、スチーム処理して感熱凝固させた後に熱処理し、次いで乾燥する。顔料Bを含有する高分子弾性体Aは、繊維絡合不織布全体に均一に付与されても良いし、表面にマイグレーションさせて厚み方向に勾配をつけて付与しても良い。顔料を均一に分布させることができる等の点から、感熱ゲル化性化合物を添加し熱水または湿潤雰囲気下で、赤外線、マイクロ波あるいは熱風などでゲル化凝固させる等の公知の感熱ゲル化方法を用いて、高分子弾性体Aを繊維絡合不織布全体に均一に付与するのが好ましい例として挙げられる。水分散高分子弾性体を繊維絡合不織布内部に含浸する方法については、繊維絡合不織布中に高分子弾性体Aの水性分散液を均一に含浸させ得る公知の方法を採用すれば良いが、水性分散液中に繊維絡合不織布を浸漬した後にプレスロールやドクターナイフなどを用いて水分散高分子弾性体の含浸量を適量なものに調整する方法や、定量ポンプ付きのコート塗工方法による方法などが好ましい例として挙げられる。
また、高分子弾性体Aの有機溶剤溶液と、顔料Bの有機溶剤溶液または有機溶剤分散液とを混合した後、繊維絡合不織布に含浸し、その後、公知の方法で湿式凝固を行う方法も一例として挙げられるが、顔料の溶出などに充分注意する必要がある。
顔料Bを含有した高分子弾性体Aの含浸は、極細繊維発生型繊維からなる繊維絡合不織布を製造する工程後から、極細繊維発生型繊維を0.2デシテックス以下に極細化する工程の前のいずれかの工程で行うことが、スエード感、表面タッチ、柔軟性が良好で高級感を有するスエード人工皮革が得られること、および引裂強力や摩擦堅牢性などの実用性能が良好であることから好ましい。
必要に応じて、顔料Cを0.5〜25質量%含有する高分子弾性体Bからなる層を立毛繊維の根元付近の表面に連続又は非連続の状態で付与することが、得られるスエード調人工皮革の色調、発色性および表面感や表面物性を容易に調節できる点で好適な例として挙げられる。付与量は、高分子弾性体Bおよび顔料Cの固形分に換算して0.5〜30g/m2の範囲が発色性、表面のスエード感などの点で好ましく、1〜20g/m2がより好ましい。繊維絡合不織布や極細繊維絡合体の表層に付与する方法としては、公知のグラビアコート法、スプレー法等の点状の非連続付与方法、ナイフコート法、転写法等の連続付与方法を用いれば良いが、塗布の均一性の点および塗布量の調節が容易な点で、さらには、表面のスエード感が損なわれ難い点で、グラビアコート法、スプレー法が好ましい例として挙げられる。高分子弾性体Bとしては、上述した高分子弾性体Aが、該顔料Cとしては、上述した顔料Bが好適に用いられ、さらに、前記水分散高分子弾性体や水分散顔料を用いると、耐光堅牢性、摩擦堅牢性、発色性が良好となることから好ましい。また、顔料Cを含有する高分子弾性体Bは、繊維絡合不織布や極細繊維絡合体の表面のみに付着させるのではなく、内部まで一部浸透するように処理した方が、得られるスエード調人工皮革のスエード感や表面タッチおよび剥離強力が良好となる点で好ましい。
該工程は、高分子弾性体Aを繊維絡合不織布に付与する工程以降のいずれの工程でも行うことが可能であるが、極細繊維発生型繊維を極細繊維とする工程以前、あるいは少量の染料を用いて染色する工程以前に行うことが、得られるスエード調人工皮革のスエード感、表面タッチ、更には摩擦堅牢性などの堅牢性が良好となる点で好ましい。
顔料Cを含有する高分子弾性体Bは、必要に応じて、本発明の特徴を損なわない限り、浸透剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造膜助剤、感熱ゲル化剤、柔軟剤、滑剤、防汚剤、蛍光剤、防黴剤、難燃剤、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、あるいはポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料などを適宜含有していてもよい。
次いで、繊維絡合不織布中の極細繊維発生型繊維を、極細繊維および高分子弾性体の非溶剤であり且つ極細繊維発生型繊維の抽出除去成分を溶解する溶剤で該抽出除去成分を除去する、あるいは剥離型分割繊維の場合には、分割剥離処理を施し、極細繊維とする。本発明では、極細化のための抽出除去を、有機溶剤を実質的に含まない水あるいは水溶液中で行うことが、前述したように、有機系顔料を含め多様な顔料を使用できる点、抽出除去処理する際に極細繊維成分や高分子弾性体成分の分解反応が起こらない点、環境に配慮可能な点、更には、抽出除去成分としてPVAを使用した場合には、PVAの収縮挙動によって、極細繊維間に構造捲縮が発現して不織布が嵩高く緻密なものとなって鮮明に発色し易く且つ非常に柔軟な天然皮革のような優れた風合いのスエード調人工皮革が得られる点、で特に好ましい。なお、極細化のための水溶液には、通常軟水が用いられるが弱アルカリ水溶液、弱酸性水溶液であっても良いし、界面活性剤や浸透剤などを含んだものであっても良い。そして、抽出除去温度は、生産性などを考慮して適宜調整すれば良いが、50℃以上で処理するのが好ましい。該極細繊維発生型繊維を極細化する工程は、繊維絡合不織布に高分子弾性体Aを付与した工程以降に行うことが好ましい。極細繊維発生型繊維を極細化した後に高分子弾性体Aを付与した場合には、表面繊維の立毛感に乏しくスエード感や表面タッチに劣り、風合いも堅くなる傾向がある。また、高分子弾性体Aや顔料Bが含有する乳化剤やオリゴマーが残存して、摩擦堅牢性やフォギングなどが問題となる場合がある。また、高分子弾性体Aは極細繊維に接着していてもよいし、高分子弾性体Aと極細繊維との間に空間を形成していても良いが、高分子弾性体Aと極細繊維束との間で部分的に接着している状態にあると、スエード感、表面タッチ、風合い、表面強度、引裂強力、摩擦堅牢性が良好になる傾向がある。
また、極細繊維発生型繊維を極細化する工程の以前あるいは以降に、必要に応じて加圧加熱処理して所望の厚みにしたり、厚み方向に分割処理して厚みを調節してもよい。少なくとも一つの面にバフィング処理等の起毛処理を施して、得られるスエード調人工皮革の少なくとも一方の面における表面の極細繊維の平均立毛長を10〜200μmとする必要がある。平均立毛長を10〜200μmとするためには、前述したように、高分子弾性体Aと3次元絡合体の質量比を15:85〜60:40とすること、及び、130℃の熱水中に浸漬した直後の熱水膨潤率が20%以下の高分子弾性体Aを用いることが好ましく、更に、コンタクトバフやエメリーバフなどのバフィング条件のペーパー番手や回転数等を適宜選択することが好ましい。
本発明では、極細繊維および高分子弾性体Aに顔料を含有させて、目標とする色調にスエード調人工皮革を着色する方法、あるいは目標とする色調にある程度近い色調に着色した後、顔料Cを含有する高分子弾性体Bを立毛繊維の根元付近の表面に付与して色合わせや色調の調整などを行う方法、また、本発明の効果を損なわない範囲内で少量の染料を用いて調色する方法を採用することができる。また、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲内で吸尽着色用顔料を用いて着色しても構わない。ただし、染色を行う場合には、耐光堅牢性、摩擦堅牢性、およびスエード感、表面タッチや風合い等、本発明の効果を妨げないよう注意して行う必要がある。
また、必要に応じて、揉み柔軟化処理、逆シールのブラッシング、エメリーバフ処理などを行ったり、防汚処理、親水化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理などの仕上げ処理を行うこともできる。
本発明のスエード調人工皮革は、極細繊維の立毛を有する表面をキセノンアークランプ耐光堅牢性評価(ブラックパネル温度=83℃、積算照射照度=20MJ)したときの耐光堅牢性が、4級以上であることが、幅広い色調での優れた耐光堅牢性と発色性を有する点で好ましい。
また、本発明のスエード調人工皮革は、JIS L0801に準じて測定した湿潤下の摩擦堅牢性が、3級以上であることが、例えば、カーシート等に代表されるインテリア用途や衣料用途等に適することから好ましく、淡色系では、4級以上であることがより好ましい。
本発明のスエード調人工皮革は、必要に応じて公知の方法にて少なくとも一方の面に高分子弾性体Cを付与するなどして、銀付き調人工皮革、半銀付き調人工皮革あるいはヌバック調人工皮革とすることもできる。また、表面を加熱押圧して平滑面にすることによりスエード調人工皮革の表層部を溶融して樹脂被覆層とし、銀付き調人工皮革とすることもできる。また、銀付き調人工皮革を製造するために表面に付与する樹脂としては、前記高分子弾性体Aが好適に用いられるが、スエード調人工皮革内部に含有されているのと同一の顔料および高分子弾性体を用いると、耐光堅牢性、摩擦堅牢性、発色性が良好となる傾向がある。銀付き調人工皮革を製造する方法としては、公知の方法で少なくとも一方の面の表面全体を高分子弾性体Cにより被覆することにより得られる。また、半銀付き調人工皮革を製造する方法としては、公知の方法で、少なくとも一方の面に、銀面部分と極細繊維の立毛部分が所望の比率になるように高分子弾性体Cをスプレー方式、グラビア方式等の方法で部分的に銀付き部分を形成することにより得られる。また、ヌバック調人工皮革を製造する方法としては、公知の方法で、少なくとも一方の面の表面に、極細繊維の立毛長が短くなるように高分子弾性体Cを付与するか、または、高分子弾性体C付与後、弱い条件にて更にバフィングする、あるいは表面の高分子弾性体と3次元絡合体の質量比率を高めにすることなどにより得られる。
また必要に応じて、本発明のスエード調人工皮革を上層に使用し、編物あるいは編物を下層となるよう接着剤などの公知の方法で貼り合わせても、あるいは、本発明のスエード調人工皮革を上層に使用し、該スエード調人工皮革を構成する繊維とは異種の繊維からなる層を下層となるよう接着剤などの公知の方法で貼り合わせても構わない。また、必要に応じて、それらの貼り合わせられたスエード調人工皮革に、揉み柔軟化処理、滑剤処理、柔軟剤処理、酸化防止剤処理、紫外線吸収剤処理、蛍光剤処理、難燃剤処理、防汚処理、親水化処理などの仕上げ処理を行うこともできる。
本発明で得られるスエード調人工皮革は、多様な色調において発色性および耐光堅牢性などの堅牢性が優れ、スエード感、表面タッチ、風合いなどの感性面、および表面強度、引裂強力、引張強力などの物性面も良好なものであり、高耐光性が要求されるカーシート、インテリア製品はもとより、衣料、服飾品、靴、袋物、各種手袋などに好適である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は断りのない限り、質量に関するものである。
[引張強力]
JIS L 1079の5.12.1に準拠して、MD方向(縦方向)、CD方向(横方向)に切り出した幅25mmの試験片の引張強力を測定し、その平均値で示した。
[引裂強力]
JIS L 1079の5.14のC法に準拠して、MD方向(縦方向)、CD方向(横方向)に切り出した幅25mmの試験片の引裂強力を測定し、その平均値で示した。
[耐光堅牢性]
スエード調人工皮革の表面にキセノンアークランプを100時間照射(ブラックパネル温度:83℃、積算照射照度:20MJ/m2、水スプレー無し)した後の変色度をJIS L0804に規定する変退色グレースケールを用いて号判定し、その号判定を級として判定した。
[湿潤下の摩擦堅牢性]
JIS L0801に準じて、ウエット状態で測定し級判定にて評価した。
[表面磨耗性]
JIS L1096(6.17.5E法 マーチンデール法)にて、押圧荷重12kPa(gf/cm2)、摩耗回数5万回での減量を測定した。
[水分散顔料の平均粒径]
大塚化学株式会社製「ELS−800」を使用して動的光散乱法により測定し、キュムラント法(東京化学同人社発行「コロイド化学第IV巻コロイド化学実験法に記載」により解析して、水分散顔料の平均粒子径を測定した。
[水分散高分子弾性体の平均粒径]
大塚化学株式会社製「ELS−800」を使用して動的光散乱法により測定し、キュムラント法(東京化学同人社発行「コロイド化学第IV巻コロイド化学実験法に記載」により解析して、水分散高分子弾性体の平均粒子径を測定した。また、スエード調人工皮革中の高分子弾性体の平均粒径は、スエード調人工皮革をエポキシ樹脂処理して埋包し染色処理した後、超ミクロトームで厚さ5〜10μmの超薄切片を作成し、B0301−日立製作所製 透過型電子顕微鏡「H−800NA型」で高分子弾性体を観察することにより測定した。
[スエード調人工皮革の平均立毛長]
オスミウム染色処理したスエード調人工皮革の断面を、走査型電子顕微鏡「S−2100日立走査型電子顕微鏡」(倍率200倍)で10ケ所以上観察し、高分子弾性体層より上部の表面繊維の立毛長を測定し、その平均を算出した。
[高分子弾性体中の顔料の平均粒径と分布状態]
酸化オスミウム染色処理したスエード調人工皮革の断面を、走査型電子顕微鏡「S−2100日立走査型電子顕微鏡」(倍率2000〜1万倍)で10ケ所以上観察し、高分子弾性体中の顔料の平均粒径と分布状態を測定した。
[極細繊維中の顔料の平均粒径と分布状態]
スエード調人工皮革を構成する極細繊維をエポキシ樹脂処理して埋包し染色処理した後、超ミクロトームで厚さ5〜10μmの超薄切片を極細繊維の断面に沿って作成し、これをB0301−日立製作所製 透過型電子顕微鏡「H−800NA型」(倍率1万〜10万倍)で10ケ所以上観察し、極細繊維中の顔料の平均粒径と分布状態を測定した。
[熱可塑性樹脂の融点]
DSC(TA3000、メトラー社)を使用し、試料10mgを窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合に示す吸熱ピークを測定して求めた。
[水分散高分子弾性体フィルムの130℃での熱水膨潤率の測定]
厚み50±5μmの1辺10cmの正方形の高分子弾性体キャストフィルムを120〜150℃で熱処理した後、質量(W0)を測定した。その後、130℃熱水に1時間浸漬した後、サンプルを取り出し、すぐに質量(W)を測定し、下記の計算式に従い膨潤率を計算した。
高分子弾性体の130℃熱水膨潤率(wt%)=[(W−W0)/W0]×100
[水分散高分子弾性体フィルムの透明性評価]
厚み50±5μmの1辺10cmの正方形の高分子弾性体キャストフィルムを120〜150℃で熱処理した後、目視にてキャストフィルムの透明性を評価した。
[水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールの製造]
製造例1
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより反応系を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9kg/cm2となるようにエチレンを導入した。2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解して、濃度2.8g/Lの開始剤溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9kg/cm2に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を610mL/hrで連続添加しながら重合を実施した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液を得た。メタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液200g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニルの酢酸ビニルユニットに対するモル比:0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加した。アルカリ溶液添加後約2分で系がゲル化し、ゲル化物を粉砕器にて粉砕し、60℃で1時間放置してケン化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和終了を確認後、濾別して得られた白色固体(PVA)にメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥し、エチレン変性PVAを得た。
得られたエチレン変性PVAのケン化度は98.4モル%であった。また該変性PVAを灰化させた後、酸に溶解して原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有量は、変性PVA100質量部に対してナトリウムイオン換算で0.03質量部であった。また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに加えて沈殿させ、次いでアセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをd6−DMSOに溶解し、80℃で500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)分析したところ、エチレンの含有量は10モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に酢酸ビニルユニットに対して0.5倍モルのアルカリを添加し、生成したゲル状物を粉砕し、60℃で5時間放置してケン化を進行させた後、メタノールソックスレー抽出を3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製エチレン変性PVAを得た。該エチレン変性PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ330であった。該精製エチレン変性PVAの1,2−グリコール結合量および水酸基3連鎖の水酸基の含有量を5000MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)による測定により前述のとおり求めたところ、それぞれ1.50モル%および83モル%であった。さらに該精製エチレン変性PVAの5%水溶液を調整し、厚み10ミクロンのキャストフィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社製「TA3000」)を用いて、前述の方法により融点を測定したところ206℃であった。次に、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを2モル付加した化合物を二軸押出機を用いて上記エチレン変性PVAに5質量%添加したPVAを作成した。
[人工皮革の製造]
実施例1
製造例1で得られたエチレン10モル%変性PVA(融点206℃)を海成分とし、カーボンブラックを2.0質量%含有する固有粘度0.65(フェノ−ル/テトラクロロエタンの等質量混合溶液にて30℃で測定)のイソフタル酸(以下、IPAと略すこともある)を8モル%含有するポリエチレンテレフタレ−トチップ(融点=234℃)を島成分として、島成分と海成分の質量比率が60:40、島成分が36島となるように240℃で溶融複合紡糸用口金より吐出し紡糸した。該紡糸繊維をローラープレート方式で通常の条件により延伸し、70デシテックス/24フィラメントのマルチフィラメントを得た。なお、紡糸性、連続ランニング性、延伸性は良好で特に問題は無かった。得られた海島型極細繊維発生型繊維に機械捲縮を施し、その後51mmに切断し、カードで解繊した後クロスラッパウェバーでウェッブとした。次に1500パンチ/cm2でニードルパンチを行い、目付600g/m2の繊維絡合不織布とした後、175℃の乾熱処理を行って繊維絡合不織布を面積換算で30%収縮させ、通常の条件にて加熱プレスロールで加圧処理を行って表面を平滑化した。得られた極細繊維発生型繊維の平均繊度は3.5デシテックスであった。次いで、グレー水分散顔料(山陽色素株式会社製「Sandye Super」の縮合多環系青顔料:縮合多環系赤顔料:カーボンブラックの固形分質量比率=45:50:5,平均粒子径0.2μm)と水分散高分子弾性体としてポリオール,無黄変タイプジイソシアネート,アミン系鎖伸長剤,多官能化合物から主としてなる水分散ポリウレタン系エマルジョン(第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス」E−4800,キャストフィルムの130℃熱水膨潤率=8%,平均粒径=0.2μm,キャストフィルムの透明性良好,キャストフィルムの耐光堅牢性=4−5級)を、水分散顔料と水分散高分子弾性体の固形分質量比率が4/96の比率となるよう混合した。混合した水分散体100質量部に対し、感熱ゲル化剤として硫酸ナトリウムを0.5質量部添加して、顔料を含有した水分散ポリウレタン系エマルジョンをポリエステル樹脂成分に対して固形分換算で30/70となるように繊維絡合不織布に含浸した後、中赤外線加熱装置で予備乾燥した後150℃の熱風乾燥機で乾燥した。
次いで、含浸処理した繊維絡合不織布を厚み方向に垂直にスライサーにて2分割し、非スライス面をサンドペーパでバフィングして厚さ0.80mmにした後、スライス面をエメリーバフ機で起毛処理して立毛面を形成した。次いでサーキュラー液流機を用い90℃の熱水で海成分であるエチレン10モル%変性PVAを抽出除去すると同時にリラックス処理を行った。その後、立毛面を逆シールで仕上げ処理をして、厚み0.80mm、比重が0.55g/cm3、高分子弾性体と3次元絡合体との質量比が30/70、島成分の極細繊維の平均繊度が0.06デシテックスのグレー色のスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、発色性、スエード感、表面タッチおよび風合い共に優れた高級感のあるものであった。さらに、耐光堅牢性が4〜5級、湿潤下の摩擦堅牢性が4級と良好であり、引張強力40kg/2.5cm、引裂強力5.0kg、表面磨耗性測定における減量40mgと力学物性も良好なものであった。また、走査型電子顕微鏡で観察したところ、顔料は高分子弾性体中にほぼ均一に分散して高分子弾性体にほぼ埋包されていて、その平均粒径は0.1〜0.2μmであった。また表面繊維の平均立毛長は約80μmであった。透過型電子顕微鏡で観察したところ、極細繊維中のカーボンブラックはポリエステル樹脂中に均一に分散してポリエステル樹脂中にほぼ埋包されており、その平均粒径は約0.08μmであった。
実施例2
実施例1の抽出極細化処理を行う前に、繊維絡合不織布表面に実施例1で用いたグレー水分散顔料と水分散ポリウレタンを固形分比率で10:90に混合した固形分濃度5%の水分散液を200メッシュのグラビア機で固形分塗布量5g/m2となるように塗布し乾燥固化させた以外は、実施例1と同様の処理を行って、ダークグレー色のスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、濃色感、スエード感、表面タッチおよび風合いに優れたものであった。さらに、耐光堅牢性が4〜5級、湿潤下の摩擦堅牢性が4級で表面磨耗性測定における減量30mgと良好であった。また表面繊維の平均立毛長は約40μmであった。
実施例3
実施例1において、サーキュラー液流機を用い90℃の熱水で海成分であるポリビニルアルコール共重合体を抽出除去すると同時にリラックス処理を行った後、青味のあるグレー系分散染料を繊維絡合不織布に対して0.5質量%付着するよう添加し130℃で染色処理を行う以外は、実施例1と同様の処理を行って、青グレー色のスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、発色性、スエード感、表面タッチおよび風合い共に優れたものであった。さらに、耐光堅牢性が4級、湿潤下の摩擦堅牢性が4級と良好であり、引張強力35kg/2.5cm、引裂強力4.5kg、表面磨耗性測定における減量45mgと力学物性も良好なものであった。また表面繊維の平均立毛長は約100μmであった。
実施例4
実施例1において、極細繊維を構成するIPA8モル%変性ポリエチレンテレフタレートに、(1)カーボンブラックに代えて3質量%の縮合多環系青顔料を添加し、(2)高分子弾性体を、ポリエーテル/ポリカーボネート系ポリオール(モル比率=60/40),無黄変タイプのジイソシアネート,アミン系鎖伸長剤,多官能化合物を主成分としたポリウレタンと、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸メチル,多官能化合物を主成分としたアクリルが複層構造となっているアクリル−ポリウレタン複合エマルジョン(アクリル:ポリウレタンの質量比率=60/40,130℃熱水膨潤率=8%,平均粒径=0.3μm,キャストフィルムの透明性は良好,キャストフィルムの耐光性=4〜5級)に代え、(3)高分子弾性体中の顔料をネイビーブルー水分散顔料(山陽色素製「Sandye Super」の縮合多環系青顔料:縮合多環系赤顔料:カーボンブラック顔料の固形分質量比率=80:15:5,平均粒径=0.2μm)に代えた以外は、実施例1と同様の処理を行い、ネイビーブルー色のスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、鮮明性、スエード感、表面タッチおよび風合いに優れたものであった。さらに、耐光堅牢性が4〜5級、湿潤下の摩擦堅牢性が3〜4級と良好であり、引張強力45kg/2.5cm、引裂強力5.0kg、表面磨耗性測定での減量40mgであった。また、走査型電子顕微鏡で観察したところ、顔料は高分子弾性体中にほぼ均一に分散して高分子弾性体にほぼ埋包されていて、その平均粒径は0.1〜0.2μmであった。また表面繊維の平均立毛長は約70μmであった。透過型電子顕微鏡で観察したところ、極細繊維中の顔料はほぼ均一に分散しポリエステル樹脂にほぼ埋包されていて、その平均粒径は約0.07μmであった。また、高分子弾性体はポリウレタンがほぼ連続相を形成しており、高分子弾性体の平均粒径が0.2〜0.3μmであって、顔料の大部分がポリウレタン相中に存在していた。
実施例5
実施例4において、サーキュラー液流機を用い90℃の熱水で海成分である水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体を抽出除去すると同時にリラックス処理を行った後、ネイビーブルー系分散染料を繊維絡合不織布に対して0.5質量%付着するよう添加し130℃で染色処理を行う以外は、実施例4と同様の処理を行って、青グレー色のスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は実施例4に比べて色調が濃く、鮮明感と濃色感、スエード感および表面タッチ、風合いに優れたものであった。さらに、耐光堅牢性が4級、摩擦堅牢性が3〜4級と良好であり、引張強力35kg/2.5cm、引裂強力4.5kg、表面磨耗性測定での減量45mgであった。また、走査型電子顕微鏡で観察したところ、表面繊維の平均立毛長は約90μmであった。
実施例6
実施例1で用いた極細繊維発生型繊維からなる目付250g/m2の繊維絡合不織布の下に、実施例1で用いた極細繊維と同一成分からなる芯鞘型複合長繊維(鞘成分がエチレン10モル%変性PVA,芯成分がカーボンブラックを0.2質量%含有したIPA8モル%変性ポリエチレンテレフタレート,鞘/芯の質量比率=40/60,極細繊維の平均繊度=2デシテックス)からなる目付150g/m2の丸編物を積層した後、1500パンチ/cm2の条件にてニードルパンチ処理を行い繊維絡合不織布を作製した。3次元絡合体と高分子弾性体の比率を25/75に変更し、スライス処理を行わない以外は、実施例1と同様の処理を行い、厚み0.70mm、比重が0.60g/m2のグレー色のスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、発色性、スエード感、表面タッチ、柔軟性、ドレープ性に優れたものであった。さらに、耐光堅牢性が4〜5級、摩擦堅牢性が4級と良好であり、引張強力50kg/2.5cm、引裂強力6.0kg、表面磨耗性測定での減量50mgと力学物性も良好なものであった。また表面繊維の平均立毛長は約100μmであった。
実施例7
実施例1において、極細繊維中のカーボンブラックの含有量を0.2質量%、高分子弾性体中の顔料を平均粒径0.2μmの水分散ベージュ顔料(山陽色素製「Sandye Super」の不溶性アゾ系黄顔料:縮合多環系赤顔料:酸化チタン系白顔料の固形分質量比率=80:15:5)、高分子弾性体中の顔料と高分子弾性体の質量比率を2/98に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、ベージュ色のスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、スエード感および表面タッチ、風合いに優れたものであった。さらに、耐光堅牢性が4〜5級、湿潤下の摩擦堅牢性が4〜5級と良好であり、引張強力50kg/2.5cm、引裂強力5.5kg、表面磨耗性測定での減量40mgと力学物性も良好なものであった。また、走査型電子顕微鏡で観察したところ、顔料は高分子弾性体中にほぼ均一に分散して高分子弾性体に埋包されており、その平均粒径は0.1〜0.2μmであり、また表面繊維の平均立毛長は約80μmであった。透過型電子顕微鏡で観察したところ、極細繊維中の顔料はほぼ均一に分散しポリエステル樹脂にほぼ埋包されていて、その平均粒径は約0.07μmであった。
実施例8
実施例2において、極細繊維発生型繊維の島成分をナイロン6(宇部興産株式会社製「宇部ナイロン1013BK」)(融点222℃)、島数を100島に変更し、極細繊維に含有する顔料を縮合多環系赤顔料(3質量%)、高分子弾性体中の顔料を水分散茶顔料(山陽色素株式会社製「Sandye Super」の不溶性アゾ系黄顔料:縮合多環系赤顔料:カーボンブラックの固形分質量比率=80:15:5,平均粒径=0.2μm)、繊維絡合不織布表面に塗布する顔料を水分散茶顔料(山陽色素製「Sandye Super」の不溶性アゾ系黄顔料:縮合多環系赤顔料:カーボンブラックの固形分質量比率=80:15:5,平均粒径=0.2μm)に変更した以外は、実施例2と同様の処理を行って、茶色のスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、極細繊維の平均繊度が0.02デシテックスであって、スエード感および表面タッチ、風合いに優れたものであった。さらに、湿潤下の摩擦堅牢性が3〜4級で、引張強力45kg/2.5cm、引裂強力5.0kg、表面磨耗性測定での減量35mgと力学物性も良好なものであった。また、走査型電子顕微鏡で観察したところ、顔料は高分子弾性体中にほぼ均一に分散して高分子弾性体にほぼ埋包されており、その平均粒径は約0.2μmであり、また表面繊維の平均立毛長は約40μmであった。透過型電子顕微鏡で観察したところ、極細繊維中の有機系茶顔料もほぼ均一に分散してナイロン樹脂にほぼ埋包されており、その平均粒径は約0.05μmであった。
実施例9
実施例8において、極細繊維発生型繊維の島成分をポリプロピレン出光社製「出光ポリプロ Y−3002G」(融点168℃)に変更した以外は実施例8と同様の処理を行い、茶色のスエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、発色性、スエード感、表面タッチ、風合いに優れたものであった。さらに、湿潤下の摩擦堅牢性が4級と良好であり、引張強力40kg/2.5cm、引裂強力4kg、表面磨耗性測定での減量60mgと力学物性にも優れており、特に、軽量感に優れたものであった。また表面繊維の平均立毛長は約150μmであった。透過型電子顕微鏡で観察したところ、極細繊維中の顔料はほぼ均一に分散してポリプロピレンにほぼ埋包されており、その平均粒径は約0.08μmであった。
比較例1
実施例1において、極細繊維がカーボンブラックを10質量%含有すること以外は実施例1と同様の処理を行い、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、湿潤下の摩擦堅牢性が1級、引張強力が10kg/2.5cm、引裂強力が1kg、表面磨耗性測定での減量が150mg以上と劣るものであった。また、紡糸工程での断糸が多くて紡糸性にも劣っていた。走査型電子顕微鏡で観察したところ、粒径が0.5μmを超えるカーボンブラック粗大粒子が多く見られ、また極細繊維に埋包されていないカーボンブラック粒子が多かった。
比較例2
実施例4において、極細繊維中の顔料を無機系青顔料に変更した以外は実施例4と同様の処理を行ったが、紡糸工程での断糸が多くて紡糸性に劣っていた。また、得られたスエード調人工皮革は、鮮明性や発色性に劣ったものであり、また、湿潤下の摩擦堅牢性が1級、引張強力が10kg/2.5cm、引裂強力が1kg、表面磨耗性測定での減量が150mg以上と劣るものであった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、粒径が1μmを超える無機系青顔料の粗大粒子が多く見られ、平均粒径は約0.5μmであった。また極細繊維に埋包されていない青色無機顔料粒子が多かった。
比較例3
実施例5において、極細繊維に顔料を含有させることなく、極細繊維に対して15質量%のネイビーブルー色分散染料により、サーキュラー染色機を用いて130℃で分散染色した以外は実施例5と同様の処理を行い、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、染料が繊維に対して8質量%程度付着しており、耐光堅牢性が2級と劣っていた。
比較例4
実施例1において、島成分のIPA8モル%変性ポリエチレンテレフタレートの島数を16島にし、延伸後の繊度を192デシテックス/24フィラメントのマルチフィラメントとして、極細繊維の平均繊度を0.35デシテックスに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、繊維が太いために繊維と高分子弾性体の色斑が目立ってスエード感、表面タッチ、高級感に劣ったものであった。
比較例5
実施例1において、高分子弾性体に顔料を添加しない以外は実施例1と同様の処理を行い、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、高分子弾性体が白けて繊維と高分子弾性体の色斑が目立ち、発色性にも劣っており、高級感に欠けるものであった。
比較例6
実施例1において、高分子弾性体と高分子弾性体中の顔料の質量比率を65:35とした以外は実施例1と同様の処理を行い、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、湿潤下の摩擦堅牢性が2級、引張強力が20kg/2.5cm、表面磨耗性測定での減量が150mgと劣るものであった。走査型電子顕微鏡で観察したところ、顔料が高分子弾性体の表面近傍にも多く存在して高分子弾性体に埋包されていないものが多かった。
比較例7
実施例4において、高分子弾性体へ混合する顔料を平均粒径0.8μmの無機系青顔料へ変更した以外は実施例4と同様の操作を行ったが、顔料が高分子弾性体溶液で沈降して含浸性に劣ったものであった。また、得られたスエード調人工皮革は、湿潤下の摩擦堅牢性が2級、引張強力が20kg/2.5cm、表面磨耗性測定での減量が150mgと劣るものであり、また長さ方向及び巾方向に色斑の目立ったものであった。また、走査型電子顕微鏡で観察したところ、高分子弾性体中の顔料の平均粒径は0.7〜0.8μmであって、高分子弾性体に埋包されていないものが多かった。
比較例8
実施例8において、高分子弾性体と3次元絡合体の質量比を10:90に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革の極細繊維の平均立毛長は300μm以上であって、高分子弾性体の色が全く見えず、発色性にも劣っていた。また、湿潤下の摩擦堅牢性が2級、表面磨耗性測定での減量が150mgと劣るものであった。
比較例9
実施例1において、高分子弾性体と3次元絡合体の質量比を70:30に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、スエード感に乏しく表面タッチに劣り、また引張強力が10kg/2.5cm、引裂強力が1kgと力学物性にも劣るものであった。
比較例10
実施例1において、繊維および高分子弾性体へ顔料を添加することなく、吸尽着色用黒色顔料(山陽色素社製「Emacol CTブラック」)を繊維に対して20質量%用い、サーキュラー染色機により100℃で顔料吸尽着色した後にアクリル系水分散高分子弾性体を含浸させた以外は実施例1と同様の処理を行い、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革は、耐光堅牢性が4〜5級と良好なものの、湿潤下の摩擦堅牢性が2級と劣っていた。なお、走査型電子顕微鏡で観察したところ、顔料は極細繊維や高分子弾性体の表面に付着しており、繊維や高分子弾性体にほとんど埋包されていなかった。なお、繊維への顔料付着率は15質量%であった。
実施例10
実施例1で得られたスエード調人工皮革の表面に、実施例2で用いたグレー水分散顔料を含有した固形分濃度10%の水分散高分子弾性体の水分散液を200メッシュのグラビア機で固形分塗布量15g/m2となるように塗布し乾燥固化させた後、温度165℃でエンボス処理して、グレー色の半銀付き調人工皮革を得た。得られた半銀付き調人工皮革は、表面の銀面部分と立毛繊維部分の比率が約50/50で立毛繊維と高分子弾性体が混在して存在しており、半銀付き感、表面タッチおよび風合いに優れたものであった。さらに、耐光堅牢性が4〜5級、湿潤下の摩擦堅牢性が3〜4級、表面磨耗性測定での減量が30mgと良好であった。また表面繊維の平均立毛長は約40μmであった。
実施例11
実施例1で得られたスエード調人工皮革の表面に、実施例2で用いたグレー顔料を含有した水分散高分子弾性体溶液を固形分濃度20%に希釈し、固形分塗布量50g/m2となるように50メッシュのグラビア機で塗布し乾燥固化させた後、温度165℃でエンボス処理して、銀面層が50μmの銀付き調人工皮革を得た。得られた銀付き調人工皮革は、銀面との一体感および風合いに優れたものであり、耐光堅牢性も4〜5級と良好であった。


Claims (15)

  1. 0.2デシテックス以下の極細繊維からなる3次元絡合体と高分子弾性体Aからなるスエード調人工皮革であって、下記(1)〜(4)
    (1)3次元絡合体が平均粒径0.01〜0.3μmの有機系顔料及び平均粒径0.01〜0.3μmのカーボンブラックから選ばれた少なくとも一の顔料Aを0.1〜8質量%含有していること、
    (2)高分子弾性体Aが平均粒径0.05〜0.6μmの有機系顔料及び平均粒径0.05〜0.6μmのカーボンブラックから選ばれた少なくとも一の顔料、もしくは、有機系顔料を含む平均粒径0.05〜0.6μmの顔料粒子を顔料Bとして1〜20質量%含有していること、
    (3)高分子弾性体Aと3次元絡合体の質量比が15:85〜60:40であること、
    (4)表面に存在する極細繊維の平均立毛長が10〜200μmであること、
    を満足することを特徴とするスエード調人工皮革。
  2. 顔料Aが縮合多環系有機顔料、不溶性アゾ系有機顔料およびカーボンブラックから選ばれる少なくとも1種の顔料である請求項1に記載のスエード調人工皮革。
  3. 3次元絡合体が顔料Aを0.1〜5質量%含有している請求項1または2に記載のスエード調人工皮革
  4. 顔料Bが縮合多環系有機顔料及び/又は不溶性アゾ系有機顔料である請求項1〜3のいずれかに記載のスエード調人工皮革。
  5. 高分子弾性体Aの、130℃の熱水中に浸漬した直後の熱水膨潤率が20%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
  6. 高分子弾性体Aの耐光堅牢性が、キセノンアークランプ耐光堅牢性評価(ブラックパネル温度=83℃、積算照射照度=20MJ)で、3級以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
  7. 高分子弾性体Aが平均粒径0.1〜0.7μmの水分散高分子弾性体由来の高分子弾性体である請求項1〜6のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
  8. スエード調人工皮革の表面の耐光堅牢性が、キセノンアークランプ耐光堅牢性評価(ブラックパネル温度=83℃、積算照射照度=20MJ)で、4級以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
  9. 顔料Cを高分子弾性体Bに対して0.5〜25質量%含有する高分子弾性体Bからなる層が、立毛繊維の根元付近の表面に連続又は非連続の状態で存在している請求項1〜8のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
  10. 3次元絡合体の内部又は裏面側に編物または織物からなる層が積層されてなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革。
  11. 請求項1〜10いずれか1項に記載のスエード調人工皮革の少なくとも一方の面に高分子弾性体Cを付与して得られた、極細繊維から構成された立毛部と高分子弾性体Cから構成された銀面部が混在してなる半銀付き調人工皮革。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のスエード調人工皮革の少なくとも一方の面を高分子弾性体Cにより被覆することにより得られる銀付き調人工皮革。
  13. 0.2デシテックス以下の極細繊維からなる3次元絡合体と高分子弾性体からなるスエード調人工皮革を製造するに際し、下記のI〜IIIの工程、
    I.平均粒径0.01〜0.3μmの有機系顔料及び平均粒径0.01〜0.3μmのカーボンブラックから選ばれた少なくとも一の顔料Aを0.1〜8質量%含有し極細繊維となる水難溶性の熱可塑性成分、および水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体成分からなる極細繊維発生型繊維から構成された繊維絡合不織布を製造する工程、
    II.水分散高分子弾性体、および、顔料Bとして、平均粒径0.05〜0.6μmの水分散有機系顔料及び平均粒径0.05〜0.6μmの水分散カーボンブラックから選ばれた少なくとも一の水分散顔料、もしくは有機系顔料を含む平均粒径0.05〜0.6μmの水分散顔料粒子を水分散高分子弾性体に対して1〜20質量%含有する高分子弾性体分散液を、該水分散高分子弾性体に由来する高分子弾性体と3次元絡合体の質量比が15:85〜60:40となるよう繊維絡合不織布の内部に付与する工程、
    III.水溶液で水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体成分を抽出除去することにより、極細繊維発生型繊維を0.2デシテックス以下の極細繊維にする工程、
    を行うことを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法。
  14. 水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系共重合体が、炭素数4以下のオレフィン単位および/またはビニルエーテル単位を1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコールである請求項13に記載のスエード調人工皮革の製造方法。
  15. 染色工程を含む請求項13または14に記載のスエード調人工皮革の製造方法。
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