JP2004263316A - 染色された立毛皮革様シートの製造方法 - Google Patents

染色された立毛皮革様シートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性になる染料を用いて、発色性、染色安定性及び堅牢度に優れる染色された立毛皮革様シートを製造する方法の提供。
【解決手段】ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体及びその内部に含有された弾性重合体からなり起毛処理後に表面にポリアミド系極細繊維よりなる立毛を有する立毛皮革様シートを、起毛処理前または起毛処理後に、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料、アルカリ性物質および還元剤を含有する水浴を使用して、酸素の体積含有率が3%未満の雰囲気下に、前記染料の還元処理および皮革様シートへの染着処理を行い、次いで酸化処理して、染色されて立毛皮革様シートを製造する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は染色された立毛皮革様シートおよびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性になる染料を用いて、発色性、均染性、染色堅牢性などに優れる染色された立毛皮革様シートを、良好な染色安定性で円滑に製造する方法およびそれにより得られる立毛皮革様シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維絡合不織布や起毛織編布などのような繊維集合体の内部に弾性重合体を含有させ、片面または両面に立毛を形成させたシートは、立毛の長さやキメの細かさなどによって表現される外観、風合、触感が天然皮革のスエードやヌバックに似ていることから、スエード調またはヌバック調の立毛皮革様シートとして、近年多量に生産されている。特に、立毛が極細繊維から形成されている立毛皮革様シートは、天然皮革に極めて近似していることから、高級品として取り扱われている。そのような立毛皮革様シートは、用途面では、ファッション素材としての要素がますます高まっており、ベージュ、茶色、黒などのような通常の色調だけではなく、例えば、鮮やかな赤、青、黄色などのような多種多様な色調に染色されるようになっている。それに伴って、発色性が良好で、染色斑がなく、安定した色調を有し、しかも洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度、汗堅牢度などに優れる、染色された立毛皮革様シートが強く求められるようになっている。
【0003】
立毛皮革様シートにおいては、立毛を形成する繊維が立毛皮革様シートの外観、風合、触感などの良否を決定する上で極めて重要な要素となっている。立毛を形成する繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などが一般に多く用いられている。そのうちでも、ポリアミドからなる極細繊維が、柔軟性で高級感のある風合が得られることから、特にファッション素材用の立毛皮革様シートにおける立毛用繊維として広く使用されている。しかしながら、ポリアミドからなる極細繊維は、染色されにくく、発色性に劣るため、発色性を向上するために種々の染色方法が採用または提案されている。
【0004】
ポリアミド系極細繊維からなる立毛を有する皮革様シートの染色方法としては、一般的には酸性染料や含金属錯塩染料を用いて染色する方法が採用されているが、ポリアミド系極細繊維からなる立毛は元々発色性に劣るため、発色性を上げるために多量の染料を使用して染色することが通常行われている。多量の染料を使用した場合は、発色性自体は確保できるが、余分の染料が立毛皮革様シートに付着・残留しているために、染色堅牢度が低く、摩擦、洗濯、ドライクリーニング、汗などによって色落ちするという問題を生じ易い。
【0005】
ポリアミドなどの極細繊維からなる立毛を有する立毛皮革様シートの発色性を良好に保ちながら染色堅牢度を向上させることを目的として、アルカリの存在下で還元することによって水可溶性となる染料を使用して、その染料をアルカリ水溶液にして立毛皮革様シートに染着させ、次いで酸化処理を行って染料を水不溶性とした後、立毛皮革様シートに付着している未染着染料を、ハイドロサルファイトソーダなどの特定の還元剤によって化学的処理すると共にブラッシング処理して立毛皮革様シートから脱落させる方法が知られている(特許文献1を参照)。この方法による場合は、染色堅牢度は向上するが、染色時に、還元剤によって水に可溶化された染料が染液に含まれる空気や染色機内に存在する空気により酸化されて再度水不溶性になり易く、それに伴って染色時に染料の安定性が不十分になり、染色物に色相のぶれや色斑が生じ易くなるという問題があり、改良の余地があった。
【0006】
また、膨らみ感のある柔軟な風合いと触感を維持しながら、濃色に染色し且つ染色堅牢度を向上させることを目的として、本発明者らは、ポリアミド極細繊維からなる立毛を有するスエード調シートの立毛面に、ポリアミド繊維の膨潤剤と非溶剤の混合液を付与してポリアミド繊維を溶解させることなく熱処理した後に染色する方法を先に発明した(特許文献2を参照)。この方法による場合は、濃色に染色され、しかも風合および触感に優れるスエード調が得られるが、この方法で用いている酸性染料や含金属錯塩染料などは、洗濯やドライクリーニングなどで色落ちを生じ易く、染色堅牢度の点で改良の余地があることが判明した。
【0007】
さらに、本発明者らは、ポリアミド極細繊維集合体およびそれに含有されている弾性重合体からなり、表面に極細繊維からなる立毛を有するスエード調人工皮革をアルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料を用いて浸染染色するに当たって、該スエード調人工皮革をアルカリ性物質を含有する染料分散液中に浸漬して染料分散液をスエード調人工皮革に十分に馴染ませ、その後に染料分散液を60℃以上に昇温し、それに還元剤を添加して染料を還元しながらスエード調人工皮革に染着させ、その後に酸化処理を行う方法を先に発明して出願した(特許文献3を参照)。この方法による場合は、従来よりも発色性および染色堅牢度に優れるスエード調人工皮革が得られるが、染料分散液に添加した還元剤が、高温下で染色機内に含まれる酸素などによって分解され易く、それに伴って染料が十分に還元・水可溶化されないことがあり、染料の還元状態(水可溶化状態)が不安定になり、染色斑、染色バッチ間での色相の変動、スエード調人工皮革を構成するポリアミド繊維と弾性重合体との間の染色状態の違いなどを生ずることがあり、改良の余地があることが判明した。また、この方法では、染色機内の空気による還元剤の分解の影響を低減しようとすると、過剰の還元剤が必要にであることが判明した。
【0008】
また、液流染色機を用いて綿繊維を含む布帛をインダンスレン染料で染色する際に、液流染色機の内部を不活性ガスで置換して殆ど酸素を含まない雰囲気を形成してから染料の還元処理を行い、その後に酸化処理を行って綿繊維布帛を染色する方法が提案されており、この方法では綿繊維布帛の染色を60℃で行っている(特許文献4を参照)。本発明者らは、綿繊維布帛の染色方法に係るこの方法を、ポリアミド極細繊維からなる立毛を有する立毛皮革様シートの染色に試みたところ、染料の染着が十分に行われず、発色性に劣るものであった。
【0009】
【特許文献1】
特公昭61−46592号公報
【特許文献2】
特許第2882645号公報
【特許文献3】
特開平9−241980号公報
【特許文献4】
特公平6−94632号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料を使用して、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体およびそれに含有されている弾性重合体からなる皮革様シートをその起毛処理前または起毛処理後に染色して、表面にポリアミド系極細繊維から主としてなる立毛を有する染色された立毛皮革様シートを製造するに当たって、染色斑、染色バッチ間での色相の変動、立毛皮革様シートを構成するポリアミド系繊維と弾性重合体との間の染色状態の違い、色相差の発生などを防止しながら良好な染色安定性で染色することができ、しかも良好に発色して鮮明な色調を有し、その上摩擦、洗濯、ドライクリーニング、汗などによって色落ちせず、染色堅牢度に優れる、染色された立毛皮革様シートを製造することのできる方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは検討を重ねてきた。その結果、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなる皮革様シート基材を、起毛処理前または起毛処理後に、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料を含有する水浴を使用して染色処理を行うに当たって、染液を包囲する雰囲気中での酸素の含有率を特定未満にして該雰囲気中に酸素が殆ど含まれないようにして染料の還元処理および染着処理を行うと共に、該染着処理時の染液温度を70℃以上の高温にすると、還元剤によって染液中に溶解された前記染料の濃度が均一に且つ安定に保たれて、染色斑、染色バッチ間での色相の変動、皮革様シートを構成するポリアミド系繊維と弾性重合体との間の色調差などが生じず、染色安定性が良好になること、特にポリアミド系極細繊維からなる立毛部分が鮮明に染色されることを見出した。
さらに、本発明者らは、それにより得られる、ポリアミド系極細繊維から主としてなる立毛を有する染色された立毛皮革様シートは、摩擦、洗濯、ドライクリーニング、汗などによって色落ちが生じず、染色堅牢度に優れることを見出した。
【0012】
また、本発明者らは、上記の染色処理を行うに当たっては、液流染色機を使用するのが目的の達成のためにより好適であること、染料の還元処理を、染料、還元剤およびアルカリ性物質を含む水浴の温度を50℃以下に保ちながら10分以上撹拌して行うと染料の水への可溶化がより円滑に行われて、染色安定性に一層優れるようになることを見出した。
さらに、本発明者らは、起毛処理後の立毛皮革様シートまたは起毛処理前の皮革様シートを水に十分に馴染ませてから、前記した染色処理を行うと、染色安定性および染色堅牢度が一層向上することを見出した。
そして、本発明者らは、染着後の酸化処理の後にソーピング処理および/またはブラッシング処理を行うと、立毛皮革様シートに付着している余分な染料が除去されて、染色堅牢度が一層向上することを見出した。
また、本発明者らは、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる上記染料による染色処理の後に、更に酸性染料または含金属錯塩染料で染色処理すると、発色性および濃色感に一層優れる、染色された立毛皮革様シートが得られることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1) ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなる皮革様シートを、起毛処理して片面または両面にポリアミド系極細繊維から主としてなる立毛を形成した後に染色処理するか、或いは染色処理した後に起毛処理して片面または両面にポリアミド系極細繊維から主としてなる立毛を形成することによって、片面または両面にポリアミド系極細繊維から主としてなる立毛を有する染色された立毛皮革様シートを製造する方法であって、前記染色処理を、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料、アルカリ性物質および還元剤を含有する水浴を使用して、酸素の体積含有率が3%未満の雰囲気下に、前記染料を還元処理して水に可溶性にした後に水に溶解した前記染料を染液温度70℃以上で起毛処理前または起毛処理後の皮革様シートに染着させ、次いで酸化処理して前記染料を水不溶性とする工程を経て行うことを特徴とする染色された立毛皮革様シートの製造方法である。
【0014】
そして、本発明は、
(2) 染色処理を、液流染色機を使用して行う前記(1)の製造方法;
(3) アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料の還元処理を、該染料、アルカリ性物質および還元剤を含む水浴を浴温度50℃以下で10分以上撹拌することによって行う前記(1)または(2)の製造方法;および、
(4) 水浴中に還元剤の一部およびアルカリ性物質の一部を投入して還元状態にした後に、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料、還元剤の残部およびアルカリ性物質の残部を投入して、浴温度50℃以下で10分以上撹拌して染料を還元処理する前記(3)の製造方法;
である。
【0015】
さらに、本発明は、
(5) 起毛処理前または起毛処理後の皮革様シートを、水に十分に馴染ませた後に、前記した染色処理を行う前記(1)〜(4)のいずれかの製造方法;
(6) 酸化処理後にソーピング処理を行う前記(1)〜(5)のいずれかの製造方法;
(7) 酸化処理後またはソーピング処理後に、ブラッシング処理を行う前記(1)〜(6)のいずれかの製造方法;
(8) 前記(1)〜(7)のいずれかの染色処理の後に、更に酸性染料または含金属錯塩染料で染色処理することを特徴とする染色された立毛皮革様シートの製造方法;
である。
そして、本発明は、
(9) 前記(1)〜(8)のいずれかの製造方法により得られる染色された立毛皮革様シートである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明では、ベースをなす起毛処理前の皮革様シートとして、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなる皮革様シートを用いる。
繊維集合体はポリアミド系繊維から主としてなっており、一般的には繊維集合体の全質量に対するポリアミド系繊維の割合が30質量%以上、特に50質量%以上であることが、最終的に得られる染色された立毛皮革様シートの柔軟性、高級感、均一染色性などの点から好ましい。
繊維集合体の主体をなすポリアミド系繊維としては、例えば、ナイロン−3、ナイロン−46、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610、ナイロン−11、ナイロン−12、芳香環を有するナイロン、これらのナイロンの1種または2種以上を主体とする共重合体などからなる繊維を挙げることができる。繊維集合体は、これらのポリアミド繊維の1種または2種以上から構成されていることができる。そのうちでも、繊維集合体の主体をなすポリアミド系繊維は、ナイロン−6からなっていることが、染色性およびソフト性の点から好ましい。
【0017】
繊維集合体を構成するポリアミド系繊維などの繊維の繊度は、最終的に得られる染色された立毛皮革様シートの用途などに応じて調整できるが、一般的には繊維集合体は極細繊維から主として形成されていて、ポリアミド系極細繊維が該極細繊維の主体をなしていることが、最終的に得られる染色された立毛皮革様シートの外観、風合、触感などの点から好ましい。繊維集合体全体では、ポリアミド系極細繊維の割合が、20質量%以上、特に50〜100質量%であることが好ましい。
その際に繊維集合体の主体をなすポリアミド系繊維の単繊維繊度は、0.0001〜0.5デシテックス、特に0.002〜0.1デシテックスの範囲にあることが、発色性の点から好ましい。
繊維集合体の主体をなすポリアミド系繊維の単繊維繊度が0.5デシテックスを超えると表面タッチが天然皮革のスエードまたはヌバック様のものになりにくくなり、一方0.0001デシテックス未満であると、染料の染着性が低下して色調が劣ったものになったり、引裂強力などの力学物性に劣ったものになり易い。
【0018】
繊維集合体の種類としては、繊維同士が互いに絡みあった絡合不織布、絡合していない不織布、織編布、それらの1種または2種以上からなる積層物など挙げることができる。そのうちでも、繊維集合体は、絡合不織布であるか、または絡合不織布を少なくとも表面部分に有する、絡合不織布同士または絡合不織布と他の繊維集合体との積層物であることが、最終的に得られる染色立毛皮革様シートの外観、風合、触感、均一染色性などの点から好ましい。
本発明では、染色処理前または染色処理後の起毛処理によって皮革様シートの片面または両面に形成される立毛が、ポリアミド系極細繊維から主としてなっていることが必要である。そのため、皮革様シートを構成する繊維集合体においては、最終的に皮革様シートの一方または両方の表面側に位置する部分は、ポリアミド系極細繊維よりなる立毛を発生させることのできる繊維から形成されている必要があり、かかる点から、ポリアミド系極細繊維から形成されていることが好ましい。
【0019】
繊維集合体内に含有させる弾性重合体としては、公知の高分子弾性体であればいずれでもよく、例えば、天然ゴム、SBR、NBR、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、クロルスルホン化ポリエチレン、ポリイソブチレン、イソブチレンイソプレンゴム、アクリルゴム、ポリウレタンエラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、塩素系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、最終的に得られる染色立毛皮革様シートの風合い、染色性、耐摩耗性、引張強度などの力学的特性、防シワ性などの点から、弾性重合体としてはポリウレタンエラストマー(弾性ポリウレタン樹脂)が、好ましく用いられる。
【0020】
ポリウレタンエラストマーとしては、弾性を有するポリウレタン樹脂のいずれもが使用できるが、特に数平均分子量が500〜5000の高分子ジオールをソフトセグメント成分とし、有機ジイソシアネートをハードセグメント成分とし、それらの成分と共に低分子鎖伸長剤を反応させて得られるセグメント化ポリウレタンが好ましく用いられる。
【0021】
セグメント化ポリウレタンの製造に用いる前記した高分子ジオールとしては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分との反応により得られるポリエステルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオールなどを挙げることができ、これらの高分子ジオールの1種または2種以上を用いることができる。セグメント化ポリウレタンの製造に用いる高分子ジオールの数平均分子量が500未満であると、ソフトセグメントが短すぎて、ポリウレタンが柔軟性に欠けたものとなり、天然皮革様の立毛皮革様シートが得られにくくなることがある。一方、該高分子ジオールの数平均分子量が5000を超えると、ポリウレタン中におけるウレタン結合の割合が相対的に減少することによって、耐久性、耐熱性および耐加水分解性などが低下し、実用的な物性を有する染色立毛皮革様シートが得られにくくなる。
【0022】
セグメント化ポリウレタンの製造に用いる有機ジイソシアネートとしては、ポリウレタンの製造に従来から用いられている有機ジイソシアネートのいずれもが使用でき、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートなどを挙げることができる。前記した有機ジイソシアネートの1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
セグメント化ポリウレタンの製造に用いる低分子鎖伸長剤としては、ポリウレタンの製造に従来から用いられている低分子鎖伸長剤、特に分子量が400以下の低分子鎖伸長剤のいずれもが使用でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、N−メチルジエタノールアミン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルメタン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0024】
セグメント化ポリウレタンの製造に当たっては、[全イソシアネート基]/[水酸基、アミノ基などのイソシアネート基と反応する全官能基]の当量比が、0.9〜1.1の範囲になるようにして、上記した高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび低分子鎖伸長剤を反応させることが、引裂き強力の高い染色立毛皮革様シートが得られる点から好ましい。
また、ポリウレタンの耐溶剤性、耐熱性、耐熱水性などを向上させる目的で、必要に応じて、トリメチロールプロパンなどの三官能以上のポリオールや三官能以上のアミン等を反応させてポリウレタン中に架橋構造を持たせてもよい。
【0025】
本発明で用いる、起毛処理を行う前(立毛を形成させる前)の皮革様シートでは、天然皮革様の柔軟な風合いが得られる点から、繊維集合体を構成する繊維成分:弾性重合体の質量比が、95:5〜30:70の範囲内であることが好ましく、85:15〜40:60の範囲内であることがより好ましい。繊維成分の割合が皮革様シートの質量に基づいて30質量%未満であると、ゴムライクな風合いとなり易い。一方、繊維成分の割合が皮革様シートの質量に基づいて95質量%を超えると、起毛処理によって形成される立毛の脱落、耐ピリング性の低下などを生じ易くなる。
【0026】
起毛処理を行う前の皮革様シートの製造方法は特に制限されず、従来から既知の方法を使用して製造することができる。例えば、皮革様シートを構成する繊維集合体がポリアミド系極細繊維から主としてなる場合は、以下の(a)〜(c)の方法により製造することができる。
(a) 1種または2種以上のポリアミドと、それとは溶解性または分解性の異なる1種または2種以上の他のポリマーを混合紡糸法、海島型複合紡糸法、分割型複合紡糸法などにより紡糸して得られる極細繊維発生型繊維を用いて絡合不織布やその他の繊維集合体を製造し、それに弾性重合体を含有させて凝固した後に、極細繊維発生型繊維中の他のポリマー成分を除去して極細繊維化するか、または極細繊維発生型繊維を分割して極細繊維化する方法。
(b) 1種または2種以上のポリアミドと1種または2種以上の他のポリマーとからなる前記極細繊維発生型繊維を用いて絡合不織布やその他の繊維集合体を製造したのち、該極細繊維発生型繊維中の他のポリマー成分を除去するか又は該極細繊維発生型繊維を分割して極細繊維とし、次いで弾性重合体を含有させて凝固する方法。
(c)メルトブロー法などによって直接得られたポリアミドを主体とする極細繊維を用いて絡合不織布やその他の繊維集合体を製造した後に、弾性重合体を含有させて凝固する方法。
【0027】
上記(a)または(b)の方法においてポリアミドと共に用いる他のポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系重合体;ポリスチレン、スチレン−アクリル系モノマー共重合体、スチレン−エチレン共重合体などのスチレン系重合体などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0028】
上記(a)〜(c)の方法において、ポリアミド系極細繊維を主体とする繊維集合体内に弾性重合体を含有させるに当たっては、弾性重合体の1種または2種以上を含む溶液または分散液を繊維集合体に従来公知の方法により含浸または塗布し、乾式法または湿式法によって弾性重合体を多孔質状態または非多孔質状態に凝固する方法が一般に採用される。
【0029】
上記(a)の方法によって、ポリアミド系極細繊維を主体とする絡合不織布からなる繊維集合体中に弾性重合体が含有されている皮革様シートを製造する場合は、より具体的には、例えば以下の(i)〜(iv)の一連の工程によって製造することができる。
(i) ポリアミドと他のポリマーとからなる極細繊維発生型繊維に延伸、捲縮、カットなどの処理を施して綿様の形態(ステープルなど)にする。それをカードで開繊した後、ランダムウエバーまたはクロスラップウェバーによりウエブとし、必要に応じて所望の目付けになるように該ウエブを積層する。ウエブの目付けは最終的に得られる染色立毛皮革様シートの用途などにより異なるが、一般的には100〜3000g/mであることが好ましい。
(ii) 次いで、例えば、ニードルパンチング法、高圧水流法などの公知の手段を用いて絡合処理を行って絡合不織布を製造する。ニードルパンチング時のパンチ数は、ニードルの形状やウエブの厚さなどにより異なり得るが、一般的には200〜2500パンチ/cmであることが好ましい。また、最終的に得られる染色立毛皮革様シートの伸び強力の調整、目付けや厚みの調整、その他の目的により、ウエブ形成後から絡合処理完了までのいずれかの段階で、織編物、異なる繊維の不織布、フィルムなどのシート状物を、絡合不織布に積層して一体化してもよい。
(iii) 続いて、上記(ii)で得られた絡合不織布に弾性重合体を含有させる。弾性重合体の付与方法は特に制限されないが、風合いのバランスの点から弾性重合体の溶液または分散液を絡合不織布に含浸した後、湿式法または乾式法により凝固(固化)する方法が好ましく採用される。弾性重合体の溶液または分散液には、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、凝固性調節剤、燃焼性調節剤などを添加することができる。
(iv) 次に、弾性重合体を含有させた絡合不織布を、極細繊維発生型繊維の1成分または複数成分に対して選択的に溶解剤または分解剤として作用する液体で処理して、極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変性して、ポリアミド系極細繊維束を主体とする絡合不織布内に弾性重合体が含有されたシート状物とする。
【0030】
上記(i)〜(iv)の一連の工程によってポリアミド系極細繊維を主体とする絡合不織布からなる繊維集合体の内部に弾性重合体を含有させた皮革様シートを製造する場合に、極細繊維発生型繊維としてポリアミドを島成分とする海島構造繊維を用いて島成分を極細繊維として残留させると、ポリアミド系極細繊維(束)と弾性重合体とが実質的に接着していない構造となり、ポリアミド系極細繊維束が弾性重合体に拘束されていないことにより構造内での動きの自由度が増すことから、天然皮革様の柔軟性に一層優れる皮革様シートを得ることができる。
【0031】
既に極細化されたポリアミド系繊維を用いて絡合不織布よりなる繊維集合体を製造し、それに弾性重合体を含有させる場合[上記(c)の方法を採用する場合]も、絡合不織布への弾性重合体の含浸を、上記(a)の方法におけるのと同様にして行うことができる。上記(b)または(c)の方法において、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体に弾性重合体を含浸して凝固させる前に水溶性樹脂を繊維集合体に予め付与しておき、弾性重合体の含浸・凝固後に水溶性樹脂を水で溶解除去するようにすると、繊維集合体を構成するポリアミド系繊維などと弾性重合体との接着が防止または低減されて繊維の動きの自由度が増して、柔軟性の向上した皮革様シートを得ることができる。
また、上記(a)の方法においても、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体に弾性重合体を含浸して凝固させる前に水溶性樹脂を繊維集合体に付与しておき、弾性重合体の含浸・凝固後に該水溶性樹脂を水で溶解除去する方法を用いてもよく、これにより得られる皮革様シートの柔軟性が一層向上する。
【0032】
本発明では、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体とその内部に含有されて弾性重合体からなる上記の皮革様シートを、染色処理する前または染色処理した後に、起毛処理して、皮革様シートの片面または両面に立毛を形成させて立毛皮革様シートにする。
立毛を形成させるための起毛処理は、従来既知のいずれの方法で行ってもよく、例えば、皮革様シートを、必要に応じて厚み方向に複数枚に切断(スライス)した後に、その片方または両方の表面を、サンドペーパーなどによるバッフィング、針布起毛などによって、起毛処理して立毛を形成させる。
【0033】
本発明では、皮革様シートの片面または両面に形成するポリアミド系極細繊維から主としてなる立毛の単繊維繊度は、最終的に得られる染色立毛皮革様シートの外観、触感、風合、ライティング効果などの点から、0.4デシテックス以下であることが好ましく、0.0001〜0.1デシテックスであることがより好ましい。立毛を形成する繊維の単繊維繊度が0.4デシテックスよりも大きいと、染色した際に発色性は良好になるが、立毛皮革様シート自体の風合や触感が損なわれて、特にファッション素材としては不向きになり易い。一方、立毛を形成する繊維の太さが0.0001デシテックス未満であると、外観が緻密になり、触感も良好になるが、あまりにも細すぎるために、染色した際に発色性が極端に悪化して、鮮やかさや深みのある色調に染色できず、特にファッション素材として不向きなものになり易い。
【0034】
また、起毛処理により得られる立毛皮革様シートにおける立毛の長さ(立毛長)は、立毛皮革様シートの用途などに応じて調整することができ、一般的には、立毛長は0.02〜2mm、特に0.05〜1mmであることが、抗ピリング性、タッチ、ライティング効果などの点から好ましい。
さらに、立毛皮革様シートにおける立毛密度は、10000本/cm以上であることが好ましい。
立毛皮革様シートにおける立毛長は、面全体で同じあってもよいし、揃っていなくてもよい。立毛長を不揃いにする場合は、ランダムな状態で不揃いにしてもよいし、模様などに発現すべく所定の規則性をもって不揃いにしてもよい。また、立毛皮革様シートの両面に立毛を形成する場合は、両方の面の立毛の立毛長が同じであってもよいし、一方の面と他方の面とで立毛長が異なっていてもよい。
起毛処理を行う際の処理条件を種々選択することによって、立毛皮革様シートにおける立毛状態を適宜調整することができ、立毛皮革様シートの外観、触感などを、例えば、スエード調、ヌバック調、立毛長が揃った均一な状態、立毛長および/または立毛密度が不揃いのラフな状態などにすることができる。
【0035】
本発明では、皮革様シートの表面に立毛を固定する目的で、必要に応じて、皮革様シートを構成する弾性重合体の溶剤を含有する処理液、皮革様シートを構成する繊維集合体を形成しているいずれかの繊維の膨潤剤や溶剤を含有する処理液などを起毛処理の前または後に皮革様シートの表面に塗布してもよい。また、弾性重合体の溶液や分散液を、起毛処理の前または後に、皮革様シートに立毛の固定剤として塗布してもよい。
また、起毛処理後のいずれかの段階でブラッシング処理を施して、立毛皮革様シートの外観や触感などを整えてもよい。
【0036】
皮革様シートに上記した立毛処理を施して片面または両面に立毛を形成した後に染色処理して染色された立毛皮革様シートにするか、または皮革様シートを染色処理した後に上記した起毛処理を行って片面または両面に立毛を形成して、染色された立毛皮革様シートにする。
染色処理に供される起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートの厚さ(立毛を形成した立毛皮革様シートにおいては立毛部の立毛長を含まない本体部分の厚さ)は、0.1〜3mm、特に0.2〜2.0mmであることが好ましい。皮革様シートまたは立毛皮革様シート(本体部分)の厚さが0.1mmよりも薄いと、皮革様シートまたは立毛皮革様シート自体の強度が不足し、染色処理に耐えられなくなることがあり、しかもファッション素材としても適さないものになる。一方、皮革様シートまたは立毛皮革様シート(本体部分)の厚さが3mmを超えると、液流染色機などの染色装置のノズルを安定した状態で通過させるのが困難になり、染色時の工程通過性が不良になり易い。
【0037】
起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートの染色処理は、予備処理を行わずにそのまま直接行ってもよいが、染色処理の前に、該皮革様シートまたは立毛皮革様シートを、水中に投入するなどして、十分に水に馴染ませる処理を予め行ってから染色処理を行うことが極めて望ましい。起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートを染色前に水に十分に馴染ませておくことによって、染色処理の際の染料の浸透度合いを均一にして染色斑などを防止することができ、更には染色機内での捩れなどによる皮革様シートまたは立毛皮革様シートの傷つき防止、商品価値を下げる皺の発生防止などを行うことができる。
【0038】
この水に馴染ませる処理を行う際の水温は常温であっても効果はあるが、60℃以上であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。また、水に馴染ませる時間は、起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートが薄ければその分短くても十分であり、5分程度でもよいが、好ましくは10分以上、より好ましくは30〜60分間程度行うことにより、この水馴染ませ処理の効果をより発揮させることができる。この水に馴染ませる処理は、染色に使用する染色機と別の装置を用いて行ってもよいが、染色に使用する染色機を使用して、水に馴染ませる処理−還元処理−染着処理−酸化処理を連続して順次行うことがより効率的である。前記した液流染色機を使用する場合を例にとると、水に馴染ませるための具体的な方法としては、染色機に所定量の水を満たす前、満たしている最中または満たした後に、起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートを染色機内に投入し、水温を上記の温度まで上昇させた後、上記の処理時間中、それらの皮革様シートを水流により10m/分以上、より好ましくは50〜300m/分の流速で染色機内で移動させながら水に馴染ませる処理を行う方法が挙げられる。
【0039】
皮革様シートまたは立毛皮革様シートを、そのまま直接、または上記した水に馴染ませる処理を予め行った後に、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性になる染料、アルカリ性物質および還元剤を含む水浴(染色浴)中で染色処理する。
本発明で用い得る、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料の代表例としては、硫化染料、建染染料、硫化建染染料を挙げることができる。何ら限定されるものではないが、硫化染料の具体例としては旭化学工業株式会社製「Asathio Navy Blue R」などを挙げることができ、建染染料の具体例としては三井BASF染料株式会社製「Indanthren Red FBB」などを挙げることができ、また硫化建染染料の具体例としては日本化薬株式会社製「Kayaku Homodye Black RL−S」などを挙げることができる。目的とする色調などに応じて、前記した染料などの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、建染染料が発色性、耐光堅牢度に優れ、しかも鮮明で良好なスエード調の色調になる点から好ましく用いられる。
【0040】
染色処理の際に使用するアルカリ性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
また、染料を水可溶性にするための還元剤としては、例えば、ハイドロサルファイト、ナトリウムスルホキレートホルムアルデヒド、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、二酸化チオ尿素などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
染色処理を行う際の、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性になる染料(以下これを「還元・水可溶性染料」ということがある)、アルカリ性物質および還元剤の水浴(染色浴)中での濃度は、還元・水可溶性染料、アルカリ性物質および還元剤の種類、皮革様シート(立毛皮革様シート)の種類や厚さ、染色機の種類、染色条件間条件などに応じて調整することができる。一般的には、水浴(染色浴)中における還元・水可溶性染料の濃度は、0.01〜50 owf%、特に0.1〜30 owf%であることが、染色堅牢度の点から好ましい。また、水浴(染色浴)中でのアルカリ性物質の濃度は、0.1〜20g/リットル染液、特に0.5〜10g/リットル染液であることがポリウレタンの劣化防止、染料の還元性などの点から好ましい。還元剤の濃度は、0.1〜20g/リットル染液、特に1.0〜10g/リットル染液であることが染料の安定性、経済性などの点から好ましい。
【0042】
起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートの染色処理に当たっては、還元・水可溶性染料、アルカリ性物質および還元剤と共に、必要に応じて、例えば、グルコース、芒硝、食塩、酸化防止剤、キレート剤などの染色助剤や、消泡剤、浸透剤などを併用してもよい。
【0043】
染色処理に用いる染色機としては、既知の染色機のいずれもが使用でき、例えば、ジッガー染色機、ウィンス染色機、ダッシュライン染色機、サーキュラー染色機、ロータリーウォッシャー染色機などを挙げることができる。
本発明においては、染料の還元処理による水可溶化処理、および起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートへの染料の染着処理の期間中は、染色処理雰囲気中の酸素含有率を3%未満に維持する必要があることから、染色機としては、酸素含有率を3%未満に維持することのできる密閉性の良い染色機が好ましく用いられる。密閉性の良い染色機としては、サーキュラー染色機などの液流染色機、ロータリーウォッシャー染色機などを挙げることができ、そのうちでも密閉性に極めて優れ、しかも高圧染色が可能なサーキュラー染色機などの液流染色機がより好ましく用いられる。
【0044】
本発明では、還元・水可溶性染料を水に可溶性にするための還元処理および還元処理によって水に溶解した(可溶化した)染料の起毛処理前または起毛処理後の皮革様シートへの染着処理を、酸素の体積含有率が3%未満である、酸素を殆ど含まないか又は酸素含有率の低い雰囲気下に行うことが必要である。還元・水可溶性染料の還元処理および染料の皮革様シートへの染着処理を行う際の雰囲気中での酸素含有率は低ければ低いほど好ましく、かかる点から該雰囲気中での酸素の体積含有率は、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0%またはそれに近いほど一層好ましい。
還元・水可溶性染料の還元処理および皮革様シートへの染料の染着処理の際に、雰囲気中での酸素の体積含有率が3%以上であると、酸素によって還元・水可溶性染料の還元が妨害または抑制されて、還元・水可溶性染料が水浴中に均一に且つ円滑に溶解しなくなり、染液(染色浴)中における染料濃度の不均一、経時変化、濃度不足などを生じて、鮮明で均一な色調に染色することが困難になり、染色安定性に欠けるようになる。
【0045】
ここで、本明細書における、「還元・水可溶性染料の還元処理および皮革様シートへの染着処理を行う際の雰囲気中での酸素の体積含有率」とは、前記還元処理および染着処理を行う際に、染色浴(還元・水可溶性染料などを含む水浴)を包囲する気体空間での酸素の体積含有率をいい、前記還元処理および染着処理を染色機内で行う場合は染色機内の気体空間での酸素の体積含有率を意味する。
その際に、「雰囲気(気体空間)での酸素の体積含有率」は、染色処理を行う雰囲気(気体空間)内に酸素濃度測定器のセンサー部を直接挿入することによって測定することができ、その詳細については以下の実施例の項に記載するとおりである。
【0046】
空気(大気)中には通常21%前後の酸素が含まれており、空気中(大気下)でそのまま還元・水可溶性染料の還元処理および該染料の皮革様シートへの染着処理を行った場合には、空気中に多量に含まれる酸素が、還元・水可溶性染料の還元、水への可溶化の妨げるために、還元処理および染着処理が円滑に行われず、染色安定性が低下し易い。それに対して、本発明では還元・水可溶性染料の還元処理および該染料の皮革様シートへの染着処理を、酸素の体積含有率が3%未満の雰囲気下に行うことによって、還元・水可溶性染料を円滑に且つ十分に水に可溶化することができ、しかも還元処理によって水可溶性にした還元・水可溶性染料が酸化されて再び水不溶性になるのを防ぐことができるため、染料の還元斑が生じず、良好な染色安定性を維持しながら、起毛処理前または起毛処理後の皮革様シートを、均一に且つ鮮明に色斑を防止しながら染色することができる。
【0047】
還元・水可溶性染料の還元処理および皮革様シートへの染料の染着処理時に雰囲気中での酸素の体積含有率を3%未満にしておくためには、該雰囲気を窒素ガス、ヘリウムガス、炭酸ガスなどの不活性ガスで置換する方法が好ましく採用される。そのうちでも、限定されるものではないが、工業的には、取り扱い性や価格の点から、窒素ガスを用いて置換する方法がより好ましい。
雰囲気内の気体を不活性ガスで置換するタイミングは、染色浴中に還元剤および還元・水可溶性染料を投入するに当たっていずれか後に投入されるまでの時点までの任意の段階で行うことが好ましい。また、染色処理の前に皮革様シートを水に馴染ませる前処理を行う場合は、該水に馴染ませる前処理が終了した時点と、還元剤および還元・水可溶性染料のうちのいずれか後に投入するまでの時点の間の任意の段階で不活性ガスによる置換を行うことが好ましい。さらに、皮革様シートを水に馴染ませるための前処理と染色処理との間に、水浴の水量の調整などの別の処理工程などが必要な場合は、該別の処理工程が終了した時点と、還元剤および還元・水可溶性染料のうちのいずれか後に投入するまでの時点の間の任意の段階で不活性ガスによる置換を行うことが好ましい。
【0048】
染色処理を行う雰囲気中での酸素の体積含量率を3%未満にした後に、水浴(処理浴)中に、還元・水可溶性染料、アルカリ性物質、還元剤および必要に応じて染色助剤などを投入する。
これらの薬剤の投入方法は特に限定されず、使用する染料の種類や濃度、染色浴比、染色する皮革様シート中でのポリアミド系繊維の質量比率などに応じて任意の投入方法を採用することができ、例えば、前記薬剤のすべてを予め混合しておいて一度に投入する一括投入方法、各薬剤を混合せずに1種類ずつ逐次に投入する逐次投入方法、前記薬剤の1種または2種以上を複数回に分けて投入する分割投入方法などを挙げることができる。
そのうちでも、水浴中に還元剤の一部(好ましくは1/3〜2/3の量)およびアルカリ性物質の一部(好ましくは1/3〜2/3の量)を投入してある程度還元状態にした後に、還元・水可溶性染料、還元剤の残部およびアルカリ性物質の残部を投入する方法が、還元・水可溶性染料の還元、水可溶化をより円滑に進行させることができる点から好ましく採用される。また、それぞれの薬剤容器などから取り出した還元・水可溶性染料および還元剤は、空気中に放置する時間を短くして、不活性ガスで置換された処理雰囲気下にある水浴(染色浴)中でできるだけ速やかに投入することが、これらの薬剤の酸化防止の点から望ましい。
【0049】
水浴(染色浴)への、還元・水可溶性染料、還元剤、アルカリ性物質、助剤などの投入に当たっては、染色する皮革様シートを処理浴(水浴)中で移動させながら行うと、水浴中の液体が撹拌されて、これらの薬剤が均一に混合され、均染効果が得られるというメリットがあるので好ましい。その際の皮革様シートの処理浴中での移動速度は、10m/分以上、特に50〜300m/分であるのが、撹拌作用および均染効果の点から好ましい。
【0050】
還元・水可溶性染料、還元剤およびアルカリ性物質を含有する水浴中での還元・水可溶性染料の還元処理は、浴温度を50℃以下にし、撹拌下で10分以上行うことが、還元・水可溶性染料の均一な還元、水可溶化を行うために好ましい。還元処理時の水浴温度が50℃を超えると、染色斑が生じ易くなり、また還元処理の時間が10分未満であると還元・水可溶性染料の還元が完全に行われず、還元されずに水不溶性のままで残留する還元・水可溶性染料の割合が多くなってしまう。還元処理の際の水浴の撹拌は、適宜の方法で行うことができるが、一般的には水浴内で皮革様シートを移動させ、その移動に伴う撹拌作用によって撹拌することが、皮革様シートへの染料の浸透の均一化などの点からも好ましい。その際の皮革様シートの移動速度は特に制限されず、還元・水可溶性染料の還元斑や該染料の皮革様シートへの浸透斑などが生じないような移動速度であればよく、一般的には20〜200m/分程度の移動速度が好ましく採用される。
【0051】
次に、起毛処理前または起毛処理後の皮革様シートに還元・水可溶性染料を染着させるための染着処理を行う。
本発明では、この染着処理を、処理浴(水浴、染色浴)の温度を70℃以上に維持して行うことが必要であり、80〜95℃に維持して行うことが好ましい。染着処理の際の浴温度が70℃未満であると、皮革様シートへの還元・水可溶性染料の染着が十分に行われず、色の鮮明さに欠けたものとなる。染着処理の時間は特に制限されないが、一般的には10〜120分が好ましく、30〜60分がより好ましい。染着時間が10分未満であると、皮革様シートへの還元・水可溶性染料の染着が十分に行われず、染色浴中に多く残存したままの状態になる。一方、染着時間が120分を超えても本質的な問題は生じないが、120分を超えて染着処理を行っても色相の鮮明さなどはそれ以上向上せず、あまりメリットがないので、生産性、コストなどの点から120分以下とすることが好ましい。
本発明においては、この染着処理中にも、雰囲気中での酸素の体積含有率が3%未満に維持されていて、雰囲気中に酸素が殆ど含まれていないために、70℃以上の高温で染着処理を行っても、還元剤の酸化、該酸化による還元力の低下、還元によって水可溶性になった還元・水可溶性染料の酸化により水不溶化が生じず、還元・水可溶性染料を皮革様シートに均一に且つ十分に染着させることができる。
【0052】
還元・水可溶性染料の還元処理の際に50℃以下の温度に保たれていた水浴(処理浴、染色浴)の温度を、染着処理時に70℃以上の温度にするためには、還元処理後に水浴の温度を加熱上昇させる必要がある。その際に、昇温速度が速すぎると、処理浴内に温度斑が発生し、場合によっては局所的に100℃を超えてしまうことがある。そのため、還元処理の終了後に染着処理を行う際の水浴(処理浴、染色浴)の昇温速度は10℃/分以下であることが好ましく、5℃/分以下であることがより好ましく、0.5〜3℃/分であることが更に好ましい。
【0053】
上記により染着処理を終了した後、酸化処理を行って、皮革様シートに染着させた還元・水可溶性染料を再度水不溶性にして皮革様シートに固定させるとともに発色させる。
酸化処理は、染色液をそのまま用いて行ってもよいし、または染色機内から染色液を排出し水を投入して水洗した後に行ってもよい。
酸化処理の方法は特に制限されず、処理浴の雰囲気中に空気や酸素ガスを導入して酸化する方法、酸化剤を使用する方法、空気や酸素ガスによる酸化と酸化剤による酸化を併用する方法などを挙げることができる。そのうちでも、空気や酸素ガスによる酸化と酸化剤による酸化を併用する方法が、還元・水可溶性染料の酸化による水不溶化、固定、発色をより速やかに且つ確実に行うことができることから好ましい。
酸化処理に用いる酸化剤の種類は特に制限されず、例えば、過酸化水素、重クロム酸カリウム、過マンガン酸過度、過ホウ素酸などのような、染色工場で従来から一般的に用いられている酸化剤の1種または2種以上を用いることができる。
【0054】
酸化剤による酸化処理は、還元処理時に用いたアルカリ性物質を含有するアルカリ性の水浴中でそのまま行ってもよいし、または染色工場で従来から用いられている酢酸やその他の中和剤を用いて該アルカリ性物質の中和と同時に行ってもよく、前者の場合は酸化処理後に中和処理を行う。
酸化剤を用いて酸化処理を行う場合の浴中での酸化剤の濃度は、酸化剤の種類、処理温度や処理時間などの処理条件、還元・水可溶性染料の種類や染着量などに応じて適宜調整することができる。例えば、酸化剤として過酸化水素を用いる場合は、0.5〜20g/リットル浴の割合で用いることが好ましい。
酸化剤を用いて酸化処理を行う際の処理温度や処理時間も、酸化剤の種類や濃度、還元・水可溶性染料の種類や染着量などに応じて適宜調整することができるが、一般的には、30〜70℃で、10〜90分間程度行うことが好ましい。
【0055】
上記による酸化処理を行った皮革様シートは、そのまま乾燥して染色された皮革様シートとして用いてもよいが、ソーピング処理を行って、皮革様シートに付着した余分の還元・水可溶性染料を除去することが好ましく、ソーピング処理を行うことによって皮革様シートの染色堅牢度が一層向上する。
ソーピング処理に当たっては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤や、布帛のソーピング処理に一般的に使用されている還元洗浄剤などのいずれもが使用でき、特に制限されない。ソーピング処理の条件は、従来から布帛のソーピング処理で採用されている処理条件が採用でき特に制限されないが、ソーピング処理浴の温度を40〜100℃、特に60〜95℃にして皮革様シートに付着している余分な染料を目標とする程度まで除去することが好ましい。
【0056】
上記した酸化処理の後、またはソーピング処理の後に、必要に応じてブラッシング処理を行って、皮革様シートの表面に付着している余分な染料を完全に除去してもよい。ブラッシング処理は、湿潤状態で行うことが、染料の除去効率や整毛性などの点から好ましい。ブラッシング処理に当たっては、砥粒の付着したブラシロールを用いて、液中で行うことが染料の除去効率の点から好ましい。
【0057】
また、上記した酸化処理、ソーピング処理またはブラッシング処理の後に、必要に応じて、酸性染料または含金属錯塩染料を用いて更に染色処理を行ってもよい。その場合には、より濃色に染色された皮革様シートを得ることができる。酸性染料および含金属錯塩染料の種類は特に制限されず、皮革様シートや人工皮革などにおいて従来から用いられている酸性染料および含金属錯塩染料のいずれもが使用できる。
【0058】
予め起毛処理して片面または両面に立毛を形成した皮革様シートを用いて上記した一連の処理を行うことによって、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなり、片面または両面にポリアミド系極細繊維から主としてなる、目的とする染色された立毛皮革様シートが製造される。
また、起毛処理を施してない皮革様シートを用いて上記した一連の処理を行った場合は、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなる、立毛を持たない染色された皮革様シートが製造されるので、その皮革様シートに対して上記した起毛処理を施すことによって、目的とする染色された立毛皮革様シートを製造することができる。
【0059】
本発明の方法で製造される染色された立毛皮革様シートの厚さは、用途などに応じて任意に選択できるが、一般的には、立毛部をも含めて0.2〜4mm程度であることが風合い、強度などの点から好ましく、0.3〜2mm程度であることがより好ましく、そのためそのような厚さを与える皮革様シート基材を用いて上記した一連の処理を行うとよい。
【0060】
本発明の方法により得られる立毛皮革様シートは、安定した発色性、斑のない均一な色相、高い染色堅牢度などの優れた特性を活かして、衣料用、手袋用、靴用、インテリア用、車両用内装材などのような、高レベルの染色堅牢度が要求される用途に表皮材や裏材などとして好適に用いることができる。
【0061】
【実施例】
以下に本発明について実施例等により具体的に説明するが、本発明は以下の例に何ら限定されるものではない。なお、以下の例中、染色処理時の雰囲気(染色機内の気体)中での酸素の体積含有率は次のようにして測定した。
【0062】
(1)染色処理時の雰囲気(染色機内の気体)中での酸素の体積含有率:
染色機内の雰囲気中に、酸素濃度計(新コスモス電機株式会社製「XO−326AL」)のセンサー部を挿入して測定した。挿入口の大きさは、染色機内の雰囲気中への大気の流入が極力発生しないようにするためにセンサー部と等しくし、測定時はグロメットシールを行った。
【0063】
また、以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートの表面発色性、繊維部分とポリウレタン(弾性重合体)部分の色差、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度および染色摩擦堅牢度の評価は、次のようにして行った。
【0064】
(2)表面発色性:
以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートの表面を目視により観察して、下記の評価基準に従って評価した。
[表面発色性の評価基準]
◎:立毛皮革様シートの表面をなすポリアミド極細繊維製の立毛が均一に且つ濃色に染色されていて、色斑がなく、高級感のある色調を有しており、発色性が非常に良好である。
○:立毛皮革様シートの表面をなすポリアミド極細繊維製の立毛がほぼ均一に且つ染色されていて、色斑がなく、ほぼ均一な色調を有しており、普通の発色性である。
△:立毛皮革様シートの表面をなすポリアミド極細繊維製の立毛の染色が不十分であるか又はやや不均一に染色されており、発色性がやや悪い。
×:立毛皮革様シートの表面をなすポリアミド極細繊維製の立毛が殆ど染色されておらず、極めて淡い色であり、高級感の全くない、不良な色調である。
【0065】
(3)繊維部分とポリウレタン(弾性重合体)部分の色差:
以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートについて、その表面でのポリアミド極細繊維製の立毛の色調と立毛間に見えるポリウレタン部分の色調を目視により観察して下記の評価基準に従って評価した。
[色差の評価基準]
○:ポリアミド極細繊維製の立毛とポリウレタン部分とで色差がなく、同色を呈している。
△:ポリアミド極細繊維製の立毛の色が、ポリウレタン部分の色に比べてやや薄く、やや色差がある。
×:ポリアミド極細繊維製の立毛の色が、ポリウレタン部分の色に比べてかなり薄く、色差が大きい。
【0066】
(4)洗濯堅牢度:
以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートの洗濯堅牢度(変退色性と汚染性)を、JIS L−0844−1973 A−1に従って評価した。
【0067】
(5)ドライクリーニング堅牢度:
以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートのドライクリーニング堅牢度(変退色性と汚染性)を、JIS L−0860−1974に従って評価した。
【0068】
(6)染色摩擦堅牢度:
以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度(乾燥時/湿潤時)を、JIS L−0849−1971に従って評価した。
【0069】
《実施例1》
(1) 島成分がポリアミド(ナイロン−6)、海成分がポリエチレンからなり、島成分:海成分の質量比が50:50であり、海成分中に種々の大きさの島成分が不規則に分散し、繊維横断面での平均島数が350個である海島型の混合紡糸繊維(フィラメント)(単繊維繊度6デシテックス)を捲縮処理して、捲縮数が約4.7個/cm(12個/inch)の捲縮繊維とした後、繊維長51mmのステープルにカットした。このステープルからランダムウエブ法でウエブをつくり、これにニードルパンチグ処理(500本/cm)を施して、目付700g/mおよび見掛密度0.20g/cmの絡合不織布を製造した。この絡合不織布を、熱風乾燥機中で温度130℃で加熱処理した後、冷却ロール間でプレスして、海成分であるポリエチレンによって繊維同士を部分的に接着させて絡合不織布中の繊維を固定して、見掛密度0.29g/cmの部分融着絡合不織布を製造した。
【0070】
(2) 上記(1)で得られた部分融着絡合不織布にポリテトラメチレングリコール系ポリウレタン(株式会社クラレ製)のジメチルホルムアミド(DMF)溶液(濃度15質量%)を含浸付与し、水系溶剤中でポリウレタンを凝固させた後、トリクレン中でポリエチレンを溶解除去して、海島型混合紡糸繊維をポリアミド極細繊維束に変えて、ポリアミド極細繊維束から構成された繊維集合体の内部にポリウレタンが含有された皮革様シートを製造した(繊維集合体をなすポリアミド極細繊維の単繊維繊度=約0.009デシテックス)。
【0071】
(3) 上記(2)で得られた皮革様シートを、厚さ方向に二分割(スライス)して、2枚の皮革様シートとし、その表面および分割面にDMFとシクロヘキサノンとの混合溶媒[DMF:シクロヘキサノン=30:70(質量比)]をグラビア塗布した後、乾燥し、2枚の皮革様シートの表面のみをサンドペーパーにてバフィングして起毛処理することにより、表面にポリアミド極細繊維からなる立毛を形成して、厚さ0.57mm(立毛部を含む)、目付220g/m、見掛密度0.38g/cmの立毛皮革様シートを製造した。この立毛皮革様シートにおける立毛部をなすポリアミド極細繊維およびシート本体の繊維集合体部分を構成するポリアミド極細繊維の単繊維繊度はいずれも約0.009デシテックスであった。
【0072】
(4) サーキュラー液流染色機(日阪製作所製「サーキュラー・ラピッド染色機 CUT−RA−2L」)に、所定量の水を投入し、そこに上記(3)で得られた立毛皮革様シートを投入し(浴比=1:30)、水温を90℃に昇温した後、同温度で30分間にわたって、180m/分の移動速度(回転リール速度)で立毛皮革様シートを移動させて、立毛皮革様シートを水に十分に馴染ませた後、水温を40℃以下に冷却して排水した。
【0073】
(5) 前記染色機内に所定量の水を再度投入し(浴比=1:30)、水温を30℃に昇温した後、染色機を密閉した状態で、窒素発生装置を用いて染色機内の圧力が304kPa)になるまで窒素ガスを導入し、その後窒素ガスの導入を止めて染色機内の空気と窒素ガスの混合気体を排気し、この処理を更に3回繰り返した。この時の染色機内の気体(雰囲気)中での酸素の体積含有率を上記した方法で測定したところ、0.6%であり、実質的に酸素を殆ど含まない雰囲気になっていた。
【0074】
(6)(i) 染色機内の液温を30℃に維持した状態で、染色機内で立毛皮革様シートを移動させながら(移動速度90m/分)、以下に示す建染染料(還元・水可溶性染料)、アルカリ性物質および助剤を、以下の(ii)に記載する順序で染色機内に投入して、以下の(ii)に示す条件下で還元処理を行った。
Figure 2004263316
(ii) 上記した還元剤の1/2量および上記したアルカリ性物質の1/2量を染色機に投入して処理浴をある程度還元状態にした後に、上記した建染染料の所定量を一括投入し、次いで残りの還元剤およびアルカリ性物質を投入すると共に、上記した2種類の助剤の所定量を投入した。全ての薬剤を投入した後、処理浴の温度を30℃に保持したまま、立毛皮革様シートを移動速度180m/分で染色機内を20分間移動させて薬剤を撹拌しながら建染染料の還元処理を行った。
【0075】
(7) 次いで、立毛皮革様シートを180m/分の速度で移動させながら、昇温速度1℃/分で処理浴の温度を80℃まで上昇させ、同温度下に同じ移動速度で立毛皮革様シートを移動させながら、30分間染着処理を行った後、立毛皮革様シートを同じ速度で移動させたまま処理浴温度を70℃まで徐冷した。
【0076】
(8) 次に、染色機内に空気を導入しながら水を投入して、空気による酸化処理および水洗処理を行った。水洗後の液を排水した後、過酸化水素水(過酸化水素濃度3g/処理水1リットル)を導入して、処理浴の温度を60℃に保ち、20分間酸化処理を行った。
(9) 次いで、界面活性剤(第一工業製薬株式会社製「モノゲン」)を投入(2g/処理水1リットル)して80℃で10分間ソーピング処理を行って、染色された立毛皮革様シートを製造した。
【0077】
(10) 上記(9)で得られた染色された立毛皮革様シートは、表面のポリアミド極細繊維製の立毛と、立毛間に見えるポリウレタンとがバランスよく且つ均一に緑色に染色された優美なスエード調の外観を有していた。この染色された立毛皮革様シートの表面発色性、繊維部分とポリウレタン部分との色差、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0078】
《実施例2》
(1) 実施例1において、その工程(9)のモノゲンによるソーピング処理に代えて、下記の条件による還元洗浄剤によるソーピング処理を行い、それ以外は実施例1と同様の処理を行って、染色された立毛皮革様シートを製造した。
Figure 2004263316
【0079】
(2) 上記(1)で得られた染色された立毛皮革様シートは、実施例1で得られた染色された立毛皮革様シートと同様に、表面のポリアミド極細繊維製の立毛と、立毛間に見えるポリウレタンとがバランスよく緑色に染色された優美なスエード調の外観を有していた。この染色された立毛皮革様シートの表面発色性、繊維部分とポリウレタン部分との色差、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0080】
《実施例3》
(1) 実施例1の(9)で得られたソーピング処理後の染色された立毛皮革様シートを、立毛を有する表面が外側になるようにして筒状にして、両耳部を長さ方向に10cm間隔で縫い合わせて固定した後、ウインス型染色機に投入し、含金属錯塩染料を用いて下記の内容の染色処理を更に行った後、水洗処理し、乾燥して再染色した立毛皮革様シートを製造した。
Figure 2004263316
【0081】
(2) 上記(1)で得られた再染色された立毛皮革様シートは、実施例1で得られた染色された立毛皮革様シートに比べて濃緑色である点で異なる以外は、実施例1で得られた染色された立毛皮革様シートと同様に、表面のポリアミド極細繊維製の立毛と、立毛間に見えるポリウレタンとがバランスよく緑色に染色された優美なスエード調の外観を有していた。この再染色された立毛皮革様シートの表面発色性、繊維部分とポリウレタン部分との色差、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0082】
《実施例4》
(1) 実施例1の工程(9)で得られたソーピング処理後の湿潤状態にある染色された立毛皮革様シートにおける立毛を有する表面側を、砥粒を付着したブラシロールを用いてブラッシング処理した後、含金属錯塩染料を用いて下記の内容の染色処理を更に行った後、水洗処理し、乾燥して、再染色した立毛皮革様シートを製造した。
Figure 2004263316
【0083】
(2) 上記(1)で得られた再染色された立毛皮革様シートは、実施例1で得られた染色された立毛皮革様シートよりも一層発色性および濃染感に優れ、しかもキメ細かな光沢感のある優美なスエード調の外観を有していた。この再染色された立毛皮革様シートの表面発色性、繊維部分とポリウレタン部分との色差、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0084】
《実施例5》
(1) 実施例1の(2)で得られた起毛処理を施してない皮革様シートを、厚さ方向に二分割せずに、そのまま実施例1の(4)〜(9)と同様にして、皮革様シートを水に馴染ませる処理、実質的に酸素を含まない雰囲気下での還元処理と染着処理、酸化処理およびソーピング処理を順次行って、染色された皮革様シートを製造した。
(2) 上記(1)で得られた染色された皮革様シートを、厚さ方向に二分割(スライス)して、2枚の皮革様シートとし、その表面および分割面にDMFとシクロヘキサノンとの混合溶媒[DMF:シクロヘキサノン=30:70(質量比)]をグラビア塗布した後、乾燥し、2枚の皮革様シートの表面のみをサンドペーパーにてバフィングして起毛することにより、表面にポリアミド極細繊維からなる立毛を形成して、厚さ0.55mm(立毛部を含む)、目付214g/m、見掛密度0.39g/cmの立毛皮革様シートを製造した。この立毛皮革様シートにおける立毛部をなすポリアミド極細繊維およびシート本体の繊維集合体部分を構成するポリアミド極細繊維の単繊維繊度はいずれも約0.009デシテックスであった。
(3) 上記(2)で得られた染色された立毛皮革様シートは、実施例1で得られた染色された立毛皮革様シートと同様に、優美なスエード調の外観を有していた。この染色された立毛皮革様シートの表面発色性、繊維部分とポリウレタン部分との色差、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0085】
《比較例1》
(1) 実施例1において、その(7)の染着処理を、処理浴温度80℃で行う代わりに55℃で行い、染着処理後に空気および水を導入して徐冷・空気による酸化を行った後、実施例1と同様にして過酸化水素による酸化を行った以外は実施例1と同じ処理を行って、染色された立毛皮革様シートを製造した。
(2) 上記(1)で得られた染色された立毛皮革様シートは、一見したところ表面全体がほぼ緑色に染色されていたが、詳細に観察すると、表面のポリアミド極細繊維製の立毛の染色が十分に行われておらず、一方濃緑色に染色されたポリウレタンが立毛と立毛との間から見えて、色調の互いに異なる緑色が混在した状態になっており、色相の均一性に欠け、優美さのないものであった。この染色された立毛皮革様シートの表面発色性、繊維部分とポリウレタン部分との色差、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0086】
《比較例2》
(1) 実施例1において、染色機内の空気を窒素ガスで置換した工程(5)を行わずに、染色機内の雰囲気を空気のままにし、それ以外は実施例1と同様の処理を行って、染色された立毛皮革様シートを製造した。
(2) 上記(1)で得られた立毛皮革様シートは、表面のポリアミド極細繊維製の立毛は殆ど染色されておらず、そのため表面全体が発色性に悪い薄緑色のスエード調の外観を有しており、商品価値の極めて低いものであった。そのため、この比較例2で得られた染色された立毛皮革様シートについては、発色性、繊維部分とポリウレタン部分との色差、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度の評価を行わなかった。
【0087】
《比較例3》
(1) 実施例1の(1)〜(3)と同じ操作を行って、表面にポリアミド極細繊維からなる立毛を有する、厚さ0.57mm(立毛部を含む)、目付220g/m、見掛密度0.38g/cmの立毛皮革様シートを製造した。この立毛皮革様シートにおける立毛部を構成するポリアミド極細繊維およびシート本体の繊維集合体部分を構成するポリアミド極細繊維の単繊維繊度はいずれも約0.009デシテックスであった。
(2) 上記(1)で得られた立毛皮革様シートに対して、実施例1の(4)と同じ処理を行って、立毛皮革様シートを水に十分に馴染ませた後、水温を40℃以下に冷却して排水した。
【0088】
(3) 次いで、サーキュラー型液流染色機を使用して、含金属錯塩染料を用いて、下記の染色処理内容にて、実施例1で得られた染色された立毛皮革様シートと同じ色目の立毛皮革様シートを得ることを目的として染色処理を行って、染色された立毛皮革様シートを製造した。
Figure 2004263316
【0089】
(4) 上記(3)で得られた染色された立毛皮革様シートは、表面のポリアミド極細繊維からなる立毛と、立毛間に見えるポリウレタン部分とがほぼ同じ緑色に染色されていて、外観上は優美なスエード調を呈していた。しかしながら、この染色された立毛皮革様シートの表面発色性、繊維部分とポリウレタン部分との色差、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度を上記した方法で評価したところ、下記の表1に示すように、染料がポリアミド極細繊維からなる立毛に十分に染着しておらず、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度に劣るものであった。
【0090】
【表1】
Figure 2004263316
【0091】
上記表1の実施例1〜5の結果から、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなる、起毛処理後の立毛皮革様シートまたは起毛処理前の皮革様シートを、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料、アルカリ性物質および還元剤を含有する水浴を使用して染色処理するに当たり、酸素の体積含有率が3%未満の雰囲気下、特に酸素を殆ど含まない雰囲気下に、前記染料を還元処理して水に可溶性にした後に水に溶解した前記染料を染液温度70℃以上で該立毛皮革様シートまたは皮革様シートに染着させ、次いで酸化処理して前記染料を水不溶性にすると、表面にあるポリアミド極細繊維からなる立毛と、立毛と立毛との間に見えるポリウレタン(弾性重合体)とがバランス良く均一に染色されて、色斑などのない、優美なスエード調の外観を有する立毛皮革様シートまたは皮革様シートが得られることがわかる。
【0092】
一方、表1の結果にみるように、比較例1では、染液温度を70℃よりも低い、55℃の温度にして立毛皮革様シートの染着処理を行っていることによって、表面にあるポリアミド極細繊維からなる立毛が十分に染色されておらず、ポリウレタンとの間に色調の差が大きく、表面の染色安定性に劣ると共に色斑がある。
【0093】
また、表1の結果にみるように、比較例2では、立毛皮革様シートの還元処理および染着処理を、酸素を多く含む雰囲気下に行っていることにより、表面にあるポリアミド極細繊維からなる立毛が殆ど染色されていないために、濃色に染色されているポリウレタン部分との間の色差が大きく、商品価値が極めて低い。
【0094】
さらに、表1の結果にみるように、比較例3では、アルカリ性物質の存在下に還元処理されて水可溶性になる染料を用いて本発明の方法で染色処理を行わずに、従来の含金属錯塩染料のみを使用して染色を行っていることにより、染色された立毛皮革様シートは、染色堅牢度、特に洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度に劣っている。
【0095】
【発明の効果】
本発明では、ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなる皮革様シートを、起毛処理前または起毛処理後に、アルカリ性物質の存在下に還元処理することにより水可溶性となる染料、アルカリ性物質および還元剤を含む水浴を用いて染色するに当たって、前記染料の還元処理および皮革様シートへの染料の染着処理を、酸素の体積含有率が3%未満の雰囲気下、特に酸素を殆ど含まない雰囲気下で行い、且つ染着処理時の染液の温度を70℃以上の高温にしていることによって、アルカリ性物質の存在下に還元処理することにより水可溶性となる染料を用いて前記立毛皮革様シートを染色する類似した従来技術に比べて、ポリアミド系極細繊維からなる立毛部分や繊維集合体を構成するポリアミド系繊維を均一に且つ良好に染色することができ、そのため、ポリアミド系繊維と弾性重合体とを大きな色相差を生ずることなく同じように均一に染色することができ、全体が均一に染色された、色斑のない、外観的に優れ、高級感のある立毛皮革様シートを、良好な染色安定性で円滑に製造することができる。
しかも、本発明の方法により得られる前記立毛皮革様シートは、前記した類似した従来の染色技術や、含金属錯塩染料や酸性染料のみを用いて同様の立毛皮革様シートを染色する従来の方法により得られる立毛皮革様シートに比べて、洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度、汗堅牢度などにおいても優れている。
そのため、本発明の方法により得られる染色された立毛皮革様シートは、前記した優れた特性を活かして、衣料用、手袋用、靴用、インテリア用、車両用内装材などのような、高レベルの染色堅牢度が要求される用途に表皮材や裏材などとして好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. ポリアミド系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなる皮革様シートを、起毛処理して片面または両面にポリアミド系極細繊維から主としてなる立毛を形成した後に染色処理するか、或いは染色処理した後に起毛処理して片面または両面にポリアミド系極細繊維から主としてなる立毛を形成することによって、片面または両面にポリアミド系極細繊維から主としてなる立毛を有する染色された立毛皮革様シートを製造する方法であって、前記染色処理を、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料、アルカリ性物質および還元剤を含有する水浴を使用して、酸素の体積含有率が3%未満の雰囲気下に、前記染料を還元処理して水に可溶性にした後に水に溶解した前記染料を染液温度70℃以上で起毛処理前または起毛処理後の皮革様シートに染着させ、次いで酸化処理して前記染料を水不溶性とする工程を経て行うことを特徴とする染色された立毛皮革様シートの製造方法。
  2. 染色処理を、液流染色機を使用して行う請求項1に記載の製造方法。
  3. アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料の還元処理を、該染料、アルカリ性物質および還元剤を含む水浴を浴温度50℃以下で10分以上撹拌することによって行う請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 水浴中に還元剤の一部およびアルカリ性物質の一部を投入して還元状態にした後に、アルカリ性物質の存在下に還元されて水可溶性となる染料、還元剤の残部およびアルカリ性物質の残部を投入して、浴温度50℃以下で10分以上撹拌して染料を還元処理する請求項3に記載の製造方法。
  5. 起毛処理前または起毛処理後の皮革様シートを、水に十分に馴染ませた後に、前記した染色処理を行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 酸化処理後にソーピング処理を行う請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 酸化処理後またはソーピング処理後に、ブラッシング処理を行う請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の染色処理の後に、更に酸性染料または含金属錯塩染料で染色処理することを特徴とする染色された立毛皮革様シートの製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法により得られる染色された立毛皮革様シート。
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