JP4805184B2 - 立毛皮革様シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は染色された立毛皮革様シートの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、分散染料で染色後に還元洗浄処理を行って、発色性、均染性、染色堅牢性などに優れる染色された立毛皮革様シートを、良好な染色安定性で円滑に製造する方法およびそれにより得られる立毛皮革様シートに関する。
ポリエステル極細繊維不織布の繊維集合体の内部に弾性重合体を含有させ、片面または両面に立毛を形成させたシートは、立毛の長さやキメの細かさなどによって表現される外観、風合、触感が天然皮革のスエードやヌバックに似ていることから、スエード調またはヌバック調の立毛皮革様シートとして、近年多量に生産されている。特に、立毛が極細繊維から形成されている立毛皮革様シートは、天然皮革に極めて近似していることから、高級品として取り扱われている。そのような立毛皮革様シートは、染色堅牢度が良いことから用途面では、衣料、インテリア、カーシート、靴、鞄等に要素がますます高まっている。それに伴って発色性が良好で、染色斑がなく、安定した色調を有し、しかも洗濯堅牢度、ドライクリーニング堅牢度、染色摩擦堅牢度、汗堅牢度などに優れる、染色された立毛皮革様シートが強く求められるようになっている。
立毛皮革様シートにおいては、立毛を形成する繊維が立毛皮革様シートの外観、風合、触感などの良否を決定する上で極めて重要な要素となっている。立毛を形成する繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などが一般に多く用いられている。そのうちでも、ポリエステルからなる極細繊維が、発色性および染色堅牢度で良好であるために、特にカーシートで代表される車両用内装材やインテリア材として立毛皮革様シートにおける立毛を構成する繊維として広く使用されている。ポリエステル系極細繊維からなる立毛は繊維が極細化することにより発色性が劣ることから、発色性を上げるために多量の染料を使用して染色することが通常行われている。しかしながら多量の染料を使用した場合は、発色性自体は確保できるが、余分の染料が立毛皮革様シートに付着・残留しているために、染色堅牢度が低く、摩擦、洗濯、ドライクリーニング、汗などによって色落ちするという問題を生じ易い。以上の問題を克服するためにまた染色堅牢度を向上させるために種々の染色方法が採用あるいは提案されている。
例えば、ポリエステル極細繊維とポリアミド極細繊維の不織布からなりその空間にポリウレタンからなるスエード調人工皮革を分散染料で染料濃度を1〜35%の染料濃度で染色し、ついで還元剤と還元助剤とアルカリ剤の存在化で還元洗浄処理を行い、ポリウレタン中の還元洗浄処理前と処理後の染料の脱離を規制して染色堅牢度や色の安定性を向上させる方法が知られている(特許文献1を参照。)。しかしながらこの方法による場合は、染色堅牢度は向上するが、染色時に還元剤洗浄処理時に還元剤が還元浴に含まれる空気や染色機内に存在する空気により酸化されて還元能力が不安定になり、それに伴って染色時の安定性が不十分になり、染色されたスエード調人工皮革の色相のぶれや色斑が生じ易くなるという問題があり、改良の余地があった。
またポリエステル極細繊維を用いて分散染料で染色されたスエード調人工皮革において、高耐光堅牢度を得るために、ポリウレタンに黄色系顔料、赤色系顔料および青色系顔料を含有させ、染色した後に還元洗浄処理でポリウレタン中の分散染料を分解、脱色処理をすることが知られている(特許文献2を参照。)。また還元洗浄脱落率が20%以下でかつ850nmにおける赤外線反射率が60%以上である顔料によって着色されてなるポリウレタンとポリエステル極細繊維を含む繊維絡合体とからなるスエード調人工皮革が知られている(特許文献3を参照。)。しかしながらこれらの方法による場合も還元剤洗浄処理時に還元能力が不安定となり、それに伴って染色時の安定性が不十分となり、染色されたスエード調人工皮革の色相のぶれや色斑が生じ易くなるという問題があり、さらなる改良の余地があった。
特開2005−133256号公報 特開2004−52120号公報 特開2003−253572号公報
本発明の課題は、ポリエステル系極細繊維からなる不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなる皮革様シートをその起毛処理前または起毛処理後に分散染料で染色して、その後還元洗浄処理して、表面にポリエステル系極細繊維から主としてなる立毛を有する染色された立毛皮革様シートを製造するに当たって、染色斑、染色バッチ間での色相の変動、立毛皮革様シートを構成するポリエステル系繊維と弾性重合体との間の染色状態の違い、色相差の発生などを抑制し、摩擦、洗濯、ドライクリーニングおよび汗などによって色落ちせず、染色堅牢度に優れ、良好な染色安定性を有する染色された立毛皮革様シートの製造方法を提供することである。
上記の課題を解決すべく本発明者らは検討を重ねてきた。その結果、ポリエステル系極細繊維からなる不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなる皮革様シートをその起毛処理前または起毛処理後に分散染料で染色し、その後にアルカリ性物質、還元剤および界面活性剤を含む還元洗浄液を包囲する雰囲気中での酸素の含有率を特定すること、即ち該雰囲気中の酸素濃度を特定の範囲以下にし、かつ60℃以上の高温にて還元洗浄処理を行い、その後酸化処理を行うと還元剤が空気中の酸素での酸化分解が抑制されて還元能力が均一かつ安定に保たれて、染色斑、染色バッチ間での色相の変動および皮革様シートを構成するポリエステル系極細繊維と弾性重合体との間の色調差などが生じず、染色安定性が良好になること、さらには還元剤が従来の使用量より大幅に削減できる事を見出した。
また、本発明者らはそれにより得られるポリエステル系極細繊維から主としてなる立毛を有する染色された立毛皮革様シートは、摩擦、洗濯、ドライクリーニングおよび汗などによって色落ちが生じず、染色堅牢度に優れることを見出した。
すなわち本発明は、
(1)単繊度が0.5デシテックス以下のポリエステル系極細繊維からなる不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなる皮革様シートの少なくとも片面を起毛処理する前または後に該皮革様シートを、染色機内で分散染料を用いて染色し、そして還元洗浄処理を行い、その後に酸化処理を行うことにより該皮革様シートを染色する方法において、該還元洗浄処理が下記1)〜4)を共に満足することを特徴とする染色された立毛皮革様シートの製造方法である。
1)染色処理と同一の染色機内で行うこと、
2)アルカリ性物質、還元剤および界面活性剤を含有する還元洗浄液を用いること、
3)酸素の体積含有率が5%未満の雰囲気下で行うこと、
4)還元洗浄液温度を60℃以上で行うこと、
また、(2)弾性重合体がポリウレタンである上記(1)の立毛皮革様シートの製造方法。
(3)弾性重合体の含有率が立毛皮革様シートの5質量%以上である上記(1)または(2)の立毛皮革様シートの製造方法。
(4)弾性重合体が、ジメチルホルムアミドに可溶なポリウレタンとジメチルホルムアミドに不溶なポリウレタンからなり、該ジメチルホルムアミドに不溶なポリウレタンが立毛面側に偏在している上記(1)〜(3)のいずれかの立毛皮革様シートの製造方法。
(5)酸化処理後にソーピング処理を行う上記(1)〜(4)のいずれかの立毛皮革様シートの製造方法。
(6)酸化処理後またはソーピング処理後に、ブラッシング処理を行う上記(1)〜(5)のいずれかの立毛皮革様シートの製造方法である。
また、(7)上記(1)〜(6)のいずれかの立毛皮革様シートの製造方法により得られる染色された立毛皮革様シートであり、
(8)上記(7)の立毛皮革様シートを用いた衣料、インテリア材、車両用内装材、靴または鞄である。
本発明の製造方法によって得られた立毛皮革様シートは、還元洗浄による洗浄斑に起因する染色斑の発生がなくなり、染色性が均一で堅牢度の優れた立毛皮革様シートが得られる。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられる立毛皮革様シートの基体は0.5デシテックス以下のポリエステル極細繊維からなる不織布にポリウレタンが含有された構成のものである。繊維を構成するポリエステルとしては、公知のポリエステルが使用可能である。そして、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびそれらに5−スルホナトリウム−イソフタレート等の一般的に公知であるカチオン染色性を付与するための改質剤を共重合またはブレンドしたものであり、それら単独または2種以上をブレンドしたものが好ましく用いられる。また、上記ポリエステル極細繊維が極細繊維束となっていることが得られる立毛皮革様シートの外観、表面タッチおよび風合いに優れる点で好ましい。
さらに、本発明のポリエステル極細繊維は、得られる立毛皮革様シートの染色時において染料の付着量を減らすことが可能となる点で、カーボンブラック等で代表される顔料で着色することも好ましい態様の1つである。
単繊度0.5デシテックス以下のポリエステル極細繊維束は、従来公知の方法で製造される。例えば、繊維断面において上記ポリエステルが島成分、そして上記ポリエステルに相溶性の小さいまたはない少なくとも1種類以上のポリマーが海成分となっている海島型のポリエステル極細繊維発生型繊維から海成分ポリマーを溶解又は分解除去することにより、または上記ポリエステルと相溶性のない1種以上のポリマーが接合した断面形状を有する貼り合せ型のポリエステル極細繊維発生型繊維を機械的または化学的な処理により2成分の界面で剥離させることにより得ることができる。得られるポリエステル極細繊維の束を構成する極細繊維の単繊度を0.5デシテックス以下、特に0.2デシテックス以下とするためには、貼り合せ型の極細繊維発生型繊維を用いるよりは繊維断面が海島構造となっている海島型の極細繊維発生型繊維を用いる方が工程上有利である。またメルトブローンなどのように直接極細繊維を製造する方法を用いてもよい。
ポリエステル極細繊維発生型繊維中で溶解または分解除去される成分としては、ポリエステル極細繊維成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、ポリエステル極細繊維成分との相溶性の低いポリマーであり、かつ紡糸条件下でポリエステル極細繊維成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーであり、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンプロピレン共重合体、ポリビニルアルコールなどのポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーである。
上記ポリエステル極細繊維発生型繊維は、カードで解繊し、ウェッバーを通してウエブを形成し、得られたウエブは、所望の重さ、厚さに積層し、次いで、ニードルパンチ、高速水流などの公知の方法で絡合処理を行ってポリエステル極細繊維発生型繊維からなる不織布とする。ウエブには必要に応じて織編物等を積層することが、機械的物性の安定性や充実感のある風合いを容易に達成できる点で好ましい。該不織布は最終的に極細化処理され、表面が毛羽立てられ、立毛表面が形成されることとなることから、該不織布表面は極細繊維発生型繊維または極細繊維から構成されていることが必要であるが、得られる立毛皮革様シートの風合いを重視する場合、柔軟性に優れる点から該不織布全体が極細繊維発生型繊維または極細繊維からなっている場合が好ましい。該不織布は、表面を平滑な基体層とするため、公知の方法で弾性重合体の含浸前に加熱プレス処理などにより表面平滑化することが好ましい。得られる不織布の目付としては、150〜1000g/mの範囲が好ましい。150g/m未満の場合、弾性重合体の含浸以降の工程での伸び等形態変化が大きくなり、得られる製品に歪が残り外観不良を招く場合がある。また、1000g/mを越える場合、弾性重合体の含浸や凝固および上記極細繊維発生型繊維中の海成分を抽出する際の工程で代表されるように極細繊維化速度が遅くなり実用的でない。また、加熱プレス処理後の好ましい厚みとしては、1.0〜3.0mmの範囲が好ましい。1.0mm未満の場合、弾性重合体の含浸以降の工程で伸び等の形態変化が大きくなり、得られる製品に歪が残り外観不良を招く場合がある。3.0mmを越える場合、得られる不織布の厚みが厚いため、巻き取る際に不織布の表面が折れしわを発生し易くなる。
本発明の不織布の内部に含有させる弾性重合体としては、公知の弾性重合体であればいずれでもよく、例えば、天然ゴム、SBR、NBR、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、クロルスルホン化ポリエチレン、ポリイソブチレン、イソブチレンイソプレンゴム、アクリルゴム、ポリウレタンエラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、塩素系熱可塑性エラストマーなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、最終的に得られる染色された立毛皮革様シートの風合い、染色性、耐摩耗性、引張強度などの力学的特性、防シワ性などの点から、弾性重合体としてはポリウレタンエラストマー(ポリウレタン)が、好ましく用いられる。
ポリウレタンとしては、弾性を有するポリウレタン樹脂のいずれもが使用できるが、特に数平均分子量が500〜5000の高分子ジオールをソフトセグメント成分とし、有機ジイソシアネートをハードセグメント成分とし、それらの成分と共に低分子鎖伸長剤を反応させて得られるセグメント化ポリウレタンが好ましく用いられる。
セグメント化ポリウレタンの製造に用いる前記した高分子ジオールとしては、例えば、ジカルボン酸成分とジオール成分との反応により得られるポリエステルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオールなどを挙げることができ、これらの高分子ジオールの1種または2種以上を用いることができる。セグメント化ポリウレタンの製造に用いる高分子ジオールの数平均分子量が500未満であると、ソフトセグメントが短すぎて、ポリウレタンが柔軟性に欠けたものとなり、天然皮革様の立毛皮革様シートが得られにくくなることがある。一方、該高分子ジオールの数平均分子量が5000を超えると、ポリウレタン中におけるウレタン結合の割合が相対的に減少することによって、耐久性、耐熱性および耐加水分解性などが低下し、実用的な物性を有する染色された立毛皮革様シートが得られにくくなる。
セグメント化ポリウレタンの製造に用いる有機ジイソシアネートとしては、ポリウレタンの製造に従来から用いられている有機ジイソシアネートのいずれもが使用でき、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネートなどを挙げることができる。
前記した有機ジイソシアネートの1種または2種以上を用いることができる。
セグメント化ポリウレタンの製造に用いる低分子鎖伸長剤としては、ポリウレタンの製造に従来から用いられている低分子鎖伸長剤、特に分子量が400以下の低分子鎖伸長剤のいずれもが使用でき、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、N−メチルジエタノールアミン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルメタン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミンなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
セグメント化ポリウレタンの製造に当たっては、[全イソシアネート基]/[水酸基、アミノ基などのイソシアネート基と反応する全官能基]の当量比が、0.9〜1.1の範囲になるようにして、上記した高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび低分子鎖伸長剤を反応させることが、引裂き強力の高い染色された立毛皮革様シートが得られる点から好ましい。
また、ポリウレタンの耐溶剤性、耐熱性、耐熱水性などを向上させる目的で、必要に応じて、トリメチロールプロパンなどの三官能以上のポリオールや三官能以上のアミン等を反応させてポリウレタン中に架橋構造を持たせてもよい。
また本発明の立毛皮革様シートを構成する弾性重合体が、ジメチルホルムアミドに可溶なポリウレタンとジメチルホルムアミドに不溶なポリウレタンからなり、該ジメチルホルムアミドに不溶なポリウレタンは立毛面側に偏在していることが、少量のポリウレタン樹脂で抗ピル性の効果が発揮できて風合いの点で好ましい。ここで言うジメチルホルムアミドに可溶なポリウレタンとは、一般的に架橋構造が密でないポリウレタンを言い、鎖状のポリウレタンであることが好ましい。また、ジメチルホルムアミドに不溶なポリウレタンとは、一般的に架橋構造が密な(三次元の網目構造を有する)ポリウレタンを言う。ジメチルホルムアミドに不溶なポリウレタンを立毛面側に偏在させる方法は、特に限定しないが、不織布に水分散液として含浸させ、マイグレーションを利用して偏在させる方法、グラビア等で代表されるコーティング機で立毛面となる側に選択的に付与する方法等が好ましく用いられる。
本発明で用いる立毛皮革様シートでは、天然皮革様の柔軟な風合いが得られる点から、弾性重合体の含有率は立毛皮革様シートの5質量%以上であることが好ましく、上限は70%以下であることが好ましく、15〜60質量%の範囲内であることがより好ましい。弾性重合体の割合が立毛皮革様シートの質量に基づいて70%を越えると、ゴムライクな風合いとなり易い。一方、弾性重合体の割合が立毛皮革様シートの質量に基づいて5質量%未満であると、起毛処理によって形成される立毛の脱落、抗ピル性が低下する。
起毛処理を行う前の皮革様シートの製造方法は特に制限されず、公知の方法を使用して製造することができる。例えば、以下の(a)〜(c)の方法により製造することができる。
(a) 1種または2種以上のポリエステルと、それとは溶解性または分解性の異なる1種または2種以上の他のポリマーを混合紡糸法、海島型複合紡糸法、分割型複合紡糸法などにより紡糸して得られる極細繊維発生型繊維を用いて不織布やその他の繊維集合体を製造し、それに弾性重合体を含有させて凝固した後に、極細繊維発生型繊維中の他のポリマー成分を除去して極細繊維化するか、または極細繊維発生型繊維を分割して極細繊維化する方法。
(b) 1種または2種以上のポリエステルと1種または2種以上の他のポリマーとからなる前記極細繊維発生型繊維を用いて不織布やその他の繊維集合体を製造したのち、該極細繊維発生型繊維中の他のポリマー成分を除去するか又は該極細繊維発生型繊維を分割して極細繊維とし、次いで弾性重合体を含有させて凝固する方法。
(c)メルトブロー法などによって直接得られたポリエステルを主体とする極細繊維を用いて不織布やその他の繊維集合体を製造した後に、弾性重合体を含有させて凝固する方法。
上記(a)または(b)の方法においてポリエステルと共に用いる他のポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系重合体;ポリスチレン、スチレン−アクリル系モノマー共重合体、スチレン−エチレン共重合体などのスチレン系重合体およびポリビニルアルコール系重合体などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
上記(a)〜(c)の方法において、ポリエステル系極細繊維を主体とする繊維集合体内に弾性重合体を含有させるに当たっては、弾性重合体の1種または2種以上を含む溶液または分散液を繊維集合体に従来公知の方法により含浸または塗布し、乾式法または湿式法によって弾性重合体を多孔質状態または非多孔質状態に凝固する方法が一般に採用される。
上記(a)の方法によって、ポリエステル系極細繊維を主体とする不織布からなる繊維集合体中に弾性重合体が含有されている皮革様シートを製造する場合は、より具体的には、例えば以下の(i)〜(iv)の一連の工程によって製造することができる。
(i) ポリエステルと他のポリマーとからなる極細繊維発生型繊維に延伸、捲縮、カットなどの処理を施して綿様の形態(ステープルなど)とし、それをカードで開繊した後、ランダムウエバーまたはクロスラップウェバーによりウエブとする。またはそのまま延伸し、長繊維からなるウエブとする。そして、必要に応じて所望の目付けになるように該ウエブを積層する。ウエブの目付けは最終的に得られる染色された立毛皮革様シートの用途などにより異なるが、一般的には100〜3000g/m2であることが好ましい。
(ii) 次いで、例えば、ニードルパンチング法、高圧水流法などの公知の手段を用いて絡合処理を行って不織布を製造する。ニードルパンチング時のパンチ数は、ニードルの形状やウエブの厚さなどにより異なり得るが、一般的には200〜2500パンチ/cm2であることが好ましい。また、最終的に得られる染色された立毛皮革様シートの伸び強力の調整、目付けや厚みの調整、その他の目的により、ウエブ形成後から絡合処理完了までのいずれかの段階で、織編物、異なる繊維の不織布、フィルムなどのシート状物を、不織布に積層して一体化してもよい。
(iii) 続いて、上記(ii)で得られた不織布に弾性重合体を含有させる。弾性重合体の付与方法は特に制限されないが、風合いのバランスの点から弾性重合体の溶液または分散液を不織布に含浸した後、湿式法または乾式法により凝固(固化)する方法が好ましく採用される。弾性重合体の溶液または分散液には、必要に応じて、顔料、染料などの着色剤、凝固性調節剤、燃焼性調節剤などを添加することができる。
(iv) 次に、弾性重合体を含有させた不織布を、極細繊維発生型繊維の1成分または複数成分に対して選択的に溶解剤または分解剤として作用する液体で処理して、極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変性して、ポリエステル系極細繊維束を主体とする不織布内に弾性重合体が含有されたシート状物とする。
上記(i)〜(iv)の一連の工程によってポリエステル系極細繊維を主体とする不織布からなる繊維集合体の内部に弾性重合体を含有させた皮革様シートを製造する場合に、極細繊維発生型繊維としてポリエステル島成分とする海島構造繊維を用いて島成分を極細繊維とすると、ポリエステル系極細繊維(束)と弾性重合体とが実質的に接着していない構造となり、ポリエステル系極細繊維束が弾性重合体に拘束されていないことにより構造内での動きの自由度が増すことから、天然皮革様の柔軟性に一層優れる皮革様シートを得ることができる。
既に極細化されたポリエステル系繊維を用いて不織布よりなる繊維集合体を製造し、それに弾性重合体を含有させる場合[上記(c)の方法を採用する場合]も、不織布への弾性重合体の含浸を、上記(a)の方法におけるのと同様にして行うことができる。上記(b)または(c)の方法において、ポリエステル系繊維を主体とする繊維集合体に弾性重合体を含浸して凝固させる前に水溶性樹脂を繊維集合体に予め付与しておき、弾性重合体の含浸・凝固後に水溶性樹脂を水で溶解除去するようにすると、繊維集合体を構成するポリエステル系繊維などと弾性重合体との接着が防止または低減されて繊維の動きの自由度が増して、柔軟性の向上した皮革様シートを得ることができる。
また、上記(a)の方法においても、ポリエステル系繊維を主体とする繊維集合体に弾性重合体を含浸して凝固させる前に水溶性樹脂を繊維集合体に付与しておき、弾性重合体の含浸・凝固後に該水溶性樹脂を水で溶解除去する方法を用いてもよく、これにより得られる皮革様シートの柔軟性が一層向上する。
本発明では、ポリエステル系繊維を主体とする繊維集合体とその内部に含有されて弾性重合体からなる上記の皮革様シートを、染色処理する前または染色処理した後に、起毛処理して、皮革様シートの片面または両面に立毛を形成させて立毛皮革様シートにする。
立毛を形成させるための起毛処理は、従来既知のいずれの方法で行ってもよく、例えば、皮革様シートを、必要に応じて厚み方向に複数枚に切断(スライス)した後に、その片方または両方の表面を、サンドペーパーなどによるバッフィング、針布起毛などによって、起毛処理して立毛を形成させる。
本発明では、皮革様シートの片面または両面に形成するポリエステル系極細繊維から主としてなる立毛の単繊度は、最終的に得られる染色された立毛皮革様シートの外観、触感、風合、ライティング効果などの点から、0.5デシテックス以下であることが必要であり、0.4デシテックス以下であることが好ましく、0.0001〜0.1デシテックスであることがより好ましい。立毛を形成する繊維の単繊度が0.5デシテックスよりも大きいと、染色した際に発色性は良好になるが、立毛皮革様シート自体の風合や触感が損なわれて、特にファッション素材としては不向きになり易い。一方、立毛を形成する繊維の太さが0.0001デシテックス未満であると、外観が緻密になり、触感も良好になるが、あまりにも細すぎるために、染色した際に発色性が極端に悪化して、鮮やかさや深みのある色調に染色できず、特にファッション素材として不向きなものになり易い。
また、起毛処理により得られる立毛皮革様シートにおける立毛の長さ(立毛長)は、立毛皮革様シートの用途などに応じて調整することができ、一般的には、立毛長は0.02〜2mm、特に0.05〜1mmであることが、抗ピル性、タッチ、ライティング効果などの点から好ましい。さらに、立毛皮革様シートにおける立毛密度は、10000本/cm2以上であることが好ましい。
立毛皮革様シートにおける立毛長は、面全体で同じあってもよいし、揃っていなくてもよい。立毛長を不揃いにする場合は、ランダムな状態で不揃いにしてもよいし、模様などに発現すべく所定の規則性をもって不揃いにしてもよい。また、立毛皮革様シートの両面に立毛を形成する場合は、両方の面の立毛の立毛長が同じであってもよいし、一方の面と他方の面とで立毛長が異なっていてもよい。起毛処理を行う際の処理条件を種々選択することによって、立毛皮革様シートにおける立毛状態を適宜調整することができ、立毛皮革様シートの外観、触感などを、例えば、スエード調、ヌバック調、立毛長が揃った均一な状態、立毛長および/または立毛密度が不揃いのラフな状態などにすることができる。
本発明では、皮革様シートの表面に立毛を固定する目的で、必要に応じて、皮革様シートを構成する弾性重合体の溶剤を含有する処理液、皮革様シートを構成する繊維集合体を形成しているいずれかの繊維の膨潤剤や溶剤を含有する処理液などを起毛処理の前または後に皮革様シートの表面に塗布してもよい。また、弾性重合体の溶液や分散液を、起毛処理の前または後に、皮革様シートに立毛の固定剤として塗布してもよい。 また、起毛処理後のいずれかの段階でブラッシング処理を施して、立毛皮革様シートの外観や触感などを整えてもよい。
皮革様シートに上記した立毛処理を施して片面または両面に立毛を形成した後に染色処理して染色された立毛皮革様シートにするか、または皮革様シートを染色処理した後に上記した起毛処理を行って片面または両面に立毛を形成して、染色された立毛皮革様シートにする。なお、ここで言う起毛処理と染色処理の工程の順序において、染色処理は染色、還元洗浄、水洗および酸化処理を含む一連の処理の総称を言う。
染色処理に供される起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートの厚さ(立毛を形成した立毛皮革様シートにおいては立毛部の立毛長を含まない本体部分の厚さ)は、0.1〜3mm、特に0.2〜2.0mmであることが好ましい。皮革様シートまたは立毛皮革様シート(本体部分)の厚さが0.1mmよりも薄いと、皮革様シートまたは立毛皮革様シート自体の強度が不足し、染色処理に耐えられなくなることがあり、しかもファッション素材としても適さないものになる。一方、皮革様シートまたは立毛皮革様シート(本体部分)の厚さが3mmを超えると、液流染色機などの染色装置のノズルを安定した状態で通過させるのが困難になり、染色時の工程通過性が不良になり易い。
起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートの染色処理は、予備処理を行わずにそのまま直接行ってもよいが、染色処理の前に、該皮革様シートまたは立毛皮革様シートを、水中に投入するなどして、十分に水に馴染ませる処理を予め行ってから染色処理を行うことが極めて望ましい。起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートを染色前に水に十分に馴染ませておくことによって、染色処理の際の染料の浸透度合いを均一にして染色斑などを防止することができ、更には染色機内での捩れなどによる皮革様シートまたは立毛皮革様シートの傷つき防止、商品価値を下げる皺の発生防止などを行うことができる。
この水に馴染ませる処理を行う際の水温は常温であっても効果はあるが、60℃以上であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。また、水に馴染ませる時間は、起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートが薄ければその分短くても十分であり、5分程度でもよいが、好ましくは10分以上、より好ましくは30〜60分間程度行うことにより、この水馴染ませ処理の効果をより発揮させることができる。この水に馴染ませる処理は、染色に使用する染色機と別の装置を用いて行ってもよいが、染色に使用する染色機を使用して、水に馴染ませる処理−染色−還元洗浄処理−酸化処理を連続して順次行うことがより効率的である。前記した液流染色機を使用する場合を例にとると、水に馴染ませるための具体的な方法としては、染色機に所定量の水を満たす前、満たしている最中または満たした後に、起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートを染色機内に投入し、水温を上記の温度まで上昇させた後、上記の処理時間中、それらの皮革様シートを水流により10m/分以上、より好ましくは50〜300m/分の流速で染色機内を移動させながら水に馴染ませる処理を行う方法が挙げられる。
皮革様シートまたは立毛皮革様シートを、そのまま直接、または上記した水に馴染ませる処理を予め行った後に、分散染料で染色を行う。
本発明の皮革様シートを分散染料で染色する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることが可能である。すなわち、公知の分散染料を用いることが可能である。例えば、分散染料とし水に難溶性で、水中に分散した際に疎水性繊維の染色に用いられる染料であればよく、ポリエステル繊維などの染色に用いられている染料を適宜使用できる。具体的には、ベンゼンアゾ系(モノアゾ、ジスアゾなど)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、キノリンアゾ、ピリジンアゾ、イミダゾールアゾ、チオフェンアゾなど)、アントラキノン系、縮合系(キノフタリン、スチリル、クマリンなど)などを任意に使用することができる。これらは、単独または併用して使用することが可能である。また、染色する方法についても公知の方法を用いることができる。染色条件として、具体的には、染色温度は、110〜160℃、好ましくは120〜150℃である。110℃未満では、ポリエステル極細繊維全体の染着が不充分となる傾向があり、染色仕上げの染色再現性が悪く、染斑が発生しやすくなる。一方、160℃を超えると、ポリエステル繊維や弾性重合体の熱劣化が起こりやすくなる。染色時間は、10〜120分間が好ましい。なお、染色の際には、染色浴が皮革様シート内部に充分に浸透するように、後述の染色機により染浴を攪拌または浸透させることが、さらには、染浴または皮革様シートを循環させることが皮革様シートを均一に染色させる点で好ましい。
また水浴(染色浴)中における分散染料の濃度は、合計で0.01〜50 owf%、特に0.1〜30 owf%であることが染色堅牢度の点から好ましい。
起毛処理する前の皮革様シートまたは起毛処理した立毛皮革様シートの染色処理に当たっては、必要に応じて、例えば、グルコース、芒硝、食塩、酸化防止剤、キレート剤などの染色助剤や、消泡剤、浸透剤などを併用してもよい。
染色処理に用いる染色機としては、既知の染色機のいずれもが使用でき、例えば、ジッガー染色機、ウィンス染色機、ダッシュライン染色機、サーキュラー染色機、ロータリーウォッシャー染色機などを挙げることができる。本発明においては、還元洗浄処理雰囲気中の酸素含有率を5%未満に維持する必要があることから、染色機としては、酸素含有率を5%未満に維持することのできる密閉性の良い染色機が好ましく用いられる。密閉性の良い染色機としては、サーキュラー染色機などで代表される液流染色機、ロータリーワッシャー染色機などを挙げることができ、そのうちでも密閉性に極めて優れ、しかも高圧染色が可能なサーキュラー染色機などの液流染色機がより好ましく用いられる。
本発明では、分散染料によって染色処理した後、還元洗浄処理(以下、単に還元洗浄と略す場合もある。)を、酸素の体積含有率が5%未満の雰囲気下で行う必要がある。還元洗浄処理処理を行う際の雰囲気中での酸素含有率は低ければ低いほど好ましく、かかる点から該雰囲気中での酸素の体積含有率は、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0%またはそれに近いほど一層好ましい。
還元処理の際に、雰囲気中での酸素の体積含有率が5%以上であると、酸素によって還元洗浄液中の還元が妨害または抑制されて、分散染料が水浴中に均一に且つ円滑に溶解しなくなり、還元洗浄液中における染還元剤濃度の不均一、経時変化、濃度不足などを生じて、十分な洗浄が行われずに均一な色調に染色することが困難になり、染色安定性に欠けるようになる。
ここで、本明細書における、「酸素の体積含有率」とは、還元洗浄処理を行う際に、還元洗浄浴を包囲する気体空間での酸素の体積含有率をいい、前記還元洗浄処理を染色機内で行う場合は染色機内の気体空間での酸素の体積含有率を意味する。
その際に、「雰囲気(気体空間)での酸素の体積含有率」は、染色処理を行う雰囲気(気体空間)内に酸素濃度測定器のセンサー部を直接挿入することによって測定することができ、その詳細については以下の実施例の項に記載するとおりである。
空気(大気)中には通常21%前後の酸素が含まれており、空気中(大気下)でそのまま還元洗浄処理行った場合には、空気中に多量に含まれる酸素が、還元洗浄液が過剰の分散染料の還元や水への可溶化を妨げるため、還元洗浄処理が円滑に行われず染色安定性が低下する。それに対して、本発明では皮革様シートへの還元洗浄処理を、酸素の体積含有率が5%未満の雰囲気下で行うことによって、還元剤の失活を抑え、還元により分散染料を円滑にかつ十分に水に可溶化することができる。しかも、還元処理によって水可溶性にした染料が酸化されて再び水不溶性になるのを防ぐことができるため、起毛処理前または起毛処理後の皮革様シートが染料の洗浄斑を生じず、良好な染色安定性を維持しながら均一かつ鮮明に染色できる。
還元洗浄処理および皮革様シートへの洗浄処理時に雰囲気中での酸素の体積含有率を5%未満にしておくためには、該雰囲気を窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスおよび炭酸ガスなどの不活性ガスで置換する方法が好ましく採用される。そのうちでも、限定されるものではないが、工業的には、取り扱い性や価格の点から、窒素ガスを用いて置換する方法がより好ましい。
雰囲気内の気体を不活性ガスで置換するタイミングは、染色完了後から還元洗浄を行う前の間でいずれかの時点で任意の段階で行うことが好ましい。また、染色処理が完了して水洗後が終了した時点から還元剤および界面活性剤のうちのいずれかを投入する前までの間で任意の段階で不活性ガスによる置換を行うことが好ましい。さらに、皮革様シートを水に馴染ませるための水浴量調整など別の処理工程などが必要な場合は、該別の処理工程が終了した時点と、アルカリ、還元剤および界面活性剤のうちのいずれか後に投入するまでの時点の間の任意の段階で不活性ガスによる置換を行うことが好ましい。
還元洗浄処理を行う雰囲気中での酸素の体積含量率を5%未満にした後に、水浴(処理浴)中に、アルカリ性物質、還元剤および界面活性剤を投入する。ここで言う還元洗浄処理を行うアルカリ性物質、還元剤および界面活性剤は公知の処理剤を用いることができ、アルカリ剤として、苛性ソーダ、又は、繊維染色用のアルカリ剤を用いることが好ましい。還元剤とは、例えばハイドロサルファイト類、二酸化チオ尿素などを用いることが好ましい。界面活性剤とはアニオン系やノニオン系界面活性剤、またはキレート剤が好ましい。これらの薬剤の投入方法は特に限定されず、使用する染料の種類や濃度、染色浴比、染色する皮革様シート中でのポリエステル系繊維の質量比率などに応じて任意の投入方法を採用することができ、例えば、前記薬剤のすべてを予め混合しておいて一度に投入する一括投入方法、各薬剤を混合せずに1種類ずつ逐次に投入する逐次投入方法、前記薬剤の1種または2種以上を複数回に分けて投入する分割投入方法などを挙げることができるが特に限定されるものではない。
また、それぞれの薬剤容器などから取り出したアルカリ性物資および還元剤は、空気中に放置する時間を短くして、不活性ガスで置換された処理雰囲気下にある水浴(染色浴)中でできるだけ速やかに投入することが、これら薬剤の酸化防止の点から望ましい。
水浴(還元処理浴)への、アルカリ性物質、還元剤および界面活性剤、さらには助剤などの投入に当たっては、還元洗浄処理する皮革様シートを処理浴中で移動させながら行うと、水浴中の液体が撹拌されて、これらの薬剤が均一に混合され、還元効果が得られるというメリットがあるので好ましい。その際の皮革様シートの処理浴中での移動速度は、10m/分以上、特に50〜300m/分であるのが、撹拌作用および均染効果の点から好ましい。
アルカリ性物質、還元剤および界面活性剤を含有する水浴中での還元洗浄処理は、処理浴(水浴、染色浴)の温度を60℃以上に維持して行うことが必要であり、70〜95℃に維持して行うことが好ましい。還元洗浄処理の際の浴温度が60℃未満の場合、皮革様シートへの還元洗浄が十分に行われず堅牢度の低いものになる。浴温度が95℃を越える場合、繊維内部の分散染料まで還元洗浄されて発色性が低下し染色斑の発生原因となり易い。
還元洗浄時間は特に制限されないが、一般的には10〜120分が好ましく、30〜60分がより好ましい。還元洗浄処理時間が10分未満であると、皮革様シートへの還元洗浄が十分でなく、皮革様シートの弾性重合体中の染料が多く残存したままの状態になり、外観および堅牢度が低下する。一方、還元洗浄処理時間が120分を超えても本質的な問題は生じず、分散染料の溶解除去は飽和に達していて堅牢度はそれ以上向上せず、生産性やコストなどの点から120分以下とすることが好ましい。また還元洗浄回数については溶解した染料を染色機外に出す必要があり、染料濃度の使用量によるが、必要によっては還元洗浄回数を2回以上行うほうが良い場合がある。
還元洗浄後の酸化処理は染色機内から還元剤液を排出し水を投入して水洗した後に行なう。酸化処理の方法は特に制限されず、処理浴の雰囲気中に空気や酸素ガスを導入して酸化する方法、酸化剤を使用する方法、空気や酸素ガスによる酸化と酸化剤による酸化を併用する方法などを挙げることができる。そのうちでも、空気や酸素ガスによる酸化と酸化剤による酸化を併用する方法が、分散染料の酸化による水不溶化、固定、発色をより速やかに且つ確実に行うことができることから好ましい。酸化処理に用いる酸化剤の種類は特に制限されず、例えば、過酸化水素、重クロム酸カリウム、過マンガン酸過度、過ホウ素酸などのような、染色工場で従来から一般的に用いられている酸化剤の1種または2種以上を用いることができる。
酸化剤による酸化処理は、染色工場で従来から用いられている酢酸やその他の中和剤を用いて該アルカリ性物質の中和と同時に行ってもよく、前者の場合は酸化処理後に中和処理を行う。
酸化剤を用いて酸化処理を行う場合の浴中での酸化剤の濃度は、酸化剤の種類、処理温度や処理時間などの処理条件、分散染料の染着量などに応じて適宜調整することができる。例えば、酸化剤として過酸化水素を用いる場合は、0.5〜20g/リットル浴の割合で用いることが好ましい。
酸化剤を用いて酸化処理を行う際の処理温度や処理時間も、酸化剤の種類や濃度、分散染料の種類や染着量、還元剤の種類や濃度などに応じて適宜調整することができるが、一般的には、30〜70℃で、10〜90分間程度行うことが好ましい。
上記による酸化処理を行った皮革様シートは、そのまま乾燥して染色された皮革様シートにする。またソーピング処理を行うことによって皮革様シートの染色堅牢度が一層向上する。
ソーピング処理に当たっては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤や、布帛のソーピング処理に一般的に使用されている還元洗浄剤などのいずれもが使用でき、特に制限されない。ソーピング処理の条件は、従来から布帛のソーピング処理で採用されている処理条件が採用でき特に制限されないが、ソーピング処理浴の温度を40〜100℃、特に60〜95℃にして皮革様シートに付着している余分な染料を目標とする程度まで除去することが好ましい。
上記した酸化処理の後、またはソーピング処理の後に、ブラッシング処理を行うことが、皮革様シートの表面に付着している余分な染料を完全に除去し易い点で好ましい。ブラッシング処理は、湿潤状態で行うことが、染料の除去効率や整毛性などの点からより好ましい。また、ブラッシング処理に当たっては、砥粒の付着したブラシロールを用いて、液中で行うことが染料の除去効率の点から好ましい。
予め起毛処理して片面または両面に立毛を形成した皮革様シートを用いて上記した一連の処理を行うことによって、ポリエステル系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなり、片面または両面にポリエステル系極細繊維から主としてなる、目的とする染色された立毛皮革様シートが製造される。
また、起毛処理を施してない皮革様シートを用いて上記した一連の処理を行った場合は、ポリエステル系繊維を主体とする繊維集合体およびその内部に含有された弾性重合体からなる、立毛を持たない染色された皮革様シートが製造されるので、その皮革様シートに対して上記した起毛処理を施すことによって、目的とする染色された立毛皮革様シートを製造することができる。
本発明の方法により得られる立毛皮革様シートは、安定した発色性、斑のない均一な色相、高い染色堅牢度などの優れた特性を活かして、
衣料用、手袋用、靴用、インテリア用、車両用内装材などのような、高レベルの染色堅牢度が要求される用途に表皮材や裏材などとして好適に用いることができる。
実施例
以下に本発明について実施例等により具体的に説明するが、本発明は以下の例に何ら限定されるものではない。なお、以下の例中、還元洗浄処理時の雰囲気中での酸素の体積含有率は次のようにして測定した。
(1)還元洗浄処理時の雰囲気中での酸素の体積含有率:還元洗浄機内(染色機と同じ機械で還元洗浄処理を行うことから、以下染色機内と称することもある。)の雰囲気中に、酸素濃度計(新コスモス電機株式会社製「XO−326AL」)のセンサー部を挿入して測定した。挿入口の大きさは、染色機内の雰囲気中への大気の流入が極力発生しないようにするためにセンサー部と等しくし、測定時はグロメットシールを行った。
また、以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートの染色均一性、洗濯堅牢度、マイグレーションおよび染色摩擦堅牢度を次のようにして行った。
(1)染色均一性:
以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートの表面を目視により観察して、下記の評価基準に従って評価した。
[染色均一性の評価基準]
◎:立毛皮革様シートの表面をなすポリエステル極細繊維製の立毛が均一に且つ濃色に染色されていて、色斑がなく、高級感のある色調を有しており、発色性が非常に良好である。
○:立毛皮革様シートの表面をなすポリエステル極細繊維製の立毛がほぼ均一に且つ染色されていて、色斑がなく、ほぼ均一な色調を有しており、普通の発色性である。
△:立毛皮革様シートの表面をなすポリエステル極細繊維製の立毛の染色が不十分であるか又はやや不均一に染色されており、発色性がやや悪い。
×:立毛皮革様シートの表面をなすポリエステル極細繊維製の立毛が殆ど染色されておらず、極めて淡い色であり、高級感の全くない、不良な色調である。
(2)洗濯堅牢度
以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートの洗濯堅牢度(変退色性と汚染性)を、JIS L−0844−1973 A−1に従って評価した。
(3)マイグレーション
JIS L−0849−1996に従って評価した。
汚染布は JIS L−0803−1998に規定されている多交織布をもちいて評価した。
(4)染色摩擦堅牢度:
以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度(乾燥時/湿潤時)を、JIS L−0849−1971に従って評価した。
(5)ドライクリーニング
以下の例で得られた染色された立毛皮革様シートの洗濯堅牢度(変退色性と汚染性)を、JIS L−0860−1996 A法に従って評価した。
島成分が極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート60部、海成分がMFR=40の直鎖状低密度ポリエチレン40部の海島型複合繊維(島数20、繊度4.0デシテックス、繊維長51mm、捲縮数12山/inch)を使用して厚み1.3mm、目付530g/mのニードルパンチ処理をおこない不織布を作成した。この不織布にポリエーテル系ポリウレタンの15%ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す。)溶液を固形分で立毛皮革様シートの20質量%となるように含浸し、DMF水溶液により湿式凝固し、水洗した後85℃トルエンにより海成分のポリエチレンを抽出除去し、目付480g/m、厚み1.0mm、ポリエステル極細繊維の繊度が0.024デシテックスの皮革様シート基体を得た。
得られた基体の片面を180番のサンドペーパーによりバフィングし、厚みを0.8mmとした後、反対側の面にDMF30部とアセトン70部の割合で混合した溶剤を200メッシュのグラビアロールを用いて8g/m塗布した後乾燥し、グラビア面を240番のサンドペーパーで2回および400番のサンドペーパーで2回順次バフィングし、染色前の立毛皮革様シートを得た。
次にこの立毛皮革様シートをサーキュラー液流染色機(株式会社日阪製作所製「サーキュラー・ラピッド染色機 CUT−RA−2L」)に、所定量の水を投入し、そこに得られた立毛皮革様シートを投入し(浴比=1:30)、水温を90℃に昇温した後、同温度で30分間にわたって、180m/分の移動速度(回転リール速度)で立毛皮革様シートを移動させて、立毛皮革様シートを水に十分に馴染ませた後、水温を40℃以下に冷却して排水した。
浴比1:15で、下記分散染料の組成および助剤組成にて135℃、60分間染色を行った。
染料:
Harmony Light Blue GN (北陸カラー株式会社製) 0.17%owf
Harmony Light Blue BHL(北陸カラー株式会社製) 0.46%owf
Harmony Light Red RHL(北陸カラー株式会社製) 0.58%owf
Harmony Light Yellow MS6(北陸カラー株式会社製) 1.15%owf
均染剤:KP レベラー AUL(芳香族スルホン酸塩誘導体、日本化薬株式会社製)
2g/L
pH調整剤:ニューバッファーK(ミテジマ化学株式会社製) 1.8g/L
金属イオン封鎖剤:スカルナーNT(高松油脂株式会社製) 1.0g/L
染色を行った後に降温して、その後水洗を行った。水洗を行った後に浴比1:20になるように水を挿入したあと染色機を密閉した状態で、窒素発生装置を用いて染色機内の圧力が304kPa)になるまで窒素ガスを導入し、その後窒素ガスの導入を止めて染色機内の空気と窒素ガスの混合気体を排気し、この処理を更に3回繰り返した。この時の染色機内の気体(雰囲気)中での酸素の体積含有率を上記した方法で測定したところ、0.6%であり、実質的に酸素を殆ど含まない雰囲気になっていた。ついで次の還元剤を投入した。
水酸化ナトリュウム 6g/L
二酸化チオ尿素 3g/L
H867(一方社油脂工業株式会社製、キレート剤) 1g/L
その後に昇温速度を1℃/1分にて70℃まで温度を上げて30分間洗浄し、その後降温して水洗を行ったあとの上記還元洗浄方法を2回繰り返し行ったあと水洗を行った。
そのあとで下記条件で酸化処理を行った
過酸化水素 3g/L
炭酸ナトリュウム 3g/L
処理条件:70℃×20分
得られた染色された立毛皮革様シートは、表面のポリエステル極細繊維製の立毛と、立毛間に見えるポリウレタンとがバランスよく且つ均一に染色された優美なスエード調の外観を有していた。この染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度、マイグレーション、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度を評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
実施例1のサーキュラー染色機でグレーに染色され水洗された立毛皮革様シートを実施例1と同様に窒素でシールしてアルカリ物質と還元剤の濃度を次の条件で行う他は実施例1と同じ条件で2回繰り返し、酸化、水洗を行い乾燥してグレー色の立毛皮革様シートが得られた。
水酸化ナトリュウム 2g/L
二酸化チオ尿素 1g/L
H867(一方社油脂工業株式会社製、キレート剤) 1g/L
該立毛皮革様シートは、表面のポリエステル極細繊維製が均一に色に染色された優美なスエード調の外観を有していた。この染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度、マイグレーション、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度を評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
実施例1と同じ方法で目付600g/mのニードルパンチ処理をおこない不織布を90℃の熱水中で縦 22%×横26%を収縮させたあと乾燥した。その後ポリウレタンエマルジョン樹脂(Vondic1310 大日本インキ化学工業株式会社製 DMFに不溶性)の5%溶液を固形分で立毛皮革様シートの3.1質量%となるように含浸して搾液率60%にしてその後150℃にて乾燥を行った。該ポリウレタンエマルジョンが不織布表面付近にマーグレーションして表面付近に偏在し、フィルム化した不織布が得られた。この不織布にポリエーテル系ポリウレタンの15%DMF溶液を固形分で立毛皮革様シートの20質量%となるように含浸し、DMF水溶液により湿式凝固し、水洗した後85℃トルエンにより海成分のポリエチレンを抽出除去すると、目付675g/m、厚み1.5mm、密度0.45g/cmのポリエステル極細繊維の繊度が0.024デシテックスの皮革様シート基体を得た。
得られた基体を厚み方向にスライスしてスライスした面を180番のサンドペーパーによりバフィングし、厚みを0.6mmとした後、反対側の面にDMF30部とアセトン70部の割合で混合した溶剤を200メッシュのグラビアロールを用いて8g/m塗布した後乾燥し、グラビア面を240番のサンドペーパーで2回および400番のサンドペーパーで2回順次バフィングし、染色前の立毛皮革様シートを得た。得られた立毛皮革様シートの立毛面側にポリウレタンエマルジョン樹脂が偏在したものであった。このスエード調の生機を実施例1と同じ方法で染料種類は次の条件で染色を行った。
染料:
Dianix Black HLA (ダイスター製) 15.0%owf
Dianix Red HLA (ダイスター製) 4.5%owf
Dianix Yellow HLA (ダイスター製) 6.0%owf
均染剤:KP レベラー AUL(芳香族スルホン酸塩誘導体、日本化薬株式会社製)
1.0g/l
pH調整剤:ニューバッファーK(ミテジマ化学株式会社製) 1.8g/L
金属イオン封鎖剤:スカルナーNT(高松油脂株式会社製) 1.0g/L
行った。
続いて実施例1と同じ方法で還元洗浄および水洗、酸化処理を行って乾燥した。得られた染色された立毛皮革様シートは、表面のポリエステル極細繊維製が均一に黒色に染色された優美なスエード調の外観を有していた。この染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度、マイグレーション、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度を評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
イソフタル酸10モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(融点234℃)を島成分とし、エチレン単位10モル%含有し、ケン化度98.4モル%、融点210℃のポリビニルアルコール共重合物(株式会社クラレ製エクセバール)を海成分とし、質量比を海/島=40/60とした12島の海島繊維を複合紡糸した後、延伸することで単糸繊度6デシテックスの海島繊維を得た。この繊維を捲縮処理した後51mmにカットし、カード処理することで短繊維ウエブを作製した。
次に84デシテックス/36fの仮撚り加工したポリエステル製の糸に600T/mの追加燃糸加工をした後、撚り密度82本/76本/インチで織り加工を行い、目付け55g/mの平織物を得た。
上記ウエブと平織物を積層した後、1200パンチ/cmの条件でニードル処理し、200℃で乾熱収縮処理を行ったところ、目付け580g/m、見掛密度0.350g/cm厚み1.67mmの繊維絡合体を得た。
次にポリカーボネート系ポリウレタン水エマルジョン(日華化学株式会社製、エバファノール、APC−28)に水を添加して濃度10%である弾性重合体水分散液を得た。この弾性重合体の水分散液の感熱ゲル化温度は60℃であった。
次に弾性重合体液を固形分で(極細繊維化された繊維絡合体+織編物)/弾性重合体=80/20の質量比となるように含浸した。弾性重合体水分散液を含浸後、最大エネルギー波長2.6μmhの赤外線を97Vで60秒間照射し、繊維絡合体表面温度を70℃まで上昇させた。また赤外線照射後の水分率は30%であった。その後155℃の熱風乾燥機で加熱乾燥し、水分を完全に加熱乾燥し、水分を完全に蒸発させると共に弾性重合体をキュアリングし、繊維絡合体に固着した.その後90℃の熱水でポリビニルアルコール共重合物を抽出除去して乾燥した。その後スクリムの挿入の反対面を320番のサンドペーパーを用いて起毛処理すると、表面が約0.2デシテックスの極細繊維の立毛で覆われ、裏面側にスクリムが挿入されている未染色の人工皮革様シートが得られた。
次にこの立毛皮革様シートをサーキュラー液流染色機(株式会社日阪製作所製「サーキュラー・ラピッド染色機 CUT−RA−2L」)に、所定量の水を投入し、そこに上記立毛皮革様シートを投入し(浴比=1:30)、水温を90℃に昇温した後、同温度で30分間にわたって、180m/分の移動速度(回転リール速度)で立毛皮革様シートを移動させて、立毛皮革様シートを水に十分に馴染ませた後、水温を40℃以下に冷却して排水した。
浴比1:15で、下記分散染料の組成および助剤組成にて135℃、60分間染色を行った。
染料:
Dianix Black HLA (ダイスター製) 15.0%owf
Dianix Red HLA (ダイスター製) 4.5%owf
Dianix Yellow HLA (ダイスター製) 6.0%owf
均染剤:KP レベラー AUL(芳香族スルホン酸塩誘導体、日本化薬株式会社製)
1.0g/l
pH調整剤:ニューバッファーK(ミテジマ化学株式会社製) 1.8g/L
金属イオン封鎖剤:スカルナーNT(高松油脂株式会社製) 1.0g/L
染色を行った後に降温して、その後水洗を行った。水洗を行った後に浴比1:20になるように水を挿入した後、染色機を密閉した状態で、窒素発生装置を用いて染色機内の圧力が304kPa)になるまで窒素ガスを導入し、その後窒素ガスの導入を止めて染色機内の空気と窒素ガスの混合気体を排気し、この処理を更に3回繰り返した。この時の染色機内の気体(雰囲気)中での酸素の体積含有率を上記した方法で測定したところ、0.6%であり、実質的に酸素を殆ど含まない雰囲気になっていた。
ついで次の還元剤を投入した。
水酸化ナトリュウム 2g/L
二酸化チオ尿素 1g/L
H867(一方社油脂工業株式会社製、キレート剤) 1g/L
その後に昇温速度を1℃/1分にて70℃まで温度を上げて30分間洗浄し、その後降温して水洗を行ったあとの上記還元洗浄方法を2回繰り返しおこなったあと水洗を行った。
そのあとで下記条件で酸化処理を行った
過酸化水素 3g/L
炭酸ナトリュウム 3g/L
処理条件:70℃×20分
得られた染色された立毛皮革様シートは、表面のポリエステル極細繊維製の立毛と、立毛間に見えるポリウレタンとがバランスよく且つ均一に染色された優美なスエード調の外観を有していた。この染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度、マイグレーション、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度を評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
比較例1
実施例1において、染色後の還元洗浄で、窒素シールを行わずに行った。得られた立毛皮革様シートは表面全体がほぼグレーに染色されていたが、詳細に観察すると、表面のポリエステル極細繊維製の立毛の染色に対し、うす黄緑色に染色されたポリウレタンが立毛繊維の間から見えて、色調の互いに異なる緑色が混在した状態になっており、色相の均一性に欠け、優美さのないものであった。この染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度、マイグレーション、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度を評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
比較例2
実施例2において、染色後の還元洗浄で、窒素シールを行わずに行った。得られた立毛皮革様シートは表面全体が鮮明さにかけたグレーに染色されていたが、詳細に観察すると、表面のポリエステル極細繊維立毛鮮明なグレーに染色に対し、ポリウレタン側は濃グレーに染色されたポリウレタンが立毛繊維の間から見えて、表面外観の色調が霜降り調なっており、色相の均一性に欠け、優美さのないものであった。この染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度、マイグレーション、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度を評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
比較例3
実施例3において、染色後の還元洗浄で、実施例3と同様の窒素シールを行わずに行った結果。表面全体が黒色に染色されていて、染色性は均一であったが色はやや鮮明さにかけるものであった。この染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度、マイグレーション、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度を評価したところ、下記の表1に示すとおり汗堅牢度の低い物であった。
比較例4
実施例4において、染色後の還元洗浄で、実施例4と同様の窒素シールを行わずに行った結果。表面全体が黒色に染色されていて、染色性は均一であったが色はやや鮮明さにかけるものであった。またこの染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度、マイグレーション、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度を評価したところ、下記の表1に示すとおり汗堅牢度の低い物であった。
比較例―5
実施例4において、染色後の還元洗浄で、実施例4と同様の窒素シールを行わず次の条件で浴温度を55℃で30分還元洗浄を2回繰り返し行った。
水酸化ナトリュウム 6g/L
二酸化チオ尿素 3g/L
H867(一方社油脂工業株式会社製、キレート剤) 1g/L
それ以外は実施例4と同じ方法で行った結果、得られた立毛皮革様シートは表面全体が黒色に染色されていて、染色性は均一であったが色はやや鮮明さにかけるものであった。また下記の表1に見るように。還元洗浄処理温度を60℃よりも低い、55℃の温度にして立毛皮革様シートの還元洗浄処理を行っていることによって、表面にあるポリエステル極細繊維からなる立毛よりポリウレタンが濃色に染色されていて立毛繊維との色の差が大きく、表面の染色安定性に劣るものであった。また、この染色された立毛皮革様シートの染色摩擦堅牢度、マイグレーション、洗濯堅牢度およびドライクリーニング堅牢度を評価したところ、下記表1に示すとおり染色堅牢度の悪いものであった。
Figure 0004805184
表1の結果にみるように、比較例1〜4では、立毛皮革様シートの還元洗浄処理を、酸素を多く含む雰囲気下に行っていることにより、還元剤の分解が早く還元洗浄効果が少なくてポリウレタンに染着された染料の除去効果が少なくてポリウレタン側が濃色に染色されていて霜降り調にされていたり、また染色堅牢度が低く、商品価値が極めて低い。

Claims (8)

  1. 単繊度が0.5デシテックス以下のポリエステル系極細繊維からなる不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなる皮革様シートの少なくとも片面を起毛処理する前または後に該皮革様シートを、染色機内で分散染料を用いて染色し、そして還元洗浄処理を行い、その後に酸化処理を行うことにより該皮革様シートを染色する方法において、該還元洗浄処理が下記1)〜4)を共に満足することを特徴とする染色された立毛皮革様シートの製造方法。
    1)染色処理と同一の染色機内で行うこと、
    2)アルカリ性物質、還元剤および界面活性剤を含有する還元洗浄液を用いること、
    3)酸素の体積含有率が5%未満の雰囲気下で行うこと、
    4)還元洗浄液温度を60℃以上で行うこと、
  2. 弾性重合体がポリウレタンである請求項1に記載の立毛皮革様シートの製造方法。
  3. 弾性重合体の含有率が立毛皮革様シートの5質量%以上である請求項1または2に記載の立毛皮革様シートの製造方法。
  4. 弾性重合体が、ジメチルホルムアミドに可溶なポリウレタンとジメチルホルムアミドに不溶なポリウレタンからなり、該ジメチルホルムアミドに不溶なポリウレタンが立毛面側に偏在している請求項1〜3いずれか1項に記載の立毛皮革様シートの製造方法。
  5. 酸化処理後にソーピング処理を行う請求項1〜4いずれか1項に記載の立毛皮革様シートの製造方法。
  6. 酸化処理後またはソーピング処理後に、ブラッシング処理を行う請求項1〜5いずれか1項に記載の立毛皮革様シートの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の立毛皮革様シートの製造方法により得られる染色された立毛皮革様シート。
  8. 請求項7に記載の立毛皮革様シートを用いた衣料、インテリア材、車両用内装材、靴または鞄。
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