JP2004133034A - 反射防止膜、反射防止フィルム、および画像表示装置 - Google Patents
反射防止膜、反射防止フィルム、および画像表示装置 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】主鎖がパーフルオロエチレニル成分からなる繰り返し単位で構成され、主鎖片末端にシリル基を結合して成るカップリング化合物と、シランカップリング剤の少なくとも1種とを含有する皮膜形成用組成物をオーバーコート層として低屈折率層の上に積層したことを特徴とする反射防止膜、及び該反射防止膜を支持体上に配した反射防止フィルム並びにそれらを用いた画像表示装置。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反射防止膜ならびにそれを用いた反射防止フィルムおよび画像表示装置(特に液晶表示装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜は一般に、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するように光学製品などの表面に設置され、特に良好な視認性を求められる陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、その表示面の最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止膜は、通常の多くの例では、高屈折率層の上に適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低屈折率層素材としては反射防止性能の観点からできる限り屈折率の低い素材が望まれ、同時にディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性及び防汚性が要求される。また低い反射率性能を発現するために膜厚の均一性も重要であり、塗布型材料においては、塗布性、レベリング性も重要なファクターになる。
【0004】
厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、および下層への密着性を高めることが重要である。
低屈折率性を保ちながら耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、フッ素の導入、シリコーンの導入等の手段が行なわれている。これらの手段は表面張力を下げるために、レベリング性付与の効果も期待できる。低屈折率層に滑り性の含フッ素ポリマーを用いる場合には、塗布溶剤可溶化のために炭化水素系共重合成分を50%程度導入したフッ素系材料単独では十分な滑り性が得られず、シリコーン化合物と組み合わせることが従来より行なわれてきたが、それだけでは必ずしも十分ではない。
【0005】
一方、反射防止膜は、擦れ等による傷防止、手垢、指紋、汗等の付着しない耐防汚性、水分付着しにくい等の性能が求められる。基材表面を汚れから保護し、耐傷性を向上させるために、含フッ素化合物や含シリコーン化合物等を含む撥水性及び/又は撥油性の化合物を表面側に設ける対策が開示されている。
例えば、気相法による無機物積層の反射防止膜において、例えば、特許文献1に記載のケイ素酸化物層をCVD法で設けるもの、特許文献2及び特許文献3に記載のフッ素系シラン化合物やフラクタル構造の金属酸化物の皮膜を設けるもの、特許文献4及び特許文献5に記載のフッ素含有のシラン化合物や高分子の皮膜を設けたもの等が提案されている。
【0006】
また、塗布型反射防止膜の最上層として、例えば、特許文献6に記載のパーフルオロポリエーテル含有のシラン化合物から形成された皮膜、特許文献7及び特許文献8に記載の側鎖にポリオルガノシロキサンを含有の含フッ素ポリマーや、特許文献9に記載の側鎖にパーフルオロポリエーテル含有の共重合体から形成される保護膜等が開示されている。
【0007】
さらに、低屈折率用硬化組成物として、フッ素含有シランカップリング剤を用いることが特許文献10〜13等に提案されている。これらの硬化膜は、フッ素含有炭化水素基が短いために長期間の使用で防汚性低下の惧れがある。
【0008】
更には、膜表面の防汚性が長期間に渡って保持可能となる、ポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物から硬化される膜が、特許文献14〜16等に開示されている。然し、これらの化合物はフッ素含有長鎖基ではあるものの、親水性のエーテル結合基を含有するために撥水・撥油性の効果が損なわれ、防汚性効果に限界を生じる。
近年、上記の画像表示装置は、画面の大版化が進むと共に、携帯電話等のモバイル表示装置の普及が盛んとなっている。これら表示装置の保護フルムの最上層は、手垢、指紋、汗、化粧等の付着汚れに対して容易に取り除きができること、クリーニングの繰り返しで傷や剥がれを生じないこと等への要望が一層求められている。
【0009】
【特許文献1】特開11−129382号公報
【特許文献2】特開平1−258405号公報
【特許文献3】特開2002−144369号公報
【特許文献4】特開2001−281412号公報
【特許文献5】同2002−82205号公報
【特許文献6】特開平10−33321号公報
【特許文献7】特開2000−75105号公報
【特許文献8】特開2001−100003号公報
【特許文献9】例えば特開2000−284102号公報
【特許文献10】特開平11−64603号公報
【特許文献11】特開2000−121803号公報
【特許文献12】特開2000−329903号公報
【特許文献13】特開2002−131507号公報
【特許文献14】特開2000−117902号公報
【特許文献15】特開2001−48590号公報
【特許文献16】特開2002−53804号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、第1に、低屈折率層の表面が汚れから保護され、耐擦傷性と防汚性に優れた反射防止膜を提供することであり、第2に大量生産に適した塗布型の反射防止膜を提供することであり、第3に耐久性、耐候性に優れた反射防止膜を提供することであり、第4に反射が防止されたフィルムまたは画像表示装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下に示す(1)〜(6)の構成により達成されることが見出された。
(1)透明支持体および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されている反射防止膜であって、該低屈折率層の上に少なくとも下記一般式(I)で示される主鎖が無置換又は含フッ素置換基を有してもよいパーフルオロエチレニル基を繰り返し単位として構成され、かつ該主鎖の末端にシリル基を結合して成るカップリング化合物と、シランカップリング剤の少なくとも1種とを含有するオーバーコート層がさらに積層されていることを特徴とする反射防止膜。
一般式(I)
【0012】
【化2】
【0013】
一般式(I)において、Rf 0は、フッ素原子、パーフルオロアルキル基、又は「O−Rf 1」基を表わす。ここで、Rf 1は含フッ素脂肪族基を表わす。Xは、主鎖とSi原子を連結する2価の有機残基を表わす。R1は、脂肪族基又はCOR10基を表わす。但し、R10は、炭化水素基を表わす。R2は、炭化水素基を表わす。aは、0又は1を表わす。また、括弧は、パーフルオロエチレニル基の繰り返し単位部分を表し、繰り返し単位部分の質量平均分子量は2万以下である。
【0014】
(2)前記低屈折率層が平均粒径5〜50nmのシリカ微粒子を含有することを特徴とする上記(1)項記載の反射防止膜。
(3)前記低屈折率層と該オーバーコート層の間にポリマー層が積層されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の反射防止膜。
(4)透明支持体の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層が、透明支持体と低屈折率層との間に設けられている上記(1)〜(3)のいずれかに記載の反射防止膜。
【0015】
(5)透明支持体がプラスチックフィルムであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の反射防止膜を配置したことを特徴とする画像表示装置。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の反射防止膜に関して説明する。
本発明の反射防止膜は、透明支持体、および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されており、この「隣接する層」は透明支持体であってもよい。また、本発明の反射防止膜は、低屈折率層のみからなる単層構成でもよく、また、中・高低屈折率層、ハードコート層などと積層した多層構成であってもよい。この反射防止膜は、前もって反射防止フィルムを形成してから画像表示装置に配置してもよく、また、画像表示装置などに直接(その場で)形成し配置してもよい。
【0017】
[反射防止膜の層構成]
本発明の反射防止膜の基本的な構成を図面を引用しながら説明する。
図1は、反射防止膜の主な層構成を示す断面模式図である。図1の(a)に示す態様は、透明支持体(1)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)と低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0018】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率
【0019】
図1の(b)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(5)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)と低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0020】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率
【0021】
図1の(c)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(5)、高屈折率層(6)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)、高屈折率層(6)および低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0022】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<高屈折率層の屈折率
【0023】
図1の(c)のように、高屈折率層6と低屈折率層2とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、高屈折率層が下記式(i)、低屈折率層が下記式(ii)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0024】
【数1】
【0025】
式(i)中、mは正の整数(一般に1、2または3)であり、n1は高屈折率層の屈折率であり、そして、d1は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0026】
【数2】
【0027】
式(ii)中、nは正の奇数(一般に1)であり、n2は低屈折率層の屈折率であり、そして、d2は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0028】
図1の(d)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(5)、中屈折率層(7)、高屈折率層(6)、低屈折率層(2)、ポリマー層(3)、そしてオーバーコート層(4)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)、中屈折率層(7)、高屈折率層(6)および低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。
【0029】
低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率
【0030】
図1の(d)のように、中屈折率層7、高屈折率層6と低屈折率層2とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記式(iii)、高屈折率層が下記式(iv)、低屈折率層が下記式(v)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0031】
【数3】
【0032】
式(iii)中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の層厚(nm)である。
【0033】
【数4】
【0034】
式(iv)中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率層の屈折率であり、そして、d4は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0035】
【数5】
【0036】
式(v)中、kは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率層の屈折率であり、そして、d5は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0037】
図2は、本発明の好ましい態様における低屈折率層とポリマー層、オーバーコート層を有する反射防止膜の断面模式図である。図2に示す低屈折率層(2)は、微粒子(21)およびバインダー(22)を含む。そして、微粒子(21)間に空隙(23)が形成されている。空隙は、微粒子の内部に存在していてもよい。この低屈折率層の上に、ポリマー層(3)が設けられていることが好ましい。このポリマー層は、粒径が10nm以上のポリマーの微粒子を用いる、分子量が20000以上のポリマーを用いる等の手段により、低屈折率層の空隙を維持したまま層を形成していることが好ましい。このポリマー層(3)により、低屈折率層(2)の空隙(23)の開口部が塞がれるため、ポリマー層(3)の形成後に上にオーバーコート層(4)を設けた時、防汚層成分が空隙に拡散せず、空隙が維持されていると推定される。
【0038】
また、式(i)〜(v)中のλは光線の波長であり、可視領域の反射防止層として用いる場合のλは380〜680nmの範囲の値であり、また、可視光線以外にも可視領域近傍の紫外線、赤外線に対しても有効である。ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは層相互の相対的な屈折率の高低をいう。例えば中屈折率層は高屈折率層に添加する高屈折率無機微粒子の含率を変えるなどの方法で作製される。
【0039】
[オーバーコート層]
本発明の反射防止膜は、低屈折率層の上に少なくとも一般式(I)で示される主鎖の末端にシリル基を結合して成るカップリング化合物と、シランカップリング剤とを含有する皮膜形成用組成物を塗設、硬化させることにより積層されたマトリックス層をオーバーコート層として有していることを特徴としている。以下オーバーコート層(OC層とも呼ぶ)の層構成化合物について、まず説明する。
【0040】
本発明に係る一般式(I)で示される化合物は、主鎖が無置換又は含フッ素置換基を有してもよいパーフルオロエチレニル基を繰り返し単位として構成されており、該主鎖の末端にシリル基を結合して成る一官能性カップリング化合物である。以下、これをFMと略記したり、あるいは一官能性シランカップリング化合物又は一官能性シランカップリングマクロモノマーと呼ぶこともある。
本発明に係る上記一官能性カップリング化合物(FM)の繰返し単位部分の質量平均分子量は、2×104以下が好ましい。より好ましくは、1×103〜1.5×104であり、更に好ましくは、2×103〜8×103である。この範囲において、併用するシランカップリング剤との縮合反応が十分に進行し、得られる膜の強度が充分となる。
一般式(I)においてRf 0は、フッ素原子、パーフルオロアルキル基、又は「O−Rf 1」基を表わす。ここで、Rf 1は含フッ素の脂肪族基を表わし、Xは、主鎖とSi原子を連結する2価の有機残基を表わす。また、R1は、脂肪族基又はCOR10基を表わす。但し、R10は、炭化水素基を表わす。R2は、炭化水素基を表わす。aは、0又は1を表わす。
【0041】
一般式(I)で示される一官能性カップリング化合物(FM)の繰り返し単位について説明する。
繰り返し単位中のRf 0は、フッ素原子、炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基又は−ORf 1基を表わす。
【0042】
Rf 0がパーフルオロアルキル基の場合、それに相当する単量体の重合反応性の観点から、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基がより好ましい。
【0043】
Rf 1は炭素数1〜22の含フッ素脂肪族基を表わし、炭素数1〜12の含フッ素脂肪族基が好ましい。具体的には、例えば、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基、−CH2F、−CHF2、−CH2CF3、−(CH2)2C2F5、−CH2CF2 CF2CFH2、−CH2(CF2)4H、−CH2(CF2)8CF3、−CH2CH2(CF2)4H等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF3)2、CH2CF(CF3) 2、CH(CH3)CF2CF3、CH(CH3)(CF2)5CF2H等)を有していても良く、また脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)を有していても良く、あるいは含フッ素脂肪族エーテル結合基(例えば−CH2OCH2CF2CF3、−CH2CH2OCH2C4F8H、−CH2CH2OCH2CH2C8F17、−CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H、−CF2CH2OCH2CF3、−(CF2) 2(CH2) 2OCH(CF3) 3等)であってもよい。
【0044】
本発明に係る一官能性シランカップリング化合物(FM)は、前記した一般式(I)の中に示される繰り返し単位(重合成分)の他に、これらの重合成分に相当する単量体と共重合可能な他の重合性単量体を含有してもよい。
例えば下記一般式(Ib)で示される繰り返し単位が挙げられる。
【0045】
【化3】
【0046】
一般式(Ib)中、d1、d2及びd3は、各々同じでも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、アルキル基(例えばメチル基,エチル基、プロピル基、ブチル基等)を表わす。
好ましいd1、d2及びd3としては、CF2=CF−、CF2=CH−、CFH=CF−、CH2=CF−、CH2=CH−、CH(CH3)=CH−、CH2=C(CH3)−等が挙げられる。
【0047】
U1は−(CH2)dCOO−、−(CH2) dOCO−、−O−、−SO2−、−CONHCOO−、−CONHCONH−、−CON(K1)−、−SO2N(K1)−、フェニレン基又は[C(d1)(d2)=C(d3)−]と−R3を直接結合する単結合を表わす(ここで、K1は水素原子又は炭素数1〜12の脂肪族基を示し、dは0又は1〜4の整数を示す)。
U1としては、−O−、フェニレン基、直接結合が好ましい。
【0048】
R3は、炭素数1〜22の置換されてもよい直鎖状もしくは分岐状の脂肪族基、置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基を表わす。
脂肪族基としては、置換されてもよい炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状アルキル基〔例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、2−フロロエチル基、トリフロロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシカルボニルエチル基、2−メトキシエチル基、3−ブロモプロピル基、2−メチルカルボニルエチル基、2,3−ジメトキシプロピル基、フッ化アルキル基{例えば−(CH2)hCiF2i+1基(但しhは1〜6の整数、iは1〜12の整数を表す)基、−(CH2)h−(CF2)j−R36基(但しjは0又は1〜12の整数、R36基は炭素数1〜12のアルキル基、−CF2H、−CFH2、−CF3を表す)、−CH(CF3)2、−CF2Cl、−CFCl2、−CFClH、−CF(CF3)OCiF2i+1、−OCiF2i+1、−C(CF3)2OCiF2i+1等}等〕、
【0049】
炭素数4〜18の置換されてもよいアルケニル基(例えば、2−メチル−1−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、4−メチル−2−ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、リノレニル基等)、炭素数7〜12の置換されてもよいアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、2−ナフチルエチル基、クロロベンジル基、フロロベンジル基、パーフルオロベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、ジメチルベンジル基、ジメトキシベンジル基等)、炭素数5〜8の置換されてもよい脂環式基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−シクロヘキシルエチル基、2−シクロペンチルエチル基、パーフロロヘキシル基、テトラフロオロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、メトキシシクロヘキシル基等)、炭素数6〜12の置換されてもよい芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、メトキシフェニル基、フロロフェニル基、クロロフェニル基、ジフロロフェニル基、パーフルオロフェニル基、シアノフェニル基、アセチルフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、アセトアミドフェニル基等)が挙げられる。
【0050】
R3は、脂肪族基が好ましく、さらにフッ素原子を含有した脂肪族基がとくに好ましい。
【0051】
以下に、一般式(I)における繰り返し単位の具体例を示す。しかし、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0052】
【化4】
【0053】
【化5】
【0054】
一般式(I)におけるXは、Si原子と重合体主鎖部分を連結する2価の有機残基を表わす。
好ましくは総原子数2〜22の連結基を表わし、より好ましくは総原子数4〜18である(ここでいう総原子数は、炭素原子、窒素原子又はケイ素原子に結合する水素原子を除く)。一般式(I)の中にXが介在することによって、一官能性シランカップリング化合物(FM)の反応性が良好となり、又得られたゾル−ゲル硬化膜の強度、防汚性が向上して好ましい。
【0055】
Xで表される連結基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合又は二重結合)、炭素原子−ヘテロ原子結合(ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、ヘテロ原子−ヘテロ原子結合等から構成される原子団の任意の組合せで構成される。例えば、原子団としては下記のものが挙げられる。
【0056】
【化6】
【0057】
上記において、r1、r2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、ハロゲン原子、臭素原子、ヨウ素原子)又は炭素数1〜6の置換されてもよいアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフロロメチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、クロロエチル基等)を表し、r3は、水素原子又は炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、クロロフェニル基、メトキシフェニル基、アセチルフェニル基、トリフロロフェニル基等)を表し、r4、r5は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜12の置換されてもよい炭化水素基(具体的には上記r3と同一の内容を表わす)を表わす。
【0058】
Xで表される連結基としては、さらに2価の脂環式基(脂環式構造の炭化水素環としては、例えばシクロへプタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、ビシクロペンタン環、トリシクロヘキサン環、ビシクロオクタン環、ビシクロノナン環、トリシクロデカン環、等)、2価のアリール環基(アリール環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環等)で示される基等の原子団の任意の組合せで構成されるものをも含む。
連結基Xの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
【化7】
【0060】
次に、一般式(I)中のシリル基[(R1O)3−a(R2)aSi−]について説明する。
(R1O)基は、アルコキシ基(R1が脂肪族基の場合)又はアシルアルコキシ基(R1が−COR10の場合)を表わし、加水分解してシラノール基[典型的には(HO)3−a−Si(R2)a−]となり縮重合反応が進行する。
【0061】
R1が脂肪族基の場合、炭素数1〜8の置換されてもよい直鎖もしくは分岐の脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、トリフロロエチル基、メトキシメチル基、ベンジル基、フェネチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等)が挙げられる。
R1が−COR10の場合のR10は炭素数1〜6の置換されてもよい直鎖もしくは分岐の脂肪族基(具体的には上記R1の脂肪族基と同義であり、具体例も同じものが挙げられる)、置換されてもよいフェニル基(例えばフェニル基、メトキシフェニル基、フロロフェニル基、トリル基、キシリル基、等)が挙げられる。
【0062】
その中でも、好ましい(R1O)基としては、(R1O)基の加水分解反応性及び脱離して副生したアルコール類もしくはカルボン酸類の塗膜での乾燥工程での乾燥性の点から炭素数1〜4のアルコキシ基あるいは炭素数1〜3のアシルオキシ基が挙げられる。
【0063】
R2は炭素数1〜12の脂肪族基又は炭素数6〜12のアリール基を表わす。これらの炭化水素基は、置換されていてもよい。具体的には、前記一般式(Ib)中のR3と同義のものが挙げられ、具体例も同じである。又、脂肪族基としては前記一般式(I)中のRf 1の含フッ素脂肪族基と同一の内容のものが挙げられる。
更には、R2の炭化水素基に置換される置換基として、重合性基が挙げられる。
重合性基としては、ラジカル重合性基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、クロトニルオキシ基、ビニルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、スチリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、等)、カチオン重合性基(例えばエポキシ基、オキセタニル基、ビニル基、ビニルオキシ基、2−プロペニルオキシ基等)が挙げられる。
重合性基を置換した本発明の一官能性シランカップリング化合物(FM)は、これらの化合物同士での共重合反応、あるいは後述する重合性基を含有するシランカップリング剤と共重合反応を行なう。これによって、形成される膜の強度が一層向上される。
【0064】
aは0又は1を表わす。
aが1の場合は、本発明に係る一般式(I)の化合物(FM)の反応性の点から(R1O)基中のR1の炭素数は1〜3のアルキル基が好ましい。
【0065】
本発明に係る一般式(I)の化合物(FM)は、従来公知の合成方法によって製造することができる。例えば、(i)アニオン重合によって得られるリビングポリマーの末端に種々の試薬を反応させて、一般式(I)の形のカップリング化合物にするイオン重合による方法、(ii)分子中に、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基等の反応性基を含有した重合開始剤及び/又は連鎖移動剤を用いて、ラジカル重合して得られる末端反応性基結合のオリゴマーと種々の試薬を反応させて、一般式(I)の形のシランカップリング化合物にするラジカル重合による方法等が挙げられる。
【0066】
具体的には、P.Dreyfuss & R.P.Quirk, Encycl.Polym.Sci.Eng., 7, 551(1987)、P.F.Rempp & E.Franta, Adv.Polym.Sci., 58, 1(1984)、V.Percec, Appl.Polym.Sci., 285, 95(1984)、R.Asami & M.Takari, Makvamol.Chem.Suppln.12, 163(1985)、P.Rempp.et al, Makvamol.Chem.Suppln.8, 3(1984)、川上雄資、化学工業、38, 56(1987)、山下雄也、高分子、31, 988(1982)、小林四郎、高分子、30,625(1981)、東村敏延、日本接着協会誌、18, 536(1982)、伊藤浩一、高分子加工、35, 262(1986)、東貫四郎、津田隆、機能材料、1987, No.10, 5等の総説及びそれに引例の文献・特許等に記載の方法に従って合成することができる。
【0067】
上記した分子中に特定の反応性基を含有した重合開始剤としては、例えば、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸クロライド)、2,2′−アゾビス(2−シアノプロパノール)、2,2′−アゾビス(2−シアノペンタノール)、2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオアミド〕、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオアミド}、2,2′−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオアミド}、2,2′−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕、2,2′−アゾビス〔2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼビン−2−イル)プロパン〕、2,2′−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕、2,2′−アゾビス〔2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラピリミジン−2−イル)プロパン〕、2,2′−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}、2,2′−アゾビス〔N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン〕、2,2′−アゾビス〔N−(4−アミノフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン〕等のアゾビス系化合物が挙げられる。
【0068】
又、分子中に特定の反応性基を含有した連鎖移動剤として、例えば該反応性基あるいは該反応性基に誘導しうる置換基を含有するメルカプト化合物(例えばチオグリコール酸、チオリンゴ酸、チオサリチル酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプト酪酸、N−(2−メルカプトプロピオニル)グリシン、2−メルカプトニコチン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)カルバモイル〕プロピオン酸、3−〔N−(2−メルカプトエチル)アミノ〕プロピオン酸、N−(3−メルカプトプロピオニル)アラニン、2−メルカプトエタンスルホン酸、3−メルカプトプロパンスルホン酸、4−メルカプトブタンスルホン酸、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−2−ブタノール、メルカプトフェノール、2−メルカプトエチルアミン、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−3−ピリジノール等)、あるいは上記反応性基又は置換基を含有するヨード化アルキル化合物(例えばヨード酢酸、ヨードプロピオン酸、2−ヨードエタノール、2−ヨードエタンスルホン酸、3−ヨードプロパンスルホン酸等)が挙げられる。好ましくはメルカプト化合物が挙げられる。
【0069】
他の方法としては、特定の官能基(例えば、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子等)、エポキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等)を含有するジチオカルバメート基を含有する化合物および/またはザンテート基を含有する化合物を開始剤として、光照射下に重合反応を行って合成することもできる。例えば、上記の大津等の文献、特開昭64−11号公報、特開昭64−26619号公報、東信行等 ”Polymer Preprints, Japan” 36(6), 1511(1987)、M.Niwa, N.Higashi et al,”J.Macromol.Sci.Chem.”, A24(5), 567(1987)等に記載の各々の合成方法に従って合成することができる。
【0070】
これらの連鎖移動剤あるいは重合開始剤は、各々一般式(I)の繰返し単位に相当する単量体100重量部に対して0.5〜20重量部を用いることが好ましく、より好ましくは1〜10重量部である。
【0071】
このようにして製造される重合体主鎖の片末端に選択的に結合した有機残基中に含有される特定の反応性基を利用して、シランカップリング基を導入することで容易に製造することができる。
又、シランカップリング基を置換したメルカプト化合物〔例えば、3−メルカプトプロピル(トリメトキシ)シラン、3−メルカプトプロピル(トリエトキシ)シラン、3−メルカプトプロピル−(メチル)(ジメチル)シラン、4−メルカプトブチル(トリエトキシ)シラン等〕を連鎖移動剤としてラジカル重合反応により製造することもできる。
【0072】
本発明で用いられるシランカップリング剤について説明する。
本発明のシランカップリング剤は、分子内に少なくとも1つの加水分解によりシラノールを与えることのできる官能基を有するオルガノシラン化合物を表し、本発明の組成物中では、加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり組成物中における結合剤としての働きをするものである。
本発明のシランカップリング剤は、前記の一官能性カップリング化合物(FM)と共縮合反応することが好ましい。
【0073】
具体的には、下記一般式(II)で示される化合物が挙げられる。
一般式(II)
(R11)4−bSi(Y) b
式(II)中、R11は、前記式(I)中のR1と同一の内容を表わす。Yは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、−OH、又はOR12を表わす。但し、OR12は、前記式(I)中のR12と同一の内容を表わす。bは、2、3又は4の整数を表わす。
bが4の場合は4官能オルガノシラン、3の場合は3官能オルガノシラン、2の場合は2官能オルガノシランとなる。
【0074】
4官能オルガノシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラーアセトキシシランなどを挙げることができる。
2又は3官能オルガノシランとしては、R11が脂肪族基、フッ素原子含有の脂肪族基又は重合性ビニル基等の重合性基を含有するものとして、例えば特開2000−275403号公報明細書中の段落番号[0016]〜[0025]、同2000−117902号公報明細書中の段落番号[0040]、同2002−131507号公報明細書中の段落番号[0039]〜[0045]等記載の化合物、エポキシ基含有の炭化水素基を含有するものとして、特開平6−226928号公報明細書中の段落番号[0014]等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
これらオルガノシラン化合物は、単独でも2種以上を併用しても良い。
上記の2または3官能性オルガノシランを用いる場合は、R11にフッ素原子を有する脂肪族基を少なくとも1個含有するオルガノシランが屈折率の観点から好ましい。2種以上の上記のオルガノシランを併用する場合、本発明に用いる組成物中における2官能オルガノシランの割合は、4官能オルガノシラン及び3官能オルガノシラン成分に対して0〜150重量%、好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。
【0076】
重合性基(ラジカル重合性ビニル基、カチオン重合性基(エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基等))を有する炭化水素基を含有するオルガノシランは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。2種以上の上記のビニル重合性オルガノシランを併用する場合、1重合性オルガノシランの本発明の組成物中における割合は、2重合性オルガノシラン及び3重合性オルガノシラン成分に対して0〜150重量%、好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。これらの重合性基含有オルガノシランは、組成物中で加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり組成物中における結合剤としての働きをすると同時に有機ポリマーによる網目構造を形成し、膜に柔軟性を付与する働きをするものとして好ましい。
【0077】
本発明では一般式(I)で表される含フッ素シランカップリング化合物(FM)の少なくとも一種、及び一般式(II)で表されるシラン化合物を必須成分として、加水分解・重縮合を行うことによって塗布液を作製する。
前記シラン化合物の加水分解重縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができる。溶媒としては有機溶媒が好ましく、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル)、炭化水素類(トルエン、キシレン等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)等を挙げることができ、2種類以上の溶媒を併用することもできる。
【0078】
加水分解縮合反応は、触媒存在下で行われることが好ましい。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸類、シュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの無機塩基類、トリエチルアミン、ピリジンなどの有機塩基類、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブトキシチタネートなどの金属アルコキシド類、β−ジケトン類或いはβ−ケトエステル類の金属キレート化合物類等が挙げられる。具体的には、例えば特開2000−275403号公報明細書中の段落番号[0071]〜[0083]記載の化合物等が挙げられる。
【0079】
ゾルゲル触媒化合物の組成物中の割合は、ゾル液の原料であるオルガノシランに対し、0.011〜50重量%、好ましくは0.1〜50重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。反応条件はオルガノシランの反応性により適宜調節されることが好ましい。
【0080】
一方、カルボン酸等の有機酸を触媒に用いてゾルゲル縮合を行なう場合には、アルコキシシランとの反応により生成するアルコールあるいは溶媒として添加するアルコールとの縮合反応(エステル化反応)によって系中で水を生成するため別途水を添加しなくても加水分解反応を行うことができる。
このような水を加えない系において、硬化時間と膜強度の点で有利な結果が得られており、本発明では特に水中25℃におけるpKaが4以下のカルボン酸を触媒として水を添加せずにゾル液を調整することが好ましい。好ましいカルボン酸触媒の具体例は、特開2000−275403号公報明細書中の段落番号[0058]〜[0060]記載の化合物が挙げられる。
【0081】
本発明に用いるOC層用組成物には、シランカップリング化合物が重合性基を含有する場合、これらの重合性基と共重合可能な重合性基含有モノマーを併用しても良い。これら重合性モノマーに特に制限はなく、通常のラジカル重合またはカチオン重合で共重合可能なものであれば、好ましく用いることができる。モノマー分子内に重合性基が1個の単官能モノマー、若しくは2個以上の多官能モノマーの何れでもよく、適宜選択して用いることができる。ラジカル重合性モノマーの具体例としては、例えば特開2000−275403号公報明細書中の段落番号[0052]〜[0065]記載の化合物等が挙げられる。又、カチオン重合性モノマーの具体例としては、例えば特開2000−47004号公報明細書中の段落番号[0085]〜[0087]記載の化合物等が挙げられる。
【0082】
重合開始剤
本発明に用いるOC層用組成物が、上記重合性化合物を含有する場合には、熱及び/又は光照射でラジカル又はカチオンを発生し、重合性不飽和基又はカチオン重合性基を含有する化合物の重合反応を開始、促進させる化合物を併用する。これらラジカル重合開始剤及びカチオン重合開始剤は、重合性化合物の重合性基との組み合わせで、適宜、従来公知の化合物(例えば、「最新UV硬化技術」PP.60〜62((株)技術情報協会刊、1991年等)を用いることができる。
【0083】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、オニウム塩化合物(上記の「最新UV硬化技術」記載等)、有機ハロゲン化化合物(M.P.Hutt” Journal of Heterocyclic Chemistry” 1 (No3), (1970))等に記載等)、カルボニル化合物(「特開平8−134404号明細書の段落[0015]〜[0016]記載等」、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、メタロセン化合物(特開平5−83588号公報、同1−304453号公報記載等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物(特公平6−29285号記載等)、有機ホウ酸化合物(Kunz, Martin ”Rad Tech ’98, Proceeding April 19−22, 1998, Chicago” 等に記載等)、ジスルホン化合物(特開昭61−166544号公報記載等)が挙げられる。
【0084】
カチオン重合開始剤としては、例えば、オニウム塩化合物、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。これらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる。他のカチオン重合開始剤として、有機金属/有機ハロゲン化物(特開平2−161445号公報記載等)、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤(米国特許第4,181,531号公報、特開昭60−198538号公報記載等)、イミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物(特開平2−245756号公報記載等)等が挙げられる。
【0085】
充填剤
本発明に用いるOC層用組成物には、得られる塗膜の硬度向上を目的としてコロイダル無機粒子とくにコロイド状シリカを添加することも可能である。コロイダル無機粒子としては、水分散コロイド、メタノールもしくはイソプロピルアルコールなどの有機溶媒分散コロイドなどの粒子分散物を挙げることができる。コロイダル無機粒子は、粒子径は5〜50nmのものが好ましく用いられるが、更に好ましくは、5〜30nmのものであり、特に好ましくは、粒子径8〜20nmのものである。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、フッ化マグネシウム等が挙げられる。好ましくはコロイダルシリカである。このようなコロイダルシリカは、例えばI.M.Thomas著、Appl. Opt. 25, 1481(1986)等に記載の手法に順じて、テトラアルコキシシランを原料としてアンモニア水等の触媒を用いて加水分解・重縮合することにより調整することができる。また市販のものでは、日産化学工業(株)製スノーテックスIPA−ST、同MEK−ST、日本エアロジル(株)製AEROSIL300、同AEROSIL130、同AEROSIL50(いずれも商品名)等を利用することもできる。
【0086】
コロイダル無機粒子の添加量は、一般にOC層塗膜硬化後の全固形分の5〜95質量%の範囲であり、好ましくは10〜70質量%、特に好ましくは、20〜60質量%の場合である。
【0087】
本発明の反射防止膜のOC層用組成物には、得られる塗膜の着色、凹凸性の付与、下地への紫外線透過防止、防蝕性の付与、耐熱性、膜の屈折率などの諸特性を発現若しくは調整させるために、上記コロイド状シリカの他に充填材を添加・分散させることも可能である。この充填材としては、例えば有機顔料、無機顔料などの非水溶性の顔料または顔料以外の粒子状、繊維状もしくは鱗片状の金属および合金ならびにこれらのフッ化物、酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などが挙げられる。この充填材の無機化合物としては、例えば特開平11−106704号公報明細書中の段落番号[0056]、特開2001−188104号公報等記載の無機粒子等が挙げられる。
樹脂粒子としては、特開平10−142403公報明細書中の段落番号[0013]〜[0018]、同11−23803号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0037]等のフッ素原子含有樹脂等が挙げられる。
これらの充填材の平均粒径または平均長さは、通常、5〜500nm、好ましくは10〜200nmである。充填材を用いる場合の組成物中の割合は、組成物の全固形分100重量部に対し、10〜300重量部程度である。
【0088】
その他の添加物
本発明に用いる上記OC層用組成物には、各種界面活性剤、前記以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を添加することもできる。
【0089】
本発明に用いるOC層塗布用のゾル液を調製するに際しては、前記の各成分を含有する組成物に水を添加して加水分解する方法或いは前記のカルボン酸類を用いる方法等の如何なる方法でもよい。この時必要に応じて加水分解を促進するために前記の触媒を用いることが好ましい。例えば下記▲1▼〜▲3▼の調製方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
▲1▼シリル基含有成分(必要に応じて、重合性モノマー及び重合開始剤)と溶媒及び加水分解触媒からなる溶液に、所定量の水(若しくはカルボン酸)を加えて加水分解・縮合反応を行う方法。▲2▼シリル基成分と溶媒からなる溶液に、所定量の水(若しくはカルボン酸)を加えて加水分解・縮合反応を行い、次いで加水分解触媒と必要に応じて重合性モノマー及び重合開始剤を添加する方法。▲3▼シリル基含有成分と溶媒及び加水分解触媒からなる溶液に、所定の水(若しくはカルボン酸)を加えて加水分解・縮合反応を行い、次いで重合性モノマー及び重合開始剤を加えて混合し、さらに縮合反応を行なう方法等が挙げられる。
【0090】
本発明では、上記のようにして調整したゾル液を、カーテンフローコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート等の塗布法によって、低屈折率層等の上に塗布し、常温での乾燥、あるいは30〜200℃程度の温度で1分〜100時間程度加熱することにより、OC層は形成される。又、OC層用組成物が光重合性化合物を併用する場合には、塗布後に光照射工程を設ける。光照射は、活性エネルギー光線であればいずれでもよいが、照射装置の簡易性から紫外線照射が好ましい。
同時重層塗布をする場合には、多段の吐出口を有するスライドギーサー上で下層塗布液と上層塗布液のそれぞれが必要な塗布量になるように吐出流量を調整し、形成した多層流を連続的に支持体に乗せ、乾燥させる方法(同時重層法)が特に好ましい。
【0091】
[低屈折率層]
低屈折率層の屈折率は、1.20乃至1.55であることが好ましく、1.30乃至1.55であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50乃至400nmであることが好ましく、50乃至200nmであることがさらに好ましい。このような低屈折率の層とするには、材料の屈折率を下げる(▲1▼フッ素原子を導入する、▲2▼密度を下げる(空隙を導入する)、或いは▲3▼層内に微細な空隙を導入する等)方法が挙げられるが、本発明ではこれに限定されるものではない。具体的には、含フッ素化合物及び低屈折率の微粒子を少なくとも含有した硬化膜が好ましく用いられる。膜を形成する含フッ素化合物は予めポリマーとして、モノマーを製膜工程で重合し皮膜化する、或いは両者を併用するなどして用いられる。これら膜形成用の含フッ素化合物は、全重合成分の10質量%以上が好ましく、更には30〜85質量%である。
【0092】
低屈折率層形成用のバインダーポリマーは、特に限定されるものではないが、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマー又はポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、中でも飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。該ポリマーは膜形成後において架橋していることが好ましい。
また、フッ素原子を主鎖または側鎖に含むポリマーであることが好ましく、フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成される。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例には、フルオロオレフィン、フッ素化ビニルエーテルおよびフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステル等が挙げられる。ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い屈折率が低下する。具体的には、特開平11−64401号明細書中の段落番号「0023」〜[0033]記載の化合物等が挙げられる。
【0093】
また、フッ素原子含有ポリマーは、フッ素原子を含む繰り返し単位とフッ素原子を含まない繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。フッ素原子を含まない繰り返し単位を構成するモノマーは、フッ素原子含有繰り返し単位を構成するモノマーと共重合可能なものであれば特に制限はない。フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの例には、オレフィン、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンおよびその誘導体、ビニルエステル、(メタ)アクリルアミド、およびアクリロニトリル等が挙げられる。具体的には、例えば特開平11−52103号明細書中の段落番号「0044」に記載の化合物等が挙げられる。
【0094】
膜形成後において架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上の架橋性基を有する多官能性化合物を用いる、含フッ素ポリマー中に架橋性基を含有させる、あるいは両者を併用する、などのいずれも好ましい。多官能性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれでも良い。例えば、多価アルコールとエチレン性不飽和基含有のカルボン酸(例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等)とのエステル類、ポリアミンとエチレン性不飽和基含有のカルボン酸とのアミド類、ビニルベンゼンおよびその誘導体ビニルスルホン、ビニルオキシ基含有化合物等の多官能性モノマー、ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。
【0095】
又、ポリマー中に含有される架橋性基の例には、重合性不飽和エチレン基、水酸基、アミノ基、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、ホルミル基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基、ジ若しくはトリアルコキシシリル基等が挙げられる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。架橋性基を含有する重合成分は、含フッ素ポリマー全重合成分100質量部中の0.5〜50質量%が好ましい。更には、1〜40質量%が好ましい。バインダーポリマーの重合反応および架橋反応に使用する重合開始剤は、架橋反応性基の種類に応じて、従来公知の重合開始剤を適宜選択して用いることができる。好ましくは、光重合開始剤が挙げられる。
【0096】
又、モノオルガノシラン化合物及びジオルガノシラン化合物とカップリング反応性を有するシリル基を含有するポリマーからなり、且つこれらの3成分の少なくとも1つがフッ素原子を含有する化合物である低屈折率層用組成物を塗布した後に硬化させるゾル−ゲル硬化バインダーの系も好ましい。上記オルガノシロキサン化合物及び反応性シリル基含有ポリマーの具体例として、例えば、特開平11−52103号明細書中の段落番号[0010]〜[0047]、同11−106704号明細書中の段落番号[0013]〜[0043]、特開2000−275403号明細書中の段落番号[0015]〜[0026]等に記載の化合物が挙げられる。
【0097】
低屈折率層には、無機微粒子あるいは有機微粒子の微粒子を含有することが好ましい。微粒子の平均粒径は、0.5乃至200nmであることが好ましく、1乃至100nmであることがより好ましく、3乃至70nmであることがさらに好ましい。微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。
【0098】
無機微粒子は、非晶質であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、水酸化物、含水酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。金属原子としては、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類以上の金属を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物として、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが挙げられる。又、これらの無機化合物の形状は特に限定されるものではないが、特開2001−188104号公報の段落番号「0018」に記載の短繊維状無機粒子も好ましい。
【0099】
有機微粒子も、非晶質であることが好ましい。有機微粒子は、モノマーの重合反応(例えば乳化重合法)により合成されるポリマー微粒子であることが好ましい。有機微粒子のポリマーはフッ素原子を含むことが好ましい。ポリマー中のフッ素原子の割合は、35乃至80重量%であることが好ましい。含フッ素ポリマーを構成する繰り返し単位に相当するフッ素原子を含むモノマーの例として、例えば特開平11−38202号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の化合物等が挙げられる。
【0100】
本発明に供される微粒子は、粒子内にミクロボイドを内包していることも好ましい。
無機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することができる。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。具体的には、特開平11−326601号公報の段落番号[0011]〜[0012]等に記載されているものが好ましい。
有機微粒子内にミクロボイドを内包するには、粒子を形成するポリマーを架橋させることにより体積が縮小し粒子を多孔質にする等が挙げられる。これらの中空粒子は、例えば特開平1−185311号、同6−248012号、同8−20604号等に記載の従来公知の乳化重合によって容易に合成できる。具体例として、特開平10−142402号公報等に記載の化合物等が挙げられる。
これらの微粒子は、上記した低屈折率層の屈折率の範囲の中で、任意に調節して用いることができる。例えば、低屈折率層全成分100質量部中の1〜90質量%、より好ましくは5〜75質量%である。
【0101】
低屈折率層の空隙は、微粒子を用いて微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして形成することができる。
【0102】
粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することができる。微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成することと、微粒子の粒径を調整することで、粒子間ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節できる。
【0103】
又、他のミクロボイド形成の方法として、特開平9−227713号公報の逆相乳化方法を用いる方法、同11−64601号公報の含フッ素ポリマーの析出凝集による方法、同10−282305号の昇華性化合物を利用する方法等も挙げられる。
【0104】
ミクロボイド内包の低屈折率層は、低屈折率層全成分100質量部中の5質量%〜90質量%が好ましく、更には10質量%〜70質量%が好ましい。又ポリマーは、5乃至50重量%を含むことが好ましい。ポリマーは、微粒子を接着し、空隙を含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、空隙を充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。ポリマーで微粒子を接着するためには、(1)微粒子表面を、物理的表面処理(プラズマ放電処理やコロナ放電処理等)、或いはカップリング剤を使用する化学的に表面処理する方法があり、例えば特開平9−222502号公報、特開平11−153703号公報記載の記載を参考にすることができる。
【0105】
又、他の方法としては、(2)微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成してバインダーポリマーとの親和性を向上させる方法があり、その内容は特開平10−319211号公報、同11−38202号公報等に記載されている。
【0106】
低屈折率層の塗布液に、少量のポリマー(例、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂)を添加してもよい。
【0107】
本発明の反射防止膜のOC層は、気相法で形成される金属化合物から成る低屈折率層上に設けることも可能であり、耐久性に優れた耐傷性、耐防汚性を示すことができる。
金属化合物から成る反射防止膜としては、例えば、技術情報協会編「反射防止膜の特性と最適設計・膜作製技術」第3章((株)技術情報協会、2001年刊行)、特開平11−258405号、特開2001−330704号等に記載のものが挙げられる。
【0108】
[ポリマー層]
本発明において、塗布型で形成される反射防止膜における低屈折率層とOC層の間にポリマー層を設けても良い。
本発明において、ポリマー層を設ける効果は、その上層に防汚性を付与するためのOC層を塗布したときに、そのOC層の素材が低屈折率層に拡散するのを抑止する機能及び表面の膜強度を強化する機能が付与されることにある。これらの機能を持たせるためには、ポリマー層の膜厚は3nm以上あることが好ましい。また、このポリマー層は、空隙を有する低屈折率層に比べると、屈折率が高いため、厚くなると、低屈折率層による反射防止性を損なう。したがって、ポリマー層の厚さは30nm以下が好ましい。膜厚としてより好ましくは5nm以上25nm以下、特に好ましくは8nm以上20nm以下である。また、ポリマー層の屈折率は1.35以上1.80以下が好ましく、より好ましくは1.40以上1.70以下である。
【0109】
本発明における空隙を有する低屈折率層上に設けるポリマー層は、低屈折率層の上に塗布して形成する。本発明では、ポリマー層の材料は低屈折率層の空隙を占有する割合が小さいほど好ましく、ポリマー層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合は、50体積%未満であることが好ましく、40体積%未満であることがより好ましく、30体積%未満であることがさらに好ましく、20体積%未満であることが最も好ましい。このようなポリマー層を用いることにより、低屈折率層の空隙率を3乃至50体積%に保存することができる。低屈折率層の空隙を残してポリマー層を形成するためには、様々な手段が採用できる。例えば、前述したように低屈折率層の空隙を微粒子とバインダーポリマーで閉じた状態で形成すれば、ポリマー層を塗布により形成しても低屈折率層の空隙が残存する。また、ポリマー層の塗布液が低屈折率層の空隙に浸入しないように塗布液の粘度を高くしてもよい。特に好ましい方法は、ポリマーを、粒径10nm以上の微粒子として付与する方法か、あるいは質量平均分子量2万以上のポリマーを含む層を塗布する方法である。これらの方法の内、質量平均分子量2万以上のポリマーを含む塗布液を塗布する方法が最も好ましい。
【0110】
ポリマー層の化合物を、微粒子として付与する方法は、低屈折率層の空隙の開口サイズより大きい粒子として付与するため、低屈折率層の内部の空隙には拡散せず、低屈折率層表面の開口部を塞ぐような形でOC層を付与できる。この微粒子のサイズとしては、粒径10nm以上とすることが好ましい。より好ましい粒径は10nm以上100nm以下、更に好ましくは15nm以上70nm以下、特に好ましくは20nm以上50nm以下である。これらのポリマー微粒子は、ポリマー化合物を含有した溶液の乳化・析出等による方法、ポリマーの乳化重合等によるラテックス化、等により得ることができる。また、市販のポリマー微粒子、ラテックス等も使用できる。また、これらのポリマー微粒子により付与された層は付与後の加熱等により、融着させて、連続層とすることがより好ましい。
【0111】
質量平均分子量2万以上のポリマーを含む層を付与する方法は、ポリマー溶液を空隙を有する低屈折率層上に付与する時、ポリマーの分子量が大きくなると、低屈折率層の内部の空隙中に拡散しなくなることを利用している。ポリマー層に含まれるポリマーの質量平均分子量としては、2万以上が好ましく、より好ましくは4万以上200万以下、特に好ましくは5万以上100万以下である。
【0112】
本発明において、ポリマー層に用いられるポリマーとしては、特に制限はないが、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、ポリオルガノシロキサン(例、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン)類等、また、各種アルコキシシランをゾル−ゲル法の手法により重合させたもの等を挙げることができる。
【0113】
本発明に係るポリマー層に用いるポリマーは、各種素材、特に油分等に対するバリアー性を持たせることが好ましい。これは、防汚層となるOC層を設ける時、そのOC層の素材が低屈折率層に拡散することを防ぐ、また、防汚層塗布後に、指紋や、マジック等の油溶性の成分が付着したとき、その成分が低屈折率層の空隙に拡散することを抑えることができる。このようなバリアー性を付与するためにはポリマーを架橋する方法、バリアー性の高いポリマーを用いることによって可能である。ポリマーを架橋するためには架橋性基をポリマー中に導入する、ポリマーと反応できるような架橋性成分を添加する等の手段を用いることができる。架橋性官能基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、ビニルオキシ、イソシアナート、エポキシ、アルコキシシリル、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、ジ若しくはトリアルコキシシリル、メチロール、および活性メチレン基等が挙げられる。
【0114】
ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。また、油分、気体、液体等に対しバリアー性の高いポリマーとしては、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、ポリ塩化ビニリデンもしくはその誘導体等が一般に知られている。特にポリビニルアルコールもしくはその誘導体は耐油性が高く、上層との密着性保持から好ましい。
【0115】
[高・中屈折率層]
本発明の反射防止膜が、多層膜の態様をとる場合、一般に、低屈折率層は、低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、前記の高屈折率層、中屈折率層)と共に用いられる。
【0116】
上記低屈折率層より高い屈折率を有する層を形成するための有機材料としては、熱可塑性皮膜(例、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン以外の芳香環、複素環、脂環式環状基を有するポリマー、またはフッ素以外のハロゲン基を有するポリマー);皮膜組成物(例、メラミン皮膜、フェノール皮膜、またはエポキシ皮膜などを硬化剤とする皮膜組成物);ウレタン形成性組成物(例、脂環式または芳香族イソシアネートおよびポリオールの組み合わせ);およびラジカル重合性組成物(上記の化合物(ポリマー等)に二重結合を導入することにより、ラジカル硬化を可能にした変性皮膜またはプレポリマーを含む組成物)などを挙げることができる。これらの皮膜形成性組成物のいずれを用いてもよいが、高い皮膜形成性を有する材料が好ましい。低屈折率層より高い屈折率を有する層は、有機材料中に分散した無機系微粒子も使用することができる。この層に使用される有機材料としては、一般に無機系微粒子が高屈折率を有するため有機材料単独で用いる場合よりも低屈折率のものも用いることができる。そのような材料として、上記した有機材料の他、アクリル系を含むビニル系共重合体、ポリエステル、アルキド皮膜、繊維素系重合体、ウレタン皮膜およびこれらを硬化せしめる各種の硬化剤、硬化性官能基を有する組成物など、透明性があり無機系微粒子を安定に分散せしめる各種の有機材料を挙げることができる。
【0117】
さらに有機置換されたケイ素系化合物も高・中屈折率層に含ませることができる。これらのケイ素系化合物は下記一般式で表される化合物、あるいはその加水分解生成物である。
【0118】
Ra mRb nSiZ(4−m−n)
上記一般式において、Ra及びRbは、それぞれアルキル基、アルケニル基、アリル基、またはハロゲン、エポキシ、アミノ、メルカプト、メタクリロイルまたはシアノで置換された炭化水素基を表し、Zは、アルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン原子及びアシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な基を表し、m+nが1または2である条件下で、m及びnはそれぞれ0、1または2である。
【0119】
これらに分散される無機系微粒子の好ましい無機化合物としては、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモンなどの金属元素の酸化物を挙げることができる。これらの化合物は、微粒子状で、即ち粉末または水および/またはその他の溶媒中へのコロイド状分散体として、市販されている。これらをさらに上記の有機材料または有機ケイ素化合物中に混合分散して使用する。
これらの具体例としては、例えば特開平11−295503号公報、同11−153703号公報などに記載の化合物が挙げられる。
【0120】
低屈折率層より高い屈折率を有する層を形成する材料として、被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機系材料(例、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例、キレート化合物)、無機ポリマー)を挙げることができる。これらの具体的な例としては、前記のゾルゲル反応の触媒として例示した化合物と同様なものを挙げることができる。
【0121】
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。屈折率は、アッペ屈折率計を用いる測定や、層表面からの光の反射率からの見積もりにより求めることができる。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましく、30nm〜0.5μmであることが最も好ましい。高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な高屈折率層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0122】
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
高屈折率層に無機微粒子とポリマーを用い、中屈折率層は、高屈折率層よりも屈折率を低めに調節して形成することが特に好ましい。中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
【0123】
[その他の層]
反射防止膜には、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。ハードコート層は、透明支持体に耐傷性を付与するために設け、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、シリコン系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してよい。ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。透明支持体の上には、ハードコート層に加えて、接着層、シールド層、滑り層や帯電防止層を設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
【0124】
[透明支持体]
反射防止膜をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止膜は透明支持体を有することが好ましい。透明支持体としては、ガラス板よりもプラスチックフィルムの方が好ましい。プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0125】
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。透明支持体には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2、Al2O3,TiO2、BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンが含まれる。
透明支持体には表面処埋を施してもよい。
【0126】
表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理と紫外線処理がさらに好ましい。
【0127】
[反射防止膜の形成]
反射防止膜が、単層又は前記のような多層の構成をとる場合は、各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができる。また、二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。反射防止膜の反射率は低いほど好ましい。具体的には450〜650nmの波長領域での平均反射率が2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることが最も好ましい。反射防止膜(下記のアンチグレア機能がない場合)のヘイズは、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。反射防止膜の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0128】
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
【0129】
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用し、それにより膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層又はハードコート層)に比較的大きな粒子(粒径0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば特開2000−281410号、同2000−95893号等)、低屈折率層表面に物理的に凹凸形状を転写(エンボス加工方法等)する方法(例えば特開平11−268800号)が挙げられる。
【0130】
反射防止膜は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ〈ELD〉や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用する。反射防止膜は、高屈折率層が画像表示装置の画像表示面側になるように配置する。
反射防止膜が透明支持体を有する場合は、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着する。反射防止膜は、さらに、ケースカバー、光学用レンズ、眼鏡用レンズ、ウインドウシールド、ライトカバーやヘルメットシールドにも利用できる。
【0131】
【実施例】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[シランカップリング化合物(FM)の合成例]
(シランカップリング化合物(FM)の合成例1:シランカップリング化合物(FM−1))
内容量1Lのステンレス製攪拌機付オートクレーブにトルエン75g、下記構造の単量体(F−1)20g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン1.5g、及び2,2′−アゾビス(イソバレロニトリル)(略称:A.I.V.N.)1.0gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)30.0gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2(529kPa)であった。このまま4時間反応後、A.I.V.N. 0.3gをトルエン5mlに溶解した液を窒素ガス圧を利用して添加した。
更に7時間反応を続けた後、加熱を止め放冷した。室温まで内温が下がった時点で、オートクレーブを開放して反応液を取り出し、n−ヘキサン200ml中に再沈した。
沈降物を捕集し、減圧乾燥して、収量42gで、質量平均分子量6×103の生成物を得た。(質量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算によるGPC法測定値)。
【0132】
【化8】
【0133】
(シランカップリング化合物(FM)の合成例2:シランカップリング化合物(FM−2))
内容量1Lのステンレス製攪拌機付オートクレーブにテトラヒドロフラン75ml、下記構造の単量体(F−2)27.5g、2,2′−アゾビス(2−シアノヘプタノール(略称:A.B.C.H.)2.5gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)22.5gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2(529kPa)であった。このまま4時間反応後、A.B.C.H. 1.5gをテトラヒドロフラン5mlに溶解した液を窒素ガス圧を利用して添加した。
更に6時間反応を続けた後、加熱を止め放冷した。室温まで内温が下がった時点で、オートクレーブを開放して反応液を取り出し、200mlの3つ口フラスコに投入した。
これに、3−トリメトキシシクロプロパンイソシアナート4.0g及びジブチルスズジラウレート0.05gを加えて、50℃で6時間攪拌した。放冷後、石油エーテル800mLに再沈した。沈殿物を捕集し、減圧乾燥して得られた生成物の収量は、40gで、質量平均分子量は8×103であった。
【0134】
【化9】
【0135】
(シランカップリング化合物(FM)の合成例3:シランカップリング化合物(FM−3))
400rpmで作動する攪拌器を備えた2リットル AISI 316 オートクレーブの側壁に石英の丸窓を挿入し、該石英の丸窓に合わせてHanau(商標登録)TQ−150 UVランプを配置した。このランプは高圧水銀灯であって、240〜600nmの光を発し、波長240〜330nmの光では13.2Wのエネルギーを有する。
この装置に、下記構造の単量体(F−3)45g、下記構造の光重合開始剤2.0g、及びテトラヒドロフラン100gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにオクタフルオロブテン55gをオートクレーブ中に導入して45℃まで昇温した。10時間反応を続けた後、加熱を止め放冷した。室温まで内温が下がった時点で、オートクレーブを開放して反応液を取り出し、テトラヒドロフランを濃縮した後、トルエンの30質量%溶液とした。
得られた生成物の質量平均分子量Mwは5×103であった。
【0136】
【化10】
【0137】
実施例1及び比較例1〜3
<ハードコート層用塗布液Aの調製>
JSR社製ハードコート素材デソライトZ7503のMEK溶液(固形分濃度72%、シリカ含量38%)625gを、375gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50重量%の混合溶媒に溶解した。混合物を撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層の塗布液Aを調製した。
【0138】
<中屈折率層用塗布液の調製>
シクロヘキサノン151.9gおよびメチルエチルケトン37.0gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.14gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.04gを溶解した。さらに、下記の二酸化チタン分散物6.1gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.4gを加え、室温で30分間撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、中屈折率層用塗布液を調製した。
【0139】
(二酸化チタン分散物の調製)
二酸化チタン(一次粒子重量平均粒径:50nm、屈折率:2.70)30重量部、アニオン性ジアクリレートモノマー(PM21、日本化薬(株)製)4.5重量部、カチオン性メタクリレートモノマー(DMAEA、興人(株)製)、0.3重量部およびメチルエチルケトン65.2重量部を、サンドグライダーにより分散し、二酸化チタン分散物を調製した。
【0140】
<高屈折率層用塗布液の調製>
シクロヘキサノン1152.8gおよびメチルエチルケトン37.2gに、光重合開始剤(イルガキュア907)0.06gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX)0.02gを溶解した。さらに、上記の二酸化チタン分散物13.13gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)0.76gを加え、室温で30分間撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、高屈折率層用塗布液を調製した。
【0141】
<低屈折率層用塗布液の調製>
平均粒径15nmのシリカ微粒子のメタノール分散液(メタノールシリカゾル、日産化学(株)製)200gにシランカップリング剤(KBM−503、信越シリコーン(株)製)3gおよび0.1N塩酸2gを加え、室温で5時間撹拌した後、3日間室温で放置して、シランカップリング処理したシリカ微粒子の分散物を調製した。分散物35.04gにイソプロピルアルコール58.35gおよびジアセトンアルコール39.34gを加えた。また、光重合開始剤(イルガキュア907)1.02gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX)0.51gを772.85gのイソプロピルアルコールに溶解した溶液を加え、さらに、DPHA25.6gを加えて溶解した。得られた溶液67.23gを、上記分散液、イソプロピルアルコールおよびジアセトンアルコールの混合液に添加した。混合物を20分間室温で攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0142】
<ポリマー層用塗布液(1−1)の調製>
市販のPMMA(重量平均分子量(Mw)60000)をメチルイソブチルケトンに濃度1%になるよう溶解し、ポリマー層用の塗布液を調製した。
【0143】
〔実施例1〕
<オーバーコート層用塗布液(OC−1)の調製>
蓚酸2.4gをエタノール12g及びパーフルオロブチルエーテル(HFE−7200,3M社製)3gに溶解した溶液に、テトラエトキシシラン2.35gと本発明に係る一般式(I)の化合物(FM−1)1.6gを加え、5時間加熱した。得られた溶液5gにn−ブタノール2gを加え。全量で13gになるようにメチルエチルケトンを加えて、オーバーコート層(OC層)用塗布液(OC−1)を調製した。
【0144】
<反射防止膜(F−1)の作成>
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)に、上記のハードコート層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成した。その上に、上記中屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率1.72、厚さ0.081μm)を形成した。その上に、上記高屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率層(屈折率1.92、厚さ:0.053μm)を形成した。その上に、上記低屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥の後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、低屈折率層(屈折率1.40、厚さ0.070μm)を形成した。形成した低屈折率層の空隙率は16体積%であった。その上に、上記ポリマー層用塗布液(1−1)をバーコーターを用いて#3バーで塗布し、120℃で5分乾燥した。その後、オーバーコート用塗布液(OC−1)を塗布厚みが15nmになるように調製しながら塗布し、120℃で10分乾燥し反射防止膜(F−1)を形成した。
【0145】
〔比較例1〕
実施例1において、OC層用塗布液(OC−1)の代わりに、下記内容の塗布液(OC−R1)を用いた他は、実施例1と同様に操作して、反射防止膜(FR−1)を作製した。
【0146】
<OC層用塗布液(OC−R1)の調製>
メチルトリエトキシシラン8.7gに0.1N塩酸水溶液3gを加え、室温で3時間攪拌した。該溶液1.1gとメチルエチルケトン8.9gを混合して用塗布液(OC−R1)を調製した。
【0147】
〔比較例2〕
実施例1において、OC層用塗布液(OC−1)において、一般式(I)の化合物FM−1の代わりに、トリデカフルオロ1,1,2,2−テトラヒドロオクチルー1−トリエトキシシランを用いた他は、実施例1と同様に操作して、比較用反射防止膜(FR−2)を作製した。
【0148】
〔比較例3〕
実施例1において、OC層用塗布液(OC−1)において、一般式(I)の化合物FM−1の代わりに、特開昭58−147584号公報の合成例3に記載の下記構造のシラン化合物を用いた他は、実施例1と同様に操作して、比較用反射防止膜(FR−3)を作製した。
比較用シラン化合物
【0149】
【化11】
【0150】
(反射防止膜の評価)
こうして得られた各膜(実施例1及び比較例1〜3)について、下記性能評価を実施し、その結果を表1に記載した。
【0151】
(1)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率(%)を測定した。結果には450〜650nmの鏡面平均反射率(%)を用いた。
【0152】
(2)鉛筆硬度評価
反射防止膜を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS K
5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。
【0153】
(3)耐傷性試験
膜表面をスチールウール#0000を用いて、200gの荷重下で10回擦った後に、傷のつくレベルを確認した。判定は次の基準に従った。
全くつかない :〇
細かい傷がつく:△
傷が著しい :×
【0154】
(4)水滴滑落性
反射防止膜を蒸留水中に浸し超音波洗浄機中で1分間洗浄した後、風乾し、25℃、65%RHの環境下で傾斜摩擦計HEIDON47L−388(新東科学(株)製)を用いて、サンプル表面に5μlの蒸留水の水滴を滴下し、水滴の転がる角度を測定した。
【0155】
(5)防汚性
サンプル表面に指紋を付着させてから、それをベンコットン(旭化成(株)製)で拭き取った時の状態を観察して、以下の基準で評価した。
◎:簡単に拭き取れる
〇:しっかり擦れば拭き取れる
△:一部が拭き取れずに残る
【0156】
【表1】
【0157】
本発明の実施例1の反射防止膜の各特性は良好であった。即ち、膜の硬度、耐傷性も実用上充分な性能を示した。更に、微小水滴が表面に付着してもわずか5度の傾斜角度で滑り落ちた。この事は、液滴の耐付着性が極めて良好なことを示している。又、指紋等の油性汚れに対しても、極めて簡便に除去できた。
一方、比較例1及び2は、鉛筆硬度及び膜の耐傷性が劣化した。また、比較例3は、鉛筆硬度及び防汚性は良好であったが、膜の耐傷性が低化した。また、比較例1〜3のいずれもが、水滴滑落性が著しく劣る結果であった。
以上のことから、本発明の実施例1のみが優れた性能を示すことがわかる。
【0158】
実施例2〜7
実施例1のオーバーコート層用塗布液(OR−1)の塗布液において、一官能性シランカップリング化合物(FM−1)の代わりに、下記表2記載の各化合物(FM)を用いた他は、実施例1と同様にして各反射防止膜を作製した。
各膜のオーバーコート層の膜厚は20nmとなる様に調製した。
【0159】
【表2】
【0160】
得られた実施例2〜7の各膜について、実施例1と同様にして各性能を評価した。
実施例2〜7の各膜は、いずれも実施例1と同等の性能を示し良好であった。
【0161】
実施例10
<ハードコート層用塗布液Bの調製>
実施例1で用いたDPHA250gを、439gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤イルガキュア907、7.5gおよび光増感剤カヤキュアーDETX、5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。なお、この溶液を塗布、紫外線硬化して塗膜の屈折率は1.53であった。さらにこの溶液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層の塗布液Bを調製した。
【0162】
<防眩性ハードコート層用塗布液Aの調製>
DPHA91g、粒径約30nmの酸化ジルコニウム超微粒子分散物含有ハードコート塗布液(デソライトZ−7041、JSR(株)製)199g、および粒径約30nmの酸化ジルコニウム超微粒子分散物含有ハードコート塗布液(デソライトZ−7042、JSR(株)製)19gを、52gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907)10gを加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。この溶液に、個数平均粒径1.99μm、粒径の標準偏差0.32μm(個数平均粒径の16%)の架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200HS(SX−200Hの風力分級品)、総研化学(株)製)20gを80gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に高速ディスパ(汎用分散装置)にて5000rpmで1時間攪拌分散し、孔径10μm、3μm、1μmのポリプロピレン製フィルター(それぞれPPE−10、PPE−03、PPE−01、いずれも富士写真フイルム(株)製)にてろ過して得られた分散液29g(5.0μm以上の粗大粒子を含有する割合は0個/1×1010個)を添加、攪拌した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層用塗布液Aを調製した。
【0163】
<低屈折率層用塗布液(Ln−2)の調製>
屈折率1.46の熱架橋性含フッ素ポリマー(商品名:JN−7221、JSR(株)製)200gにメチルイソブチルケトンを200g添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液(Ln−2)を調製した。
【0164】
<オーバーコート層用塗布液(OC−10)の調製>
本発明に係る一官能性シランカップリング化合物(FM−2)5.0g、メチルトリメトキシシラン2.5g、アセチルアセテートZr塩0.01g及びメチルエチルケトン300gの混合物を1時間攪拌した。その後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、OC層用塗布液(OC−10)を調製した。
【0165】
<反射防止膜(F−10)の作製>
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(商品名:TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)に、上記のハードコート層用塗布液Bをバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ4μmのハードコート層を形成した。その上に、上記防眩層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、上記ハードコート層と同条件にて乾燥、紫外線硬化して、厚さ約1.5μmの防眩層を形成した。その上に、上記低屈折率層用塗布液(Ln−2)をバーコーターを用いて塗布し、風乾(1分間)の後、さらに120℃で10分間熱架橋し、厚さ0.096μmの低屈折率層を形成した。次に、上記オーバーコート層用塗布液(OC−10)をバーコータで厚さ0.020μmとなる様に調製して塗布し、120℃で10分間乾燥した。
得られた反射防止膜(F−10)を実施例1と同様にして、性能を評価した。その結果は、実施例2の膜と同等の性能を示した。
【0166】
実施例11
上記実施例1〜10の各反射防止膜を用いて防眩性反射防止偏光板を作成した。これらの各偏光板を用いて反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作成した。各表示装置の何れも、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、防眩性により反射像が目立たず優れた視認性を有し、色むらも発生せず、指紋付も良好であった。
【0167】
【発明の効果】
一般式(I)のカップリング化合物(FM)とシランカップリング剤とを含有するオーバーコート層を設けた本発明の反射防止膜によれば、反射率が低く、耐擦傷性と防汚性に優れた反射防止膜を得ることができる。更に、本発明の反射防止膜は、耐久性、耐候性に優れている。また、本発明の反射防止膜は塗布型であり、大量生産に適しており、また、防眩性に優れて反射像が目立たず優れた視認性を有している。
本発明の反射防止膜を設けることにより、反射が有効に防止されたフィルムまたは画像表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射防止膜の主な層構成例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の好ましい態様における低屈折率層、ポリマー層とオーバーコート層を有する反射防止膜の断面模式図である。
【符号の説明】
1 透明支持体
2 低屈折率層
3 ポリマー層
4 オーバーコート層
5 ハードコート層
6 高屈折率層
7 中屈折率層
21 微粒子
22 バインダー
23 空隙
Claims (4)
- 透明支持体および隣接する層の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層が積層されている反射防止膜であって、該低屈折率層の上に少なくとも下記一般式(I)で示されるカップリング化合物と、シランカップリング剤の少なくとも1種とを含有するオーバーコート層がさらに積層されていることを特徴とする反射防止膜。
一般式(I)
- 低屈折率層とオーバーコート層との間にポリマー層が積層されていることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
- 透明支持体がプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止膜を配置したことを特徴とする画像表示装置。
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